2023年5月18日 (木曜日)

レジェンドだけど「元気なロン」

1950年代のハードバップ期から、ずっと第一線で活躍してきたレジェンド級のベーシストについて、振り返って見ると、ほとんどが鬼籍に入ってしまっている。2020年辺りで、現役でプレイしているレジェンド級のベーシストは「ロン・カーター(Ron Carter)」しか見当たら無くなってしまったようだ。

Ron Carter『Foursight - The Complete Stockholm Tapes』(写真左)。2018年11月17日、ストックホルムのジャズクラブ「Fasching」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Jimmy Greene (ts), Renee Rosnes (p), Payton Crossley (ds)。テナー・サックスがフロント1管の、シンプルな「ワンホーン・カルテット」編成。

ロン・カーターは、このライヴ盤の録音時点で81歳。溌剌としたアコースティック・ベースを奏でていて素晴らしい。とても81歳とは思えないパフォーマンス。

ロンは、自身のリーダー作紐解くと、1960年代はリーダー作はドルフィー、マルとの『Where?』のみ。マイルスの下で「限りなくフリーなモード・ジャズ」を志向し、ベースの音は、いかにもモードな演奏に完全対応した様な、間と音の拡がりを活かしたもので、聴けば、これはロンのベースと直ぐ判るほどの個性溢れるベースだった。

しかし、1970年代、マイルスの下を去って独立すると、ほどなくCTIレーベルに移籍。フュージョン・ジャズをメインに活動を継続する。リーダー作の制作については、リーダーとして、ロンの志向するジャズをセッションで具現化する部分はまずまず良好な内容だったのだが、ロンのベースの音自体がいただけない。アンプで電気的に増幅し弦高の低いブヨンブヨンとゴムが伸びたように間延びした、しかも、ピッチが外れたベースの音で、聴くのが辛いリーダー作も多々あった。
 

Ron-carterfoursight-the-complete-stockho

 
1990年代、ブルーノート・レーベルに移籍して以降、ベースの効くに耐えない音が改善され、アコースティック・ベースの弦と胴の骨太な「鳴り」を活かした、ピッチのずれもかなり改善された、まずまずのベース音に修正されて、やっとまともに、ロンのリーダー作を鑑賞する気になった。誰かに指摘されたのかなあ、特に21世紀に入ってからは、安定して端正でロンの個性溢れるアコベで活躍している。

さて、このストックホルムでのライヴ盤に話を戻すと、ロンのベースの音は良好。演奏全体の志向は、過去のモード・ジャズを踏襲しつつ、新しいアレンジや響きを散りばめた「軽めのネオ・ハードバップ」な演奏になっている。大向こうを張ったハッとするような新鮮さはあまり感じられないが、絶対に過去のコピー、過去の焼き直しなモード・ジャズでは無い、どこか現代のモード・ジャズの響きをしっかり湛えた演奏は、意外と聴き応えがある。

他のメンバー、特に、これまたベテラン女流ピアニスト、リニー・ロスネスのパフォーマンスが充実している。そう、ロスネス、モーダルなピアノ、弾きまくりである。とっても溌剌として元気なパフォーマンスにはビックリ。往年のロスネスがここにいる。

サックスのジミー・グリーン、ドラムのペイトン・クロスリーも、あまり馴染みのあるジャズマンでは無いにしろ、当ライヴ盤でのパフォーマンスは大健闘だろう。良い雰囲気、良い感じでのパフォーマンスは聴き応えがある。

選曲も奇をてらわず、と言って、皆がとても知っている「どスタンダード曲」に依存することもなく、ロンの自作曲も交えて、ちょっと小粋なスタンダード曲をチョイスしているところも良い感じ。

現代の「軽めのネオ・ハードバップ」盤として、なかなかの内容の好盤です。録音当時、81歳のロンが元気にプレイしているところも好感度アップ。レジェンド級ジャズマンのリーダー作として、一聴の価値アリ、ですね。
 
 

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2022年8月20日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・247

ゴンサロ・ルバルカバ(Gonzalo Rubalcaba) は「キューバの至宝」と呼ばれるジャズ・ピアニスト。1963年5月、キューバはハバナの生まれ。今年で59歳、来年は還暦。もはや、キャリア的にはベテランからレジェンドの域に差し掛かっている。僕がゴンサロの出会ったのは、1990年『Discovery: Live at Montreux』を手にした時。あの頃、ゴンサロは弱冠27歳。あれから30年以上、ゴンサロのピアノの志向はブレていない。

