2024年5月19日 (日曜日)

A&Mレコードのナシメント

A&Mレコードの 3000 series のカタログを見渡していて、感心するのは「ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)の存在である。

A&Mレコードは、ハードバップ時代から第一線で活躍してきたジャズマンを重用、一流ジャズマンで固めたリズム・セクション、そして、バックに豪華なジャズオケやオーケストラを配備して、「上質でコンテンポラリーなイージーリスニング志向のジャズ」を目指していた。

しかし、である。その傍らで、ジャズの本質の一つである「融合」をキーワードに、ブラジル音楽と「上質でコンテンポラリーなイージーリスニング志向のジャズ」との融合を図っている。しかも、「ブラジルの声」と言われるミルトン・ナシメントを起用して、である。これには、総帥プロデューサーのクリード・テイラーの慧眼として、今でも感心する。

Milton Nascimento『Courage』(写真左)。1968年12月、1969年2月の録音。A&Mレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Milton Nascimento (vo, g), Herbie Hancock (p), Eumir Deodato (org, arr, cond), Jose Marino (b), João Palma (ds), Airto Moreira (perc) がメイン・メンバー。ベースとドラムのリズム隊はブラジル系。そして、豪華なオーケストラがバックにつく。いかにもA&Mレコードらしいパーソネルである。

アルバムは、メジャーへのデビューのきっかけとなった「Bridges (Travessia))」で幕を開け、続くは「Vera Cruz」。温和なアコギとクールなストリングスに、ナシメントの澄んだボーカルが融合した、耽美的なワールド・ミュージック風の美曲に思わず耳を奪われる。
 

Milton-nascimentocourage

 
3曲目「Tres Pontas」と、ラス前「Catavento」は、軽やかで爽快なフルートが絡むソフトでライトなサンバ曲。4曲目「Outubro」と8曲目「Morro Velho」は、これもワールド・ミュージック志向の幻想的な幽玄な曲。祈るようなスキャットが印象的な、6曲目「Rio Vermelho」など、ミルトン・ナシメントでしかなし得ない、唯一無二の音世界が全編に渡って展開されている。

米国マーケット向けに、ブラジル音楽の「アク」を上手にすくい取った、デオダートの考えたアレンジが、クロスオーバー・ジャズっぽい雰囲気を醸し出している。

即興演奏という点では「ニュー・ジャズ」と捉えることができる。ブラジルの大地や風を感じさせる繊細かつ壮大な音世界については、もはや「ワールド・ミュージック」と捉えても良いかもしれない。しかし、このナシメントの音世界は、広く捉えて「ジャズ」である。

こんなジャンルレスの「融合」なナシメントの音世界を、A&Mレコードの「上質でコンテンポラリーなイージーリスニング志向のジャズ」として捉え、この様な、ブラジル音楽と「上質でコンテンポラリーなイージーリスニング志向のジャズ」との融合の成果としてアルバム化し、リリースしたA&Mレコードは、素晴らしい仕事をした、と今でも感心することしきり、である。
 
 

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2024年5月18日 (土曜日)

A&Mの作るボサノヴァ・ジャズ

A&Mレコードの 3000 series の諸作は、リーダーを務めるジャズマンについては、錚々たるメンバーである。ハードバップ時代から活躍してきたジャズマンが、こぞって、このA&Mレコードの目指す「上質でコンテンポラリーなイージーリスニング志向のジャズ」を実現する為に集ってきた。

バックを司るサイドマンも、ハードバップ時代からの一流どころが参加していて、若手のスタジオ・ミュージシャンにまじって、しっかりと存在感をアピールしている。皆、一流どころなので、テクニックは優秀、出てくるフレーズには歌心が溢れていて、演奏自体、内容があって、水準以上のレベルでのパフォーマンスを発揮している。当然、名盤、好盤の類のアルバムが目白押しである。

Walter Wanderley Set『When It Was Done』(写真左)。1968年12月の録音。A&Mレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Walter Wanderley (org, el-harpsichord), José Marino (b), João Palma (ds), Lu Lu Ferreira (perc) がメイン・メンバーで、バックにオーケストラが入っている。

