2023年3月25日 (土曜日)

西海岸ジャズでホッと一息です

このところ、天気が良くない。加えて、今日などは「寒い」。先週から3月としては暖かすぎる陽気が続いていたが、今日の、ここ千葉県北西部地方の最高気温は「冬」。昨日の最高気温から10℃以上下がったのだからたまらない。外は雨が降り続いているし、こういう鬱陶しい天気の日には、カラッとクールなウエストコースト・ジャズが良い。

Tricky Lofton & Carmell Jones With The Arrangements of Gerald Wilson『Brass Bag』(写真)。1962年、Hollywoodでの録音。ちなみにパーソネルは、Carmell Jones (tp), Lawrence 'Tricky' Lofton, Bob Edmondson, Wayne Henderson, Frank Strong, Lou Blackburn (tb), Wilbur Brown (ts), Bobby Hutcherson (vib), Frank Strazzeri (p), Leroy Vinnegar (b), Ron Jefferson (ds), Gerald Wilson (arr)。

ということで、ウエストコースト・ジャズの「小粋なアルバム」を物色する。それも、ゆったり「ながら」で聴ける感じの盤が良い。そこで選盤したのがこの盤。西海岸ジャズのレジェンド中のレジェンド、名トランペッター&アレンジャーのジェラルド・ウィルソンがアレンジを手掛けた、ウエストコースト・ジャズらしい「聴かせるジャズ」。

5本のトロンボーン・アンサンブルが、この盤のアレンジの「ミソ」。ビッグバンド・ライクな厚みのあるユニゾン&ハーモニーを5本のトロンボーンで表現するという荒技。これぞ「アレンジの妙」。とっても良い「ジャジーな雰囲気」を醸し出している。
 

Tricky-lofton-carmell-jonesbrass-bag

 
この5トロンボーン・アンサンブルに、フランク・ストラゼリのピアノ、リロイ・ヴィネガーのベース、ロン・ジェファーソンのドラムの「西海岸らしい」リズム・セクションが絡んで、とってもジャズっぽく厚みのある、お洒落で小粋なバッキングが成立している。

この小粋なバッキングを背に、カーメル・ジョーンズのトランペット、ウィルバー・ブラウンのテナー・サックス、ボビー・ハッチャーソンのヴァイブがフロントを張って、流麗で小粋で歌心溢れるソロを披露する。これが実に良い。やっぱ、ウィルソンのアレンジが効いているんやろな。聴いていて「ジャズってええな〜」って、リラックスして気持ち良く、出てくる音に身を委ねることが出来る。

特に、カーメル・ジョーンズのトランペットが心地良い響き。「Canadian Sunset」では、思わずウットリと聴き惚れてしまうくらい。タイトル曲の「Brass Bag」での溌剌としたホットなブロウも良い。ブリリアントで滑らかでスッと音が伸びて、運指は流れる様に、フレーズは唄うが如く、カーメル・ジョーンズのトランペットは魅力的。ウィルソンのアレンジがメインの盤なんで、カーメル・ジョーンズの出番がちょっと少ないのが「玉に瑕」かな。

実にウエストコースト・ジャズらしい、優れたアレンジの下、名うての名手達がフロントを張って、印象的なソロを展開する。いわゆる「小粋で聴かせるジャズ」がこの盤にてんこ盛り。この盤を聴いていると、知らず知らずのうちにリラックス出来て、聴き終えた後、必ず「やっぱウエストコースト・ジャズもええなあ」と独り言を呟く。そんな好盤です。
 
 

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 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2023年3月23日 (木曜日)

ユッコ・ミラー『City Cruisin’』

最近、ユッコ・ミラーの新盤を「生活のBGM」で聴くことが多い。彼女のアルト・サックスは素姓が良く、オリジナリティーがある。作曲^アレンジの才にも長け、なかなか聴き応えがある。

そもそも「ユッコ・ミラー」とは何者か、である。エリック・マリエンサル、川嶋哲郎、河田健に師事。19歳でプロデビュー。 2016年9月、キングレコードからファーストアルバム「YUCCO MILLER」を発表し、メジャーデビュー。「サックスYouTuber」としても爆発的な人気を誇る、実力派サックス奏者である。

