2022年7月30日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・17

この盤が「フリー・ジャズ」の原点だ、とするのには違和感がある。この盤を聴けば「フリー・ジャズがなんたるかが判る」なんてことは無い。そんなにジャズは単純なものでは無いし、甘いものでも無い。

作った本人からすれば、一応「ハーモロディクス理論」というものに則った結果だというし、演奏を聴けば、必要最低限の「重要な何らかの決めごと」が演奏の底にあるのが判る。それでなければ、旋律を持った「音楽的な演奏」が成立していない。しかし、作った本人が、この「ハーモロディクス理論」について、精神的な言葉は残っているが、具体的な記述を残していない。これは、決定的に困惑する。

Ornette Coleman『The Shape Of Jazz To Come』(写真左)。1959年5月22日の録音。邦題は『ジャズ来るべきもの』。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as), Don Cherry (cor), Charlie Haden (b), Billy Higgins (ds)。仰々しい邦題。この盤以降は、皆、この盤に録音されているジャズをやるんだ、なんて誤解を生むような邦題である(笑)。

この盤を聴けば、少なくとも、それまでのジャズ、いわゆる、スイングやビ・バップ、ハードバップな演奏とは全く異なる雰囲気であることは判る。といって、コールマンに対して批判的な方々が言う「でたらめ」な演奏では無い。コード進行とリズム&ビートに乗った演奏であるところは、スイングやビ・バップ、ハードバップな演奏と変わらない。

しかし、この盤では、それまでの伝統的なジャズが、やらないこと、やったことがないこと、やってはいけないこと、を全部やっている、それまでの伝統的なジャズに対する「アンチテーゼ」の様な演奏がギッシリ詰まっている様に聴こえる。
 

Ornette-colemanthe-shape-of-jazz-to-come

 
当然、斬新に聴こえるし、革新的にも聴こえる。しかし、この盤はジャズの「イノベーション」では無い。従来のジャズに対する「アンチテーゼ」をベースに演奏した、当時のコンテンポラリーなジャズだと思う。

選ばれたコードは、いままでの伝統的なジャズが採用しないコードがてんこ盛りだし、リズムはスインギーな4ビートでは無い。無調志向の演奏もあるし、コードに基づかないユニゾン&ハーモニーの採用もある。それまでの伝統的なジャズが、やらないこと、やったことがないこと、やってはいけないこと、をやって、新しいジャズの音、響きを表現している様に感じる。

文字で書けば簡単に感じるが、それまでの伝統的なジャズが、やらないこと、やったことがないこと、やってはいけないこと、をやるのって、ジャズマンとして、卓越した「自由度の高い」演奏テクニックと「それまでのジャズ」に対する卓越した知識が必要で、パーソネルを見渡すと、そういう意味で納得できるメンバーが厳選されている。

確かにこの盤に記録されている演奏は「ユニーク」。発想の転換であり、正論の裏を取った様な、一種「パロディー」の様な演奏である。これって、演奏自由度を最大限に発揮出来る「即興演奏」がメインのジャズだからこそ出来る、もしくは許される「技」である。

それまでの「伝統的」なジャズに無い、新しい響きを宿したジャズなので、ジャズのイノベーションに感じるのかもしれないが、今の耳で聴くと、それまでの伝統的なジャズに対する「アンチテーゼ」であり、ましてや、フリー・ジャズの原点では無いだろう。

それでも、それまでの伝統的なジャズが、やらないこと、やったことがないこと、やってはいけないこと、をやるのは、録音当時、発想の転換であり、新しい響きのジャズを創造するという切り口では「アリ」だと思う。発想として面白いし、同業者のジャズマンとして、チャレンジのし甲斐のあるテーマだと僕は感じる。
 
 

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2022年7月28日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・16

モード・ジャズあるいはモーダル・ジャズ(modal Jazz)は、コード進行よりもモード(旋法)を用いて演奏されるジャズ。モダン・ジャズのサブ・ジャンルのひとつ。旋法とは、旋律の背後に働く音の力学。 旋法は主音あるいは中心音、終止音、音域などの規定を含む(Wikipedia より抜粋)。

モード奏法は、それまでのジャズ、いわゆる、ビ・バップ〜ハードバップにおける「コード進行によって限定される、アドリブ・パターンの画一化とマンネリ化」のブレイクスルーに貢献。コード奏法に比べて、アドリブ展開が穏やかになる懸念はあるが、アドリブ展開の柔軟度、自由度が飛躍的に高まった。

以上が、モード・ジャズの文章での説明であるが、やっぱり判り難い。クラシックの楽理なんかを、ある程度、基礎として理解していないと基本的に判らない。ジャズに楽理なんか必要ないよ、という声も聞こえるが、ジャズの演奏を深く理解する上では、楽理の助けは必須になる。その楽理を前提とした最初のジャズの奏法が「モード・ジャズ」だったと思う。

Miles Davis『Kind of Blue』(写真)。1959年3月、4月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Cannonball Adderley (as), John Coltrane (ts), Wynton Kelly (p), Bill Evans (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds) 。このマイルス盤は、モード・ジャズの金字塔、いや、ジャズの金字塔の一枚とされる。トータル・セールスは実に1,000万枚を超えている、ジャズ界のモンスター・アルバムである。

いわゆる「モード・ジャズを採用した優れた成功例」であるというところが評価されているのだが、聴く側にとっては、モード・ジャズの採用、といった部分が、この盤の演奏のどの部分に当たるのかが判り難い。しかし、演奏全体の雰囲気が、それまでのビ・バップ〜ハードバップの演奏の雰囲気とは明かに違う、といったことは判るかと思う。

コード進行による劇的な進行変化、そして、アドリブ展開の決めフレーズ、といった、コード進行によるジャズの特徴、つまり、メジャー・コードからマイナー・コードに変わると、演奏される旋律の雰囲気はダイナミックに変化するし、定番のコード進行に乗って、定番のアドリブ・パターンが展開される。モード・ジャズにはこれらが無い。
 

Miles-daviskind-of-blue_1

 
モード・ジャズは、主音を基にした、自由度の高いアドリブ展開なので、コード奏法の様な音の「色の劇的な変化」が希薄。絵画で例えると、モノトーンの濃淡の様な、グラデュエーションの様な音の変化がモード・ジャズの特徴。モード奏法でのアドリブ展開は、このモノトーンの濃淡をベースとした展開になるので、例えば、墨絵の様な淡い濃淡の様な「音の拡がり」になる。

この辺りが、この『Kind of Blue』と、それまでのビ・バップ〜ハードバップの演奏の雰囲気と明らかに異なる理由になる。そんなモード・ジャズが、アルバム一枚分、ほぼ成功例で埋め尽くされた優れた内容の一枚が、この『Kind of Blue』。

ただ、聴いていて面白いのは、演奏メンバー全員がこのモード・ジャズを完璧に理解していたか、という点である。リーダーのマイルスとモード・ジャズ創成のパートナー、ビル・エヴァンスは十分理解していたことがこの盤の演奏を聴いていて良く判る。コルトレーンは、この盤の録音時点では、直感的に何となく理解していたのでは、と感じる。他のメンバーは、モード・ジャズを十分理解していたかどうかは疑わしい。ただ、モード・ジャズの「基本中の基本」はしっかり抑えた演奏になっているのはさすがだ。

それだけ、録音当時、モード・ジャズは、ジャズ界にとって「強烈なイノベーション」だったと思う。いわゆる、テクニックとスピリッツ、気合いで通用したそれまでのジャズが、楽理というアカデミックな要素を身につけないと理解出来ない奏法が出現したのだ。以降、ジャズマンにとって、モードに対応出来るか否かは重要な課題となっていく。

しかし、そんな「イノベーション」によって、ジャズは大衆音楽の1ジャンルから、アーティスティックな音楽ジャンルへステップ・アップした訳で、このモード・ジャズの成立は、ジャズの進化、ジャズの深化にとって、必要不可欠だった。

