2024年10月 2日 (水曜日)

向谷ならではのフュージョン盤

我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。結成時から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの活動の第1期の中、常にカシオペアはグループとしての活動を優先した為、1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を展開したが、そのソロ活動も各自のソロアルバムを制作するだけに留めている。

向谷実『Welcome To Minoru's Land』(写真左)。1985年の録音、1986年のリリース。ちなみにパーソネルは、向井実がただ一人。向谷が、YAMAHA KX88, YAMAHA DX7, TX816×2, RX11, QX1, グランド・ピアノ, ROLAND TR-707, SBX-80, KORG SUPER PERCUSSION,MINI MOOG,EMULATOR II などを担当し、一人多重録音で制作した、向谷のソロ・アルバム第一弾。

当時最新のシーケンサーとリズムマシンを組み合わせての一人多重録音のアルバム。これをクロスオーバー&フュージョン・ジャズの範疇の音楽と認識した良いか、という議論があったが、採用されたリズム&ビートは、打ち込みであれ、ジャズを基本としたものなので、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの範疇として、僕は取り扱っている。
 

Welcome-to-minorus-land

 
ややもすれば、カシオペア・サウンドの中で埋もれがちだった、向谷の持つ音楽性とキーボード・テクニックの高さ、そして、シンセサイザー及びシーケンサー、リズムマシンに対する理解度と応用力の高さが、音となって示された、ユニークなソロ・アルバム。当時の電気楽器は、デジタルに対応したばかりで音が薄く、無機質な音質傾向にあったが、その弱点を克服する多重録音のテクニックと、木琴やピアニカ等の楽器を活用し、アナログ的な温かみを感じさせる工夫は見事である。

カシオペアの音世界の雰囲気を漂わせつつ、カシオペア・サウンドよりもポップでシンプルで柔軟な音とフレーズで、向谷独自のサウンドを展開している。2曲目の「ASIA」では、東南アジアをメインとした各国の音をサンプリングして、多重録音で音のコラージュを聴かせてくれる。3曲目の「Take The SL Train」は、鉄道ファンである向谷の面目躍如的な名演で、SLの音をサンプリングして、走行時のレールのつなぎ目音をリズムの基本にした音作りには思わず「ニンマリ」。

サンバ・フュージョンの「Road Rhythm」、アンビエントな「Kakei」、向谷と二人の子供達の会話を交えた、ほんわかアットホームでポップなフュージョン曲「Family Land」。一人多重録音で、ポップでシンプルで柔軟な向谷独自のサウンドに彩られた演奏が聴いていて、とても楽しい。向谷ならではのユニークなクロスオーバー&フュージョンの好盤だと思います。
 
 

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2024年9月30日 (月曜日)

増尾好秋 ”Sunshine Avenue”

フュージョン・ジャズ全盛時代の1970年代後半、増尾好秋の『Sailing Wonder』、『Sunshine Avenue』、『Good Morning』の3枚のアルバムは、勝手に「増尾好秋のフュージョン3部作」と呼んで愛聴していた。机に向かって勉強するにも、麻雀するにも、いきつけの喫茶店で寛ぐにも、この「増尾好秋のフュージョン3部作」をヘビロテにしていた時期があった。

増尾好秋『Sunshine Avenue』(写真)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、Yoshiaki Masuo (el-g, ac-g, solina, perc), Victor Bruce Godsey (ac-p, el-p, clavinet, vo), T.M.Stevens (el-b, piccolo bass), Robbie Gonzales (ds), Charles Talerant (perc), Papo "Conga" Puerto (congas), Jorge Dalto (ac-p), Shirley Masuo (perc), Michael Chimes (harmonica)。

前作『Sailing Wonder』が、クロスオーバー&ジャズロック志向の素敵なアルバムだった。そして、次作『Good Morning』は、フュージョン・ジャズに傾倒した名盤だった。この間に位置する『Sunshine Avenue』は、増尾好秋の考える「ジャズ・ファンク、ジャズロック、R&B志向のフュージョン」が、ごった煮に収録されている。

