2022年1月25日 (火曜日)

「with コロナ」なライヴ録音盤

昨日に引き続き「Smoke Sessions Records」の新盤の話題を。ジャズ・ドラマーのリーダー作というのは、その数はあまり多く無い。ドラムはバックに回ってリズム&ビートを供給する「リズム隊」の役割が主。かつ、打楽器という特性上、旋律が奏でられないので、管楽器やピアノの様に、その旋律のパフォーマンスで自己を表現する訳にもいかないので、ドラマーのリーダー作は数が少ない。

Joe Farnsworth『New York Attitude』。2021年2月19-21日、NYの「Smoke Jazz & Supper Club」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farnsworth (ds), Kenny Barron (p), Peter Washington (b)。前作『Time to Swing』に続いて、ファンズワース、バロン、ワシントンのピアノ・トリオ編成。

録音当時、リーダーのドラマー、ファンズワースは53歳。ベースのワシントンは56歳。ピアノのバロンは77歳。バロンが「レジェンド級」、ファンズワースとワシントンは「中堅」。ピアノとリズム隊、親子ほど歳の離れたピアノ・トリオ。演奏内容については、バロンに合わせるか、と思いきや、リズム隊のリズム&ビートは「ネオ・ハードバップ」な雰囲気で「新しい」。
 

New-york-attitude_joe-farnsworth

 
そんな新しい響きの「ネオ・ハードバップ」なリズム&ビートを得て、バロンがバリバリ弾きまくる。バロンは高テクニックで歌心満点、総合力で勝負するタイプのピアニストで、共演のリズム隊のリズム&ビートの個性に合わせて、最適な弾き回しをやってのける柔軟性を兼ね備えている。録音当時77歳のレジェンド級のピアノが、新しい響きの、現代のネオ・ハードバップに合致したフレーズを弾きまくるのだから痛快だ。

ファンズワースのドラミングは、伝統的なバップ・ドラミング。伝統的ではあるが、おかずの入れ方とか、タイム感覚とか、従来に無いドラムの響きが「新しい」。今までに聴いた記憶が無い、良い意味で正統派でユニークなドラミング。そんな「新しい」響きのドラミングで、変幻自在、硬軟自在、緩急自在に、バンド・サウンドをコントロールし、鼓舞する。ドラム・ソロも要所要所で聴くことが出来て、そんな「新しい」響きを堪能することが出来る。

このライヴ盤は、コロナ禍でNYがまだまだ大変だった2021年2月の録音になる。「Smoke Jazz & Supper Club」での無観客ライヴ録音で、トリオの3人はマスク姿、そして、お互いがアクリルボードで仕切られる。それでも、オンラインで鑑賞しているジャズ者の為に、最高のパフォーマンスを繰り広げたそうだ。コロナ禍に負けない、withコロナなライヴ録音。そんなライヴ録音の裏事情を知れば、このライヴ盤も更に味わい深いものになる。
 
 
 
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2022年1月24日 (月曜日)

ベテラン達の「Plays Coltrane」

最近、ジャズの新盤を漁っていると、よく出くわすレーベルがある。「Smoke Sessions Records」である。1999年、ニューヨークのアッパーウエストにオープンしたジャズクラブ「Smoke」のオーナーによって、2014年に設立されたジャズ専門レーベル。ジャズクラブ「Smoke」に出演している人気アーティストのライヴ録音がメイン。

ベテランと今後のジャズシーンを担う若手、両極端なリーダー起用が特徴で、「ポスト・バップ&メインストリーム」系のオーソドックスな作品を中心にリリースしている。ジャケット・デザインがほぼ統一されていて、デザイン的には、ちょっと平凡だと思うが、一目見れば直ぐに、この盤って「Smoke Sessions Records」からのリリースだと良く判る。

Harold Mabern『Mabern Plays Coltrane』(写真左)。2018年1月、ジャズクラブ「Smoke」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Harold Mabern (p), Vincent Herring (as), Eric Alexander (ts), Steve Davis (tb), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds)。ベテランのジャズメンがメインの布陣。アルト&テナー・サックス+トロンボーンがフロント3管のセクステット編成。
 

Mabern-plays-coltrane_1

 
タイトルに「Plays Coltrane」とあるので、このベテランのジャズメンがメインの布陣で、高速シーツ・オブ・サウンドやウネウネなモード・ジャズ、はたまた、スピリチュアル&フリーをやるのか、とドキドキして聴き始めたが、そんなことは無かったです(笑)。確かに、選曲にはコルトレーンが愛奏した楽曲が並んでいるのだが、演奏の雰囲気は「ネオ・ハードバップ」。

