2022年12月23日 (金曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・18

ジャズを本格的に聴き始めた頃、この盤の存在が不思議だった。ジャズの評論からすると、概ね、ディブ・ブルーベックというピアニストは「イモ」なピアニストという評価だった。やれスイングしないだの、やれ歌心が無いだの、そして、酷いなあと思ったのは「下手くそ」や「イモ」という評価。ジャズ者初心者として、これは下品やなあ、と思いつつ、ブルーベックの諸作については、なかなか手が伸びなかった。

しかし、である。ジャズ初心者向けのジャズ盤紹介には、必ずと言って良いほど、この盤のタイトルが上がる。ハワイ出身の S・ニール・フジタがデザインを手掛けた、前衛的な模様の絵をあしらったジャケットが印象的で、ジャズ初心者向けのジャズ盤ならば、とジャズを聴き初めて2年目位にゲットしている。

Dave Brubeck Quartet『Time Out』(写真左)。1959年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as) Dave Brubeck (p) Gene Wright (b) Joe Morello (ds)。変則拍子ジャズの定盤中の定盤。ジャズで定番のビート、4ビートと2ビート以外を「Time Out(変拍子)」と呼んでいる訳だが、この盤は、その「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」である。

1曲目の「Blue Rondo A La Turk(トルコ風ブルーロンド)」は「9分の8拍子」。スイングしないピアノとして、一部で忌み嫌われるブルーベックのピアノが印象的な旋律を奏でる。2+2+2+3拍子という刻み。これでは横揺れのスイングは出来ない。ちなみに、ブルーベック・カルテットでは、ブルーベック十八番の「スクエアなスイング」で、この「9分の8拍子の曲」をノリの良い演奏に仕上げている。
 

Time_out_1

 
3曲目のタイトル曲が、かの有名な「Take Five」。「5分の4拍子」の変拍子ジャズで、3+2拍子という刻み。これも横揺れスイングは無理。この「5分の4拍子」の曲も、ブルーベック・カルテットは「スクエアなスイング」で乗り切っている。ジョー・モレロのドラミングの巧みさ。それを支えるブルーベックのピアノのコンピング。

「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」とは良く言ったもので、前述の1曲目が「9分の8拍子」、3曲目が「5分の4拍子」で完璧な変拍子。他の曲は「3分の4拍子」や「12分の8拍子」といった「3拍子」が主体の曲。5曲目の「Kathy's Waltz」は、6分の8拍子をインテンポで4分の4拍子に強引に被せている様で、これもある意味「変拍子」。

但し、「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」だと難解になりがちなんだが、ブルーベック・カルテットはそうならない。ブルーベック・カルテットの演奏はどのアルバムも、どの演奏も「判り易い」。この「判り易さ」がブルーベック・カルテットの特徴であり、最大の長所。この『Time Out』がジャズ初心者向けのジャズ盤紹介に上がるのも、この「判り易さ」があるからだろう。

まず優れたアレンジがベースにあって、カルテットのメンバーの演奏能力とテクニックが高いこと。そこに、ブルーベックの理知的でスクエアなノリのピアノが演奏全体を統率し、ウォームで丸く力強いデスモントのアルト・サックスがフロントを担い、破綻の無い抑制の効いた、クールなインプロを展開する。これが「判り易さ」に繋がっている。ジャズにとって「判り易さ」は大切な要素。

しかし、「判り易い」からと言って、この変則拍子の「Take Five」が、1987年、アリナミンVのCMのバックで流れた時には驚きました。「ジャズはお洒落」なんていう、バブル期の産物なんでしょうが、よくこんな変則拍子のジャズ曲をCMに採用したもんです。今でも感心します。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新。

   ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年12月19日 (月曜日)

「ブルーベック4」初期の傑作盤

Dave Brubeck(ディブ・ブルーベック)のリーダー作の「落ち穂拾い」をしている。

もともと、ブルーベックのピアノが好きなので、当ブログでは、ブルーベックのリーダー作はかなりの数、記事にしてアップしている。が、ブルーベックはキャリア上、リーダー作については「多作の人」。ブルーベックを語る上で、重要と思われる盤もスポッと抜けていたりして、もう少し、充実させる必要があるなあ、と感じた次第。

