2023年11月27日 (月曜日)

ヴァーヴのウエスは只者では無い

ウエス・モンゴメリーのリーダー作に駄盤は無い。ウエスの場合、初リーダー作にして、彼のギターのスタイル、個性が完璧に確立されていて、リーダー作を重ねるごとに、そのテクニックが段階的に向上していって、ピークを迎えた後、急逝するまで、そのピークな状態を維持し続けた。つまり、ウエスは、そのギターのスタイル、個性、テクニックがピークに達したまま、鬼籍に入ったことになる。

Wes Montgomery『Movin' Wes』(写真左)。1964年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Bobby Scott (p), Bob Cranshaw (b), Grady Tate (ds), Willie Bobo (perc) 、ウエスがフロントのカルテット編成+パーカッションがメインで、バックに3トランペット、4トロンボーン、2チューバのブラス・セクションが付く。そして、異色の楽器として、Jerome Richardson (woodwinds) が入っている。

この盤は、ウエスがヴァーヴ・レコードに移籍した後、第一弾のリーダー作になる。プロデューサーは、後のCTIの総帥プロデューサーのクリード・テイラー。ジョニー・ペイトがアレンジを担当している。パーソネルを見ても分かる通り、プロデューサーの名前を見ても分かる通り、演奏の編成から聴こえてくる音は「イージーリスニング・ジャズ」。
 

Wes-montgomerymovin-wes

 
ただし、ウエスの「イージーリスニング・ジャズ」は只者ではない。とにかく、ウエスがギター弾きまくっている。ギター一本がフロントなので、フロント旋律は「細身」なのかと思いきや、ウエスのギターの旋律は太くて切れ味抜群、奏でる旋律がブラス・セクションの音をバックにくっきり浮かび上がってくる。ブラス・セクションの助けを借りての「イージーリスニング・ジャズ」では無い。ブラス・セクションをウエスのギターの「引き立て役」にして、ガッチリ従えている。

冒頭の有名スタンダード曲「Caravan」を聴けば、それが良く判る。「Caravan」は、フロント楽器の超絶技巧なテクニックが映える名曲だが、この曲でのウエスの引き回しは凄い。切れ味の良い、鬼気迫る弾き回しながら、そのテンションは軽やか。凄いテクニックで弾き回しているのに、それが耳につかない、どころか、心地よい響きで耳に伝わってくる。そして、そんなウエスの弾き回しが、ブラス・セクションを従えることによって、さらに引き立つ。

ヴァーヴ・レコードは大手ジャズ・レーベルだけあって、大衆にアピールし訴求する「売れるイージーリスニング・ジャズ」をウエスに求めた。そして、ウエスはその要求に応え、さらに、ウエスのスタイルと個性とテクニックで、その「イージーリスニング・ジャズ」をアーティステックな、メインストリーム志向の純ジャズのレベルに押し上げている。改めて、ウエスの「イージーリスニング・ジャズ」は只者ではない。
 
 

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  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2023年11月24日 (金曜日)

『Con Alma』を傾聴する。

レイ・ブライアントの代表盤といえば、これまでのジャズ盤紹介本では、押し並べて『Ray Bryant Trio』(Prestige)』と『Ray Bryant Plays』(Signature) の2枚ばかりが上がる。ただ、この2枚でのブライアントは、彼のピアノの個性と特徴が抑制され、ラウンジ・ピアノっぽい弾き回し。トリオ演奏としては聴き味は良いが、ブライアントのピアノとしては、個性と特徴が抑えられていて「隔靴搔痒」の感が強い。

レイ・ブライアントの活動期間は、リーダー作ベースで見ても、1955年から1999年と、約半世紀に渡る。そんなレジェンド級のジャズ・ピアニストの代表盤が、1956年リリースの『Ray Bryant Trio』(Prestige)と、1959年リリースの『Ray Bryant Plays』(Signature) の2枚だけというのは、ちょっとなあ、と思う。レイ・ブライアントのリーダー作を全部聴けば、もっとブライアントらしい代表盤があるんだが....。

