2021年6月 9日 (水曜日)

渡辺貞夫 with GJTのライヴ盤 『Carnaval』

このアルバムのリリースは1983年。当時からこのジャケット・デザイン、むっちゃチープで、ロン・カーター名義だったので、ジャケットにある参加ミュージシャンの名前も見ずにスルーしていた。どうやったら、こんなチープなデザインになるのかが判らない。で、最近、このジャケットにある参加ミュージシャンを見たら「SADAO WATANABE」とある。

他のメンバーの名前も書かれており、あれ、これって「グレート・ジャズ・トリオ(GJT)」じゃないの、と思い立った。貞夫さんとGJTと言えば、1970年代後半に幾つかの共演盤があって、もしかしたらその流れで録音されたのでは、と思い始めた。しかし、1983年のリリース。その近辺で貞夫さんとGJTの共演ってあったのかしら、と考えたが、思い当たる節が無い。

Ron Carter, Hank Jones, Sadao Watanabe, Tony Williams『Carnaval』(写真左)。1978年7月30日、東京田園コロシアムで開催された「Live Under the Sky」でのライヴ録音である。ちなみにパーソネルは、Sadao Watanabe (as), Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。なんと、1978年の「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」での、渡辺貞夫 with GJT のライヴ録音である。
 

Carnaval-with-gjt
 

ジャケットにビビらずに、ちゃんと聴けば良かった、と反省しながら一気聴きしたのだが、さすがに「渡辺貞夫 with GJT」である。趣味の良いハードバピッシュな「ワン・ホーン・カルテット」。決して懐古趣味に走らない、1970年代後半での「最先端」のハードバップな演奏がここに記録されている。

ライヴ・フェスだからといって、安易に聴衆に迎合していないのが、この「ワン・ホーン・カルテット」の隅に置けないところで、収録された曲が実に渋い。バップなアルト・サックスが根っこにあるフロントの貞夫さんを、GJTがしっかりフィーチャー出来る楽曲が並んでいる。演奏のテンポもライヴ・フェスなら、アップテンポのノリノリの演奏になりがちだが、この盤では地に足着いた堅実なテンポで、メンバーそれぞれが素敵で印象的なソロ・パフォーマンスを繰り広げている。

1970年代後半のライヴ・フェスなので、ピアノの音がエレピっぽかったり、ロンのベースがアタッチメントで電気的に増幅されて「ブヨンブヨン」と緩んだ音を出していたりするが、演奏されるフレーズは確かなもの。いやはや、なかなか充実した内容のライヴ盤である。完全に、このチープなジャケットに騙されたなあ(笑)。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
 
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 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.03.06 更新。

  ・浪花ロック『ぼちぼちいこか』
 
 
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2017年11月 2日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・65 『At The Village Vanguard』

The Great Jazz Trio (略してGJT)は、ハンク・ジョーンズがリーダーのピアノ・トリオのバンド名。1976年に結成、2010年5月、ハンク・ジョーンズが91歳で亡くなるまで続いた。ドラムのトニー・ウィリアムスの発案だったそうだ。ベースがロン・カーターなのは良く判る。ロンはトニーの親代わりであり兄貴分だからだ。しかし、なんでピアノはハンク・ジョーンズだったんだろう。

ハンク・ジョーンズは、スイングの時代からピアニスト。1918年生まれであるから、トニー・ウィリアムスと比べたら、37歳も歳の開きがある。これはもはや「親子」である。トニーやロンは当時、新主流派のメイン・ジャズメンで、演奏のスタイルも感覚も、ハンクとは全く異なった筈である。ぱっと見、完全なミスマッチだと思ってしまう。

が、これが全く違った。GJTは、1975年、ニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードでデビュー。そして『At The Village Vanguard』(写真左)と『At The Village Vanguard Vol.2』(写真右)をリリースする。このライブ盤こそが、僕の「The Great Jazz Trio」との初めての出会いであった。1977年2月19-20日、NYの"Village Vanguard"でのライブ録音。

改めて、パーソネルは、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。まずは、トニー・ウィリアムスの圧倒的迫力のドラミングに耳を奪われる。圧倒的な技術から生み出される高速ドラミング。バスドラを強調した力強い響き。そして、ロン・カーターの変幻自在、夢幻幽玄なベース・ワークがそれに絡む。新しい、時代の最先端を行くリズム&ビート。明らかに個性的。一度聴けば、これはトニーとロンと直ぐ判る。
 