ボーカル入りの演奏もあったりして、とっ散らかった雰囲気もあるのだが、増尾のギターの音色、フレーズに一貫性があって、この増尾のギターが、とっ散らかし気味の音志向の中で一本筋を通していて、この増尾のギター一本で、アルバム全体の統一感を司っているのだから、増尾のギターは、決して「隅におけない」。
 

Sunshine-avenue 

 
バックのメンバーは、『Sailing Wonder』の様な、フュージョン・ジャズの名うての名手達を集った、オールスターの「一過性」のセッション・メンバーでは無く、バンド・メンバーとして、一定期間、恒常的に活動し、共にバンド・サウンドを育み、バンド・サウンドを成熟させるメンバーを厳選した様である。

この『Sunshine Avenue』でのバンド・メンバー、T.M.スティーヴンス (b)、ヴィクター・ブルース (key)、ロビー・ゴンザレス (ds)、シャーリー増尾 (perc) は、次作『Good Morning』に、ほぼ継続されている。

VictorI Bruce Godsey (ac-p, el-p), T.M. Stevens (el-b, piccolo-b),Robbie Gonzales (ds, congas), Shirley Masud (perc), Dele (hammond-org), Margaret Ross (harp), Josan (back-vo)。

この厳選したバンド・メンバーで、当時のエレ・ジャズのトレンドであった「ジャズ・ファンク、ジャズロック、R&B志向のフュージョン」をやってみた、というのが、このアルバムの内容では無いだろうか。ちなみに、この『Sunshine Avenue』で培ったフュージョン・ジャズな音志向を、次作『Good Morning』にしっかり引き継いでいる。

興味深いのNY録音で、NYのメンバー中心の演奏なんだが、出てくる増尾好秋の考える「ジャズ・ファンク、ジャズロック、R&B志向のフュージョン」は、どれもが、ファンクネスは限りなくライト、歌心が溢れまくる流麗でキャッチャーなメロディー、軽めのオフビートとグルーヴなど、和フュージョン・ジャズの個性と特徴をしっかりと押さえていること。増尾のプロデュース力が、この盤でも存分に発揮されていて立派だ。
 
 

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2024年9月29日 (日曜日)

増尾の和フュージョンの名盤

1970年代後半から1980年代前半、和フュージョンの全盛期のギタリストと言えば、まずは「渡辺香津美」そして「増尾好秋」。この2人が代表格で、和フュージョンのギターを牽引していた印象が強い。特に、増尾好秋は、フュージョン・ジャズに転身しつつ、その演奏の軸足は「ジャズ」にしっかり残していた様に思う。

増尾好秋『Good Morning』(写真)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、Yoshiaki Masuo (g, perc, vo), Motoaki Masuo (g, syn), VictorI Bruce Godsey (ac-p, el-p), T.M. Stevens (el-b, piccolo-b),Robbie Gonzales (ds, congas), Shirley Masuo (perc), Dele (hammond-org), Margaret Ross (harp), Josan (back-vo)。

増尾好秋が一番、フュージョン・ジャズに傾倒した名盤。もともと、渡辺貞夫に認められ、1968年から1971年まで、渡辺貞夫のグループに在籍。1971年に渡米。1973年から1976年までソニー・ロリンズのバンドに在籍した、メインストリームな純ジャズ畑を歩いてきた増尾である。

いきなりコマーシャルに、ジャズロックへの転身や、他のジャンルとの融合に走ることなく、電気楽器を活かしたジャズを目指しつつ、8ビートや、フュージョン・ジャズの「肝」である「ソフト&メロウな音志向」の取り込みをしつつ、1970年度の終わりに、この盤の成果にたどり着いた。
 

Good-morning

 
増尾好秋の歌心溢れるギター・ワークと流麗なメロディ・センスが光る、内容の濃い、上質のフュージョン・ジャズ盤に仕上がっている。フュージョン・ジャズといえば、聴き心地の良い「ソフト&メロウ」な演奏、という印象が強いが、この盤はそれだけに留まらない。疾走感溢れるジャズロックな演奏もあれば、ハードバップ時代のジャム・セッションをエレでやった様な演奏もあって、バラエティーに富んでいる。

一番感心するのは、ほぼ、米国フュージョン畑の名手を招聘しているにも関わらず、ファンクネスは限りなくライト、歌心が溢れまくる流麗でキャッチャーなメロディー、軽めのオフビートとグルーヴなど、和フュージョン・ジャズの個性と特徴をしっかりと押さえていること。増尾好秋のセルフ・プロデュースとアレンジが、バッチリ効いている。

サイドマンに目を転じると、弟でサウスポーのギタリストである増尾元章の貢献が大きい。兄の義昭とギター合戦を演じたり、流麗でソフト&メロウな「フュージョンど真ん中」の楽曲を提供したりと貢献度大である。

「モンスター・ベース」と異名を取ったT.M.スティーヴンスのエレベの参加も効いている。ややもすれば、ソフト&メロウにどっぷり浸かりそうな、流麗なフュージョン・テイストのバラード曲に、粘りのあるソリッドなエレベのラインを差し込んで、意外と硬派な演奏に昇華させている貢献度は高い。

増尾好秋の歌心溢れるギター・ワークと流麗なメロディ・センス、加えて、セルフ・プロデュースとアレンジ、そして、優れたサイドマンの参加が功を奏した、和フュージョン・ジャズの名盤だと思う。
 
 

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2024年9月28日 (土曜日)

仲村裕美『’Swonderful』を再聴

1970年代後半から1980年代前半の、フュージョン・ブームの10年間の「和フュージョン」の好盤を発掘しては聴き直している。

「発掘」とは言っても、未発表音源を探し当てて聴くなんていう「マイケル・カスクーナ」ばりの、未発表音源発掘のインディー・ジョーンズでは無く、1970年代後半から、1980年代前半の当時、聴き親しんでいたアルバムで、しばらくの間、忘れ去っていた盤を、所有のライブラリーから再度、引き摺り出して聴き直す、という、「温故知新」的な作業である。

Hiromi Nakamura(仲村裕美)『'S Wonderful』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Masanori Sasaji (key, syn), Naoki Kitajima, (key, p), Hirotaka Izumi, Masao Nakajima (key), Kazumasa Akiyama, Masahiro Ando, Kiyotsugu Amano (g), Mike Dunn, Romy Kinoshita, Tatsuhiko Hizawa, Toyoyuki Tanaka (b), Tohru Hasebe, Masaki Hiyama, Kenji Kishida (ds), Takeshi Ito, Kazuo Suzuki (sax), Kenji Nakazawa (tp), Michio Kagiwada (tb), Yasushi Kozuka (vln)。

それぞれの楽器で複数のミュージシャンが分担して、セッションに臨んでいる。パーソネルの名前を見渡してみて、馴染みのある名前があまり見当たらない。当時のテクニック優秀のスタジオ・ミュージシャン大集合といった雰囲気である。

じっくり見ると、マライアの笹路正徳がキーボードで、初期SHOGUNメンバーでパラシュートのマイク・ダンがベースで参加しているのが判る。他の多くは馴染みの無いメンバーだが、演奏内容は水準以上。なかなか充実したフュージョン・ジャズなサウンドを供給していて立派。
 

Hiromi-nakamuras-wonderful

 
美人ジャズシンガーの誉高い「仲村裕美」の1983年のセカンド盤。収録された曲を見渡せば、この盤は、フュージョン・ジャズなテイストの「ジャズ・スタンダード曲集」。なかなか良い選曲で、仲村裕美が、またまた素性の良いストレートな歌唱で、フュージョンなノリのジャズ・スタンダード曲を唄い上げていく。今回、聴き直してみて、彼女のボーカルってなかなかのもので、ついつい引き込まれてしまった。

1曲目のタイトル曲「'S Wonderful」は有名スタンダード曲。しかし、アレンジが優秀で、「どこかで聴いたことがある」感が無い。結構、新鮮なアレンジが施されていて、なかなか粋な「'S Wonderful」に仕上がっている。仲村裕美のボーカルの素性の良さがダイレクトに伝わってくる。