ゴンサロのピアノは超絶技巧ではあるが、リリカルでメロディアス、そこはかとなくアーシーでワールド・ミュージック的な雰囲気が漂い、カリプソな雰囲気も見え隠れする。回りくどいことは無く、判りやすい光速のパッセージでアプローチは意外と直線的。ビ・バップ・マナーの超絶技巧な高速ピアノと、間を活かした印象派マナーの耽美的でリリカルなピアノの双方を両立させた個性が特徴。

Gonzalo Rubalcaba Trio『Skyline』(写真左)。2021年の作品。ちなみにパーソネルは、Gonzalo Rubalcaba (p), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。ゴンサロが若き日に師事したジャズメンと再会したいという長年の希望を受けて実現した再会セッションの記録。現代のアコベのレジェンド、ロン・カーターと、現代のポリリズミックなドラマーのレジェンド、ジャック・デジョネットがリズム隊で参入している。
 

Gonzalo-rubalcaba-trioskyline

 
ゴンサロのピアノの個性をしっかり記録しつつ、ゴンサロのピアノの成熟を聴いて取れる、内容の濃いピアノ・トリオ盤である。相変わらずの超絶技巧であるが、若かりし頃の「どうだ、凄いでしょ」的な大向こうを張った弾き回しでは無く、硬軟自在、緩急自在、音とリズムをしっかりと選びつつ、機微溢れる、クールでブルージーでモーダルなピアノをじっくり聴かせてくれる。弾きまくるゴンサロ、内省的なゴンサロ、ゴンサロのピアノの良いところがこの盤にしっかり記録されている。

ゴンサロの成熟したピアノの良いところをグイグイと引き出しているのが、ロンのベースとデジョネットのドラム。ロンのべースは、ゴンサロのモーダルなピアノの底をしっかりと支えて安定感抜群。デジョネットのポリリスミックなドラミングは、ゴンサロのピアノに推進力と変化のタイミングを与え続ける。素晴らしいインタープレイの応酬。ゴンサロのピアノが映えに映える。

ゴンサロ健在。ロンも健在、デジョネットも健在。凄まじく、内容濃く、新しい響きを湛えたインタープレイを繰り広げるレジェンド級のピアノ・トリオ。その演奏の数々は凄みが感じられるほど、硬派で切れ味の良いもので、まだまだ若手ピアノ・トリオには及ばない、様々な「粋」なアプローチと弾き回しは、後に名盤と呼ばれるに相応しい内容ではないかと感じて、聴いていて何だか「嬉しく」なりました。
 
 

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2018年10月30日 (火曜日)

再掲『ジム・ホールの想い出 』

ベーシストのリーダー作は、なかなかに聴き応えがあるものが多い。ベースのテクニックをメインにした盤は当たり前なんだが、ベースという楽器のポジションを活かした「グループ・サウンド」をプロデュースしコントロールした盤が良い。リーダーであるベーシストの音楽性がとりわけ良く判る。特にライヴ盤では、リーダーのベーシストのテクニックと音楽性の両方が良く判る盤が多く、ベーシストのリーダー作はライヴ盤だったら、迷わず入手することにしています。

Ron Carter『In Memory of Jim』(写真左)。2014年1月20日、ブルーノート東京にてのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Larry Coryell & Peter Bernstein (g)。なかなか良い音で録れております。リーダーがベーシストのロン、パートナーのギタリストがコリエルとバーンスタイン。名前を見ただけで思わず触手が伸びる。ジャケット・デザインもなかなかグッドで、中の音が期待出来ます。

ちなみに「Jim」とは「Jim Hall(ジム・ホール)」のこと。プログレッシヴなレジェンド・ギタリストで、2013年12月に急逝。この盤は追悼盤の位置づけになります。ちなみに邦題は『ジム・ホールの想い出 』。ジム・ホールとロン・カーターは何枚か、デュオでの共演盤があって、そのデュオ演奏を聴けば判るのですが、相性は良く、どのデュオ盤も良い内容です。
 

Ron_in_memory_of_jim

 
このトリビュート盤では、ジム・ホールの代わりを、ラリー・コリエルとピーター・バーンスタインが務めています。代わる代わる弾くのでは無く、ロンのベースに2ギターでのトリオ編成の演奏になっていて、意外とユニークで聴き応えがあります。「アローン・トゥゲザー」「セント・トーマス」など、ジムとのデュエットのレパートリーだった有名スタンダードを中心に演奏されていて、聴いていてとても楽しい内容。

