2023年9月15日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・266

キャノンボール・アダレイは、ファンキーで明るいアルト・サックスが身上。しかし、デビューから暫くは、エマーシー・レーベルの下、明るい明確なアルト・サックスをメインに、ストリングスやジャズオケをバックにした、大衆受け狙いの「イージーリスニング・ジャズ」志向のリーダー作を連発。

リヴァーサイド・レーベルに移籍して、ハードバップなジャズにやっと立ち戻ったが、ファンキー・ジャズには未だ至らす。しかし、1959年の『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』で一気にファンキー・ジャズ志向に大転換。以降、暫く、キャノンボール・アダレイは、ファンキー・ジャズ一直線で、売れっ子人気ジャズマンの仲間入り。

Cannonball Adderley『Them Dirty Blues』(写真左)。1960年2月1日はNY、1960年3月29日はシカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cornet), Bobby Timmons (p, tracks 5–9) , Barry Harris (p, tracks 1–4), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。

ピアノをバップなピアニストであるバリー・ハリスとファンキーなピアニストであるボビー・ティモンスとで使い分けているが、編成の基本はアダレイ兄弟がフロント2管のクインテット編成。こってこてバップなピアニストのハリスが、とってもファンキーなピアノを弾いている。こってこてファンキーなティモンズのピアノよりファンキーなのでは、と思う位、ファンキーなハリスのピアノが効いている。
 

Cannonball-adderleythem-dirty-blues  

 
ナット・アダレイのファンキー・チューンの名曲、冒頭の「Work Song」が突出して良い出来。コール・アンド・レスポンスでゴスペルチックなテーマ、展開部は徹底的にファンキーなフレーズで埋め尽くす。根明でストレートなキャノンボールのアルト・サックスと、根明でブリリアントなナットのトランペットが映えに映える。

ちなみに、CDリイシュー盤では、バリー・ハリスがピアノを弾いているテイクと、ボビー・ティモンズがピアノを弾いているテイクとを聴き比べることが出来る。聴き比べると判るのは、LP時代、正式に採用されたのは、バリー・ハリスがピアノを弾いたテイク。ハリスがこってこてファンキーに切れ味良く、ファンキーなバップ・ピアノよろしく、フロントのアダレイ兄弟をバッキングしている。うん、やはり、これはハリスのテイクの方が良い。

2曲目以降もファンキー・ジャズ志向の演奏がてんこ盛り。ハリスのファンキー・ピアノが目立っているが、ティモンズのソウルフルなファンキー・ピアノが良い味を出している。

この『Them Dirty Blues』、スタジオ録音での、アダレイ兄弟のファンキー・ジャズ志向を決定付けたエポック・メイキングな盤という位置づけで、ファンキー・ジャズの名盤の1枚として良いのではないか。アルバムのどの曲を聴いても「ファンキー・ジャズ」。アダレイ兄弟の「ファンキー・ジャズ事始め」を、『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』と併せて聴いて確かめたい。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2023年7月27日 (木曜日)

硬派でバップなキャノンボール

キャノンボール・アダレイ。1959年以降、ファンキー&ソウル・ジャズでヒット作をリリースして人気ジャズマンになった訳だが、人気者になればなるほど、我が国では「ファンクの商人」と揶揄され、硬派なジャズ者の方々から煙たがられた。しかし、キャノンボールのジャズは確かなもの。デビュー当時のハードバップをバリバリ吹きまくるキャノンボールをもっと評価しても良いと僕は思っている。

彼が人気者になった、ファンキー&ソウル・ジャズだって、そのベースには、ハードバップ時代のバリバリ硬派にアルト・サックスを吹きまくる実績があったからこそ。どうも、以前は、ジャズというもの、コマーシャルに走るのは「恥」という傾向が我が国のジャズ・シーンにはあったように思う。僕には全く理解出来なかったけど。

Cannonball Adderley『Cannonball's Sharpshooters』(写真左)。1958年3月4日と6日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cor), Junior Mance (p), Sam Jones (b), Jimmy Cobb (ds)。アルト・サックスのキャノンボール・アダレイがチーダーのクインテット編成。小コンボ編成のハードバップな演奏に変わっての3作目。
 

