2022年7月12日 (火曜日)

楽しいチック・トリビュート盤

2021年2月9日、チック・コリアは永眠した。79歳であった。それから、既に1年5ヶ月が経過しった。チックがあの世に旅立ったことが、今でも信じられず、まだ、元気にピアノを弾いている様な気がしてならない。今年2月9日の一周忌に合わせて、チック・コリア・トリビュート盤がリリースされているのを見ると、やっぱり、チックはあの世に旅立ったんやな、としみじみしてしまう。

Steve Gadd & Mika Stoltzman『Spirit of Chick Corea』(写真左)。今年6月のリリース。スティーヴ・ガッドのプロデュース。日本のマリンバ奏者、ミカ・ストルツマン(吉田ミカ)がチックゆかりのジャズマン達と制作した、チック・コリア・トリビュート盤である。参加ミュージシャンは、Richard Stoltzman (cl), Mika Stoltzman (mrmb), Eddie Gómez (b), Gayle Moran (vo) 等々、チックゆかりのジャズマン達。録音エンジニアは、チックが絶大なる信頼を寄せ、ともに音楽世界をつくってきたバーニー・カーシュ。

収録曲も実に良いチョイス。今や、チック作のネオ・スタンダード曲と言える「Spain」「Armando's Rhumba」「Crystal Silence」、それから、チックがミカの為に作曲した「Marika Groove」、ジョン・パティトゥッチが書き下ろした「Chick's Groove」など、チック作の有名曲、そして、チックゆかりの曲が収録されていて、チック者の僕達からすると、聴いていてとても楽しい。
 

Steve-gadd-mika-stoltzmanspirit-of-chick

 
実は、僕はマリンバ奏者、ミカ・ストルツマン(吉田ミカ)を全く知らなかった。Wikipediaを見ると、チック・コリアをはじめ、スティーヴ・ガッドやエディ・ゴメスと共演歴があるんですね。知りませんでした。

マリンバは木製鍵盤打楽器。ヴァイブが鉄製鍵盤打楽器。違いはあるが、マリンバの音、そして、チック・コリアとくれば、どうしても「ゲイリー・バートン」を想起してしまうので、この盤での木製ならではの「軽くて乾いた」マリンバの音と弾き回しの雰囲気については、ちょっと違和感が残る。やはり、チックの曲には「クリスタルで硬質な」ヴァイブの音と弾き回しの雰囲気が合う。

ただ、チックの曲は流麗なフレーズを持つ曲が多いので、マリンバの流れる様な弾き回しについては、イメージがピッタリ。チックの曲のフレーズの流麗さが引き立つこのアルバムは聴き心地については問題無い。ただ、バリバリ丁々発止とした、メインストリームでコンテンポラリーな即興演奏が展開される訳では無いので、そのところはちょっと物足りなさは残る。

チックの名曲の個性と流麗なフレーズを愛でるに、聴いて楽しい「チック・コリア・トリビュート」盤である。
 
 

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2022年2月15日 (火曜日)

ガッド・バンドの来日ライヴ盤

フュージョン・ジャズの話題を。フュージョン・ジャズにおける「ナンバーワン」ドラマーは、圧倒的に「Steve Gadd(スティーヴ・ガッド)」だと思うのだ。縦ノリのスインギーな8ビート・ドラミング。小気味の良い、印象的なオフビート。しなやかに伸びるリズム&ビート。

緩急自在、速いフレーズには手数の多い高速ドラミング、ゆったりとしたフレーズには間を活かしたシンプルなドラミング。縦ノリのスイング感は、一聴すれば、すぐに「Steve Gadd(スティーヴ・ガッド)」のドラミングだと判る。ガッドの叩く8ビートはスインギー。揺れるが如く、唄うが如くのドラミングはガッドが唯一無二。

Steve Gadd Band『At Blue Note Tokyo』(写真左)。2019年12月16〜18日、Blue Note Tokyoでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Steve Gadd (ds), Kevin Hays (key, vo), Jimmy Johnson (b), David Spinozza (g), Walt Fowler (tp, flh)。マイケル・ランドウ(Michael Landau)の代わりに、フュージョン・ギターのレジェンド、デヴィッド・スピノザを迎えたクインテット編成。他はガッド・バンドのレギュラー・メンバー。
 

Steve-gadd-band-at-blue-note-tokyo

 
実に渋いフュージョン・ジャズ。大向こうを張って疾走する訳でも無い。こってこてのファンクネスを振り撒いて、低音ベースを轟かせる訳でも無い。途方も無いテクニックを披露して熱くなる訳でも無い。余裕ある、ウォームで小粋でメリハリのあるフュージョン・ジャズが粛々と展開される。仰々しくなく真摯、聴けば聴くほど味わい深いフュージョン・ジャズ。

ギターのスピノザの参加が効いている。さすがに両者共に「フュージョン・ジャズの伝説」のミュージシャン。ガッドのドラミングをバックに弾きまくる、スピノザのグルーヴ感溢れるパフォーマンスは、フュージョン・ジャズ全盛期のアンサンブルを彷彿とさせる。そして、他のメンバーについては、レギュラー・メンバーであるが故、充実度もかなり高い。特に、ジミー・ジョンソンのベースのテクニックはなかなかに聴かせる。

しかし、やはりスティーヴ・ガッドのドラミングが一番、印象に残る。録音当時、ガッドは74歳。大向こうを張る、力強いドラミングはさすがに影を潜めたが、味のあるドラミングには更に磨きがかかって、包み込む様な余裕あるグルーヴ感は聴き応え満点。このライヴ盤の「余裕ある、ウォームで小粋でメリハリのあるフュージョン・ジャズ」は、このガッドのドラミングが創り出している。ガッドの往年のドラミングはまだまだ冴え渡っている。 
 
 
 
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