2022年1月 9日 (日曜日)

ジュニア・マンスを偲ぶ・3

ジャズ盤紹介本にあるアルバムの評論文と実際にアルバムを聴いた印象のギャップがあるジャズマンって、結構あるな、って思っている。ジュニア・マンス(Junior Mance)もそんなジャズマンの1人で、我が国では、マンスのピアノが如何にウケが悪かったかを物語っている様で興味深い。

Junior Mance『Live At the Top of the Gate』(写真)。1968年9月、NYの「The Village Gate」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), David Newman (fl, ts), Wilbur Little (b), Rudy Collins, Paul Gusman (ds)。アルバムのサブ・タイトルに「Guest Artist David Newman」とあるように、サックス奏者のデヴィッド・ニューマンをフロント1管に迎えたカルテット編成。

ライヴということもあって、冒頭の「Before This Time Another Year」から、こってこてファンキーなフレーズを弾きまくる。「総合力で勝負する」タイプのピアノで、独特の癖や奏法が無く、端正で明確なタッチで、ファンクネスだだ漏れのピアノを弾くのだ。聴いていて爽快感すら感じる、ドライブ感溢れるグルーヴィーなマンスのピアノ。

恐らく、これがマンスのピアノの「真実」なんだろう。バップでノリの良い、エンタテインメント性も併せ持った「総合力で勝負する」タイプのピアノは、聴いていてとても楽しい。
 

Live-at-the-top-of-the-gate

 
これぞ「モダンなジャズ・ピアノ」という演奏が詰まったライヴ盤であるが、今まで、我が国のジャズ盤紹介本では見たことが無い。そんな状態なので、マンスについて、我が国で人気が出るはずが無い。

しかし、実際に自分の耳で聴いてみて、このライヴ盤のこってこてファンキーなフレーズを弾きまくるマンスのパフォーマンスは強く印象に残る。ファンキー・ジャズの好盤として、ソウル・ジャズの好盤として、是非とも挙げたいライブ盤である。「The Village Gate」の聴衆もノリノリで聴いている。このライヴ感もなかなか良い雰囲気で、この臨場感も心地良い。

我が国では、マンスの代表盤と言えば、初リーダー盤の『Junior』ばかりが挙げられるのだが、この盤は、他のリーダー作と比べると、初リーダー作ということもあって「大人しすぎる」。マンスのピアノの個性はシッカリ感じられるが、「バップでノリの良い、エンタテインメント性も併せ持った」という面では、他のリーダー作の方が優れているだろう。

それほどまでに、ジャズ盤紹介本にあるアルバムの評論文と実際にアルバムを聴いた印象のギャップがあるマンスである。昔と違って、今では、サブスク・サイトを含め、マンスのリーダー作は結構耳にすることが出来る環境にある。今一度、マンスのリーダー作を実際に自分の耳で聴いて、マンスのピアノの真の個性を実感して欲しいなあ、と思うのだ。
 
 
 
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2022年1月 8日 (土曜日)

ジュニア・マンスを偲ぶ・2

ドイツの名門ジャズ・レーベル、エンヤ・レーベル(Enja Label)。エンヤのカタログを見渡すと、フリー・ジャズ、スピリチュアル・ジャズのアルバムが多くリリースされている。欧州はドイツ出身のジャズ・レーベルなので、とにかく、内容的に硬派でストイックなフリー&スピリチュアル・ジャズな演奏がほとんどなんだが、中には、内容の濃い「ネオ・ハードバップ」な盤をリリースしているから「隅に置けない」。

Junior Mance『At Town Hall Vol.1&2』(写真)。1995年、NYの「Flushing Town Hall」でのライヴ録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Houston Person (ts), Calvin Hill (b), Alvin Queen (ds)。ピアニストのジュニア・マンスがリーダー、フロントにテナー・サックス奏者のヒューストン・パーソンを迎えた、カルテット編成。

録音当時、既に大ベテラン・クラスのピアニスト、「総合力で勝負する」タイプを代表する1人のジュニア・マンスであるが、このライヴ盤でも、その個性を遺憾なく発揮している。ファンキーなノリとグルーヴィなフレーズ、端正で明確なタッチ。堅実かつリズミカルな左手。その弾きっぷりはダイナミックで、バリバリ弾き進めるバップなピアノである。
 