Cannonball-adderleycannonballs-sharpshoo

 
この盤は、前年の『ソフィスティケイテッド・スウィング』や、それに続く『キャノンボール・アンルート』の流れの中にある盤で、硬派にハードバップにアルト・サックスを吹きまくるキャノンボールを確認することが出来る。スタンダード曲を伸び伸び、切れ味良く吹き上げるキャノンボールは、自由奔放でブリリアント。このストイックに硬派にアルト・サックスを吹きまくるキャノンボールは聴き応え十分。

フロントのパートナー、弟ナットのコルネットも良い味を出している。破綻無く切れ味良くブリリアントなトランペットを随所で吹きまくる。マンスのピアノは小粋だし、ジョーンズのベースは堅実。コブのドラミングは、この盤のハードバップな要素をしっかり把握し、しっかりとハードバップなリズム&ビートを供給する。

『ソフィスティケイテッド・スウィング』『キャノンボール・アンルート』に続く、小コンボでハードバップな演奏なんだが、スタンダード曲とミュージシャンズ・チューンズを混在して選曲したこの盤の演奏は「小粋」そのもの。録音年は1958年、ハードバップが成熟した頃の録音。良い内容で聴き応え満点。いかにも「やっつけ」なジャケだけが減点対象。もうちょっとましなジャケにならんかったのかいな、とこの盤を聴く度に思う。
 
 

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2023年7月26日 (水曜日)

小コンボのキャノンボールは良い

初リーダー作より、レーベルのエマーシーから、ムーディーなモダン・ジャズを余儀なくされたキャノンボール。キャノンボールは意外と硬派にハードバップに吹きまくるのだが、如何せん、ウィズ・ストリングスあり、ビッグバンド・ジャズなアレンジのゴージャスな編成ありで、全体的な印象としては「イージーリスニング・ジャズ」志向。

やっと、エマーシー移籍後の4作目のリーダー作『Sophisticated Swing』で、クインテット編成の小コンボでの、硬派でハードバップな演奏を実現した。メインストリーム系の純ジャズとして聴くには、まずは少人数コンボでのパフォーマンスが聴きたい。キャノンボールのアルト・サックスを、やっとクインテット編成で聴くことが出来た訳である。

Cannonball Adderley『Cannonball Enroute』(写真)。1957年2月と3月の録音。EmArcyレーベル上位のMercuryレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cornet), Junior Mance (p), Sam Jones (b), Jimmy Cobb (ds)。キャノンボール・アダレイの6枚目のリーダー作。但し、録音時はお蔵入り。4年後の1961年にリリースされている。
 
Cannonball-adderleycannonball-enroute  
 
エマーシー移籍後の4作目のリーダー作で、ようやくクインテット編成の小コンボでの、硬派でハードバップな演奏を実現した『Sophisticated Swing』のアウトテイクと追っかけ録音で構成されたのが本盤。1961年のリリースなので、マイルスのバンドに参加し、ファンキー・ジャズに転身して録音した『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』の大ヒットもあって、人気の一流ジャズマンの地位を確立してからの「便乗リリース」盤である。

『Sophisticated Swing』のアウトテイクと追っかけ録音だからといって、内容には遜色は無い。溌剌として流麗、そこはかとなくファンクネス漂い、テクニック上々。歌心溢れ、ちょっと五月蠅いくらいにブラスの音が鳴り響くキャノンボールのアルト・サックス。弟のナット・アダレイのコルネットも元気溌剌、兄のキャノンボールに負けず劣らず、素晴らしい吹奏を聴かせてくれる。

バックのリズム・セクションも好調。クインテット編成の小コンボでのキャノンボールの演奏は素晴らしい。明確にハードバップで、明確にモダン・ジャズ。ムーディーなモダン・ジャズは、キャノンボールには似合わない。『Sophisticated Swing』と同様、聴き応え十分な、ファンキー・ジャズ一歩手前の正統なハードバップ演奏が実に良い。『Sophisticated Swing』と併せて聴きたい。
 
