2021年10月 9日 (土曜日)

エレ・マイルスを進化させる者

高校1年生の頃だったか、マイルス・ディヴィスが来日、とてつもないエレ・ファンクをかましていった、その大阪フェスティバル・ホールの実況ライブ録音をFMで聴いて「スゲぇー」。まず「エレ・マイルス」のファンになった。その4年後、本格的にジャズを聴き初めてから、まず、エレ・マイルスのアルバムを買い漁ることとなる。

このエレ・マイルスのバンドのメンバーって、殆どがマイルスが目に留めた無名の新人を選んでいることを知る。そして、マイルスに鍛えられた新人が、マイルスの下を離れ、後に一国一城の主として、リーダーを張れる一流ジャズマンに育っていく。その「マイルス・スクール」出身の一流ジャズマンのリーダー作を聴くのが楽しみになる。

Kenny Garrett『Sounds from the Ancestors』(写真)。ちなみにパーソネルは、以下の通り。Kenny Garrett (as, vo, el-p), Vernell Brown, Jr. (p), Corcoran Holt (b), Ronald Bruner (ds), Rudy Bird (per) が、メインのメンバー。

ここに以下のメンバーがゲスト参加する。Jean Baylor, Linny Smith, Chris Ashley Anthony, Sheherazade Holman, Dwight Trible (vo), Dreiser Durruthy (bata, vo), Maurice Brown (tp), Johnny Mercier (p, org, Rhodes), Lenny White (snare), Pedrito Martinez (vo, congas)。
 

Sounds-from-the-ancestors_kenny-garrett

 
リーダーのケニー・ギャレットは、1986年から1991年にかけて帝王マイルス・デイヴィスのバンドに在籍。その後、自身のグループを中心に活動する中で、マイルスの遺伝子を受け継ぐ、エキサイティングでスピリチュアルな、エレ・ファンクな音世界をメインに展開している。ストレート・アヘッドなギャレットも素晴らしいが、やはり、マイルスの遺伝子を継ぐ、エレ・ファンクなギャレットが一番だと僕は思う。

今回のこの『Sounds from the Ancestors(先祖からの音)』には、マイルス譲りのエレ・ファンクの音世界が濃厚。そのエレ・ファンクの中に、ヒップホップ、ゴスペル、アフリカ音楽、デトロイトのモータウン・サウンド等を融合して、今までの音世界を一気に拡げ、ポップでスピリチュアルな要素も加え、よりステップアップした「ケニー・ギャレットのエレ・ファンク」を聴かせてくれる。

これが聴いていてとても心地良い。バックバンドのクールでファンキーなリズム&ビートに乗った、スピリチュアルなエレ・ファンクは聴き応えがある。アメリカン・ルーツ・ミュージックの響きが郷愁をそそり、ヒップホップなビートは、ジャズの「今」を感じさせてくれる。ビートはシンプル&クールで、意外とさりげない雰囲気のエレ・ファンクだが、内容はかなり充実している。

どこか、マイルス・ミュージックの「肝」の部分が見え隠れしてる雰囲気が凄く魅力的。ギャレットはマイルス門下生として、ジャズの得意技である「融合」をキーワードに、マイルス・ミュージックを進化させているようだ。上質のエレ・ファンク、上質のコンテンポラリーな純ジャズである。
 
 
 
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2014年6月 7日 (土曜日)

チックとマクラフリンの矜持

このライブ盤を聴いた時、これが70歳を越えたミュージシャンの出す音か、と感心するより、良い意味で「呆れた」。2009年にリリースされた、 Chick Corea & John McLaughlin『Five Peace Band Live』(写真左)である。

チック・コリアは、1941年生まれなので、今年で73歳になる。ジョン・マクラフリンは、1942年生まれなので、今年で72歳になる。この70歳を越えた大ベテラン、ジャズ界のレジェンドの2人がリーダーのFive Peace Bandである。しかし、その他3人のメンバーもこれまた凄い。

