2024年9月 9日 (月曜日)

ソウルフルなグラント・グリーン

昨日から、ブルーノート御用達、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグラント・グリーンのギターに着目、まだ、当ブログで記事化していないリーダー作を順に聴き直している。特にグリーンのキャリアの後半に未記事化のリーダー作が集中しているので、せっせと聴き直し、である。

Grant Green『Alive!』(写真左)。1970年8月15日、ニュージャージーの「クリシェ・ラウンジ」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Claude Bartee (ts), Willie Bivens (vib), Neal Creque (org, tracks 2 & 5), Ronnie Foster (org, tracks 1, 4) Idris Muhammad (ds), Joseph Armstrong (congas)。

爽快なライヴ盤。グラント・グリーンの「独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーな」ギターの周りを固めるのは、サックスにクロード・バーティ、オルガンにロニー・フォスター&ニール・クリーク 、ドラムにアイドリース・ムハマッド、ヴァイヴにウィリー・ビヴェンズ、コンガにジョセフ・アームストロング。

ハードバップ期からファンキー・ジャズ期に活躍したジャズマンの名前はなく、どちらといえば、R&B畑のミュージシャンがジャズに参入しているイメージで、演奏全体の雰囲気は、R&B志向が漂うソウル・ジャズ。そう、この盤には、ソウル・ジャズをやるグラント・グリーンが存在しているのだ。
 

Grant-greenalive

 
ファンキー・ジャズのグリーンに比べると、確かにポップになってはいるが、基本はジャズ。R&B志向は強いが、唄うようなアドリブ・フレーズは確実にジャジー。主旋律はR&Bの如く唄う様に、ちょっと上質のイージーリスニング・ジャズっぽく弾くが、アドリブ展開はメインストリーム志向のソウル・ジャズ。

グリーンのギターの「独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーな」本質は変わらないのだが、バックを固める、R&B畑のジャジーな演奏が、良い「ソウル・ジャズ」なグルーヴを醸し出していて、このグルーヴに乗ったグリーンのギターが「ソウル・ジャズ」に染まっていくのが良く判る。

ソウルフルなグラント・グリーンがこのライブ盤に溢れている。CDリイシューでは、オリジナルLPには未収録だった3曲がボートラとして追加されているが、このボートラは邪魔にならない。

オリジナルLPに収録されても、全く違和感の無い、熱くソウルフルな演奏で、この盤はCDリイシュー盤で聴きたい。ラストのハンコック作の「Maiden Voyage(処女航海)」のソウル・ジャズなバージョンには思わず、喝采の声をあげたくなる。
 
 

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2024年9月 6日 (金曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・27

この盤は、僕がジャズ者初心者の頃、よく聴いた。確か、当時、大手レコード屋が、ジャズ者初心者向けにアルバム紹介の冊子を配っていて、それをもらって、片っ端から「購入しては聴く」を繰り返していた。全40枚あったと思う。

そんな中に、このアルバムはあった。ジャケは「秋の公園のベンチで日向ぼっこをして寛ぐ老人の男性」の写真をあしらっていて、ちょっと違和感があったが、思い切って購入したのを覚えている。

Horace Silver『Song for My Father』(写真左)。1963年10月31日、1964年10月26日 の2回のセッションの寄せ集め。ここでは、CDリイシュー時のボートラの扱いは割愛する。ちなみにパーソネルは、当然、以下のの2つの編成に分かれる。

1963年10月31日の録音(#3, 6)が、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。1964年10月26日(#1. 2. 4. 5)の録音が、Horace Silver (p), Carmell Jones (tp), Joe Henderson (ts), Teddy Smith (b), Roger Humphries (ds)。

この盤の大ヒット・チューン、冒頭のタイトル曲「Song for My Father」は、1964年10月26日のパーソネルでの演奏。併せて、2曲目「The Natives Are Restless Tonight」、4曲目「Que Pasa」、5曲目「Que Pasa」も同じパーソネルでの演奏。カーメル・ジョーンズのトランペットが効いている。ねじれたモーダルな演奏に走らない、ストレートアヘッドなファンキー・テナーを聴かせるヘンダーソンも聴き逃せない。
 

