2024年1月25日 (木曜日)

John Patitucci Trio の秀作です

ジャズ盤の鑑賞については、昔のハードバップやモードを聴くこともあるが、最近の、現代のジャズの新盤も努めて聴く様にしている。1970年代においては「ジャズは死んだ」として、現代のジャズはジャズで無い、とし、コルトレーン逝去前のジャズをジャズとして、1950〜60年代のジャズしか聴かないジャズ者の方々もいたみたいだが、それはかなり極端な見解だろう。

21世紀に入った現在から以前のジャズを聴き直すと、コルトレーン逝去後もジャズは「進化」、やっと1980年代に入って、さすがにジャズの世界では「イノベート」な何かは生まれ出なくなった。

しかし、それまでのジャズのトレンドやスタイルを捉え直して、現代のジャズは「深化」している。以前のトレンドやスタイルをグイグイ掘り下げて、完成度を高め洗練し、新しい解釈を添加する。そんな「深化」は未だに途絶えることは無い。

『John Patitucci Trio: Live in Italy』(写真左)。2022年の夏、イタリアツアーでのライヴ録音。なみにパーソネルは、John Patitucci (b), Chris Potter (sax), Brian Blade (ds)。現代のジャズ・ベースのヴァーチュオーゾの一人、ジョン・パティトゥッチのリーダー作。パーソネルを見れば、フロント一管・サックス、ベース、ドラムのピアノレス・トリオ。

もともと、ジャズ・ベーシストのリーダー作はその数が少ない。もともとリズム・セクションで、バンドの演奏の「ベースライン」を守る楽器。フロント楽器の様な旋律楽器では無いので、バンド演奏の前面に押し出たリーダーとしては振る舞い難い。そんな、数が少ないベーシストのリーダー作であるが、そのリーダー作の内容的傾向は幾つかに分かれる。

リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケース。もう一つは、ベーシストとしてのテクニックの高さを全面的に披露するケース。そして、リーダーとして、グループ・サウンズを統率する役割に徹するケース。
 

John-patitucci-trio-live-in-italy

 
今回のパティトゥッチのリーダー作は、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースと、ベーシストとしてのテクニックの高さを全面的に披露するケースのハイブリッド。

ピアノレス・トリオの特性を最大限活かした、ネオ・ハードバップ&ネオ・モード。決して、1950年代から60年代のハードバップやモード・ジャズの焼き直しでは無い。

このピアノレス・トリオの演奏は、基本はモードだが、出てくるフレーズはどれもが新鮮。ベースもドラムもサックスも、躍動感が溢れ、変幻自在、活き活きしたパフォーマンスが全編に渡って繰り広げられている。

パティトゥッチのベースが凄く良い。ジャズの歴代のレジェンド・ベースマンのパフォーマンスに匹敵する素晴らしいウォーキング・ベース、そして、ベースソロ。タイトでソリッドでメロディアスなアコベ。バンド全体の一体感を醸し出す説得力あるアコベ。

ブライアン・ブレイドのドラムがこれまた凄く良い。ブレイドの変幻自在、緩急自在、硬軟自在のドラミングが映えに映える。このピアノレス・トリオの躍動感を一手に引き受けている様な、ポジティヴでアグレッシブで「小粋な」ドラミング。

そして、そんなパティトゥッチのベースとブレイドのドラムをバックに、クリス・ポッターのサックスが飛翔する。これだけレベルの高い、味のあるリズム隊をバックに吹くのだ。イマージネーション豊かに、バリエーション豊かに、自由自在に、在らん限りの様々なフレーズを吹き上げる。

ライヴ音源だけに演奏の躍動感もビンビンに伝わってくる。録音当時、63歳の大ベテランの域に達したパティトゥッチの成熟した、新鮮な響きに満ち溢れた好盤。現代のモダン・ジャズ、現代のネオ・モーダルなジャズが単純に楽しめる秀作。
 
 

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2023年11月15日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・269

クリス・ポッター(Chris Potter)。米国シカゴ出身、1971年1月1日生まれ。今年で52歳になる、ジャズ・サックス奏者の中堅。純ジャズのみならず、フュージョン、ファンク的なアプローチにも長けている、オールマイティーなサックス奏者だが、やはり、メインストリーム系の純ジャズを吹かせたら、現代ジャズ・サックス奏者の先頭集団に値するパフォーマンスを披露してくれる。

Chris Potter『Got the Keys to the Kingdom: Live at the Village Vanguard』(写真左)。2022年2月、ニューヨークのライヴ・ハウス「The Village Vanguard」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Chris Potter(ts), Craig Taborn (p), Scott Colley (b), Marcus Gilmore (ds)。ポッターのテナーがワンホーン・フロントの、いわゆる「ワンホーン・カルテット」編成。演奏楽器もしっかり「アコースティック」のみで編成されている。

ワンホーン・カルテットのパフォーマンスは、フロント1管の演奏内容が聴き取り易い。この盤では、フロント1管の、ポッターのテナーのパフォーマンスの内容をじっくりと味わい尽くすことが出来る。

