2024年9月30日 (月曜日)

増尾好秋 ”Sunshine Avenue”

フュージョン・ジャズ全盛時代の1970年代後半、増尾好秋の『Sailing Wonder』、『Sunshine Avenue』、『Good Morning』の3枚のアルバムは、勝手に「増尾好秋のフュージョン3部作」と呼んで愛聴していた。机に向かって勉強するにも、麻雀するにも、いきつけの喫茶店で寛ぐにも、この「増尾好秋のフュージョン3部作」をヘビロテにしていた時期があった。

増尾好秋『Sunshine Avenue』(写真)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、Yoshiaki Masuo (el-g, ac-g, solina, perc), Victor Bruce Godsey (ac-p, el-p, clavinet, vo), T.M.Stevens (el-b, piccolo bass), Robbie Gonzales (ds), Charles Talerant (perc), Papo "Conga" Puerto (congas), Jorge Dalto (ac-p), Shirley Masuo (perc), Michael Chimes (harmonica)。

前作『Sailing Wonder』が、クロスオーバー&ジャズロック志向の素敵なアルバムだった。そして、次作『Good Morning』は、フュージョン・ジャズに傾倒した名盤だった。この間に位置する『Sunshine Avenue』は、増尾好秋の考える「ジャズ・ファンク、ジャズロック、R&B志向のフュージョン」が、ごった煮に収録されている。

ボーカル入りの演奏もあったりして、とっ散らかった雰囲気もあるのだが、増尾のギターの音色、フレーズに一貫性があって、この増尾のギターが、とっ散らかし気味の音志向の中で一本筋を通していて、この増尾のギター一本で、アルバム全体の統一感を司っているのだから、増尾のギターは、決して「隅におけない」。
 

Sunshine-avenue 

 
バックのメンバーは、『Sailing Wonder』の様な、フュージョン・ジャズの名うての名手達を集った、オールスターの「一過性」のセッション・メンバーでは無く、バンド・メンバーとして、一定期間、恒常的に活動し、共にバンド・サウンドを育み、バンド・サウンドを成熟させるメンバーを厳選した様である。

この『Sunshine Avenue』でのバンド・メンバー、T.M.スティーヴンス (b)、ヴィクター・ブルース (key)、ロビー・ゴンザレス (ds)、シャーリー増尾 (perc) は、次作『Good Morning』に、ほぼ継続されている。

VictorI Bruce Godsey (ac-p, el-p), T.M. Stevens (el-b, piccolo-b),Robbie Gonzales (ds, congas), Shirley Masud (perc), Dele (hammond-org), Margaret Ross (harp), Josan (back-vo)。

この厳選したバンド・メンバーで、当時のエレ・ジャズのトレンドであった「ジャズ・ファンク、ジャズロック、R&B志向のフュージョン」をやってみた、というのが、このアルバムの内容では無いだろうか。ちなみに、この『Sunshine Avenue』で培ったフュージョン・ジャズな音志向を、次作『Good Morning』にしっかり引き継いでいる。

興味深いのNY録音で、NYのメンバー中心の演奏なんだが、出てくる増尾好秋の考える「ジャズ・ファンク、ジャズロック、R&B志向のフュージョン」は、どれもが、ファンクネスは限りなくライト、歌心が溢れまくる流麗でキャッチャーなメロディー、軽めのオフビートとグルーヴなど、和フュージョン・ジャズの個性と特徴をしっかりと押さえていること。増尾のプロデュース力が、この盤でも存分に発揮されていて立派だ。
 
 

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2024年9月29日 (日曜日)

増尾の和フュージョンの名盤

1970年代後半から1980年代前半、和フュージョンの全盛期のギタリストと言えば、まずは「渡辺香津美」そして「増尾好秋」。この2人が代表格で、和フュージョンのギターを牽引していた印象が強い。特に、増尾好秋は、フュージョン・ジャズに転身しつつ、その演奏の軸足は「ジャズ」にしっかり残していた様に思う。

増尾好秋『Good Morning』(写真)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、Yoshiaki Masuo (g, perc, vo), Motoaki Masuo (g, syn), VictorI Bruce Godsey (ac-p, el-p), T.M. Stevens (el-b, piccolo-b),Robbie Gonzales (ds, congas), Shirley Masuo (perc), Dele (hammond-org), Margaret Ross (harp), Josan (back-vo)。

