2022年12月 4日 (日曜日)

現代ジャズの最新形の1つである

ジェラルド・クレイトン(Gerald Clayton)はオランダの出身。1984年生まれ。2006年のセロニアス・モンク・ジャズ・ピアノ・コンペティションでは堂々の2位。クラーク・テリー、ラッセル・マローン、ロイ・ハーグローブなどと共演。アレンジャー&プロデュースなど、多彩な才能を持つ、今年で38歳の現代ジャズの中堅を担う優れたピアニストの1人である。

Gerald Clayton『Bells On Sand』(写真左)。2022年3月、ブルーノートからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gerald Clayton (p, or,rhodes, vib), John Clayton (b), Justin Brown (ds), Charles Lloyd (ts, #9), MARO (vo, #3, 7)。伝統的でメインストリームなジャズの響きがしっかり「底」にある、理知的で耽美的な現代のコンテンポラリーな純ジャズ。

基本は、ピアノのジェラルド・クレイトンをリーダーとした、ジョン・クレイトンのベース、ジャスティン・ブラウンのドラムの「ピアノ・トリオ」編成。そこに、チャールズ・ロイドのテナー・サックスとMAROのボーカルがゲストで1曲ずつ参加している。収録曲は全てジェラルド・クレイトンのオリジナル。ちなみにベースのジョン・クレイトンはジェラルドの父君である。
 

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ピアノはリリカルで耽美的、系統としては「エヴァンス派」もしくは「メルドー派」。特にこのアルバムでは「耽美的」な響きに満ちている。弾き上げるフレーズは「モード」が基本。決して、バップなピアノでは無い。幽玄に、漂う様に、流麗に、リリカルに、深いエコーの効いたピアノのフレーズが流れていく。ヴィブラフォンやローズの響きがそのピアノの響きを更に豊かにさせる。この静的なスピリチュアルな響きが堪らない。

とても「思慮深い」音世界。音の1音1音、演奏の隅々まで、しっかりと「考え尽くされた」音世界。トリオ編成でありながら、厚みのあるユニゾン&ハーモニー。流れるが如く、流麗に弾き進められるモーダルなフレーズ。エレクトリニクスを活かした、現代の新しい響きを宿したジャジーなグルーヴ感。美しくグルーヴィーな、理知的で耽美的な「静的なスピリチュアル・ジャズ」。

旧来のジャズの「発展形」だけでは無い、今までに無い「新しい何か」を織り込んで、新しい雰囲気のジャズを聴かせてくれる、理知的で洗練された、とても美しいピアノを弾くジェラルド・クレイトン。この最新作には、現代ジャズの最新形のひとつがしっかりと記録されている。将来の「名盤」だろう。
 
 

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2020年9月19日 (土曜日)

現代の, 最近のモード・ジャズ

昨日、ジョーヘンのモード・ジャズについて語った訳だが、現代の, 最近のモード・ジャズってどんな状況なのだろうか。というか、最近のネオ・ハードバップって、基本的にモード・ジャズがメインなのだ。その基本的なモードが、判り易い聴き手志向モードと難解だが良い意味で技術志向のモードと大きく二分されているのではないか、と感じている。

Gerald Clayton『Happening : Live at The Village Vanguard』(写真左)。2019年4月、NYのライブハウス「The Village Vanguard(略称「ビレバガ」)でのライブ録音。ブルーノート・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gerald Clayton (p), Logan Richardson (as,track1, 2, 4, 7), Walter Smith III (ts, track1, 2, 4, 5, 7), Joe Sanders (b), Marcus Gilmore (ds)。最近、人気急上昇のピアニスト、ジェラルド・クレイトンのブルーノート・デビュー作。

リーダーのピアニスト「ジェラルド・クレイトン」は、ベース奏者のジョン・クレイトンを父に持ち、アルト・サックス奏者のジェフ・クレイトンを叔父に持つ、ジャズ界のサラブレッド的存在。1984年5月11日、オランダのユトレヒトで生まれ、ロサンゼルスで育った。今年で36歳。ジャズ界では「中堅」の位置づけ。Billy ChildsとKenny Barronからピアノを学んでいる。
 
