2022年5月24日 (火曜日)

ナットとヴィンセントに外れ無し

「小粋な」ジャズ盤を求めて、まだ聴いたことの無い、「小粋な」内容そうなアルバムを発掘しては選盤している。基本的に、冒頭1曲目の演奏をじっくり聴いて、これは「小粋な」ジャズ盤として、2曲目以降を聴くか、1曲目で聴くのを止めるか、を判断している。逆に、パーソネルを確認して、これは「小粋な」ジャズ盤に違いない、と一気に聴き通す場合もある。

Nat Adderley Quintet『We Remember Cannon』(写真左)。1989年11月18日、スイスのアールブルク「Moonwalker Club」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Vincent Herring (as), Arthur Resnick (p), Walter Booker (b), Jimmy Cobb (ds)。リーダーのナット・アダレイのコルネットと、ヴィンセント・ハーリングのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。

このライヴ盤の録音年は1989年。純ジャズ復古が実現し、新伝承派やM-BASE派の硬派なネオ・ハードバップがトレンドになっていた時代。リーダーのナットは58歳。全盛期を過ぎて、大ベテランの域に差し掛かった頃。さすがに1980年代のナットのリーダー作は「平均点」レベルの盤が多いのだが、ヴィンセント・ハーリングとフロントを張ったアルバムは、どれもが充実した内容で外れが無い。
 

Nat-adderley-quintetwe-remember-cannon

 
このライヴ盤『We Remember Cannon』は、内容的には「キャノンボール・アダレイ」のトリビュート。ただ選曲を見渡して見ても、キャノンボールの自作曲は無く、ナットの自作曲も有名な「Work Song」1曲。他の6曲はスタンダード曲。どの辺が「キャノンボール・トリビュート」なのか良く判らないが、内容的には、白熱した素晴らしいライブ演奏が堪能出来る優れもの。

ヴィンセントのアルト・サックスが絶好調で、雰囲気的に「キャノンボール寄り」で吹きまくっている。この絶好調のヴィンセントのアルト・サックスに煽られて、ナットのコルネットもバリバリに吹きまくっている。良きフロント2管である。バックのリズム隊では、ジミー・コブのドラムが元気一杯。このライブ盤の時でコブは60歳。ドラムソロも交えて、バンバン叩きまくって、フロント2管を鼓舞している。

昔のハード・バップ期、ファンキー・ジャズ華やかなりし頃に戻った様な、熱気溢れるヴァイタルな演奏がとても良い。各曲のアドリブ・フレーズも、引用含めて「小粋な」ものが多く、聴いていて楽しい。やっぱり、ナットのヴィンセントとフロントを張った盤には外れが無い、と思っていたが、このライヴ盤についても「大正解」。「小粋な」ライヴ盤として、結構楽しめる内容です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2021年8月 2日 (月曜日)

ニューオリンズでの他流試合

1970年代、何故か、我が国では「キャノンボール兄弟」はウケが悪かった。兄弟が奏でる「ジャズ・ファンク」が、殊の外、我が国の硬派なジャズ者の方々のお気に召さなかったみたいで、兄のキャノンボールは「ファンクの商人」と揶揄され、弟のナットは「ファンクの商人の弟」と揶揄された。でも、僕は「キャノンボール兄弟」がお気に入りなんですけどね(笑)。

Nat Adderley『In the Bag』(写真左)。1962年5月19日、ニューオリンズでの録音。別タイトル『The Adderley Brothers in New Orleans』でリリースされたこともある。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Cannonball Adderley (as), Nat Perrilliat (ts), Ellis Marsalis (p), Sam Jones (b), James N. Black (ds)。

キャノンボール兄弟の「ニューオリンズ詣」である。パーソネルを見ると、ニューオリンズから、テナー・サックスのナット・ペリリアット、ドラムのジェームス・N・ブラック、そして、ピアノにエリス・マルサリス(ウィントン・マルサリスのお父さん)が参加している。NYからキャノンボール兄弟、そして、ベースのサム・ジョーンズ。フロント3管のセクステット編成である。
 

In-the-bag

 
面白いのは、この盤、わざわざニューオリンズまで出向いての録音なのに、LP時代に収録の7曲は「小粋なハードバップ」。ハードバップな演奏となれば、ニューオリンズから参加のメンバーは若くてちょっと弱い。逆に、キャノンボール兄弟の張りのあるパフォーマンスが際立っている。年齢的にも充実していた時期で、兄弟の吹き回しは見事。特に、ナットのコルネットが良い音している。

しかし、この内容ではわざわざニューオリンズまで出向いた意味が無いのだが、CDリイシュー時にボートラとして収録された2曲「The Popeye」や「The Gospel Truth」は、思い切りニューオリンズ・ディキシー風。あまりにあからさまにニューオリンズ風な演奏なので、LP時代には収録する場所が無かったのかな。

いずれにしろ、CDリイシュー時のボートラ収録で、ニューオリンズでの録音だったんやな、ということが腹落ちした次第。ただ、キャノンボール兄弟にとって、何か特別な意味を持つ盤かと言えば、そうでは無かった。この後、キャノンボール兄弟がニューオリンズ・ジャズに接近した風も無いし、逆に急速にファンキー・ジャズからジャズ・ファンクへ傾倒していく。今の耳から振り返ると、何とも不思議な位置づけの企画盤である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

その他のカテゴリー

AOR Bethlehemレーベル Blue Note LTシリーズ Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル rock Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アンドリュー・ヒル アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イタリアン・プログレ インパルス!レコード イーグルス ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウディ・ショウ ウラ名盤 エディ・ハリス エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルトン・ジョン エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリフォード・ブラウン クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド=メル楽団 サム・リヴァース サンタナ ザ・クルセイダーズ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シャイ・マエストロ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルト ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナー ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・レイジ ジョシュア・レッドマン ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・パウエル バリトン・サックス バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザース プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボブ・ジェームス ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス・デイヴィス マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・ジャズ・4 マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 吉田拓郎 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 書籍・雑誌 本多俊之 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー