禅問答の様なピアノ・トリオ
ピーター・アースキン(Peter Erskine)と言えば、伝説のエレジャズ・バンド「Weather Report」の黄金期のドラマーなので、フュージョン・ジャズ畑のドラマーという先入観があるんだが、どうして、硬派なメインストリーム系の純ジャズで叩かせても、相当の腕前を持っていることが判る。
Peter Erskine featuring John Taylor and Palle Danielsson『Juni』(写真左)。1997年7月、オスロの「Rainbow Studio」での録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Peter Erskine (ds), John Taylor (p), Palle Danielsson (b)。ドラマーのピーター・アースキンがリーダーのピアノ・トリオ編成。
ピアノにジョン・テイラーが座る。ジョン・テイラーのピアノは昔から好きで、当ブログではあまり記事にしないが、ちょくちょくとその名を思い出しては聴いている「お気に入りのピアニスト」の一人である。そこにスウェーデン出身のベーシスト、パレ・ダニエルソンがいる。英国のピアニストと北欧のベーシスト、そして、アースキンは米国のドラマー。録音はECM。ということで、出てくる音は、ECM印の欧州ジャズ・トリオな音。
水墨画を見る様なトリオ演奏である。「侘び寂び」を忍ばせつつ、硬質でクリスタルで深いエコーを伴って、幽玄な拡がりをもって、力強く漂う楽器の音。ビートをしっかり効かせた、限りなく自由度の高いモーダルな展開。禅問答の様な、集中してお互いの音に耳を傾けながら、打てば響く響いては打つ、一体感溢れる高度なインタープレイ。現代音楽に通じる前衛的なタッチでフリーの如く迫る即興演奏。
独特の響きを湛えたピアノ・トリオ演奏である。北欧ジャズ風ではあるが、北欧ジャズほど流麗でリリカルでは無い。ジョン・テイラーのタッチはどこかバップ、そして、前衛風。アースキンのドラムは柔軟度が高く、ポリリズミックなドラミングは変幻自在であり硬軟自在。ダニエルソンのベースは、しっかりと安定したビートを効かせて、バンド全体の自由度の高いインプロを破綻させることは無い。
「禅問答の様なトリオ」と形容されるこのピアノ・トリオ、その特徴と個性がこの盤に溢れている。現代ジャズにおける、ニュー・ジャズな響きを宿したピアノ・トリオとして「ピカイチ」の出来だろう。あまり話題に上らないピアノ・トリオだが、ECMで4枚のアルバムをリリースしていて、どれもが秀逸な出来。もっと注目されてもいいピアノ・トリオのパフォーマンスである。
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