At_the_village_vanguard

 
しかし、このライブ盤では、この二人が主役では無い。この若手の優秀な、ジャズの明日を担う人材は、自らの演奏力をリーダーのハンク・ジョーンズのピアノを惹き立たせる為に活用する。献身的なバッキング、献身的なリズム&ビート。そんな素晴らしいバックを得て、当時、ほぼ還暦を迎えつつあったハンク・ジョーンズが、彼の典雅で流麗で歌心満点、しっかりとしたタッチでのピアノが、当時、先端を行くモーダルなフレーズを叩き出して行くのだ。

爽快である。ファンクネス漂う、黒く典雅なハンクのピアノ。そこに、トニーとロンのリズム隊が当時の新しいジャズの息吹を吹き込む。このライブ音源では、完全に「良い方向での化学反応」が起きまくっている。それまでには全く無かったピアノ・トリオのパフォーマンスがこのライブ音源にぎっしりと詰まっている。聴いていて惚れ惚れする、新しい感覚のハンクのピアノ。

僕がこのライブ盤を手に入れたのは、ジャズを本格的に聴き始めて2年目。1980年のこと。LPに針を降ろした瞬間にスピーカーから出てくるトニーの攻撃的なドラミングに度肝を抜かれた。そして、変幻自在なロンのベースに耳を奪われる。しかし、最後には、ハンクのファンクネス漂う、黒く典雅なピアノに耳を持っていかれる。

改めて、今の耳で聴いてみると、1977年の時代に、これだけ先端を行く、思いっきり尖ったピアノ・トリオのパフォーマンスが存在したということに驚く。今の時代にでさえ、これだけテンション高く、ポジティブでアクティブなピアノ・トリオの演奏は、ほぼ見当たらない。それだけ、この時代のGJTは「良い方向での化学反応」を起こしまくっていた。好盤中の好盤である。
 
 
 
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2017年6月28日 (水曜日)

トニーを忘れてはならない 『Native Heart』

このところ、ジャズ・ドラムの個性について振り返っている。ロイ・ヘインズ、アート・ブレイキー、そして、エルヴィン・ジョーンズ。そうそう、そう言えば、この人のドラミングも個性的だ。シンバル・ハイハットを多用、凄まじいスピードで刻まれるビート。怒濤の様なバスドラ、高速の4ビート。圧倒的なハイテクニック。

トニー・ウィリアムスである。マイルス率いる1960年代黄金のクインテットのドラマー。疾走するハイハット。高速4ビート。60年代後半はフリー・ジャズ、70年代はロックに傾倒し、そのドラミングは「神」の域に達する。迫力満点、手数の多い、疾走感と切れ味が拮抗する、限りなく自由度の高いリズム&ビート。

トニー・ウィリアムスは、アート・ブレイキーやマイルス・ディヴィスと同様、有望な若手ジャズメンを自らのバンドに引き入れ、育成することに力を入れた。1980年代後半から、新生Blue Noteレーベルから立て続けにメインストリーム指向のアルバムをリリース、この中で、有望な若手を育て上げている。

Tony Williams『Native Heart』(写真左)。1989年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Tony Williams (ds), Ira Coleman, Bob Hurst (b), Mulgrew Miller (p). Wallace Roney (tp). Bill Pierce (ts, ss)。今から振り返ってパーソネルを見渡すと、いや〜錚々たるメンバーですなあ。
 

Native_heart

 
内容的には、1960年代マイルス・クインテットの音世界を、テクニック的にグッとステップアップして、限りなく自由度の高い、モーダルな純ジャズを展開している。凄まじい内容である。ジャズという音楽ジャンルの表現バリエーションがこんなに「複雑で深く広い」ということに思わずビックリする。しかも「判り易い」。

リーダーのトニーのドラミングが凄い。派手なパフォーマンスを経て、このアルバムでは、普通にバックに控えてフロントを盛り立てる役割に徹しているが、この余裕ある状況でのトニーのドラミングは殊の外、素晴らしい。余裕ある中で限りなく自由度の高いリズム&ビートを叩き出し、高速の4ビートで疾走する。

そんなトニーにリズム・セクションの一員として追従する、ピアノのマルグリュー・ミラーが良い。煌びやかなアドリブ・フレーズを醸し出しながら、左手のブロックコードでビートの底をガーンと押さえる。このミラーのピアノが白眉。僕はこの人のピアノが大好きで、これが聴きたいから、この頃のトニー・ウィリアムスのバンドのアルバムを聴き漁ったものだ。