3曲目の「On The Sunny Side Of The Street」も有名スタンダード曲。4ビートのスインギーな名曲を、8ビートのフュージョン・ジャズにアレンジして、ポップなボーカルで、仲村裕美が明るくポジティヴに唄う。こんな「On The Sunny Side Of The Street」も良い感じだ。

6曲目の「Laughter In The Rain」は、二ール・セダカの「雨に微笑んで」のカバー。やはり、フュージョン風のアレンジがバッチリ効いている。

続く7曲目の「Unchained melody」は、ライチャス・ブラザーズのヴァージョンが、1990年に公開された映画「ゴースト/ニューヨークの幻」で起用された馴染みの曲。やはり、アレンジが良い。原曲のイメージを損なわず、原曲の甘さに流されない、意外と硬派なフュージョン・ジャズに仕立て上げている。

このLP盤の帯紙のキャッチが「太陽の匂いがするジャズ・ギャル、ナウなスタンダー集セカンド・アルバム」。思わず「赤面」もののキャッチに思わず苦笑い。まだ、そんな表現がまかり通る時代だったんですね。「ギャル」「ナウな」など、ほとんど死語ですが、このアルバムの内容は、今の耳にも十分に鑑賞に耐える、上質のフュージョン・ボーカル盤です。意外と「掘り出し物」でした。
 
 

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2024年8月29日 (木曜日)

浪花エクスプレス ”No Fuse”

和フュージョン、いわゆる「日本のフュージョン・ジャズ」は、米国のフュージョン・ジャズとは距離を置いて、独自の進化・独自の深化を遂げた、と感じている。リズム&ビートはファンクネス皆無、フレーズの展開はロック志向、ソフト&メロウな雰囲気は希薄で、爽快感&疾走感が優先。和フュージョンは、世界の中で独特のポジションを獲得している。

日本の中での和ジャズは、かなり地域特性があった。東京の和ジャズだけがレコード会社に取り上げられ、メジャーな存在になっていったが、ジャズはそれぞれの地方で、独自の深化を遂げていったと思っている。地方に行けば、かなり地味な存在ではあるが、その地域ならではの「ジャズ・スポット」が必ずある。

浪花エクスプレス『No Fuse』(写真左)。1982年の作品。ちなみにパーソネルは、青柳誠 (ts, Rhodes), 岩見和彦 (g), 中村建治 (key), 清水興 (b), 東原力哉 (ds, perc)。ゲストに、マリーン (vo), 塩村修 (tb), 渕野繁男, 荒川達彦 (sax), 平山国次, 菅野真吾, 平山修三 (perc)。

上方フュージョンの牽引役として、浪花のファンの熱狂的な支持を受けて、大阪からデビューした、カシオペアやスクエアに並ぶ和フュージョンの代表的グループ「浪花エクスプレス」のファースト・アルバム。
 

No-fuse

 
この浪花エクスプレスのデビュー盤の出来は、カシオペアやスクエアのデビュー盤の出来を凌ぐ。繰り出されてくるフレーズが、実に滑らかで耳に馴染む。非常に鍛錬され洗練された音。流麗とはちょっとニュアンスが違う、しっかり芯の入った、力感溢れるロックなフレーズ。それでいて、和フュージョン独特の乾いたグルーヴ感がジャジーに響く。

今の耳で聴くと、「浪花エクスプレス」の音は、和の「クロスオーバー&ジャズ・ロック」。ガッツリ根性の入った、鍛錬&洗練された、浪花エクスプレス独特の展開は、東京フュージョンには無い、唯一無二なもの。

収録されたどの曲も良い出来だが、やはり1曲目の「Believin」が印象深い。浪花エクスプレスの代表曲であり、浪花エクスプレスの個性がガッツリ反映された名曲&名演である。