増尾好秋が一番、フュージョン・ジャズに傾倒した名盤。もともと、渡辺貞夫に認められ、1968年から1971年まで、渡辺貞夫のグループに在籍。1971年に渡米。1973年から1976年までソニー・ロリンズのバンドに在籍した、メインストリームな純ジャズ畑を歩いてきた増尾である。

いきなりコマーシャルに、ジャズロックへの転身や、他のジャンルとの融合に走ることなく、電気楽器を活かしたジャズを目指しつつ、8ビートや、フュージョン・ジャズの「肝」である「ソフト&メロウな音志向」の取り込みをしつつ、1970年度の終わりに、この盤の成果にたどり着いた。
 

Good-morning

 
増尾好秋の歌心溢れるギター・ワークと流麗なメロディ・センスが光る、内容の濃い、上質のフュージョン・ジャズ盤に仕上がっている。フュージョン・ジャズといえば、聴き心地の良い「ソフト&メロウ」な演奏、という印象が強いが、この盤はそれだけに留まらない。疾走感溢れるジャズロックな演奏もあれば、ハードバップ時代のジャム・セッションをエレでやった様な演奏もあって、バラエティーに富んでいる。

一番感心するのは、ほぼ、米国フュージョン畑の名手を招聘しているにも関わらず、ファンクネスは限りなくライト、歌心が溢れまくる流麗でキャッチャーなメロディー、軽めのオフビートとグルーヴなど、和フュージョン・ジャズの個性と特徴をしっかりと押さえていること。増尾好秋のセルフ・プロデュースとアレンジが、バッチリ効いている。

サイドマンに目を転じると、弟でサウスポーのギタリストである増尾元章の貢献が大きい。兄の義昭とギター合戦を演じたり、流麗でソフト&メロウな「フュージョンど真ん中」の楽曲を提供したりと貢献度大である。

「モンスター・ベース」と異名を取ったT.M.スティーヴンスのエレベの参加も効いている。ややもすれば、ソフト&メロウにどっぷり浸かりそうな、流麗なフュージョン・テイストのバラード曲に、粘りのあるソリッドなエレベのラインを差し込んで、意外と硬派な演奏に昇華させている貢献度は高い。

増尾好秋の歌心溢れるギター・ワークと流麗なメロディ・センス、加えて、セルフ・プロデュースとアレンジ、そして、優れたサイドマンの参加が功を奏した、和フュージョン・ジャズの名盤だと思う。
 
 

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2024年8月28日 (水曜日)

増尾好秋 ”Sailing Wonder”

増尾好秋。 1946年10月12日生まれ。今年で78歳。我が国の和フュージョンの代表的ギタリストの一人。渡辺貞夫に認められ、1968年から1971年まで、渡辺貞夫のグループに在籍。1971年に渡米。1973年から1976年までソニー・ロリンズのバンドに在籍したのは有名。

1980年代なかばから2008年まで、ニューヨークのソーホー地区に本格的なレコーディングスタジオ The Studio を所有し、プロデューサーとしても活躍。2008年より演奏活動に完全復帰。2012年6月より、日本での本格的なバンド活動を再開している。

増尾好秋『Sailing Wonder』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、増尾好秋 (g, synth, perc),Eric Gale (g), Dave Grusin (synth), Richard Tee(p, org, key), Mike Nock (synth), Gordon Edwards (b), T.M. Stevens (b), Steve Gadd (ds), Howard King (ds), Al Mack (ds), Bachiri (perc), Warren Smith (perc), Shirley Masuo (vo), Judy Anton (vo)。

先に3枚のリーダー作をリリースしているが、この盤は実質上の増尾の初リーダー作と捉えても差し支えないだろう。キングレコード傘下のフュージョン・レーベル、エレクトリック・バードの第一弾アーティストとして契約しての、エレクトリック・バードとしての第1作。

当時、NYに在住していたこともあって、いやはや、錚々たるパーソネル。NYのクロスオーバー&フュージョン・ジャズの「名うて」のミュージシャン達が大集合といった風情である。これだけの「一国一城」的な一流ミュージシャンを集めると、意外とそれぞれ「我が出る」のだが、そうなっていないところが素晴らしい。
 

Sailing_wonder1

 
タイトルやジャケから想起される様に、「海」をテーマにコンセプト・アルバムである。が、それを意識させないくらい、収録された個々の演奏が素晴らしい。曲調もさまざまな増尾のオリジナル曲がメインで、増尾の作曲能力の高さとアレンジのアイデアの豊かさが感じ取れる。

クロスオーバー&フュージョン志向のエレ・ジャズだが、1曲目のタイトル曲「Sailing Wonder」だけ、フュージョンっぽい演奏だが、2局目以降は、どちらかといえば、クロスオーバー・ジャズな音志向が強い。クロスオーバー&ジャズロックとして良いかもしれない。

バンド全体、完成度の高い演奏で、聴いていて、とても清々しい気分になれる。躍動感と爽快感が半端ない。伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」からもメンバー参加もあって、アルバム全体に、そこはかとないファンキーなグルーヴ感が漂うところもグッド。フュージョン者の我々からすると「たまらない」。

増尾好秋のギター・テクそのもの、作曲&アレンジの才能など、増尾好秋が持つ「個性と才能」の全てが感じ取れる、「増尾好秋のショーケース」の翼な優れた内容。増尾好秋の代表作の一枚です。

2015年6月23日のブログ記事「増尾好秋のフュージョン名盤」を全面的に改稿しました。
 
 

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2022年3月11日 (金曜日)

増尾好秋『Masuo Live』を聴く

最近、増尾好秋のリーダー作をちょくちょく聴いている。増尾好秋といえば、僕はジャズを本格的に聴き始めた頃、1970年代後半では、既に、日本発、世界に通用するフュージョン・ギタリストとして、渡辺香津美と並んで我が国では「人気ギタリスト」的な存在だった。

増尾はコンテンポラリーな純ジャズ志向のジャズ・ギターから入っている。とあるコンテストにて、渡辺貞夫に認められ、1968年1月、渡辺貞夫のバック・ギタリストとして初レコーディングを経験している。ソニー・ロリンズのバック・バンドにパーマネント・メンバーとしても活動。

しかし、1970年代後半には、キングレコード傘下のフュージョン・レーベル、エレクトリック・バードの第一号アーティストとして契約。1980年代前半までは、フュージョンのギタリストとして人気を博した。1990年代辺りから、コンテンポラリーな純ジャズ志向な音世界に戻ったが、1980年代後半以降、しばらくプロデューサー業に集中していた。

この「プロデューサー業」に集中していた時期、特に1990年代から2008年までが良く無かったのか、2010年代は増尾はミュージシャン活動に100%戻っているが、世間では「増尾って誰?」という感じで、ベテラン・ジャズ者の方々の中には「ああ、増尾って、明るくハッピーなエレギを弾くフュージョン野郎ね」などと、偏った意見を述べたりする方もいるから困ったものだ。
 

Masuo-live_1

 
増尾好秋『Masuo Live』(写真)。1980年2月9日、東京厚生年金会館でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Yoshiaki Masuo, Motoaki Masuo (el-g), Victor Bruce Godsey (el-p, org), T.M. Stevens (el-b), Robbie Gonzales (ds), Shirley (perc, syn)。

フュージョン時代の増尾好秋のライヴ盤であるが、この内容を聴けば、先の「明るくハッピーなエレギを弾くフュージョン野郎ね」は、ちょっと的外れな評価と言わざるを得ない。凄くパワフルで疾走感溢れる、ガッツリ硬派でノリノリ、とびきりハイテクニックなエレギにビックリする。

これが増尾のエレギの本質かぁ、と心から感心する。ライヴでこそ、そのジャズマンの真価が分かる、というが、このライヴ盤の増尾がその好例である。「ソフト&メロウ」なフュージョン野郎はこのライヴにはいない。ガッツリ硬派でとことんパワフルなエレギであるが、弾きまくるフレーズに「歌心」がしっかり宿っているのが素晴らしい。

バックのメンバーも凄い。まず、T.M.スティーブンスのチョッパー・ベース(スラップ奏法)が冒頭から飛ばしまくる。ロビー・ゴンザレスのドラムも凄い。疾走感溢れる叩きまくり。それでいて五月蠅くない。ビクター・ブルース・ガッジーのキーボードも良い。全く「ソフト&メロウ」では無い、疾走感溢れ、歌心満載、増尾のエレギに挑みかかるような、意欲的なキーボード。

このライヴ盤、フュージョン・ジャズという切り口でのみ解釈するのには無理がある。途中、無調で静的なフリー・インプロビゼーションがあったり、アブストラクトにブレイクダウンしたりで、従来のメインストリーム系のエレ・ジャズが持つ要素も兼ね備えていて、このライヴ盤は、どちらかと言えば「コンテンポラリーな純ジャズ」志向のフュージョンと解釈した方が良い、と僕は思う。
 
 

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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

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2022年3月10日 (木曜日)

増尾のネオ・ハードバップ志向盤

和ジャズの「隠れ優れもの盤」を探しては聴いている。和ジャズは、権利関係の問題なのか、なかなか音楽のサブスク・サイトに、一部を除いて、アルバム・データがアップされずにいて、なかなか気軽に聴くことが出来ない環境が長く続いていた様に思う。

最近、やっと、和ジャズについても、過去の音源含めて、少しずつ、サブスクにアップされつつあって、この機会に「隠れ優れもの盤」を見つけては楽しんでいる。

Yoshiaki Masuo(増尾好秋)『Are You Happy Now』(写真左)。1996年2月and 5月のNY「The Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Yoshiaki Masuo (g), Larry Goldings (org), Lenny White (ds)。増尾のギターがメイン、オルガン+ドラムのトリオ編成。

増尾については、1970年代のフュージョン・ジャズ全盛期の時代から、彼のギターは折につけ、リーダー作は聴いてきた。特に、フュージョン時代の増尾のアルバムについては、ちょうど僕がジャズを本格的に聴き始めた頃にも重なって、大学近くの喫茶店でよく聴かせてもらった記憶がある。

明るい明確なトーンで、ハッピーなフレーズを弾く増尾は爽やかで、その卓越したテクニックを基に、意外と硬派なフレーズを弾くところが、お気に入りだった。そんな増尾が1996年にオルガン+ドラムを引き連れて、トリオで録音した盤がこの『Are You Happy Now』である。
 

Are-you-happy-now_1

 
パーソネルを見ると、オルガンに、現在では押しも押されぬ、人気ジャズ・オルガニストの1人である、ラリー・ゴールディングスと、ドラムに、大ベテランのフュージョン系ドラマーのレニー・ホワイトの名前が目を引く。このパーソネルを見ると、その内容の充実が感じられて、聴く前から楽しみになる。

内容的には、コンテンポラリーな純ジャズ。フュージョン・ジャズでは無い。増尾のエレギが「ネオ・ハードバップ」志向のフレーズを連発していて聴き応えがある。そして、オルガンの若きゴールディングスが、増尾の明るい、ハッピーなエレギに呼応して、明朗でポジティヴなオルガン・パフォーマンスを披露している。

そんな明るくハッピーな「ネオ・ハードバップ」風のフロント(ギター+オルガン)のパフォーマンスを、レニー・ホワイトのドラミングが、安定したリズム&ビートを供給し、演奏全体のグルーヴをコントロールしている。意外と、このホワイトのドラミングが演奏全体に好影響を与えていて、アルバム全体の雰囲気を良い感じに「締めている」。

また、ベースレスのトリオ演奏なので、どうすんのかな、と思って聴き耳を立てていたら、ギターがソロを執る時はオルガンとドラムがベースラインをバッキング、オルガンがソロを撮る時はギターとドラムがベースラインをバッキングするというやり方で、ベースレスを全く感じさせない、かつ、アルバム全体のリズム&ビートがを軽快な雰囲気している。

軽快でハッピーなギター+オルガンのトリオ演奏である。テクニックも高度で、アルバム全体の内容も聴きどころが満載。増尾の「ネオ・ハードバップ」志向な「優れもの盤」だと思います。
 
 

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2011年10月 3日 (月曜日)