Songformyfathe_r

 
一方、3曲目「Calcutta Cutie」と5曲目は「Lonely Woman」は、1963年10月31日の録音で、パーソネルは、お馴染みの、ミッチェルのトランペット、クックのテナーがフロントの、伝説のシルバー・クインテット。手慣れた、聴き慣れた、シルバー流ファンキー・ジャズな音世界が広がる。

どちらのセッションの演奏も、どこか理知的な雰囲気が漂う、シルバー流のファンキー・ジャズなんだが、ファンキー度合いは、1964年のセッションの方が濃い。併せて、1964年のセッションは、ポップでメジャーな雰囲気で開放感がある。同じクインテットの演奏でも、1964年のセッションの演奏では、いわゆる「イメチェン」に成功している。

冒頭の「Song for My Father」が、かなりポップでコマーシャルなファンキー・ジャズなんだが、2曲目以降は、ジャズ者初心者が聴いても判り易い、理知的なシルバー流のファンキー・ジャズが続くので、アルバム全体に統一感もあって、よくまとまったシルバーのリーダー作だと思う。やはり、この盤は、ジャズ者初心者にピッタリのファンキー・ジャズ盤だと言える。

ちなみに、本作のタイトル曲「Song For My Father」はホレス・シルバーが自分の父親に捧げたもの。この盤のジャケ写の「帽子を被った葉巻のおじいさん」が実はホレス・シルヴァーの父君そのものである。

ブルーノート・レーベルって、モダン・ジャズの硬派でならしたレーベルなんだが、こういうジャケ写での「粋な計らい」をする、お茶目なレーベルでもある。
 
 

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2024年9月 4日 (水曜日)

ポール・ウィナーズの第4弾です

昨日、ご紹介した、当時の楽器別ジャズ人気投票で1位(Poll Winner)を獲得した3人が、テンポラリーなトリオ、ポール・ウィナーズ・トリオ。

このトリオは、1957年から1960年の3年間で、全4枚のアルバムを出している。最初が『The Poll Winners』、2枚目が『The Poll Winners Ride Again!』、3枚目が昨日、ご紹介した『Poll Winners Three!』。せっかくなんで、最後の一枚を今日、取り上げる。

The Poll Winners『Exploring the Scene!』(写真)。1960年8,9月、ロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Barney Kessel (g), Ray Brown (b), Shelly Manne (ds)。楽器別ジャズ人気投票で1位を獲得した3人の「職人芸的トリオ演奏」の4作目。ポール・ウィナーズ・トリオとして、一旦、打ち止めのアルバムである。

冒頭の「Little Susie」を聴けば、演奏の洗練度合い、テクニックの精度とバリエーション、小粋なフレーズ回しなど、前3作に比べて、格段にレベルが上がっていて、もうこれ以上の演奏はないだろう、そして、この演奏レベルをコンスタントに維持し続けるのは難しい、との判断での「ポール・ウィナーズ・トリオとしての最終作」だと推察する。
 

The-poll-winnersexploring-the-scene

 
それほどまでに、トリオ演奏のレベルは高い。米国西海岸ジャズのレベルの高さ、テクニックの高さ、アレンジの優秀度の高さがこの盤を通して、ビンビンに感じる。東海岸ジャズとは趣きが異なる、西海岸ジャズ独特の個性が、この盤にギッシリ詰まっている。とにかく、米国西海岸ジャズを代表するジャズマン3人の演奏内容は、実にインクレディブルである。

選曲については、当時の「ミュージシャンズ・チューン」を中心に選んでいて、ファンキーな「Little Susie」や「Doodlin」「This Here」が、軽妙なアレンジで小粋に演奏されている。マイルスの「So What」のアレンジはいかにも西海岸ジャズらしい。こんなに小洒落て小粋で捻りの効いたアレンジの「So What」は聴いたことがない。

「The Golden Striker」のレイ・ブラウンのベースのボウイングによる旋律演奏も味がある。メインの演奏部の疾走感も半端ない。バラード曲「Misty」の味わい深い、耽美的かつリリカルな演奏には、思わずじっくり聴き入ってしまう。

米国東海岸ジャズには「無い」トリオ演奏。このポール・ウィナーズ・トリオの諸作は、洒脱で小粋で流麗な、「聴かせる」米国西海岸ジャズの特徴・特質がてんこ盛り。1980年代後半まで、我が国では、米国西海岸ジャズは過小評価されてきたが、このポール・ウィナーズ・トリオの演奏をしっかり聴けば、その過小評価は無くなるだろう。もっともっと広く聴かれるべきポール・ウィナーズ・トリオである。
 
 

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2024年9月 3日 (火曜日)

ポール・ウィナーズの第3弾です

台風10号が迷走し、その影響が関東地方にまで及んで、天気が不安定なこと極まりない。天気を見ながら、散歩に行くことはあるが、雨模様の日は、一日、しっかり引き篭もり。猛暑が少しだけ和らいだと思ったら、天気不安定で、再び引き篭もりである。

引き篭もりの部屋で聴くのはジャズ。酷暑の夏にハードなジャズはしんどいので、軽妙なボサノバ・ジャズなんぞを聴き流していたのだが、気がつけば、なんと9月である。9月になれば、もはやボサノバ・ジャズも無いよな、ということで、ライトで小粋なジャズをということで、米国ウエストコースト・ジャズに走ることにする。

『Poll Winners Three!』(写真)。1959年11月2日、ロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Barney Kessel (g), Ray Brown (b), Shelly Manne (ds)。当時の楽器別ジャズ人気投票で1位(Poll Winner)を獲得した3人が、テンポラリーなトリオ、ポール・ウィナーズ・トリオを組んで録音した企画盤の第3弾。第3弾だからと言って、マンネリな雰囲気は全く無い。
 

Poll-winners-three

 
第1作、第2作と比べて、収録されたスタンダード曲が、一部を除いて、なかなか渋い、マニアックな選曲になっている。が、それがとても良い。この「隠れ名曲」っぽい、渋いスタンダード曲を、聴かせるアレンジを施しつつ、小粋に演奏する様は実に軽妙。加えて、3人それぞれのテクニックが途方もないレベルで、しかし、耳障りにならない流麗さで、歌心満点に演奏する様は実に爽快。

ジャジーによく唄うケッセルのギターには思わず聴き惚れる。唄うが如くの流麗なフレーズを弾きまくるブラウンのベースには思わず、そば耳を立ててしまう。そんな二人の弾き回しを鼓舞し、ブラウンのウォーキング・ベースと共に、演奏全体のリズム&ビートを仕切るマンのドラムには、思わず感嘆の声を上げる。ほんと、この3人、上手い、の一言。

米国ウエストコースト・ジャズの良いところがギッシリ詰まった、素晴らしいトリオ演奏。洗練された三人の絶妙なインタープレイ、効果的にアレンジされたユニゾン&ハーモニー、3者3様の途方もない演奏テクニック。どれをとっても、前の2作より、さらに深化したパフォーマンスがてんこ盛りの秀作。いいアルバムです。
 
 

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2024年8月30日 (金曜日)

Milt Jackson名盤 ”Bags’ Opus”

ミルト・ジャクソンはジャズ・ヴァイブの神様。愛称は「バグス」。このバグスのリーダー作を棚卸しがてら、聴き直しているのだが、バグスのリーダー作の中での名盤・好盤の類について、当ブログでまだまだ記事化されていないものがある。これはいかん、ということで、バグスのリーダー作の記事化のコンプリートを目指して、せっせとアルバムを聴き直している。

Milt Jackson『Bags' Opus』(写真左)。1958年12月28–29日の録音。United Artists レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Art Farmer (tp), Benny Golson (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Connie Kay (ds)。バグスのヴァイブ、ファーマーのトランペット、ゴルソンのテナーがフロントの、バックには、トミフラのピアノ、ポルチェンのベース、ケイのドラムという、燻銀ピアノ・トリオがリズム隊として控えている。

このパーソネルを見て感じるのは、ハードバップ・ジャズのそれぞれの楽器の人気ジャズマンがズラリと顔を並べていて、これはもう、内容充実のハードバップ盤だということ。冒頭の「Ill Wind」で、この曲は、ファーマーのトランペットとゴルソンのテナー抜きの、バグスがメインのカルテットで、しみじみと始まるのが実に良い。バグスのヴァイブの流麗でブルージーで唄うような、染み渡るようなフレーズが映えに映える。
 