『Kind of Blue』は、そんな「事実」を十分に感じさせてくれる、モード・ジャズの金字塔、ジャズの金字塔の一枚である。
 
 

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2022年7月26日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・15

バド・パウエルは、モダン・ジャズ・ピアノの祖であり、ピアノ・トリオ・スタイルを確立させた、つまり「ピアノ+ベース+ドラム」の現代のピアノ・トリオ編成を定着させたピアニスト。ジャズ・ピアノを知る上では避けては通れないピアニストであり、パウエルのピアノを理解しておかないと、他のピアニストの個性や特徴が判らなくなる。

といって、パウエルのどのアルバムを聴けば良いのか、迷うところではある。ルーストの『バド・パウエルの芸術』が一番だが、これは内容が非常に尖っていて、ジャズ者初心者にとっては荷が重い。ブルーノートの『The Amazing Bud Powell Vol.1』だって、冒頭の「Un Poco Loco」の3連発には「ひく」。パウエルのピアノが嫌いになっては元も子もないので、まずはパウエルのピアノに親しむことが出来るアルバムを選ぶことになる。

Bud Powell『The Scene Changes : The Amazing Bud Powell Vol.5』(写真左)。1958年12月29日の録音。ブルーノートの4009番。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。パウエルの米国での正式リーダー作の最終盤である。編成は「ピアノ+ベース+ドラム」のピアノ・トリオ編成。
 

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冒頭の「Cleopatra's Dream(クレオパトラの夢)」が、我が国では異常に人気があって、僕がジャズを聴き始めた頃は、この曲をジャズ喫茶でリクエストするのは「ジャズのトーシロ(素人)」とされた(笑)。それほど、人気があって、判り易い内容なのだが、パウエルのピアノの弾きっぷりはかなり個性的であることが判る。全盛期はまだまだこんなものではないが、パウエルのピアノの先鋭的なところがしっかり捉えられている。

2曲目以降の演奏についても、パウエルはトリオ演奏であっても、ベース、ドラムに関しては「我関せず」。1人ピアノをバリバリ弾いて突っ走るタイプなのだが、この盤ではしっかりとベース、ドラムの音を聴きながら、バップなピアノを弾き進めている様子が良く判る。いわゆる「パウエルだけが尖った」ところがこの盤には無い。パウエルのピアノがとても聴き易いのはそのせいだろう。

この盤は、バド・パウエル入門盤として最適、というか、この盤しかない、と思う。確かにこの盤は、バド・パウエルの全盛期を捉えた演奏では無い。しかし、当時として革新的なジャズピアノとしての、右手・左手の使い方が実に良く判る、パウエルの個性を理解するのに十分な内容を維持している。ゴスペルチックな「Borderick」、カリプソチックな「Comin' Up」など、当時のパウエルが「過去の人」になっていないことが良く判る。
 
 

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2022年7月19日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・14

Art Blakey & The Jazz Messengers(アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ)は、僕の大好きなバンドの一つ。ドラマーのアート・ブレイキーが主宰するバンドで、1955年に旗揚げ、1990年にリーダーのブレイキーが亡くなるまでの、35年間の長きに渡って、第一線で活躍した。ジャズ・メッセンジャーズは、有望新人の登竜門的なバンドで、35年の活動期間の間に、相当数の一流ジャズマンを輩出している。

そんなジャズ・メッセンジャーズも旗揚げから、3年ほどは鳴かず飛ばず。しかし、Lee Morgan (tp), Benny Golson (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Merrit (b) の優秀なメンバーに恵まれ、ブルーノートの4003番『Moanin'』(1958年10月30日の録音)で復活の狼煙を上げる。この時のバンド・メンバーは、メッセンジャーズ史上、最強の部類に入る。

『Art Blakey et les Jazz-Messengers au club St. Germain, Vols. 1-3』(写真)。1958年12月21日、仏パリの「サンジェルマン」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Art Blaakey (ds), Lee Morgan (tp), Benny Golson (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Merrit (b)。メッセンジャーズ史上、最強のラインナップ。復活の狼煙、伝説の名盤『Moanin'』の録音の約2ヶ月後のパフォーマンス。この「僕なりのジャズ超名盤研究」の書き下ろしの為に、久し振りに聴き直してみた。
 