ジャケ写を見ると、ピンクヘアーの奇抜なルックス、結構、すっ飛んだ出で立ちをしているので「アイドル系、もしくはヴィジュアル系」か、と眉をひそめるジャズ者の方々も多いが、決して、ヴィジュアル指向ではない。確かに、彼女のサックスは正統派なもの、テクニックもブロウも確かなもの。それは彼女のリーダー作を聴けば良く判る。

Yucco Miller(ユッコ・ミラー)『City Cruisin'』(写真左)。2022年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、ユッコ・ミラー (as,vo), 曽根麻央 (p, key), 中村裕希 (b), 山内陽一朗 (ds)。ユッコ・ミラーのアルト・サックスがワンホーンのカルテット編成。メジャー・デビュー後5作目となるアルバム。YouTubeチャンネルの「サックスで吹いてみたカヴァー曲シリーズ」で反響の大きかった楽曲と、ユッコ・ミラー自身によるオリジナル楽曲2曲を収録。

特にこの「カヴァー曲」が秀逸。最近の大ヒット曲、YOASOBIの「夜に駆ける」、Adoの「うっせいわ」、米津玄師「Lemon」、1980年代の我が国のシティポップから、德永英明の「レイニーブルー」、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」、それから、ユニークな選曲としては、アニメの世界から『名探偵コナン』メイン・テーマ、【となりのトトロ】風のとおり道 。
 

Yucco-millercity-cruisin

 
これが素晴らしく良い出来。こういうキャッチャーなヒット曲やテーマ曲をジャズ化すると、どうしても、主旋律のメロディーが印象的に残って、砂糖菓子の様に甘い、聴き心地が良いだけのイージーリスニング風なカヴァー演奏になりがちなのだが、ユッコ・ミラーの場合、そうはならない。アレンジが素晴らしく良くて、しっかりとジャズになっている。

「うっせいわ」や「Lemon」など、その歌の持つ主旋律のメロディーが強烈なので、ジャズ化は難しいのではと思ったが、アレンジが秀逸。主旋律のメロディーの崩しも良いし、アドリブへの展開も自然で滑らかで「取って付けた」感が無い。いや〜、久し振りに「優れた日本のポップス曲のジャズ・カヴァー」を聴いた気がする。

ユッコ・ミラーのアルト・サックスは以前にも増して、力強さ感が溢れていて聴き応えがある。このユッコ・ミラーの正統派なテクニックも十分なアルト・サックスだからこそ、「優れた日本のポップス曲のジャズ・カヴァー」が成立するのだと思う。

当然、フロントのユッコ・ミラーのアルト・サックスがこれだけ鳴っているのだ。バックのリズム・セクションの演奏も、そのアルトの鳴りに呼応して、素晴らしいパフォーマンスを披露している。

このカルテットの演奏の実力の高さは、ユッコ・ミラー作のオリジナル2曲の演奏を聴けば判る。「優れた日本のポップス曲のジャズ・カヴァー」で固めた盤だから、とか、ピンクヘアーの奇抜なルックス、結構、すっ飛んだ出で立ちだから、とかで、この盤を「ゲテモノ」扱いしてはならない。アレンジ、演奏共に、実に良く出来た現代のフュージョン・ジャズの優秀盤です。
 
 

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2023年3月22日 (水曜日)

ブルース以外の何物でもない。

オスカー・ピーターソンの『ハロー・ハービー』や、『シェークスピア・フェスティバルのオスカー・ピーターソン』を聴いていて、とてもジャジーでブルージーなギターを弾く「ハーブ・エリス」のリーダー作を聴きたくなった。そう言えば、しばらく聴いていない。そそくさとライブラリの中から、ハーブ・エリスのリーダー作を探し当てる。

Herb Ellis『Nothing but the Blues』(写真左)。1957年10月11日の録音。Verveレーベルからのリリース。ハーブ・エリスのセカンド・アルバム。ちなみにパーソネルは、Herb Ellis (g), Roy Eldridge (tp), Stan Getz (ts), Ray Brown (b), Stan Levey (ds)。