 
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しかし、彼のピアノは、Billy ChildsとKenny Barronからピアノを学んだとは思えない、完璧なまでの「モード」。しかも、ハイ・テクニックと独特の感性を最大限に活かした「難解だが良い意味で技術志向のモード」である。聴き味は取っ付き難い。捻れたスイング感とでも評したら良いだろうか。アドリブのリズム&ビートが聴き慣れない独特なもの。とても新しい響きに感じる。

このクレイトンの「独特なモード」に追従する、フロント2管の二人も素晴らしい。クレイトンのモードをよく理解し、よく予測しつつ、クレイトン志向のモーダルなアドリブ・フレーズを繰り出している。リズム隊もその適応力は素晴らしい。フロント2管とリズム隊の適応力と応用力の素晴らしさは、このライブ音源を聴けば直ぐに判る。

確かに難解ではある。しかし、バンド全体の高度なテクニックで、難解で捻れたモーダルな演奏を理解しやすく、鑑賞に耐えるものに仕立て上げている。このテクニックたるや見事である。難解で捻れたモードではあるが、意外とその「難解で捻れた」ところが癖になって、また聴きたくなるから不思議。現代の, 最近のモード・ジャズの良好なサンプルがこのライブ盤にぎっしり詰まっている。
 
 
 

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2018年11月13日 (火曜日)

今の時代の個性派な純ジャズ

以前から「ジャズは死んだ」とか「ジャズの進化は止まった」とか喧しいのだが、どうして、21世紀になっても、新しいジャズメンがどんどんとデビューしてくる。それも、旧来のジャズのコピーでは無く、今までに無い「新しい何か」を織り込んで、新しい雰囲気のジャズを聴かせてくれる。「ジャズは死んだ」なんてとんでもない(笑)。

Gerald Clayton『Tributary Tales』(写真左)。2017年の作品。ちなみにパーソネルは、Gerald Clayton (p), Ben Wendel (ts), Logan Richardson (as), Dayna Stephens (bs), Joe Sanders (b), Ben Wendel (bassoon), Justin Brown (ds), Henry Cole, Post Production (perc)。ほとんど知らない名前ばかりが並ぶが、テクニック優秀、将来有望な若手ジャズメンが中心。

リーダーのジェラルド・クレイトン(Gerald Clayton)はオランダの出身。1984年生まれ。2006年のセロニアス・モンク・ジャズ・ピアノ・コンペティションでは堂々の2位。クラーク・テリー、ラッセル・マローン、ロイ・ハーグローブなどと共演。ピアニストであり、アレンジャー&プロデューサーでもある、多彩な才能を持つ、今年で34歳の若手有望株である。
 

Tributary_tales1

 
この『Tributary Tales』を聴けば、そのマルチなタレントを実感出来る。ピアノはリリカルで耽美的、系統としては「エヴァンス派」もしくは「メルドー派」。バズーンの音を活かした、ちょっとユニークなブラスのユニゾン&ハーモニーが聴きもの。この美しいアレンジとそれをバックにしたリリカルなピアノという構図は、ハービーの『Speak Like A Child』を彷彿とさせる。

基本は流麗なモード・ジャズ。そこにボーカルやコーラスを活かした「スピリチュアル」な雰囲気がユニーク。若干フリー・ジャズに走りそうになるところもスリリングで良い。演奏のスタイルは実にオーソドックスなもの。伝統的でメインストリームなジャズ。そこに時折「優しいスピリチュアルな響き」。耳に優しいニュートラルな響き。

ジェラルド・クレイトン4年ぶりの新作。聴きどころ満載。シンプルで自然な演奏が心地良い。決して思いっきり印象に残る個性では無いが、僕はクレイトンのアレンジャー&プロデューサーに魅力を感じた。自らのアレンジで自らのピアノをより美しく表現する。自作自演のピアニスト。寡作の人、であるが、次作が今から楽しむ。どんな「深化」を辿っていくのだろう。

 
 

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