そんなトニーは、1997年、胆嚢の手術の後の心臓発作により死去(51歳)、そして、マルグリュー・ミラーも、2013年、脳卒中を起こして入院していた病院で死去(57歳)。どちらも、あまりに若すぎる死であった。しかし、この『Native Heart』には、二人の素晴らしいプレイが残されている。好盤である。
 
 
 
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2015年9月 4日 (金曜日)

ドラマーがリーダーの盤って・4 『Foreign Intrigue』

ジャズ・メッセンジャーズを率いるリーダーであり、このメッセンジャーズを母体に、若手の有望株を育てていくという「道場」の様な役割を果たした「アート・ブレイキー(Art Blakey)。バンドのリーダーとしての役割がピッタリであった。

そんなバンドのリーダーとして若手の有望株を育て、サポートしていくという役割を引き継ごうとしたのが、ドラムの神童、トニー・ウィリアムス(Tony Willams)だろう。

その狼煙を上げたのが、このアルバムである。Tony Williams『Foreign Intrigue』(写真左)。1985年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Tony Williams (ds), Wallace Roney (tp), Ron Carter (b), Donald Harrison (as), Bobby Hutcherson (vib), Mulgrew Miller (p)。

ベテランと新鋭、入り乱れてのパーソネルは実に興味深い。ベテラン組は、リーダーのトニーを筆頭に、ベースのロン、ヴァイブのハッチャーソン。新鋭組は、トランペットのウォレス・ルーニー、アルトのドナルド・ハリソン、ピアノのマリュグリュー・ミラー。

新鋭組のメンバーは皆、当時、若き純ジャズの精鋭達。新伝承派と呼ばれ、伝統的なフォービート・ジャズやモーダルな限りなくフリーなジャズを得意とする、純ジャズ復古の先鋭メンバーである。それに相対するのが、トニー&ロンのリズム隊に、ヴァイブのハッチャーソン。

それまでのトニーは、リーダー作においては、他のメンバーよりも前で出る、前へ出まくる。もともと音が大きく高速ドラミングのトニーである。リーダーになっては、当然、録音の中心になる。もともと音が馬鹿でかいのだ。他のメンバーとのバランスが悪くなるくらい、トニーのドラミングが前へ出る、前へ出まくる。

しかし、このリーダー作『Foreign Intrigue』では、決して前へ出過ぎることは無い。ロンとしっかりリズム&ビートを刻みながら、フロントの若手の精鋭部隊、ペットのルーニー、アルトのハリソンを鼓舞する。ルーニーとハリソンの新伝承派独特の、時代の先端を行くハードバップな、そしてモーダルなアドリブ・フレーズが乱舞する。 
 

Foreign_intrigue

 
そこに新伝承派の個性ピアノ、マリュグリュー・ミラーが、伝統的なハードバップでは無い、伝統的なモーダルなジャズでも無い、新しい響きが新鮮な「音の彩り」を添える。このマリュグリュー・ミラーのピアノが実に良い響きなのだ。それまでのジャズ・ピアノの世界にありそうで実は無い、彼独特のアドリブ・フレーズと音の重ね方が実に良い。

そして、このアルバムの音を決定づけるのが、ハッチャーソンのヴァイブ。ルーニーとハリソンの新伝承派の音に、ハッチャーソンのヴァイブの音が混ざり合って、伝統的なジャズの響きがグッと濃くなる。ややもすれば、テクニック優先の頭で考えたような音になりがちな新伝承派の音が、しっかりと地に足が付いた伝統的な純ジャズの音を宿したクールでモダンなフレーズに変化する。

そして、クールでモダンなフレーズに変化しつつ、フロントのルーニー、ハリソンは、抑制の効いた先鋭的ではありながら、しっかりとジャズの伝統の部分をキープした、上質の「新伝承派の音」を供給する。これは、やはり、リーダーのトニー・ウィリアムスの成せる技であろう。

滋味溢れる良いアルバムです。若手精鋭部隊を見守りつつ鼓舞するトニー・ウィリアムスのドラミングが実に優しい。ちなみに、最後の作品となった『Young at Heart』(2015年3月4日のブログ・左をクリック)も聴いて欲しい。バンドのリーダーとして若手の有望株を育て、サポートしていくという役割がピッタリのトニーのドラミングを聴くことが出来る。