アルト&テナー・サックス+トロンボーンがフロント3管のセクステット編成なので、コルトレーンの名盤『Blue Train』を彷彿とさせるが、『Blue Train』よりは軽めで優しいアレンジがこの盤の特徴だろう。「ネオ・ハードバップ」だからと、ギンギンにシビアな演奏を繰り広げるのでは無く、余裕のある、ホンワカ優しく少しポップに、ハードバップで上質なジャズ演奏を聴かせてくれる。さすが、ベテランがメインの「Plays Coltrane」。

まとめると、この「Plays Coltrane」は、ベテランがメインのパーソネルで「俺たちがやったら、こんなハードバップな演奏になるよ。楽しんで聴いてくれ」なんていうアナウンスが聞こえてきそうな、ゆったりリラックスして聴くことが出来る「コルトレーン名曲集」である。じっくり聴いて、ジンワリその良さが染み入って来る、そんなベテラン達のパフォーマンスである。
 
 
 
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2022年1月21日 (金曜日)

ピーターソンの未発表ライヴ音源

オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)は、ジャズ・ピアニストのレジェンド中のレジェンド。今から14年前、2007年12月に逝去しているので、ジャズ者の間でも忘れ去られた存在になりつつあるのが残念なんだが、ピーターソンは、ジャズ・ピアニストの中でも最高のテクニシャン。ドライブ感溢れ、スイングしまくり、バリバリ弾くピアノには圧倒される。

それでいて歌心もしっかり備えているので、とにかく聴き応えのあるピアニストであった。奏法の基本はハードバップ。しかも「聴かせるピアノ」が身上。自らのアドリブの幅を拡げる「モード」や「フリー」には一切、手を染めず、コマーシャルな「ファンキー」や「ソウル」にも手を出さない、あくまで硬派なバップ・ピアノのスタイルを変えなかった。

『Time For Love : The Oscar Peterson Quartet - Live In Helsinki 1987』(写真左)。1987年、フィンランドのヘルシンキでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Joe Pass (g), Dave Young (b), Martin Drew (ds)。リーダーのピアニスト、オスカー・ピーターソンは62歳。大ベテランの域に入ったバーチュオーゾなピアノをメインに、これまた大ベテランのギタリスト、ジョー・パスをゲストに迎えたカルテット編成。
 

Time-for-love

 
こんなライヴ音源が残っていたとは。1987 年秋ヨーロッパ・ツアー最終公演ヘルシンキ、クルトゥリタロで行ったライヴ音源。音も良く、ピーターソンの「ドライブ感溢れ、スイングしまくり、バリバリ弾く」ピアノが鮮度良く捉えられていて良い感じだ。パスのギター、ヤングのベース、ドリューのドラムも躍動感溢れるもので、とても良いライヴ盤である。

緻密で華麗なテクニック、そして目の覚めるようなスウィング感を伴って、「Waltz For Debby」や「When You Wish Upon A Star」等の、ポップなスタンダードの名曲を演奏しているピーターソンが耳新しい。以前では想像出来なかったですね〜。そして、「Love Ballade」「 Cakewalk」等のオリジナル曲については、流麗な弾き回しに、更に磨きがかかって、聴き応え抜群。

1987年の録音、しかも北欧のヘルシンキでのライヴなので、「昔の名前で出ています」的な、ちょっと懐メロ的になっていないか、聴く前は心配だったが、どうして、新しいイメージのピーターソンがバリバリに弾きまくっている。1960〜70年代の弾きっぷりよりも、しっかりとした余裕が感じられて、ピーターソンも良い歳の取り方をしていたんだなあ、と感心した。ほんと、良いライヴ盤です。
 
 
 
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2022年1月20日 (木曜日)

ポップなウィントン・ケリー盤

ウィントン・ケリーのピアノは、健康優良児的なファンキーで明るいタッチ。しかし、その奥に見え隠れするブルージーな哀愁感が堪らない。転がる様に軽く飛び跳ねるように軽快なフレーズの中に、そこはかとなく漂う粘り。ケリーのピアノは、実に親しみ易いもので、聴いていて楽しく、リラックス度満点のピアノである。