実はこの盤、しばらく聴くのを躊躇っていました。それというのも、この盤のロンのベースはピッチが合っているか、そして、アコベの音をアタッチメントで増幅していないか、その2点が心配で、なかなか聴く勇気が出ませんでした。が、それは杞憂に終わったようで、ロンのベースのピッチは意外と合っていて聴ける。そして、アコベの音は電気的に増幅されておらず、アコベの生々しい骨太な響きが心地良い。

このライヴ盤、ロンのベースは「当たり」です。ギタリストのコリエルとバースタインとの相性も良いようで、かなり内容の濃い、適度なテンションの中、丁々発止とインプロビゼーションが展開されます。ロンはデュオが得意。ロンのベースはギターに上手く絡みます。それでいて、リーダーとして、アコベ演奏の主張はしっかりと前面に押し出す。ロンのベースの良い面がしっかり出た好盤です。
 
 
 
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2016年3月 7日 (月曜日)

究極のベーシストのリーダー作

「ミスター・ベーシスト」ことRon Carter(ロン・カーター)。このロンのリーダー作を以前より興味深く聴き直してきた。ベーシストがリーダーの作品とはいかなるものか、何が理想的なベーシストのリーダー作なのか。そんなことを考えながらの聴き直し。

終着点は「Ron Carter Golden Striker Trio(ゴールデン・ストライカー・トリオ)」。初代のメンバーは、Ron Carter (b), Mulgrew Miller (p), Russell Malone (g)。 ギターが入った「ドラムレス・トリオ」である。1950年代以前の旧来のピアノ・トリオ。

このGSTがロンのリーダー作の最終地点。ロンのベースが映え、トリオ演奏としての内容も秀逸、アタッチメントを付けて変にベース音を増幅しなくても、この構成であればベースの音が伸びやかに拡がり、ベースあってのトリオ演奏という図式が実に魅力的に響くのだ。

ここに2枚のアルバムがある。『It's The Time』(写真左)と『San Sebastian』(写真右)。『It's The Time』は2007年12月のリリース、『San Sebastian』は2013年2月のリリース。どちらも素晴らしい内容のトリオ盤である。

『It's The Time』は、東芝EMIの企画盤。選曲を見ても明らかに「日本のジャズ企画盤」の臭いがプンプンするんだが、内容はどうして、お世辞抜きで素晴らしい。まず、である。ロンのベースのピッチが合っている。バッチリ合っている。
 

Its_the_time_san_sebastian

 
これだけピッチがバッチリ合っているので、ロンの強靱なベースラインが実に良く聴き取れる。このスタジオ録音盤は、ロンのベースの良さが前面に押し出されたアルバム作りになっていて、ロンのソロ&バッキング、両面のロンの良さが溢れんばかりの演奏が詰まっている。

『San Sebastian』は、In+Out Recordsからのリリース。In+Out Recordsはドイツのレーベル。こちらのアルバムはライブ盤。2010年7月22日にスペインのJazzaldia Festivalでの音源である。こちらのアルバムは、トリオ演奏全体の良さが前面に押し出されていて、特に、ピアノのマリュグリュー・ミラー、ギターのラッセル・マローンの素晴らしい演奏が耳を惹く。

ロンが持った最高のパーマネント・バンドであったことが良く判るライブ録音である。ロンも素晴らしい。特に、このライブ盤では、バックに回った、バッキングの妙技を聴かせてくれるロンの凄さが印象的。ラストのジョン・ルイス作曲「Golden Striker」は絶品。もちろん、ロンのベースのピッチはバッチリ合ってますよ(笑)。

ベースのチューニングがほぼ完璧になり、ドラムの大音量から逃れた「ドラムレス・トリオ」にて、自然のベースの音がクッキリ浮かび上がる様になり、ロンのベースの素晴らしさがストレートに伝わる。それによってバッキングの妙技が発揮され、トリオ演奏全体の出来が更に素晴らしくなる。これぞ、ベーシストのリーダー作の究極の姿のひとつだろう。
 
 
 
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2016年1月21日 (木曜日)