その他の3人のメンバーとは、Kenny Garrett (as), Christian McBride (ac-b, el-b), Vinnie Colaiuta (ds, per) の3人。凄いメンバーを集めたもんだ。1980年代、帝王マイルスが見出したアルトの才能、ケニー・ギャレット。現代ジャズ・ベースのファースト・コール、クリスチャン・マクブライド。そして、チックが見出したドラムの野生児、ビニー・カリウタ。

ギャレットが、1960年生まれだから、今年で54歳になる。マクブライドは、1972年生まれなので、今年で42歳。カリウタは、1956年生まれだから、58歳になる。ギャレットはもう今年で54歳になるのか。そして、カリウタって、僕より年上なのね。初めて知った(笑)。

この3人の中で一番の年上のギャレットが54歳なので、双頭リーダーの二人とは約20歳以上、歳が離れている。まあ、親子でクインテットを組みました、って感じでしょうか。冷静に数えて、平均年齢約60歳。いやはや、この『Five Peace Band Live』の内容は、とても平均年齢約60歳の出すクインテットの音とは思えない。

チックのエレピとマクラフリンのエレギがメインなので、基本的には、エレクトリック・ジャズの展開である。もう一人、フロントに立つアルトのギャレットも、もともとはマイルス・デイヴィスのエレクトリック・バンドで活躍していたので、アルトの吹きっぷりは、エレクトリック・ジャズでの吹きっぷりである。
 

Five_pieces_band_live

 
そのギャレットが大活躍のDisc1。というか、Disc1はギャレットのアルトを愛でる為にある、と言い切っても良いほど、ギャレットのアルトが絶好調である。とにかく、ギャレットの最近のソロ盤のギャレットの吹きっぷりよりも、この『Five Peace Band Live』のDisc1での吹きっぷりの方が優れている。

まあ、バックのリズム・セクション、マクブライドとカリウタのサポートが鉄壁だからな。マクブライドがしっかりと演奏のベースラインを維持し、リズム&ビートをカリウタが柔軟に叩きだしていくので、フロントのギャレットは好き勝手に吹くことができる。

好き勝手とは言え、チックとマクラフリンがアドリブ・フレーズの方向性を指し示しているので、決して、アブストラクトにフリーキーに走ることは無い。限りなく自由度の高い、縦横無尽、硬軟自在のメインストリーム・ジャズの展開である。

Disc2になると、やはり70歳を越えた二人が我慢できないらしく、のっけから全面に押し出てくる。Disc2冒頭の「Dr. Jackle」でのチックのピアノ・ソロは素晴らしい。これが、70歳を越えたピアニストの音か、とビックリする。若々しく瑞々しい硬質のタッチ、破綻の無い精緻な運指、イマージネーション拡がる煌めく様なアドリブ・フレーズ。このライブ盤でのチックは絶好調。

マクラフリンも負けてはいない。Disc2の2曲目「Senor C.S」はマクラフリンの独壇場。マクラフリン独特のエレギ音で、とにかく弾きまくる、弾きまくる。これが72歳の出す音か。まず音が太い。テクニックは流麗の一言。ワン・センテンスを聴けば直ぐ判る、アドリブ・フレーズはマクラフリン節満載。DIsc1ではバックでサポートに徹していたが、Disc2で遂に全面に躍り出た。

エレ・マイスルで有名な3曲目の「In A Silent Way / It's About That Time」は新解釈。このFive Peace Bandが客寄せの企画バンドでは全く無いことが明白である。マイルス〜ザビヌルのアレンジとは全く異なる、現代ジャズの要素を取り入れた新しいアレンジで、この名曲を聴かせてくれる。40年以上前のエレ・マイルスの名曲・名演が、現代ジャズの新解釈を経て、まだまだ新しい表現を獲得できる可能性があることががよく判る。

このFive Peace Band結成の話を聞いた時は、恥ずかしながら、客寄せ目的の企画バンドでは無いかと訝しく思った。しかし、このライブ盤を聴いて、それは間違いだと気が付いた。70歳を越えたチックとマクラフリンの矜持には頭が下がる。僕は、このジャズ界のレジェンド2人を素晴らしいと思う。

