2022年6月12日 (日曜日)

ジム・ホールの小粋なライヴ盤

最近、まだ聴いたことの無い「小粋なジャズ盤」を求めて、ネットを徘徊している。徘徊するのは、音楽のサブスク・サイト、そして、Twitter。Twitterなどでは、様々な国の様々なジャズ者の方々が、ジャズ盤の情報を挙げている。「小粋なジャズ盤」の探索条件は、まず「パーソネル」、次に「録音年」、最後に「ジャケット」。この条件にネットの評論内容を確認して、聴くアルバムをチョイスしている。

この方法で「小粋なジャズ盤」であろう、という予想を立てて盤を聴くと、まず間違いが無い。的中率は90%程度。たまに「ありゃりゃ」という失敗チョイスもあるが、それはそれでご愛嬌。特に「パーソネル」は重要で、やはり一流どころのジャズマンで固められたアルバムには「外れ」は圧倒的に少ない。

Jim Hall『Grand Slam』(写真左)。2000年1月20-22日、マサチューセッツ州ケンブリッジのチャールズホテル「レガッタバー」での録音。Telarcレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jim Hall (g), Joe Lovano (ts, ss, al-cl), George Mraz (b), Lewis Nash (ds)。ギタリスト、ジム・ホールを中心としたグループ「グランド・スラム」のファースト盤である。

当ライヴ盤の録音時、70歳のプログレッシヴなギタリスト、ジム・ホールがリーダー。フロント管にサックスのジョー・ロヴァーノ、リズム隊に、ジョージ・ムラツのベース、ルイス・ナッシュのドラムという、ピアノレスのギター入り、フロント1管のカルテット編成。メンバーいずれも、職人芸を旨とするベテランばかりで、玄人好みのラインナップである。
 

Jim-hallgrand-slam

 
出てくる音は往年のハードバップ。ジム・ホールのプログレッシヴなギターが好調。唄う様に滑らかに、それでいてメリハリのあるアドリブ・パフォーマンスをガンガンに繰り広げる。録音当時70歳ですよ。音の芯の太さといい、切れ味の良いストロークといい、とても大ベテランの翁のパフォーマンスとは思えないダイナミックさである。

ロヴァーノのサックスも良い味を出している。クラリネットも良い感じで、演奏の主旋律をしっかりと吹き上げていて、聴いていて気持ちが良い。ロヴァーノのサックスは聴いていて「ああ、ジャズやなあ」と思わず口に出るほど、ジャジーでブルージーなサックスで、このロヴァーノのサックスが演奏全体の良いアクセントになっている。

そして、この盤ではリズム隊がかなり充実している。ムラツの重低音ベースがブンブン、ウォーキング・ベースを唸らせ、バンド全体のリズム&ビートを牽引する。そして、ナッシュの硬軟自在なドラムが、時に繊細に、時に大胆に、リズム&ビートを叩き出して行く。この優秀なリズム隊をバックにしているからこそ、ホールのギターとロヴァーノのサックスが自在にパフォーマンス出来るのだ。

我が国では人気が芳しく無いジム・ホールのギターで、ネットでもほとんどそのタイトルが挙がらないライヴ盤ですが、聴いてみると、意外や意外、硬派でメインストリームな純ジャズが展開されていて、演奏内容も充実していて、聴き応え十分。我がヴァーチャル音楽喫茶『松和』では、最近発見した「小粋なジャズ盤」として、ちょくちょく聴いています。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2020年5月17日 (日曜日)

CTIにも純ジャズ好盤がある

1970年代後半は、フュージョン・ジャズの全盛期だったと記憶するが、振り返って見ると、ジャズの全てがフュージョン・ジャズ一色に染まった訳では無い。例えば、フュージョン・ジャズの主力レーベルであるCTIレーベル。当時は電気楽器を使っているだけで、8ビートを採用しているだけで「コマーシャルなフュージョン」のレッテルを貼られていたのだが、今の耳で聴き直して見ると、イジーリスニング・ジャズっぽいが、コンテンポラリーな純ジャズな盤が結構あるのだ。

Art Farmer『Big Blues』(写真)。1978年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jim Hall (g), Michael Moore (b), Steve Gadd (ds), Mike Mainieri (vib), David Matthews (arr)。フュージョン・ジャズの主力レーベルであるCTIレーベルからのリリース。ファーマーのトランペット、ホールのギターがフロントを張り、お洒落にヴァイブを加えた、ピアノレスなクインテット編成。実にユニークな編成である。