ブラジル出身のオルガン奏者、ウォルター・ワンダレイのリーダー作、ボサノヴァ・ジャズの名曲集になる。ワンダレイといえば「ボサノヴァ・オルガンの第一人者」と言われる。ブラジル出身のオルガニストであるが故、ボサノヴァの本質を突いたオルガンを弾きまくる。
 

Walter-wanderley-setwhen-it-was-done  

 
ボサノバはムード音楽では無い、ボサノヴァの本質は「サウダージ(郷愁、哀愁)」にある、意外と硬派な音楽なのだが、その辺りをワンダレーは、しっかり踏まえて、硬派で甘さに流れない、正統派な「コンテンポラリーなボサノヴァ・ジャズ」を展開している。

電子ハープシコードの音が、ちょっとチープな響きで気になるが、概ね、ワンダレイのキーボードについては、耳当たりは良いが、結構切れ味良く尖っていて、アルバム全体の雰囲気をグッと締めていて聴き応えがある。

バックのオーケストラは、あくまで、ワンダレイのキーボードの引き立て役。ベース、ドラム、パーカッションのリズム隊は、ボサノヴァのリズム&ビートを的確にワンダレイのキーボードに供給している。

演奏全体のリズム&ビートを含め、ボサノヴァ・ジャズとして破綻は全く無い。逆に、ボサノヴァのリズム&ビートに乗った、ワンダレイのオルガンは切れ味良く、真摯で迫力がある。決して、ムード・ジャズのオルガンでは無い。ワンダレイは「ボサノヴァ・オルガンの第一人者」と言われていたことを再認識する。

各曲毎のドン・セベスキーのアレンジも、ボサノヴァ・ジャズという特性を良く把握した、優れたアレンジで、アルバム全体の雰囲気をしっかりと引き締めている。

このワンダレイの『When It Was Done』は、A&Mレコードの「上質でコンテンポラリーなイージーリスニング志向のボサノヴァ・ジャズ」。さらに、ボサノヴァ・ジャズの名盤の一枚に上げても良い内容だと思う。
 
 

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2024年5月17日 (金曜日)

A&Mの ”カイとJ.J.” の名演

「K. and J.J. 」とは、ジャズ・トロンボーンの名手の二人、J.J.ジョンソンとカイ・ウィンディング。ハードバップ時代には「KAI & J.J.」というユニットを組んで、聴き心地の良いファンキー・ジャズの好盤を連発していた。その「KAI & J.J.」の再結成風のA&M盤。単なる「懐メロ同窓会」的雰囲気で終わるのではないか、という危惧を覚える。

K. and J.J. 『Israel』(写真左)。1968年2, 3, 4月の録音。A&Mレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、J. J. Johnson, Kai Winding (tb), Herbie Hancock (p), Ross Tompkins (p, harpsichord), Eric Gale, Bucky Pizzarelli (g), Ron Carter, Richard Davis (b), Grady Tate (ds) がメイン・メンバー。ここにハープ入りの管楽器メインのジャズオケがバックに入っている。

が、聴いてみると、まず、カイとJ.J.のトロンボーンが「イケる」。しっかりとしたテクニックで、しっかりとしたブロウで、しっかりとしたピッチでトロンボーンを吹きまくっている。トロンボーンのブラスの鳴りがスピーカーから伝わってくるほどのブリリアントなトロンボーンの響き。このカイとJ.J.の好調な「本気トロンボーン」の吹奏を聴くだけで、この盤は「懐メロ同窓会」的な企画盤で無いことが判る。

もともと、A&Mレコードの音作りが「上質なイージーリスニング志向のジャズ」を目指しているだけあって、この盤でも、特に、ハープ入りの管楽器メインのジャズオケのアレンジが優れている。陳腐なところは全く無い。とても良く練られた、ドン・セベスキーのアレンジである。
 

K-and-jjisrael

 
演奏自体のアレンジも良い。収録曲を見渡せば、「"My Funny Valentine」「Django」などの人気スタンダード曲あり、「Israel」「Am I Blue」「St. James Infirmary」などの渋いスタンダード曲あり、どちらも、一捻りしたアレンジが優秀で、「上質なイージーリスニング志向のジャズ」として、絶大な効果を発揮している。