 

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2023年7月 2日 (日曜日)

クインテットのキャノンボール

リーダー作デビュー2枚目にして、大手ジャズ・レーベルのエマーシーに移籍したキャノンボール・アダレイ。大人数編成のビッグバンド仕様や、ウィズ・ストリングスなど、ジャズをあまり知らない一般の音楽ファンにもしっかり訴求する、耳当たりと聴き心地の良いアルバムを続けざまに3枚、リリースしている。

キャノンボールのアルト・サックスは溌剌として流麗バップなフレーズを吹きまくって良い感じなんだが、どうにも、純ジャズのパフォーマンスとして聴くにはちょっと物足りなかったのは否めない。

Cannonball Adderley『Sophisticated Swing』(写真左)。1957年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cornet), Junior Mance (p), Sam Jones (b), Jimmy Cobb (ds)。キャノンボールのアルト・サックスとナットのコルネット、兄弟2管フロントのクインテット編成。

エマーシー移籍4枚目にして、やっとクインテット編成の、本格的純ジャズな少人数コンボでのリーダー作をリリース。やっぱりメインストリーム系の純ジャズとして聴くには、まずは少人数コンボでのパフォーマンスが聴きたい。キャノンボールのアルト・サックスを、やっとクインテット編成で聴くことが出来た訳である。
 

Cannonball-adderleysophisticated-swing

 
キャノンボールのアルト・サックスは申し分無い。溌剌として流麗、そこはかとなくファンクネス漂い、テクニック上々。歌心溢れ、ちょっと五月蠅いくらいにブラスの音が鳴り響く。ワンフレーズ聴いて、これってキャノンボールね、と判る位の個性溢れるアルト・サックス。少人数コンボでは、そんなキャノンボールが目立ちに目立つ。

目立つと言えば、フロント管の相棒、弟のナット・アダレイのコルネットも元気溌剌としていて、兄のキャノンボールに負けず劣らず、素晴らしい吹奏を聴かせてくれる。ナットも上手いんだよね〜。このアダレイ兄弟の2管フロントって無敵ですね。

バックのリズム・セクションも良い味出している。ジュニア・マンスのピアノがこれまた溌剌としたバップ・ピアノで聴いていて気持ちが良い。切れ味の良い、そこはかとなくファンクネス漂う弾きっぷりで、フロントのアダレイ兄弟をしっかりと引き立てる。ベースのサム・ジョーンズのベースは堅実、ジミー・コブのドラムは、切れ味良くファンキーなリズム&ビートを趣味良く叩き出している。

「古き良きアメリカ」を彷彿とさせる、オープン・スポーツカーと若きシュッとした金髪の白人女性というジャケ写も雰囲気があって良い。こういう良好なジャケのジャズ盤に外れはありませんね。聴き応え十分な、ファンキー・ジャズ一歩手前の正統なハードバップ演奏がてんこ盛りの好盤です。
 
 

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2022年5月24日 (火曜日)

ナットとヴィンセントに外れ無し

「小粋な」ジャズ盤を求めて、まだ聴いたことの無い、「小粋な」内容そうなアルバムを発掘しては選盤している。基本的に、冒頭1曲目の演奏をじっくり聴いて、これは「小粋な」ジャズ盤として、2曲目以降を聴くか、1曲目で聴くのを止めるか、を判断している。逆に、パーソネルを確認して、これは「小粋な」ジャズ盤に違いない、と一気に聴き通す場合もある。

Nat Adderley Quintet『We Remember Cannon』(写真左)。1989年11月18日、スイスのアールブルク「Moonwalker Club」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Vincent Herring (as), Arthur Resnick (p), Walter Booker (b), Jimmy Cobb (ds)。リーダーのナット・アダレイのコルネットと、ヴィンセント・ハーリングのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。

このライヴ盤の録音年は1989年。純ジャズ復古が実現し、新伝承派やM-BASE派の硬派なネオ・ハードバップがトレンドになっていた時代。リーダーのナットは58歳。全盛期を過ぎて、大ベテランの域に差し掛かった頃。さすがに1980年代のナットのリーダー作は「平均点」レベルの盤が多いのだが、ヴィンセント・ハーリングとフロントを張ったアルバムは、どれもが充実した内容で外れが無い。
 