ハードバップ時代からの強者、トランペットのアート・ファーマーとギターのジム・ホール。フュージョン・ジャズの申し子、ドラムのスティーヴ・ガッドとヴァイブのマイク・マイニエリ。新旧の強者がガッチリ組んだ、コンテンポラリーな純ジャズの好盤である。そもそも、この面子で、どうやって「ソフト&メロウなフュージョン・ジャズ」をやるんだ、とも思う。
 
 
Big-blues  
 
 
聴いてみると、ファーマーのトランペットは絶対にバップだし、ホールのギターはアグレッシブではあるが、基本はメインストリーム。しかし、ファーマーのトラペットはマイルドでウォーム。ホールのギターはムーディー。明らかにフュージョン・ジャズな雰囲気に音は合わせているのだが、このハードバップ時代からの強者2人は基本的にスタイルは変えていない。変えていないどころか、以前からのスタイルで溌剌とプレイしている。良い音を出しているのだ。

このハードバップ時代からの強者2人の個性に、バックのフュージョン・ジャズの申し子、ドラムのスティーヴ・ガッドとヴァイブのマイク・マイニエリがしっかりと合わせている。ガッドのドラムは縦ノリだが、4ビート基調のドラミング。8ビートも縦ノリでスインギー。マイニエリのヴァイブはファンキー・ジャズの雰囲気を色濃く振り撒いていて、これまたスインギー。どう聴いてもフュージョン・ジャズの「ノリ」では無い。

フュージョン畑のドラムのガッド、ヴァイブのマイニエリ、ベースのムーアが、コンテンポラリーな純ジャズに適応する。CTIレーベルには、こういった「70年代のコンテンポラリーな純ジャズ」の好盤が散見されるが、今までなかなか注目を浴びることは無かった。しかし、最近、リイシューが相次ぐ様になり、1970年代後半、ジャズの全てがフュージョン・ジャズ一色に染まった訳では無かったことが明確になった。つまり「純ジャズ」は死んではいなかったのである。
 
 
 

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2018年8月18日 (土曜日)

CTIレーベルからの純ジャズ盤

昨日より、いきなり涼しくなった千葉県北西部地方。やっと猛暑日から解放された。まあ、来週から、また蒸し暑さは戻るらしいが、一時でもこの涼しい状況は嬉しい限り。ホッとする。逆に、いきなり涼しくなったので、猛暑の時の疲れがドッと出たのか、今日は体調が思わしく無い。人間の体とはややこしい。

涼しくなると、ジャズを聴くのが楽しくなる。特に本格的な「純ジャズ」。硬派な熱い「純ジャズ」といきたいところだが、先に書い た様に、今日は猛暑の時の疲れが出たのか、体調が思わしく無い。硬派な熱い「純ジャズ」は、そっと避けて、ライトな純ジャズを選盤する。1970年代のクロスオーバー・ジャズの老舗レーベル、CTIレーベルからの選盤である。

Art Farmer & Jim Hall『Big Blues』(写真左)。1978年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jim Hall (g), Michael Moore (b), Steve Gadd (ds), Mike Mainieri (vib), David Matthews (arr)。時代はフュージョン・ジャズ全盛の頃。双頭リーダーのファーマーとホールはハードバップ時代からのベテラン。バックのリズム・セクションとヴァイブは若手。
 

Big_blues

 
クロスオーバー・ジャズの老舗レーベルのCTI、純ジャズ系のアルバムも多数リリースしている。バックのリズム・セクションは、確かに電気楽器を活用した当時の流行、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの音ではあるんだが、ビートは「4 or 8ビート」。リーダーやフロントにハードバップ時代からの強者ベテランを配し、旧来のハードバップと流行のクロスオーバー〜フュージョン・ジャズの良いところを合わせた、新しい響きの「純ジャズ」を聴かせてくれる。

この盤、フリューゲル・ホーンのファーマーとギターのホールが絶好調。実に覇気のある、ポジティブな演奏を聴かせてくれる。冒頭からの2曲「Whisper Not」「A Child Is Born」はスタンダード、ホールの小粋な自作曲をはさんで、ラストはクラシック系、ラベルの管弦楽曲「Pavane for a Dead Princes(亡き王女のためのパヴァーヌ)」のジャズアレンジ。なかなかに魅力的な演奏で、1970年代の純ジャズって、ちょっと微妙な雰囲気なんですが、この盤は例外。