At-club-st-germain

 
邦題『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』。LP時代に3枚のアルバムに分けて発売され、CDリイシュー時もその構成は踏襲されたが、出来れば、3枚一気に聴き通して欲しい。ここでのメッセンジャーズの演奏は最高に近い。ライヴ録音でありながら、エネルギッシュで迫力満点の演奏でありながら、ミスもほどんど無い。伝説の名盤『Moanin'』の名演の数々が霞むくらいだ。

メンバーそれぞれが、力量確かな一流ジャズマンなので、それぞれの演奏のバランスが抜群。それぞれのソロ演奏については、結構、時間をかけているのだが、内容が良いので「長い」と感じ無い。そして、メンバーそれぞれが、お互いのソロ演奏をよく聴き、よく理解していて、ソロをバトンタッチしていく際、繋がりがとても良く、独りよがりな展開にならない。3枚のライヴ盤、全12曲、捨て曲無し。どの演奏も「ファンキー・ジャズ」の代表的名演である。

ファンキー・ジャズ、ここに極まれリ、って感じの演奏の数々に思わず、じっくり聴き込んでしまいます。欧州でのモダン・ジャズの人気については、このライヴ盤の客席の掛け声など、熱い雰囲気が伝わってきて、熱狂的なものがあったことが判ります。ヘイゼル・スコット(Hazel Scott)が、ティモンズのソロの途中に感極まって「おお、神よ、憐れみを!(Oh Lord have mercy !)」と叫んだところなど、バッチリと録音されていて、その熱狂度合いを肌で感じることが出来ます。
 
 

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2022年2月 6日 (日曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・13

ジャズ名盤には、ジャズの歴史を彩る「エピソード」が必ず付いて回る。そのエピソードを知ることによって、よりジャズの歴史を理解することになる。この盤、マイルスの、ブルーノート・レーベルの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの恩義に報いる「サイドマン」参加盤である。

Cannonball Adderley『Somethin' Else』(写真左)。1958年3月9日の録音。ブルーノート・レーベルの1595番。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Miles Davis (tp), Hank Jones (p), Sam Jones (b), Art Blakey (ds)。キャノンボールのアルト・サックスと、マイルス・デイヴィスのトランペットがフロント2管のクインテット編成。マイルスがサイドマンとして入っている珍しい盤。

1950年辺り、マイルスは「ジャンキー」であった。マイルスは麻薬中毒の為、レコーディングもままならない状態に陥っていた。しかし、彼の才能を高く評価していたブルーノートの総帥アルフレット・ライオンは彼をサポート。1952年より、1年ごとにマイルスのリーダー作を録音することを約束。1952年〜1954年の録音から、2枚のリーダー作をリリースしている。

しかし、1955年、麻薬中毒から立ち直ったマイルスはコロムビア・レコードと契約をした。この契約により、ブルーノートへの録音は途切れることになる。が、マイルスは「ライオンの恩義」を忘れていない。自らがオファーして、このキャノンボールのリーダー作にサイドマンとして参加したのである。当然、ライオンは狂喜乱舞。当時の録音テープには、マイルスの名前を記していたという。
 
このキャノンボール盤の録音メンバーもマイルスが人選したらしい。ピアノに流麗なバップ・ピアノの名手、ハンク・ジョーンズ。ベースに堅実骨太のサム・ジョーンズ。ドラムに名手アート・ブレイキー。このリズム・セクションの人選が渋い。明らかに、マイルスが「ライオンの音の好み」を勘案して選んだメンバーだろう。マイルス自身がリーダーだったら、当時のマイルスの先進的な音からすると、こんな人選は絶対にしない。
 

Somethin-else

 
演奏内容は、当時のバリバリ「ハードバップ」な演奏。マイルスは既に「モード・ジャズ」に手を染めていたが、このブルーノートでの録音では、従来のハードバップな演奏に立ち戻っている。前進あるのみのマイルスが「一時後退」しているが、この後退はライオンの為の後退。ライオンにハードバップの究極な演奏をプレゼントしたい、そんなマイルスの気持ちの表れだろう。