Nat-adderley-quintetwe-remember-cannon

 
このライヴ盤『We Remember Cannon』は、内容的には「キャノンボール・アダレイ」のトリビュート。ただ選曲を見渡して見ても、キャノンボールの自作曲は無く、ナットの自作曲も有名な「Work Song」1曲。他の6曲はスタンダード曲。どの辺が「キャノンボール・トリビュート」なのか良く判らないが、内容的には、白熱した素晴らしいライブ演奏が堪能出来る優れもの。

ヴィンセントのアルト・サックスが絶好調で、雰囲気的に「キャノンボール寄り」で吹きまくっている。この絶好調のヴィンセントのアルト・サックスに煽られて、ナットのコルネットもバリバリに吹きまくっている。良きフロント2管である。バックのリズム隊では、ジミー・コブのドラムが元気一杯。このライブ盤の時でコブは60歳。ドラムソロも交えて、バンバン叩きまくって、フロント2管を鼓舞している。

昔のハード・バップ期、ファンキー・ジャズ華やかなりし頃に戻った様な、熱気溢れるヴァイタルな演奏がとても良い。各曲のアドリブ・フレーズも、引用含めて「小粋な」ものが多く、聴いていて楽しい。やっぱり、ナットのヴィンセントとフロントを張った盤には外れが無い、と思っていたが、このライヴ盤についても「大正解」。「小粋な」ライヴ盤として、結構楽しめる内容です。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2021年8月 2日 (月曜日)

ニューオリンズでの他流試合

1970年代、何故か、我が国では「キャノンボール兄弟」はウケが悪かった。兄弟が奏でる「ジャズ・ファンク」が、殊の外、我が国の硬派なジャズ者の方々のお気に召さなかったみたいで、兄のキャノンボールは「ファンクの商人」と揶揄され、弟のナットは「ファンクの商人の弟」と揶揄された。でも、僕は「キャノンボール兄弟」がお気に入りなんですけどね(笑)。

Nat Adderley『In the Bag』(写真左)。1962年5月19日、ニューオリンズでの録音。別タイトル『The Adderley Brothers in New Orleans』でリリースされたこともある。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Cannonball Adderley (as), Nat Perrilliat (ts), Ellis Marsalis (p), Sam Jones (b), James N. Black (ds)。

キャノンボール兄弟の「ニューオリンズ詣」である。パーソネルを見ると、ニューオリンズから、テナー・サックスのナット・ペリリアット、ドラムのジェームス・N・ブラック、そして、ピアノにエリス・マルサリス(ウィントン・マルサリスのお父さん)が参加している。NYからキャノンボール兄弟、そして、ベースのサム・ジョーンズ。フロント3管のセクステット編成である。
 

In-the-bag

 
面白いのは、この盤、わざわざニューオリンズまで出向いての録音なのに、LP時代に収録の7曲は「小粋なハードバップ」。ハードバップな演奏となれば、ニューオリンズから参加のメンバーは若くてちょっと弱い。逆に、キャノンボール兄弟の張りのあるパフォーマンスが際立っている。年齢的にも充実していた時期で、兄弟の吹き回しは見事。特に、ナットのコルネットが良い音している。

しかし、この内容ではわざわざニューオリンズまで出向いた意味が無いのだが、CDリイシュー時にボートラとして収録された2曲「The Popeye」や「The Gospel Truth」は、思い切りニューオリンズ・ディキシー風。あまりにあからさまにニューオリンズ風な演奏なので、LP時代には収録する場所が無かったのかな。

いずれにしろ、CDリイシュー時のボートラ収録で、ニューオリンズでの録音だったんやな、ということが腹落ちした次第。ただ、キャノンボール兄弟にとって、何か特別な意味を持つ盤かと言えば、そうでは無かった。この後、キャノンボール兄弟がニューオリンズ・ジャズに接近した風も無いし、逆に急速にファンキー・ジャズからジャズ・ファンクへ傾倒していく。今の耳から振り返ると、何とも不思議な位置づけの企画盤である。
 
 
 
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【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
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2013年4月18日 (木曜日)

ナット・アダレイ、もう一枚!

