2023年5月 2日 (火曜日)

1960年代スタイルのジャマル

1950年代のジャマルは「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴だった。1958年録音の名盤『But Not for Me』が、その特徴を最大限に活かしたライヴ盤で、特に日本人ジャズ者の「心の吟線」にいたく触れるらしく、大人気の名盤である。

Ahmad Jamal『Happy Moods』(写真左)。1960年1月20–21日、シカゴでの録音。Argoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。1958年の名盤『But Not for Me』以来の「鉄壁のトリオ」での録音になる。

以前、当ブログで、1961年11月のライヴ盤『Ahmad Jamal at the Blackhawk』についての記事(2022年8月14日のブログ・左をクリック)をアップしたが、今回のスタジオ録音盤はその2年弱前の1960年1月の録音。トリオ演奏のスタイルは「シンプルな弾き回しながら、メリハリを強くつけた奏法」である。

音数は少ない傾向はそのままなのだが、メリハリを付けたファンキーな弾き回しに変わっている。1958年の『But Not for Me』は、音数少なくラウンジ風の「侘びさび」の効いた小粋な弾き回しだったが、その2年後、この『Happy Moods』では、ダイナミックな強いタッチが目立った、ちょっと五月蠅いくらいの弾き回しに変わっている。
 

Ahmad-jamalhappy-moods

 
トリオのメンバー構成は、1958年録音の名盤『But Not for Me』から代わっていないので、トリオ演奏として、演奏のスタイルと明確に変えていることになる。トリオのメンバーが代わって、その影響で演奏スタイルが変わったのでは無い。

この『Happy Moods』でも、弾く音を厳選した、音数の少ないフレーズはキープされているが、とにかく、ダイナミックなタッチでメリハリが強く付いていて、賑やかな雰囲気になっている。

加えて、ファンキーなフレーズが見え隠れするようになり、この「1960年代のジャマル」のスタイルは、ファンキー・ジャズの範疇で捉えた方が判り易い。収録された曲は全10曲。ジャマルのオリジナルは2曲のみ。残りの8曲はスタンダード曲。「Speak Low」以外、知る人ぞ知る、マニアックなスタンダード曲ばかりだが、どの曲にもファンキー・ジャズの味付けがされている。

「1960年代のジャマル」は「シンプルな弾き回しながら、メリハリを強くつけた、ファンキー・ジャズ」なスタイルからスタートしている。そう、ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニストなのだ。
 
 

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2023年5月 1日 (月曜日)

1970年代スタイルのジャマル

逝去したから、という訳では無いのだが、アーマッド・ジャマルのリーダー作の落ち穂拾いをしている。ジャマルについては、意外とこのブログで取りあげることが多いジャズマンの1人。

それには理由があって、ジャマルは「経年変化」が著しいピアニストで、活躍した年代によって異なる顔を持つ、つまり、年代によって、ピアノ演奏のスタイルが変わるピアニストなので、デビューした1950年代から逝去前の2010年代まで、それぞれの年代を横断してリーダー作を聴かないと、ジャマルのピアニストとしての個性が把握できないのだ。

Ahmad Jamal『Outertimeinnerspace』(写真)。1971年6月17日、モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ録音。Impulse! レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (ac-p, el-p, fender rhodes), Jamil Sulieman (b), Frank Gant (ds)。ジャマルお得意のトリオ編成でのパフォーマンス。

1960年代終わり以前のジャマルのスタイルは「しっとりシンプルでクールなサウンド」だった。そして、1969年〜1970年辺りで、いきなり「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変貌する。
 

Ahmad-jamaloutertimeinnerspace

 
このモントルー・ジャズフェスでのライヴ・パフォーマンスは「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」。いわゆる「1970年代スタイル」のジャマルである。ライヴということもあるのだろう、長尺の演奏ばかり2曲のみ。エレギが入っていない分、その印象はほどほどなんだが、ジャズに軸足を置きつつ、演奏全体の雰囲気はクロスオーバー・ジャズ志向。

このライヴでは、ジャマルはエレピやローズも弾いていて、これがグルーヴ感濃厚なジャズ・ファンク風になっているから堪らない。1950年代のハードバップ志向のラウンジ風な演奏スタイルも、1960年代のダイナミックでファンキーな演奏スタイルも微塵も無い。ビートの効いた、アーシーで豪快なメリハリ・サウンドだけが、この盤に詰まっている。