お勧めのベースとエレギのデュオ

いや〜、今年は寒くなるのが早い。というか、秋ならではの「爽やかな涼しさ」は何処にいったんや。まだ10月に入ったばかりだというのに、この寒さはなんだ。10月の終わりのような気候にビックリ。

しかし、これだけ涼しくなると、ジャズも落ち着いて聴けるってもんで、涼しくなれば夜も静かな雰囲気になって、ソロやデュオのアルバムがじっくりと落ち着いて聴けるのが嬉しい。そこで、最近、マイ・ブームになっているデュオ・アルバムがある。今年6月にリリースされた、鈴木良雄&増尾好秋『アラウンド・ザ・ワールド』(写真左)。

若くして、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに在籍した鈴木良雄。1946年生まれ。日本のジャズ界を代表する、ジャズ・ベース奏者。「チンさん」の愛称でファンから親しまれている。太くて弾力のある端正な音色が特徴。

若くして、ソニー・ロリンズ・グループに参加した増尾好秋。1946年生まれ。日本のジャズ界を代表する、ジャズ・ギター奏者。バーニー・ケッセルの影響を受けつつ、スペーシーな音は個性的。太くて官能的で伸びのある音色が特徴。

この二人がデュオを組んだ。ベースとギターのデュオってありそうで無い。パッと思い出すのはロン・カーターとジム・ホールの『Alone Together』。それ以外・・・、浮かばない(笑)。
 

Around_the_world

 
希少価値である。太くて弾力のある端正なベースと太くて官能的で伸びのあるエレギとのデュオ。ベースもギターも音が「太い」ので、お互いの音を消し合わずにお互いの音を増幅させる「相性の良さ」。

テンション張って、丁々発止と技術を駆使してやり合うという感じでは無く、お互いの音を良く聴きながら、スペーシーなハーモニー&ユニゾンを繰り広げ、要所要所で、ここ一発のソロを展開する、って感じの広い音空間をゆったりと使いながらの「対話」という風情がとても魅力的。なんしか、音が良いんですよ。チンさんのベースの音といい、増尾さんのギターの音といい、とにかく官能的で、とにかく魅力的な音を湛えていて、聴いていて惚れ惚れします。 

オリジナルを4曲づつ、スタンダードが4曲とバランスのよい選曲。徹頭徹尾、適度にリラックスした、コンテンポラリーでジャジーな演奏を聴かせてくれる。とにかく丁寧に演奏されているのが良く判る。二人のミュージシャンの「誠実さ」が滲み出てくるような、暖かい演奏。とにかく心地良い。スタンダードの4曲、「80日間世界一周 」「バークリー・スクエアのナイチンゲール」「マイ・アイデアル」「ディープ・イン・ア・ドリーム」が絶品(お二人のオリジナルも良い出来ですよ)。

秋の夜長に、絶対お勧めのベースとエレギのデュオ盤。太くて弾力のある端正なベースと太くて官能的で伸びのあるエレギの絡みは、何度聴いても飽きません。良いアルバムです。ジャズ者万人の方々にお勧めです。

 
 

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Fight_3

がんばろう日本、がんばろう東北。自分の出来ることから復興に協力しよう。
 

2011年9月 6日 (火曜日)

ナベサダさんの第2の出発点

ジャズを聴き始めた大学時代、渡辺貞夫さんの存在は、日本人の僕にとって「励み」になる存在だった。

ジャズは本来、米国黒人のものであって、日本人にとっては遠い存在なのでは、という想いがあった。しかし、渡辺貞夫さんや秋吉敏子さんの存在と活躍は、ジャズは米国だけのものでは無い、ジャズは世界の皆で共有できるものなんだ、という想いを強く持たせてくれた。

渡辺貞夫さん、愛称ナベサダさん。ナベサダさんのジャズの個性の一つに「ワールドミュージック系フュージョン」っていうのがある。『Kenya Ya Africa』辺りから、アフリカのネイティブ・ミュージックを取り入れた、ナベダサさん独特の「ワールドミュージック系フュージョン」が展開されていた。

そんな「ワールドミュージック系フュージョン」の集大成が、『 Pamoja(パモジャ)』(写真左)である。米国留学から日本に戻り、日本の中で活動し、「ワールドミュージック系フュージョン」を自家薬籠中のものとした。その成果が、この 『 Pamoja(パモジャ)』の中にぎっしりと詰まっている。

