2013年2月 7日 (木曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・19

ビッグバンド・ジャズの要はアレンジ。それもアンサンブルのアレンジ。そして、ユニゾン&ハーモニーのアレンジ。ソロイストのアドリブの自由度をしっかり確保しつつ、アンサンブルは心地良くアレンジされ、バシッと決まる。ビッグバンド・ジャズの快感である。

このアルバムを初めて聴いた時、アレンジって重要やなあ、思った。Manhattan Jazz Orchestra『Bach 2000』(写真左)。

我らがDavid Matthews(デビッド・マシューズ)率いるジャズ・オーケストラ、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ。名うての腕利きジャズメン達が集う、どうしようもなく「上手い」ビッグバンド。そんな、どうしようもなく「上手い」ビッグバンドが、クラシックの「音楽の父」バッハの楽曲を演奏する。

クラシックのジャズ化は「諸刃の剣」。アレンジ次第で素晴らしい出来にもなるし、チープで平凡な出来にもなる。ジャズは即興の音楽。譜面通りに演奏するクラシックの楽曲を、どうやってジャズの楽曲に仕立て直して演奏するか。アレンジされたアンサンブルとソロイストが展開するアドリブとの組合せ。クラシックのジャズ化の成否は「アレンジ」が握る。

しかし、そこは我らがデビッド・マシューズ。マシューズは、どんなジャンルの音楽もビッグバンドの素材にしてしまう豪腕の持ち主である。

マシューズのアレンジの特徴は、クラシックをジャズ風にアレンジするのでは無く、クラシックの楽曲の素材を取り込んで、全くのジャズ曲にアレンジしてしまうところ。演奏を聴いて、クラシックの楽曲をベースにしたのが判らない曲もある位だ。
 

Mjo_bach2000

 
このアルバム『Bach 2000』には、全くのジャズ曲に変身したバッハの名曲がズラリ。ちなみに収録された曲は以下の通り。

1.Toccata And Fuge
2.Air On The G String
3.Invention No.4
4.Kyrie
5.Menuet (A Lover's Concerto)
6.Siciliano
7.Fuge No.2

冒頭の「トッカータとフーガ」を聴けば、マシューズのアレンジの素晴らしさとジャズ・オーケストラの上手さが良く判る。確かに「トッカータとフーガ」と言われればそうか、と思うが、アンサンブルの展開部のところなど、全くジャズ化されている。それでも、キーの進行や旋律の展開は「トッカータとフーガ」を上手く踏襲しているのだから、我らがマシューズ、凄い。

2曲目は、かの有名な「G線上のアリア」である。が、この曲だけはジャズ化に失敗しているなあ。この曲はジャズ化に全く向かないバッハだろう。この難曲のジャズ化アレンジに挑んだ、マシューズのチャレンジ精神には敬意を表するが、やっぱり、この曲はあかんやろう。この曲だけは、このアルバムの中で「ご愛嬌」(笑)。

2曲目の「G線上のアリア」を除いて(笑)、他の演奏については、それはそれは格好良い演奏に痺れます。ビッグバンド・ジャズの要であるアンサンブルのアレンジ、そして、ユニゾン&ハーモニーのアレンジ、そんな格好良いアレンジを心ゆくまで楽しめます。ジャズ・オーケストラのブラスの響きも素晴らしい。

ビッグバンド・ジャズの楽しさをリラックスして感じることが出来る佳作です。クラシックが素材だからと言って避けることなかれ、です。
 
 
 
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Never_giveup_4

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2010年9月28日 (火曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・9

本業で疲れた。疲れた頭を解きほぐすには、パンチの効いた、あっけらかんとした「ビッグバンド・ジャズ」が良い。当ブログでシリーズ化している「ビッグバンド・ジャズは楽し」のシリーズ。今年の5月の終わりから、ちょっと中断していたが、本日再開である。