Wynton Kelly『It's All Right!』(写真左)。1964年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Kenny Burrell (g), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds), Candido Camero (conga)。6曲目の「The Fall of Love」には、The Tommy Rey Caribe Steel Bandという、スティール・パン&マラカス軍団が加わっている様だ。

この盤は、Verveレコードからのリリース。Verveレコードは当時、大衆向け音楽の大手レーベル。ジャズについても、大衆向けのファンキー・ジャズやソウル・ジャズを量産していた。このケリーの『It's All Right!』は、そんなVerveのジャズ大衆路線の一環。プロデューサーは、後の「フュージョンの仕掛け人」、クリード・テイラー。
 
Its-all-right_wynton-kelly

 
アルバム全体の印象は、聴いて楽しい、アーバンでダンサフルな「ソウル・ジャズ&ラテン・ジャズ」。垢抜けたソウル・ジャズ、そして、当時流行のラテン・ジャズ。Verveのジャズ大衆路線の面目躍如。ケリーの親しみ易い、聴いて楽しいピアノが、この「大衆向けのジャズ」にピッタリ。

キャンディドのコンガが効いている。ゲスト参加のスティール・パン&マラカスが効いている。特に、ラテン・ジャズ志向の演奏については両者、効きまくっている。ポップでダンサフルな雰囲気を撒き散らしている。そして、ケニー・バレルの漆黒アーバン・ギターもバッチリ効いている。アーバンで夜のジャズな雰囲気を思いっ切り増幅する。

ジャケットも、独特な「American cartoon(米国漫画)」風のユニークなジャケットで、とてもジャズのアルバムとは思えない。さすがは、Verveレコードである。ともあれ、お気楽なポップ志向のジャズ盤っぽいが、ケリーのピアノ、バレルのギター、それぞれの個性を最大限発揮していて申し分無い。気楽に聴き流して楽しいケリー盤である。
 
 
 
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2022年1月19日 (水曜日)

ウィントン・ケリー入門盤です

リヴァーサイド・レコード(Riverside Records)は、1953年にオリン・キープニュースとビル・グラウアーによって設立されたジャズ・レーベル。アルバムをカタログ順に聴き直していて思うのは、意外と硬派なレーベルだということ。ハードバップ全盛期に活発な活動を誇ったレーベルだが、意外と聴衆に迎合した、大衆的なアルバムは少ない。

セロニアス・モンク、ビル・エヴァンス、マックス・ローチ、ランディ・ウエストン等、リヴァーサイドの看板ジャズマンは皆、硬派なハードバップをやる人達。ポップで判り易い大衆的なところは無い。ファンキー・ジャズをやるウィントン・ケリーや、ボビー・ティモンズ、キャノンボール・アダレイだって、意外と硬派でストイックなファンキー・ジャズをやっている。

Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。1959年2月19日と3月10日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Nat Adderley (cor, tracks 1 and 5), Bobby Jaspar (fl, tracks 1 and 5), Benny Golson (ts, tracks 1 and 5), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。セクステット編成が2月19日、ピアノ・トリオ編成が3月10日の録音になる。
 

Kelly-blue

 
1曲目の「Kelly Blue」と5曲目の「Keep It Moving」が、フロント3管のセクステット編成。その他がピアノ・トリオ編成。フロント3管のセクステット編成の演奏が、リヴァーサイドとしては珍しく、典型的なファンキー・ジャズで、ユニゾン&ハーモニーもキャッチャーで、ちょっと気恥ずかしくなるくらいに、演奏全体の雰囲気がポップ。

確かに、セクステット編成の演奏はそうなんだが、ケリーのピアノをメインとするピアノ・トリオ編成の演奏は、意外とストイックで、ケリーのピアノの個性、健康優良児的にハッピーな弾き回しだが、その底にそこはかとなく漂う哀愁とマイナー感が良く判る内容で、ケリーのピアノを理解するに最適な演奏となっている。

この盤、リヴァーサイドの中でも「ポップでキャッチャーな内容のファンキー・ジャズ盤」として、ジャズ者初心者向けのアルバムとして、よくそのタイトル名が上がる盤。しかし、冒頭の「Kelly Blue」だけで、ジャズ者初心者向けのジャズ入門盤とするには、あまりに短絡的すぎる。セクステット編成の演奏の中でも、ケリー節は唸っている。この盤、ウィントン・ケリーのピアノを理解する、「ケリー入門盤」として捉えた方がしっくりくる。
 