1975年10月27日、東京の読売ホールでのライブ録音になる。ちなみにパーソネルは、渡辺貞夫 (as,fl,) , 福村博 (tb) , 増尾好秋 (g), 本田竹曠 (p) , 鈴木勲 (b) , 村上寛 (ds) , 富樫雅彦 (per)。当時の日本ジャズ界の腕利きばかりがズラリと並ぶ。
 

Pamoja

 
冒頭の「Vichakani」から、ナベダサさん独特の「ワールドミュージック系フュージョン」が炸裂である。バックの演奏もレベルが高い。このライブ演奏を聴いて、1970年代後半、日本のジャズ演奏のレベルは米国のレベルに追いついた、と実感したものだ。ちょっと野暮ったい面も見え隠れするが、演奏全体は堂々としたものだ。素晴らしい。

続く「Musitoni」「Pamoja」もナベダサさん独特の「ワールドミュージック系フュージョン」がてんこ盛り。バック演奏の健闘も含め、ナベサダさんのアルト・サックスの切れ味抜群。日本での活動の集大成とも言える熱演である。

この『 Pamoja(パモジャ)』は、日本が誇るジャズ・レーベル、イースト・ウィンド移籍後の初のライブ・レコーディングでもある。この後、ナベサダさんは、このイースト・ウィンドに、優れたリーダー作を多々残してくれた。

この『 Pamoja(パモジャ)』を第2の出発点として、ナベダサさんは米国に渡る。そして、米国フュージョンの名プロデューサーの一人、デイブ・グルーシンと組んで、『My Dear Life』を制作する。この『My Dear Life』は、ナベダサさん独特の「ワールドミュージック系フュージョン」と、ナベサダさん独特の「米国フュージョン・ジャズ」の架け橋に位置づけられるアルバム。ナベサダさんの「Pacific Crossing」である。

そして、デイブ・グルーシンと組んで、米国フュージョン・ジャズの名作『California Shower』をリリースする。そして、ナベサダさんの「米国フュージョン・ジャズ」の世界での快進撃が始まるのだ。 

 

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Fight_3
 
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2008年5月 5日 (月曜日)

大歓迎!『Complete Sonny Rollins In Japan』

今日も鬱陶しい天気の千葉県北西部地方。少しヒンヤリする朝。気温もあんまり上がらない。それでも、グズグズ拗ねていても仕方が無いので、朝早々に干潟ウォーキングに出かける。気温が上がらないので、汗もあまりかかず歩きやすい。しかも、今日は子供の日。笹餅と柏餅を手に入れて、ちょっとだけご満悦である。

バージョンアップしたGolive 9へのコンテンツの移行は、困難を極めながらも、今日でやっと、「ジャズ・フュージョン館」「懐かしの70年代館」共に、最低限の基本的な部分の移行は終わった。これで、コンテンツの追加はなんとか継続できる。他の膨大なコンテンツの移行は見送り。一年くらいかけて、追々、移行していくことにした(ハァ〜)。

閑話休題。ジャズの話を。4月23日、ソニー・ロリンズの『Complete Sonny Rollins In Japan』(写真左)がリリースされた。伝説の名演73年東京中野サンプラザ公演に未発表音源を追加して高音質K2HDにてコンプリート化したもの。いや〜懐かしいなあ。LP時代のアルバムは、学生時代にジャズ喫茶で聴きました。で、実は今まで所有してなかった。今回、やっとコレクションに加わりました。

当時のライブのパーソネルは、Sonny Rollins(ts),Yoshiaki Masuo,(g),Bob Cranshaw(b),David Lee,(ds),James Mtume(conga)でした。この1973年の公演のメンバーにはギタリストとして増尾好秋が加わっていました。日本人ギタリストがロリンズ・バンドの一角を占めていたという事実に、学生当時、実に誇らしく感じたことを覚えています。

当時、日本人ミュージシャンが、ロリンズの様なジャズ・ジャイアントのバンドに大抜擢されることはかなり珍しいことでした。この1973年の日本公演の時は、「増尾好秋の凱旋ツアー」としてそれこそ主役のロリンズを喰ってしまう程の大騒ぎとなったそうです。
 