バックのフュージョン系のリズム・セクションが良い。縦ノリのガッドのドラムに堅実なムーアのベース。神妙に純ジャズなフレーズを弾きまくるヴァイブは誰あろう、フュージョンの伊達男マイニエリである。この盤でのマイニエリ、実に良い。やれば出来るじゃないか。嬉しい発見である。「亡き王女のためのパヴァーヌ」のアレンジがなかなかの内容なのだが、若き日のマシューズでした。
 
 
 
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2017年10月10日 (火曜日)

ながら聴きのジャズも良い・27

さあ、今日から、我がバーチャル音楽喫茶『松和』復活です。音楽の再生環境に重大な問題が起きて、そのリカバリー対応に忙殺され、ブログが全く更新出来ませんでした。のべ3日間、再現テスト、リカバリー処理と電話で付きっきり対応。始めはこちらのハードかソフトの問題とされましたが、状況証拠を総合して、やっと先方のサーバー側の問題が濃厚となり、米国にエスカレーションされました。あとは朗報待ちです。

さて、ジャズのアルバムの聴き込みはCD中心にならざるを得ず、日頃なかなか聴き込めなかったアルバムを選択。ちょうど、1980年代前半、フュージョン系メインストリーム・ジャズなる志向を追求した「Electric Bird」レーベルのアルバムを大量に買い込んでいたので、これを順番に一気聴き中。

Jim Hall And David Matthews Orchestra『Concierto De Aranjuez』(写真)。1981年の作品。邦題は『新アランフエス協奏曲』。リーダーのギタリスト、ジム・ホールがCTIレーベルから、1975年にリリースした『CONCIERTO』(邦題・アランフェス協奏曲)の再現盤。再現盤のアレンジ担当は、当時、日本のフュージョン・レーベル御用達の「デヴィッド・マシューズ」。
 

Concierto_de_aranjuez

 
演奏の雰囲気は、フュージョン・ジャズっぽいだが、演奏の基本は「メインストリーム・ジャズ」。ソフト&メロウなフュージョンに走らず、ちょっと純ジャズっぽい雰囲気を宿した、フュージョン系メインストリーム・ジャズな音作り。フュージョン・ジャズの成果を上手く取り入れつつ、ライトな純ジャズっぽい雰囲気も漂わせて、なかなかお洒落な内容がグッド。アレンジが優秀で、ながら聴きに最適な「聴き心地」の良さ。

曲目を見ると「Red Dragon Fly(赤とんぼ)」や「El Condor Pasa(コンドルは飛んでいく)」が入っていて、アルバムのリリース当時は、この辺の曲が気恥ずかしくて、この盤を実は敬遠していた時期がある。今の耳で聴くと、アレンジがそこそこ優秀なので、ながら聴きにはあまり気にならない。といって、繰り返し聴くと、やっぱりちょっと「気恥ずかしい」感じがするのだが(笑)。

タイトルの「アランフェス協奏曲」の再現もなかなかの出来。ジム・ホールのプログレッシブな純ジャズ・ギターが実に良い雰囲気を醸し出している。真剣に聴き込むタイプのアルバムでは無いが、朝の早い時期とか夕暮れ時に、ジャズ喫茶でながら聴き風に流しておくのに良い感じのアルバムである。ながら聴きに最適ということで、これはこれでありかな、と思います。
 
 
 
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2015年2月21日 (土曜日)

小粋で洒脱なギター・トリオ盤

派手では無いが、いぶし銀の様な、小粋で洒脱なギター・トリオ盤がある。最近のお気に入り盤の一枚で、ちょくちょく引っ張り出しては聴いている。

そんな小粋で洒脱なギター・トリオ盤とは、The Modest Jazz Trio『Good Friday Blues』(写真左)。トリオ名の「Modest」の意味は「謙遜深い、地味な、控えめな」といったもの。ちなみに具体的なパーソネルは、Jim Hall (g),  Red Kelly (b), Red Mitchell (p)。1960年4月の録音になる。

パーソネルを見渡してみると、不思議なことに気が付く。ベーシストと認識していたレッド・ミッチェルがピアノを弾いてるのだ。どうも、元々はピアノストだったとのこと。後にベーシストに転向したのだとか。しかし、このレッド・ミッチェルのピアノがとても味がある、モダンなピアノなのだ。

