2024年7月13日 (土曜日)

エスペランザのボーカルの扱い

エスペランザ・スポルディングのデビューは、結構、衝撃的だった、と記憶している。ベーシストとしてのデビューだったので、女性でありながら、骨太でソリッドで切れ味の良いアコースティック・ベース、繰り出すフレーズが新鮮だった。デビュー盤ではスキャット中心のボーカルで、ベースを弾く傍らでの「彩り」だと感じていた。

しかし、1曲だけ、『Cantora De Yala』は、 エスペランザのベースのみの弾き語りによる、暖かな日だまりの様な、ほんのり暖かで、芯はしっかりと通った、意外と硬派な内容で、ベーシストの弾き語りというのは、このスポルディングの初リーダー作で、初めて聴いた。ベーシストのスキャットについては、ジャコ・パストリアス御大の前例があるんですが、本格的に唄うのは、エスペランザが初めてだった。

Esperanza Spalding『Esperanza』(写真左)。2008年の作品。ちなみにパーソネルは、Esperanza Spalding (b, vo), Leo Genovese (ac-p, el-p :track 7, Rhodes :track 10), Jamey Haddad (perc), Otis Brown (ds), Horacio Hernandez (ds, tracks 4 and 8), Ambrose Akinmusire (tp, tracks 8 and 11), Donald Harrison (sax, tracks 6 and 11), Gretchen Parlato (back-vo, tracks 1 and 4)。

エスペランザの2枚目のリーダー作。この盤で、エスペランザは本格的に唄う様になっている。ベースもしっかり弾いているが、とにかく唄う唄う。しかも、過去の女性ジャズ・ボーカルのイメージに全く囚われない、エスペランザ独特のキュートでエレガントで、ワールド・ミュージック志向のボーカルは唯一無二。エスペランザのボーカルを聴いていると、ボーカルって「楽器」として捉えても違和感が無い、ということを再認識できる。
 

Esperanza-spaldingesperanza

 
アルバム全体の音志向は「ブラジリアン・ミュージック」な志向が強いが、旧来の4ビート・ジャズの欠片も無い、ワールド・ミュージック志向の様々な音楽要素が融合した、コンテンポラリーなニュー・ジャズ風のボーカル・アルバムという風情が新鮮。

同じ志向に「ミルトン・ナシメント」がいると思うが、ナシメントよりもエスペランザの方が確実に「ジャズ寄り」。おそらく、エスペランザの弾き出すベースラインがジャジーなので、それが、アルバム全体の雰囲気を「ジャズ寄り」にしているのだろう。

ベースとユニゾンでスキャットする様を聴いていると、やっぱり、エスペランザはボーカルを「楽器」として扱おうとしている様に感じる。ベースや既成の楽器では表現出来ない、微妙なニュアンスや節回し、フレーズの飛びを、ボーカルでは比較的自由に表現できるので、それを見越して、スポルディングは唄っている様な気がする。

エスペランザのボーカルを、旧来からの本格的な女性ジャズ・ボーカルとして捉えると、違和感を感じる瞬間があるんだが、楽器の一つとして捉えると、全く違和感が無い、どころか、新しいジャズの響きを獲得している、そんな化学反応をこの盤で感じることが出来る。エスペランザのボーカルは「楽器」。そう捉えることで、違和感無く、エスペランザならではの音楽性を正確に捉えることが出来る。そんな想いを持たせてくれる、この2枚目のリーダー作『Esperanza』である。
 
 

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2024年6月27日 (木曜日)

スポルディングとハーシュの邂逅

「2023年度 Jazz Life グランプリ」も貴重な情報源。この月刊誌 Jazz Life のグランプリ記事も、雑誌ジャズ批評の「オーディオ・ディスク大賞」と並んで、昨年度のジャズの新盤の振り返りになり、落穂拾いにもなる。Jazz Life のグランプリも、ジャズ批評のディスク大賞も、コマーシャルな裏の事情など関係なく、評論家の方々やショップの店員さんが、忌憚ないところでアルバムを選出しているようなので、本当に参考になる。

Fred Hersch & Esperanza Spalding 『Alive at the Village Vanguard』(写真左)。2018年10月19–21日、NYの老舗ライヴハウス「Village Vanguard」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Fred Hersch (p), Esperanza Spalding (vo)。

その独特の奏法と創造のアイデアのユニークさで「ピアノの詩人」などと評され、1980年代以降のピアニストの中で、最もエヴァンスイズムを受け継いだと言われる。耽美的でリリカルなピアノの最右翼の一人「フレッド・ハーシュ」と、稀有な、唯一無二な若手女性ベーシスト&ボーカリストの「エスペランザ・スポルディング」のデュオ演奏。