しかし、1997年、胆嚢の手術の後の心臓発作により急逝してしまう。まだ51歳の若さであった。恐らく、本人としても無念であったろう。我々、ジャズ者としても無念であった。生きていたら、このトニー・ウィリアムスのバンドは、どうなっていたのだろう。恐らく、第二のジャズ・メッセンジャーズになっていたんでしょうね。実に無念なトニーの急逝でした。
 
 
 
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2015年4月25日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・45 『Milestones』

まず、ジャケットが良い。高速道路の標識のようなデザイン。そこに、トリオ名とアルバム・タイトルがあしらわれている。一言で言うと「格好良い」。スッキリ格好良いジャケットに惚れ惚れする。ジャズにおいて、ジャケットが優れているアルバムに駄盤は無い。

このアルバムは、The Great Jazz Trio『Milestones』(写真左)。1970年代後半、一世を風靡したピアノ・トリオ、グレート・ジャズ・トリオのスタジオ録音盤。1978年4月5日の録音。パーソネルは、当然、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)の3人。

収録曲は以下の通り。有名なジャズ・スタンダード曲から、ミュージシャンズ・チューンの玄人好みの曲から、ボサノバの名曲まで、耳当たりの良い曲がズラリと並ぶ。うるさ型のジャズ者ベテランの型からすれば、この収録曲を見ただけで、通り一遍のどこにでもあるような、ジャズ・スタンダードをピラピラ弾き回すピアノ・トリオの企画盤を想起して、この盤はパスするだろうな。

1. Milestones
2. Lush Life
3. Wave
4. Eighty-One
5. I Remember Clifford
6. Hormone
7. Mr. Biko
 

Gjt_miletones

 
しかし、このグレード・ジャズ・トリオは、そんな通り一遍な、どこにもであるようなトリオ演奏はしない。冒頭の「Milestones」を聴けば、それが良く判る。有名なコード・イントロのテンションからして、普通のトリオ演奏とは違う。トニーのドラミングのテンションが半端では無い。そこに、ハンクのピアノのコード・イントロが被さる。ハンクのタッチのテンションも半端では無い。

アドリブ部の展開になると、これがまた、創造力豊かな展開に思わず「唸る」。ピアノのタッチは典雅、ドラミングはテンション高く、ベースはガッチリとアドリブ展開の底を支える。このトリオ演奏は「Milestones」の演奏の最高のもののひとつだろう。5分18秒があっと言う間に過ぎ去る。 

甘くなりそうな、ボサノバ名曲の「Wave」も凛としていて聴き応え十分。ウェットでベタベタな「I Remember Clifford」も、ピアノ・トリオで、こういうアレンジでやれば、静謐感と繊細感が増して、良い意味でセンシティブな展開に思わず「おおっ」と身を乗り出す。

良いピアノ・トリオ盤です。いままで、唯一、1回だけ見たことがありますが、優秀なピアノ・トリオ盤の紹介に、この盤の名前が挙がることは殆どありません。有名なジャズ・スタンダード曲から、ミュージシャンズ・チューンの玄人好みの曲から、ボサノバの名曲まで、耳当たりの良い曲で占められているからでしょうか。

でも、それは「聴かず嫌い」としか言いようがありません。やはり、ジャズは自分の耳で聴いて、自分の感性で判断することが大切ですね。
 
 
 
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2015年4月 3日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・60 『New Wine In Old Bottles』

ジャズのアルバムには、歴史的名盤とか定盤なんかでは無いんだけれど、ジャズの紹介本とか雑誌の名盤コーナーに、その名が挙がったりはしないんだけど、何故かその内容が気に入って、何故かずっと愛聴しているアルバムがある。 

僕にとってのそんな一枚がこれ。Jackie McLean With The Great Jazz Trio『New Wine In Old Bottles』(写真左)。1970年代、メインストリーム・ジャズを扱った日本の伝説的レーベル「East Wind」からのリリース。 1978年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Ron Carter (b),  Tony Williams (ds), Hank Jones (p)。

1970年代後半、一世を風靡したメインストリーム・ジャズ・トリオ、ハンク・ジョーンズ率いる「グレイト・ジャズ・トリオ」をバックに、アルトのジャキー・マクリーンが吹きまくるという、いわゆる企画盤。しかも、1978年という、フュージョン全盛期の中でのメインストリーム・ジャズ。