ドラム無しのトリオ編成。ドラムが無いと、これだけ控えめながら小粋で洒脱なジャズになるんだなあ、と変に感心してしまう。アルバム全体の雰囲気はジャズ・ブルース。シンプルではあるが攻撃的なホールのギターに、ケリーのベースとミッチェルのピアノが効果的に絡んで、実に雰囲気あるモダン・ジャズな演奏に仕上がっているのだ。
 

Good_friday_blues

 
米国西海岸ジャズの名手3人のドラムレス・トリオ。ほど良く抑制が効いて、それぞれのアドリブ・ソロはシンプルではあるがテクニック優秀、ブルージーな歌心がしっかりと漂い、適度にリラックスしているところが実に好ましい。こういうジャズを「小粋なジャズ」と言うんでしょうね。

収録された曲もなかなか洒落た曲ばかりで、スタンダード曲も実に渋い選曲。さすがにトリオ名が「The Modest Jazz Trio」。選曲自体が「謙遜深い、地味な、控えめな」曲ばかりなんですが、これがこのトリオの手にかかると、味なアレンジと相まって、実にアーティスティックな演奏に仕上がるのですから、不思議なもんです。

決して有名盤ではありません。ジム・ホールの紹介コーナーでも、代表盤の中には入らないでしょう。でも、これ好盤です。とにかくアルバム全編に渡って、テクニックに優れ、アレンジに優れ、その上に「抑制の効いた、小粋で洒脱な」なソロが展開されるのだ。

「なぜ水辺に鳥なのか」。米国西海岸ジャズの有名レーベルである「パシフィック・レーベル」に良くある、意味の分からないジャケットがちょっと玉に瑕ですが、小粋で洒脱な内容に免じて大目に見ましょう。良いアルバムです。
 
 
 
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2014年10月14日 (火曜日)

初リーダー作でプログレッシブ

ジム・ホールは、相当に個性的なジャズ・ギタリスト。1930年12月生まれ、昨年2013年12月没。満83歳であった。1930年生まれなので、ビ・バップからハードバップの真っ只中に、ミュージシャンとしての若き日を過ごしたことになる。

初のリーダー作が、Jim Hall『Jazz Guiter』(写真左)。1957年1月、ロスでの録音。米国西海岸ジャズとしての録音になる。ちなみにパーソネルは、Jim Hall (g), Carl Perkins (p), Red Mitchell (b)。西海岸のベースの名手レッド・ミッチェルを擁したドラムレスなギター・トリオ(後年ラリー・バンカーのドラムがオーバーダブされた)。

ジム・ホールのギターには甘さが全く無い。ジャズ・ギターでは滑らかでムーディーなフレーズを旨とするスタイルも多々あるのだが、ジム・ホールのギターについては、滑らかでムーディーなフレーズとは全く無縁。ホールは、独特のパキパキと単音で硬質で野太い暖かい音で、滑らかなアドリブ・フレーズを弾き進めていく。

この『Jazz Guiter』というアルバムは、ジム・ホールの初リーダー作であるからして、ジム・ホールのギターの個性は、若かりし頃、このデビュー盤のリリース時は27歳の頃から、独特のパキパキと単音で硬質で野太い暖かい音だった訳。間を活かした枯れた味わいも漂うところなぞ、かなり感覚的には老成していた感もある。
 

Jim_hall_jazz_guiter

 
ホールのギターは、独特のパキパキと単音で硬質で野太い暖かい音でありながら、とても気持ち良くスイングする。リズム・キープに回った時も、アドリブ・フレーズを弾き進める時も、ホールのギターはとても気持ち良くスイングする。この気持ち良いスイング感が、ホールの「二つ目の」独特の個性である。

曲もオリジナルは無く、スタンダード・ナンバー・オンリーで、ドラムレスなギター・トリオで弾きまくる。スタンダード曲ばかりの構成なので、とりわけホールのギターの個性が良く判る。原曲のコード進行を上手く活かしたアドリブ・ラインなどは、ホールのギターが意外とオーソドックスなのが判って面白い。

滑らかでムーディーなフレーズに流れがちなジャズ・ギターの中で、このホールの独特のパキパキと単音で硬質で野太い暖かい音は、突出して個性的。これだけパキパキと硬質なジャズ・ギターの音色は他に無い。そして、硬質なのにスインギー。1957年のこのデビュー盤『Jazz Guiter』にして、ホールのギターはプログレッシブですらある。

