2024年2月19日 (月曜日)

Jazz Lab と The Cecil Taylor 4

ドナルド・バードのリーダー作の落穂拾い、当ブログで「未記事化」のアルバムをピックアップしていて、不思議なアルバムに再会した。ハードバップど真ん中とフリー・ジャズの先駆け、2つの全く志向の異なる演奏スタイルのユニットの不思議なカップリング。どういう感覚で、こういうカップリング盤を生み出したのやら。

The Gigi Gryce-Donald Byrd ”Jazz Laboratory” & The Cecil Taylor Quartet『At Newport』(写真)。1957年7月5–6日、ニューポート・ジャズフェスでのライヴ録音。

パーソネルは、以下の通り。1〜3曲目が「The Cecil Taylor Quartet」で、Cecil Taylor (p), Steve Lacy (ss), Buell Neidlinger (b), Denis Charles (ds)。 4〜6曲目が「Jazz Laboratory」で、Donald Byrd (tp), Gigi Gryce (as), Hank Jones (p), Wendell Marshall (b), Osie Johnson (ds)。

このライヴ盤は20年ほど前に初めて聴いたのだが、前半1〜3曲目の「セシル・テイラー・カルテット」のフリー・ジャズの先駆け的な、反ハードバップ的なちょっとフリーな演奏の「毒気」にやられて、後半の「ジャズ・ラボ」の純ハードバップな演奏もそこそこに、このライヴ盤は我が家の「お蔵入り」と相なった。
 

The-gigi-grycedonald-byrd-jazz-laborator

 
が、今の耳で聴き直すと、まずこの「セシル・テイラー・カルテット」が面白い。テイラーのピアノが、硬質でスクエアに高速スイングするセロニアス・モンクっぽくて、意外と聴き易い。レイシーのソプラノ・サックスは、テイラーのピアノのフレーズをモチーフにした、擬似モーダルなフレーズっぽくて、これも意外と聴き易い。反ハードバップな、ちょっとアブストラクトな演奏だが、整っていて、しっかりジャズしている。意外と聴ける。

逆に初めて聴いた時にはしっかり聴かなかったジジ・グライスとドナルド・バードの「ジャズ・ラボ」の演奏だが、これは、このライヴ盤の前、ジャズ・ラボのデビュー盤『Jazz Lab』(2024年2月18日のブログ参照)の内容、ライヴなので、スタジオ録音よりも演奏はアグレッシヴ。演奏レベルと寸分違わない、それまでにない響きとフレーズの「新鮮なハードバップ」が展開されている。

フリーの先駆け的な、反ハードバップで、ちょっとアブストラクトな「The Cecil Taylor 4」。それまでにない響きとフレーズが新鮮なハードバップの「Jazz Lab」。当時はどちらも新しいジャズの響きだったのだろう。

今回、改めて聴いてみると、当時の先進的なハードバップの好例として、この2つのユニットの演奏は違和感無く聴ける。今回も、ジャズ盤って、時を経ての聴き直しって必要やな、と改めて感じた。
 
 

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2023年1月20日 (金曜日)

セシル・テイラーの発掘音源

僕の中で一定周期があるのか、振り返ると3ヶ月に1回程度のスパンで「フリー・ジャズを聴きたい週間」が巡ってくる。フリー・ジャズも立派なジャズ演奏の一形態なので、ジャズ者であるならば、しっかり聴かねばなるまい、と思っている。「あんなのジャズじゃねーよ、ジャズは4ビートさ」という硬派なジャズ者の方々もいるし、「あんなの音楽じゃねえ」とバッサリ切り捨てるジャズ者初心者の方々もいる。

でもなあ、フリー・ジャズとは言っても、一定の決まり事を踏まえたもので(一定の決まり事が無いと音楽として成立しない)、無手勝流に、演奏者それぞれが好き好きに楽器を鳴らせば良い、という訳では無い。フリー・ジャズって、①音階(キー)から、②コードあるいはコード進行から、③ハーモニーから、④リズムから、の束縛から逃れたインプロのことで、この「束縛」から逃れておれば、調性音楽でも「フリー・ジャズ」として成立する。

Cecil Taylor『The Complete, Legendary, Live Return Concert』(写真左)。1973年11月4日、NYの「Town Hall」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、ちなみにパーソネルは、Cecil Taylor (p), Jimmy Lyons (as), Sirone (b), Andrew Cyrille (ds)。2022年のリリース。当時コロンビア大学の学生が、録音のために借りた機材を使用したプライベート録音が音源とのこと。

収録曲は3曲しか無い。①「Autumn/Parade」 (quartet) – 88:00 ②「Spring of Two Blue-J's Part 1」 (solo) – 16:15, ③「Spring of Two Blue-J's Part 2」 (quartet) – 21:58。
 

Cecil-taylorthe-complete-legendary-live-

 
しかし、1曲目の「Autumn/Parade」などは、演奏トータルで88分の長尺。カルテットの演奏だが、①音階(キー)から、②コードあるいはコード進行から、③ハーモニーから、④リズムから、の束縛から逃れたインプロを、約1時間半の間、マンネリの陥ること無く継続するのだ。この演奏を可能とする演奏者の体力とエネルギー、そして、演奏についてのイマージネーションについては驚くべきものがある。

