ハービー・マンのヒット作ライヴ
ジャズの世界で、ソロ演奏にあんまり向かないフルートを専門楽器に、数々の名演を残した、ジャズ・フルート演奏家の一人がハービー・マン。
フルートという楽器は、音色が甘く、音の強弱・濃淡がつけにくくて、演奏の幅とバリエーションが限定されてしまう傾向にあり、ジャズの世界では、あんまり、ソロ演奏に向かない楽器。
ただし、フルートは、息をちょっと強く吹くことで、エモーショナルで、ファンキーな音色を出すことができる。この「エモーショナルで、ファンキーな」フルートの音色の特性を最大限に活かして、コテコテの「ファンキー&ソウル・ジャズ」で勝負したのが、ハービー・マンである。
『Herbie Mann at the Village Gate』(写真左)。1961年11月17日、NYのライブ・スポット「ヴィレッジ・ゲイト」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Herbie Mann (fl), Hagood Hardy (vib), Ahmed Abdul-Malik (b), Ray Mantilla (conga, perc), Chief Bey (african-ds and perc), Rudy Collins (ds)。冒頭1曲目の「Comin' Home Baby」にだけ、作曲者のBen Tucker (b) が追加で入っている。
この邦題『ヴィレッジ・ゲイトのハービー・マン』は、僕がジャズを本格的に聴き始めた1970年代後半、マンの圧倒的な「代表的名盤」とされていた。しかし、僕は、ジャズを本格的に聴き始めた頃は、担当楽器が「フルート」というだけで敬遠。このライヴ盤を初めて聴いたのは、1990年代に入ってから。代表的名盤というだけに、ワクワクしながらCDプレイヤーのスイッチを押した。
と、冒頭の「Comin' Home Baby」のイントロから「あれれ」。静かなベース・ソロから始まり、抑制の効いたドラムが加わる。出てくるリズム&ビートは、熱量は温和、雰囲気は爽やかなファンキー・ビート。録音年は1961年、まだ、ファンキー・ジャズの「ノリノリの娯楽性」は発展途上だった様である。
聴く前は、ホットでノリノリなコテコテのファンキー・ジャズをイメージしていたのだが、意外と大人しくて温和な、聴きやすくて爽やかなファンキー・ジャズが出てきたので、ちょっと戸惑う。
マンのソロも、そこはかとなくファンキーではあるが、熱量は温和、雰囲気は爽やかで聴きやすいフルートを吹き進める。そう、この『ヴィレッジ・ゲイトのハービー・マン』に入っているファンキー・ジャズって、熱い演奏、思いっきりノリノリのコッテコテなファンキー・ジャズではなくて、どこか爽快感溢れる、聴き心地の良い、イージーリスニング志向のファンキー・ジャズでなのだ。
しかし、続く、有名スタンダード曲の「Summertime」におけるハービー・マンのフルートが凄い。演奏の雰囲気は、そこはかとなくファンキーではあるが、熱量は温和、雰囲気は爽やかで聴きやすいファンキー・ジャズなのだが、そんな爽やかなファンキー・ビートに乗って、マンのフルート・ソロが炸裂する。
特に、アドリブ展開におけるマンのフルートのパフォーマンスは絶品。マンのフルートの実力を遺憾無く発揮している。この「Summertime」の存在が、この盤をマンの代表作の一枚としている、と言い切って良いくらいの絶品パフォーマンス。
ラストの、これも有名スタンダード曲の「It Ain't Necessarily So」については、約20分弱の長尺ライヴ・パフォーマンスなんだが、真ん中あたりで、長々とベース・ソロが流れる。これが、音が小さくて、ベース音が聴き取り難く、ノリも良くない。
録音年は1961年なので、エレべはまだ一般的で無く、アコベ一本で、コッテコテなファンキー&ソウルフルなベース・ソロを展開するのは無理がある。この部分の冗長さが惜しい。ここはちょっと短く編集した方が良かったと思う。
この『ヴィレッジ・ゲイトのハービー・マン』は、マンの圧倒的な「代表的名盤」、ファンキー・ジャズの「代表的名盤の一枚」とされているが、マンのジャズ・フルートとしてのパフォーマンスが優れているが、ファンキー・ジャズとしては、ちょっと物足りなさが残る。
しかし、このライヴ盤はヒットした。そして、マンは、「エモーショナルで、ファンキーな」フルートの音色の特性を最大限に活かして、コテコテの「ファンキー&ソウル・ジャズ」を推し進めていく。
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