2010年8月 5日 (木曜日)

Miles Davis『Bitches Brew』

今日は誕生日。まあ、幾つになったかは割愛しますが、この暑い季節の誕生日。子供の頃は夏休み真っ只中ということもあって、良い思い出は全くありません。余りに暑くて親も忘れる誕生日(笑)。しかも、今年は人間ドックと重なって、酷暑の夏=人間ドック=誕生日と、なんだか凄い取り合わせになりました(笑)。

さて、せっかくの誕生日のブログなので、僕の一番好きなジャズ・ミュージシャン、マイルスの話をしましょう。しかも、エレクトリック・マイルス。とにかく、ジャズが好きになって30年以上になりますが、エレクトリック・マイルスには、今でも「やられてしまう」んですね。

エレクトリック・マイルスが一番尖っていた時期は、1960年代末〜1970年半ば。体調不良で隠遁生活に入るまでの、約6〜7年の期間である。この時期のエレクトリック・マイルスは無敵である。21世紀になった今でも、この尖ったエレクトリック・ジャズを超える演奏にはお目にかかった、いや、お耳にかかったことが無い。

そんなエレクトリック・マイルスの基本をなす、基本を我々に提示してくれるアルバムが、Miles Davis『Bitches Brew』(写真左)。1969年8月の録音。今から、41年前の録音である。しかし、今の耳で聴いても、全く古さを感じさせない、というか、何度聴いても新しい発見があって、何度聴いても、その切れ味鋭い、イマージネーション溢れる、最大限自由で整然と統制された「真のジャズ」の姿を感じて、鳥肌が立つ瞬間が幾度もある。

ちなみに、パーソネルは、Miles Davis (tp) Bennie Maupin (bcl) Wayne Shorter (ss) Chick Corea, Joe Zawinul (el-p) John McLaughlin (g) Dave Holland (b) Harvey Brooks (el-b) Jack DeJohnette (ds) Lenny White (ds) Don Alias (cga) Jim Riley (shaker)。いやはや、集めに集めた、当時最先端をいく、若手精鋭ミュージシャンばかり。
 

Bitches_brew

 
テオ・マセロの「テープ・コラージュ」のお陰で、マイルスの思い描いていた音楽的イメージが、しっかりと起承転結をなす「一つの曲」として、はたまた、「一つの曲」としてのライブ演奏として、十分に音楽的成果として成立するものだ、ということが証明されたアルバムが『In a Silent Way』。

そして、この『Bitches Brew』は、最初からマイルス・ディヴィスがイメージしたエレクトリック・ジャズのイメージを実際の演奏セッションを繰り返すことにより、実際の演奏によって具現化した、記念すべき「エレクトリック・マイルスの基本」を我々に提示してくれるアルバムである。

確かに、まだテープ編集、テープ処理が施されているが、『In a Silent Way』の様に、テオ・マセロの「テープ・コラージュ」によって偶発的に出来上がった成果ではない。マイルスが最初から狙った成果を、実際の演奏セッションにより表現し、それをLP2枚組の枠の中に押し込めるために、テープ編集、テープ処理が施されたに過ぎない。

電気楽器を最大限に活かした「集団即興演奏」の最高峰のサンプルがここに提示されています。「適度な緊張感」と「クールな躍動感」、そして「広大で自由なインプロビゼーション・スペース」。以降の1970年代、「エレクトリック・マイルスの基本」がここにある。8ビートをベースとしたポリリズムを基に、躍動的なモード演奏が長尺の演奏として成立している。エレクトリック・マイルスの大本は「ビート」である、ということを強烈に体感できる、凄い2枚組です。

この『Bitches Brew』は、収録されたどの曲がどう、という話ではありません。聴けば判る。というか「聴かねばならない」。ジャズの凄さを感じるには、この『Bitches Brew』は避けて通れないでしょう。逆に、この『Bitches Brew』を受け入れない限り、ジャズというジャンルの音楽の深さと特質が感じ取れないような気がします。決して、一般ジャズ者万民向きでは無い。

この『Bitches Brew』は、敢えて誤解を恐れず言うなら、究極の「ミュージシャンズ・アルバム」の一枚でしょう。でも、一度は聴いて頂きたい名盤中の名盤です。
 
 
 
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2010年1月 3日 (日曜日)

ジャズ、今年の「聴き初め」・2

その音世界を愛でて、今年の音楽三昧の生活に幸あれ、と願う行事「聴き初め」。昨日、故あって封印していた、自分の一番お気に入りのアルバムをかけるという「お作法」を、6年ぶりに復活させた訳だが、同時に、エレクトリック・マイルスも解禁した。

昨日、Chick Coreaの『Return to Forever』に続いて、「聴き初め」に選んだアルバムが、Miles Davisの『Agharta(アガルタの凱歌)』(写真左)である。今年より、エレクトリック・マイルスを解禁して、本格的に聴き直そうと思い立った。

僕はエレクトリック・マイルスが大好きである。そして、エレクトリック・マイルスの中で、まずお気に入りとなったアルバムが、この『Agharta(アガルタの凱歌)』と『pangaea(パンゲアの刻印)』の2つのライブアルバム。どちらも、1975年2月1日、大阪フェスティバル・ホールでのライブ録音である。

最初は、当時、ライブ録音された音源をFMでエアチェックして聴いた。たまげた。その頃、プログレッシブ・ロックに填っていた僕は、このマイルスのライブを聴いた瞬間、プログレッシブ・ロックは耳に優しく聴き易い「ポップ・ミュージック」の類だ、と思った。アルバム化された時は「即ゲット」でだった。

ベースとドラム、そしてギターが紡ぎ出すビートが凄い。なんて複雑で心地良いビートなんだろう。そのご機嫌なビートに乗って、トランペットがソプラノサックスが、そしてギターが「直感的な旋律」を紡いでいく。
 

Agharta_6

 
しかも、そのビートや旋律は決して事前に打合せされたものでは無い、ということが聴いていて良く判る。マイルスが、ペットと電子オルガンで、その場その場で、バンド全体の音を指揮し、統率している様子が実に良く判る。決して「完成され洗練された音」では無い。でも、そのライブ感が実にスリリングである。

ジャズはもとより、ファンク、ロック、ソウルすべての音楽要素を凝縮した様な、懐の深い音楽ジャンルである「ジャズらしい音」が実に頼もしい。そして、「一過性かつ再現不可能な」音の洪水は、本当にジャズらしい。

フリー・フォームで無いのに、圧倒的に自由度の高い演奏に、マイルスの真骨頂を感じる。エレクトリック・マイルスの一連の成果は、フリー・ジャズによる、従来の「音楽の本質」の放棄の後に必然として現れた、新しいモダン・ジャズの観念に基づいた「音楽の本質」の追求の一つの「大きな成果」だろう。

ジャズはもとより、ファンク、ロック、ソウルすべての音楽要素を凝縮した様な、空前の音楽的カオス。決して「完成され洗練された音」では無いが、ジャズの特質が直感的に感じることが出来る、数少ない演奏の記録である。横尾忠則が担当したジャケットも見事。

聴くならば『Agharta(アガルタの凱歌)』と『pangaea(パンゲアの刻印)』とセットで聴きたい。聴くならば出来る限り大音量で聴きたい。セットでかつ大音量とくれば、体調が良い時で無いと続けて聴くことは「ちと、しんどい」。でも、それだけ聴く価値のあるライブ盤であることは確かである。 
 
 
 
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