Sonny_in_japan

 
もともと、LP時代より、このライブアルバムの内容は定評がありました。追加収録された演奏も、ただ単に一枚のLPに収録する為に、時間の都合で削られただけだったんだと納得できる、素晴らしい演奏、熱演の連続です。

そのLP時代の部分は、今回のコンプリート盤のDisc1に収録されています。そして、今回、コンプリート化の目玉の追加収録曲はDisc2に収録されています。ちなみに、DIsc1,Disc2の収録曲は以下のとおり。

(disc1)
01.POWAII(Sonny Rollins)
02.ST. THOMAS(Sonny Rollins)
03.ALFIE(Sonny Rollins)
04.MORITAT(Brecht - Weill)

(Disc2)
01.SAIS(James Mtume)
02.GOD BLESS THE CHILD(Herzog Jr. - Holiday)
03.HOLD 'EM JOE(Harry Glenn Thomas Jr.)

1973年の録音なので、ジャズ・テナーの世界は、1967年に亡くなったジョン・コルトレーンの影響が色濃く残っていて、Disc1の「POWAII」やDisc2の「SAIS」などは、まるで、コルトレーンが吹いているみたいです(笑)。

ロリンズらしさは「ALFIE」「MORITAT」「HOLD 'EM JOE」など、歌モノやカリプソ・ナンバーに満載ですね。ちなみに大有名曲「ST. THOMAS」は、ゆったりとして演奏に終始して、アドリブが盛り上がっていくか、ってところで演奏が終わってしまう、ちょっと不完全燃焼な演奏なのであしからず(笑)。

高音質K2HDでのデジタル・リマスターが施されているので、音が更に良くなっているのも良いですね。旧盤を持っている方も、買い換える価値有りです。聴き終えると、スカッとします。良いライブ盤ですよ〜 (^_^)v。
 
 
 
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2008年4月 8日 (火曜日)

いける「増尾好秋+ヤン・ハマー」

今朝は酷い天候。もう「台風」である。強い風、強い雨。単なる低気圧の通過じゃない。それでも会社へ行かないと給料が貰えない(笑)。レインコートをはおり、登山用のスパッツを着けて、完全防備で駅まで歩く。強い北風にあおられて、横殴りの強い雨。なんなんだ、この天候は。

夜、通勤の帰り。まだ、雨が残っていて、しかも、北東〜北からの強い風。そして「寒い」。吐く息が白いじゃないか。おいおい、こりゃ〜冬に逆戻りだぜ。しかも、電車は遅れて来ないし、ホームで電車を待っている間、寒いのなんのって。だから、この季節、太平洋南岸を低気圧が通った時って、関東地方って、嫌なんだよな〜、まったく (T.T)。

加えて、仕事が忙しい。今日は計6つの打合せの連チャン。しゃべるしゃべる、最後には声が枯れてきた(笑)。まあ、慣れていると言えば慣れているので、疲れ切ることはないが、なんだか、息抜き+気分転換したい、帰宅の途。

そんな時は、ノリの良いインスト、やっぱりフュージョンが良い。ノリノリのフュージョンが欲しい。で、聴いたアルバムが、増尾好秋+ヤン・ハマーの『フィンガー・ダンシング』(写真左)。

エレクトリック・ギタリストと、キーボード奏者ヤン・ハマーの組合せなので、70年代ロックのファンであれば、ジェフ・ベック+ヤン・ハマーの組合せ『ライブ・ワイヤー』(写真右)を思い浮かべる。でも、これが面白いことに、内容と演奏の雰囲気は全然違う。
 

Finger_dancing_2

 
増尾好秋+ヤン・ハマーの『フィンガー・ダンシング』は、演奏の全体的雰囲気は、やっぱりジャジーなのである。ジャズのノリが全体を支配する。増尾好秋のギターのブレイク、間の取り方はジャズそのもの。ヤン・ハマーも増尾のギターの雰囲気に呼応して、しっかりとジャジーな雰囲気を醸し出す。