しかし、アルバム・ジャケットのホールの写真を見て常に思う。ホールは若くして「老成していた」。この風貌を見れば、誰も27歳とは思わないだろう。ホールの間を活かした枯れた味わいも漂うところは、この風貌からくる個性なのかもしれない(笑)。
 
 
 
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2013年9月 8日 (日曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・3

昼過ぎて、ちょっと時間の流れが緩やかに感じる午後の昼下がり。今日の音楽喫茶『松和』の昼下がりは、雨の日の昼下がり。

雨がしとしと降っている。その雨のせいか、ジャズ喫茶のお店の中は、人がまばら。雨音だけが室内に響き、そんな穏やかな時間がゆったりと流れていく「午後の昼下がり」の時間帯。そんな穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」には、その雰囲気を壊さない、それなりのジャズ盤を流したい。

雨の日の静かで穏やかな昼下がり。やっぱり、ここは「穏やかで優しいジャズ・ギター」が良い。今日はジム・ホールのエレギの音を愛でてみたい。

今をときめく人気No.1ギタリストのパット・メセニー。このNo.1ギタリストが、敬愛してやまない、お気に入りのギタリストが、この「ジム・ホール」。この「ジム・ホール」、そもそもリーダー作が少なく、それゆえ、ギタリストとしては地味な存在。

例えば、パット・メセニーの若いファンの中でも、この「ジム・ホール」の名前を知らない方が多い。しかしながら、パットのファンであれば、先にご紹介した『It's Nice To Be With You - Jim Hall in Berlin』(7月15日のブログ・左をクリック)を聴けば、なぜ、パットがジム・ホールの大ファンなのか、至極、納得いく方が多いのではないか。

ギター・シンセサイザーなどを駆使した「派手な」メセニーを聴けば「?」だが、6玄ギター1本で、シンプルに、かつ、鯔背に弾きこなすメセニーのギターの音を聴けば、いかに、メセニーが、この「ジム・ホール」を尊敬し、アイドルとしてきたかが良くわかる。
 

Jim_hall_pat_metheny_2

 
このメセニーお気に入りのギタリストであり、敬愛してやまない先輩ギタリストである「ジム・ホール」とのデュオがこのアルバム『Jim Hall & Pat Metheny』(写真)である。

このデュオ・アルバム、先にジム・ホールの名前が先に来ているが、単にパットより先輩で、パットの敬愛するギタリストなので、先に名前を譲っているわけではない。このアルバムでは、明らかにジム・ホールが、パットをリードし、圧倒しているのだ。

そりゃあ、パットだって黙っちゃいないが、要所要所ではジム・ホールがビシッときめて、ぐいぐい、パットを引っ張っている。そして、パットは、敬愛する「先生」であるジム・ホールの後を神妙についていく。そして、パットはその卓越したテクニックと歌心で、ジム・ホールのギターをしっかりとバッキングする。

とにかく全編美しく、時に幽玄、時にダイナミックに、時に緩やかに、時に静謐に、ジャズ・ギターの全てのテクニックと美しさが、このデュオに凝縮されている。このアルバムに詰まっている、ジム・ホールとパット・メセニーの「穏やかで優しいジャズ・ギター」の音が、雨の日の静かで穏やかな昼下がりにピッタリ。

でも、単に「穏やかで優しいジャズ・ギター」で留まってはいませんぜ。聴き耳立て出したら、終わりまで一気に聴き通してしまうくらい、ジム・ホールとパット・メセニーも適度なテンションを張りながら、結構、硬派な純ジャズ・ギターのフレーズを弾きまくっています。
 
 
 
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2013年7月15日 (月曜日)

シンプルでプログレなギターです

シングル・トーンで味のあるフレーズ。地味なようで、ツボを押さえたアドリブ。アドリブ・フレーズは、意外とプログレッシブで展開に思わず聴き耳を立ててしまう。そんな、玄人の玄人による玄人の為のギター、それが、ジム・ホールのギターだ。