Ray Bryant『Con Alma』(写真)。1960年11月25日と1961年1月26日の録音。大手Columbiaレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ray Bryant (p), Arthur Harper (b, tracks 2 & 4), Bill Lee (b, tracks 1, 3, 5 & 7–9), Mickey Roker (ds, tracks 1–5 & 7–9)。基本はピアノ・トリオ編成。ブライアントの自作曲「Cubano Chant」1曲だけ、ピアノ・ソロ。
 

Ray-bryantcon-alma

 
この盤は、全9曲中、スタンダード曲&ミュージシャンズ・チューンが7曲。ブライアントの自作曲も「Cubano Chant」はスタンダード志向のミュージシャンズ・チューンなので、この盤の全体の雰囲気は「ブライアントのスタンダード曲集」と解釈して良いだろう。スタンダード曲も選曲が良い。「Milestones」「Round Midnight」「Django」「Autumn Leaves」など、ブライアントが弾いたらどうなるか、と興味を強く引く選曲なので、聴いていて面白い。

ブライアントのピアノの個性である「アーシー、ファンキー、ゴスペル・フィーリング、強いタッチに強調されたオフ・ビート、良く歌う右手」で、スタンダード曲を弾き進めると、そのブライアントのピアノの個性がより濃厚に伝わってくる。アレンジに、もひと工夫もふた工夫もしていて、それぞれのスタンダード曲&ミュージシャンズ・チューンが、明確にブライアント仕様になっている。

ブライアントのピアノは基本的に「ファンキー・ジャズなピアノ」。そんなブライアントの個性と特徴が、この「ブライアントのスタンダード曲集」で明確に理解できる。僕が思うに、この『Con Alma』も、レイ・ブライアントの代表盤である。
 
 

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2023年11月23日 (木曜日)

『Little Susie』を聴き直す。

レイ・ブライアントは、僕の大のお気に入りのピアニスト。オフビートでファンキーな弾き回しが見事な右手、低音を効果的にゴンゴーンと入れて、ベースラインに強烈なファンクネスとアーシーなビートを醸し出す左手。演奏のフレーズに「ダウン・トゥ・アース」な雰囲気をしっかりと漂わせる弾き回し。そんな「ブライアント節」僕は大好き。

レイ・ブライアントの代表盤といえば、これまでのジャズ盤紹介本やジャズ盤紹介記事では、押し並べて『Ray Bryant Trio』(Prestige)と『Ray Bryant Plays』(Signature) の2枚ばかりが上がるが、これには僕は「疑問符」である。どうして、そうなるのか、理解に苦しむ。

この2枚でのブライアントは、彼のピアノの個性と特徴が抑制され、柄にもなく、ラウンジ・ピアノっぽい弾き回し。トリオ演奏としては聴き味は良いが、ブライアントのピアノとしては、個性と特徴が抑えられていて「隔靴搔痒」の感が強い。

Ray Bryant『Little Susie』(写真)。1959年12月10日と1960年1月19日の録音。大手のColumbiaレコードからのリリース。『Ray Bryant Plays』(Signature) から、僅か1ヶ月後の録音。ちなみに、パーソネルは、Ray Bryant (p) Tommy Bryant (b) Oliver Jackson (ds)。一ヶ月前の録音の『Ray Bryant Plays』と同じ面子での録音。
 

Ray-bryantlittle-susie_1

 
『Ray Bryant Plays』(Signature) の録音から、たった1ヶ月後なのに、こちらの『Little Susie』は内容が濃い。収録曲すべてにおいて、ブライアントのピアノの個性が、特徴が乱舞している。恐らく、プロデュースの問題だろう。ブライアントのピアノの個性が最大限に発揮されていて、聴いていてとても楽しい。

特に、冒頭1曲目の表題曲「Little Susie」は、ブライアントの愛娘の為に作った曲なんだが、実に愛らしく躍動的なテーマをベースに、ブライアントのピアノの特徴である「アーシー、ファンキー、ゴスペル・フィーリング、強いタッチに強調されたオフ・ビート、良く歌う右手」が心ゆくまで堪能できる。ブライアントのピアノの個性と特徴はこの1曲に集約されている、と言って良いほどの演奏。これ、本当に「良い」。