パンチの効いた、あっけらかんとした「ビッグバンド・ジャズ」。それも、難しいことを考えたり、難しい聴き方をしなくても良い、全く捻りの効いていない、全くの正攻法の、教科書のような「ビッグバンド・ジャズ」が良い。

ということで選んだアルバムが、Manhattan Jazz Orchestraの『Moanin'』(写真左)。マンハッタン・ジャズ・クインテットの総帥デビッド・マシューズ率いるマンハッタン・ジャズ・オーケストラの記念すべき第1弾。1989年8月の録音。パーソネルは、ビッグバンドなので書ききれないので割愛。

記念すべき第1弾だからかどうか判らないが、ズラリと並んだ、超有名な「大ジャズ・スタンダード曲」ばかり。ジャズ者ベテランの方々が見たら眉をひそめそうな、超有名なスタンダード曲が「てんこ盛り」の7曲。

1.Caravan
2.Moanin'
3.My Funny Valentine
4.Summertime
5.The Sidewinder
6.Big Apple Jam
7.Autumn Leaves

どうです、凄いでしょ(笑)。でも、さすがはデビッド・マシューズ御大。曲の特徴を活かしつつ、オーソドックスでありながら、従来のアレンジとは一味違う、パンチの効いた、スピード感溢れる、しっかりとジャジーな雰囲気をキープしたアレンジは実に個性的。それでいて、実に効き易く、判り易い。そして何より「格好良い」。
 

Mjo_moanin_3

 
マシューズのビッグバンド・ジャズのアレンジは「あまりに判りやすい」として評価されない向きもありますが、マシューズのアレンジほど、難しいことを考えたり、難しい聴き方をしなくても良い、全く捻りの効いていない、全くもって正攻法でオーソドックスな「判り易いアレンジ」はありません。僕は大好きです。

1曲目の「Caravan」の演奏を聴けば、そのマシューズのアレンジの特徴が良く判るかと思います。冒頭から超ハイテンポに飛ばしまくるビッグバンド。お馴染みのエリントン・ナンバーなんですが、実にモダンで、現代ジャズのトレンドをしっかりと織り込んで、時にハードバップ的に、時にコンテンポラリー的にビッグバンドをドライブしていくマシューズのアレンジが痛快です。

加えて、マシューズのビッグバンド・ジャズのアレンジの特徴は、ソロイストの演奏スペースがしっかりと用意されていること。クインテットでのアレンジをビッグバンドに拡げた様なアレンジで、ソロイストの演奏スペースが展開されます。どの曲でも、ソロイスト達が実に気持ちよさそうに、実にのびのびと自由にインプロビゼーションを展開していきます。

全編に渡って、ガッチリとパンチを効かせているのは、ルー・ソロフをはじめとするトランペットのアンサンブル。これが、このアルバムの演奏のそこかしこに、香辛料の様にピリリと効いています。高音の突き抜け感と迫力ある音圧は、マンハッタン・ジャズ・オーケストラならでは、です。

良いビッグバンド・ジャズです。ジャズ者初心者の方への、ビッグバンド・ジャズ入門盤としてもお勧め。ジャズ者ベテランの方々も、ズラリと並んだ、超有名な「大ジャズ・スタンダード曲」に怯まず、マシューズ御大の小粋なアレンジを楽しまれてはいかがでしょう。

ただ、アルバム・ジャケットのデザインは、ちょっとシンプル過ぎますね。惜しい(笑)。
 
 
 
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2010年5月29日 (土曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・8

さてさて、こじらせた風邪もやっと快方に向かいかけた、今日この頃。やっとパンチの効いたビッグバンド・ジャズを聴く気力が戻って参りました。ということで、今日のブログは、久しぶりに「ビッグバンド・ジャズは楽し」シリーズ。今日は第8回目。

今日は、ボーカル付きのビッグバンド・ジャズ。遠い昔より、ビッグバンドと言えば、ジャズ・ボーカルのバックを担い、そのゴージャズな響きと演奏をバックに、朗々と歌い上げるジャズ・ボーカルには、子供心にも心躍らせたものだ。