この盤は、ハード・バップというジャズ・フォーマットの最高到達地点のひとつ。アーティスティックで高尚な響きが充満し、参加メンバー各人の最高のパフォーマンスを聴くことが出来る。ハンクの旨さ、ジョーンズの堅実さ、ブレイキーの天才的ドラミング、そして、そして、キャノンボールの情感タップリで、そこはかとなくファンキーな香りがかぐわしい、絶妙なアルト・サックス。

マイルスのトランペットは別格。マイルスの生涯に渡っての、最高の部類のパフォーマンスを聴くことが出来る。ミュートもオープンもベストに近いプレイ。しかし、気合いの入ったマイルスは凄い。ちなみにマイルスがブルーノートに残したパフォーマンスはどれもが素晴らしいものばかりである。

ジャズのスタンダード中のスタンダードとされる「枯葉」の決定的名演。曲想は既にハード・バップの先を行く、先進的な響きが素晴らしい、マイルス作の「サムシン・エルス」。芸術的で高尚な響きのスタンダードの定番曲「ラブ・フォー・セール」。情感タップリで、そこはかとなくファンキーな香りが芳しい「ダンシング・イン・ザ・ダーク」。収録曲のいずれもが、ハードバップの最高峰レベルの演奏で占められる。

この盤は、マイルスが、麻薬中毒の苦しい時代にマイルスを見捨てず、マイルスの才能と人格を信じてくれた、ライオンの恩義に報いた結果。そんな背景をしっかりと踏まえて、キャノンボール以下、録音メンバーが最高のパフォーマンスを聴かせてくれる。名盤中の名盤とはこういう盤のことを言うのだろう。
 
 
 
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2022年1月 6日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・12

ジャケットを見るだけで、これは名盤だな、と感じるアルバムがある。アルバムの1曲目を聴くだけで、これは名盤だな、と感じるアルバムがある。パーソネルを確認するだけで、これはきっと名演だろうな、と想像出来るアルバムがある。そんなアルバムは「ブルーノート・レーベル」に沢山ある。

Sonny Clark『Cool Struttin'』(写真左)。1958年1月5日の録音。ブルーノートの1588番。ちなみにパーソネルは、Sonny Clark (p), Jackie McLean (as), Art Farmer (tp), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。リーダーは、早逝の哀愁ファンキー・ピアノ、ソニー・クラークがリーダー。マクリーンのアルト・サックス、アート・ファーマーのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

最初に、この盤は「モダン・ジャズ」を強烈に感じることの出来る名盤である。特にハードバップの良いところが「てんこ盛り」。フロント2管のユニゾン&ハーモニーの重ね方&響き、ソニクラのピアノに、ポルチェンのベース、フィリージョーのドラムが叩き出す、切れ味良い、躍動感溢れる、クールなファンキー・ビート。ソニクラの書く名曲のキャッチャーなマイナー調のメロディー。
 

Cool-sreuttin_1

 
このアルバムに収録されている全ての演奏が「モダン・ジャズ」と言い切って良いかと思う。とにかく、リーダーのソニクラの書く曲が絶品。マイナー基調でファンキーで流麗。印象的なメロディーとキャッチャーなフレーズ。そのソニクラの書く秀曲の間で演奏されるスタンダード曲の選曲も実に良い。アルバム全体を包む「マイナーでファンキーで小粋なハードバップ」な雰囲気が実に芳しい。

演奏上の工夫も、どれもが「モダン・ジャズ」らしい。ユニゾン&ハーモニーとチェイスの合わせ技、切れ味の良いベースとドラムの効果的ソロ、ピアノ伴奏の印象的なコンピング、どれもがハードバップで培われた演奏上のテクニックなんだが、これらが実に良いタイミングで、要所要所に散りばめられていて、聴いていてとても楽しい。聴いていて「ジャズってええなあ」って思う。