2曲目以降の演奏も、冒頭の「Little Susie」に勝るとも劣らない、ブライアントのピアノの特徴である、右手のアドリブの展開も特徴的で、オフビートを強調しつつ、右手の取り回しに含みと間を持たせつつ、一気にフレーズを弾き切るというドライブ感を増幅させる弾き方が「てんこ盛り」。

愛娘とのツーショットの写真も微笑ましいアルバム・ジャケットも良好で、このアルバムは、僕の大のお気に入り。アルバム全編に渡って、ブライアントのピアノの個性と特徴がしっかりと感じ取ることが出来る。僕が思うに、これぞ代表盤、である。
 
 

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2023年11月18日 (土曜日)

ジョン・ルイス meets 西海岸

ジョン・ルイスのピアノが好きである。ジョン・ルイスは、一流のジャズ・ピアニストであり、クラシックの様々な音楽理論にも精通した、アーティステックな音楽家である。Modern Jazz Quartetでは、弦楽四重奏的な演奏手法を取り込み、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジしたり。ジョン・ルイスは、芸術性を前面に押し出したジャズ・ミュージシャンの代表格であった。

ジャズをアカデミックな音楽ジャンルとして捉え、クラシックの手法などに精通している、のが気に入らないとかで、昔の硬派な「4ビート東海岸のモダン・ジャズ絶対主義」のジャズ者の方々からは敬遠されていた節がある。

かなり偏った評価だが、昔はそういう「ジャズの許容量が狭い」ジャズおじさんが沢山いた。ジョン・ルイスは嫌い、MJQはもっと嫌い。個人個人の感じ方なので、それはそれで良いのだが、大きな声で悪口を並べるのは良くない(笑)。

John Lewis『Grand Encounter』(写真)。1956年2月10日、ロスアンゼルスでの録音。Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Lewis (p), Bill Perkins (ts), Jim Hall (g), Percy Heath (b), Chico Hamilton (ds)。サブタイトルが「2° East / 3° West」。ジョン・ルイスとパーシー・ヒースの二人が「東海岸」、ビル・パーキンス、ジム・ホール、チコ・ハミルトンが「西海岸」。
 

John-lewisgrand-encounter

 
まさに、東海岸ジャズマンと西海岸ジャズマンとの「豪華な出会い」である。フロントのテナーとギター、ドラムが「西海岸」なので、演奏全体の音作りは「ウエストコースト・ジャズ」志向になっていると思いきや、どこか「イーストコースト・ジャズ」のファクネスやブルージーな雰囲気が漂っているところが面白い。

まず、それだけ、ジョン・ルイスのピアノが「黒い」のだ。クラシックの手法に精通しているのにも関わらず、ルイスのピアノは「黒い」、つまりジャジーなのだ。加えて、紡ぎ出すフレーズがそこはかとなくファンキー。そんな「黒い」ピアノで、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジする。そんなアンバランスな魅力というか、ジャズのボーダーレスな特質が具現化されているというか、そいうところが、ジョン・ルイスのピアノの魅力。

もともと、ジョン・ルイスの作曲する楽曲は「聴かせる」楽曲。そういう点では、西海岸向きだと言える。そんなジョン・ルイスの楽曲が西海岸のジャズマンと共演することで、映えに映える。西海岸ジャズマンは「聴かせる」ジャズの演奏表現に長けているので、ジョン・ルイスの曲を全く違和感なく、聴き手に訴求する「聴かせる」演奏を展開している。

ジャズは「融合」の音楽ジャンル、他の音楽ジャンルの取り込みに長けるところが長所なのだが、この盤は、東海岸ジャズと西海岸ジャズとの融合。ジョン・ルイスのピアノと作曲センス、パーシー・ヒースの「聴かせるベースラインは西海岸、出てくる音は東海岸」というベースが西海岸ジャズにピッタリ合って、素敵な「融合」ジャズがここに記録されている。
 
 

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2023年11月17日 (金曜日)