ギタリスト、ハーブ・エリスがリーダーのクインテット編成。リズム・セクションは、ピアノの代わりに、ハーブ・エリスのギターが入った「ピアノレスのクインテット編成」である。

タイトルを直訳すると「ブルース以外の何物でもない」。このタイトル通り、全編に渡って、コッテコテの「ブルース」基調のハードバップが鳴り響く。まず驚くのは、ハーブ・エリスのギターが思いっ切り「ブルース」しているということ。太い音、固いピッキングで、ブルースなギターを弾きまくる。男気溢れ、骨太で硬派なブルース・ギターを全編に渡って弾きまくる。
 

Herb-ellisnothing-but-the-blues

 
ピーターソンのバックで演奏する時は、ピーターソンのスインギーで疾走するピアノに合わせて、ゴリゴリとバップなフレーズを弾きまくるハーブ・エリスが、この盤では、ゆったりとした余裕あるリズム&ビートに乗って、こってこてブルージーなギターを弾きまくるのだ。これには、初めて聴いた時、ビックリした。とてもハーブ・エリスとは思えない。でも、このブルース・ギターって凄い。

サイドマンも意外性抜群。スイング・ジャズからの中間派トランペッターのエルドリッジ。オールド・スタイルのトランペットで、ブルースに即応している。味わい深い正統なブルース・トランペット。

そして、スマート&ハードバップなテナーのスタン・ゲッツ。スマートで流麗なテナーで鳴らしていたゲッツだが、まず、ゲッツとは判らないほど、ここでは思いっ切りブルースなテナーを聴かせる。こんなにコッテコテにブルースを吹きまくるゲッツはこの盤だけではないかしら。

バーニー・ケッセルやジョー・パス、ジム・ホール等と比べると、かなりの枚数のリーダー作をリリースしているにも関わらず、ただ、我が国ではアルバムが入手しにくいレーベルに偏っていたということもあって、ハーブ・エリスはかなり過小評価されている気がしている。

リーダー作の3分の2以上が、1970年代以降に偏っているかもしれないが、この1970年代以降のリーダー作にも優れた内容の好盤も沢山ある。この『Nothing but the Blues』を久し振りに聞き直して、改めてハーブ・エリスのギターに感心した次第。
 
 

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2023年3月21日 (火曜日)

ソウル, R&B志向のワシントンJr.

Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア、以降「ワシントンJr.」と略)の聴き直しと再評価を進めている。

ワシントンJr.は、あのソフト&メロウなフュージョン・ジャズの名盤『Winelight』のイメージが強くて、我が国では、軟弱でイージーリスニング志向の「スムース・ジャズ」なサックス奏者というレッテルを貼られて久しい。しかし、ワシントンJr.のリーダー作を初リーダー作から遺作まで聴き通すと「それは違うなあ」ということが良く判る。

Grover Washington, Jr.『Reed Seed』(写真)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (sax), James "Sid" Simmons, John Blake Jr. (key), Richard Lee Steacker (el-g), Tyrone Brown (b), Millard "Pete" Vinson (ds), Leonard "Doc" Gibbs (perc), Derrick Graves (arr)。

ワシントンJr. が、多くの好盤を残したkudoレーベルを離れて、モータウンからリリースした「移籍第一弾」。モータウンといえば、ソウル、R&Bがメインのメジャー・レーベルだが、ワシントンJr. は、意外と硬派な「フュージョン・ジャズ」で勝負している。
 

Grover-washington-jrreed-seed

 
が、アレンジの志向としては、ライトな「ソウル、R&B」志向のアレンジがなされており、他の「ソフト&メロウな」フュージョン・ジャズ盤とは一線を画する、ソウルもしくはR&B志向のフュージョン・ジャズがとても個性的。

内容的には実に充実して優れていると思うんだが、我が国では何故か「ソウルもしくはR&B志向のフュージョン」は受けが悪い。この盤も、ワシントンJr.のリーダー作紹介の中で、そのタイトル名が上がることは無い(僕は見たことが無い)。