これがまあ、実に気持ちの良い内容なんですね。懐古趣味が前提のメインストリーム・ジャズでは無いところが素晴らしい。このアルバムを制作した4人のジャズメンの矜持を強く感じる。まずはリズム・セクションを司る「グレイト・ジャズ・トリオ」の音が新しい。1970年代後半、最先端のメインストリーム・ジャズの響きを感じる。

そして、フロントのワンホーン、アルトのマクリーンが良い。最初の「Appointment In Ghana Again」でのマクリーンはちょっと大人しい。しかも、1950年代後半から1960年代のちょっとピッチが外れたストレートな音で、バリバリ吹きまくる姿とはちょっと違った、お行儀の良い、ピッチのほぼあったマクリーンがここにいる。
 

New_wine_in_old_bottles

 
マクリーン、衰えたかと危惧するが、どうして、2曲目の「It Never Entered My Mind」から走り始める。お行儀が良くなった、と感じるのは、年齢相応の落ち着きが備わったから。ピッチがほぼ合った感じなのは、テクニックが備わり、端正なインプロビゼーションが展開できる様になったから。アルト奏者として成熟したマクリーンを感じることが出来るのだ。

この成熟した落ち着いたマクリーンを「カンが戻らずにイマイチ」という評価もあるが、それはちょっと違うだろう。1950年代後半から1960年代のマクリーンは、若さと勢いに任せて、ピッチが少し外れようが、ポジティブにバリバリ吹きまくった。それはそれで良いことなんだが、じゃあ、それがマクリーンの絶対的スタイルかと言えば、そうでは無い。

1970年代後半、マクリーンのアルトは成熟した。落ちついた余裕のある吹き回しが、実に魅力的なんだが、そんな成熟したマクリーンのアルトを、この『New Wine In Old Bottles』では、心ゆくまで堪能することが出来るのだ。

バックを司る「グレイト・ジャズ・トリオ」のパフォーマンスは申し分無い。「グレイト・ジャズ・トリオ」の演奏としては、彼らのキャリアの後期に位置する、トリオとして十分にこなれた、十分に成熟したパフォーマンスである。じっくりと聴けば聴くほど、その良さがどんどん深く広く理解出来る、実に味のあるパフォーマンスである。

アルバム・ジャケットも魅力的。港の桟橋、お洒落な街灯、真っ赤なウィンチ。計算されたような桟橋の配置、海の部分と桟橋の部分との割合。どれもが新しいデザイン・コンセプト。そして、その盤の中に詰まっているジャズは、1978年当時の最先端のメインストリーム・ジャズ。良い盤です。
 
 
 
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2015年3月26日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・44 『Direct From L.A.』

こういうアルバムは聴いていて、文句無しに楽しい。加えて音が良い。これまた、文句無しに楽しい。しかも、こんな純ジャズなアルバムが、1977年10月に録音されていたんだから、米国の音楽シーンは懐が深い。

そのアルバムとは、The Great Jazz Trio『Direct From L.A.』(写真左)。The Great Jazz Trio(以下GJTと略す)は、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds) の3人の名うてのジャズ職人で構成されたピアノ・トリオ。

新主流派の最先端を走っていたベースのロンとドラムのトニーはともかく、この当時ジャズ界の先端を行くピアノ・トリオの主役、ピアノを担うのが、当時、既にベテランの域に達していたハンク・ジョーンズである。このGJTの演奏を聴く前には、どう想像したって、ハンクのピアノは時代遅れの音なんだろうな、って思ってしまう。

それじゃあ、なんで新主流派の最先端を走っていたベースのロンとドラムのトニーが、このベテラン、ハンク・ジョーンズと組んで、ピアノ・トリオとして演奏を繰り広げたのか、が判らない。日本のジャズレーベル独特の、ギャラを積んで一流ジャズメンを呼んだ、趣味の悪い企画セッションなのかと勘ぐったりする。

しかも、このアルバムの収録曲が「Night In Tunisia」「Round Midnight」「Satin Doll」「My Funny Valentine」の4曲。それも超有名なジャズ・スタンダード曲ばかり。これだけ超有名なジャズ・スタンダード曲を並べられると、胡散臭さに拍車がかかる。大丈夫なのか、このアルバムとも思う。
 

Gjt_direct_from_la

 
しかし、一旦、このアルバムを聴き始めると、まずは思わずビックリ。聴き耳を立て始め、1曲目の「Night In Tunisia」のアドリブ部の展開の頃には、ドップリとこのアルバムの演奏に聴き入っている。