Dave Brubeck Quartet『Jazz At Oberlin』(写真左)。1953年3月2日、米国オハイオ州のOberlin Collegeでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as), Lloyd Davis (ds), Ron Crotty (b)。ブルーベック=デスモンドの「大学巡回ライヴ」の中の「とりわけ優れた」1枚である。

収録曲は全て「有名な」スタンダード曲。しかし、全曲、ブルーベックのアレンジが秀逸で、他の同一曲の演奏とは異なる、オリジナリティ溢れる「ブルーベック=デスモンド」ならではの個性的な演奏に仕上がっている。

スタンダード曲の持つ流麗なテーマ部は、はっきりとそれと判る、判り易いフレーズで印象付け。アドリブ展開では、ブルーベック独特のスクエアにスイングする、現代音楽の様な硬質タッチのピアノと、流麗に優しく語りかける様に、ソフト&メロウな、デスモンドのアルト・サックスとが対比する様な、独特な雰囲気を醸し出すインタープレイが見事。
 

Dave-brubeck-quartetjazz-at-oberlin

 
以降の「ブルーベック=デスモンド」のカルテット演奏の個性は、この時点で完全に確立されている。

横揺れにスイングすることは無く、ファンクネスは皆無。それでも、このカルテット演奏は「ノリ」が良い。そして、出てくるフレーズがキャッチャーで流麗。ブルーベックの硬質タッチのピアノのフレーズは実に捉えやすく、流麗で柔らかなデスモンドのアルト・サックスは聴いていて、とても心地良い。その2人のパフォーマンスを支えるリズム隊は堅実で破綻が無い。

つまりは「ブルーベック=デスモンド」のカルテット演奏は判り易く、親しみ易いのだ。聴き手にしっかり訴求する「ブルーベック=デスモンド」のジャズ。聴衆もそれをしっかり感じて、ノリノリで演奏を楽しんでいる様子が良く判る。

僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、我が国におけるブルーベックの評価は甚だ悪かった。やれスイングしないだの、やれ歌心が無いだの、そして、酷いなあと思ったのは「下手くそ」という評価。

しかし、僕は「秘密の喫茶店」で、この「大学巡回ライヴ」の中の「とりわけ優れた」1枚を聴かせてもらって、ブルーベックのピアノのファンになった。ジャズを本格的に聴き始めた良い時期に、ブルーベックの「真の演奏」を聴くことが出来、ブルーベックのピアノを「聴き誤らなかった」のは幸いだった。やっぱり、ジャズは自分の耳で聴いて、自分の耳で判断するのが一番だ。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新。

   ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年12月13日 (火曜日)

ブルーベックとデスモンドの融合

ジャズの楽器の中ではピアノが一番好きである。もともと、子供の頃、中学生まで、クラシック・ピアノを習っていたこともあって、ジャズ・ピアノは「聴く」ばかりでなく、及ばずながら「弾く」側の気持ちやテクニックを慮って、鑑賞することが出来る。

ジャズ・ピアニストはあまたあれど、お気に入りのピアニストは数十名。その中に「デイブ・ブルーベック」がいる。ブルーベックと言えば、僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、評論家筋を中心に「スイングしないピアニスト」だの「ファンクネスが無い」だの「白人だからジャズじゃない」だのケチョンケチョンに書くものだから、本当に我が国では人気がイマイチだった。

しかし、21世紀、ネットの時代になって、我が国のジャズ者の方々の中にも、ブルーベックのピアノがお気に入り、という意見もちらほら見る様になった。米国ではデビュー当時から、人気のピアニストである。魅力が無ければ人気は出ない。やっと我が国でも、ブルーベックのピアノの本質を、個性を直接感じて評価するジャズ者の方々が出てきたということ。頼もしい限りである。

Dave Brubeck Quartet『Jazz at the College of the Pacific』(写真左)。1953年12月14日、カリフォルニア州ストックトン「College of the Pacific」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as), Ron Crotty (b), Joe Dodge (ds)。ブルーベック・カルテットの「大学巡回ライヴ」の音源のひとつ。

ブルーベックの「大学巡回ライヴ」には、『Jazz at Oberlin』をはじめとして名盤揃い。この「College of the Pacific」でのライヴも、ちょっと音質に難があるが、同様に内容は充実している。ブルーベックの硬質のスクエアにスイングするピアノ、暖かくてクールなアルト・サックスの個性は、この1953年のライヴで完成しているのが判る。
 

Dave-brubeck-quartetjazz-at-the-college-

 
ブルーベックのピアノを聴いていると、もともとブルーベックのピアノはスイングしようとはしていない。そもそもオフビートでは無い、ブルージーなキーを多く使わない、クラシックのテクニックをアレンジに反映する。

なるほど、これでは、スイング・ジャズ時代から培われた「横揺れスイング」をしようにも出来ない。しかし、ビートにはしっかり乗っている。リズムはスクエアに乗っている。「スクエアなグルーヴ感」。「スクエアにスイングする」のがブルーベックのピアノであり、ブルーベックの専売特許なのだ。

そんな硬質でスクエアのスイングするピアノに、全く正反対の個性で相対するのが、デスモンドのアルト・サックス。デスモンドのアルト・サックスは「丸い」。暖かく「丸い」。そして、よくよく聴くと、ブルーベックの「スクエアにスイングする」ピアノに乗って、デスモンドのアルト・サックスは「丸くスクエアにスイング」している。

このブルーベックのピアノとデスモンドのアルト・サックスの「正反対の個性の融合」こそが、このカルテットの「肝」。その「正反対の個性の融合」が、このライブ盤にしっかりと記録されている。

聴衆もノリノリ。このブルーベック初期の時代に既に人気は高かったことが窺い知れる。「スクエアなスイング感」が不思議と心地良い。なにも「横揺れスイング」だけが全てでは無い。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新。

   ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2017年11月 8日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・113

ジャズには、一流ジャズメン達がリーダーになって、気合いを入れて創作するアルバムもあるが、気心知れたジャズメン達が、ちょっと集まって、ジャムセッション風に録音して制作するアルバムもある。そして、意外に、この気心知れたジャズメン達がちょっと集まって録音したアルバムが、実に滋味に富んだ、実に心地良いモダン・ジャズなアルバムになっていたりするから面白い。

例えば、Paul Desmond『First Place Again』(写真)。1959年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Jim Hall (g), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。ピアノの代わりにギターが入ったカルテット構成。この構成とこのパーソネルを見るだけで、この盤に詰まっている音が期待出来る。

ポール・デスモンドは、デイブ・ブルーベックのカルテットに参加して人気のアルト奏者。そこに、ジャズ・ギターの名手ジム・ホールが加わり、ベースとドラムは、モダン・ジャズ・カルテットから、パーシー・ヒースとコニー・ケイが参加。いや〜、当時、人気の一流ジャズメンばかり、しかもバリバリの中堅。粋で渋い、聴くからにジャズらしい音を出す4人である。
 

First_place_again

 
選曲も渋くて、スタンダード曲かトラディショナル曲で占められる(CD再発の時にデスモンド作が入るがオリジナルLPには無い)。冒頭のコール・ポーター作の「I Get a Kick Out of You」や、ジョン・ルイス作の「Two Degrees East, Three Degrees West(2度東3度西)」など、聴いていて惚れ惚れする。典型的なモダン・ジャズ、典型的なハードバップである。

ここまで来ると、もう理屈やないなあ、と思ってしまう。優秀な一流ジャズメン達が、ちょっと集まって録音すると、きっと適度にリラックスした演奏になるんだろう、本当に和やかで優れた内容である。聴く側も適度にリラックスして、微笑みを湛えながら、ちょっと足でリズムを取りながら、首は左右に微かに触れてスイングする。そんな雰囲気の演奏が実に心地良い。

ポール・デスモンドのアルトが興味深い。ブルーベック・カルテットの時には、丸くて和やかで温和なアルトを吹いているのだが、ブルーベック・カルテットを離れて、一人で他流試合に参加した時には、結構、力強いアルトを吹く。どちらが彼の本質なのか、聴いていてとても興味深い。最初から最後まで、心地良いモダン・ジャズがてんこ盛り。隠れ好盤です。
 
 
 
★東日本大震災から6年7ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

保存

2014年9月 4日 (木曜日)

この組合せは意外と絶妙である

確かに、この組合せは意外と思いつく。例えば、Dave Brubeck Quartetの『Time Out』を聴きながら、ポール・デスモンドの柔らかでリリカルでスインギーなアルトの音を聴きつつ、Moden Jazz Quartet(MJQ)の『Django』を聴いて、MJQの典雅な響きと硬派でスインギーな演奏を聴いて、このデスモンドとMJQと組み合わせたら「どうなんだろう」と想像する。