At-town-hall-junior-mance_20220108213701

 
そんなマンスのピアノが2枚のライヴ盤で、心ゆくまで楽しめる。リーダーのマンスが録音当時、67歳。ベースのカルヴィン・ヒルは50歳。ドラムのアルヴィン・クイーンは45歳。フロント・テナーのヒューストン・パーソンは、61歳。ベテランから中堅のメンバーでの演奏であるが、お互いにインタープレイを楽しんでいるような、溌剌としたパフォーマンスが見事である。

そして、Vol.1&2、ともに選曲が良い。マンスの「総合力で勝負する」タイプが、その個性を十分に発揮出来るスタンダード曲が効果的にチョイスされていて、マンス独特のスタンダード曲の解釈が良く判るし、アレンジの妙がしっかりと体感出来る。特にVol.2が楽しい。冒頭の「Blues in the Closet」、3曲目の「My Romance」そしてラストの「Mercy, Mercy, Mercy」、意外と癖のあるスタンダード曲だが、なかなかの解釈とアレンジで、小粋な演奏に仕上がっている。

なかなか決定盤に恵まれないマンスであるが、Enjaレーベル、良いライヴ盤を残してくれた、と思っている。ライヴ演奏をそのままアルバム化している様で、冗長なところやラフなところもあるにはある。が、逆にそれが臨場感に感じられて、僕にとってはなかなかのライヴ盤として、マンスを聴きたい時、時々引きずり出しては、繰り返し聴いている。歴史を変えるような名盤では無いが、味のある、小粋な内容の好盤として、長年、愛聴している。
 
 
 
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2022年1月 7日 (金曜日)

ジュニア・マンスを偲ぶ・1

昨年も多くのジャズマンが鬼籍に入っている。今、流行のコロナ禍に倒れたジャズマンもいれば、通常のよくある病気で、天寿を全うしたジャズマンもいる。ハードバップが現れ出でて約70年。当時、メインで活躍したジャズマンは殆ど鬼籍に入ってしまった。1960年代に活躍したジャズマンも、毎年、どんどん鬼籍に入っていく。

特に、自分がジャズを聴き始めた頃、リアルタイムでその活躍を耳にしてきたジャズマンが鬼籍に入るのを見るのはとても辛い。2021年1月17日に逝去した、ジュニア・マンス(Junior Mance)もそんなジャズマンの1人。実際にマンスが来日した時に、生で彼のピアノを聴いたほど、リアルタイムで聴いてきた、親しみのあるジャズ・ピアニストであった。

Junior Mance『Nadja』(写真左)。1998年5月14日、NYでの録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Earl May (b), Jackie Williams (ds)。ジュニア・マンス、録音当時、69歳のピアノ・トリオ演奏。冒頭のタイトル曲である快活なブルース曲からラスト曲までマンスのピアノの魅力満載の好盤である。
 

Nadja_junior_mance

 
マンスのピアノは、ファンキーなノリとグルーヴィなフレーズが持ち味の「総合力で勝負する」タイプのピアノである。独特の癖や奏法がある訳では無い。端正で明確なタッチ。堅実かつリズミカルな左手。とても整った弾きっぷりで、ダイナミズムもほど良く備わっていて、独特のノリの良いフレーズが、なかなかに格好良い。聴いていて爽快な気分になる。

そんなマンスが、バリバリに弾きまくっているのが、このトリオ盤。マンスと同じく大ベテランのベーシストのアール・メイ。そして。これまた、大ベテランのドラマー、ジャキー・ウィリアムス。この2人の大ベテラン・リズム隊との相性が抜群で、ドライヴ感とグルーブ感を振り撒いて、グイグイ、バリバリ、マンスが魅力的なバップ・ピアノを弾き進めていく。

この盤はマンスのピアノを聴くだけの好盤。ベースとドラムのリズム隊はサポートに徹している。しかし、それが単調にならず、様々なニュアンスとイメージを繰り出して、とても聴き応えのあるピアノ・トリオ演奏に仕上がっている。平均年齢60歳代後半のピアノ・トリオであるが、ネオ・ハードバップな新しい響きを採用しているところには痛く感心した次第。良いトリオ盤です。
 
 
 
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