まず、時代遅れの音なんでしょう、と思っていたハンクのピアノが素晴らしく創造的で先鋭的。実に尖った当時最先端のモダンジャズなピアノの響きである。確かにタッチはハンクの典雅なタッチ。しかし、そのインプロビゼーションの展開はダイナミックで緊張感溢れる先鋭的なもの。

逆にそんな先鋭的なハンクのピアノに煽られて、ロンのベースがモーダルにブンブン唸りを上げ、トニーのドラムがマシンガンのように打ち付けられ、時にハイハットが飛翔する。凄まじいばかりのリズム&ビートのうねり。その「うねり」に乗じて、ハンクのピアノがスリリングなアドリブ・フレーズを展開する。

恐らく、この『Direct From L.A.』というアルバム、GJTのスタジオ録音の中でも出色の出来でしょう。収録時間は、LP時代のダイレクト・カッティングのアルバムなので、全体で29分弱と短いが、そんな短さが全く気にならない位に、このアルバムに収録された演奏は相当に充実している。

疾走感とスイング感を両立させつつ、ダイナミックな表現とセンシティブな表現を共存させる。そんな大変モダンなピアノ・トリオを実現しているところが凄いですね。全くもって脱帽です。ピアノ・トリオの常識を覆す斬新な演奏は今の耳にも新鮮に響きます。
 
 
 
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2015年3月 4日 (水曜日)

トニー・ウィリアムスの遺作 『Young at Heart』

トニー・ウィリアムスは、なにもフリー・ジャズだけが十八番では無い。彼のドラミングはオールマイティー。あらゆるジャズの演奏スタイルに適応する。それも相当に高いレベルで、クイックに適応するのだから凄い。

そんな偉大なるジャズ・ドラマー、トニー・ウィリアムスの遺作をご紹介したい。その遺作とは、Tony Williams『Young at Heart』(写真左)。1996年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Tony Williams (ds), Ira Coleman (b), Mulgrew Miller (p)。

このアルバムは17歳でマイルス・クインテットに加わり、若き天才の名を欲しいままにした、トニー・ウィリアムスの、当時50歳にして最後の録音。躍動的で力強い演奏は生き生きとして絶好調であるとさえ思えるが、このわずか5ヶ月後、1997年2月、突如として、彼はこの世を去ることになる。

そういう想いで聴くと、とても切なくなるのでいけないのだが、このアルバムでの最大の驚きといえば、ピアノのマリュグリュー・ミラーだろう。全編に渡って端正で柔軟、かつスケールが大きくパワフルな、純ジャズなピアノをしっかりと聴かせてくれるのだが、これが僕としては驚き。

このアルバムを初めて聴いた時(1997年頃だったかな)、マリュグリュー・ミラーが、こんなにバリバリと純ジャズなピアノを弾きたおすのを他に耳にしたことが無かったからだ。マリュグリュー・ミラーって、相当になかなかのピアニストであることを再認識した次第。
 

Young_at_heart

 
が、よ〜く聴いてみると、ドラムのトニーのサポートがあってのこそのミラーの名演である、ということに気がつく。昔のトニーは手数の多さと超弩級の爆音みたいな低音を響かせるドラミングで、他を圧倒するどころか、時にはうるさいくらいで、特に気に入らない相手だとそれが増幅されて辟易することがある位に、前へ出る目立ちたがりのへそ曲がりなドラマーだった。

しかし、このアルバムでは、ピアノやベースがソロを取る時にはしっかりバッキングに回り、時には鼓舞激励するが如く、時には優しく見守るが如く、硬軟自在のドラミングで若手の2人をサポートするのだ。

そんなトニーのドラミングをバックにしているからこそ、マリュグリュー・ミラーのピアニストとしての才能が最大限に発揮されるのだろう。とにかく、僕の大好きなスタンダード「On Green Dolphin Street」や、ビートルズの名曲「The Fool on the Hill」のカバーなどでは、このトニーとミラーの関係が最良の形で提示されており、聴いていてとても楽しい。

しかし、今まで、こんな共演者を惹き立て、共演者の長所を伸ばし、隠れた才能を引き出すトニーって、聴いたことがなかった。このアルバムで見せた、素晴らしいテクニックに裏打ちされた素晴らしいバッキングが続いていれば、と思うと、早すぎる死が悔やまれてならない。