『ジム・ホールの想い出』に感服

ベーシストがリーダーのアルバムが面白くて、まだまだその聴き直しは続くぞ〜。今日もロン・カーターのアルバムをチョイス。初めて聴いた時、思わず「これは良いアルバムではないか」と、ただただ感心した。

Ron Carter『In Memory of Jim featuring Larry Coryell and Peter Bernstein』(写真左)。2014年1月20日、ブルーノート東京にてライヴ録音。2013年12月に他界したジャズ・ギター界の巨匠、ジム・ホールに捧げたライブ演奏を収録した盤。

改めて、パーソネルは、Ron Carter (b), Larry Coryell, Peter Bernstein (g)。ベースと「2本のギター」とのデュオ演奏。これがまあ、聴けば判るんだが大正解な編成。ギターを2本重ねることで、ジャズ・ギターの音の細さを補って、かつ旋律をクッキリと浮かび上がらせる。

ロンとジムは何枚かの競演アルバムを残している。テクニックを駆使しつつ、歌心溢れるアドリブ・フレーズを繰り出しながら、素晴らしいデュオ・パフォーマンスを展開する。そんな競演ではあるが、僕にはどうしても気になることがあった。

どう聴いてもジムのギターの音が細いのだ。シングルトーン中心のアドリブ演奏なので、それはそれで仕方が無いのだが、相手は太っとい弦のベースである。比べれば、音の細さがどうしても気になる。

で、今回のロンのアルバムでは、その音の細い傾向のギターを2本重ねることによって、その弱点を完全に克服。加えて、ロンのベースとギターのデュオ演奏という、ロンとジムのデュオ競演の雰囲気をしっかりと再現しているのだ。旋律がクッキリと浮かび上がる。ユニゾン&ハーモニーが様々なバリエーションで豊かに響く。
 

In_memory_of_jim_3

 
演奏全体の雰囲気は、典雅で濃密、そして柔軟。特に、ギターのラリー・コリエルの参入が意外だった。コリエルと言えば、クロスオーバーからフュージョン系のギタリストのイメージが強い。そんなコリエルがメインストリームなジャズ・ギターをやるのだ。どうなるんや。どきどきする。

これがまあ、このアルバムの一番のサプライズで、そんなコリエルのギターに「ジムが降臨している」。ジムのギターの雰囲気が、このコリエルのギターに宿っているのだ。これにはビックリした。コリエルのギターの奥の深さと引き出しの多さ、そして、テクニックの高さにおもわず脱帽である。

もう一人のギタリスト、ピーター・バーンスタインのギターは「安心、安全、安定」の安全運転ギタリスト。ジム・ホールの直弟子だとのことで、その演奏も、直系の端整さが聴いて取れます。メインストリーム・ジャズ・ギターの「ど真ん中」。

ジャズ演奏の中での理想的なベースの役割、ベースの音色、そしてそのテクニックを、グループ・サウンズを通じて演出する。そんな、ジャズ演奏におけるベースの役割の明確化と理想的なベースの演奏モデルの提示。そういうリーダーを張るベーシストの王道をしっかりと押さえたロンのベースのパフォーマンスはさすがです。

ジャケットもお洒落。編成とアレンジの勝利。『ジム・ホールの想い出』。初めて聴いた時、思わず「これは良いアルバムではないか」と、ただただ感心した。
 
 
 
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2015年4月 3日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・60

ジャズのアルバムには、歴史的名盤とか定盤なんかでは無いんだけれど、ジャズの紹介本とか雑誌の名盤コーナーに、その名が挙がったりはしないんだけど、何故かその内容が気に入って、何故かずっと愛聴しているアルバムがある。 

僕にとってのそんな一枚がこれ。Jackie McLean With The Great Jazz Trio『New Wine In Old Bottles』(写真左)。1970年代、メインストリーム・ジャズを扱った日本の伝説的レーベル「East Wind」からのリリース。 1978年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Ron Carter (b),  Tony Williams (ds), Hank Jones (p)。

1970年代後半、一世を風靡したメインストリーム・ジャズ・トリオ、ハンク・ジョーンズ率いる「グレイト・ジャズ・トリオ」をバックに、アルトのジャキー・マクリーンが吹きまくるという、いわゆる企画盤。しかも、1978年という、フュージョン全盛期の中でのメインストリーム・ジャズ。