 
 

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2013年9月17日 (火曜日)

「ハードバップ復古」の記録

このアルバムのジャケットを見る度に、初めてこのアルバムを聴いた時の「胸のときめき」を思い出す。

「新生ブルーノート」からリリースされたOTBの『Out of the Blue』(写真左)。1985年6月の録音。「新生ブルーノート」企画によるこの「OTB」と言うグループは、当時無名で優秀なミュージシャン達を度重なるオーディションを経て選定した、当時の若手ジャズメンの精鋭部隊である。

ちなみにその選ばれたパーソネルは、Michael Phillip Mossman (tp, flh), Kenny Garrett (as), Ralph Bowen (ts), Harry Pickens (p), Robert Hurst (b), Ralph Peterson (ds)。グループの実質的なリーダーは、トランペットのマイケル・モスマン(Michael Phillip Mossman)と、ドラムスのラルフ・ピーターソン(Ralph Peterson・写真右)。

プロデュースは、マイケル・カスクーナ(Michael Cuscuna)が担当。録音は、ルディ・バン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)と、新生ブルーノートとして「鉄壁の布陣」。

そして、その音はと言えば、完璧なまでのコンテンポラリーなハードバップ。優れたアレンジの下での一糸乱れぬユニゾン&ハーモニーとフリー寄りのモーダルな自由度の高いインプロビゼーション。これぞ、1985年時点でも、最も新しいハードバップ・ジャズの音世界のプロトタイプであった。

1980年代に入って、フュージョン・ジャズが衰退し、それに呼応するように始まった「ハードバップ復古」のムーブメント。トランペットの神童と異名を取ったウィントン・マルサリスを中心とする新鋭ジャズメンと、古く1950年代から1960年代とハードバップやファンキージャズで活躍したベテラン・ジャズメンとがごった煮になって推進した「ハードバップ復古」。
 

Out_of_the_blue

 
一番、象徴的な出来事が、タウンホールでの「ブルーノート復活・お披露目ライブ・コンサート」の開催。1985年の出来事だったと記憶する。ジャズ雑誌にて、この「ブルーノート復活・お披露目ライブ・コンサート」の報に触れ、胸がときめいたことを思い出す。遂に、ジャズはメインストリームに帰ってきた、と。

そして、リリースされた、このOTBの『Out of the Blue』。彼らの演奏するハードバップは、時代にマッチした、新しい響きを満載した、それはそれは魅力的な内容を誇るものだった。とにかく、1985年当時は繰り返し聴いたものだ。ジャケットもブルーノートらしい洒落たものだったし、音の響きも往年のブルーノートを想起させるものだった。

「ハードバップ復古」。何も革新性の高いジャズだけが最先端のジャズでは無い。過去のスタイルを焼き直し、時代の最先端のスタイルやトレンドを織り交ぜることで、ハードバップも新しい、時代の最先端の響きを有することが出来ることを、この「ハードバップ復古」の一連のムーブメントが教えてくれた。

この「ハードバップ復古」が、ジャズとして「前進」なのか「後退」なのか、人それぞれ評価はあろうが、このOTBの『Out of the Blue』に詰まっている音は、紛れもなく1985年時点での、ジャズのトレンドの記録なのだ。今の耳で聴いても、なかなか洒落たハードバップを展開していて、なかなか聴き応えがある。今回、再発されて目出度し目出度し、である。

 
 

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2012年6月22日 (金曜日)

これぞ新伝承派と言えるプレイ

僕は、1980年代、ウィンストン・マルサリスを中心とした、伝統的なアコースティック・ジャズを継承するグループの「音」が好きだ。

この伝統的なアコースティック・ジャズを継承するグループについては、当時、ジャズ雑誌「スイングジャーナル」では、「新伝承派」というネーミングを提唱したが、「伝承」という言葉について、ジャズは「過去の伝統」の様に聞こえるところが引っ掛かったみたいで、あまり定着しなかった。でも「伝統的なアコースティック・ジャズを継承するグループ」はとても長いネーミングなので、僕は便宜上、「新伝承派」というネーミングをよく使う。