 
 
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2022年1月17日 (月曜日)

The Remarkable Carmell Jones

ジャケットを見て「これは」と思う。そして、その盤の素姓をネットで調べて、気に入れば即ゲット。そうやって、今まで聴いたことの無い盤に出会い、その内容がクールだったり、小粋だったりすると、何だか幸せな気分になる。ジャズ盤の蒐集の醍醐味である。

Carmell Jones『The Remarkable Carmell Jones』(写真左)。1961年、Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、Carmell Jones (tp), Harold Land (ts), Frank Strazzeri (p), Gary Peacock (b), Leon Pettis (ds)。パーソネルを見渡せば、米国西海岸ジャズの面子で占められている。カーメル・ジョーンズのトランペットとハロルド・ランドのテナーがフロント2管のクインテット編成。

実は、カーメル・ジョーンズについては、その名前しか知らなかった。じっくり聴いたことが無い。数年前、この盤に出会った時、まず思ったのが「何とイカしたジャケではないか」。そして、タイトルの「Remarkable(注目に値する)」が目を引いた。何か良さそうな盤やな〜、と思って、即ゲット。
 

The-remarkable-carmell-jones1

 
何とも端正でブリリアントな、そして、テクニックが確かなトランペットである。調べてみれば、アイドルは「クリフォード・ブラウン(ブラウニー)」。至極納得である。確かに、ブラウニーばりの美しいトーン、ちょっと線が細いのが気にはなるが、それを補ってあまりある、気負いの無い、素姓の良い端正なフレージングは新人離れしている。

2管フロントの相棒「ハロルド・ランド」のテナー・サックスも好調。"ブラウン&ローチ・クインテット時代よりも伸び伸び吹いているかもしれない。カーメル・ジョーンズのトランペットとの相性は良い。このフロント2管が充実しているので、このクインテット盤の内容はグッと締まったものにしている。良い雰囲気のハードバップ・ジャズだ。

雰囲気的には西海岸ジャズというよりは、東海岸ジャズに向いたトランペットだと思うのだが、調べて見たら、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)の名作『Song for My Father』に参加している。そうか、あの印象的な、ちょっとファンキーで端正なトランペットは「カーメル・ジョーンズ」だったのか。ブルーノートの音に実にフィットしたトランペットだった。カーメル・ジョーンズ、東海岸で活動していたら、結構、人気トランペッターになっていたかも、とちょっと思った。
 
 
 
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2022年1月15日 (土曜日)

ブルーノートの懐の深さを感じる

ブルーノート・レーベル4000番台は、純粋にジャズ出身のミュージシャンばかりで無く、R&B畑出身のミュージシャンにもリーダー作のチャンスを与えている。こういうところは、本当にブルーノートって懐が深い。他のレーベルとは異なり、レーベルとして、商業主義とはかけ離れた、確固たるアルバム制作の方針があるからだろう。

Fred Jackson『Hootin' 'n Tootin'』(写真左)。1962年2月5日の録音。ブルーノートの4094番。ちなみにパーソネルは、Fred Jackson (ts), Earl Van Dyke (org), Willie Jones (g), Wilbert Hogan (ds)。フレッド・ジャクソンは、R&B出身のテナー・サックス奏者。ジャクソンのテナーがフロント1管、ギター、オルガン、ドラムがリズム隊の変則カルテット編成。

リトル・リチャーズのバンド出身という変わった経歴を持つテナー奏者のリーダー作である。確かに、どっぷりジャズなテナー・サックスでは無い。どこかポップ、ブルージーでソウルフルなテナー・サックスで、後の「ソウル・ジャズ」の先駆け的な、ファンキーでR&B志向のジャズを聴くことが出来る。決して、メインストリームなジャズでは無い。
 

Hootin-n-tootin

 
全曲オリジナルというところも、メインストリームなジャズっぽく無い。どの曲もファンキーでソウルフルな演奏で、1950年代にジャズ界を席巻した「ハードバップ」や、マイルスが先鞭をつけた「モード・ジャズ」などとは、音の雰囲気が全く異なる。ジャクソンのテナーもR&B志向のファンクネス漂う、ブルージーで、どこか親しみ易いキャッチャーな音が特徴的。聴いていて「楽しい」テナー・サックスである。