加えて、本ライヴ盤は収録されている6曲全てがカヴァー、オリジナル曲は無い。ジャズ・スタンダード、アマゾン民謡、ボサノヴァ、静的なスピリチュアル・ジャズなどを演奏している。このオリジナル曲の無いライヴ音源というのは、アレンジ、楽曲の解釈、アドリブ展開の仕方などが、他のサックス奏者のライヴ・パフォーマンスと比較し易い。そのライヴ盤のリーダーが吹くサックスの力量と才能を推し量り易くなる。
 

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力感溢れる、高テクニックで悠然とブロウするポッターのテナーは実に魅力的。実に硬派でクールで歌心満載のポッターのテナーは、メインストリーム系の純ジャズでのパフォーマンスにおいて「映えに映える」。ポッターのテナーの力量と才能がハイレベルであることを十分に確認することができる。

ネオ・ハードバップな、ネオ・モーダルな正統派なテナーで、スタンダード曲やボサノバ曲を悠然とブロウし、テクニックを駆使して、アブストラクトな展開、フリーな展開にも対応する。高速フレーズも難なくこなす。圧倒的である。ポッターのテナーの優れたところは「オリジナリティー」を保持していること。コルトレーン風の吹き方をしそうな展開でも、ポッターはそうはならない。ポッター・オリジナルな展開を吹き上げていく。これは「見事」というほか無い。

バックのリズム・セクションも優秀。ECMでお馴染みのフリー〜スピリチュアル系、ミネソタ州ミネアポリス出身のピアニスト、クレイグ・テイボーン。お爺さんがロイ・ヘインズ、ヴィジェイ・アイヤーのトリオでドラムを担当するマーカス・ギルモア。ポッターと何作も共演しているお馴染みのベーシスト、スコット・コリー。このリズム隊が、適応力抜群なネオ・ハードバップなリズム&ビートを叩き出す。

クリス・ポッターのテナーは純ジャズにこそ、ネオ・ハードバップにこそ、最高に「映える」。そんな事実をこのビレバガでのライヴ盤はしっかりと伝えてくれる。ポッターのメインストリーム系のテナーを愛でるに最適な一枚。良いライヴ盤です。
 
 

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2023年10月20日 (金曜日)

コロナ禍明けのポッターの快作

最近、活躍している若手、もしくは中堅ジャズマンについて、聴いたことの無いジャズマンのリーダー作については、PCにストックしている。どこかでまとめて聴こう、と思っているのだが、これがまた、なかなかその機会が無い。ストックはどんどん溜まるばかりで、この秋から、計画的に聴き進めることを決意した。

クリス・ポッター(Chris Potter)。米国シカゴ出身、1971年1月1日生まれ。今年で52歳になる、ジャズ・サックス奏者の中堅。1993年に初リーダー作『Presenting Chris Potter』 (Criss Cross) をリリースして以降、ほぼ1.5年に一枚のペースで堅実にリーダー作をリリースしている。

逆にサイドマンとしての実績は多彩。僕は「クリス・ポッター」の名前を、スティーリー・ダンのアルバム『トゥー・アゲインスト・ネイチャー』のレコーディング・メンバーとして知った。クリス・ポッターは、純ジャズのみならず、フュージョン、ファンク的なアプローチにも長けている。

Chris Potter『Sunrise Reprise』(写真左)。2020年9月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Chris Potter (sax, cl, fl, sampler/key), James Francies (p, key), Eric Harland (ds)。クリス・ポッターにとって、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる隔離期間後にレコーディングした最初のアルバムになる。
 

Chris-pottersunrise-reprise

 
クリス・ポッターのリーダー作の「まとめ聴き」の一発目にこの盤を選んだのに理由は無い。サックス奏者がトリオでやる時、ピアノレスのトリオというのは良くあるケースなのだが、この盤は、ベースレスの「サックス、キーボード、ドラム」のトリオ編成。この編成のサックス奏者のリーダー作は僕は見たことが無い。それがこの盤を選んだ理由。恐らく、このユニークな編成の演奏を聴けば、ポッターの個性が判るかな、と思った。

シンセのコズミック的なサウンドをバックに、ポッターの印象的な力感溢れるブリリアントなサックスが飛翔する。抒情的な演奏がベースだが、丁々発止としたインタープレイが心地よいテンションを提供する。アップテンポで複雑難解なフレーズも、さもシンプルで判りやすいフレーズの如く、何事もないように吹き切るポッター。凄みすら感じる。

キーボードのジェームズ・フランシーズとドラムのエリック・ハーランドがまた良い。キーボードとドラムの濃密で多彩なバックングが全編に渡って素晴らしい。ポッターとインタープレイをやり合うことはあっても、決してポッターの前には立たない。常にポッターのサックスを引き立てるバッキング。素晴らしいテクニックと感覚である。

全編に渡って、現代のメインストリームな純ジャズ志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズが悠然と展開される。抒情的な演奏が悠然と展開されるのだが、キーボードとドラムのバッキングが尖っていて、適度なテンションのもと、ポッターのサックスやフルートも結構、尖っていて、スリリングとは言えないまでも、濃密濃厚な切れ味の良いパフォーマンスが心地よい。

良い内容の盤をクリス・ポッターのアルバム聴きの第一弾に選んだと思う。コロナ禍明けのクリス・ポッターの快作である。
 
 

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