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、典型的なハードバップなジャズとして、ナット・アダレイの初期のアルバムをプッシュ。そして、コルネットの使い手、ナット・アダレイの再評価をプッシュして来ました。

これまで、ナット・アダレイの初リーダー作『That's Nat』(2013年3月25日のブログ・左をクリック)、ナット・アダレイのセカンド盤『Introducing Nat Adderley』(2012年11月16日のブログ・左をクリック)、そして、ハードバップの芳しき香りなサード盤『To the Ivy League from Nat』(2013年4月11日のブログ・左をクリック)と3枚のリーダー作をご紹介してきた。

で、あともう一枚、ご紹介したい。バリバリのハードバップから、ゴスペル的雰囲気漂うファンキー・ジャズへの移行が見え隠れする、なかなかの盤がある。Nat Adderley『Much Brass』(写真左)。ナットのリーダー作の5枚目。1959年3月の録音。ちなむにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Slide Hampton (tuba-1, tb-2〜7), Wynton Kelly (p), Sam Jones (b-2〜8, cello-1), Laymon Jackson (b-1, tuba-2〜8), Albert Heath (ds)。

1959年と言えば、確かにファンキー・ジャズが流行りだした頃。ナット・アダレイはいち早く、流行を取り入れている。先取性溢れる積極的なジャズメンと言える。そして、パーソネルを見渡すと、今回は、仲良し兄ちゃんのキャノンボール・アダレイが居ない。トロンボーンのスライド・ハンプトンはいるが、アルバム全体として、ほとんどナットのワンホーン作的雰囲気。

冒頭の「Blue Concept」からして、もうその音世界はハードバップ。そして、スライド・ハンプトンがチューバを吹いて、ナットのコルネットとスライドのチューバのユニゾン&ハーモニーが、まさにゴスペルチックな雰囲気を醸し出していて、この演奏のトーンは、まさにファンキー・ジャズ。ナットのミュートの効いたコルネットの切れ味鋭い音が、演奏全体を引き締めていて、コッテコテな状態にまではユルユルになってないけどね〜(笑)。
 

Much_brass

 
2曲目以降はタイトル通り「マッチ・ブラス」。ブラスと言えば「金管楽器」。フロントにブラス楽器をコルネット(アダレイ),ボントロ(スライド・ハンプトン)、チューバ(レイモン・ジャクソン)と3人揃えたユニークな編成の演奏が続く。3管ブラスのユニゾン&ハーモニー、そしてチェイス、コール・アンド・レスポンス。雰囲気は全く持って「ゴスペル&ファンキー」。

この盤、この3管ブラスが好調なんですよね。3管ブラスのユニゾン&ハーモニー、そしてチェイス、コール・アンド・レスポンスって、誰か一人でも不調だと「残念な」演奏になってしまうんですが、この盤は3管ブラスは良好。良い音出しています。

リズムセクションは、ピアノのウィントン・ケリー,ベースにサム・ジョーンズ,ドラムにアルバート・ヒースと言う、ハードバップ時代の名うての3人。それぞれ一流のジャズメンで、しっかりとフロントの3管ブラスをフォローしています。実に堅実かつファンキーなバッキング。そして、そんなリズムセクションの中で、ピアノのウィントン・ケリーが絶好調。

ファンキーで健康優良児的なハッピー・スインガーなウィントン・ケリーのピアノ。そこはかとなく漂う翳りも「漆黒のファンキー」で、このケリーのピアノが、この盤のファンキーな雰囲気作りに大きく貢献している。ややもすれば、この盤、ケリーのピアノを目当てに聴き込んでも良い位、ケリーは好調を維持している。

当然、リーダーのナット・アダレイは絶好調。この頃のナットって、本当に上手い。歌心もあるし、指は動くし、音はキッチリと締まって、ミストーンは無し。どうして、こんなに優秀なジャズ・トランペッターが、日本のジャズ本やジャズ雑誌で、マイナーな存在に甘んじていたのかが理解出来ない。