1982年という、ジャズ界ではフュージョン・ブームが下降線を辿っていた時期でのデビューだったので、カシオペアやスクエアに比べて、かなり損をしている。明らかにメジャーになり損ねた、人気バンドになり損ねた感が強い。

逆にだからこそ、今の耳で聴いて、このデビュー盤の『No Fuse』は、和フュージョン・ジャズの名盤の一枚として、大いに評価できるのだ。この『No Fuse』は和フュージョンの名盤の一枚。フュージョン者にとっては、避けられないマストアイテムです。
 
 

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2024年8月28日 (水曜日)

増尾好秋 ”Sailing Wonder”

増尾好秋。 1946年10月12日生まれ。今年で78歳。我が国の和フュージョンの代表的ギタリストの一人。渡辺貞夫に認められ、1968年から1971年まで、渡辺貞夫のグループに在籍。1971年に渡米。1973年から1976年までソニー・ロリンズのバンドに在籍したのは有名。

1980年代なかばから2008年まで、ニューヨークのソーホー地区に本格的なレコーディングスタジオ The Studio を所有し、プロデューサーとしても活躍。2008年より演奏活動に完全復帰。2012年6月より、日本での本格的なバンド活動を再開している。

増尾好秋『Sailing Wonder』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、増尾好秋 (g, synth, perc),Eric Gale (g), Dave Grusin (synth), Richard Tee(p, org, key), Mike Nock (synth), Gordon Edwards (b), T.M. Stevens (b), Steve Gadd (ds), Howard King (ds), Al Mack (ds), Bachiri (perc), Warren Smith (perc), Shirley Masuo (vo), Judy Anton (vo)。

先に3枚のリーダー作をリリースしているが、この盤は実質上の増尾の初リーダー作と捉えても差し支えないだろう。キングレコード傘下のフュージョン・レーベル、エレクトリック・バードの第一弾アーティストとして契約しての、エレクトリック・バードとしての第1作。

当時、NYに在住していたこともあって、いやはや、錚々たるパーソネル。NYのクロスオーバー&フュージョン・ジャズの「名うて」のミュージシャン達が大集合といった風情である。これだけの「一国一城」的な一流ミュージシャンを集めると、意外とそれぞれ「我が出る」のだが、そうなっていないところが素晴らしい。
 

Sailing_wonder1

 
タイトルやジャケから想起される様に、「海」をテーマにコンセプト・アルバムである。が、それを意識させないくらい、収録された個々の演奏が素晴らしい。曲調もさまざまな増尾のオリジナル曲がメインで、増尾の作曲能力の高さとアレンジのアイデアの豊かさが感じ取れる。

クロスオーバー&フュージョン志向のエレ・ジャズだが、1曲目のタイトル曲「Sailing Wonder」だけ、フュージョンっぽい演奏だが、2局目以降は、どちらかといえば、クロスオーバー・ジャズな音志向が強い。クロスオーバー&ジャズロックとして良いかもしれない。

バンド全体、完成度の高い演奏で、聴いていて、とても清々しい気分になれる。躍動感と爽快感が半端ない。伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」からもメンバー参加もあって、アルバム全体に、そこはかとないファンキーなグルーヴ感が漂うところもグッド。フュージョン者の我々からすると「たまらない」。

増尾好秋のギター・テクそのもの、作曲&アレンジの才能など、増尾好秋が持つ「個性と才能」の全てが感じ取れる、「増尾好秋のショーケース」の翼な優れた内容。増尾好秋の代表作の一枚です。

2015年6月23日のブログ記事「増尾好秋のフュージョン名盤」を全面的に改稿しました。
 
 

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2024年8月27日 (火曜日)

松岡 直也 ”Long for The East”

松岡 直也は、我が国におけるラテン・ジャズの第一人者。フュージョン・ブームの折には「ラテン・フュージョン」で一世を風靡した。聴けば直ぐに「松岡 直也のラテン・ジャズ」と判るくらい、松岡の個性溢れるアレンジが秀逸。コンテンポラリーな純ジャズ志向、フュージョン・ジャズ志向の「両刀使い」で、我々の耳を楽しませてくれた。惜しくも、2014年4月29日に76歳で逝去している。