「上質なイージーリスニング志向のジャズ」を目指しているからと言って、演奏自体が聴き心地優先の甘々な演奏では全く無い。それぞれの楽器のパフォーマンスは、とても充実している。それぞれの楽器担当の「本気」を感じる。

カイとJ.J.のトロンボーンのユニゾン&ハーモニー、そして、チェイス。これが、どの曲でもバッチリ効いている。とにかく、トロンボーン独特のユニゾン&ハーモニーが前面に出てくる。これがどれもが印象的に耳に響く。カイとJ.J.のトロンボーンのソロも良い。充実した本気な吹き回しで、ダレたところは微塵も無い。本気で聴かせるジャズ・トロンボーン。

ハンコックのピアノもそこはかとなくファンキーで、カイとJ.J.のトロンボーンを引き立てる。伴奏上手のハンコックの面目躍如。ゲイルとピザレリのギター隊のリフ、カッティング、バッキングが小粋でこれまたファンキー。トロンボーンの柔らかな音色との対比が良い。

ロン、ディヴィスのベースはハードパップなウォーキング・ベースで、テイトの小粋で趣味の良いドラミングで、「上質なイージーリスニング志向のジャズ」のリズム&ビート支えている。

ハードバップ時代の「KAI & J.J.」の再結成盤。どうなることやら、と思いきや、当時の流行のど真ん中、ハードバップでファンキーでモダン、ジャズオケ+エレ楽器入りの「上質なイージーリスニング志向のジャズ」が展開されていて立派。とりわけ、カイとJ.J.のトロンボーンの、新鮮な「ハードバップ志向の力演」が印象に残る。
 
 

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2024年5月16日 (木曜日)

”A&Mのデスモンド” の傑作盤

故あって、A&Mレコードの3000 series のアルバムを聴き直している。A&Mレコードの3000 series の諸作は、クロスオーバー・ジャズの範疇だと思うが、それぞれのアルバムのパーソネルを見渡すと、大方、ハードバップ時代から活躍してきた一流ジャズマンを起用している。

ハードバップ時代から活躍してきた一流ジャズマンが、優れたアレンジに乗って、エレ・ジャズをバックに、ジャズオケをバックに、聴き心地の良い、聴き応えのある、イージーリスニング志向のジャズをやる。しかし、イージーリスニング志向だからと言って、聴くに優しい、甘々のジャズかと言えば、そうでは無い。

さすが、ハードバップ時代から活躍してきた一流ジャズマンである。それぞれの演奏のレベルは高く、一本しっかりと筋が通っている。意外と硬派な「イージーリスニング志向のコンテンポラリー・ジャズ」を展開しているから隅に置けない。特に、A&Mレコードの3000 series のアルバムを聴いてみると、それがよく判る。

Paul Desmond『Summertime』(写真左)。Paul Desmond (as), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Leo Morris = Idris Muhammad (ds) がコア・メンバー。ここに、曲毎にゲストが入る。主だったところでは、Mike Mainieri (vib), Joe Venuto (marimba), Airto Moreira (perc), ギターはリズム楽器に徹している。そして、ホーンがメインのジャズオケがバックに控える。アレンジは、Don Sebesky。

「Someday My Prince Will Come」や「Autumn Leaves」など、有名スタンダード曲が選曲され、レノン=マッカートニーの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」のカバーがあったりで、これだけで、甘々のイージーリスニング・ジャズと判断して聴くのを止めてしまうジャズ者の方もいるだろう。
 

Paul-desmondsummertime  

 
しかし、聴けば判るが、有名スタンダード曲については、耳新しい、新鮮なアレンジが施され、手垢が付いた感じが全くない。そんな優れたアレンジの下、デスモンドの柔らかで硬派なアルト・サックスが、唄うが如く、囁くが如くの素敵なフレーズを吹き上げる。

レノン=マッカートニーの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」のカバーだって、囁くが如くのテーマ部のアレンジも秀逸、アドリブ部については、メインストリーム・ジャズのど真ん中を行く、素晴らしいアドリブ・パフォーマンスを展開する。これは、イージーリスニング志向では全く無い。これは「純ジャズ」なアドリブである。

