タル独特のバップ・ギターを聴く
去年の11月から、タル・ファーロウのジャズ・ギターを聴き進めている。これが殊の外、楽しい。しかし、タル・ファーロウについては、我が国では意外と人気が薄い。
ジャズ・ギタリストとしては、ギターのスタイリストの1人として、そのテクニックの高さと合わせて一流。巨大な手を一杯に広げて縦横無尽にフレーズを紡ぎ出す様は「オクトパス・ハンド」と呼ばれるのだが、このダイナミックな高速フレーズの拡がりもタルならではの個性。
歴代のジャズ・ギタリストの中でも、抜きんでている存在だと思うのだが、どうにも我が国ではタルの話はあまり聞いたことが無い。ネットを見渡すと、米国でもタルの扱いはちょっと低い。ネットで十分に記事に扱われていないリーダー作も散見される。
恐らく、1960年代に入った途端に引退状態となり、それから約10年間、引退状態が続き、カムバックした時は既にジャズ界は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの時代に突入していた。タルのバップなギターが「ウケる」聴き手は数少なくなっており、実質上、忘れ去られた存在になっていたのが大きな理由だろう。加えて、タルのギター・スタイルのフォロワーが現れ出でなかったこと、これも人気の薄い理由のひとつだと僕は思っている。
しかし、タルのリーダー作に凡作は無い。どのアルバムを聴いても、タル・ファーロウの硬質でハイテクニックなギターを堪能することが出来る。
Tal Farlow『This Is Tal Farlow』。1958年2月17, 18日の録音。ちなみにパーソネルは、Tal Farlow (g). Eddie Costa (p). Bill Takas (b, #1-4), Knobby Totah (b, #5-8), Jimmy Campbell (ds)。この盤では、前の『Tal』『The Swinging Guitar Of Tal Farlow』 とは違って、ドラムが加わってリズム&ビートが増強されている。
このキャンベルのドラムが好調で、リズム&ビートが増強される中、タルはアドリブ・フレーズの弾きまくりに専念している様に聴こえる。「オクトパス・ハンド」と呼ばれるダイナミックな高速フレーズに更に磨きがかかっている。収録曲は相変わらずスタンダード曲中心の選曲だが、パッキパキ高速でテクニカルなフレーズで、しかし、しっかり流麗にスイングした疾走するフレーズ。
バックのリズム・セクション、特に、エディ・コスタのピアノが良い。硬質なタッチ、叩く様なフレーズ。タルの硬質ギターにぴったり合った雰囲気のピアノ。このコスタのピアノがタルのギターのリズム&ビートを支え、タルのアドリブ・フレーズに自由なスペースと余裕を与えている。タルの凄く弾きやすい雰囲気が伝わってくる様だ。
録音年の1958年はハードバップが成熟した時代。しかし、この盤でのタルは、それまでのビ・バップやハードバップのギターの「常套句」をなぞってはいない。これがタルの一番優れたところ。この盤では、タルならではの、タル独特のバップ・ギターのフレーズと語法をしっかりと聴き取ることが出来る。好盤です。
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