そんな想像に対する具体的な答えの様なアルバムがある。『The Only Recorded Performance of Paul Desmond With Modern Jazz Quartet』(写真左)。邦題は『MJQ・ウィズ・ポール・デスモンド』。1971年12月25日、NYのタウンホールでのライブ録音。ちなみに、パーソネルは、Paul Desmond (as), John Lewis (p), Milt Jackson (vib), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。

ポール・デスモンドのアルトはスインギー、MJQの演奏もスインギー。スインギーつながりで絶対のこの組合せは「合う」。このライブ盤の冒頭の「Greensleeves」の出だしを聴けば、これはやっぱり「合う」ということを確信する。

クラシックな要素を取り入れたり、フロント楽器がヴァイブだったりして、ちょっとソフト&メロウでムーディーな演奏が特徴と誤解してしまう傾向が強いが、もともとMJQは硬派な演奏が身上。ピアニストのジョン・ルイスのアレンジは流麗だが、カルテットの4人の演奏は、それぞれ硬派でスインギー。

そういう意味で、そんな硬派でスインギーなカルテットをバックに、デスモンドのアルトが実に映える。MJQの演奏をバックにすると、ポール・デスモンドの柔らかでリリカルでスインギーなアルトの音が一層際立つ。そして、両者の共通項は「スインギー」。デスモンドとMJQは「スインギー」という共通項のもと、最適にコラボする。

1. Greensleeves (Traditional)
2. You Go To My Head
3. Blue Dove
4. Jesus Christ Superstar
5. Here's That Rainy Day
6. East Of The Sun
7. Bag's New Groove
 

Mjq_desmond

 
収録曲は上記の通り。実に魅力的ですね。トラディショナルの「グリーンスリーブス」でのデスモンドのアルトとMJQの演奏との対比が素晴らしい。柔らかいデスモンドのアルトに対する硬派な演奏のMJQ。そんな対比が際立つアレンジも聴きどころのひとつ。もともと甘い旋律を持つ「Greensleeves」なんだが、意外と硬派な響きにちょっとビックリ。

ジャズ・スタンダード曲中心に収録曲が選曲されていますが、4曲目の「Jesus Christ Superstar」の存在に思わずニヤリとします。映画にもなったロック・オペラのテーマ曲なんですが、これがジャズとして演奏されるなんて思いもしませんでした。この曲はさすがにジャズにはならんだろう、と思っていたのですが、これがまあ、堂々の「ジャズ」。アレンジの勝利とアドリブ力の勝利ですね。

さて、CDの音源としては、現在入手できるものは、Paul Desmond & The Modern Jazz Quartet『Live In New York 1971』(写真右)というアルバムの前半7曲が、この『MJQ・ウィズ・ポール・デスモンド』の音源とイコールです。もともとの『MJQ・ウィズ・ポール・デスモンド』のLPやCDはなかなか手に入らないので注意が必要です。

とにかく聴いて楽しい組合せ。このデスモンドとMJQの組合せは、このアルバムが唯一。意外ですね。まあ、1971年という時代、商業ロックと米国ポップスの興隆というジャズを取り巻く環境を鑑みると、仕方の無いことでしょうか。柔らかでリリカルで硬派でスインギーなジャズは、当時はポップス音楽として大衆的に受けが悪かったと思います。

たしか、日本での初出は1981年であったような記憶があります。このアルバムを手にして初めて聴いた時は、ちょっと刺激が足らないなあ、良いジャズだけど何となく古いなあ、と感じました。今は違いますよ。こんな小粋で素敵なライブ盤はなかなかありません。組合せの妙ということで、ジャズ者の皆さんに世代を問わずお勧めです。
 
 
 
★震災から3年5ヶ月。決して忘れない。まだ3年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2012年9月25日 (火曜日)

「睡眠導入盤」としての愛聴盤

リーダー本人の代表作でも無いんだが、何故だか、お気に入りの長年のヘビロテ盤なんていうのが幾つかある。なんか、馬が合うというか、雰囲気が合うというか、他の評論家やジャズ者の方々の評価に関係無く、好きなアルバムってあるよね。