松岡 直也『Long for The East』(写真)。1984年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、松岡 直也 (p, syn), 津垣 博通 (key), 和田アキラ (g), 高橋ゲタ夫 (b), 広瀬 徳志 (ds), ウィリー長崎, カルロス菅野 (perc), 久保田 利伸, 楠瀬 誠志郎 (vo)。和ラテン・ジャズの第一人者、松岡 直也の個人名義アルバムの16枚目。

アルバムの冒頭「The Latin Man」は、ボーカル入りラテン・フュージョン。ボーカルが入って、いよいよ、和フュージョンも、米国フュージョンの如く、俗っぽいポップス・ミュージック化するのか、と暗然たる思いで聴き始めたら、なかなかにスケールの広い、日本人離れしたブラコンっぽい歌唱に耳を奪われる。なんと、このボーカル、ソロ・デビュー前の「久保田利伸」とのこと。コーラスには楠瀬 誠志郎が参加して、これまた良い味を出している。
 

Long-for-the-east

 
松岡のピアノ、シンセが大活躍。ラテンのフレーズを散りばめたアドリブ・フレーズは見事。シンセの使い方はセンスがよくて、陳腐な音色になっていないところが、これまた見事。ピアノやシンセの音色を「映えさせる」アレンジが、これまた見事。フュージョンにおけるラテン・ジャズというと、ちょっと陳腐で俗っぽい内容に陥りそうなんですが、そうはならず、小粋で躍動感&爽快感溢れる、クールでスマートな「ラテン・フュージョン」となっているところが秀逸。

サイドマンでは、土方のギターが素晴らしいパフォーマンスを披露している。千変万化な「芳醇で切れ味の良い」音色。クールでスマートな「ジャズロック志向」フレーズ展開。聴く者を圧倒する「高テクニック」。松岡のピアノ&シンセと絡むh土方のギターは、とってもスリリング。5曲目「The End Of The Way」に参加している、当時、プリズムから復帰した和田のギターも印象的。

アルバム全体を覆う、メランコリックで叙情的な響きが印象的。アレンジが優秀なので、インスト曲に飽きがこない、リピートに耐える演奏の数々。アルバム全体にラテン・テイストで統一感を醸し出し、リズム&ビートは「ジャズ・ロック」。僕はこのアルバムについては、松岡直也の名盤の一枚、と評価している。ジャケも秀逸。
 
 

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2024年8月26日 (月曜日)

今田 勝 ”アンダルシアの風”

台風10号の予報が「迷走」している。当初予報よりもどんどん西に西に進路予想がずれていく。テレビのワイドショーの天気予報のコーナーの気象予報士は概ね、変な解説に終始している。もはや、テレビの情報を鵜呑みできる状況では無い。

台風10号はどんどん西に逸れていくが、関東地方は当初予報は「曇り」だったのが、連日、ギラギラの真夏の太陽が照りつけ、猛暑日が続いている。「命を守る為の引き篭もり」も、もう一ヶ月を過ぎた。気がつけば、8月の最終週。来月からは9月である。

そろそろ「夏はボサノバ」でもないだろう。とはいえ、この酷暑な日々の連続では「熱いジャズ」は辛い。フリーなどはもってのほか。ということで、爽やか系のフュージョン・ジャズ盤を聴くことにした。和洋のフュージョン・ジャズ盤の優れどころを選盤する。

今田勝『アンダルシアの風』(写真左)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、今田 勝 (ac-p, el-p), 古野 光昭 (b), 守 新治 (ds), 今村 裕司 (perc), 渡辺 香津美 (g)。今田勝のトリオ(今田・吉野・守)にふたりのゲストが参加。全6曲の全てが、スパニッシュ・ジャズ&サンバ・ジャズ志向。

今田のトリオの演奏は、スパニッシュ&サンバなフレーズとリズム&ビートですっ飛ばすが、安易に当時流行のソフト&メロウに走らず、「スパニッシュとサンバとジャズの融合」レベルのクロスオーバー・ジャズな雰囲気が先行していて、甘々のイージーリスニングに陥っていないのは立派。
 