良いアルバムです。コッテコテ、べっちゃべちゃなファンクネスの手前、スッキリとした爽快感溢れるファンクネスが、この盤を包んでいて、実に良い雰囲気です。ジャズ者中級以上の方々にお勧めです。
 
 
 
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2013年4月11日 (木曜日)

ハードバップの芳しき香り・・・

何気なく聴いていると、これはなかなか良いと思う。完璧なハードバップな演奏。音の具合からして、これは古い。1950年代後半のハードバップど真ん中の演奏と見切る。良い雰囲気だ。このアルバムは何というアルバムだろう。気になり出す。

特徴的なアルトから解明に入る。ハイテクニックで思いっきり吹きまくる、ファンクネス溢れるアルトはどうもキャノンボールらしい。ということは、このトランペットはナットということか。なんて類推する。アルトも上手いがトランペットも上手い。かなりのテクニック。ナット・アダレイはこんなに上手いトランペッターやったんや、と改めて感心する。

でも、アルバム名が判らない。仕方が無いから、ジャズ喫茶の、はたまたレコード屋のプレイヤーの下に駆け寄る。ジャケットを見る。でも「???」。当時、僕はこのアルバムの存在を知らなかった。今から20年ほど前の出来事である。

さて、そのアルバムとは、Nat Adderley『To the Ivy League from Nat』(写真左)。1956年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Cannonball Adderley (as), Junior Mance (p), Sam Jones (b,tracks 3-11,cello,tracks 2 & 3), Al McKibbon (b,tracks 1-3), Charles "Specs" Wright (ds)。初リーダー作『That's Nat』から数えて3枚目のリーダー作。

うむむ、やはりハードバップど真ん中の演奏やな。趣味の良い端正でファンクネス漂うピアノはジュニア・マンス。なるほど、納得。ぶっといベースは誰じゃ。サム・ジョーンズには納得。アル・マッキボンは辛うじて名前を知っている程度。不明を恥じる。さらに、堅実ドラムのチャールズ・ライトは知らない。更に不明を恥じる。
 

Ivy_league

 
しかし、アルバム全体の演奏のレベルは高い。恐らく、パッと集まって、パッと録音したと思われるが、これだけのレベルの演奏をサラサラとやってのける当時のジャズメンって、ミュージシャンとしてどれだけ優れているのかしら。結構、複雑なこともしているんですよ。それでもサラリとやってのけてしまう。一流ジャズメンって何時の時代も凄いよな〜。

リーダーのナット・アダレイは、トランペットでは無く、コルネットを使用している。コルネットはトランペットに比べまろやかで柔らかな音色で、音の移り変わりは滑らかだが、強弱の幅はトランペットより狭いのが特徴。このまろやかさと柔らかさという特徴が、このナットのリーダー作でも良く出ている。そういう意味で、このアルバムは、コルネットの特徴を聴くことの出来る好盤とも言える。

ナット・アダレイのコルネットは申し分無い。とにかく上手い。ナット・アダレイってこんなに上手かったんや、と心から感心する。歌心も豊か、強弱硬軟を自在に吹き分け、緩急も自在に吹きまくる。日本のジャズ本では、ナット・アダレイの代表作としては、リバーサイドの『Work Song』の一枚のみ紹介されることが多く、そういう扱いをずっと見ていたので、ナット・アダレイって大したトランペッターでは無い、なんて誤解をしていた時期もあった。

どうしてどうして、ナット・アダレイのトランペットは素晴らしいし、出来の良いアルバムを初リーダー作から、かなりの数を出している。今までの日本のジャズ本やジャズ評論家のナット・アダレイの扱いの低さの意味が判らない。まあ、やはりジャズのアルバムはどんどん実際に聴いてみるものである。

これも、ナット・アダレイの初期の佳作として、聴き応えのあるアルバムです。ジャケットもなかなか、ハードバップの芳しき香りが漂って、実に「ジャズ」な一枚です。
 
 
 