これがまあ、実に気持ちの良い内容なんですね。懐古趣味が前提のメインストリーム・ジャズでは無いところが素晴らしい。このアルバムを制作した4人のジャズメンの矜持を強く感じる。まずはリズム・セクションを司る「グレイト・ジャズ・トリオ」の音が新しい。1970年代後半、最先端のメインストリーム・ジャズの響きを感じる。

そして、フロントのワンホーン、アルトのマクリーンが良い。最初の「Appointment In Ghana Again」でのマクリーンはちょっと大人しい。しかも、1950年代後半から1960年代のちょっとピッチが外れたストレートな音で、バリバリ吹きまくる姿とはちょっと違った、お行儀の良い、ピッチのほぼあったマクリーンがここにいる。
 

New_wine_in_old_bottles

 
マクリーン、衰えたかと危惧するが、どうして、2曲目の「It Never Entered My Mind」から走り始める。お行儀が良くなった、と感じるのは、年齢相応の落ち着きが備わったから。ピッチがほぼ合った感じなのは、テクニックが備わり、端正なインプロビゼーションが展開できる様になったから。アルト奏者として成熟したマクリーンを感じることが出来るのだ。

この成熟した落ち着いたマクリーンを「カンが戻らずにイマイチ」という評価もあるが、それはちょっと違うだろう。1950年代後半から1960年代のマクリーンは、若さと勢いに任せて、ピッチが少し外れようが、ポジティブにバリバリ吹きまくった。それはそれで良いことなんだが、じゃあ、それがマクリーンの絶対的スタイルかと言えば、そうでは無い。

1970年代後半、マクリーンのアルトは成熟した。落ちついた余裕のある吹き回しが、実に魅力的なんだが、そんな成熟したマクリーンのアルトを、この『New Wine In Old Bottles』では、心ゆくまで堪能することが出来るのだ。

バックを司る「グレイト・ジャズ・トリオ」のパフォーマンスは申し分無い。「グレイト・ジャズ・トリオ」の演奏としては、彼らのキャリアの後期に位置する、トリオとして十分にこなれた、十分に成熟したパフォーマンスである。じっくりと聴けば聴くほど、その良さがどんどん深く広く理解出来る、実に味のあるパフォーマンスである。

アルバム・ジャケットも魅力的。港の桟橋、お洒落な街灯、真っ赤なウィンチ。計算されたような桟橋の配置、海の部分と桟橋の部分との割合。どれもが新しいデザイン・コンセプト。そして、その盤の中に詰まっているジャズは、1978年当時の最先端のメインストリーム・ジャズ。良い盤です。
 
 
 
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2015年3月26日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・44

こういうアルバムは聴いていて、文句無しに楽しい。加えて音が良い。これまた、文句無しに楽しい。しかも、こんな純ジャズなアルバムが、1977年10月に録音されていたんだから、米国の音楽シーンは懐が深い。

そのアルバムとは、The Great Jazz Trio『Direct From L.A.』(写真左)。The Great Jazz Trio(以下GJTと略す)は、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds) の3人の名うてのジャズ職人で構成されたピアノ・トリオ。

新主流派の最先端を走っていたベースのロンとドラムのトニーはともかく、この当時ジャズ界の先端を行くピアノ・トリオの主役、ピアノを担うのが、当時、既にベテランの域に達していたハンク・ジョーンズである。このGJTの演奏を聴く前には、どう想像したって、ハンクのピアノは時代遅れの音なんだろうな、って思ってしまう。

それじゃあ、なんで新主流派の最先端を走っていたベースのロンとドラムのトニーが、このベテラン、ハンク・ジョーンズと組んで、ピアノ・トリオとして演奏を繰り広げたのか、が判らない。日本のジャズレーベル独特の、ギャラを積んで一流ジャズメンを呼んだ、趣味の悪い企画セッションなのかと勘ぐったりする。

しかも、このアルバムの収録曲が「Night In Tunisia」「Round Midnight」「Satin Doll」「My Funny Valentine」の4曲。それも超有名なジャズ・スタンダード曲ばかり。これだけ超有名なジャズ・スタンダード曲を並べられると、胡散臭さに拍車がかかる。大丈夫なのか、このアルバムとも思う。
 

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しかし、一旦、このアルバムを聴き始めると、まずは思わずビックリ。聴き耳を立て始め、1曲目の「Night In Tunisia」のアドリブ部の展開の頃には、ドップリとこのアルバムの演奏に聴き入っている。