その「新伝承派」のピアニストとして名を馳せたMulgrew Miller(マルグリュー・ミラー)。僕はこのマルグリュー・ミラーのピアノが「お気に入り」。

彼のスタイルは、それまでのジャズ・シーンの中で「ありそうでない」スタイルをしている。部分部分を聴きかじると、過去の誰かのスタイルと同じじゃないか、と思うんだが、全体を通じてしっかり聴くと、過去の誰かのスタイルを踏襲していることは無い。

展開、音の重ね方、指捌き、どれをとっても「マルグリュー・ミラー」オリジナルである。決して、一聴して「それ」と判る様な派手派手しい個性では無い。でも、これが、僕に取っては、なかなかに興味深い。

今でも、マルグリュー・ミラーの初期のリーダー作の中で、特に良くCDのトレイに載るアルバムが『Wingspan』(写真左)。1987年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Mulgrew Miller (p), Kenny Garrett (as,fl), Steve Nelson (vib), Charnett Moffett (b), Tony Reedus (ds), Rudy Bird (perc)。アルトサックスをフロントに据えて、ヴァイブとパーカッションを加えたセクステット構成。
 

Wingspan

 
マルグリュー・ミラーのピアノは、ファンキー臭さが殆ど無い。端正かつ華麗なピアノの響き。ハイテクニックではあるが、決して、ビ・バップの様に派手派手しく立ち回らない。モーダルな展開ではあるが、決して間延びしない。多弁ではあるが耳に付かない、クールな「シーツ・オブ・サウンド」。アーシーでは無いが、しっかりと鍵盤を押さえるようにベースラインを効かせた左手。

どこかで聴いたことがある様なピアノなんだが、よくよく聴くと、決して、誰かのピアノのフォロワーでは全く無い。奏でるフレーズはどれもが、マルグリュー・ミラーのオリジナル。

アルトのケニー・ギャレットも良い音を聴かせてくれる。若かりし頃のケニー・ギャレットのベスト・プレイに近い内容ではないか。良く鳴るアルトに、良く展開する指。歌心溢れるインプロビゼーション。ケニー・ギャレットのアルトもファンキー臭さが殆ど無い。マルグリュー・ミラーと同じ、端正かつ華麗なアルトの響き。多弁過ぎず寡黙過ぎず、適度に抑制された、理知的なフレーズ。

マルグリュー・ミラーとケニー・ギャレットの「これぞ新伝承派」と言えるプレイが傑出した良い内容です。1980年代の「新伝承派」の音を聴かせて、とリクエストされたら、結構な頻度で、この『Wingspan』をかけます。新伝承派共通の溌剌としてポジティブで理知的なプレイが実に心地良いアルバムです。
 
 
 
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2011年1月30日 (日曜日)

タイトルに惑わされるなかれ

1980年代、ウィントン・マルサリス一派を中心とした「ハードバップ復古」の動きがジャズ界を席巻した。「新伝承派」なんてジャンル言葉もあったなあ(定着しなかったけど)。
 
そんなハードバップ復古、メインストリーム回帰の動きの中で、新しく出てくる若く有能なテナー奏者は、こぞってコルトレーンを極めようとした。猫も杓子もコルトレーン・スタイルのテナー奏者ばかりで、聴く方は「耳にタコ」状態。
  
確かに、コルトレーンは、ジャズ・テナーの世界では、そのテクニックは最高に位置し、テナー奏者としては、コルトレーンを目指したい、極めたいという気持ちは良く判る。けど、ハイ・テクニックな演奏ばかり聴かされても、また、同じスタイルの演奏ばかりを聴かされても、演奏している方は一人なので十分に満足なんだろうが、聴く方は複数のテナー奏者を聴くこととなるので、同じスタイル、同じ奏法でやってこられると「もうええわ」という感じになる。
 