最後にジャケットも本当に「秀逸」。この『Cool Struttin'』のジャケについては、語り尽くされた感があるが、とにかく「ジャズ」している。白黒基調の。妙齢の女性のスラッとした足だけのジャケ写、そして、絶妙なバランスで配置されるタイポグラフィー。この盤に詰まっている音が、このジャケットを通して聴こえてくる様だ。大名盤である。
 
 
 
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2021年11月28日 (日曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・11

ジャズ・ピアニストの中で、一番ユニークな存在が「セロニアス・モンク(Thelonious Monk)」。ジャズ・ピアノを聴き始めて、ジャズ・ピアノ盤の紹介本を見ながら、名盤を聴き進めて行って、まず、ぶち当たる壁が「セロニアス・モンク」である。クラシックやポップスのピアノをイメージして、モンクのピアノを聴くと、まず訳が判らなくなる。

通常のクラシック・ピアノなどのフレーズの流れが「常識」だとすると、モンクのピアノは「非常識」。和音の作り、旋律の流れ、間の取り方、アクセントの取り方、どれもが唯一無二。協調和音中心という次元から、かなり離れたもので、リズム的にも自然発生的な変則拍子が中心という、おおよそポップス中心の音楽とは正反対の、クラシック音楽とは対極にあるモンクのピアノである。

Thelonious Monk『Thelonious Himself』(写真左)。1957年4月の録音。セロニアス・モンクのソロ・ピアノである。モンクのキャリアの絶頂期でのソロ・ピアノなので、モンクのピアノの真の個性が良く判る。違和感をバリバリに感じる不協和音。決してメロディアスとは言えない、ゴツゴツしたフレーズ。独特のスクエアな、幾何学的なスイング感。外れているようで、しっかりと独特なフレーズが流れている。おおよそ、普通の人達にとっては、今までに聴いたことが無いピアノ。
 

Thelonious-himself_1

 
しかし、僕が思うに、これが「ジャズ」であり、これが「ジャズ・ピアノ」の最右翼なのだ。即興演奏を旨とするジャズ、新しい音を創造するジャズ、そういうジャズが、本来の「ジャズ」とするなら、このモンクのピアノは明らかに「ジャズ」の極みに位置するものだ、と僕は思う。ジャズをとことん好きになるかどうかは、このモンクのピアノを受け入れられるかどうかにある位に思っている。

Original CD reissue (1987) のバージョンがお勧めなのだが、このバージョンのラストに入っている「'Round Midnight (In Progress)」を聴いて欲しい。22分に及ぶ長いトラックの中で、モンクはあれこれ考えながら、何度も慎重に音を選び直しながら、ブツブツと「あーでもないこーでもない」とつぶやきながら、演奏を組み立てていく。和音の作り、旋律の流れ、間の取り方、アクセントの取り方が、即興演奏を前提として、考え抜かれたもの、選び抜かれたものだということが良く判る。

この究極の即興演奏の様なモンクの音世界は、填まればとことん癖になります。僕がジャズを本格的にジャズを聴き初めて、これはジャズやなあ、と初めて心底感心したのが、このモンクのピアノであり、このモンクのソロ盤『Thelonious Himself』でした。ジャズを聴く、って理屈では無くて、パッと聴いてパッと感じるものだと思いました。その感覚は「ジャズを聴く時の心構え」として、僕の中にあります。いわゆる「モンクのピアノの教え」ですね。
 
 
 
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2021年11月18日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・10

ジャズ名盤とは何か。僕が思うに、その盤を聴くことで、ジャズの歴史を感じることが出来、ジャズの個性を感じることが出来る。そして、そのリーダーの個性が手に取るように理解出来、サイドマンの演奏が優秀。加えて、ジャケット・デザインが秀逸であること。いわゆる「ジャズが音楽の総合芸術であること」を実感できる盤が「ジャズ名盤」だと思うのだ。

Sonny Rollins『Saxophone Colossus』(写真左)。1956年6月22日、Prestigeレーベルからのリリースだが、この盤はブルーノートと同じ「Van Gelder Studio」での録音になる。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), Tommy Flanagan (p), Doug Watkins (b), Max Roach (ds)。リーダーのソニー・ロリンズのテナー・サックス1管がフロントの「ワン・ホーン・カルテット」編成である。

