2021年11月10日 (水曜日)

ストリーミング解禁の「恩恵盤」

ジャズにおいて、アルバムのネット経由のストリーミング聴きについては、かなり恩恵があるように思う。LP時代にリリースされたが、CD時代にリイシューされなかった音源や、一度CDでリリースされたがその後、廃盤状態になったままの音源が、一定数ある。

そんな廃盤状態の音源が、気が付けば、ストリーミング聴きの「サブスク・サイト」に、さり気なくアップされていたりする。今まで長らく廃盤状態だった音源が、ストリーミングで気が付いたら、すぐに聴ける。これが実に助かるのだ。

ECMレーベルがストリーミング解禁になって久しいが、ECMレーベルの音源がカタログ順にほぼ漏れなくリイシューされたのにはビックリした。当初、何らかの理由でストリーミング解禁されなかった音源も、現在、気が付けば、ほぼ漏れなくリイシューされている。アップル・ミュージックなどは、音質については「ハイレゾ」対応していて、録音の良いECMの音源が良い音で聴くことが出来るので、まったく有り難いことである

Jack Dejohnette's Directions『New Rags』(写真)。1977年5月、独LudwigsburgのTonstudioでの録音。ECM 1103番。ちなみにパーソネルは、Jack DeJohnette (ds, p), John Abercrombie (el-g, el-mandolin), Alex Foster (ts, ss), Mike Richmond (el-b, ec-b)。リーダーのポリリズミックな職人ドラマー、ジャック・デジョネットがピアノも兼ねた、カルテットな編成。
 

New-rags

 
このアルバム、何を基準にLPで廃盤にしたのか、理由が判らないのだが、LPではリリースされたが、CDリイシューされなかった音源である。21世紀になって、ストリーミング配信されたのにはビックリ。なんせ40年振りくらいの「再会」である。

パーソネルを見渡すと、なんとECMらしい、渋い人選であることか。出てくる音は、やはりECMらしい「ニュー・ジャズ」な音か、と想像したら、なんと、硬派でストイックな、米国モード・ジャズの最先端の、限りなく自由度の高い、創造性豊かな音が出てくるのだから、またビックリ。ただ、音的には、音のエコー含めて、どこまでもECMで、この音源、ECMの音世界の中では、かなり異質な内容だと改めて思う。

キースの「アメリカン・カルテット」の音を想起させる様な内容なのだが、この盤では、ピアノレス・カルテットの演奏が、限りなく自由度が高くて凄まじい。フリー的な展開もところどころあるにはあるが、絶対にフリーには傾かない。あくまで、伝統の範囲内に留まった、限りなく自由度の高いモード・ジャズ・オンリーで疾走する。かなりハイレベルなメインストリーム・ジャズである。

ECMの中の「米国モード・ジャズ」の最先端の演奏。それでいて、音の質、音の雰囲気は「欧州ジャズ」。僕の中で約40年ほど、その存在すら忘れ去られていた盤ではあるが(ECMレーベルのカタログ本に辛うじて、その存在は記されていた)、その内容は、当時のメインストリーム・ジャズの一級品。秀作である。
 
 
 
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2021年8月18日 (水曜日)

1970年代ECMの「隠れ名盤」

ECMレーベルの「ハウス・ジャズマン」達は、ECMレーベルの音のカラーにばっちりフィットしていて、ECMレーベルの音の統一感に大きく貢献している。総帥プロデューサーのマンフレート・アイヒャーのプロデュース力が強烈なのと、「ハウス・ジャズマン」達がもともと持っている「自然に発散する音のカラー」がECMレーベル向きなのと、その両方の相互作用の成せる技だろう。

Kenny Wheeler『Deer Wan』(写真)。1977年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Wheeler (tp, flh), Jan Garbarek (ts, ss), John Abercrombie (el-g, el_mandolin), Dave Holland (b), Jack DeJohnette (ds), Ralph Towner (12-string g (track 2))。カナダのトロント出身のフリューゲルホルン&トランペットの名手ケニー・ホイーラーの作品。