Milt-jacksonbags-opus

 
この盤には、ベニー・ゴルソンがいる。ハードバップのアレンジの最高峰の一つ「ゴルソン・ハーモニー」の創始者で、この盤でも、ゴルソン本人の作編曲で、「I Remember Clifford」と「Whisper Not」の2大名曲を、バグスのヴァイブがフロントで聴くことが出来る。これがまあ、名演中の名演で、他の演奏と印象が全く異なる。「I Remember Clifford」と「Whisper Not」って、ヴァイブの音が合うんですねえ。ファンクネス漂い、哀愁感タップリ、歌心満載。改めて感心。

ジョン・ルイス作の「Afternoon In Paris」も、曲の持ち味をしっかり踏まえて、アドリブをかます、バグスのヴァイブは見事だし、バラード曲「Thinking Of You」をやらせれば、バグスの面目躍如、自家薬籠中のもの、情感溢れ、耽美的でリリカル、それでいて、ファンクネスが実に芳しい、バグスならではの優れたバラード演奏を聴くことが出来る。ソロを取っても、バックに回っても、バグスのヴァイブは素晴らしいパフォーマンス。

タイトルの「Opus」から、バグスの名盤のひとつ『Opus De Jazz』を想起して、この『Bags' Opus』って、『Opus De Jazz』の二番煎じかと思ったら、全く違った。思い違いも甚だしい。『Opus De Jazz』が1955年10月の録音なので、この3年間で、バグスは確実に進化していた、ということ。バグスのパフォーマンスについては、この『Bags' Opus』の方が、『Opus De Jazz』の名演に比べて、演奏の深みが増している。
 
 

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2024年8月25日 (日曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その38

しかし、お盆も過ぎて、もうあと1週間で8月もおわるというのに「暑い」。暑い、というより酷暑である。「命が危険な暑さ」が午前中からで、もう朝9時には「命を守る引き篭もり」をせざるを得ない。日差しは強烈で、外に出て日に当たろうものなら、数十秒で露出している皮膚が「ジリジリ」してくる。

「命を守る引き篭もり」が7月の終わりから続いているのだが、引き篭もりの間は、ジャズを聴くか、ブログを整理するか、読書をするか、のいずれか。もちろん、家事はしっかりやっている。

ジャズはエアコンが効いた静かな部屋の中なので、色々な種類のジャズが聴ける。それでも、ハードな内容のジャズを聴いて耳がちょっと疲れた時は、感覚のリフレッシュを兼ねて、夏は「ボサノバ・ジャズ」をかける。

Sérgio Mendes and Brasil '66『Equinox』(写真)。1966年11月8日、1967年2月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Sérgio Mendes (p, org, vo), John Pisano (g), Bob Matthews (b, sitar, vo, Tracks 2–10), William Plummer (b, sitar, vo, Track 1), José Soares (perc, vo), João Palma (ds), Lani Hall, Janis Hansen (vo)。

セルジオ・メンデスとブラジル'66の2枚目のアルバムで、1967年4月にリリースされている。ボーカリストにはラニ・ホールとジャニス・ハンセンが参加している。リーダーのセルジオ・メンデスはピアノと、意外とプログレッシブなオルガンを弾いている。
 

Sergio-mendesandbrasil-66equinox

 
内容的には「ボサノバ&サンバ・ジャズ」で、ボサノバ&サンバのリズム&ビートが優しく心地良い。1966年から1967年の録音なので、ソフトロックっぽい要素も入っていて、出てくる音は意外と新しい感覚に溢れている。全10曲中ブラジル人アーティストの作品が7曲、スタンダード・ナンバーが3曲と「ボサノバ&サンバ」色が濃い。

とにかく、従来からの手垢の付いた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」の音ではない。それがこの盤の最大の個性。ブラジル側からの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」なので、音志向の基本は「ボサノバ&サンバ」。やはり、優れた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」は、アレンジが命であることを再認識する。