しかし、である。この盤、ソウルもしくはR&B志向のフュージョン盤として、とても良い内容なのだ。後にサンプリングされている曲もあって、実にナイスな、ライトでアーバンなジャズ・ファンクな志向も見え隠れする。ラストのワシントンJr.作の「Loran's Dance」のファンクネスは実に芳しく、Billy Joelの「Just The Way You Are(素顔のままで)」のソウルフルなカヴァーはとても良い。

ワシントンJr. のサックスは、ライトな「ソウル、R&B」志向のアレンジの中、意外と力強くテクニカル。歌心は当然「抜群」で聴き応えがある。ワシントンJr. の好盤として、再評価すべき好盤だと思います。
 
 

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2023年3月20日 (月曜日)

プレヴィンの晩年を愛でる。

小粋なジャズ盤、それも「ピアノ・トリオ」盤を探していると、必ず出会うピアニストがいる。アンドレ・プレヴィンなど、そんなピアニストの1人で、クラシックのピアニスト&指揮者、そして、ジャズ・ピアニストと「3足の草鞋を履く」音楽家だが、アレンジ能力にも優れ、スタンダード曲やミュージカル曲のジャズ・アレンジは、どれもが素晴らしい。

André Previn with Mundell Lowe & Ray Brown『Uptown』(写真左)。1990年8月22日の録音。ちなみにパーソネルは、André Previn (p), Mundell Lowe (g), Ray Brown (b)。アンドレ・プレヴィンがリーダー格、プレヴィンのピアノとロウのギター、ブラウンのベースという、オールド・スタイルのピアノ・トリオ。

通常、今では「ピアノ・トリオ」と言えば、ピアノ+ベース+ドラムの楽器編成が基本。これは、モダンジャズ・ピアノの開祖「バド・パウエル」が恒常的に採用した編成。それ以前は、ピアノ+ベース+ギターの楽器編成が「ピアノ・トリオ」の基本編成だった。このプレヴィンのリーダー作では、敢えてオールド・スタイルのピアノ・トリオ編成を採用して、3種の楽器に「フロント楽器」としての役割を担わせて、3人それぞれのインタープレイの妙が楽しめる内容になっている。
 

Andre-previn-with-mundell-lowe-ray-brown

 
それにしても、プレヴィンのピアノは上手いし、とってもジャジーだ。プレヴィンと言えば、クラシックのピアニスト&指揮者、そして、ジャズ・ピアニストと「3足の草鞋を履く」アーティストだが、ジャズ・ピアニストとしての能力はかなり高い。クラシック・ピアノ出身らしく「端正で歯切れが良く破綻の無い」ピアノが個性。しかも、ファンクネスは皆無なんだが、オフビートが効果的に効いていて、流麗に弾き回すフレーズがとてもジャジー。

ギターのマンデル・ロウのギターも小粋なバッキング。プレヴィンのピアノとの相性がとても良いみたいで、音がぶつかったり重なったりすることが無い。ロウの職人芸的ギターもこの盤の聴きもの。当然ながら、レイ・ブラウンのベースは素晴らしい。ジャズ・ベースのレジェンド中のレジェンドなんだが、この盤でのブラウンのベースは演奏全体のリズム&ビートをしっかり掌握しコントロールしている。安心安定のブラウンのブンブン・ベースはこれまた聴き応え十分。

選曲も一捻りしていてユニーク。全13曲中、ハロルド・アーレンの曲が6曲、デューク・エリントン関連の曲が6曲と、2つの系統のスタンダード曲で固めていて、不思議な統一感がある。この盤を録音した時、プレヴィンは61歳。大ベテランの域に入ったプレヴィンは、若かりし頃の様に弾き過ぎること無く、余裕ある滋味溢れる流麗で躍動感のあるピアノを弾きまくっている。プレヴィンの晩年を愛でるべき好盤である。
 
 

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2023年3月19日 (日曜日)

