隠れ名盤 Live at the Half-Note
アート・ファーマーは、ジャズ・トランペッターとしてお気に入りの一人。ジャズを聴き始めた頃から、ずっとファーマーのトランペット&フリューゲルホーンを聴いてきた。アート・ファーマーの「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良いトランペット」がずっとお気に入り。
Art farmer Quartet featuring Jim Hall『Live at the Half-Note』(写真左)。1963年12月、NYの「ハーフノート」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jim Hall (g), Steve Swallow (b), Walter Perkins (ds)。このライヴでは、ファーマーはフリューゲルホーンを吹いている。フロントの相棒にジム・ホールのギター、ピアノレスの変則カルテット編成。
録音時は1963年。ハードバップをベースに、ジャズは多様化の時代に突入。純ジャズ志向としては、モード・ジャズが主流になり、エンタテインメント志向としては、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズなど、聴いて楽しいジャズが主流に、そして、新しいジャズとしては、フリー&スピリチュアル・ジャズが出現していた。
しかし、ここでのアート・ファーマーは、ハードバップを極める「志向」でパフォーマンスしている。演奏志向はあくまでハードバップ。しかし、従来のハードバップのフレーズとは違う、従来のコード進行とは違う、クールで静的な響きを持ったフレーズ展開で、当時として新しい響きのハードバップな演奏を繰り広げる。
いわゆる「ジャズのライヴ演奏」と聞いて、熱いバトルチックな演奏を想起するが、このファーマー・カルテットの演奏はクールで静的。ファーマーはフリューゲルホーンを使って、流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良いフレーズを吹き上げる。しかし、そのフレーズの響きは、1950年台のハードバップのそれでは無い。それまで聴いたことのないフレーズで攻める。
おそらく、ジム・ホールの、それまでに無い新しい響きのコード進行と間を活かしたインプロに触発されたのではないか。ジム・ホールのギターは、意外と「プログレッシヴ」。従来のブルージーでジャジーな定型的な響きではない、そこはかとなく捻れて少し破調なフレーズは、今の耳にも新しい。このホールのプログレッシヴなギターがファーマーのフリューゲルホーンのフレーズを刺激する。
そして、そんなプログレッシヴな響きと間を活かしたフレーズの「底」を支えるのが、スティーヴ・スワローのベース。スワローのベースもプログレッシヴ。まるでモーダルなベースラインを弾くように、それまでに無い、新しいベースラインで、ファーマーとホールをガッチリ支える。
クールで静的な響きがメインのライヴ盤なので、一聴すると地味な印象を感じるが、じっくり繰り返し聴くうちに、それぞれの演奏の「プログレッシヴ」さを感じて、何の変哲もない、手垢の付いたハードバップ演奏なのに、滲み出てくる「新しさ」に引き付けられる。
そして、このハードバップな演奏は「只者では無い」ことに気が付く。気がついて、このライヴ盤は隅に置けない、と思う。そんな「隠れ名盤」がこの『"Live" At the Half-Note』である。
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