2022年1月22日 (土曜日)

「高中」流のフュージョンの傑作

高中正義は日本のギタリストのレジェンド。日本の既成の音楽ジャンルに収まらないボーダーレスでクロスオーバーのギターが個性。加えて、ハイ・テクニック。音の志向の個性として特徴的なのは、マンボやサンバなど、ラテン・ミュージックに造詣が深いこと。そんな高中正義のアルバムが、ほぼ全部、サブスク解禁になったようで、めでたいことである。

高中正義『Saudade(サダージ)』(写真左)。1982年9月10日にリリースされた、高中の9枚目のオリジナルアルバムである。キャッチコピーは「身体(からだ)が揺れて心も揺れて…」。何ともこそばゆい、バブルの入口の時代の成せるキャッチコピーである。ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), Joaquin Lievano (g), Narada Michael Walden (ds), T.M. Stevens (b), Frank Martin (key), Sheila Escovedo (perc)。プロデューサーにドラムも担当している、ナラダ・マイケル・ウォルデンを起用している。

時代はフュージョン・ジャズの流行後期。この盤の音世界はフュージョン・ジャズ、時々、スムース・ジャズな雰囲気で、エコーがタップリ効いている分には、スムース・ジャズ的な傾向が強い。しかし、ビートがしっかり立った楽曲については、スピード感も豊か、演奏テクニックも「バカテク」で、この辺は、当時、流行真っ只中のフュージョン・ジャズど真ん中。
 

Saudade_masayoshi_takanaka

 
冒頭の「A Fair Wind」は、エコーがたっぷり効いた、爽快でキャッチャーなフレーズが心地良い「スムース・ジャズ」志向の演奏。メンバーそれぞれの演奏のテクニックも素晴らしく、とても端正で整った演奏には、思わず聴き入ってしまう。いつもの高中盤と雰囲気がちょっと違うのは、プロデュースを他人に任せて、高中自身は「1人のフュージョン・ギタリストに徹している」ところだろう。高中はギター小僧よろしく、喜々としてエレギをアコギを弾きまくっている。

スチール・パンやパーカッションが活躍して、雰囲気は「カリビアン」なのに、出てくる旋律はマイナー調で、和風な哀愁感がそこはかとなく漂うタイトル曲「Saudade」は、いかにも和風なフュージョン・ジャズ」といったもので、これぞ高中の音世界らしい演奏。その他、ディスコ・チューンあり、ジャム・ナンバーな曲あり、ラストの「Manifestation」では、高中がロックなエレギをギンギンに弾きまくっている。

この盤、「高中正義」流のフュージョン・ジャズの傑作盤だろう。音の要素はジャズあり、ロックあり、ディスコあり、カリビアンあり、ラテン調あり、シャッフルあり、高中が得意とする音楽ジャンルをごった煮して、ギターを弾きまくった傑作。米国西海岸フュージョンの強烈なリズム隊に乗って、高中のギターが唄いまくっている。
 
 
 
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2021年8月19日 (木曜日)

コッテコテにスムースなジャズ盤

1970年代後半から1980年代前半にかけて大流行したフュージョン・ジャズ。フュージョン・ジャズの音の大きな特徴である「ソフト&メロウで心地良い響き」をメインに、電気楽器中心のコンテンポラリーなジャズに仕立て上げたのが「スムース・ジャズ」。聴き心地の良いキャッチャーなフレーズとバカテクな演奏力が「命」の「スムース・ジャズ」である。

Dave Koz & Cory Wong『The Golden Hour』(写真左)。2021年6月のリリース。この新盤のキャッチ・コピーが「LA コンテンポラリー・ジャズ界の重鎮サックス奏者=デイヴ・コーズと、注目を集めるギタリストのコリー・ウォンがコラボ」。久々のコッテコテ「スムース・ジャズ」な盤である。

コリー・ウォンがプロデュースを担当していて、バックバンドもコリー・ウォンのバンドをメインにしているので、イメージ的には、コリー・ウォンのバンドにディヴ・コーズが客演したイメージかと思う。プリンスのチーフ・ホーン・アレンジャーであるマイケル・ネルソンによるホーン・アレンジを担当していて、コーズのサックスをしっかりとフューチャーしている。
 

The-golden-hour-1

 
全編に渡って、ロック・ビートに乗りつつ、ジャジーな雰囲気を醸し出すパフォーマンスが実に「スムース・ジャズ」らしい。このジャジーな雰囲気が「ソフト&メロウで心地良い響き」を演出していて、ロック・ビートで演奏全体の躍動感を醸し出している。出てくるフレーズもキャッチャーで心地良く、とても良く出来たコンテンポラリー・ジャズだな、という印象を持つ。

スムース・ジャズだからといって、ただ単純に「聴き心地の良さ」だけを追求しているのでは無いのが、この盤のニクいところ。アドリブ・フレーズは良く練られており、アレンジもとても良く考えられているなあ、という印象。演奏を聴いていて、印象に残るフレーズ、テクニック、アレンジが散りばめられていて、全編、飽きることが無い。

我が国では「キワモノ」扱いされている「スムース・ジャズ」であるが、どうして、フュージョン・ジャズの発展形として、十分に鑑賞に耐える「演奏のトレンドのひとつ」として、これはこれで「コンテンポラリーなジャズの一形態」であると思う。避けて通るには惜しい、充実した内容であると僕は思う。ジャケットはシンプル過ぎて、ちょっと「オヨヨ」ではあるけれど...(笑)。
 
 
 
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