小粋なジャズの相性抜群なコンビ

小粋なジャズ盤を探索して聴き漁っているうちに、小粋なジャズ盤に必須の「小粋な演奏」を量産出来る「相性抜群のコンビ」というものが存在するんじゃないか、と思い始めた。オスカー・ピーターソンとハーブ・エリスとか、ビル・エヴァンスとジム・ホールとか、この二人をコンビを組んで演奏すれば、絶対に「小粋なジャズ」が出来上がる。そんな「相性抜群なコンビ」というものがどうもあるみたいなのだ。

『Teddy Wilson Meets Eiji Kitamura』(写真左)。1970年、テディ・ウィルソンが来日時に北村英治とレコーディングしたセッションをLP化したもの。ちなみにパーソネルは、北村英治 (cl), Teddy Wilson (p), 原田政長 (b), Buffalo Bill Robinson (ds), 増田一郎 (vib)。第5回(1971年度)ジャズ・ディスク大賞(スイング・ジャーナル誌主催)最優秀録音賞を受賞した優秀盤である。

ウィルソンと北村が「相性抜群なコンビ」によってつくりあげたスタンダード集。『After You've Gone』(写真右)というタイトルで再発されているものもあるみたいだが、どちらの盤も聴いてみたが違いは無い。冒頭の「On The Sunny Side Of The Street」から抜群に良い雰囲気。リラックスして、穏やかだが力強い。ゆったりとしたスイング感。ゆったりとしたテンポに漂うファンキーなグルーヴ感。
 

Teddy-wilson-meets-eiji-kitamura

 
この盤に漂う抜群のスイング感とグルーヴ感は、北村のクラリネットのウィルソンのピアノによる「賜物」。北村のクラリネットは穏やかだが力強くスインギー。そのバックでリズム・セクションとして北村のクラリネットをサポートし鼓舞するウィルソンのピアノがファンキーでグルーヴィーでスインギー。この二人の相乗効果で、この素晴らしくスインギーで小粋なスタンダード集が出来上がっている。

北村のクラリネットは「スイング・ジャズ」志向。ウィルソンのピアノは「スイングからハードバップ直前の中間派」志向。どちらもハードバップ志向のジャズとは雰囲気が違うが、モダンなジャズには変わりが無い。スタンダード曲の解釈とアドリブ部の展開について、北村とウィルソン双方の嗜好がバッチリ合っているみたいで、二人のユニゾン&ハーモニー、そして、インタープレイに淀みが無い。

こんな「中間派」の小粋なジャズって、聴いていて、ほのぼのして、リラックス出来て、しみじみする。そして、ずっと演奏を聴き進めて行くと、このクインテットの演奏って、それぞれの楽器のテクニックと歌心が抜群で、凄く聴き応えがあるのが判ってくる。こういう「小粋なジャズ」って捨てがたい魅力満載。今でも、たまに引っ張り出しては聴く好盤です。
 
 

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2023年3月17日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・261

以前「幻の名盤」ブームがあって、そこには聴くことはなかなか叶わないが、小粋で味のある雰囲気の、知る人ぞ知る優秀盤のタイトルが多く上がっていた様に思う。しかし、最近、そんな「幻の名盤」の類が、サブスク・サイトからダウンロードで鑑賞出来る様になってきた。良い事である。

Joe Newman with Frank Foster『Good 'n' Groovy』(写真)。1960年3月17日、Van Gelder Studioの録音。ちなみにパーソネルは、Joe Newman (tp), Frank Foster (ts), Tommy Flanagan (p), Eddie Jones (b), Bill English (ds)。ジョー・ニューマンのトランペット、フランク・フォスターのテナーがフロント2管のクインテット編成。

ジョー・ニューマンは、1922年、米国ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。1992年に69歳で鬼籍に入っている。ニューマンの主なキャリアは、カウント・ベイシー楽団の人気トランペッターとして活躍、1967年には、設立に尽力した「ジャズ・インタラクション」の社長に就任した。1970年代から1980年代にかけては数枚のリーダー作を残している。基本的には知る人ぞ知る、玄人好みのトランペッターである。

フランク・フォスターも、カウント・ベイシー楽団の人気テナーマンで、この盤のフロントは、カウント・ベイシー楽団の人気トランペッターとテナーマンがフロントを張っていることになる。そう言えば、ベースのエディー・ジョーンズもカウント・ベイシー楽団の所属ベーシスト。クインテット5人中、3人がベイシー楽団絡みということになる。
 