このPaul Desmond『Glad To Be Unhappy』(写真左)なんか、僕にとって、そんなアルバムの一枚。何故か大好きで、何故か長年のヘビロテ盤。このアルバムの持つ、優しさと寛ぎの雰囲気が大好きで、寝る前の一枚として、何故か長年の愛聴盤として君臨している一枚である。

ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Jim Hall (g), Eugene Cherico (b), Connie Kay (ds)。1963年6月の録音になる。RCAレーベルからのリリース。Featuring Jim Hallと冠しているように、ポール・デズモンドとジム・ホールの共演作になる。

この二人の相性が抜群なのだ。優しくウォームで、優しく語りかける様なデスモンドのアルトに、美しきウォームなシングルトーンをベースに、これまた優しく語りかける様なホールのギター。この相性抜群な二人が旋律を受け持って、アルバム全体の雰囲気は、落ち着いて聴き易い、お洒落なイージーリスニング・ジャズ的な内容。

確かに、イージーリスニング・ジャズ的な内容なんだが、決して易きに流れていない、というか、決して安易に判り易くしていない、というか、聴けば聴くほど、意外に、デスモンドのアルトとホールのギターが硬派なインプロビゼーション展開を仕掛けてまくっていることに気が付く。聴き易い、長閑な雰囲気の演奏ばかりだからといって騙されてはならない(笑)。
 

Glad_to_be_unhappy

 
唯一、ミディアムテンポで演奏されているのは「Any Other Time」のみ、後は、聴き心地の良い、イージーリスニング・ジャズの様なバラード演奏ばかりで占められる。このバラード演奏が、いずれの曲も、実に「クール」なのだ。この意外と「硬派」で「クール」なイージーリスニング・ジャズが実に良い雰囲気なのだ。

決して、ジャズ入門本では、はたまたジャズ盤紹介本では、デスモンドの代表作、名演作に名を連ねることも無い、決して、ホールの代表作、名演作に名を連ねることも無い、そんな地味なアルバムなんだが、これが、イージーリスニング・ジャズとしてなかなかの内容なのだから、捨てておけない。

Eugene Cherico (b), Connie Kay (ds)のリズム・セクションの存在も「粋」。このベースとドラムがあってこそ、優しくウォームで、優しく語りかける様なデスモンドのアルトと、美しきウォームなシングルトーンをベースに、これまた優しく語りかける様なホールのギターが映えに映えるのだ。

テクニックがどうとか、演奏スタイルがどうとか、そんなことには全く無縁の、良い意味での「イージーリスニング・ジャズ」。良いアルバムです。就寝前の一枚にいかがでしょうか。僕の睡眠導入盤でもあります。お勧めです。 

 
 

★大震災から1年半が過ぎた。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2012年4月26日 (木曜日)

明日から「とんずら」逃避行

明日から、5月5日までブログをお休みします。一年に一回、通常の世界から「とんずら」して、日常とは切り離された「別世界」へ行って来ます。

今日は朝から、その「とんずら」の準備で大わらわ。去年、3年前の「とんずら」の問題点をクリアしないまま、荷造りしたら、やはり、上手くいかない。慌てて、追加で水を買いに行ったり、手荷物向けの鞄やウインド・ブレーカーを買いに行ったりで大変でした。が、まあ、夕方には全て準備完了。荷物も既に送り出して、明日は朝早く、5時位より「とんずら」です(笑)。

今晩はゆったりリラックスしながら、いつもより、早く寝ないと・・・。と言うことで、選んだアルバムが、Paul Desmond『Desmond Blue』(写真左)。1961年9月〜10月の録音。パーソネルに「unidentified strings」とあるように、ボブ・プリンス編曲のオーケストラを伴奏にした「ウィズ・ストリングス」作品。甘さと鋭さを兼ね備えたデスモンドのアドリブが実にスリリングで、なかなか聴き応えがあります。

しかし、もともと甘い音色が特徴のデスモンドのアルトに、甘いアレンジを施したストリングスである。一般受けは「悪い」アルバムである。これはジャズで無い、から、これはイージーリスニングだ、とか、軽音楽だ、とか、特に、我が国では、ある意味「ケチョンケチョン」な評価である。
 

Desmond_blue

 
しかし、そうかなあ、と僕は思う。デスモンドのアルトは、もともと甘い音色ではあるが、甘さに流されない、鋭い切れ味のインプロビゼーションが特徴で、この「ウィズ・ストリングス」な、ちょっと甘いストリングスをバックにして、意外と硬派なアルトを聴かせてくれているのだ。ギターのジム・ホールもいつになく、なかなか硬派なプレイで、デスモンドをサポートしています。

