2024年4月26日 (金曜日)

コズミックな「融合」ファンク

レコード・コレクターズ 2024年5月号の「【特集】フュージョン・ベスト100 洋楽編」を読んでいて、しばらくその名前に触れることの無かった、お気に入りのジャズマンの幾人かを思い出した。感謝である。

Lonnie Liston Smith(ロニー・リストン・スミス)。米国リッチモンド出身のピアニスト&キーボーディスト。大学卒業後、プロの道を進み、サンダースやブレイキー、カーク、バルビエリ、マイルス等と共演。1973年にロニー・リストン・スミス&ザ・コズミック・エコーズを結成し、1973年、ロニー・リストン・スミスとしての初リーダー作をリリース。83歳になった今でも、未だ現役である。

演奏内容の範疇としては、ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク、クロスオーバー&フュージョンだが、その音世界は独特。コズミック・ファンクとでも形容できる、宇宙の広がり&浮遊感を反映した様な、切れ味良く粘りのない、シュッとしてクールでグルーヴィーな「融合」ファンク・サウンドが基本。そのコズミックでクロスオーバー&フュージョン・ファンクなサウンドに、ソウルフルなローズやエレピの音が絡む。

Lonnie Liston Smith『Expansions』(写真左)。1974年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Lonnie Liston Smith (p, el-p, Rhodes, el-key-textures), Donald Smith (fl, vo, vo-textures), Dave Hubbard (ss, ts, alto-fl), Cecil McBee (b), Art Gore (ds), Michael Carvin (perc, clavinet, ds), Leopoldo Fleming (bongos, perc), Lawrence Killian (congas, perc)。「Lonnie Liston Smith and the Cosmic Echoes」名義の3枚目のアルバム。

ロニー・リストン・スミスの「コズミックでクロスオーバー&フュージョン・ファンク」なキーボード、セシル・マクビーのファンキーでグルーヴィーなベース、スミスの弟のドナルド・スミスの幽玄なフルートとソウルフルなヴォーカル、そして、バックのリズム&ビートに、アフリカンなパーカッションを融合した、スピリチュアルな「コズミックでクロスオーバー&フュージョン・ファンク」の傑作盤である。

宇宙の広がり&浮遊感を反映した様な、切れ味良く粘りのない、シュッとしてクールでグルーヴィーなロニー・リストン・スミスのエレピ&ローズの音がこのバンドの音世界を決定づけている。
 

Lonnie-liston-smithexpansions

 
バックのリズム&ビートは、マクビーのサラッとした粘らないファンクネスを宿したベースがソウルフルな雰囲気を増強し、ゴアの切れ味の良い、躍動感溢れるシンプルなドラミングがバンド独特のグルーヴ感を醸成する。

コズミックなサウンド志向とは言いながら、不思議と牧歌的でフォーキーなビート&サウンドの広がりもあって、それまでのソウル濃厚、精神的な響き優先のスピリチュアルなジャズとは音の雰囲気が全く異なる。どちらかと言えば、現代の「静的なスピリチュアル・ジャズ」のサウンドに繋がる、先進的な音の雰囲気を感じる。

冒頭のタイトル曲「Expansions」はジャズ・ファンクの名曲。宇宙の広がり&浮遊感を反映した様な、切れ味良く粘りのない、シュッとしてクールでグルーヴィーな「融合」ファンク・サウンドがこの曲に詰まっている。2曲目「Desert Nights」と4曲目「Voodoo Woman」はモーダルなアドリブ展開がユニークな、意外とメインストリーム系のジャズ・ファンク。

3曲目「Summer Days」と7曲目「My Love」はアフリカンなリズムにラテンのリズムを融合したブラジリアン・ジャズ志向のフォーキーなサウンド。そして、5曲目「Peace」は、コズミック・サウンド志向が似通った、ホレス・シルヴァー作のミュージシャンズ・チューンのカバー。

この盤に詰まっているサウンド十把一絡げにフュージョン・ジャズとするには、ちょっと短絡的かと思う。ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンクを源とし、コズミックなサウンドを独特な個性とした、切れ味良く粘りのない、シュッとしてクールでグルーヴィーな「クロスオーバー&フュージョン・ファンク」と形容したら良いだろうか。

この盤の冒頭のタイトル曲「Expansions」をはじめ、レア・グルーヴ~アシッズ・ジャズ・ムーヴメントに多大な影響を与え、今なおヒップホップのサンプリング・ソースやダンス・フロアーを盛り上げる「ネタ」となっている「Lonnie Liston Smith and the Cosmic Echoes」の音が、このアルバム『Expansions』に詰まっている。傑作です。
 
 

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2019年9月14日 (土曜日)

良好なフュージョン・ファンク

しばらく「純ジャズ」の話題が続いた。ここヴァーチャル音楽喫茶『松和』は、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズも得意分野。しばらく、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの話題を。今日から暫く「マイルス・スクールの門下生」の好盤を聴き直していきたい。

まずは「Lonnie Liston Smith(ロニー・リストン・スミス)」。1940年12月の生まれ。米国ヴァージニア州リッチモンド出身。1970年代、独自のスピリチュアルなフュージョン・ファンクを展開した。1973年から74年にかけて「Miles Davis/マイルス・デイヴィス」のアルバム「On The Corner」「Big Fun」などに参加。しっかり「マイルス・スクール」の門下生である。

Lonnie Liston Smith & The Cosmic Echoes『Expansions』(写真)。1975年の作品。ロニー・リストン・スミス自身のグループ、コズミック・エコーズを従えての3枚目アルバム。お得意のスピリチュアルなフュージョン・ファンク。当時は「コズミック・ファンク」と形容された。浮遊感のあるエレピと随所に挿入されるキラキラした音が、星のまたたく宇宙を想起させるから、とのこと。はぁ?
 
 
Expansions  
 

 当時の「コズミック・ファンク」の形容はともかく、内容的には上質のフュージョン・ファンク。しかも、このフュージョン・ファンク、リストン・スミスのエレピ以外はアコースティックの楽器で構成されていて、後のフュージョン・ジャズに欠けていった「人間味」というか、音の「温かみ」がこの盤には残っている。マイルス仕込みの硬派なブラック・ファンクではあるが、なんとなく心も安らぐ。

リストン・スミスはエレクトリック・キーボードの扱いが上手い。出だしのタイトル曲「Expansions」のアープのストリングシンセに時代を感じるのだが、今の耳で聴いても、なかなか味のあるシンセだ。「Voodoo Woman」のグルーヴ感は半端ない。この盤が「レア・グルーヴ定番アルバム」と評価されているのも頷ける。「Peace」のソウルフルな味付けも隅に置けない。

このリストン・スミスの盤を聴いていると、やっぱり「マイルス・スクール」の門下生の音やなあ、と思う。マイルスのエレクトリック・ジャズ・ファンクに、リストン・スミスの個性を反映させて、自らのアルバムとして成立させている。浮遊感とグツーブ感濃厚なキーボード・ワーク。そして、エレクトリック・キーボードの扱いの上手さ。聴き応えのある好盤である。
  
 
 
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