その「心躍らせる」ところは今も同じ。朗々と歌い上げるジャズ・ボーカルと、バックのジャズ・ビッグバンドとのせめぎ合い、コラボレートには今でも惚れ惚れとする。しかし、最近のジャズ・ボーカルはひ弱なものが多い。フルスロットルなジャズ・ビッグバンドを向こうに回して、堂々と渡り合える、ジャズ・ボーカルは本当に少なくなった。

そんな中、このアルバムは、従来からの、朗々と歌い上げるジャズ・ボーカルと、バックのジャズ・ビッグバンドとのせめぎ合い、コラボレートを心ゆくまで楽しめるアルバムである。

そのアルバムとは、Charito With Manhattan Jazz Orchestraの『Nica's Dream』(写真左)。2006年2月の録音。ボーカリストのCharito(チャリート)のボーカルが凄まじい。朗々としたボリュームで、ガンガンに歌い上げていくのだ。緩めることは無い。可愛い子ぶることも無い。堂々と朗々とアルバム全曲に渡って歌い挙げている。

これだけ、フロントの女性ボーカルが堂々と朗々とガンガンに歌い上げてくれるのならば、バックのビッグバンド側としては非常にやり易い。フロントのボーカルに対して手加減することなく、フルスルットルで、ビッグバンドをドライブすることが出来る。しかも、このバックのビッグバンドは、そのテクニック、演奏内容、アレンジ、どれをとっても超一流かつ優等生的なビッグバンド、Manhattan Jazz Orchestraである。その迫力たるや素晴らしい。
 

Charito_nicas_dream_2

 
冒頭のタイトル曲「Nica's Dream」を聴くだけで、それを実感できる。チャリートのボーカルの堂々とした朗々とした、音量ある歌いっぷり。そして、その堂々とした歌いっぷりに応える様に、フルスロットルで、バンバンにドライブしまくっていく。ボーカルが凄いとバックのビッグバンドも凄くなる。こんなに「ど迫力」な、ジャズ・ボーカル+ビッグバンドの演奏を久しぶりに聴いたような気になる。

選曲が面白い。従来のジャズ・スタンダードと、1970年度以降のロックやR&Bの名曲を素材にしたニュー・ジャズ・スタンダードとが上手い具合にミックスされていて、最後まで、聴く者を飽きさせない。ちなみに収録曲は以下の通り。

1. Nica's Dream
2. Superstition
3. Caravan
4. Sunday Morning
5. Sir Duke
6. Dance Of Love
7. Against All Odds(Take A Look At Me Now)
8. The meaning Of The Blues
9. Just The Way You Are
10.Master Blaster(Jammin')
11.I'll Make Love To You

スティービー・ワンダーの初期のヒット作「Superstition」、これまたスティービーの十八番「Sir Duke」、「Master Blaster(Jammin')」フィル・コリンズの「Against All Odds(Take A Look At Me Now)」、ビリー・ジョエルの「Just The Way You Are」など、1970年度以降のロックやR&Bの名曲を素材にしたニュー・ジャズ・スタンダードの出来が実に良い。やっと、ニュー・ジャズ・スタンダードの可能性を感じた次第です。

そして、やはり、Manhattan Jazz Orchestraの総帥、デビッド・マシューズのアレンジとプロデュースが秀逸です。とにかく判り易い、とにかくシンプルに、ジャズ・ビッグバンドの楽しさを僕たちに届けてくれています。

ちなみに、チャリートは、日本在住のベテラン実力派ジャズヴォーカリストなんですね〜。チャリートのレパートリーの幅も広く、チャリートの正統派ボーカルのお陰で、ジャズ・ビッグバンドの楽しさが堪能できる。そんな、ジャズ者初心者からジャズ者ベテランまで、ジャズ者であれば、どんなレベルの方々も、それぞれレベルでの楽しみ方が堪能できる。ジャズ・ボーカルとバックのジャズ・ビッグバンドの優秀盤だと思います。 
 
