バリー・ハリスの初リーダー作
バリー・ハリス(Barry harris)は、「優れた総合力そのもの」を個性とするピアニスト。スタイルは「バップ」。ビ・バップの演奏マナーをハードバップに転化した弾きっぷりで、テクニック溢れる流麗な指捌きと簡潔なアドリブ・フレーズが特徴。
Barry Harris『Breakin' It Up』。1958年7月31日、シカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), William Austin (b), Frank Gant (ds)。デトロイト出身の「総合力勝負」のピアニスト、バリー・ハリスの初リーダー作になる。演奏形態は「ピアノ・トリオ」。バリー・ハリスのピアノの特徴が良くわかる演奏形態である。
録音年の1958年と言えば「ハードバップ」の最盛期。ハードバップのピアニストは「一聴すれば直ぐに判る個性」を持ったピアニストが多く、「総合力勝負」のピアニストは数が非常に少なかった。「一聴すれば直ぐに判る個性」の方が、聴く方からすると判り易く、好き嫌いも判別し易い。「一聴すれば直ぐに判る個性」を持ったピアニストの方が人気が高かったのは良く判る。
そんな中、バリー・ハリスの様な「総合力勝負」のピアニストは珍しかった。しかし、「総合力勝負」のピアニストはテクニック優秀、歌心満載。ハンク・ジョーンズ然り、アーマッド・ジャマル然り。味のある、小粋な、職人芸的な燻し銀ピアニストが多くいたと記憶する。
バリー・ハリスのピアノは、どこから聴いても「総合力勝負」のピアニストなので、ややもすれば、カルテル・ピアノとか、ラウンジ・ピアノと揶揄される危険性がある。が、フレーズのノリとグルーヴ感がしっかり「ジャズ」しているので、イージーリスニング風なピアノにはならないのは立派。
冒頭の有名スタンダード曲「All the Things You Are」を聴けば、バップなピアノであり、バド・パウエルの影響をウケているのが良くわかる。しかし、バドよりはタッチがジェントルであり、フレーズが典雅である。これが、バリー・ハリスの真骨頂。
甘い旋律を持つ「Stranger in Paradise」など、カクテル・ピアノに成り下がるか、と思いきやそうはならない。バップなピアノで、リズミカルにグルーヴ感溢れるアドリブ・フレーズをさり気なく弾き回して、ジェントルではあるが、しっかり「ハードバップ」していて良い感じだ。
バド・パウエルのピアノから、激しさと鬼気迫る超絶技巧を差し引いて、優雅さと親しみ易さを足した様な、まさに、バド・パウエルのピアノを流麗に聴き易くしたようなピアノであることが良く判る。バリー・ハリスのピアノの特徴がとても良くわかる初リーダー作。好盤です。
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