Joe-newman-with-frank-fostergood-n-groov

 
演奏全体の内容は「ご機嫌なハードバップ・セッション」。モードとかフリーなど、当時のハードバップの先を行く、ジャズ演奏の先進的トレンドに全く関係無く、躍動感溢れるジャジーでバップな演奏がこの盤の最大の個性。

ニューマンのトランペットはブリリアントで水準の上を行くバップ吹奏だし、フォスターのテナーはオーソドックスでオールドスタイルな、モダン・ジャズを地で行くような正統で明らかにハードバップな吹奏。

そして、そこに「名盤請負人」のトミー・フラナガンがピアノで参加している。この盤でのフラガナンは何時にも増して、バップで味のあるモダン・ピアノを聴かせてくれる。速い演奏ではバップなメリハリのある弾き回し、バラードでは典雅で小粋でお洒落なフレーズ連発で、思わず「惚れ惚れ」する。トミフラのピアノは、ニューマンとフォスターの吹奏を見事にサポートして、見事に彩りを添える。そして、トミフラ単体でも、実に魅力的な「小粋な」ピアノを効かせてくれる。

このニューマンのリーダー作、名盤紹介本などでは「トミフラのピアノを聴くべき」アルバムとする向きが多く見受けられるが、どうして、ニューマンのトランペットとフォスターのテナーの寛ぎ溢れる、小粋で味のある吹奏も実に魅力的。アルバム全体の雰囲気、噛めば噛むほど味が出る様な「モダン・ジャズ」は、その魅力満載です。
 
 

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2023年3月12日 (日曜日)

タルのドラムレスのトリオ名盤

CDの時代になって、アルバム1枚単位の収録時間が、LP時代よりも飛躍的に長くなった。それに伴って、LP時代には収録されなかった、お蔵入りの演奏や他のセッションでの演奏を「ボーナストラック(略してボートラ)」として収録されることが多くなった。

すると、困ったことが起きる訳で、LP時代のオリジナル盤に収録されていなかった演奏が追加収録されて、全く違った内容のアルバムになってしまうのだ。これが厄介で、オリジナル盤の「オリジナリティー」が全く損なわれる訳で、このボートラの存在は全くの「必要悪」だと僕は思っている。未収録の演奏は未収録だけを集めた別のアルバムにしてリリースすべきだろう。

Tal Farlow『Tal』(写真左)。1956年3月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Tal Farlow (g), Eddie Costa (p), Vinnie Burke (b)。前作まで、ピアノ入りのカルテット編成で「聴かせる」パフォーマンスだったが、この盤では、ちょっと珍しい、ドラムレスのギター・トリオの演奏になっている。

さて、デビュー当時のリーダー作でのトリオ演奏では、速弾き過ぎて多少拠れようが、難度の高いフレーズを弾き切ってしまう強引さが魅力だったが、この『Tal』では、さすがにスタジオ録音では、リーダー作の5枚目。トリオ演奏に戻しても、タルはデビュー当時の強引さを封印して、余裕のある、テクニカルな弾き回しで、スタンダード曲を魅力的に聴かせてくれる。
 

Tal-farlowtal

 
しかし、タルのフレーズは、スケールの幅が広くて、よく指が届くなあ、と感心する。いわゆる「オクトパス奏法」が炸裂、タルのギターの個性と特徴が最大限に活かされた、スタンダート曲集になっている。ベンドやエフェクターを使用しない、リアルなピッキングが、スタンダード曲の持つ美しい旋律をより一層引き立たせている。

バックのリズム隊、エディ・コスタのピアノ、ヴィニー・バークのベースも良い味を出していて、ドラムがいない分、コスタのピアノが上手くリズム&ビートの供給役をこなしていて、バーグのベースが、演奏全体のベースラインをしっかりと押さえている。ドラムレスということが全く気にならない、全く意識させない、素晴らしいピアノ+ベースのリズム隊である。