まず、時代遅れの音なんでしょう、と思っていたハンクのピアノが素晴らしく創造的で先鋭的。実に尖った当時最先端のモダンジャズなピアノの響きである。確かにタッチはハンクの典雅なタッチ。しかし、そのインプロビゼーションの展開はダイナミックで緊張感溢れる先鋭的なもの。

逆にそんな先鋭的なハンクのピアノに煽られて、ロンのベースがモーダルにブンブン唸りを上げ、トニーのドラムがマシンガンのように打ち付けられ、時にハイハットが飛翔する。凄まじいばかりのリズム&ビートのうねり。その「うねり」に乗じて、ハンクのピアノがスリリングなアドリブ・フレーズを展開する。

恐らく、この『Direct From L.A.』というアルバム、GJTのスタジオ録音の中でも出色の出来でしょう。収録時間は、LP時代のダイレクト・カッティングのアルバムなので、全体で29分弱と短いが、そんな短さが全く気にならない位に、このアルバムに収録された演奏は相当に充実している。

疾走感とスイング感を両立させつつ、ダイナミックな表現とセンシティブな表現を共存させる。そんな大変モダンなピアノ・トリオを実現しているところが凄いですね。全くもって脱帽です。ピアノ・トリオの常識を覆す斬新な演奏は今の耳にも新鮮に響きます。
 
 
 
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2014年2月19日 (水曜日)

GJTのヘビロテ盤の『K.J.L.H.』

やはり、ピアノ・トリオは良い。現代では、ピアノ・ベース・ドラムというセットが基本形。同じセットだと音も同じだ、と思ってしまうのだが、ジャズではこれがそうはならない。様々なジャズメンとの組合せの数だけ、音の個性がある。

ということで、どのピアノ・トリオをとっても、異なる個性を愛でることが出来るのがジャズの良いところ。僕は、ピアノ・ベース・ドラム、それぞれの楽器のお気に入りのジャズメンに注目して、そのトリオとしての組合せを楽しむことが中心になる。

そんな楽しみ方の中で、1970年代後半、ジャズを聴き始めてまだ3年位でお気に入りになったのが、The Great Jazz Trio(以降、GJTと略)。パーソネルは、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。

1918年7月生まれで最年長のピアノのハンク・ジョーンズと、1945年12月生まれで最年少のトニー・ウィリアムスとの年齢差は「27歳」。真ん中のロン・カーターが1937年5月生まれだから、ハンクとの年齢差は「19歳」で、トニーとの年齢差は「8歳」。

年長の兄貴格のロンと弟格のトニー、その二人に君臨する父親格のハンクという図式になる。しかしながら、このGJT、発案は一番年下のトニー・ウィリアムス。マイルス・バンド出身、当時、ジャズ界で先進的なリズム&ビートの担い手であったロン&トニーと、モダンかつ典雅なタッチが個性のベテラン、ハンクのピアノの組合せが実に新鮮だった。

先進的なリズム&ビートの担い手、特にトニーのドラミングに触発された、ハンクのコンテンポラリー、スインギーかつバイタルなピアノが際立っていた。あの典雅で端正なハンクのピアノが、当時のジャズ界の最先端、モーダルで限りなくフリーに近いコンテンポラリーなタッチに変化して、ガンガン弾きまくるのだ。それでいて、どこか「典雅で端正な響き」を宿したところが堪らない。
 

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そんなGJTの個性を心ゆくまで愛でることの出来るアルバムが、スタジオ録音第2弾だった『K.J.L.H.』(写真)。1977年10月の録音。ちなみに「K.J.L.H.」とは、"Kindness, Joy, Love & Happiness"を略したFMラジオ局のこと。とにかく、ジャケットが粋で格好良い(LPサイズだとなお迫力が出る)、僕にとっても、この『K.J.L.H.』は、GJTのヘビロテ盤の一枚。

このアルバムに収められた7曲は、今では恐らくほとんどのJazzファンには馴染みの深い、いずれも有名なスタンダード・ナンバーではあるが、どちらかと言えば、メカニカルで「ミュージシャンズ・チューン」的な、演奏者としてやって楽しいナンバーがチョイスされている。

これがまあ、どの曲も聴いていて楽しいこと楽しいこと。このGJTの個性である、ジャズ界で先進的なリズム&ビートの担い手であったロン&トニーのリズム&ビートに触発されて、どこか「典雅で端正な響き」を宿しつつ、モーダルで限りなくフリーに近いコンテンポラリーなタッチでガンガン弾きまくるハンクが「むっちゃ格好良い」。