ラストの、これまた、有名スタンダード曲、タイトル曲の「Summertime」については、これが凄い。バックのリズム・セクションに、ハンコックのピアノ、ロンのベース、モリスのドラム。そこに、フロント1管で、デスモンドのアルト・サックス。そして、出てくる演奏は、ストイックな変拍子&モード・ジャズ。

ハンコックのモーダル・ピアノが迫力満点、そこに、ロンのベースが呼応するように追従する。モリス(イドリス・ムハンマド)のドラムが切れ味の良い変拍子を叩き出す。そこに、耳新しい、モーダルなアルト・サックスのデスモンドが吹きまくる。この『Summertime』は、立派な「メインストリームな純ジャズ」である。

全編に漂う雰囲気は「硬派なイージーリスニング志向のコンテンポラリー・ジャズ」、時々「メインストリームな純ジャズ」。収録曲の曲名見ると、ちょっと聴くのをためらってしまうかもしれないが、この盤、デスモンドの傑作の一枚だと思う。
 
 

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2024年5月13日 (月曜日)

マンの傑作盤『Glory Of Love』

フュージョン・ジャズの源はどの辺りにあるのだろう。僕は、1960年代後半、A&Mレコードの諸作が、その源の一つだと思っている。

A&Mレコードは、元々は1962年にハーブ・アルパートとジェリー・モスが設立したレコード・レーベル。ジャズのジャンルについては、ファンキー&ソウル・ジャズのエレ化をメインに、当時、ポピュラーな楽曲のカヴァーなど、ポップでジャジーなフュージョン・ジャズの先駆けな音作りで人気を獲得した。

Herbie Mann『Glory Of Love』(写真左)。1967年7, 9, 10月の録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。

Herbie Mann (fl), Hubert Laws (fl, piccolo), Ernie Royal, Burt Collins (tp, flh), Benny Powell (tb), Joseph Grimaldi (sax), Leroy Glover (p, org), Paul Griffin (p), Roland Hanna (org), Jay Berliner, Eric Gale (g), Ron Carter (b), Herb Lovelle, Grady Tate (ds), Teddy Sommer (vib, perc), Ray Barretto, Johnny Pacheco (perc), Earl May (b), Roy Ayers (vib)。

手練れの豪華絢爛なパーソネル。予算をしっかり充てた充実の録音セッション。出てくる音は、エレトリック&8ビートなファンキー&ソウル・ジャズ。アニマルズがヒットさせたポップス曲「The House of the Rising Sun」や、レイ・チャールズがヒットさせたソウル曲「Unchain My Heart」など、当時の流行曲を見事なアレンジでカヴァーしている。
 

Herbie-mannglory-of-love

 
ポップス曲のカヴァーと聞くと、イージー・リスニング志向のジャズか、と思うのだが、このマンのA&M盤は、演奏自体が実にしっかりしている。リズム&ビートは、切れ味良く、ジャジーでソウルフルでファンキー。このリズム・セクションのリズム&ビートはとても良く効いている。

そのジャジーでソウルフルでファンキーなリズム&ビートに乗って、ハービー・マンのソウルフルなフルートが、爽やかなファンクネスを湛えて飛翔する。「In and Out」でのヒューバート・ローズとのダイアローグはとても楽しげ。フランシスレイの「Love is stronger far than we」では、ムーディーなマンのフルートが印象的。この盤でのマンのパフォーマンスは素晴らしい。

当時のA&Mレコードのジャズについては「質の高いリラックス出来るBGM」がコンセプト。しかし、このマンのA&M盤はBGMどころか、イージー・リスニング志向のエレ・ジャズでも無い、ソウルフルでファンキーなコンテンポラリー・ジャズとして成立している優れた内容。

アルバム全体を覆う適度なテンション、切れ味の良いジャジーでソウルフルでファンキーなリズム&ビート。マンを始めとするソウルフルなフロント隊の演奏。この盤には、1960年代前半から進化してきた、ファンキー&ソウル・ジャズの成熟形を聴くことが出来る。ハービー・マンの傑作の一枚であり、最高傑作と言っても良いかもしれない。