そして、女性ボーカルが印象的。「ボサノバ&サンバ・ジャズ」には、女性ボーカルがよく似合う。全編に渡って、女性ボーカルが効果的に入っていて、ちょっとコケティッシュに、ちょっとアンニュイに、気怠く唄う女性ボーカル。「ボサノバ&サンバ」の雰囲気を増強する。

当時のポピュラー作品のカヴァーでお茶を濁して、セールスを追求するのでは無く、ジョビンやジルベルトを始めとした、ブラジル人アーティストの作品で固めた、ブラジル側からの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」の好盤です。
 
 

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2024年8月23日 (金曜日)

ステーシーの酷暑の夏向き好盤

酷暑の8月。毎日の様に「熱中症警戒アラート」時々「熱中症特別警戒アラート」が出まくり、それも朝からのアラート発報なので、朝から終日「命を守るための引き篭もり」をせざるを得ない日々が続く。

エアコンをつけた部屋で、ブログを更新したり、天体写真の画像処理をしたり、録画を見たり、本を読んだりしているのだが、バックに流れる音楽は、やはり「ジャズ」。エアコンをつけていても、なんとなく、外からの熱気は感じるので、爽やかなイメージの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」や「女性ボーカル」、「フュージョン・インスト」のアルバムを選ぶことが多い。

Stacey Kent『Summer Me, Winter Me』(写真左)。2019年5月6日(英国)、8月2日(NY)、12月12日(NY)の3セッションからの収録。ちなみにパーソネルは、Stacey Kent (vo), Jim Tomlinson (ts, fl, cl, g, perc, key), Art Hirahara,Graham Harvey (p), Tom Hubbard,Jeremy Brown (b), Anthony Pinciotti, Joshua Morrison (ds) に「弦楽四重奏」がバックに入っている。

米国出身、英国在住の「現代ジャズの歌姫」ステイシー・ケントの、コンサートで唄った「どのアルバムにも収録されていない曲」をピックアップして収録した企画盤。「その曲はどのアルバムに載っていますか?」という、コンサートの後に、よく訊かれる質問がきっかけとなって企画されたアルバムとのこと。なるほど、ファンからの「リクエスト」に応えた、ファン・サービス的な企画盤なのね。
 

Stacey-kentsummer-me-winter-me

 
選曲傾向がちょっとバラバラやなあ、と感じた理由は良く判った。それでも、ステイシー・ケントのキュートで少しコケティッシュなボーカルと、夫君のジム・トムリンソンのテナーに、音志向に一貫性があって、アルバムとしての統一感はしっかり担保されているところはさすが。

確かに、コンサートで聴いて、あの曲って、どのアルバムに入っていたのか、「もう一度聴きたい」と思わせる様な、曲が、ステイシー・ケントの歌唱が選曲されている。

ミッシェル・ルグランが作曲した映画 「 おもいでの夏 」 のテーマ曲 「Summer Song」 に、アラン&マリリン・バーグマン夫妻が後付けの歌詞を書いた、タイトル曲「Summer Me, Winter Me」、トム・ジョビンのボサノバ名曲 「Corcovado」 、映画「マイ・フェア・レディー」の印象的な挿入歌「Show Me」をはじめとして、全11曲、良い曲ばかりがズラリと並ぶ。

ジャズ界のおしどり夫婦、ステーシー・ケントとジム・トムリンソンの好盤。特にステーシー・ケントのキュートでチャーミングで、少しコケティッシュなボーカルがとても印象的。トムリンソンのテナーも伴奏上手。酷暑の夏に清涼感を呼び込む、好ボーカル盤です。
 
 

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    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
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2024年8月21日 (水曜日)

ボサノバ&サンバ・ジャズの好盤

セルジオ・メンデス(Sergio Mendes)。1941年2月、ブラジル生まれのピアニスト、今年で83歳。作曲家、編曲家、バンドマスター。ボサノバを語る上で、欠かせないレジェンド。

1950年代後半にはジャズで活躍、そしてアントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトの影響を受け、ボサノバに転身。ブラジル国内外でボサノバを演奏。1960年代の世界的なボサノバ・ブームの牽引役となった。