ここに、ケニー・ギャレットの『Pursuance: Music of John Coltrane』というタイトルのアルバムがある。ケニー・ギャレット(Kenny Garrett)は、1961年アメリカ生まれ。サックス奏者。1987年、マイルス・デイヴィスのグループに参加、マイルス晩年時代の門下生である。シンプルで判り易い展開とコード変化が特徴で、結構難しいことをやっているのにも拘わらず、ギャレットのサックスは結構、聴き易い。
 
さて、この『Pursuance: Music of John Coltrane』(写真左)というタイトルを見ると、これまた、若手サックス奏者のコルトレーン・スタイルのアルバムか〜、と触手が伸びなくなる可能性大である。それだけ、コルトレーン・スタイルの若手サックス奏者のアルバムは巷に溢れており、どれもが判で押したように、コルトレーンのコピーに終始している印象のものばかり。食傷気味になるのも当たり前。
 
しかし、パーソネルを見渡して見ると、ちょっとこのアルバムは趣向が違うのか、と思いたくなる。ちなみにパーソネルは、Kenny Garrett (as), Pat Metheny (g), Rodney Whitaker (b), Brian Blade (ds)。1996年2月の録音である。ところがである。んんっ、ギターにパット・メセニーの参加が目を惹く。しかも、ドラムはブライアン・ブレイド。これって、単なるコルトレーン・トリビュートのアルバムじゃあ無いのでは、と思い始める。
 

Kenny_garrett_coltrane

 
聴き始めると、その通り、単なるコルトレーン・スタイルをコピーしようとした、トリビュート・アルバムでは無い。確かに、コルトレーンが十八番とした楽曲を中心に選曲され、ギャレットのアルトもコルトレーン・スタイルを踏襲している。

と、言えばそうなんだが、単なるスタイルのコピーでは無く、コルトレーン・スタイルをギャレット風にアレンジして、「ギャレット風コルトレーン奏法」になっている。シンプルで判り易いコルトレーン風展開になっていて、そこにそこはかとなく、ギャレットの個性・語法がしっかりと織り交ぜられているところが良い。
 
そして、現代ジャズ・ギターの雄、パット・メセニーですが、ほぼ全編にわたって参加しており、メセニーのソロがふんだんに聴けます。メセニーお得意のギターシンセ、ピカソギターも繰り出し、目立つ目立つ。曲によっては、ギャレットがゲストのような内容のものもあって、ギャレットの懐の深さが偲ばれます。メセニーのストレート・アヘッドなギターを堪能することが出来ます。メセニー・ファンには堪りません。
  
リズム・セクションの、ベースのロドニー・ウィテカー、ドラムのブライアン・ブレイドも強烈なビートを叩きだしていますが、これがまたユニーク。決して、コルトレーンのカルテットをコピーしようとしているのではなく、コルトレーンのカルテットにインスパイアされつつ、今の時代のメインストリーム・ジャズとしてのビートを叩きだしているところが、これまた斬新。特に、ここでも、ブライアン・ブレイドのドラミングは実に個性的で、ずっと耳を奪われっぱなし。
 
良いアルバムだと思います。そう言えば、アルト・サックスでコルトレーンをやる、というのも、なかなか面白いチャレンジですね。
  
タイトルに惑わされるなかれ。このアルバムは、単純なコルトレーン・トリビュートなアルバムでは無い。このアルバムが録音された時は1996年。今の耳で振り返ると、このアルバムの音は、新しいジャズの発展が感じられる、結構、エポック・メイキングな内容ではないか、と感心しています。 
 
 
 
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2010年6月 7日 (月曜日)

ジャズも色々あって面白い

ジャズ者をやって来て、早30年以上が経過している。子供の頃から、いくつかの楽器を演奏してきたこともあって、ジャズのアルバムを演奏する側から聴くことも多々ある。

もともと、ジャズはこうでなければならない、って、素人的な思い込みや変な思い入れも無いので、聴いていて感動したり、聴いていて気持ちが良かったり、聴いていてググッと心が動くのが、僕にとっての「良いジャズ」と思って長年ジャズと付き合ってきた。