R・ブライアントの初リーダー作

ジャズ演奏の中では、ピアノの演奏が一番お気に入り。子供の頃、10年間ほどピアノを習っていたということもあって、ピアノについては聴くだけでは無く、弾く難しさも多少理解できるので、ジャズ・ピアノは他の楽器より、その内容が理解し易い。そういう点からも、ジャズ・ピアノが一番好きなんだろうな、と思う。

ジャズ・ピアニストについては、好きなピアニストは多々いるが、ジャズを聴き始めた50年ほど前から、レイ・ブライアントがお気に入りのピアニストの一人。で、その「レイ・ブライアントの初リーダー作」を追い求めていたのだが、やっとその音源を確保することが出来たのが5年ほど前。今日は、その「レイ・ブライアントの初リーダー作」のお話を。

Betty Carter And Ray Bryant『Meet Betty Carter And Ray Bryant』(写真)。1955年5月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Betty Carter (vo), Ray Bryant (p), Jerome Richardson (fl), Wendell Marshall (b), Philly Joe Jones (ds)。レイ・ブライアントのディスコグラフィーからすると、この盤が初リーダー作になるという。

この盤の構成が面白くて、ブライアントのトリオ演奏と、ベティ・カーターのボーカル入りのトリオ演奏と交互に入っている。ベティ・カーターも共同名義のアルバムなので、年齢からして、ベティ・カーター先攻で始まると思って構えていたら、ブライアントのトリオ演奏が冒頭に来るので、ちょっと拍子抜け(笑)。

しかし、この冒頭のトリオ演奏「Sneaking Around」はブライアント作の曲で、これがなかなか「イケる」。この冒頭の「Sneaking Around」から、3曲目「What Is This Thing Called Love?」のブライアント・トリオの演奏を聴いていると、レイ・ブライアントのピアノの演奏スタイルは、この初リーダー作時点で確立されていたことが判る。
 

Betty-carter-and-ray-bryantmeet-betty-ca

 
オフビートでファンキーな弾き回しが見事な右手、低音を効果的にゴーンと入れて、演奏のベースラインに強烈なファンクネスとアーシーな雰囲気を醸し出す左手。演奏のフレーズに「ダウン・トゥ・アース」な雰囲気をしっかりと漂わせる。このアーシーでダウン・トゥ・アースなピアノの弾き回しが僕は大好き。そんな「ブライアント節」が、この初リーダー作のトリオ演奏に既にしっかりと存在している。

そして、ベティ・カーターについても、この盤が初リーダー作になるらしいが、そんな雰囲気は微塵もない。既にベテランの様な堂々とした唄いっぷり。ボーカルに張りとパンチがあって歯切れが良いところは「若さ」から来るのか、とも思うが、とにかく唄いっぷりは堂々としている。そんな堂々とした唄いっぷりを支えているのが、ブライアント・トリオの小粋なバッキング。

レイ・ブライアントは伴奏上手、という印象は以前から持っているが、この初リーダー作にして、その「伴奏上手」が炸裂しているとは思わなかった。確かに「伴奏上手」。カーターのボーカルを邪魔することなく、効果的にサポートし鼓舞する。カーターはとても唄いやすそうで、自然体で流れる様に唄い上げている。

最後に、この盤は当初。LPでのリリース時には、収録曲は全12曲。CDリイシューの際に、LP時代の内容をそのままに復刻しているCDと、ボーナストラックを加えて、曲順もLP時代と全く変えてリイシューしているCDとある。

この盤を聴く時は、LP時代の内容をそのままに復刻しているCDを聴いて欲しい。サブスクの場合は、冒頭の1曲目が「Sneaking Around」で始まり、12曲目が「Can't We Be Friends?」のもの。これ、ボートラが後ろにくっついている場合があるが、このボートラは無視して下さい(笑)。
 
 

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2023年11月 2日 (木曜日)

ジャム・バンドなジョンスコ再び

ジョン・スコフィールド(John Scofield、以降、略して「ジョンスコ」)という、ほぼレジェンド級のギタリストって、フュージョン・テイストのコンテンポラリーなジャズから入って、ジャズ・ファンク、そして、ワールド・ミュージック志向なニュー・ジャズをやったり。個性的な、良い意味で「捻れた変態エレギ」を駆使して、新しいジャズ・ギターのイメージを拡げてきた。