Sergio Mendes『The Swinger From Rio』(写真左)。1964年12月7–9日の録音。ちなみにパーソネルは、Sérgio Mendes (p), Art Farmer (flh), Phil Woods (as), Hubert Laws (fl), Antônio Carlos Jobim (g), Tiao Neto (b), Chico de Souza (ds)。米国ジャズのメンバーと、ブラジル・ミュージックのメンバーの混成編成。

米国ジャズから、アート・ファーマー、フィル・ウッズ、ヒューバート・ロウズが参加。メンデスのピアノ、ジョビンのギターを含めたリズム・セクションはブラジリアン・ミュージックからの参加。セルジオ・メンデス初期のボサノバ&サンバ・ジャズの名盤である。

セルジオ・メンデスは、1950年代はジャズ畑で活躍していたので、ジャズについては造詣が深い。そこに、ジョビンやジルベルトのボサノバ・ミュージックとの邂逅があって、メンデスは、ブラジル側からの、ボサノバ&サンバ・ジャズの担い手となった。
 

Sergio-mendesthe-swinger-from-rio

 
この『The Swinger From Rio』を聴いていて、ボサノバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、演奏全体の志向は「ジャズ」。メンデスのピアノだって、バップなピアノでボサノバ&サンバのフレーズを上手く弾いている。

メンデスのピアノは、ブラジル側からの米国ジャズに向けてのジャズ・ピアノなので、ボサノバ&サンバのリズム&ビートを踏まえて、ボサノバ&サンバなフレーズをジャジーに弾き進めるのに違和感がない。ボサノバ&サンバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、正統派でバップでジャジーな演奏を繰り広げている。

米国ジャズからの参加、アート・ファーマーのトランペット、フィル・ウッズのアルト・サックス、ヒューバート・ロウズのフルートが、あくまで米国ジャズ基調で、ボサノバ&サンバのフレーズを吹きまくる。これが、この盤の「ジャズ」の要素をより色濃いものにしている。

逆に、ブラジル・ミュージックからの参加、メンデスのピアノ、ジョビンのギターを含めたリズム・セクションのリズム&ビートの底に、ボサノバ&サンバの本場のニュアンスがしっかり横たわっていて、米国ジャズがやるボサノバ&サンバのリズム&ビートよりもブラジル色が濃い。この「濃さ」が、この盤を「ボサノバ&サンバを基調とした純ジャズ」に帰結させている。

米国ジャズとブラジリアン・ミュージックとの素敵な融合。ブラジル側から見た「ボサノバ&サンバ・ジャズ」がこの盤にある。ブラジリアンでありながらジャジー。そんな融合の音志向が、この盤の最大の個性である。
 
 

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2024年8月20日 (火曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その37

ボサノバ・ジャズとは、ボサノバの要素を取り込んだ「ジャズ」。リズム&ビートはボサノバのリズム&ビートをジャジーに仕立て直した「ボサノバ・ジャズ」のリズム&ビート。旋律はボサノバの旋律をそのまま取り込み、即興演奏は、ボサノバの持つ個性的なコード進行を取り込んで、ボサノバの響きを宿したアドリブ展開を繰り広げる。

ボサノバ・ジャズは「ジャズ」で、ボサノバでは無い。正統なボサノバを聴きたければ、ボサノバ・ミュージックの名盤を聴くことをお勧めする。

Lee Konitz & The Brazilian Band『Brazilian Serenade』(写真左)。1996年3月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Lee Konitz (as), Tom Harrell (tp), Romero Lubambo (g), David Kikoski (p), David Finck (b), Duduka Dafonseca (ds), Waltinho Anastacio (perc)。

リーダーはアルト・サックスの即興演奏の求道者、リー・コニッツと、現代のバップなトランペッター、トム・ハレルがフロント2管、ボサノバに欠かせないアコギ、そして、キコスキーのピアノがメインのトリオがバックに控える、7人編成でのセッション。

1曲目「Favela」、2曲目「Once I Loved」、5曲目「Dindi」、6曲目「Wave」、7曲目「Meditation」が、アントニオ・カルロス・ジョビン作のブラジリアン・ミュージックの名曲。3曲目に、ボサノバ・ジャズの名曲「Recado Bossa Nova」。残り2曲、4曲目「September」はハレル作、、8曲目の「Brazilian Serenade」はコニッツ作。
 