後のモータウンの人気オルガン奏者、アール・ヴァン・ダイクのプレイも聴きどころ。これまた、ジミー・スミスなどの、いかにもストイックでジャジーなオルガンとは全く異なる、親しみ易くソウルフルな、そして、どこかポップなオルガンは、純ジャズの世界には無い響き。そして、素姓は良く判らないが、ウィリー・ジョーンズのこってこてソウルフルなギターも良い味を出している。

このジャクソン盤はどう聴いても、ハードバップでも無ければ、ファンキー・ジャズでも無い。明らかに後のソウル・ジャズの先駆的な音と言える。収録された曲は全てジャクソンのオリジナルで固められ、ジャズ・スタンダード曲は皆無。そういう面でも、この盤は、ブルーノートにおける「異色作」であり、逆にジャクソンの意欲作であり、ソウル・ジャズの先駆け的な好盤と言える。
 
 
 
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2022年1月14日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・227

ブルーノート・レーベル4000番台の凄いところは、当時のハードバップの最先端や流行をしっかり押さえ、かたや、有望な新人のリーダー作をもしっかり押さているところ。しかも、そんな中、モダン・ジャズ以前のジャズ、例えば、スイング・ジャズや中間派ジャズもしっかり押さえているところが凄い。

当時のジャズの上質な「ショーケース」であり、ブルーノートを聴けば「その時代のジャズの全貌が判る」というのも頷ける。当然、一般ウケしないアルバムもあるし、どう考えても売れないアルバムもある。しかし、そんな「商業主義」からはみ出たアルバムも含めて、当時のジャズの上質な「ショーケース」を形成しているブルーノートは、やはり尊敬に値する存在。

Ike Quebec『Heavy Soul』(写真左)。1961年11月26日の録音。ブルーノートの4093番。ちなみにパーソネルは、Ike Quebec (ts), Freddie Roach (org), Milt Hinton (b), Al Harewood (ds)。リーダーのアイク・ケベックのテナーがフロント1管のカルテット編成。ピアノの代わりにオルガンが入っているところが「ミソ」。
 

Heavy-soul

 
オルガンが入っているので、ファンキー・ジャズな内容かと思うが、リーダーのケベックのテナーは絶対に「ファンキー・ジャズ」では無い。ケベックは当時のジャズのトレンドからは「超越している」存在。ケベックのテナー・サックスはどう聴いても「スイング」若しくは「中間派」。ファンキー・ジャズでは無いが、ケベックのテナーはファンクネス濃厚。

どっぷりジャジーでブルージーな普遍的なジャズがここにある。オルガンが入ることによって、どこかゴスペルっぽくもあり、厳かな教会音楽風でもあり。しみじみとマイナー調のテナーを引き立てるローチのオルガンの存在は大きい。そして、ケベックのテナー・サックスの魅力が最大限に愛でることが出来る。オルガンのファンクネスが、ケベックのテナーのファンクネスを増幅させている。

当時、最先端のハードバップの様に垢抜けてないし、ポップでもないし、キャッチャーでもない。でも、しみじみと、切々とジャズを感じさせてくれるテナーなんですよね。「Just One More Chance」や「The Man I Love」などのスタンダード曲での太い音だが繊細で豊かなニュアンスの「スイング」若しくは「中間派」のテナーが秀逸。いつ聴いても惚れ惚れする内容です。
 
 
 
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2022年1月13日 (木曜日)

BN4000番台の「異質」な存在

ブルーノート・レーベルは、ニューヨークに拠点を置く老舗ジャズ・レーベル。当然、東海岸の「モダン・ジャズ」がメイン。しかし、1500番台にも、4000番台にも、ブルーノートのカタログの中で、明らかに異質なアルバムが「1枚だけ」存在する。これが実に不思議な存在で、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの、カタログに入れた「真実」を訊きたい気持ちで一杯である。

1500番台では、Gil Melle『Patterns In Jazz』、ブルーノートの1517番が有名な「異質なアルバム」だろう。東海岸のハードバップの最先端のアルバムがひしめく中で、爽やかでお洒落なウエストコースト・ジャズ。西海岸で録られた音源を持って来たのかと思いきや、1956年4月の録音だが、しっかりと、Hackensackの「Van Gelder Studio」で録音されている。ブルーノートの確固たる意志で録音されたものだが、1500番台のアルバムの中で明らかに違和感がある。