John Scofield『Uncle John's Band』。2022年8月、米ニューヨーク州ラインベックのクラブハウス・スタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Vicente Archer (b), Bill Stewart (ds)。円熟の「ジャム・バンド仕様」盤だった『Combo 66』(2018年4月録音)のパーソネルからピアノを抜いたトリオ編成。

デビュー当時から、メンストリーム・ジャズ、ジャズ・ファンク、ジャム・バンド、この3つの演奏トレンドを行ったり来たりして、数々の名作を送り出してきたが、今回の新盤の基本コンセプトは「ジャム・バンド」。収録された演奏曲を見ると、いやはかバラエティーに富んでいることおびただしい(笑)。こんな曲がジャズになるんや、と感心する選曲ばかりが並ぶ。これ、ほんとに凄い。全ての収録曲が見事に「コンテンポラリー・ジャズ」化されている。

1970年台のロック曲から「Mr. Tambourine Man」(Bob Dylan) から、ニール・ヤングの「Old Man」(Neil Young)、「Uncle John's Band」(Grateful Dead) 。ミュージカル曲は「Somewhere」(From West Side Story, Leonard Bernstein)。ジャズのスタンダード曲からミュージシャンズ・チューンについては「Budo」(Miles Davis)、「Stairway To The Stars」や「Ray's Idea」。そして、スウィング、ファンク、フォークなど様々な要素を取り入れたジョンスコのオリジナル曲。
 

John-scofielduncle-johns-band

 
トリオとしての演奏レベルが非常に高く、かつ流麗。今回はピアノレスだが、その効果が如実に現れている。リズム&ビートがシンプルになった分、ジョンスコの「捻れ」エレギの個性が浮かび上がる。そんなジョンスコの「捻れ」エレギが、印象的な即興フレーズを流麗に力強く弾き進めていく。

バックのリズム隊も秀逸。ジョンスコの「捻れ」エレギの個性が浮かび上がる様な、硬軟自在、変幻自在なリズム&ビートは聴き応え十分。ジョンスコとの相性も良く、フロントのジョンスコのエレギを引き立て、鼓舞する。このリズム隊があって、ジョンスコは流れるような力感溢れる即興フレーズを気持ちよく弾き進めることが出来るのだろう。

今回はCDにすると2枚組のボリューミーな意欲作。次から次へと演奏が進み、プレイバックして捨て曲がなかったのだろう。確かに全14曲、緩んだところ、マンネリなところは全く無い。ジャズ者の方々のみならず、ジャム・バンドのファンの方々にも訴求する優れたアルバム。

しかし、こういう内容のアルバムがECMレーベルから出るとはなあ。総帥プロデューサーのマンフレート・アイヒャーの許容範囲も広くなったもんだ、と感慨に耽る秋の夕暮れ、である。
 
 

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2023年10月31日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・267

グローバル・レベルで見ると、ジャズ・ギタリストについては、新しい世代の「跡を継ぐもの」として、それぞれの時代でメジャー・デビューする新進気鋭のギタリストが現れ出てくる。が、我が国では、それぞれの時代でメジャー・デビューしてくる新進気鋭のジャズ・ギタリストの数は少ない。

日本のジャズ・ギタリストは、と問われたら、まず頭に浮かぶのが、渡辺香津美、増尾好秋、川崎燎、井上銘、小沼ようすけ、くらい。圧倒的に数が少ない。現在、第一線で活躍しているメジャーな存在は、井上銘、小沼ようすけ、辺りかな。

しかし、地方やライブハウスをメインに活動している「マイナーな存在」に目を向けると、我が国の中でも意外と多くのジャズ・ギタリストが存在する。ネットのアルバムのニュー・リリースの情報を見ていると、時々、単発でリーダー作をリリースしたりするので、その存在をキャッチでき、そのリーダー作を拝聴できたりする。良い時代になったものだ。

竹田一彦『St. Louis Blues』(写真左)。2022年6月2日、京都「BF Garden Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、竹田 一彦 Kazuhiko Takeda (g), 神田 芳郎 Yoshirou Kanda (b)。実に渋い内容のギターとベースのデュオ演奏。