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2013年3月25日 (月曜日)

ナット・アダレイの初リーダー作

今までの日本のジャズ入門本のアルバム紹介には、かなりの偏りがあったのでは無いかと思っている。優れたジャズメンであっても、なかなか正統に評価されない、良いアルバムをリリースしていても、なかなか紹介されない。そんなジャズメンが沢山いる。

例えば、Nat Adderley(ナット・アダレイ)などはその一人だろう。ジャズ・トランペッターとして、テクニック、歌心、実績共に優秀。それでも、日本のジャズ本で紹介されるアルバムは、1960年1月録音、Riversideレーベルからの『Work Song』のみ。生涯、30枚以上のリーダー作をリリースしているのに、だ。当然、日本での人気はイマイチ。兄貴のキャノンボールの影に隠れた脇役的存在のレッテルを貼られたりで散々である。

しかし、最近、状況は変わりつつある。最近、1000円盤が流行っていて、この1000円盤でリリースされる盤を見渡すと、こんなアルバムをリイシューするのか、とレコード会社のビジネス感覚を疑いたくなるような、マニアックでレアな優秀盤が目白押しである。まず、ジャズ者初心者の方々が手を出すには躊躇するような、日本のジャズ本で紹介されたことの無いアルバムがズラリと並ぶ。

これでは、ジャズ者初心者の方々は困ってしまうでしょうね。なんせ、ジャズ本で紹介されていないんだから。一枚1000円とはいえ、そのアルバムに投資する訳ですから、変な内容の無いアルバムに当たってしまったら、ジャズ自体が嫌いになってしまう危険性もあります。

このSavoyレーベルから『That's Nat』(写真左)もそんな一枚です。今までだったら、このマニアックでレアな優秀盤が日本でリリースされることは無かったでしょうね。1000円盤の流行がもたらした、新しいリイシュー方針の成果です。でも、このアルバムが日本でリリースされた時は、一瞬、ビックリしました。ほんまかいな、と。

この『That's Nat』は、1955年7月26日の録音。2012年11月16日のブログ(左をクリック)でご紹介した『Introducing Nat Adderley』が、1955年9月6日の録音ですから、この『That's Nat』のほうが、ナット・アダレイの初リーダー盤になりますね。2012年11月16日のブログでは、『Introducing Nat Adderley』がナット・アダレイの初リーダー盤、とご紹介していますが、これは間違い。謹んで、ここに訂正させて頂きます。
 

Thats_nat

 
さて、この『That's Nat』、ナット・アダレイのトランペット(またはコルネット)を愛でるに相応しい、初々しい内容の初リーダー作となっています。とにかく、溌剌として思いっきりポジティブにトランペットを吹きまくるナット。音も真っ直ぐで美しく、テクニックは優秀。とにかく、ナット・アダレイはジャズ・トランペッターとして優秀。どのリーダー作を聴いても、ナットのトランペットは優秀です。

ちなみに、このアルバムのパーソネルは、Nat Adderley (cor), Jerome Richardson (ts,fl), Hank Jones (p), Wendell Marshall (b), Kenny Clarke (ds)。1955年の録音ですから、ビ・バップからハード・バップへの移行期、ビ・バップで活躍して、ハード・バップに適応しつつある、当時の中堅ミュージシャンを中心に人選されていて、このパーソネルを確認するだけでも、このアルバムの内容は保障されたようなもの。

リーダーのナット・アダレイのコルネットは絶好調。テナー&フルートのジェローム・リチャードソンも素晴らしいパフォーマンスを繰り広げ、ベースのウェンデル・マーシャルは堅実なウォーキング・ベースを披露する。このナット・アダレイを中心としたクインテットの中で、特に素晴らしい演奏を聴かせくれるのが、ピアノのハンク・ジョーンズとドラムのケニー・クラーク。

とりわけ、ハンク・ジョーンズのピアノは素晴らしい。「雅(みやび)」の漢字がピッタリな、実に典雅で実に小粋な「聴かせる」ピアノを披露してくれる。「雅」で「粋」なハンク・ジョーンズのピアノ。これぞジャズ・ピアノという感じの「聴かせる」ことを前提としたパフォーマンス。決して難しく無い、決して聴き苦しくない、典雅なピアノ。