ハーシュにとってビレバガでのライヴ録音は今回で6度目らしい。そして、ベーシスト&ボーカリストのスポルディングは、潔くヴォーカルのみの参加。女性ベーシストとして、かなりユニークな個性の持ち主なので、スポルディングのベースが聞けないのは残念だが、ボーカルに専念出来る分、このデュオ・ライブ盤でのスポルディングのボーカルは、さらに迫力と捻じ曲がり度合いが増しており、現代の新しい、最新の女性ボーカルというか、ジャズ・ボーカルの新しい響きが実に芳しい。
 

Fred-hersch-esperanza-spalding-alive-at-

 
スポルディングのボーカルはこれまでに無かったユニークなもの。その雰囲気は「枠に囚われない」「野趣溢れる」「アフリカン・ネイティヴな」ワールド・ミュージック志向のボーカル。その表現の自由度は高く、伝統的な女性ボーカルをこよなく愛する方々からすると、これは「由々しき」女性ボーカルなんやろうな、なんて思ったりする。とにかく「自由」、そして、時折、織り交ぜられる「小粋なワード」が、スポルディングのエンタテインメント性を引き立てる。

そんなスポルディングのボーカルに、寄り添うが如く、絡むが如く、ハーシュのピアノが疾走する。現代のジャズ・ピアニストの中でも「耽美的でリリカルなピアノの最右翼」とされるハーシュのピアノであるが、耽美的どころか、アグレッシヴで躍動感溢れるバップなピアノで、スポルディングのボーカルの伴奏をガンガンやっている。恐らく、スポルディングの自由闊達なボーカルに合わせた、ハーシュの職人肌的パフォーマンスなんだろう。

しかし、スポルディングのボーカルとハーシュのピアノが、こんなに相性が良いと思わなかった。最初は「水と油」かなあ、と思ったのだが、聴いてみて、あらビックリ。スポルディングのボーカルは従来からの個性的なものなんだが、その伴奏に回ったハーシュのピアノが半端ない。抒情的にしっとり展開したりするところあるが、基本的にはアグレッシヴで躍動感溢れるバップなピアノ。ハーシュの今までとは違った側面を聴くこと出来て、感心することしきり、である。

スポルディングの唯一無二の「今までにない」新しいボーカルと、ハーシュの「新しい引き出し」を聴くかの如き、スインギーでアグレッシヴなバップな弾き回し。一期一会の、奇跡のようなデュオのライヴ音源。現代の、今のジャズのトピック的アルバムの成果として、高く評価されるべき好盤である。
 
 

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2024年2月14日 (水曜日)

ショーターの「白鳥の歌」

2023年3月2日、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)は、89歳で逝去した。ジャズを聴き始めてから、リアルタイムでずっと聴き続けてきたジャズマンが逝去するのは単純に辛い。

ショーターのサックスのベースは「モード」。ショーターのモード奏法は、マイルスのモードの個性とコルトレーンのモードの個性を極端に拡張〜融合した、当時のモード奏法の究極形の様な吹き回し。

確実にステップアップしたモード解釈で、音の「スペースと間」を活かし、音の広がりを活かしたモーダルな展開は、明らかにショーターならではの音世界。確実にショーターは、ジャズ・サックスの偉大なスタイリストの一人だったし、後進に与える影響は大きかった。

Wayne Shorter, Terri Lyne Carrington, Esperanza Spalding, and Leo Genovese『Live at the Detroit Jazz Festival』(写真左)。2017年9月3日、デトロイト国際ジャズフェスティバルでのライヴ録音。2017年6月に逝去した、ピアニストで作曲家のジェリ・アレンの追悼のパフォーマンスでもあった。

ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (sax), Leo Genovese (p, key), Esperanza Spalding (b, vo), Terri Lyne Carrington (ds)。ショーターのサックスがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」。

ショーターがテリ・リン・キャリントンやエスペランサ・スポルディング、レオ・ジェノヴェーゼと共演、という「一期一会」のライヴ音源。プロデュースは、テリ・リン・キャリントンが担当している。2022年9月にアルバムとしてリリース。今のところ、2023年に亡くなる前のショーターにとって最後のレコーディングでもあった。
 