竹田一彦は、1936年奈良県天理市生まれ。関西地方をメインに、1950年代後半から現在まで、65年に渡り活躍を続けてきた関西ジャズ界の重鎮ジャズマン、ベテラン・ギタリスト。今年で87歳。今回、新リリースの『St. Louis Blues』は、昨年の録音なので、86歳でのパフォーマンスになる。今回は、たまたま、この新リーダー作をアップル・ミュージックで見かけて、即日、拝聴した。
 

St-louis-blues

 
一言で言うと「凄くクールで渋い」ジャズ・ギターが堪能できる優秀盤。コクのある味わい深いトーン、切れ味よく微妙にノイジーでジャズっぽいフレーズ。テクニックは確か、アドリブ展開は流麗かつアーシー&ブルージー。極上の本格派、メインストリーム志向のジャズ・ギター。冒頭のタイトル曲「St. Louis Blues」を聴くだけで、この竹田と神田のデュオ演奏の世界に引き込まれる。

ソリッドで鋼性の高い、弾力あふれる重低音のアコースティック・ベースがイントロを担う。そこに、適度なテンションを張った、切れ味よく、芯の入った、アーシーでブルージーな竹田のギターが絡んでくる。凄くクールで渋いフレーズの連発。

ギターとベースのデュオなので、演奏の基本は「静謐の中のダイアローグ」。時にユニゾン&ハーモニー、時にウォーキング・ベースをバックにギターのソロ、時にギターのリズムをバックにベースのソロ。職人芸よろしく、高いテクニックに裏打ちされた充実のフレーズ展開。

シンプルでリリカルでアーシーでブルージー、こんな魅力的なジャズ・ギターがあるんや、と感心を通り越して「感動」した。小粋なスタンダード曲をメインに、竹田のアーシーでブルージーなギターが、唄うがごとく、囁くがごとく、語るがごとく、弾き進んでいく。そこにピッタリ寄り添い、フレーズの「底」を押さえ支える神田のベース。

これはこれは、素晴らしい内容のギター&ベースのデュオである。今は晩秋、晩秋の夜に一人耳を傾けるジャズ盤に最適な一枚。良いアルバムに出会えた。心がほっこり暖かくなる。
 
 

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2023年10月25日 (水曜日)

「たをやめオルケスタ」の最新盤

ビッグバンドには、そのバンド毎に「志向」がある。とにかく、アーティステックにストイックにビッグバンドの「芸術性を追求するバンド」。エリントンやベイシーなどのレジェンドなビッグバンドの音を「研究〜現代で再現しようとするバンド」。元々はダンス・ミュージックなのだからと、多人数のアンサンブルやユニゾン&ハーモニーを楽しみ、ソロ演奏を楽しむ「エンタテイメント性を追求するバンド」などなど。

ビッグバンドの音は追求すればするだけ面白いのだが、多人数がゆえ、バンド全体の運営が厳しい。世界的に見ても、テンポラリーにビッグバンドを編成し、演奏することはままあっても、恒常的にバンド活動を維持し、コンスタントにアルバムをリリースしているビッグバンドは数少ない。我が国においては、宮間利之ニューハード、東京キューバンボーイズ、ちょっとジャズから外れるが、東京スカパラダイスオーケストラ。メジャーなところでこれくらいしか、名前が浮かばない。

たをやめオルケスタ『祝宴フィフティーン』(写真左)。2023年9月のリリース。 活動15周年を迎える女性16名のビッグバンドの最新フル・アルバム。2021年にリリースされた二枚の7inchに納められた楽曲を含む計11曲を収録。

「たをやめオルケスタ」とは、女性のみで構成されるトロピカル楽団として、岡村トモ子 (as, fl) を中心として2008年に結成。「たおやめ」は「手弱女」と書くのだが、どうして、迫力のあるブロウ、力感溢れるアンサンブル、ドライブ感豊かなユニゾン&ハーモニー、手に汗握るインタープレイと、その音だけ聴けば、女性のみで構成されるビッグバンドとは思えない。
 