ともあれ、トニーのパワフルなバスドラムとシンバルの切れ味、そしてピアノ・ベースと三位一体となった豊かで鮮やかな響きは必聴です。そして、最後に、このアルバムを聴いて絶賛していたマリュグリュー・ミラーも2013年5月に鬼籍に入ってしまった。改めて、ご冥福をお祈りしたい。
 
 
 
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2015年3月 2日 (月曜日)

トニーのインテリジェンス 『Spring』

今日から朝のスタートは「山下洋輔&坂田明」週間。フリー・ジャズ、ポップ・アバンギャルド、アンビエント・ジャズのジャンルの好盤を純に聴き進めている。ということで、このところ、フリー・ジャズなバーチャル音楽喫茶『松和』です(笑)。

なぜか、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、春は「フリー・ジャズ」。春の雰囲気に「フリー・ジャズ」が良く合うんですね。どうしてって、夏は「暑苦しい」、秋は「もっとしみじみしたい」、冬は「何か違うでしょ」という感じで、春はなんだか「フリー・ジャズ」がしっくり来るのだ。

さて、今日聴いたアルバムが、Tony Williams『Spring』(写真左)。1965年8月の録音。ブルーノートの4216番。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Sam Rivers (ts), Herbie Hancock (p), Gary Peacock (b), Anthony Williams (ds)。

ベースがロンでは無く、ピーコックなのが面白い。マイルス学校の門下生、トニー、ハービー、ショーターと揃っているのに、ベースがピーコックか(笑)。恐らく、トニーは、ロンのベースはフリー・ジャズに向かないと思っていたのでは無いか。そうでなければ、トニーの保護者役のロンは必ず参加を要請しているはずだ。

この盤はトニー・ウィリアムスが一番尖っていた時代の過激なアルバム。全編に渡って、フリー・ジャズの波が押し寄せている。このアルバムが録音された時期、マイルス学校の門下生、トニー、ハービー、ショーターはフリー・ジャズがやりたくてやりたくて仕方が無かった様ですね。

さて、メロディアスな聴きやすいジャズを期待すると大きく外れるのだが、先の『Life Time』のレビュー(2015年2月16日のブログ・左をクリック)でも書いたが、フリー・ジャズという演奏フォーマットは、ジャズの即興性のみを取り出して楽しむには「最適な演奏フォーマット」であることは間違いない。
 

Tony_williams_spring

 
1曲目〜3曲目の演奏などはフリーな演奏の最先鋒なのだが、トニーのドラミングに耳を傾けてみると、デビューアルバムの『Life Time』の時よりも、より柔軟で、より多彩なドラミングがとても素晴らしい。 トニーのドラミングだけ聴いていても楽しめる、トニーの表現豊かなドラミングに一層の磨きがかかっていることがよく判る演奏だ。

競演しているサイドメンも良し。ここでも、デビュー作の『Life Time』と同様、ベースのピーコックが素晴らしい。トニーのドラミングとフリーな演奏に対して、実に相性の良いベースを聴かせてくれる。

ピアノのハービーもフリーなフォーマットの中でも、その個性的なフレーズとアプローチを駆使していて、その実力を遺憾なく見せつける。サックスは、サム・リバースとウエイン・ショーターの2本立てだが、ウエインのサックスの方がより柔軟で自由。

4曲目の「Love Song」は、このアルバムのハイライト。それまでのフリー寄りの演奏から、雰囲気がガラリと変わって(もしかしたら、このアルバムから見ると異質ともいえる)、フォーク・タッチの哀愁を帯びた、魅力的なメロディーを持った、ジャズの従来の伝統的な演奏フォーマット。

その演奏の内容たるや「素晴らしい」の一言。やはり、このメンバーが一丸となって、伝統的なフォーマットを演奏すると、今でも 最高峰と言える演奏になるのだ。この4曲目、一度聴くべし。

フリー・ジャズってどんなものかなあ、と思いたち、一度、フリー・ジャズを聴いてみたいなあと思っている方には、先にご紹介した『Life Time』と併せてお勧めのアルバム。

フリー・ジャズのアルバムの中には本能のおもむくまま、無茶苦茶に吹きまくり、叩きまくりというアルバムが多々あるが、このトニーのアルバムはそうでは無い。全編、トニーのインテリジェンスが溢れている。
 
 
 
★震災から3年11ヶ月。決して忘れない。まだ3年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。

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2015年2月16日 (月曜日)