このデスモンドの「ウィズ・ストリングス」作品は、他のジャズ・ミュージシャンの「ウィズ・ストリングス」作品にひけを取らない、良い内容のイージーリスニング・ジャズだと思います。そう、例えば、「チャーリー・パーカー・ウィズ、ストリングス」や「クリフォード・ブラオン・ウィズ・ストリングス」にもひけを取らない内容だと思います。

デスモンドの「ウィズ・ストリングス」作品を聴き、ゆったりリラックスしながら、明日からの、日常とは切り離された「別世界」へと思いを馳せる。一年に一度の逃避行。命の洗濯、日常のながれの「リセット」。順調にいけば、また、5月6日には通常の世界に舞い戻って来ます。それでは、皆さん、GW期間中、お元気で・・・。 
 
 
 
★大震災から1年。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2012年2月16日 (木曜日)

アグレッシブなDBQとデスモンド

今週の初め、ポール・デスモンドを極めたいと思って、早、木曜日になる。え〜い、今週はポール・デスモンドで突っ走るぞ。

今日までご紹介したポール・デスモンドは、「鋭い切れ味」で、強いアルトを吹きまくるデスモンドだった。どれもが、デスモンドのリーダー作、若しくは双頭リーダー作。デスモンドに辛口の方々は「でも、The Dave Brubeck Quartet(DBQと略)でのデスモンドは、ひ弱でスイングしてないで〜」って言いそう。

どうも、ポール・デスモンドのアルトに対して誤解した評価をお持ちの方々は、このDBQに関しても、誤解した評価をお持ちの傾向が強い。どうしてどうして、DBQって、結構、硬派な演奏をするんやけどなあ。オフビートを強調した、粘りのあるファンキーなスイング感では無く、スクエアで間合いを入れた縦ノリのスイング感が抜群なのだ。硬質でゴツゴツした、木訥としたスイング感である。

そんなDBQのライブ盤がある。タイトルは『Dave Brubeck Quartet at Carnegie Hall』(写真左)。おさらいになるが、パーソネルは、Paul Desmond (as), Dave Brubeck (p), Gene Wright (b), Joe Morello (ds)。1963年2月22日、NYのカーネギーホールでのライブ録音。

どうも、DBQは、スタジオ録音とライブ演奏とは、その演奏方針を変えていたと思う。スタジオ録音は、家のリビングのステレオで鑑賞することを踏まえて、柔らかく耳当たりの良い、オシャレな演奏を心がけている様に感じる。逆に、ライブ演奏はバリバリ尖ったスクエアなスイング感で、ノリノリの演奏を繰り広げるという、エンタテインメント性を全面に押し出した演奏を主力とする。

そんなDBQのライブ盤である。結構、エッジの立った、ノリノリの演奏を繰り広げている。そんなノリノリのDBQの演奏である。当然、アルトのデスモンドも、ノリノリの「鋭い切れ味」の強いアルトを聴かせてくれる。このライブ盤でのデスモンドのアルト、結構、聴きものです。これだけ、スクエアなビートに乗って、ノリノリに吹きまくるデスモンドも珍しい。
 

Dbq_carnegie_hall

 
しかも、このライブ盤、デスモンドのアルトが結構フィーチャーされている感じなのだ。全編に渡って、デスモンドのアルトが前面に出て、それはそれは大活躍である。デスモンド者の方々に、なかなかのお勧めです。

収録された曲も、小粋なスタンダード曲から、DBQの大ヒット盤からの人気曲まで、なかなか聴き応えのある選曲である。そんな曲たちを熱気溢れる演奏で紡ぎ上げていく。

僕も、このライブ盤を初めて聴いた時、ビックリした。「これってあのThe Dave Brubeck Quartetなのか?」。DBQの大ヒット盤からの人気曲など、スタジオ録音よりもテンポが速い。「Three To Get Ready」「Blue Rondo A La Turk」「Take Five」、いずれも爽快である。

しかし、このライブ盤、ひとつだけ、欠点がある。ベースとドラムの長尺ソロが収録されていること。Disc2の「King For A Day」と「Castilian Drums」。これはいただけない。これだけが玉に瑕である、どう聴いても退屈である。

