ブルース以外の何物でもない。
オスカー・ピーターソンの『ハロー・ハービー』や、『シェークスピア・フェスティバルのオスカー・ピーターソン』を聴いていて、とてもジャジーでブルージーなギターを弾く「ハーブ・エリス」のリーダー作を聴きたくなった。そう言えば、しばらく聴いていない。そそくさとライブラリの中から、ハーブ・エリスのリーダー作を探し当てる。
Herb Ellis『Nothing but the Blues』(写真左)。1957年10月11日の録音。Verveレーベルからのリリース。ハーブ・エリスのセカンド・アルバム。ちなみにパーソネルは、Herb Ellis (g), Roy Eldridge (tp), Stan Getz (ts), Ray Brown (b), Stan Levey (ds)。
ギタリスト、ハーブ・エリスがリーダーのクインテット編成。リズム・セクションは、ピアノの代わりに、ハーブ・エリスのギターが入った「ピアノレスのクインテット編成」である。
タイトルを直訳すると「ブルース以外の何物でもない」。このタイトル通り、全編に渡って、コッテコテの「ブルース」基調のハードバップが鳴り響く。まず驚くのは、ハーブ・エリスのギターが思いっ切り「ブルース」しているということ。太い音、固いピッキングで、ブルースなギターを弾きまくる。男気溢れ、骨太で硬派なブルース・ギターを全編に渡って弾きまくる。
ピーターソンのバックで演奏する時は、ピーターソンのスインギーで疾走するピアノに合わせて、ゴリゴリとバップなフレーズを弾きまくるハーブ・エリスが、この盤では、ゆったりとした余裕あるリズム&ビートに乗って、こってこてブルージーなギターを弾きまくるのだ。これには、初めて聴いた時、ビックリした。とてもハーブ・エリスとは思えない。でも、このブルース・ギターって凄い。
サイドマンも意外性抜群。スイング・ジャズからの中間派トランペッターのエルドリッジ。オールド・スタイルのトランペットで、ブルースに即応している。味わい深い正統なブルース・トランペット。
そして、スマート&ハードバップなテナーのスタン・ゲッツ。スマートで流麗なテナーで鳴らしていたゲッツだが、まず、ゲッツとは判らないほど、ここでは思いっ切りブルースなテナーを聴かせる。こんなにコッテコテにブルースを吹きまくるゲッツはこの盤だけではないかしら。
バーニー・ケッセルやジョー・パス、ジム・ホール等と比べると、かなりの枚数のリーダー作をリリースしているにも関わらず、ただ、我が国ではアルバムが入手しにくいレーベルに偏っていたということもあって、ハーブ・エリスはかなり過小評価されている気がしている。
リーダー作の3分の2以上が、1970年代以降に偏っているかもしれないが、この1970年代以降のリーダー作にも優れた内容の好盤も沢山ある。この『Nothing but the Blues』を久し振りに聞き直して、改めてハーブ・エリスのギターに感心した次第。
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