Live-at-the-detroit-jazz-festival

 
しかし、このカルテットの編成は凄い。こういう組み合わせもあったのか、と唸った。ショーターのモーダルなサックスは、その個性と特徴をよく理解していないと共演できない類のものだと思うのだが、この「一期一会」のカルテットは、まるでパーマネント・カルテットの様な、一体感溢れる、濃密なつながりの中で、モーダルなインタープレイを展開している。

キャリントンのドラム、スポルディングのベース、ジェノヴェーぜのピアノ、このリズム・セクションがショーターの個性と特徴に精通し、ショーターの音楽性にリスペクトの念を強く抱いていることが、とても良く判る。特に、ジェノヴェーぜのピアノが凄い。変幻自在、緩急自在、硬軟自在なピアノでショーターの音世界に追従する。

フロントのショーターもそれを感じて、実に楽しそうにサックスを吹き上げている。時々、顔を出す「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」が無い。このライヴではショーターは地球人ジャズ・ミュージシャンとのみ、交信している。変に捻れたところが無く、ポジティヴで健康的なショーターのフレーズの数々が印象深い。

スポルディングが参加していることもあって、ボーカル曲も沢山入っている。しかし、そのボーカルも「ショーター調」がしっかり踏まえられていて、「ショーター節」を踏襲した唄い回しが実に微笑ましい。ネオ・ハードバップ&ネオ・モードの最先端の演奏であるが、このエスペランサのボーカルは決して邪魔にならない。どころか、ショーターのモード・ジャズに新しい彩りを添えている。

このショーターのワンホーン・カルテットでの演奏がもっと聴きたかったなあ。この4人でのカルテットの演奏はこのライヴの時だけ。真に「一期一会」のパフォーマンスを捉えた素晴らしいライヴ音源である。

この後、ほどなくショーターは引退し、2023年3月、鬼籍に入る。
 
 

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2014年6月16日 (月曜日)

ジャズとポップスの境界線

ジャズは進化するにつれ、様々な他ジャンルの音楽要素を取り込み、その裾野はどんどん広がっていった。逆に、ポップスはジャジーなアレンジをベースに、ジャズをベースにしたポップスを創り出した。前者は「ジャズ」という音楽ジャンルで語られ、後者は「ポップス」という音楽ジャンルで語られる。

しかし、この「ジャズ」と「ポップス」の境界線がかなり曖昧になってきた。ジャズだ、と言い切ることもできず、ポップスと言い切ることが出来ない、どっちつかずのジャンル不明なアルバムが少しずつ出てきた。例えば、このアルバムも、そんな「ジャンル不明なアルバム」の一枚である。

Esperanza Spalding『Radio Music Society』(写真左)。唄う女性ベーシスト、エスペランザ・スポルティングの3枚目のアルバムになります。2011年夏の録音。2012年3月のリリースになります。ジャンルとしては「コンテンポラリー・ジャズ」となっていますが、かなりポップス色の強いアルバムです。

タイトルを日本語にすると「流行音楽同好会」って感じになるかな。エスペランザの言を借りると「ジャズ・ミュージシャンがいわゆる“ポップ・ソング”のフォーマットに近く分類される曲の形式やメロディを探求していくもの」だそうです。

まあ、簡単に言うと、ジャズメンがポップ・ソングをやったらこうなった、という感じのアルバムです。冒頭から5曲くらいは、どう聴いてもジャズでは無い。アレンジ的にもジャジーな雰囲気は希薄で、これってもう、単純にコンテンポラリーな米国ボーカル・ポップスでしょう、って感じです。

半ばくらいから、ビッグバンドをバックにしたような、ゴージャスなジャズ・アレンジな曲も幾つか出てきますが、アルバム全体の雰囲気は、ジャジーなアレンジをベースに、ジャズをベースにしたポップスです。共同プロデューサーとしてヒップホップ界の巨人Q-Tipが参加していますが、あからさまにヒップホップな演奏はありません。
 

Radio_music_society

 
ジャズという音楽ジャンルは裾野が広く、様々な他ジャンルの音楽要素を取り込み、そのバリエーションを広げ深めていった。が、あくまで、底に流れるリズム&ビートはジャジーであり、ファンキーである。そのジャジーであり、ファンキーなリズム&ビートが底に流れているが故に、その音世界は「ジャズ」というジャンルで語られるのだ。

しかし、このアルバムはどうなんだろう。少なくとも、このアルバムの底に流れるリズム&ビートについては、ジャジーな雰囲気は希薄であり、ファンクネスは軽くて乾いている。ボーカルもかなりポップな雰囲気であり、ジャズ・ボーカルのようなコクと粘りは無い。

