2022年5月12日 (木曜日)

ジャマルの70年代ニュー・ジャズ

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)は「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1960年代終わり〜1970年代の作品は「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が中心。1960年代終わり以前のジャマルのスタイルは「しっとりシンプルでクールなサウンド」だった。そして、1969年〜1970年辺りで、いきなり「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変貌する。

Ahmad Jamal『Live at Oil Can Harry's』(写真)。1976年8月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Calvin Keys (g), John Heard (b), Frank Gant (ds), Seldon Newton (congas)。ギター・コンガ入りのピアノ・トリオ、クインテット編成での演奏。カナダ・バンクーバーの有名クラブ「Oil Can Harry's」でのパフォーマンスを収録した傑作ライヴ盤である。

1970年代のジャマルは「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」。このライヴ盤でも、ギターの存在が大きくクローズアップされて、どこか、クロスオーバー・ジャズの音志向に繋がるような、ビートの効いた、メリハリのある展開になっている。少なくとも、この演奏はハードバップ系の演奏内容では無い。1970年代ならではの「ニュー・ジャズ」な音世界である。
 

Live-at-oil-can-harrys_1

 
ECMを中心とする欧州の「ニュー・ジャズ」との相違点は「アーシー」な雰囲気の有無。このライヴ盤でのジャマル中心の演奏はとても「アーシー」。この「土臭い、泥臭い」音志向は米国ジャズ独特のものであり、特に米国南部にこの音志向が強い。ロックのおいても、米国南部中心のスワンプ・ロック、サザン・ロックの音志向が「アーシー」。

このライヴ盤での、カルヴン・キーズのエレギが、実にアーシーな響きを放っている。加えて、セルドン・ニュートンのコンガも、アーシーさを増幅させる。そして、ジャマルのピアノの左手のブロックコードが、どこかマッコイ・タイナーのハンマー奏法の響きと似たアーシーな響きを宿していて、ビートの効いた「軽めのジャズ・ファンク」に展開するところはスリリングだ。

1970年代半ば、ならではの「ニュー・ジャズ」。クロスオーバー・ジャズ志向の「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」は実にユニーク。当時のウェザー・リポートやジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラに通じる部分もあり、意外と格好良い「イケてる」サウンドですが、このライヴ盤、知る人ぞ知る存在に甘んじているのが実に残念です。
 
 

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2021年5月30日 (日曜日)

21世紀のアーマッド・ジャマル

アーマッド・ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1950年代は、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。ビ・バップのピアノの真逆を行く、ハードバップ時代ならではの個性とアプローチ。マイルスが名指しで共演を望んだとか、レッド・ガーランドに彼の様に弾けと言ったとか、逸話にも事欠かない。

1960年代終わり〜1970年代の作品は「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が、1980年代になって、アーシーさがすっかり抜けきって、豪快でメリハリのある力強いタッチが特徴に変化。左手の叩き付けるようなガーン、ゴーンという骨太な音はマッコイ・タイナーばり。右手の早弾きテクニックがフィーチャーされる。しかし、劇的な変化は、この1980年代で一旦の終息をみる。

1990年代のジャマルは、豪快でメリハリのある力強いタッチが特徴。テクニックの素晴らしさは相変わらず。煌びやかなピアノの音が実に魅力的である。右手のフレーズがとてもシンプルで判り易い。カクテル・ピアノっぽくなりそうなんだが、左手の骨太なタッチがジャジーなので、極上のジャズ・ピアノとしてのトリオ演奏が成立している。
 

Blue-moon-ahmad-jamal
 

Ahmad Jamal『Blue Moon』(写真左)。2011年10月、NYの「Avatar Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Reginald Veal (b), Herlin Riley (ds), Manolo Badrena (perc)。ジャズ・ピアノのレジェンド、ジャマルがリーダーのピアノ・トリオ盤。21世紀のジャマルの個性が良く判る好盤。パーカッションのマノロ・バドレナの参加が効いている。

テクニック素晴らしく、豪快でメリハリのある力強いタッチは変わらないが、「間」を活かしたモーダルな弾きっぷりが、21世紀のジャマルの個性だろう。ネオ・ハードバップでは無い、ちょっとエキゾチックなモードの響きが特徴。加えて、リズム&ビートもパーカッションを入れて、ポリリズミックで、どこかアフリカン・ネイティヴなワールド・ミュージック風のアーシーなリズム&ビートが印象的。

20世紀のジャマルの印象は全く継承していない、21世紀に入って、これまた個性的なピアノ・トリオ演奏を聴かせてくれる。少しフリーに少し傾くところも今までのジャマルには無い「新境地」。20世紀のECMの様な、21世紀の「ニュー・ジャズ」の響きと形容しても良いかもしれない。録音当時、既に81歳。しかし、この盤でのパフォーマンスはとても新鮮。レジェンド=ジャマル、恐るべし、である。
 
 
 

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