トニーなぞ、喜々として全面に押し出て、バリバリに叩きまくっているのだが、それに触発されたモーダルで限りなくフリーに近いコンテンポラリーなハンクのタッチの方がより全面に押し出て、明らかに「目立っている」。ロンはその間に立って、どちらかと言えば、トニーのドラミングを柔らかくコントロールしている感じ。

このハンク、トニー、ロンのトリオの音がとにかく個性的なんですね。それまでに無かった響きでしたし、今の耳で振り返っても、唯一無二な響きを宿していて、それはそれは素晴らしい演奏を繰り広げています。録音も優秀。独特の個性で聴き応え満点、飽きの来ないピアノ・トリオの佳作です。
 
 
 
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2012年9月26日 (水曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・18

約1ヶ月ぶりの「ビッグバンド・ジャズは楽し」の特集。3日前辺りから、めっきり涼しくなった。涼しくなってきたら、てきめん、ビッグバンドが聴くのが楽しくなる。

今日のビッグバンド・ジャズは『Ron Carter's Great Big Band』(写真)。2010年6月の録音。ロン・カーターの音楽キャリアの中で初めての、待望のビッグバンド・ジャズの録音だったと聞く。

ビッグバンド・ジャズの楽しみは、ビッグバンド・ジャズとしてのアレンジメントとコンポーズとプロデュース。しかし、このロン・カーターの初のビッグバンド盤は、アレンジャー兼ミュージック・ディレクターであるロバート・M・フリードマンに委ねられている。な〜んだ、ロン・カーター自身が、自身のビッグバンドのアレンジャー兼ミュージック・ディレクターを担当している訳じゃあ無いのか。

じゃあ、ロン・カーターとして、自らのビッグバンドを率いるチャンスが初めて巡ってきたとして、何が楽しかったのか、と思ってしまうし、聴く方としても、何を楽しみにして、この盤を聴いたら良いのか。ちょっと戸惑いを感じながらのアルバムのリスニングである。

収録された曲は、なかなかユニーク。ビッグバンド御用達という曲は多々あるが、ロン・カーターがリーダーということを考慮してか、ハードバップの名曲のビッグバンド・アレンジがずらりと並ぶ。

例えば、ガレスピーの「Con Alma」、マリガンの「Line for Lyons」、ショーターの「Footprints」、ジョン・ルイスの「The Golden Striker」など、ビッグバンド・ジャズのアレンジで、そうそう聴ける楽曲では無い。
 

Ron_carters_great_big_band

 
さて、アルバム全体の雰囲気は、と言えば・・・。一言で言うと「安全運転」。ビッグバンドのメンバーもテクニックの優秀なメンバーをずらり集めている様で、ビッグバンドの演奏は素晴らしく出来が良い。破綻は全く無し、オーバードライブすることも無く、スローなバラードで横滑りすることも全く無い。

アレンジメントも普通の優秀なビッグバンドの「良きアレンジ」を集めて、その良いとこ取りをしたような、とにかく、絵に描いた様な端正で優等生的なアレンジメントで、とにかく聴いていて破綻が無い。変な癖も無い。個性的な響きも無い。この辺が、ビッグバンドを愛好するジャズ者の方々から、どう感じるかが興味のあるところ。

僕にとっては、何かしながらの「ながらジャズ」としては良いが、この「安全運転」で、絵に描いた様な端正で優等生的なビッグバンドは、どうも心底楽しめない。あまりに優等生的な、個性に乏しいビッグバンドなので、面白味に欠けるというか、どのポイントに絞って聴き耳を立てたらよいのやら、迷ってしまうなあ。

しかし、ビッグバンド入門用としては最適な内容でしょう。癖の無いところ、これがビッグバンドです、という様な優等生的なところが、ビッグバンドを初めて聴くジャズ者の方々には、結構良いのではないか、と思います。聴く耳に音が優しい、録音の良いところもグッド。

ビッグバンド・ジャズの楽しみは、ビッグバンド・ジャズとしてのアレンジメントとコンポーズとプロデュース。このポイントを全て、他人に任せてしまった、ロン・カーターがリーダーのビッグバンドって、どうにも楽しみポイントが見いだせない。