初めて聴いたときは、なんだか地味でパッとしない、音もかなり穏やかなギターで「なんだ、このギターは、たいしたことないな」なんて思ってしまうんだが、これが大間違い。

聴けば聴くほど、深みがあるというか「こく」が出てくる。そして、ふっと濃いファンキーな芳しき香りが漂う、そんなギターを奏でるのがジム・ホール。

彼のキャリアを振り返ると、 ミュージシャンとしては、結構、不遇な時代が長く、リーダー作が少ないのが残念だが、その思いを払拭して余りあるのが、この『It's Nice To Be With You - Jim Hall iin Berlin』(写真左)だ。

なんと、このアルバムは、彼の2枚目のリーダー作である。1969年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Jim Hall (g), Jimmy Woode (b), Daniel Humair (ds)。
 

Jim_hall_in_berlin_3

 
冒頭の「Up,Up and Away」。一聴すると地味めなギターなのだが、少しボリュームを上げて聴くと、実に熱い熱いギターがスピーカーから流れてくる。そう、ジム・ホールのギターを愛でるには、ある程度のクオリティのある、しっかりとしたオーディオ・セットが欲しい。そして、ちょっとボリュームを上げて聴きたい。

ベースのジミー・ウッドもドラムスのダニエル・ヒューマイヤーも、どっちかと言えば、ジャズ界では無名に近い、ベルリン界隈のローカル・ミュージシャンだが、これがまた素晴らしい演奏を繰り広げてくれるのだから、ジャズって裾野が広い。図太いベースライン、繊細でかつダイナミックで多彩なドラミング。バックが、更にホールのギターアドリブを盛り上げる。

3曲目の「Young One,For Debra」と6曲目の「IIn A Sentiimentall Mood」は、ジム・ホールのソロによる多重録音。ホールのシングル・トーンが冴える、ため息をつきたくなるような、耽美的な静謐感溢れるソロ。最近流行の「ヒーリング感」が溢れるような、人の心に優しい演奏だ。

今をときめくジャズ・ギタリストのキーマンの一人、パット・メセニーが、お気に入りの一番に挙げるジャズ・ギタリスト、それがジム・ホールなのだ。なんだかパットの気持ちが良く判るなあ。そんな気にさせてくれるナイスなアルバムです。
 
 
 
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2012年9月25日 (火曜日)

「睡眠導入盤」としての愛聴盤

リーダー本人の代表作でも無いんだが、何故だか、お気に入りの長年のヘビロテ盤なんていうのが幾つかある。なんか、馬が合うというか、雰囲気が合うというか、他の評論家やジャズ者の方々の評価に関係無く、好きなアルバムってあるよね。

このPaul Desmond『Glad To Be Unhappy』(写真左)なんか、僕にとって、そんなアルバムの一枚。何故か大好きで、何故か長年のヘビロテ盤。このアルバムの持つ、優しさと寛ぎの雰囲気が大好きで、寝る前の一枚として、何故か長年の愛聴盤として君臨している一枚である。

ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Jim Hall (g), Eugene Cherico (b), Connie Kay (ds)。1963年6月の録音になる。RCAレーベルからのリリース。Featuring Jim Hallと冠しているように、ポール・デズモンドとジム・ホールの共演作になる。

この二人の相性が抜群なのだ。優しくウォームで、優しく語りかける様なデスモンドのアルトに、美しきウォームなシングルトーンをベースに、これまた優しく語りかける様なホールのギター。この相性抜群な二人が旋律を受け持って、アルバム全体の雰囲気は、落ち着いて聴き易い、お洒落なイージーリスニング・ジャズ的な内容。

確かに、イージーリスニング・ジャズ的な内容なんだが、決して易きに流れていない、というか、決して安易に判り易くしていない、というか、聴けば聴くほど、意外に、デスモンドのアルトとホールのギターが硬派なインプロビゼーション展開を仕掛けてまくっていることに気が付く。聴き易い、長閑な雰囲気の演奏ばかりだからといって騙されてはならない(笑)。
 

Glad_to_be_unhappy

 
唯一、ミディアムテンポで演奏されているのは「Any Other Time」のみ、後は、聴き心地の良い、イージーリスニング・ジャズの様なバラード演奏ばかりで占められる。このバラード演奏が、いずれの曲も、実に「クール」なのだ。この意外と「硬派」で「クール」なイージーリスニング・ジャズが実に良い雰囲気なのだ。

決して、ジャズ入門本では、はたまたジャズ盤紹介本では、デスモンドの代表作、名演作に名を連ねることも無い、決して、ホールの代表作、名演作に名を連ねることも無い、そんな地味なアルバムなんだが、これが、イージーリスニング・ジャズとしてなかなかの内容なのだから、捨てておけない。