 
 
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2010年2月23日 (火曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・4

今日も「ビッグバンド・ジャズは楽し」シリーズ、第4弾は「MJOをもう一丁」(笑)。

MJOとは「Manhattan Jazz Orchestra」の略。リーダーは、デビッド・マシューズ(写真右)。このオーケストラの編成は、オーソドックスなビッグバンドの編成とは異なり、4トランペット、4トロンボーン、2サックス、2フレンチ・ホーン、ベース・クラリネット、チューバ、ピアノ、ベース、ドラムから成り、ギル・エヴァンス・オーケストラに酷似している。

フレンチホルンやチューバが入ったビッグバンド構成が実に効果的。加えて、デビッド・マシューズのポップ性の高い、そして「判りやすくて楽しい」アレンジが素晴らしく、エッジの立ったシャープな音をベースに疾走感と寛ぎ感を効果的に配備して、とにかく聴いていて、あっけらかんとリラックスして聴ける、加えて、演奏者それぞれのテクニックも優れ、ビッグバンド・ジャズ入門として最適。

昨日は『Birdland』をご紹介したが、「判りやすくて楽しい」、あっけらかんとリラックスして聴けるビッグバンド・ジャズのアルバムはもう一枚ある。『Swing Swing Swing』(写真左)である。とにかく、収録曲を見て欲しい。

1. アイアンサイド
2. スウィング,スウィング,スウィング
3. ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド
4. ムーンライト・セレナーデ
5. A列車で行こう
6. 愛のコリーダ
7. マンテカ
8. サヴォイでストンプ

ねっ、なんか、アルバムに収録された曲目を見渡すだけで、ワクワクするでしょう(笑)。
 

Mjo_swingx3

 
冒頭は、70年代人気TVシリーズ『鬼警部アイアンサイド』のテーマ曲で、最近では『キル・ビル』にも使用された超有名曲「アイアンサンド」。ちなみに、この鬼警部アイアンサイドのテーマは日本テレビ系列で放映されていた「ウィークエンダー」のテーマ曲でした。僕には、この「ウィークエンダー」のテーマ曲のほうが馴染みがあるかな(歳がばれる?)。

5曲目の「A列車で行こう」は、下手にこねくり回したアレンジは無用。シンプルに疾走感を追求した、マシューズのアレンジが秀逸な、とにもかくにも、疾走感を撒き散らしながらのハイ・テクニック集団が奏でる、快速列車「A列車」で行こう、です。「判りやすくて楽しい」アレンジの「A列車で行こう」は、ついつい身体が動きます。

クインシー・ジョーンズの80年代初頭の大ヒット・ディスコ曲「愛のコリーダ」。こんな、いかにも俗っぽいディスコ曲を、魅力的かつ「判りやすくて楽しい」ビッグバンド・ジャズに仕立て上げている。リーダー、デビッド・マシューズの面目躍如である。

アルバム・タイトルの、2曲目「スウィング,スウィング,スウィング」は、リーダー、デビッド・マシューズの作曲によるオリジナル曲。これも、徹頭徹尾、魅力的かつ「判りやすくて楽しい」ビッグバンド・ジャズに仕立て上げられていて、聴いていて楽しく、意外と新鮮味がある。正統派ビッグバンド・ジャズのアレンジについては、この曲のアレンジが実に参考になる。

デビッド・マシューズのアレンジは、単純にジャズ・クインテットのアレンジをビッグバンドに置き換えつつ、フレンチホルンやチューバが入ったビッグバンド構成で「音の個性」を全面に出しつつ、決して、過去のビッグバンド・ジャズのアレンジ囚われない、現代のジャズならではの、シンプルでハードバピッシュな、そして「判りやすくて楽しい」アレンジが実に良いと感じます。

このMJOこと「Manhattan Jazz Orchestra」の演奏を聴くと、「シンプル・イズ・ベスト」という言葉を思い出す。魅力的かつ「判りやすくて楽しい」ことに勝ること無し「ビッグバンド・ジャズ」、である。 
 