このアルバムを聴いて改めて思った。やっぱり、ビッグバンド・ジャズの楽しみは、ビッグバンド・ジャズとしてのアレンジメントとコンポーズとプロデュースなんだなあ、と。それは決して他人に任せてはいけないんだなあ、と・・・。
 
 
 
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2012年7月 2日 (月曜日)

ロン・カーター『Spanish Blue』

今日から暫く、ジャズ・ベーシストのリーダー作を集中して特集したい。

ジャズには様々な楽器奏者のリーダー作が存在するが、リーダー作をリリースするのは、大多数がフロント楽器である、つまりは旋律楽器であるサックスやトランペット、ピアノ、ギターの奏者がリーダーとなったアルバムが大多数である。

ちなみに、ベースとかドラムは、ジャズ演奏の中では「リズム楽器」の一部とされる。ベースの場合は旋律を奏でることはできるが、その楽器の性質上、音の幅、音色のバリエーション、音の抑揚、強弱について、他の旋律楽器と比べて、その範囲が狭く、旋律楽器としてはなかなか成立が難しい楽器である。

つまりは、ベースやドラムは、リーダーの楽器として前面に押し出すのが難しく、いきおい、ベーシストやドラマーがリーダーのアルバムは少ない。ベーシストに至っては、リーダー作を次々と連発するベーシストは数える程しか無く、パッと思いつくのは、現役ではロン・カーター、クリスチャン・マクブライド、伝説のベーシストとしては、チャーリー・ミンガス、レイ・ブラウン。

ジャズ・ベーシストのリーダー作は幾つかのケースに分かれる。

まずは、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケース。自らはその音世界の創造を支える側に回って、自らのベースはあまり前面に出ることは無い。フロント楽器の奏者が素晴らしいパフォーマンスを発揮すると、時に誰のリーダー作か判らない様になってしまうことがままある。それでも、その音世界の表現が素晴らしい、つまりはセルフ・プロデュースの手腕が優れていると、ジャズ・ベーシストのリーダー作として成立する。

今日、ご紹介するのは、Ron Carter(ロン・カーター)の『Spanish Blue』(写真)。1974年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Billy Cobham (ds), Hubert Laws (fl), Jay Berliner (g), Ralph MacDonald (per), Roland Hanna (p)。
 

Spanish_blue

 
プロデューサーがCreed TaylorのCTIレーベルからのリリース。CTIだからフュージョン・ジャズか、と思いきや、1970年代のフュージョンの音のトレンドを踏まえた、なかなかのメインストリーム・ジャズな演奏になっている。

ロン・カーターと言えば、今や、大ベテランのベーシスト。今年で75歳。マイルスの1960年代の伝説のカルテットのメンバーの一人。1974年の録音だから、当時37歳。中堅バリバリの時代のリーダー作。タイトルから判る様に、スパニッシュ基調の演奏を集めた企画盤。

収録されたどの曲もスパニッシュ基調の良い曲、良い演奏ばかり。このアルバムでは、ロンのベースのチューニングは合っていてなかなかのパフォーマンス(ロンはベースのチューニングを良く外した時期があった)。プロデューサーのクリード・テイラーとロン・カーターとの共同作業によって創造されていく、素晴らしいスパニッシュ・ジャズな音世界。

しかし、このアルバムは、フルートでフロントを担ったヒューバート・ロウズのアルバムだ。収録された全ての曲において、ロウズは最高のパフォーマンスを繰り出し続ける。これだけ優れたテクニックで、エモーショナルで、メロディアスなジャズ・フルートはなかなか聴けない。この『Spanish Blue』でのロウズのフルートは、彼のベスト・プレイのひとつと断言できる。

つまりは、このアルバム、フロント楽器の奏者が素晴らしいパフォーマンスを発揮すると、時に誰のリーダー作か判らない様になってしまうことがままある、という代表的なケースである。この『Spanish Blue』は、フルートのヒューバート・ロウズに「母屋を乗っ取られた」感じの、ベーシスト、ロン・カーターの優れたリーダー作である。

でも、この『Spanish Blue』でのロンのパフォーマンスは、ベースのピッチも合っているし、ベースのフレーズも個性的で、ロンのベースもしっかりと楽しむ事が出来る。そういう意味では、ベーシスト、ロン・カーターとしてもベスト・プレイが記録された、ロンの代表作の一枚に数えられる佳作だと僕は思う。 

 
 

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