だから、スムース・ジャズが嫌いだとか、フュージョンは認めないとか、ハードバップしか認めないとか、小難しいことは、今までこれっぽっちも思ったことが無い。良いものは良い、悪いものは悪い。でも、ミュージシャンが全力を傾けて生み出した音楽は、どれもが尊敬に値する。アマチュアである我々が簡単に悪く批判できるものでは無い。

なので、これは良いなあ、と思ったら、結構、ヘビーローテーションになるアルバムが多々ある。ジャズ者ベテラン仲間から、ちょっと節操がないのでは、と眉をひそめられることもあるが、良いものは良い。聴いていてググッと心が動くんだから仕方が無い(笑)。

このアルバムもそんな一枚。Kenny Garrett(ケニー・ギャレット)の『Happy People』(写真左)。2001年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Garrett (ss, as); Jean Norris (vo); Randy Razz (g); Michael "Patches" Stewart (tp, flh); Vernell Brown, Jr. (p); Bobby Hutcherson (vib); Charnett Moffett (b); Marcus Miller (bass g); Chris 'Daddy' Dave, Marcus Baylor (ds)。なかなかの陣容。

アルバム全体の印象は、コンテンポラリーなジャズとスムース・ジャズの間を取ったような、耳心地の良い反面、硬派な「純ジャズ」な面がしっかり顔を出す、という感じの、上手い具合に「ハイブリッド」な感じである。女性の軽いファンキーなスキャットなども織り交ぜて、エレクトリック・ファンクなフュージョン的雰囲気も見え隠れして、聴いていて心地良い、「今時のジャズ」という感じが実に良い。
 

Kennygarrett_happypeople

 
さすが、マイルス学校の門下生の一人だけあって、どの曲の演奏にも、ビートとリズムをしっかりと押さえて、大事にしているところが、ぱっと一聴すると、コンテンポラリーなジャズとスムース・ジャズの間を取ったような耳心地の良いこのアルバムを、意外と聴き応えのあるものにしている。

10曲目の「Asian Medley - Akatonbo/Arirang/Tsubasa wo Kudasai」が面白い。「アジアン・メドレー」と題して、日本の童謡「赤とんぼ」、韓国の民謡「アリラン」、そして、1970年代初めの永遠のフォークソングの名曲「翼をください」のメドレーを、ケニーのアルトサックスをメインに吹き継がれる。

う〜ん、「赤とんぼ」と「アリラン」が続きで並存しているところが面白い。米国人、ケニー・ギャレットならではの感覚だろう。でも、これがなかなか聴かせてくれるので、ジャズって隅に置けない。新ジャズ・スタンダードという観点では、まだまだジャズ化に相応しい楽曲が世界に沢山転がっている。

そして、11曲目の「Brother B. Harper」は、10曲目までのコンテンポラリーなジャズとスムース・ジャズの間を取ったような、耳心地の良い反面、硬派な「純ジャズ」な面がしっかり顔を出す、という感じの、上手い具合に「ハイブリッド」な演奏が一変、ハードな純ジャズに変身。

フリーキーに吹き倒すケニー・ギャレット。やはり、ケニー・ギャレットは素性が確かなアルト・サックス奏者。こうした純ジャズ、コンテンポラリーな「硬派ジャズ」も十分に「イケる」。そして、最後の方で「さくらさくら」の主旋律フレーズを引用しているところがご愛嬌(笑)。でも、このラスト曲でのガッツのあるブロウは結構聴き応えあり、です。

小川隆夫さんのジャズ・ミュージシャン紹介本を読むと、ケニー・ギャレットは大の親日家とのこと。「赤とんぼ」「翼をください」「さくらさくら」をジャズ演奏ネタにするところなんざぁ、親日家ジャズメンの面目躍如である。
 
 
 
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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
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  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
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