のベースとドラムの長尺ソロを除けば、意外や意外、アグレッシブなDBQを、アグレッシブなデスモンドのアルトを心ゆくまで堪能すること出来る、このライブ盤『Dave Brubeck Quartet at Carnegie Hall』は良いアルバムだと思います。DBQに対する誤解した評価も、デスモンドの対する誤解した評価も、一気に一転すること請け合いです。

 
 

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」、「v_matsuwa」で検索して下さい。

Fight_3

がんばろう日本、がんばろう東北。自分の出来ることから復興に協力しよう。
 

2012年2月15日 (水曜日)

続・デスモンドとマリガンの対比

Gerry Mulligan & Paul Desmondの名盤『Blues in Time』とくれば、次に続くは、Gerry Mulligan & Paul Desmond『Two of a Mind』(写真左)である。この流れは僕にとって「定番中の定番」(笑)。

改めて、この『Two of a Mind』、1962年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Gerry Mulligan (bs), John Beal (b), Connie Kay (ds)。フロントにサックス2本、ピアノレスでドラムとベースのリズセクション。変則的なカルテット編成は先の『Blues in Time』と同じ。

ウエストコースト・ジャズの最大の特徴でもある「秀逸なアレンジ」は相変わらず。マリガンが、このアルバムでも、アレンジの腕を存分にふるっている。前の『Blues in Time』よりも、さりげない感じの秀逸なアレンジが実に「ニクイ」。マリガンも大人になったのお。シンプルな中に、なかなかに味のあるアレンジである。

この『Two of a Mind』は、RCAレーベルからのリリースなので、前作『Blues in Time』よりもイージーリスニング・ジャズに傾いていて、デスモンドのアルトも円やかさが更に増している。でも、まだまだ、「鋭い切れ味」で、強いアルトを吹きまくるデスモンドは健在。

そのデスモンドの更にウォームで円やかになったアルトとは正反対の、バリサクの低音を活かしてブリブリと強烈なブロウで、デスモンドのアルトに相対するマリガンも健在。フロントに立って吹きまくるデスモンドの伴奏に回った時の、マリガンのバリサクの伴奏が素晴らしいところも健在。
 

Two_of_a_mind

 
というか、5年の月日の流れが、この二人のコラボをより味わい深く、地味深いものに進化させているように感じる。前作『Blues in Time』では、気合いを入れて必死に吹きまくっていた二人だが、この『Two of a Mind』では、お互いの音と個性をしっかり確認しながら、余裕のあるユニゾン&ハーモニー、余裕のあるスリリングなチェイスを聴かせてくれる。

「All The Things You Are」「Stardust」「The Way You Look Tonight」など、聴き易さ満点のスタンダード曲を、秀逸なアレンジと相性抜群のデスモンドのアルトとマリガンのバリサクが、サックスという同系の楽器でありながら、カバー音域が異なるが故に、「良い塩梅」の音の絡み具合で、実に魅力的に、実に円やかに、実に切れ味良く聴かせてくれる。

良いアルバムです。前作『Blues in Time』よりもイージーリスニング・ジャズに傾いていて、アレンジもさりげなく、「耳当たり」という点では、こちらの『Two of a Mind』の方が、ジャズ者初心者の方々へのお勧めかもしれません。といって、ジャズ者ベテランも方々にも是非一聴して頂きたく。デスモンドに対する感じ方がガラッと変わること請け合いですぞ。

ちなみに、この『Two of a Mind』も、アルバム・ジャケットについては2種類あって、現在、流通しているのは写真右のものみたいですが、僕の馴染みで好きなのは写真左のジャケット。僕はこちらの方が絶対に良い。遙か昔、LPの時代、僕が馴染みだったのは、この写真左のジャケットだったからです。あんまり、ジャケット・デザインは昔と変えて欲しくないなあ(笑)。
 
 
 
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」、「v_matsuwa」で検索して下さい。

Fight_3

がんばろう日本、がんばろう東北。自分の出来ることから復興に協力しよう。
 

2012年2月14日 (火曜日)

デスモンドとマリガンの対比

ポール・デスモンドの名盤『First Place Again』とくれば、次に続くは、Gerry Mulligan & Paul Desmond Quartet『Blues in Time』(写真)である。この流れは僕にとって「定番中の定番」。