このタル・ファーロウの名盤の誉れ高い『Tal』も、CDリイシュー時(2010年だったと思う)、7曲の未収録曲が追加されて、大混乱に陥った。ドラムレスのギター・トリオの傑作、というのが、この『Tal』の定評だったが、追加された未収録曲は、1958年2月NY録音のカルテットの演奏が追加されていたのだ。初めてこのCDリイシューの『Tal』を聴いた人は、それまでの『Tal』の評論文を読んで、かなり戸惑ったのではないか。

もともとのLP時代のオリジナル盤は、先頭の「Isn't It Romantic?」から「Broadway」までの全8曲が、正式な収録曲になる。この8曲が、1956年3月、NYでの録音。そして、以前より名演と言われる「ドラムレスのギター・トリオの演奏」になる。オリジナル盤同様、この8曲に絞ったCDリイシュー、サブスク音源もあるので、『Tal』を純粋に鑑賞しようというのであれば、このオリジナル盤と同じ収録曲、曲順のものが良いだろう。

 

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2023年3月11日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・260

小粋なジャズ盤を探索していると、我が国のジャズ・シーンでは、ほとんど名前が売れていないジャズマンの好盤に出くわすことが多い。

こんなに優れたアルバムを出すジャズマンを僕はこれまで知らなかったのか、と思って慌ててネットでググって見ると、ほとんどが、ビッグバンドで長年活躍していたり、サイドマンがメインで活躍していたジャズマンで、ビッグバンドなど所属するバンドの中に埋没して、その個人名が表面に出てこないのだ。

David Kikoski『Sure Thing』(写真左)。2016年2月3日、ブルックリンでの録音。ちなみにパーソネルは、David Kikoski (p), Boris Kozlov (b)。耽美的でリリカル、バップでモーダルなデヴィッド・キコスキーのピアノと、堅実実直なボリス・コズロフのベースとのデュオ作品になる。

デヴィッド・キコスキーは、1961年、ニュージャージ生まれのジャズ・ピアニスト。今年で62歳のベテランである。1985年辺りから、NYで活動。様々な人気ジャズマンのグループに参加、特に、ミンガス・ビッグ・バンド等の活躍がよく知られるピアニストとのこと。僕はランディ・ブレッカーのグループで、キコスキーの名前を薄らと覚えているが、彼のピアノをじっくりと聴いたことはなかった。

本作は全8曲。キコスキーのオリジナルが4曲、その他の曲は、ジャズメン・オリジナルやスタンダード等。ベースのコズロフは、キコスキーと同じ、ミンガス・ビッグバンドの一員で、ビッグバンドの活動の中で共演している、お互いのことを良く知った間柄。まず、キコスキーのオリジナル曲では、キコスキーとコズロフの2人が、素敵なアレンジの下、お互いの音をよく聴き、お互いの音を引き立たせ、適度なテンションの中、気心知れた即興演奏の妙を繰り広げている。
 

David-kikoskisure-thing

 
ジャズメン・オリジナルは、チック・コリアの「Quartet #1」、ジョン・コルトレーンの「Satellite」を取りあげている。どちらの曲も「ピアノとベースのデュオでやる曲か」と思ったが、聴いてみて、とても上手くアレンジされていて、原曲の雰囲気も残っていて、デュオ演奏としても秀逸。スタンダード曲は「Sure Thing」。これもなかなかにマニアックな選曲だと思うのだが、バップっぽく演奏されていて、これも良い出来だ。

そして、ビックリしたのが「Fugue from “The Endless Enigma”」。聴いていて「これは昔かなり聴いた曲、これはロック」と思って、しばらく聴いていて、エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)の4th.盤『Trilogy(トリロジー)』の中の「永遠の謎」であることに気がついた。即、ネットで調べて見て「ビンゴ!」。このフーガは注目度大。

資料によると、『Trilogy(トリロジー)』は、キコスキーが 12~13歳の頃のお気に入りのアルバムで、ロック・ミュージシャンがブルースやロックンロール、ブギウギやクラシックまでを演奏することに感動、自分もそのようなキーボード奏者になりたかったそうだ。いつかこの曲を演奏をしたかったとのこと。