クリード・テイラーの優れたプロデュースの下、アレンジも良好、録音はルディ・バン・ゲルダー手になる「良好な音」。この盤がほとんど忘れ去られた存在で、廃盤状態が長く続いている。実に遺憾なことであるが、最近、ストリーミングで聴くことが出来るようになったみたいで、これは喜ばしいことである。
 
 

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2012年7月16日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その8

いや〜今日は暑かったですね。気温が高い上に湿度が高い。最悪ですよね(笑)。この歳になると酷暑もストレスと感じるようで、なんだか一日体調が思わしくなかったですね。

さて、いよいよ本格的な夏到来。夏到来と言えば「ボサノバ・ジャズ」。今年も、「夏はボサノバ・ジャズ」と題した特集ブログを織り込んでいきますので、よろしくお願いします。

今日は「タンバ4(Tamba 4)」というボサノバ・ジャズ・グループを取り上げます。リーダーは、クラシック畑から飛び出したピアニスト、ルイス・エサ。1960年に前身となる「タンバ3(Tamba 3)」を結成。そして、1967年、ドリオ・フェレイラが加入し「タンバ4(タンパ・クアトロと読む)」を結成。

タンバ4のパーソネルは、Bebeto (fl,b,vo), Luiz Eca (p,org,vo), Dorio Ferreira (b,g,per,vo), Rubens Ohana (ds,jawbone,cga,vo)。タンバ 3でベースを弾いていたベベート・カスティーリョが、タンバ4では主にフルートを担当している。

この「タンバ4」の特徴は「フルート・カルテット」。フルートとピアノの絡みが実に印象的なカルテットで、そのフルートとピアノの絶妙な絡みは、ボサノバやサンバなど、ブラジリアン・ミュージックにピッタリ。加えて「ダイナミックなアンサンブル」。オーケストラの様なダイナミックなアンサンブルは、「タンバ4」の特徴です。ルイス・エサはクラシック・ピアノ出身であり、その辺がきっと影響しているのだと思います。
 

Tamba4_we_and_the_sea

 
その「タンバ4」の最初のアルバムが『We and the Sea』(写真左)、邦題は『二人と海』。1967年9月の録音。クロスオーバー・ジャズの時代の先駆け。音的には新しいボサノバ・ジャズの演奏。日本ではさっぱり注目されない、忘れ去れたボサノバ・ジャズ・グループという印象が強いが、内容的には再評価すべき、硬派で高度なボサノバ・ジャズが展開されている。

収録曲を見渡すと、6曲目の「Dolphin」がルイス・エサの作曲である以外は全て、ボサノバ名曲のカバーである。アントニオ・カルロス・ジョビンやバーデン・パウエル、ロベルト・メネスカルといったボサノバのアーティストの作品がズラリ。

ということで、このアルバムはボサノバ集なのか、と思いながら、冒頭の「O Morro (The Hill)」を聴くと、まずそのダイナミックでハードな演奏にビックリする。これがボサノバ・ジャズなのか。実にハードボイルドな演奏である。ボサノバの柔らかで癒しの音の面影は全くない。ここまでハードなボサノバ・ジャズだと逆に爽快感を感じる。「スカッと爽やか、タンバ4」。演奏の水準は高い。

2曲目以降も、基本的にはエッジの立ったハードタッチのボサノバ・ジャズが続くが、1曲目のダイナミズムはちょっと後ろへ下がって、グッと叙情的に。ベベトのフルートとルイス・エサのピアノの絡みは非常に美しく、それはもう惚れ惚れするような音世界である。

特に、2曲目の「Moa Flor (Flower Girl)」、4曲目「Nos e O Mar (We and the Sea)」は聴きものです。
 
 
 
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2011年1月27日 (木曜日)