改めて、この『Blues in Time』、1957年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Gerry Mulligan (bs), Joe Benjamin (b), Dave Bailey (ds) 。フロントにサックス2本、ピアノレスでドラムとベースのリズセクション。変則的なカルテット編成。プロテュースは、Verveレーベルの総帥Norman Ganz。

この『Blues in Time』の特徴は、ウエストコースト・ジャズの最大の特徴でもある「秀逸なアレンジ」。ウエストコースト・ジャズのリーダーであったマリガンは、バリトン・サックス(略して「バリサク」)奏者としての腕前も素晴らしいが、とりわけ、アレンジの才能がずば抜けている。そのマリガンの手になるアレンジが秀逸。

ウォームで軽やかに飛翔するリリカルなフレーズ、間合いを置きながら、ストレートにスクエアにスイングするインプロビゼーション。デスモンドのアルト・サックスの個性を最大に活かすべく、マリガンはアレンジの才の粋を尽くす。クラシックの対位法なども取り入れた斬新で聴き心地の良いアレンジ。

そんな優れたアレンジに乗って、デスモンドがアルトを吹きまくる。独特なスイング感、円やかな音色、ウォームで軽やかに飛翔するリリカルなフレーズ。加えて、このアルバムでは、デスモンドは「鋭い切れ味」で、強いアルトを吹きまくる。昨日ご紹介した『First Place Again』よりも強いアルトを吹きまくる。

マリガンは、そんなデスモンドを活かすべく、自分が主役な時には、バリサクの中高音域を中心に、小粋に軽やかで円やかなブロウを披露するのであるが、ここでは、その円やかなブロウを封印。
 

Blues_in_time

 
強く吹くデスモンドであるが、それでもデスモンドのアルトはウォームで円やか。そのウォームで円やかなアルトとは正反対の、バリサクの低音を活かしてブリブリと強烈なブロウで、デスモンドのアルトに相対する。

フロントに立って吹きまくるデスモンドの伴奏に回った時のマリガンのバリサクの伴奏が素晴らしい。いや〜上手いなあ。ピアノレスな編成なので、ピアノの役割であるフロントのアルトのインプロビゼーションの底を支える伴奏を、マリガンがバリサクで敢行する。絶妙な伴奏に惚れ惚れする伴奏テクニックである。

更に、デスモンドのアルトとマリガンのバリサクの対比が凄い。双方のブロウの特色、ウォームで円やかなアルトと低音の切れ味鋭い強烈なブロウが、お互いにお互いを惹き立て合う。デスモンドはマリガンの低音の切れ味鋭い強烈なブロウに刺激されて、更に「鋭い切れ味」で、更に強いアルトを吹きまくる。サックスという同系の楽器でありながら、カバー音域が異なるが故に、音の絡み具合が「良い塩梅」である。

なぜか、日本では過小評価されている感じのアルバムですが、どうしてどうして、聴き応え十分。優れたアレンジに乗って、適度な緊張感が心地良いユニゾン&ハーモニー、手に汗握るスリリングなチェイス。デスモンドのアルトとマリガンのバリサクの相性は抜群。双方とも、実に意欲的で挑戦的。1950年代のウエストコースト・ジャズの傑作の一枚です。お勧めです。

なお、アルバム・ジャケットについては、現在、流通しているのは、写真右のものみたいですが、僕の馴染みで好きなのは、写真左のジャケット。僕はこちらの方が絶対に良いなあ。それというのも、この写真左のジャケットを見るたびに、大学時代のジャズ者初心者の頃を思い出すからです。もちろん、LPの時代でした。

 
 

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」、「v_matsuwa」で検索して下さい。

Fight_3

がんばろう日本、がんばろう東北。自分の出来ることから復興に協力しよう。
 

保存

その他のカテゴリー

AOR Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル rock Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アンドリュー・ヒル アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イタリアン・プログレ インパルス!レコード イーグルス ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウディ・ショウ ウラ名盤 エスビョルン・スヴェンソン エディ・ハリス エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルトン・ジョン エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド=メル楽団 サム・リヴァース サンタナ ザ・クルセイダーズ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シャイ・マエストロ ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・レイジ ジョシュア・レッドマン ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・パウエル バリトン・サックス バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザース プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボブ・ジェームス ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス・デイヴィス マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・ジャズ・4 マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 吉田拓郎 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

カテゴリー