Lee-konitz-the-brazilian-bandbrazilian-s

 
ジョビンの名曲、ボサノバ・ジャズの名曲、録音メンバーの自作曲、それぞれ、なかなか小粋な曲をしっかりと選んでいる。そして、それぞれの曲に対するアレンジも実に良い。アレンジの方針は「ホサノバ・ジャズ」。ボサノバの持つ雰囲気をしっかり踏襲しつつ、ボサノバに迎合することなく、しっかりとした純ジャズなアレンジがなかなか秀逸。

即興演奏の求道者コニッツのアルト・サックスは切れ味の良いブリリアントな音色で、決して甘くない、純ジャズ志向の堅実硬派なボサノバ・フレーズを吹きまくる。

トランペットのトム・ハレルも同様。正統派なバップ・トランペットで、バップなボサノバ・フレーズを吹き上げる。コニッツもハレルも、ボサノバ・ジャズ志向の吹奏が見事である。

キコスキーのピアノをメインとしたリズム・セクションも良い音を出している。このリズム隊の供給するリズム&ビートは、ボサノバのリズム&ビートをジャジーに仕立て直した「ボサノバ・ジャズ」のリズム&ビートそのもの。上手いなあ。

ホメロ・ルバンボのアコギも地味ながら良い味を出している。やはり、ボサノバ・ジャズにはアコギは必須やなあ。

21世紀を見据えた、ブラジリアンな、ボサノバ基調の夜曲集(セレナーデ)。1962年から、1960年代、1970年代、1980年代と弾き継がれてきた、コンテンポラリーな「ボサノバ・ジャズ」の好例がこの盤に詰まっている。

ヴィーナス・レコードだからと避けて通ってはならない。日本のレーベルが好プロデュースしたボサノバ・ジャズ盤の好盤がここにある。 
 
 

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2024年8月19日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その36

チャーリー・バード(Charlie Byrd)は、ブラジリアン・ミュージックに傾倒した米国ギタリスト。 1925年9月16日、米国バージニア州サフォークにて生まれ、1999年12月2日に74歳で鬼籍に入っている。ゲッツと組んでリリースしたボサノバ・ジャズの名盤『Jazz Samba』はつとに有名。

Charlie Byrd『Brazilian Byrd』(写真左)。1964年12月, 1965年1,2月、NYにての録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Byrd (g, arr), Tom Newsom (arr), Joe Grimm (sax), 演奏者不明だが、弦楽器+木管楽器+管楽器のオーケストラに、ピアノ、マリンバが加わる。プロデューサーはテオ・マセロが担当。

チャーリー・バードの、1964-65年の録音のアントニオ・カルロス・ジョビン特集。バードはラテン音楽やブラジル音楽、特にボサノバに精通していて、チャーリー・バードのリーダー作では、ボサノバ・ジャズでの好盤が多い。この『Brazilian Byrd』は、そんなチャーリー・バードの、優れたボサノバ・ジャズ盤の中の一枚。
 

Charlie-byrdbrazilian-byrd

 
ボサノバ・ジャズは「アレンジが命」と常々思っているが、この盤では、チャーリー・バード自身とトム・ニューサムによるアレンジが効いている。全体に格調高く流麗な、イージーリスニング志向のボサノバ・ジャズが印象的。良好な「ボサノバ・ジャズ」なアレンジに乗って、チャーリー・バードは、耽美的で切れ味の良いギターを弾きまくっている。

「Corcovado」「Jazz 'n' Samba (So Danco Samba)」「The Girl From Ipanema」「Dindi」等々、ジョビンお馴染みのナンバーを、ジャジーで素敵なアレンジとジャジーで印象的なリズム&ビートに乗って、チャーリー・バードが唄う様にギターを弾き進める。特に、オーケストレーションをバックにした、ロマンティックなギターは聴きもの。

ボサノバ・ジャズにはギターの音色がよく似合う。ボサノバ曲の旋律を奏でる時も、ボサノバ風のジャジーなリズム&ビートを刻む時も、チャーリー・バードのギターは、ボサノバの特質と個性をよく理解して、印象的に流麗に弾き進める。イージーリスニング志向のボサノバ・ジャズの名盤の一枚。
 
 

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