確かに、「流行音楽同好会」と銘打っているだけに、優れた聴き易いポップスな雰囲気は、収録されたどの曲にも満載。12曲中の10曲が Esperanza による作詞・作曲。コード進行などは意外と複雑で、それでいて、聴き易いポップ性をねらっている感じの曲が多い。聴き易く、格好良くて今風。現代のポップスといては極上の出来と言えよう。

しかし、これを「ジャズ」と解釈するにはちょっとしんどい。ジャジーなアレンジを施した曲も何曲かはあるが、その曲だって、ポップス色優先な音作りである。これを「ジャズ」とするなら、ジャジーなアレンジを施したポップス曲はすべて「ジャズ」になってしまう(笑)。

家でお店で何かをしながら聴き流すには、実に心地良い、とても良く出来たアルバムだと思います。しかし、リーダーのジャズメンの成果として、その音世界と対峙して、シビアに聴き込むという類の、所謂「コンテンポラリー・ジャズ」な雰囲気ではありません。

ジャズを期待するとちょっと困ったちゃんなアルバムですが、ジャジーな極上ポップスとして聴くなら、かなり優れた好盤の一枚だと思います。
 
 
 
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2010年6月19日 (土曜日)

美人ベーシストの出現である

ジャズはまだまだ進化している。ジャズは、まだまだバリエーションが深化している。そして、この5〜6年、女性ジャズ・ミュージシャンの台頭が著しい。これは何も日本に限ったことではない。米国でもその傾向にある。

エスペランサ・スポルディング(Esperanza Spalding)。ベーシストである。先入観無く聴いたのだが、強靱なビート、歌うようなベースライン、モードもコードもなんでもござれ。それでいて、そこはかと無い繊細感。その繊細感が何故か気になる、う〜ん、と思いながら、アルバム・ジャケットを見て至極納得。

そのアルバムとは、エスペランサ・スポルディングのデビューアルバム『Junjo』(写真左)。そのベーシストの横顔たるや、いやはや、かなりの美人ベーシストと見た。う〜ん、やっと21世紀になって、遂に出てきたのか、女性ジャズ・ベーシストが・・・。しかも、かなりの実力者である。う〜ん、時代が変わりつつあるなあ。繊細感は女性ならではの資質から来るものだったのか〜。

このアルバムの内容はなかなか充実している。エスペランサ・スポルディングは歌も歌える。スキャットも正統な歌唱もOK。歌えるベーシストである。この歌の部分もなかなかの才能なのだ。う〜ん面白い。しかも、ベース自体のテクニックも本格的。

アルバム冒頭の「The Peacocks」を聴くと、現代のジャズ、コンテンポラリーなジャズをしっかりと感じる事が出来る。まず、演奏の質がしっかりしている。というか、かなり先進的な内容をしているところが「ミソ」。音が新しい。ベースのビートが先頭を走りながら、次々と出てくるフレーズは新鮮な響きがする。 
 

Spalding_junjo

 
このバンドの、そして、リーダーの才能が十分に発揮される演奏が、3曲目の「Humpty Dumpty」。チック・コリアの名曲を、しっかりとその曲の個性を引継ながら、自分達の音を織り交ぜつつ、実に新鮮に響かせてくれている。この冒頭の1曲目から3曲目までの演奏を聴いて、このエスペランサ・スポルディングの作編曲面については、チックのフォロワーであることを感じさせてくれる。

ボーカルとは言っても、スキャット中心なのですが、唯一、ちゃんと歌っているのが、7曲目『Cantora De Yala』は、 スポルディングのベースのみの弾き語り(!)による、暖かな日だまりの様な、ほんのり暖かで、芯はしっかりと通った、意外と硬派な内容。ジャズ・ベーシストの弾き語りは、僕は初めて体験しました。スキャットについては、ジャコ・パストリアス御大の前例があるんですが・・・。

最近、最新のコンテンポラリーなジャズを感じさせてくれる佳作です。実は密かに最近感じているのですが、作編曲を中心に、チック・コリアのフォロアーが出始めているのではないかと。特に、女性ジャズ・ミュージシャンにその傾向が強い。チック・マニアの私にとっては実に良い傾向ですね。やはり、良いものは良い。これからもどんどん増えてくるのではないか、と睨んでいます。

アルバム・ジャケットの横顔写真が実に良い雰囲気を伝えてくれています。ジャケット良し、内容良し。美人女性ジャズ・ミュージシャンということを全く無視して、純粋に新進ジャズ・ベーシストとして、作編曲家として、エスペランサ・スポルディングは期待の新人といえるでしょう。これからが楽しみです。 
 
 
 
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