Eugene Cherico (b), Connie Kay (ds)のリズム・セクションの存在も「粋」。このベースとドラムがあってこそ、優しくウォームで、優しく語りかける様なデスモンドのアルトと、美しきウォームなシングルトーンをベースに、これまた優しく語りかける様なホールのギターが映えに映えるのだ。

テクニックがどうとか、演奏スタイルがどうとか、そんなことには全く無縁の、良い意味での「イージーリスニング・ジャズ」。良いアルバムです。就寝前の一枚にいかがでしょうか。僕の睡眠導入盤でもあります。お勧めです。 

 
 

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2012年4月18日 (水曜日)

「春」のビル・エバンス

春が来ると、春の雰囲気にあったジャズのアルバムを聴くようになる。30年来、ジャズを聴き続けて来て、お気に入りのアルバムの中から、春の雰囲気にあったアルバムを探したりする。いや、30年もの間、ジャズを聴き続けているのだ。春の雰囲気にあったアルバムは既に頭の中にある。

ジャズ・ピアニストの中で、一番のお気に入りは、と問われれば、「ビル・エバンス」と答える。現代ピアノ・トリオの祖、ビル・エバンスは、ジャズを聴き始めた頃からの「お気に入り」。リリカルで美しく流れるようなフレーズを、「間と緩急」を活かした奏法で紡ぎ上げていく。そんなビル・エバンスのピアノは、ジャズ・ピアノの表現の中でも「極上」のものである。

そんなビル・エバンスのアルバムの中から、「春」のビル・エバンス、「春」によく聴くアルバムはと言えば、なぜか『Interplay』(写真左)。

1962年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Bill Evans (p), Jim Hall (g), Percy Heath (b), Philly Joe Jones (ds)。ビル・エバンスがリーダーのクインテット編成である。

冒頭の「You And The Night And The Music(あなたと夜と音楽と)」の、良くアレンジされた演奏の雰囲気が、なぜが「春」を連想させる。 フレディ・ハバードのトランペットは光り輝くような音を振りまき、ジム・ホールのギターは柔らかで優しいフレーズでじんわりと心を振るわせる。フィリー・ジョーのドラムは、メリハリ良く、バシッバシッと気合いを入れるようにビートを刻み、ヒースのベースは堅実に演奏の底を支え続ける。
 

Bill_interplay

 

クインテット一体となった音が、なんだか「春」という雰囲気にピッタリ、というか、「春」という雰囲気の中で流れるのにピッタリと言ったら良いのか。この「あなたと夜と音楽と」一発で、「春」のビル・エバンス、という感じにピッタリ填まる。

そして、2曲目の有名曲「When You Wish Upon A Star(星に願いを)」のバラード演奏が絶品。ちょっとアンニュイな雰囲気漂う名演で、ジム・ホールの気怠い柔らかな音が実に「春」らしい雰囲気を醸し出す。ハバードも抑制したペットを聴かせて、決して熱くならない。そして、ビル・エバンスの「間と緩急」を活かしたインプロビゼーションは、墨絵を愛でるが如く、淡い音の濃淡が素晴らしい陰翳を見せて、春の霞の中、遠くに山の風景を見るような、素晴らしい展開に惚れ惚れする。

良くアレンジされ、ほどよくコントロールされた、柔らかでアンニュイな「星に願いを」。これは、大人の「星に願いを」である。

溌剌とした、明るい演奏の「I'll Never Smile Again」も、実に「春」にピッタリの演奏で惚れ惚れする。クインテットのメンバーそれぞれのソロは、いずれも実にポジティブ。メンバー全員が溌剌としたインプロビゼーションを繰り広げる。この溌剌さは眩しいばかり。「春爛漫」という言葉がピッタリな「I'll Never Smile Again」。

ビル・エバンスのピアノ・トリオに、テクニシャンのトランペッターのハバードと、いぶし銀の様な職人ギターのホール、この二人が参入して、演奏全体がポジティブになり、演奏全体に溌剌さが漲る。そして、ビル・エバンスの「間と緩急」を活かしたインプロビゼーションは、淡い音の濃淡が素晴らしい陰翳を見せて、幽玄な、変幻自在な音の展開を聴かせてくれる。

「春」のビル・エバンス。僕にとっては、まずはこの『Interplay』で決まり、である。
 
 
 
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