 
 
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2010年2月22日 (月曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・3

ちょっと間が開いたが「ビッグバンド・ジャズは楽し」シリーズの第3弾である。

ビッグバンドの演奏曲って、ジャズ・スタンダードやポピュラーなポップス曲やロック曲が多く、やたら判りやすくて楽しいものが多い。若い頃は、その「判りやすくて楽しい」という部分がなんとなく嫌で、ビッグバンド・ジャズを食わず嫌いで通していた思い出がある。

でも、最近、ジャズを30年以上も聴いてきた結果、「判りやすくて楽しい」というのは、とても良いことなんだと思うようになった。判りやすくて、楽しくて、聴き応えがあるって、これって単純に楽しいのだ。そんな「判りやすくて楽しい」ビッグバンド・ジャズを提供してくれるのが、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ(Manhattan Jazz Orchestra:以下MJOと略す)である。

MJOの演奏するビッグバンド・ジャズは、とにかく判りやすい。迫力のある分厚いユニゾン&ハーモニー。判りやすく印象的なソロ、底を這う重低音ブラス、そして、曲の展開はドラマチックでメリハリ抜群。

エッジの立ったシャープな音をベースに疾走感と寛ぎ感を効果的に配備して、とにかく聴いていて、あっけらかんとリラックスして聴ける、加えて、演奏者それぞれのテクニックも優れ、ビッグバンド・ジャズ入門として最適。

ビッグバンド・ジャズ入門のみならず、オーケストラ率いるデビッド・マシューズの判りやすく、ビッグバンドの本質を良く踏まえたアレンジは、ビッグバンド・ジャズのマニアの耳にも十分に耐えるハイレベルなものだと思っている。
 

Mjo_birdland

 
そんなMJOのアルバム、どのアルバムの「判りやすくて楽しい」ものばがりであるが、そんな中でも、僕のイチ押しは『Birdland』(写真左)。収録曲は以下の通り。ジャズメンのオリジナル曲を中心に、有名な曲を取り揃えたアルバムである。

1. Birdland
2. Take five
3. Dania
4. The Chicken
5. Fever
6. September
7. Sing sing sing

冒頭の「Birdland」なぞ絶品である。ジャコのベースを重低音ブラスに置き換えて、ウェザー・リポート独特の「あく」を秀逸なアレンジで取り除いて、判りやすくて楽しいビッグバンド・ジャズの演奏に仕立て上げている。4曲目の「The Chicken」も、エッジの立ったシャープな音をベースに疾走感と重低音ブラスの音が魅力の、絵に描いたようなビッグバンド・ジャズ演奏に舌を巻く。とにかく、聴いていて楽しくて、自然と身体が動いて、足でリズムを取っている(笑)。

5曲目の「September」は、1970年代後半、ディスコ・フィーバーの中、一世を風靡した、アース・ウィンド&ファイアーの大ヒット曲。こんな俗っぽい曲をもってくるなんて、などと眉をひそめるビッグバンド・ジャズのマニアの方々もいらっしゃるでしょうが、これがまた、なかなか良いんですね。良くこんなコテコテファンキーなディスコ曲をビッグバンド・ジャズの楽曲にアレンジするもんだと感心する。

そして、極めつけはラストの「Sing sing sing」。ベニー・グッドマン楽団の代表曲であるが、これがまた絶品。エッジの立ったシャープな音が眩しく、ビッグバンド・ジャズならではの躍動感が素晴らしい。そして、デビット・マシューズのアレンジは、まさに今風の現代的な響きを湛え、ベニー・グッドマンのスイング時代とは異なる、あくまで現代のジャズのトレンドを下敷きとした疾走感溢れるビッグバンド・ジャズを提供してくれる。

