2023年10月21日 (土曜日)

1970年代のファラオの名盤です

Pharoah Sanders(ファラオ・サンダース)。ファラオはコルトレーンの晩年に行動を共にし、コルトレーンの死後、後継者として一番名乗りを挙げたサックス奏者。力強いブロウ、スピリチュアルな演奏、長いフレーズと極端に短いフレーズを組み合わせたグニャグニャ・ラインが特徴。このグニャグニャ・ラインが「はまると癖になる」。

サンダースは「スピリチュアル ジャズ」初期の代表的存在。サンダースはコルトレーンの弟子、あるいはアルバート・アイラーが言ったように「トレーンは父であり、ファラオは息子」な存在。後年では、バラード集を出したりで、メンストリームなモード・ジャズにもその才覚を発揮した。つまりは、サックス奏者として素性がすごく良いのだ。

Pharoah Sanders『pharoah』(写真左)。1976年8, 9月の録音。ちなみにパーソネルは、Pharoah Sanders (ts, perc, vo), Bedria Sanders (harmonium/ track 1), Clifton "Jiggs" Chase (org/ tracks 2 & 3), Tisziji Munoz (g), Steve Neil (b), Greg Bandy (ds/ tracks 2 & 3), Lawrence Killian (perc)。1976年、フュージョン・ジャズ全盛期の中でのスピリチュアル・ジャズの名盤である。
 

Pharoah-sanderspharoah

 
1970年代のスピリチュアル・ジャズの音がする。浮遊感溢れるサイケデリックなエレギ、重量感&躍動感溢れるベース、そこにストレートで伸びのあるファラオのサックスが印象的なフレーズを吹き切る。後半にはハーモニウムまで参加する恍惚感溢れる、冒頭の「Harvest Time」は、スピリチュアル・ジャズの名演・名曲である。

基本は自由度の高いモード・ジャズ。この部分は正統派のメインストリーム志向の純ジャズの面持ちで、これだけでも聴き応え十分。この部分だけでも純ジャズ、スピリチュアル・ジャズとして名演の類なのだが、それぞれの曲の途中、完全フリーにブレイクダウンする。叫びとも咆哮とも言える豪快なフリーなブロウ。時代として、このフリーなブロウも聴き手に訴求する上で必要不可欠だったんだろう。まあ、今の耳で聴けば、このフリーなブロウの部分は必須では無いと感じるんだが...。

今回、このファラオの、スピリチュアル・ジャズの歴史に残る名盤『Pharoah』がリマスターが施され、CD・アナログそれぞれ2枚組限定ボックスセットにて初の正規リイシューがなされている。1枚目には、オリジナルの『Pharoah』本編。2枚目「Harvest Time」の未発表ライヴ音源2曲を収録している。スピリチュアル・ジャズ者の方々には必須のアイテム。通常のジャズ者にも十分訴求する、1970年代ファラオの名盤だと思います。
 
 

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2021年8月 7日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・216

コロナ・ワクチンの2回目の接種後、まずまずの副反応が出た。接種10時間後に発熱、37.8℃。解熱剤を飲むと平熱に下がるも、効力が切れるとまた発熱。これが翌日まで続く。翌朝、頭痛に悩まされる。嫌〜な感じの痛み。頭痛薬を2回連続で飲んで、やっと頭痛は治まった。で、今日は37.0℃程度の微熱はあるが、それ以外は平常に戻った。で、ブログの再開である。

Pharoah Sanders『Welcome to Love』(写真)。サブタイトルが「Pharoah Sanders Plays Beautiful Ballads」。1990年7月、フランスのイエールの「Studio Gimmick」での録音。ちなみにパーソネルは、Pharoah Sanders (ts, ss), William Henderson (p), Stafford James (b), Eccleston W. Wainwright Jr. (ds)。フリー・テナーの雄、ファラオ・サンダースのワン・ホーン・カルテットである。

コロナ・ワクチンの副反応のお陰で、床に入りながらジャズを聴く。床に入りながら聴いたジャズ盤の中で、これは、と感じ入った盤が、ジョン・コルトレーンのDNAを受け継ぐテナー・レジェンド、ファラオ・サンダースのバラード集。ファラオと言えば「フリー・ジャズ」となるが、この盤が録音されたのは1990年。ファラオのテナーは、硬派な純ジャズ、所謂「ネオ・ハードバップ」なテナーに変化している。

テナー・レジェンドのバラード集と言えば、コルトレーンの『Ballads』を想起するが、このファラオのバラード集は、コルトレーンのコピーでは無いし、コルトレーンのバラード演奏のフォロワーでも無い。
 

Welcome-to-love

 
伸び伸びして大らか、シュッとした温かみのあるテナーの音、ポジティヴに明朗に展開するアドリブ・パフォーマンス。コルトレーンのバラード集と被っている曲、「You Don't Know What Love Is」と「Say It」を聴き比べれば、ファラオのオリジナリティーが良く判る。

しかし、かつての前衛の奇才が浪々とバラードを吹くのに違和感を覚えて、プロデューサーは誰かな、と確認すると「原哲夫」の名前がある。後のヴィーナス・レコードの総帥プロデューサーである。なるほど、このバラード集の音は、確かに後のヴィーナス・レコードの音に繋がるものある。

かつての前衛の奇才に「バラード」を吹かせる。そして、それは絶対に上質のバラード集になる。この見事なオリジナリティー溢れるバラード演奏は、それを見抜いたプロデュースの賜である。

バックのリズム隊も大健闘している。特にピアノのウィリアム・ヘンダーソンのピアノは一聴に値する。明るくちょっと多弁であるが、印象的なフレーズを連発しながら、ファラオのテナーをソプラノをがっちりサポートする。

このファラオのバラード集、意外とマイナーな存在に甘んじているが、あらゆるジャズ者の皆さんに一度は聴いて頂きたい名盤であると思う。
 
 
 
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