Photo_20240826195301

 
音の雰囲気はスパニッシュ。ラテン・ジャズと言えなくは無いが、1960年代に流行った、コッテコテ妖艶なラテン・ジャズではない。当時のコンテンポラリーな純ジャズ的演奏展開は意外と聴き応えがある。

今田のアコースティック・ピアノがメインの弾きっぷりが良い。こういうスパニッシュ&ラテンなフレーズを速弾きするには、アコースティック・ピアノより、エレクトリック・ピアノをメインに選んでしまいそうなんだが、今田はあくまで、アコースティック・ピアノがメインで弾く。

エレクトリック・ピアノも弾くには弾くんだが、音的には、アコースティック・ピアノの音志向を逸脱しないレベルのエレピの音質に留めている。当然、シンセには手を染めていない。この辺りに、和の純ジャズ出身の今田の矜持を感じる。

ゲストで入っている渡辺香津美のエレギはさすが。今田の示す音志向に合致した、クロスオーバーで、メインストリーム志向の8ビートなエレギのフレーズを連発する。今村裕司のパーカッションの参加も効果的。躍動感と清涼感溢れるパーカッションは、今田のスパニッシュ&ラテン志向の音を、よりスパニッシュ&ラテンな雰囲気を増強している。

ちょっと長いが一言で言うと「清々しい躍動感と爽快感がメインの、クロスオーバーな、スパニッシュ&サンバ・ジャズ志向のコンテンポラリーな純ジャズ」と表現したら良いだろうか。我が国のクロスオーバー・ジャズの好盤の一枚です。
 
 

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2024年6月 8日 (土曜日)

向井滋春 ”ヒップ・クルーザー”

月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」を眺めていて、向井滋春のアルバムが目に入った。懐かしい。和フュージョン全盛時、もともと、トロンボーンの音色が好きなこともあって、向井滋春のフュージョン盤はよく聴いた。意外とトロンボーンって、フュージョン・ジャズに向いているんですよね。

向井滋春『Hip Cruiser』(写真左)。1978年10月2~6日の録音。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、向井滋春(tb), 植松孝夫(ts), 元岡一英(p, el-p, key), 渡辺香津美, 橋本信二(g), 真鍋信一(b), 古澤良治郎(ds, perc), 山木秀夫(ds), 横山達治, 吉田和雄, 三島一洋(perc), ベラ・マリア(cho), 大貫妙子(cho)。「異業種」から、ブラジル人シンガーのベラ・マリア、Jポップ畑から大貫妙子がコーラスで参加しているのが目を引く。

純ジャズ、メインストリーム路線を突っ走っていた向井が、フュージョン路線に転身、フュージョン・ジャズ全開の好盤。和ジャズの、それも、メインストリームな純ジャズで活躍していた名うての名手達が、こぞって参加して、ご機嫌なフュージョン・ジャズをやっている。これがまあ、やっぱり上手い。一流は何をやらせても一流、である。

ラテン・フュージョン&ブラジル・フュージョンがメインの充実の和フュージョン。こうやって聴いていると、和ジャズのジャズマンって、ラテン・ミュージックや、ブラジル・ミュージックに対する適応度がかなり高いことが判る。
 

Hip-cruiser

 
リズム&ビートにも違和感が無く、ちょっと「ダル」なフレーズも難なくこなす。しかし、どこか「生真面目」な雰囲気が漂っていて、ラテンをやっても、ブラジルをやっても、演奏自体が俗っぽくならない。

ちゃんと一本筋の通ったジャズ、と言う一線はしっかり確保していて、ユニゾン&ハーモニー、そして、アドリブ展開、どれをとっても、演奏の底に「ジャズ」がいる。これが「和フュージョン」らしいところ、日本人のフュージョン・ジャズの面目躍如である。