まず、ジャケットを見て欲しい。青のモノトーンをバックに、テナー・サックスを吹くソニー・ロリンズの上半身のシルエット。そして、ジャケットの下に小粋なタイポグラフィー。ジャズのジャケットやなあ〜、と感心するし、盤の中の音が漏れ聴こえて来る様な秀逸なデザイン。良く見れば、凄くシンプルな、1つ間違えば陳腐に落ちるデザインなんですけどね〜。特にLPサイズは「映える」。やはり、名盤には優秀なジャケットが良く似合う。
 

Saxophone-colossus

 
内容的には申し分無い、非の打ち所の無いハードバップな演奏が詰まっている。出だしが、マックス・ローチのドラムソロ。大先輩にトップバッターをお願いするリーダー・ロリンズの謙譲心。それはともかく、全編に渡って、リーダー・ロリンズのテナーの、イマージネーション溢れるパフォーマンスが群を抜いている。ダンディズム溢れる大らかで創造的なアドリブは聴き応え満点。

サイドマンでは、フラナガンのピアノが素晴らしい。もともとはバップなピアノをバリバリ弾くタイプのピアニストなんだが、ロリンズのテナーの個性を十分に理解して、歌伴の如く、小粋で味のあるバッキングに徹しているところニクい。全編に渡って、ロリンズの「歌伴」に徹したフラナガンのピアノが聴き終えた後、ロリンズのテナーの次に印象にしっかり残っている。

そして、ラストの「Blue 7」に、ジャズのアーティスティックな面を垣間見る。ブルーな雰囲気を持つ、モダンでクールなブルース。ファンクネスは抑制され、観念的、かつ哲学的な響きが不思議な感覚。結構複雑な展開の楽曲だが、それぞれの楽器の即興演奏は見事。即興演奏であるが故、演奏上の小さなハプニングが記録されているが、それまでもがこの演奏の良いスパイスに響くから面白い。このラストの1曲が実にジャズらしいのだ。|
 
 
 
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2021年11月 2日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・9

マイルス・デイヴィスは僕のジャズの「最大のアイドル」である。マイルスの足跡、イコール、ビ・バップ以降のジャズの歴史でもある。ジャズの演奏スタイルについては、揺るぎない「信念」があった。フリー、スピリチュアル、フュージョンには絶対に手を出さない。マイルスはアコースティックであれ、エレクトリックであれ、いつの時代も、メインストリームな純ジャズだけを追求していた。

Miles Davis Quintet『The Legendary Prestige Quintet Sessions』(写真左)。1955年11月16日(The New Miles Davis Quintet)と1956年5月11日、10月26日(マラソン・セッション)の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane(ts), Red Garland (p), Paul Chambers(b), Philly Joe Jones(ds) 。

マイルス・デイヴィス・クインテットのマラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』と、デビュー盤『The New Miles Davis Quintet』のプレスティッジ・レーベルに残したスタジオ録音の音源を録音順に並べたもの(と思われる)と、NYのBasin Streetでのライヴ音源(1955年10月18日)と フィラデルフィアのライヴ音源(1956年12月8日)を収録。

マラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』の音源が録音順に並んでいる(と思われる)のが、この企画ボックス盤の良いところ。マラソン・セッションの録音の流れとスタジオの雰囲気が追体験出来るようだ。4部作は、プレスティッジお得意の仕業、アルバム毎の収録曲については、曲と演奏の雰囲気だけで、てんでバラバラにLPに詰め込んでいる。アルバムとしては良いのだろうが、録音時期がバラバラなのはちょっと違和感が残る。
 

The-legendary-prestige-quintet-sessions_

 
さて、このマラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』の音源は、CBSからリリースされた『'Round About Midnight』と併せて、「マイルスの考えるハードバップ」の完成形である。全てが一発録り、アレンジは既に用意されていたようで、それまでに、ライブ・セッションで演奏し尽くしていた曲ばかりなのだろう。

