グリーンのメジャー・デビュー
ベニー・グリーンというピアニストは隅に置けない。日本人好みのピアノを弾くと評されるが、意外と我が国では人気はイマイチ。最近のジャズ・ピアニストの特集などで、現代のジャズ・ピアニストのお勧めで、ベニー・グリーンという名前を見かけたことが無い。しかし、このピアニスト、ネオ・ハードバップにおけるモーダル・ピアノの先駆者として、実に優れたパフォーマンスを聴かせてくれているのだ。
Benny Green『Lineage』(写真左)。1990年1月30日、2月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Benny Green(p), Ray Drummond (b), Victor Lewis (ds)。ブルーノート・レコードからのリリース。ネオ・ハードバップのバップ・ピアノを先取りしたピアニスト、ベニー・グリーンのメジャー・デビュー作になる。初リーダー作から3作目にして、メジャー・デビューである。その才能がいかに着目され、期待されていたかが判る。
そして、さすが、ブルーノートである。Matt Pierson(マット・ピアソン)のプロデュースによって、ベニー・グリーンのピアノの個性であ「明るく判り易く、どこかポップな、過去のモード・ジャズな演奏を下敷きにしていない、ネオ・ハードバップのバップ・ピアノを先取りしたモーダルな弾きっぷり」をしっかりと記録している。
Criss Cross時代の2枚のリーダー作と比べて、ベニー・グリーンのピアノ全体の雰囲気は「明るい」。明るくシンプルで端正なモード・ジャズ。この辺りも意外と当時としてはユニーク。1960年代のモード・ジャズが持つ、硬派で真摯でテンションが高い雰囲気の微塵も無い。
バックを司る、ベースのレイ・ドラモンド、ドラムのビクター・ルイスのリズム&ビートについても、1960年代のモード・ジャズ独特のリズム&ビートの影を一切反映していない。ベースとドラム、1990年時代で、二人が考える、将来のモーダルなリズム&ビートを叩きだしている。これが、グリーンのネオ・ハードバップのバップ・ピアノを先取りしたモーダルなピアノにぴったり合っているから堪らない。
収録曲は、ボビー・ティモンズ、セロニアス・モンク、エルモ・ホープ、バド・パウエルなど、ジャズのピアニストの歴史を彩る「スタイリスト」達の曲を選んでいる。それぞれ、演奏スタイル、踏襲するトレンド、どれも異なるのだが、その個性は強烈。そんなピアニスト達の自作曲を、グリーンは、グリーンの感覚でモーダルにアレンジし、モーダルに表現し直している。
これって、簡単な様で結構難しいアレンジと弾き回しかと思うのだが、この難度の高いアレンジを、グリーンは「明るく判り易く、どこかポップな、ネオ・ハードバップのバップ・ピアノを先取りしたモーダルな弾きっぷり」で、事も無げに対応している。
今までのジャズ雑誌でのジャズ・ピアノ盤の紹介記事や、ネットでのピアノ・トリオのお気に入り評についても、このベニー・グリーンのメジャー・デビュー作について、そのタイトルが挙がることはまず無い。でも、このトリオ盤は、現代のネオ・ハードバップのモード・ジャズに通じる、「ベニー・グリーンの考えるモード・ジャズ」をしっかりと記録している。ベニー・グリーンを理解する上では避けては通れないメジャー。デビュー盤だと思います。
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