このEL&PのFugue from “The Endless Enigma”」、キコスキーが言うように、かなりこの曲を聴き込んでいたのが、とても良く判る。原曲のイメージをしっかり押さえつつ、ジャズ化〜デュオ化のアレンジも秀逸、ジャズらしくアドリブ展開も良好、ロック曲の単なるカヴァーでは無い、良好にジャズ化されている。

キコスキーのピアノと、コズロフのベースとのデュオ演奏だが、キコスキーのピアノが前面に出ていて、キコスキーのピアノの個性がじっくりと味わえるバランスになっている。コズロフはキコスキーのフロントとしての演奏のベースラインと、演奏全体のリズム&ビートのコントロールを担っていて、地味ではあるが、堅実なベースで、このデュオ演奏に貢献している。

良いデュオ盤です。ジャズ盤紹介本や、ジャズ雑誌にそのタイトルが上がることがほぼ無い、それでいて、こういう優れた内容のジャズ盤がまだまだ沢山あると思ってます。小粋なジャズ盤の探索は止められませんね。
 
 

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2023年3月10日 (金曜日)

グループ・サウンズ重視のタル盤

タル・ファーロウを聴いている。パッキパキのシングルトーンがなのだが、ファンクネスは控えめ。バップでリリカルな疾走感のあるテクニカルなギターが身上。この辺が他の黒人系のギタリストと一線を画すところ。とにかく、シュッとしていて切れ味の良いシングルトーンでバリバリ弾きまくる。一転、バラード演奏は味のあるシングルトーンのフレーズを響かせて、印象的に唄い上げていく。

『The Interpretations Of Tal Farlow』(写真左)。1955年1月7日、ロサンゼルスでの録音。Tal Farlow (g), Claude Williamson (p), Red Mitchell (b), Stan Levey (ds)。タル・ファーロウのVerveレーベルからの第3弾。バックのピアノ・トリオは、米国ウェストコースト・ジャズの精鋭達で編成されている。演奏の基本は「ウエストコースト・ジャズ」。いわゆる「洒落たアレンジで聴かせるジャズ」である。

スタンダード曲中心の選曲。これが実に良い。これまでのタルのリーダー作3枚は、どちらかと言えば、タルの弾きまくり、タルの高速テクニック、バップなフレーズがメインだったが、このリーダー作4作目『The Interpretations Of Tal Farlow』は、それまでのリーダー作と趣きが違う。バックのリズム隊が、ウィリアムソンのピアノ、ミッチェルのベース、レヴィーのドラムと、ウエストコースト・ジャズを代表するピアノ・トリオ、という影響もあるのだろうか。
 

The-interpretations-of-tal-farlow

 
この盤でのタルは、バリバリ弾くというよりは「じっくり味わい深く」弾いている。速いフレーズもゆったりとしたフレーズも、じっくり味わい深く弾き進めている。もともとテクニックに優れ、歌心を備えたギタリストである。そんなギタリストが腰を据えて「じっくり味わい深く」スタンダード曲を弾くのだ。良いに決まってる(笑)。

この盤の「キモ(肝)」は、バックのリズム隊。ウィリアムソンのピアノが効いている。タルのギターとの相性が良い様で、タルのバックに回って、タルのギターを引き立て、タルのギターの良き相棒の如く、心地良いユニゾン&ハーモニーを奏でている。そこに、西海岸の職人ベーシストのミッチェルが演奏の底を支え、西海岸の技のドラマー、レヴィーが演奏全体のリズム&ビートをリードする。この西海岸の精鋭リズム隊をバックに、タルは気持ちよさそうにギターを弾き進めている。

ジャケットもお洒落で良い。アレンジ良し、演奏良し、ジャケット良し。ジャズ・ギターの紹介本や紹介記事に、あまりそのタイトル名が上がることがほどんど無いアルバムだが、タルのギターで、グループ・サウンド重視でスタンダード曲を聴くのに最適なアルバムだと思う。タルのギターが少し引っ込むが、その分、グループ・サウンズ・トータルとして内容が充実したアルバムでしょう。
 
 

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