CTIレーベルのケニー・バレル 『God Bless The Child』

昨日、デオダートやボブ・ジェームスが、1970年代前半から中盤にかけて所属した「CTIレーベル」について、ちょっと触れた。CTIレーベルとは何か。

CTIレコード(CTI Records)は、1967年、プロデューサーのクリード・テイラー(Creed Taylor)によって創設された、ジャズ・レコードレーベル。テイラーはジャズの大衆化を図るために設立し、クロスオーバー(フュージョンの前身)のブームを作った(Wikipediaより)。CTIとは「Creed Taylor Issue」の頭文字をとったもの。
 
CTIレーベルの特徴は、とにかく聴き易いアルバムが多いこと。ジャズ者初心者でもOKなアルバムばかりがズラリと並びます。それはアレンジャーの力に負うところが大きい。優れたアレンジャーの手によって、クラッシックや当時のヒット曲などを、ジャジーにキャッチャーに聴かせてくれるところが人気の秘密。大胆にストリングスやブラスセクションを導入したアレンジも、そのアレンジの特徴のひとつ。
 
そして、当時、新興のレーベルでありながら、ハードバップ時代に活躍した、純ジャズ系の一流のミュージシャンを積極的に取り込んで、フリージャズなどの判り難いジャズには目もくれず、もともとジャズの本質のひとつであった「大衆性」に重きを置いた、ジャズ者初心者にとっても聴きやすい、イージーリスニング・ジャズという分野を確立しました。
 
また、後に知ったことですが、録音エンジニアに、ブルーノート・レーベルの録音技師で有名なルディ・ヴァン・ゲルダーを迎え、録音も高品質で、オーディオ的にも優れたアルバムが多く、レコード・ジャケットのデザインも、ピート・ターナーが一貫して写真を担当、デザイン的にも統一感を図ることによって、CTIレーベル独特の個性を打ち立てました。
 

Kenny_burrell_godbless

 
CTIレーベルのアルバムについては、僕はほぼリアルタイムで体験することが出来、ジャズ者初心者の頃、本当にお世話になりました。特に、1970年代後半、一枚1500円の廉価盤シリーズが展開されたこともあり、とにかくCTIレーベルのアルバムは良く聴きました。
 
そんなCTIレーベルのアルバムの中で、これはCTIらしいというアルバムが幾枚かあります。バーチャル音楽喫茶『松和』で、CTIレーベルらしいアルバムを聴かせてよ、というリクエストに対しては、このアルバムを選択する機会が良くあります。Kenny Burrellの『God Bless The Child』(写真左)です。
 
ブルージーなバップ・ギタリストであるケニー・バレルの、CTIレーベルでの唯一のアルバムで、CTIオールスターキャストというべき豪華な共演陣との力作。1971年の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell(g), Ron Carter(b), Billy Cobham(ds), Freddie Hubbard(tp), Hubert Laws(fl), Hugh Lawson, Richard Wyands(p),Ray Barretto, Airto Moreira(perc), Arranged by Don Sebesky という豪華さ。
 
冒頭の「Be Yourself」に、そのCTIらしさが凝縮されている。ケニー・バレルのブルージーなギターの個性を最大限に全面に押し出しつつ、ゴージャスなストリングスのバッキングを配して、電気楽器を活かした、上質のクロスオーバー・ジャズが展開される。この「Be Yourself」の音こそが「CTIレーベル」の音と言っても良いだろう。
 
良く聴いて欲しい。CTIレーベルは、リーダーのミュージシャンの音の個性を最大限に表現する。総帥のクリード・テイラーのプロデュースが素晴らしい。聴き易いが、決してイージーリスニングな雰囲気に流れない。ハードバップ時代からの純ジャズ・ミュージシャンの個性を最大限に押し出すことで、CTIレーベルのアルバムは、ジャズとしての鑑賞に十分に耐える、クロスオーバー・ジャズを供給してくれる。
 
ジャケットもCTIレーベルらしいもので、一目見ただけで「CTIレーベル」と判るジャケット・デザインは、見ているだけでも楽しい。良いアルバムです。これはCTIらしいというアルバムのひとつ。「ミッドナイト・ブルー」と称されるケニー・バレルのギターを、ストリングを配したゴージャズなアレンジと共に堪能して下さい。ジャズ者初心者の方々にもお勧めの一枚です。
 
 
 
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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
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    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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