Kenny Clarke, Francy Boland & Co. 『The Golden 8』(写真左)。1961年5月、西ドイツ(当時)のケルンでの録音。ルディ・ヴァン・ゲルダーはマスタリング担当。ブルーノートの4092番。ちなみにパーソナルは、Kenny Clarke (ds), Francy Boland (p), Dusko Gojkovic (tp), Raymond Droz (alto horn), Derek Humble (as), Karl Drevo (ts), Chris Kellens (euphonium), Jimmy Woode (b)。
 

The-golden-8  

 
ケニー・クラークをリーダーとしたオクテット編成。音の雰囲気はもはや「ビッグバンド」。ブルーノートの4000番台は、ハードバップの多様化をタイムリーに捉えたアルバムがてんこ盛りなのだが、そんな中に、やや古風な「ビッグバンド」志向なオクテット編成の演奏がいかにも「異質な存在」である。しかもバリバリ正統派なビッグバンド志向の音に、ブルーノートらしく無くて、ちょっと戸惑ってしまう。

リーダーでドラムのクラークとベースのウッドは米国出身だが、ピアノのボランはベルギー、トランペットのゴイコヴィッチはボスニア、アルト・ホルンのドローはスイス、アルト・サックスのハンブルは英国、テナー・サックスのドレヴォはオーストリア、ユーフォニウムのケレンスはベルギー。米国2人、欧州6人の欧州ジャズのオクテットなので、出てくる音にファンクネスは殆ど感じられない。端正で統制の取れた、如何にも欧州らしい「ビッグバンド」志向な音が、これまた、ブルーノートらしく無くて、ちょっと戸惑ってしまう。

メンバーの中に、若き日のバルカンの至宝トランペッター、ダスコ・ゴイコヴィッチが参加していたり、オクテットの演奏レベルは高い。アフロキューバンなリズムとモードを採用しているところが、欧州ジャズの中ではユニークで、ここから、クラーク=ボラン・ビッグバンドに発展していく、記念すべき盤でもある。しかし、欧州ジャズな「ビッグバンド」志向なオクテットは、ブルーノート4000番台の中では「異質」ではある(笑)。
 
 
 
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2022年1月10日 (月曜日)

ソニー・クラークの遺作盤です

ブルーノート・レーベルには「お抱えのジャズマン」が何人かいる。ほとんどブルーノート・レーベル専属に近い状態で、ブルーノートのカタログにその名前が、リーダーにサイドマンに結構な数が上がるジャズマンである。基本的に、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの「大のお気に入りジャズマン」である。

Sonny Clark『Leapin' and Lopin'』(写真左)。1961年11月13日の録音。ブルーノートの4091番。ちなみにパーソネルは、Sonny Clark (p), Tommy Turrentine (tp, except track 2), Charlie Rouse (ts, except track 2), Ike Quebec (ts, track 2 only), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。基本は、トミタレのトランペット、ラウズのテナーのフロント2管のクインテット編成。

ソニー・クラーク(以降「ソニクラ」と略)は、アルフレッド・ライオンの「大のお気に入りジャズマン」の1人。本職のピアノもさることながら、どうも、ソニクラの書く曲が大好きだった節がある。それでも、31年の短い生涯の間のリーダー作11作のうち、9作がブルーノートからのリリースである。
 

Leapin-and-lopin

 
確かに、収録された全6曲中、3曲を占めるソニクラの曲は、突出してアーバンでブルージーで魅力的な曲ばかり。そんな「ジャジーでブルージー」な曲を、ソニクラの「流麗ではあるがファンクネス漂い、マイナーで哀愁感溢れる」黒いバップなピアノが奏でるのだ。むっちゃジャジーな雰囲気が堪らない。

この盤は、実はソニクラの遺作になる。この盤の録音の1年2ヶ月後、ソニクラは、ヘロインの過剰摂取により、帰らぬ人となる。恐らく、そんな事、当の本人は思ってもいなかったと思われる。なぜなら、この盤のソニクラのピアノは、モーダルで新しい響きを宿した、ハードバップなフレーズを連発していて、次のステップへ進化しようとする「意欲」が聴いてとれるのだ。

初リーダー作『Oakland, 1955』(Uptown)以外、今、聴くことの出来るソニクラのリーダー作は10枚。どれもが、ソニクラらしい、ブルーノートらしい音が詰まった秀作揃い。特に、この遺作の『Leapin' and Lopin'』については、ソニクラのジャズマンとしての「前進する姿」を捉えた好盤だと言える。それにしても享年31歳、実に惜しい早逝であった。
 
 
 
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