逆に、ジェフ・ベック+ヤン・ハマーって、あくまで「ロック」。「ノリと間の取り方」より、「印象的なリフとフレーズ」を重視する。ジェフ・ベックの繰り出すリフ、フレーズは明らかにロックのそれ。ジャジーなノリにはほど遠い、スマートでシンプルなインプロビゼーション。

増尾好秋+ヤン・ハマーの『フィンガー・ダンシング』って、ライブ録音ながら、かなりの箇所で、オーバー・ダビングされているらしく、ライブ盤と呼ぶには、ちょっと語弊があるらしいが、スタジオ録音として評価してみても、そこはかとなく漂うジャジーな雰囲気とノリは素晴らしい。どの曲も結構メロディアスなリフ、フレーズを繰り出しており、ノリの良いジャズ・フュージョンのアルバムとして、このアルバムは「好盤」だと思います。

ノリの良いインスト、ノリの良いフュージョン。「息抜き+気分転換」に最適。そんなアルバムは、学生時代に聴き込んだフュージョン・アルバムの中に沢山ある。『フィンガー・ダンシング』もその一枚。そういえば、学生時代にこのアルバム、良く聴いたなあ。CD化されるとは思ってなかっただけに、CD化された時は嬉しかったなあ。
 
 
 
 
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2008年3月19日 (水曜日)

このギター・フュージョンは...

いやはや、月曜日は、仕事の方で、新しく出来た部の歓送迎会で「午前様」。昨日は、ココログのメンテナンスで更新不可。2日間ブログの更新が途絶えました。今日、再開です。

今朝から、コートを着るのを止めた。東京の春は、大阪と比べて、春分の日を過ぎても、雪が降ったりするので、注意が必要なんだけど、今年は大丈夫みたい。今朝、ちょっとヒンヤリする北風が気になったが、外を歩くのは家から駅までの道のりなので、体が冷え切ることは無い。コートって意外とめんどくさいので、今朝で終わり。

今週は、なんとなく「フュージョン週間」。フュージョンのアルバムを中心に聴きあさっている。昨日の朝と今朝、聴いてお気に入りなのが、増尾好秋の『Masuo ライブ』(写真左)。1980年リリースのフュージョンの名ライブ盤です。

増尾好秋とは、NYで活躍するギタリスト~プロデューサー。1946年生まれ。渡辺貞夫(sax)に認められ68年12月に同グループに参加して注目を集める。69年には初リーダー作を録音。71年に活動の拠点をニューヨークに移す。73年にはソニー・ロリンズ(sax)に認められ75年まで同バンドで活躍。現在も現役で活躍中。日本のジャズ・ギタリストの草分けです。
 

Masuo_live

 
この『masuo ライブ』は、1980年のリリースなので、フュージョンブーム後期のアルバムになります。が、その内容は、ギター・フュージョンというよりは「これってロックやん」って感じです。というか、完全に、これはギター・インスト・ロックです。フュージョンの域を超えている。

1曲目の「ディーリング・ウィズ・ライフ」から完全にぶっ飛びです。ドライヴ感溢れるハードな増尾好秋のギターもさることながら、T.M.スティーヴンスのチョッパー・ベースが凄い。もう「ごめんなさい、許して下さい」と懺悔してしまいそうな、攻撃的なドファンク・チョッパー。

そして、それに尖ったハードな増尾のギターが絡む。増尾好秋のギター。よく歌ってる、ノリがいい、そして尖ってる。もちろん、テクニックもずば抜けている。とにかく上手い。そして、ロビー・ゴンザレスのドラムがドドドドドッと切れ込む。うへ〜、これって、もうフュージョンの域を逸脱しており、これって完全に「ギター・インスト・ロック」。

全6曲と収録曲は少ないですが、内容は素晴らしく、充実しています。こんなライブアルバムが、1980年にリリースされていたんですよ。当然、僕の学生時代には、フュージョンのお気に入りライブアルバムの一枚でした。フュージョンの世界にも、こんな優秀なライブ・アルバムがあります。「ギター・インスト・ロック」の好きな方々には、絶対、お勧めです。

あ〜っ、この『masuo ライブ』を聴いてスカッとした。明日は休日。でも、明日の千葉県北西部地方の天気は朝から雨らしいので、ゴロゴロのんびり過ごすとするか〜。
 
 
 
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