収録されたフリー・ジャズな演奏、3曲とも「爽快」である。①音階(キー)から、②コードあるいはコード進行から、③ハーモニーから、④リズムから、の束縛から逃れた「調性」と「無調性」が入り乱れた演奏だが、ビートについてはポリリズムによる従来リズムからの解放が感じ取れるし、混沌とした無調なフレーズの連続だが、切れ味と疾走感が抜群で、停滞感やマンネリ感は皆無。カオスな演奏がどこか規律を持ったか如く、即興性溢れる、ひとつの音楽として収束している、そんな見事なフリー・ジャズなパフォーマンスを聴かせてくれる。

セシル・テイラーのフリー・ジャズって、以前からお気に入りで、例の「フリー・ジャズを聴きたい週間」でちょくちょく聴くのだが、この今回のライヴ盤は昨年のリリースで、久し振りのセシル・テイラーの新盤にちょっと興奮したのを覚えている。

フリー・ジャズって、確かに難解なので、ジャズ者初心者の方にはまずお勧めしない。でも、ジャズを聴き続けて行く中で、避けては通れないジャズ演奏の一形態ではある、と僕は思っている。なぜなら、フリー・ジャズは、モード・ジャズと並んで、ジャズの「即興演奏」を的確に表現するジャズ演奏の一形態だと思うからである。即興演奏の無いところにジャズは無い。
 
 

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2009年1月13日 (火曜日)

聴き手を悩ませるアルバム

ジャズのアルバムを聴く楽しみの一つに、演奏を聴きながら、誰のプレイなのか、その癖、その音色を聴きながら類推する、いわゆる「ブラインド・テスト」的な聴き方がある。

ジャス・ミュージシャンというのは、それぞれ、個性のかたまりなので、音を聴くだけで、大体誰が演奏しているかが、なんとなく判る。これは誰それ、これは誰それ、と思いながら、パーソネルを確認し、当たったら、何となく一人でご満悦なのだ(笑)。

しかし、時には、誰のプレイなのか、さっぱり判らなくて、オロオロしてしまうアルバムがある。その一枚が『コルトレーン・タイム』(写真左)。コルトレーンの名が冠されているので、コルトレーンのリーダー作と思ったら、これが大間違い。

フリージャズ・ピアノの先駆者セシル・テイラー(写真右)のリーダー作として制作されたもので、当初のタイトルは『ハード・ドライヴィング』。それが途中から現在のタイトルに変更され、あたかもコルトレーンのリーダー作のように扱われるようになったもの。

パーソネルは、ジョン・コルトレーン(ts), セシル・テイラー(p), ケニー・ドーハム(tp), チャック・イスラエル(b), ルイス・ヘイズ(ds)。アルバムを聴き進めると、コルトレーンのテナーはすぐ判る。ドーハムのトランペットも暫くすると判る。

セシル・テイラーは、フリージャズ・ピアノのスタイルの先駆者。清濁相見え、混沌としたフリー・ジャズの世界の中で、音楽性を前面に押し出したフリー・ピアノを成立させた孤高の存在。でも、このアルバムが録音されたのは、1958年。ハードバップ全盛期の中、フリー・ピアノの怪人・セシル・テイラーは、びっくりするほどオーソドックスなハードバップをやっている。
 

Coltrane_time

 
よって、ピアノが誰なのかが判らない。ソロの部分を聴くと、セロニアス・モンクか?と思うが、モンク独特のタイム感覚とは違う、意外と普通のタイム感覚で「モンク風」に弾いているので、モンクでは無い、ということは判る。

フロントのバッキングに回ると、これは一聴するとすぐモンクでは無いのが判る。バッキングのコンピングが明らかに「普通」というか、あまりに普通すぎて「素人か」とも思ってしまうほど。でも、和音の重ね方は独特のものがあって、しばらく聴いていると「ただ者」で無いことが判るから困る。

誰だ〜これは〜、と、この『コルトレーン・タイム』を初めて聴いた時は、激しく戸惑った。パーソネルを確認してみて、ちょっと納得、セシル・テイラーだったんですね。いや〜、フリー・ピアノの怪人セシル・テイラーも、この頃は、ハードバップ全盛の中で、ちょっと「トンガって」いたんですね〜。

今の耳で聴くと、このセシル・テイラーの「モンクもどき」のピアノをバックに、上手く隙間を見つけながら、ソロをドライビングしていくコルトレーンには、改めて感心した。さすがコルトレーンである。コルトレーンはハード・バップ、モード、フリーを駆け抜けたジャズ・ジャイアントであっただけに、彼の未来を予感するような演奏である。

逆に、このセシル・テイラーの「モンクもどき」のピアノをバックに、全く乗り切れないのが、トランペットのケニー・ドーハム。らしくないフレーズを奏でながら苦戦しています。そうやね、ドーハムにフリーは似合わない(笑)。
 
 
 
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