ECMレーベルのアルバムは、どれもが「ECMレーベルの音のカラー」が反映されているのだが、この盤は、それらに増して「ECMレーベルの音のカラー」が強烈に濃厚な内容。パーソネルを見渡すと、ギターにアバークロンビー、サックスにガルバレク、ベースにホランド、ドラムにデジョネット、2曲目のみだが12弦ギターのタウナー、という、当時のECMのお抱えジャズマンで占められている。
 

Deer-wan

 
1960年代後半からスタートしたECMレーベル。1970年代中盤にはレーベルのカラーが認知され、セールスも充実して、ECMがジャズ・レーベルとして基盤を確立。この盤が録音された1977年は、ECMレーベルが一番充実した時期。ここに、アイヒャーの強烈なプロデュースが入るのだから、そりゃ〜「ECMレーベルの音のカラー」が思いっ切り充満するよな〜。

ホイーラーの端正な浮遊感溢れるトランペットが幻想的。多重録音がその雰囲気を増幅する。そこに、これまたくすんだ浮遊感溢れるアバークロンビーのエレギが絡む。そこに、クールで硬質なガルバレクのサックスが切れ込む。緩急自在、硬軟自在なベース&ドラムのリズム隊は、ECM独特のニュー・ジャズなリズム&ビートを繰り出していく。

4ビートなど、スインギーなジャズとは全く異なる、ECMレーベルのニュー・ジャズな音世界ではあるが、その音世界の中で展開される即興演奏は、それはそれはアーティスティックで見事なもの。そういう意味でも、この盤にある演奏は立派な「ジャズ」である。この盤、我が国ではあまりそのタイトルが話題に上らないが、ECMレーベルにおける名盤中の名盤の一枚だと思う。
 
 
 
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2021年7月 3日 (土曜日)

アバークロンビー入門のライヴ盤

ジャズのエレクトリック・ギター盤を聴き直し始めて、ジョン・アバークロンビー(John Abercrombie)に再会した。ECMレーベル専属ギタリストに近い位置づけで、アイヒャー主導のECM独特の「ニュー・ジャズ」な雰囲気の中、個性的でストレートなエレクトリック・ギターを聴かせてくれる。特に、その即興演奏が独特な響きで、アバークロンビーの個性を唯一のものにしている。

『John Abercrombie / Marc Johnson / Peter Erskine』(写真左)。1988年4月21日、ボストンでのライヴ録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (g, g-synth), Marc Johnson (b), Peter Erskine (ds)。ジョン・アバークロンビーがリーダーのキーボードれすのトリオ編成。アバークロンビーのギターの個性が良く判る編成である。

リーダー作の半分以上がECMレーベルからのリリースになる。アバークロンビーのギターはECMレーベルの「音のカラー」に一番フィットしている。アバークロンビーはニューヨーク州ポートチェスター出身ながら、彼のギターにはファンクネスは希薄。

初リーダー作がECMからのリリースで、そのまま、彼のギターはECM好みの「欧州ジャズ志向のソリッドでストレートで、プログレッシヴなギター」が個性となったと思われる。それほど、彼のギターは、ECMの音の個性にジャスト・フィットしている。
 

John-abercrombie-marc-johnson-peter-ersk

 
そんなアバークロンビーのエレギの個性がとても良く判る盤がこの盤である。彼の最大の個性は、その即興演奏にあると思っていて、デリケートでストレートでメロディアスで柔軟性溢れる即興演奏は、彼のエレギの独特の響きと併せて、しばらく聴けば、アバークロンビーのエレギと判る。このアバークロンビーのギター、好きになったらとことん填まること請け合い。

ベースのマーク・ジョンソンとドラムのピーター・アースキンが、これまた、アバークロンビーのギターの個性を引き立たせるのに恰好のリズム隊で、アバークロンビーのギターの様々な表現に的確にレスポンスする。特に、アースキンの変幻自在なドラミングが素晴らしい。特にこの盤、ライヴ録音だけのその柔軟性が良く判る。

ジャズの即興性という切り口を明確に伝えてくれるライヴ盤である。ECMのアルバムとしては、珍しく4ビートの演奏が多く収録されていて、スタンダード曲が4曲も入っている。

そういう意味では、アバークロンビー入門盤としても取っ付き易い盤で、ジャケ・デザインはECMらしくなく「やっつけ」風だが、このジャケ・デザインに怯むこと無く、アバークロンビーのエレギを体験して頂きたい。
 
 
 
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