若き日のトニー・ウィリアムス 『Life Time』

偉大なるジャズ・ドラマー、トニー・ウィリアムス。ワイルドで多彩なリズムを自在に叩き出す天才ドラマー、トニー・ウィリアムスは、17歳でマイルス・クインテットに加わり、若き天才の名をほしいままにしつつ、 1960年代のマイルスの第2期黄金時代を支えた偉大なドラマーだった。

それから約30余年、常にジャズ界のトップ・ドラマーの地位を確保しつつ、その躍動的でパワフルなバスドラムと絶妙なシンバルの切れ味が特徴の彼のドラミングは、純ジャズのジャンルのみならず、フュージョンやロックのジャンルでも、我々を楽しませてくれました。

しかし、1997年2月、まさかの急逝。享年50才。なんと、残念なことだろう。トニーの早すぎる死はジャズ界にとって、大きな損失でした。これから、という年齢だったのに実に残念でなりません。

今日、そんなトニー・ウィリアムスの若かりし頃の初リーダー盤を久し振りに聴きました。Tony Willams『Life Time』(写真左)。1964年8月の録音。ブルーノートの4180番。ちなみに1曲目〜3曲目のパーソネルは、Sam Rivers (ts), Gary Peacock (b), Richard Davis (b), Anthony (tony) Williams (ds)。

1曲目〜3曲目の内容はと言えば、当時のジャズ界の流行を見事に反映した、実にフリーな演奏。本能の趣くままに好き勝手に吹いたり、叩いたりするのではなく、底辺に定型のリズムと自由な旋律がある中での演奏なので、モード奏法の最先端の「限りなく自由な演奏」といったほうが適切。

意外と聴き易いので、フリー・ジャズの入門編には打ってつけのアルバムといえる。即興性はジャズ演奏の重要な要素であるが、このアルバムの演奏を聴いていると、メロディーというものを考慮せず、ひとつひとつ無駄なものを省いていくと、ジャズってこの様な即興性の高い演奏だけが残るんだろうな、って感じがするのだ。

そして、その即興性に特に重要な要素は「演奏技術の高さ」。まず、このアルバムのリーダー、トニー・ウィリアムスのドラミングが実に素晴らしい。テクニックがとにかく凄い。
 

Life_time

 
こんなに「雄弁に語る」ドラムは唯一無二、このトニーのドラミングだけだろう。時には荒々しく、時には繊細に、とにかく素晴らしく柔軟なドラミング。ドラムを志す演奏家は、必ず、このトニーの全てのドラミングをしっかりと聴き、研究すべきだと僕は思う。

サイドメンも素晴らしい面々ばかり。冒頭から2曲目までのベースは、ゲイリー・ピーコック(現在、キース・ ジャレットとのスタンダード・トリオで有名)とリチャード・デイヴィスとのダブル・ベース(ちなみに3曲目のベースは、ピーコック単独)。

実に自由で奥の深い、根太いベースを聴かせてくれる。変幻自在のトニーのドラミングに素早く反応し、時に、トニーのドラミングをリードする。この様な伝統に根ざしたフリーな演奏には、ピーコックのベースは最適だ。

テナー・サックスは、当時、新進気鋭の若手、サム・リバース。フリーな演奏の中にも決して破綻をきたさない、優れた技術に裏打ちされた骨太なテナーには、すっかり耳を奪われる。冒頭1曲目〜3曲目までのモード奏法の最先端の限りなく自由な演奏で、リバースは吹きまくる。

後半の4曲目〜5曲目は、ピアノやビブラフォンの入ったカルテットの演奏になるが、これらの演奏は、現代音楽を彷彿とさせる完全にフリーな演奏。好きな人にはたまらんだろうが、普通のジャズ者の方々には実にとっつきの悪い演奏が繰り広げられる。これはちょっとジャズ者初心者の方々には重荷かもしれない。

ちなみに、この前衛的なヴァイブは、Bobby Hutcherson。これまた前衛的なピアノは、Herbie Hancock。5曲目のみ、ベースのRon Caterが参加。ここにトニー・ウィリアムスがドラムで入って、カルテット編成にて、完全フリーな演奏を繰り広げている。

流石に、この4〜5曲目の前衛的なフリー演奏は、一般のジャズ者の方々にはちょっと重荷。このアルバムは冒頭の3曲の優れた即興性を聴くべきアルバムであると僕は思う。この冒頭3曲のトニーのドラミングは実に天才的である。
 
 
 
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