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収録された楽曲を見渡すと「Take the A train」「Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)」「A Night in Tunisia(チュニジアの夜)」などの有名ジャズ・スタンダード曲や、ラテン・ジャズやカリプソ、アフター・ビートルズ、アメリカン・ポップス、はたまたヒップホップなどの楽曲をカヴァーしていて楽しい。そして、このバラエティーに富んだ楽曲を、工夫とアイデアに富んだアレンジで、とっても楽しいビッグバンド曲に変身させている。

じっくり聴いてみて、とにかく演奏テクニックが確か。とにかく上手い。揺らぎもなければ、ふらつきもない。一糸乱れぬユニゾン&ハーモニー、ズレのないバッチリ合ったアンサンブル。音の迫力、音の厚み、音の輝き、どれをとってもビッグバンドとして一級品。ソロイストのパフォーマンスも及第点(ちょっと安全運転風。ライヴだと違うのかな)。

そして、このビッグバンドの一番は「聴いていて楽しい」こと。適度なスイング感、アクセント確かダンサフルなオフビート、そして、流麗で明るいフレーズ。そんなビッグバンドが、デューク・エリントンの「Take the A train」や、ジョージ・ハリソンの「I've Got My Mind Set On You」、カーペンターズの「Close to You」なんかをブイブイやるのだ。聴いていて楽しいことこの上ない。たをやめオルケスタって「エンタテイメント性を追求するバンド」の優れものである。

たをやめオルケスタ。バンド名だけは知っていたが、こんなに素晴らしいビッグバンドだとは知らなかった。スミマセン(笑)。結成以来15年というが、その間、たをやめオルケスタの音源に全く出会えなかったのだから、こういうこともあるもんだなあ、と(笑)。今回、やっと、たをやめオルケスタの音源に出会えた。聴いて思う。良いビッグバンドに出会えたと....。
 
 

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2023年10月23日 (月曜日)

キャリントンの幻の初リーダー作

ジャズの世界では1940年代から、女性の活躍がある。ボーカリストから始まって、ピアニスト、ベーシスト、ドラマー、そして、サックス奏者、トランペット奏者、などなど、知る限りでは、ジャズの楽器のほぼ全てにおいて、女性ミュージシャンが存在している。これは素晴らしいことで、才能さえ伴えば性別は関係ない、は、ジャズにおいては、もはや「常識」である。

Terri Lyne Carrington(テリ・リン・キャリントン)。1965年8月4日生まれ。米国マサチューセッツ州出身。ジャズドラマー。ジャズにおける第一線級の女性ジャズ・ドラマー。バークリー音楽大学の教授も務める才媛。僕は彼女の名前とドラミングを、Wayne Shorter『Joy Ryder』で知った。スインギーではない、テクニカルなスクエアなノリの、圧倒的なグルーヴ感と硬軟自在、緩急自在な「攻めるドラミング」が個性。

Terri Lyne Carrington『TLC & Friends』(写真左)。1981年10月19日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Terri Lyne Carrington (ds, arr), George Coleman (ts), Kenny Barron (p), Buster Williams (b)。

パーソネルを見て、思わずビックリ。今の目で見ると「大御所」ばかりではないか。録音当時、ピアノのバロンは38歳、テナーのコールマンは46歳。ベースのバスター・ウィリアムスは39歳。リーダーのキャリントンが16歳だから、まさに「親子」ほど年齢差のある、キャリントンの早熟さが際立つパーソネルである。

さて、この盤は、キャリントンが1981年16歳の時に自主制作した未発表デビュー・アルバムになる。今回、キャンディッドより初のオフィシャル・リリースがなされた。いわゆる「幻の初リーダー作」である。
 

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この16歳当時のキャリントンの初リーダー作を聴いて、キャリントンのドラミングの個性をしっかり把握することができた。弱冠16歳の初リーダー作である。飾り気のない、真っ正直な才能の開花が感じられる。とにかく、実に楽しそうにハイレベルなドラムを叩いている。この錚々たる共演者を前にして、である。