収録された曲それぞれは、これまたマニアックな選曲で、渋いマニアックなスタンダードが中心。それでも、親しみ易い旋律を持った佳曲ばかりなので、聴いていて心地良い。明確で明朗なナット・アダレイのコルネットとジェローム・リチャードソンのテナー&フルートがフロントで輝かんばかりに響き渡る。

良いアルバムです。ジャズ者初心者の方々には、ちょっとマイナー過ぎるかな、と思いますが、ジャズを深く親しみ始めた、ジャズ者中堅の方々には絶対のお勧め盤です。「実は私、この盤を愛聴していまして」と自慢げにカミングアウトの「し甲斐」のある「知られざる優秀盤」です。
 

アルバム・ジャケットは、サヴォイ・レーベルらしく、かなり地味なんですが、でも、これはこれでジャズらしくて良いかな。
 
 
 
★大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2012年11月16日 (金曜日)

ナット・アダレイのセカンド盤

ハードバップのアルバムって、一定のレベルをクリアした内容のアルバムであれば、その独特の雰囲気にドップリと浸ることが出来る。どのアルバムが良くて、どのアルバムが悪い、っていうことでは無くて、どのアルバムもハードバップ独特のジャジーな雰囲気を味わえるってこと。

これって、ハードバップの演奏というのが、僕達が感じる「ジャズ」に一番近い雰囲気を宿しているってことなんだろう。やっぱり、ジャズと言えば、このハードバップ時代のアルバムが一番フィットする。

このアルバムだって、聴けば「ジャズ」を感じることが出来る。Nat Adderley『Introducing Nat Adderley』(写真左)。アルトの職人、キャノンボール・アダレイの弟。トランペットとコルネットの名手。兄と同じく、ファンクネス溢れるブロウが身上。

1955年9月の録音。う〜ん、ハードバップ時代真っ只中ですね〜。この録音時期だけみても、このアルバム、期待出来ます。そして、パーソネルを紐解くと、Nat Adderley (cornet), Cannonball Adderley (as) Horace Silver (p), Paul Chambers (b), Roy Haynes (ds)。

このクインテット、素晴らしいメンバーですね。アダレイ兄弟をはじめとして、ファンキー・ピアノの元祖ホレス・シルバー、当時ファーストコール・ベーシストだったポール・チェンバース、そして、ハードバップ・ドラムの職人ロイ・ヘインズ。このパーソネルを見れば、ファンクネスがそこはかとなく漂う、正統派ハードバップな演奏が真っ先に浮かびます。
 

Introducing_nat_adderley1

 
そういう感じで、冒頭の「Watermelon」を聴けば、あ〜これは全くもってハードバップな演奏で、なんだか、ついつい口元が緩みます。テクニックもまだまだ、歌心もまだまだ、ただただ溌剌としていて活き活きとしているコルネット。それだけなんですが、それだけが良いんですね。裏表無い一生懸命さがとにかく良い。

そんな初リーダー作のナットと盛り立てるバックが、これまた良い。ハードバップの名手達が、ハードバップな雰囲気をプンプン漂わせながら、フロントのナットとキャノンボールの兄弟フロントを盛り立てる。これが良い。聴いていて、心からハードバップを聴いている気にさせてくれるのは、なにを隠そうこのバックの職人達の存在である。

この『Introducing Nat Adderley』というアルバムは、どちらかといえば地味なアルバムで、ジャズのアルバム紹介には、まずそのタイトルが挙がらないものです。今までのジャズ本のナット・アダレイの代表盤にも、まず挙がらないですよね。でも、このアルバム、実にハードバップしていて、ハードバップな演奏を愛でることが出来るアルバムなんですよね。

ハードバップのアルバムって、一定のレベルをクリアした内容のアルバムであれば、その独特の雰囲気にドップリと浸ることが出来る、ってことを実感出来る、ナット・アダレイの初リーダー盤です。 
 
 
 
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