ブラジリアン・メロウなタイトル曲「Hip Cruiser」、ブラジル人シンガーのベラ・マリアのボイスがバッチリ効いたブラジリアン・ジャズ・サンバなチューン「Nimuoro Neima」、ばっちりハマったブレイクがむっちゃカッコ良い「Manipura」。ライトなノリのディスコ・フュージョン「 V-1 Funk」、大貫妙子がスキャットで参加したクロスオーヴァーなフュージョン曲「Coral Eyes」など、格好良くキマッたラテン・フュージョン&ブラジル・フュージョンな演奏がてんこ盛り。

和フュージョンだから、と敬遠することなかれ。演奏のクオリティーは高く、十分にジャズ鑑賞の耳に耐える。テクニック確か、適度に脱力した、ブリリアントでラウンドで柔らかい、向井のトロンボーンの響きが、ラテン・フュージョン&ブラジル・フュージョンにバッチリ合っている。和フュージョン・ジャズの好盤です。

ちなみに、表ジャケ(写真左)は平凡なデザイン。しかし、裏ジャケ(写真右)は「斬新?」なデザイン。どういう発想でこんな裏ジャケになったんだか .....(笑)。
 
 

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2024年6月 7日 (金曜日)

和ラテン・フュージョンの名盤

月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」に挙がったアルバムを聴き直している。当時、ヘビロテで聴いたアルバムも多くある。当ブログに記事としてアップしていないアルバムも結構ある。当時の耳で聴いた感覚と今の耳で聴いた感覚、意外と変わらないのが面白い。

松岡 直也 &ウィシング 『The Wind Whispers』(写真)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、Naoya Matsuoka (key), Kazumi Takeda, Kenji Nakazawa (tp), Tadanori Konakawa (tb), HidefumiI Toki (sax), Takeshii Itoh (ts,fl), Kenji Ohmura, MasayoshiTakana (g), Shuichi “PONTA” Murakami (ds), Osamu Nakajima, Pecker (perc)。

パーソネルを見渡すと、錚々たるメンバーである。当時の「和フュージョン」の名うての強者どもが大集合。ビッグ・ネームとして主だったところでは、ホーン・セクションにサックスの土岐 英史、ギターに大村 憲司&高中 正義、ドラムに村上 "ポンタ" 秀一、パーカッションにペッカー。今から振り返って見て、やっぱり、錚々たる面子である。

出てくる音は、一言で言うと「ラテン・フュージョン」。日本のラテン・ジャズ・フュージョンの「草分け」的名盤である。「ラテン」とは言っても、本場のこってこての「ラテン・ミュージック」では無く、「和」でリコンパイルした「ラテン」。よって、我々の耳にスッと馴染むフレーズとアレンジ。
 

The-wind-whispers

 
そんな「和ラテン・フュージョン」が、この盤にギッシリ。「ラテン」だからと言って、俗っぽくも無くチープでも無い。上質に洗練された「ラテン」が見事。

ホーン・セクションのアレンジとパフォーマンスが良い。この「和ラテン」なホーン・セクションの熱い活躍が、この盤の「キモ」。そして、大村&高中のギターの「和ラテン」なフレーズの嵐、ポンタ秀一が叩き出す「和ラテン」なリズム&ビート、がもう一つの「キモ」。

そして、やっぱり主役は、リーダーの松岡のパーカッシヴで切れ味抜群な「和ラテン」な熱気溢れるピアノ。爽快でシャープで、心地良い熱気溢れる「和ラテン・フュージョン」な名曲、名演がてんこ盛り。 タイトル曲「The Wind Whispers」が美しい。「A Season of Love」と「The Myth of Egypt」は、確か、ウルトラクイズのBGMに使われていたのではないだろうか。そんな記憶が蘇ってきて、懐かしいことしきり。

今の耳で聴いても、新鮮な響きが溢れている「和ラテン・フュージョン」の名盤。和フュージョン・ジャズの面目躍如の一枚。ちなみに高中の名盤『TAKANAKA II』で鮮烈な「和ラテン」なピアノを弾きまくっていたのは、他ならぬ、この「松岡 直也」。至極納得。
 
 

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