父ソニーがプロデュースを務め、サックスのジョージ・コールマン、ピアノのケニー・バロン、ベースのバスター・ウィリアムスらの「強者」達と堂々としたインタープレイを繰り広げる。このドラミングで16歳のものかいな、と半ば呆れた(笑)。

どこかでこの様なシチュエーションがあったなあ、と思ったら、18歳で鮮烈なデビューを飾った、トニー・ウィリアムスのデビュー当時のドラミングだ。しかし、このキャリントンのドラミングはトニーより2歳若い。これは凄いなあ、と思わす聴いていてウキウキする。

コール・ポーターの「What Is This Thing Called Love?」から始まり、キャリントン自作の「La Bonita」、マイルスの「Seven Steps To Heaven」、ロリンズの「St. Thomas」「Sonny Moon For Two」、そして、ビリー・ジョエルの名曲「Just The Way You Are」がカヴァーされている。スタンダード曲から、ミュージシャンズ・チューン、そして、ロック・ポップスまで、なんとケレン味のない、楽しい選曲だろう。

キャリントンは、これらの聴いて楽しい楽曲の中で、実に楽しそうにドラムを叩いている。そして、共演の「父親の様な」強者ジャズマン達が、つられて、いつになく楽しそうに朗らかに演奏しまくっているのが、実に微笑ましい。

これだけ楽しそうで朗らかで明るい純ジャズな展開なので、パーソネルを確認するまでは、キャリントンと同世代か兄姉レベルの年齢のメンバーで和気藹々とやっているのかと思った(笑)。そして、パーソネルを見てびっくり。強面、強者の「おとーさん」ジャズマンばかりはないか(笑)。
 
 

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2023年10月13日 (金曜日)

『Ahmad Jamal Plays』を聴く

2023年4月16日、アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)が天に召された。まだ半年しか経っていない。もともと長生きで92歳での逝去だった。ジャマルについては、『At the Pershing: But Not for Me』を聴いて、ジャマルを知ってから45年。ずっとジャマルのリーダー作をリアルタイムで聴いてきたから、いまだに逝去したのが実感できない。

『Ahmad Jamal Plays』(写真左)。最初は弱小レーベルParrotからのリリース。Parrotが潰れて、Argoレーベルから再発された時は、タイトルは『Chamber Music of the New Jazz』。現在では、このArgoレーベルの『Chamber Music of the New Jazz』の方が通りが良い。

1955年5月23日、シカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Ray Crawford (g), Israel Crosby (b)。ピアノ、ドラム、ギターの「オールド・スタイル」のピアノ・トリオである。シカゴ出身のジャマル初期の盟友、ドラムのクロスビーと、ピッツバーグ出身のギターのクロウフォードが、ジャマルの脇を固める。
 

Ahmad-jamal-plays

 
実に良い雰囲気のラウンジ・ピアノが展開される。ピアノ、ベース、ギターの「オールド・スタイル」のピアノ・トリオが、ばっちりハマっている。ジャマルのピアノは、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴。これが1950年代ジャマルの演奏スタイル。この「オールド・スタイル」のトリオ演奏が、ジャマルの「1950年代の個性」を増幅する。

こうやって聴いていると、ジャマルって、いつの時代も、ラウンジやライヴハウスで聴かせる「ラウンジ・ピアノ」が基本で、その音志向については、それぞれの時代のトレンドや流行に則って、ジャマル独自のスタイルを作り出しているのではないか、と思い始めている。聴き手の要求に応じて、ラウンジやライヴハウスで聴かせるジャズ・ピアノ。それがジャマルのスタイルなんだろう。

マイルスが欲しがったというジャマルのピアノ。それだけで、ジャズ・ピアノの偉大なスタイリスト、として語られることが多かったジャマル。その証拠として『At the Pershing: But Not for Me』ばかりがもてはやされるが、それは違うだろう。ジャマルは、その時代ごとに聴き手の要求に応じて、ラウンジやライヴハウスで聴かせるジャズ・ピアノが身上。時代ごとにスタイルは変わるが、ジャマルは、ジャズの歴史上、最も偉大な「ラウンジ・ピアニスト」だと思う。
 
 

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