良いビッグバンド・ジャズのアルバムだと思います。フレンチホルンやチューバが入ったビッグバンド構成は、あまり他に例がないんですが、この色彩豊かなブラスの響きが、これまたMJOの代表的な特徴だったりします。いやはや、素晴らしいですね。デビッド・マシューズ御大、隅に置けませんね〜。 
 
 
 
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2008年6月11日 (水曜日)

「スペイン!」

チック・コリア作の「スペイン」という曲が大好きである。大好きというか、フリークというか、マニアというか、「スペイン」が収録されているアルバムと判れば、躊躇いなくゲットする位である(笑)。

今回、購入した新譜は、デビッド・マシューズ総帥率いる、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ(以下MJOと略す)の『スペイン』(写真左)。チック・コリアの名曲「スペイン」を筆頭に、「アルハンブラの思い出」「恋のアランフェス」など、郷愁を誘うメロディー〜「スペイン」の雰囲気を存分に配した、ジャズ・ビッグ・バンドのアルバムである。

そりゃ〜あなた、「スペイン」が入っていたら、ゲットするしかないではないか(笑)。日本盤で、2,800円とちょっと割高だが、「スペイン」収録の魅力に勝てず、即ゲットである。

このMJOの新譜『スペイン』の収録曲は以下の通り。

1.スペイン
2.恋のアランフェス
3.剣の舞(組曲「ガイーヌ」より)
4.ラプソディ・イン・ブルー
5.アルハンブラの思い出
6.闘牛士の歌(歌劇「カルメン」より)
7.フィエスタ・デ・エスパーニャ
8.アメージング・グレイス

こりゃまあ、ジャズ・ビッグ・バンドで演奏するには、ちょっと難しそうな曲ばかりを選んでいる。デビッド・マシューズの面目躍如。どの曲も、かなり工夫してアレンジした跡が、実に良く判る演奏である。
 

Mjo_spain

 
チック作の「スペイン」は、ビッグ・バンドでは演奏しにくい曲だと思う。テーマ部だけでも、音程の高低がドラスティックで、跳んだり跳ねたり、高いキーから低いキーに飛び跳ね、テンポも途中小休符が散りばめられ、ビッグ・バンドでは、各楽器がピッタリと息のあったアンサンブルの実現が実に難しい楽曲である。

確かに、MJOは苦労している。それでも、このビッグ・バンドとしては難しい楽曲を、実に上手く演奏している。MJOのメンバーの力量と心意気を強く感じる演奏である。ビッグ・バンドとしては、実に良く演奏している。努力賞。

郷愁を誘うメロディー〜「スペイン」をテーマにしている割りには、「ラプソディー・イン・ブルー」とか、「アメージング・グレイス」が収録されているのは疑問符。徹底的に「スペイン」的雰囲気で押すべきだっただろう。「ラプソディー・イン・ブルー」は健闘しているが、特に「アメージング・グレイス」の収録は疑問。出来は良くない。

収録曲は、僕にとっては、ちょっと俗っぽい曲ばかりなので、聴く立場としては食傷気味。でも、演奏する側としては、結構楽しめる、デビッド・マシューズ総帥のアレンジ。デビッド・マシューズ総帥のアレンジは良い。苦労の跡が忍ばれる。

結論。このアルバムは、ジャズ初心者の方々には、ちょっとお勧めできません。ジャズ中級者、ジャズ・ビッグ・バンドに興味のある方々には、お勧めです。デビッド・マシューズのアレンジの妙は、ジャズ・ビッグ・バンドに興味のある方々には必聴でしょう。しかしながら、ジャズ・ビッグ・バンドの演奏を純粋に楽しむなら、この『スペイン』よりも、気軽に楽しめるアルバムは他にある。

でも、僕にとっては、チックの名曲「スペイン」が収録されているだけで、このアルバムはOK。しかも、ビッグ・バンドとしては難度の高いこの曲を、MJOという職人ジャズ集団が、ほんとうに工夫して、なんとか高い水準にまで引き上げている。それだけでも、僕はこのアルバムを手にして、満足である。
 
 
 
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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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