今の耳で聴いても、相当にレベルの高い演奏である。即興演奏を旨とするジャズとしては、この一発録りが最良。マイルスはそれを十分に理解して、このマラソン・セッションを敢行したと思われる。細かいことは割愛するが、一言で言うと「非の打ち所」の無い、珠玉のハードバップな演奏である。これぞジャズ、という演奏の数々。素晴らしい。

1955年10月から1956年12月に渡って、録音順に並んだ音源集なので、振り返ってみるとたった1年2ヶ月の短期間だが、マイルス・デイヴィス・クインテットのバンドとしての成熟度合いと、コルトレーンの成長度合いが良く判る。

バンド・サウンドとしてはもともとレベルの高いところからスタートしているが、段階的に深化、成熟していくのが良く判る。コルトレーンについては、たった1年2ヶ月であるが、最初と最後では全く別人といって良いほどの「ジャイアント・ステップ」である。

マラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』をアルバム毎に分けて聴くも良し、録音順に追体験風に聴くも良し、これら「マイルスの考えるハードバップ」の完成形は、ジャズとして「欠くべからざる」音源である。ジャズ者としては、絶対に聴いておかなければならない音源である。
 
 
 
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2021年10月22日 (金曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・8

ミンガス・ミュージック。雰囲気的になんだか難解な印象で、しかもバリバリ硬派な純ジャズ。時々、フリー・ジャズ的な雰囲気も時々不意を突くように入る。不協和音前提のユニゾン&ハーモニーは十八番中の十八番。振り返れば、実にジャズらしいジャズのひとつだと思うんだが、ジャズを聴き始めた頃は、このミンガス・ミュージックは実に「敷居が高い」。

Charles Mingus『Pithecanthropus Erectus』(写真左)。邦題『直立猿人』。1956年1月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Jackie McLean (as), J. R. Monterose (ts), Mal Waldron (p), Willie Jones (ds)。マクリーンのアルト・サックスとモンテローズのテナー・サックスが2管フロントのクインテット編成。ミンガス・ミュージックの最初の成果である。

この盤、ジャズ者初心者向けの名盤紹介に必ずと言って良い位、このタイトルが挙がるのだが、内容的には決して易しく無い。基本的に難解。ジャズの基本である即興演奏とジャズ演奏の自由度の高さ、ジャズの表現力の高さ、に着目したミンガス・ミュージックで、ハードバップが基調であるが、ビッグバンド志向の分厚いバンド・サウンドと自由度の高いアドリブ展開が特徴。
 

Pithecanthropus-erectus-mingus

 
アレンジが優れているのだろう、クインテット編成でビッグバンドの様な分厚い音。不安な気持ちを増幅させる様な不協和音の取り扱い。メンバーそれぞれのアドリブ演奏の自由度が高く、演奏スペースが広い。それでいて、テーマ部は整然とした、強烈に統制が取れたユニゾン&ハーモニー。そして、演奏全体の統制は、骨太でソリッドで強靱なミンガスのベースが執り行う。ミンガスのベースがあってこそ成立する「ミンガス・ミュージック」の極意がこの盤に詰まっている。

ジャズの表現力の高さは「A Foggy Day」で確認出来る。この曲はサンフランシスコのフェリー乗り場に向かうまでの霧の深い日の車のクラクション、警報の音、二日酔いの気怠さ等々、自らが感じた霧深き日の雰囲気を演奏で表現している、とミンガスはジャケ裏のライナーノーツで語る。この「表現力の高さ」は、このクインテット編成のメンバーそれぞれの力量に負うところが多い。それぞれが素晴らしいパフォーマンスを発揮している。

ポップな旋律、キャッチャーなメロディーはほぼ皆無。この盤は硬派で取っ付き難くはあるが、内容的には「良質のハードバップ」演奏が詰まっている。ストイックでその高度な内容はアーティスティックですらある。そういう意味でこの盤、初心者は要注意。ジャズを聴き始めて、即興演奏の妙とアドリブの優劣が判ってから、腰を据えて聴くことをお勧めする。
 
 
 

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