ビートは効いているが、ジャズ・ファンクなメリハリの強い演奏になっておらず、サイケデリック&スピリチュアルな雰囲気が漂う、どこか疾走感と浮遊感が入り交じった展開になっているのは、モーダルな演奏をメインとしているからだろう。冒頭の約17分の長尺演奏の「Bogota」は、力業的なモーダルな展開がなかなか格好良い演奏になっている。

ジャケットもどこか、サイケデリック&スピリチュアルなポップ・アートで飾られており、ジャズ盤のジャケットとは思えない風情。それでも、このライヴ盤でのジャマル・トリオ、当時のジャズの最先端の演奏トレンドをしっかりと捉えつつ、オリジナリティー溢れる演奏に仕上げているのはさすがである。意外と癖になる内容です。
 
 

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2023年4月30日 (日曜日)

1950年代スタイルのジャマル

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)が、あの世に旅立って、そろそろ1ヶ月になる。4月6日、前立腺がんのため死去。92歳の大往生であった。現時点では、2019年リリースの『Ballades』が遺作になる。しかし、90歳になるまで、現役ピアニストを貫き通し、コンスタントにリーダー作を出し続けたジャマルは凄い。スタイルは年代毎に異なるスタイルを持つユニークなピアニストだった。

Ahmad Jamal『Ahmad's Blues』(写真左)。1958年9月6日、米国Washington, D.Cの「The Spotlite Club」でのライヴ録音。原盤はArgo。ちなみにパーソネルは、ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。

ジャマルは「経年変化」が著しいピアニストで、活躍した年代によって異なる顔を持つ。1950年代は「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。この『Ahmad's Blues』でのジャマルのピアノは、まさに「1950年代」スタイル。
 

Ahmad-jamalahmads-blues

 
スタンダード曲がメインのライヴ音源なので、1950年代ジャマルの特徴が良く判る。タッチは軽快でオーソドックス。変な捻れや癖は無い。間の使い方が上手く、フレージングは必要最小限の厳選された音での弾き回し。雰囲気はアーバンでクール。1950年代半ばの繊細なタッチは、1958年に来て、少しダイナミズムが加わって、弾き回しのスケールが一回り大きくなっている。

バックのリズム隊、イスラエル・クロスビーのベース、ヴァーネル・フォーニアのドラムも良い味を出している。ジャマルの「間」を活かし「音を厳選」した弾き回しに、スインギーに、とても上手く適応している。特にベースのチェンジ・オブ・ペース、そして、ドラムの上質なテクニック(ブラシなど)が、このトリオ演奏を格調高いものにしている。

ジャマルの1950年代スタイルの名盤『But Not for Me』ばかりがもてはやされるのだが、このワシントンD.Cでのライヴ盤は、決して内容的に劣っていない。どころか、弾き回しのダイナミズムは、この『Ahmad's Blues』の方が上回っていて、雰囲気の良い録音と相まって、まるでクラブの中に入って聴いているかのような臨場感がとても良い。ジャマルの1950年代スタイルの「隠れ名盤」でしょう。
 
 

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2023年4月18日 (火曜日)

アーマッド・ジャマルを追悼する

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)が、あの世に旅立った。4月6日、前立腺がんのため死去。92歳。また1人、レジェンド級のジャズマンがあの世に旅立ったことになる。

ん〜、辛いなあ。ジャズを本格的に聴き始めた1970年代以降、50余年、ジャマルはリアルタイムでそのパフォーマンスを聴くことの出来るピアニストだった。同じ時代を生きたジャズマンが鬼籍に入るのを見るのは、やはり辛い。

Ahmad Jamal & Gary Burton『Live At Midem』(写真左)。1981年1月26日、フランス、カンヌで開かれた国際音楽産業見本市の中のパーム・ビーチでのミデムフェアにおけるライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Gary Burton (vib), Sabu Adeyola (b), Payton Crossley (ds)。Ahmad Jamal名義で『In Concert』(写真右)というタイトルでリリースされていたり、はたまた、ジャケ・デザインも様々ある不思議なライヴ盤。

当時のジャマル、バートンの活動の経緯を見ていると、このクインテットは、ジャマルのトリオにバートンが客演した形のようだ。見本市のフェアにおけるライヴなので、そういう一期一会のブッキングが可能となったのだろう。

冒頭、恐らくジャマルであろうMCから始まり、1曲目は「Morning of the Carnival」。のっけから、ジャマルがぶっ飛ばす。ファンキーでグルーヴ感満載、速弾きパッセージてグイグイ攻めて、硬質なタッチでガンガン叩きまくる。華のなる流麗なアドリブ・フレーズとコーラスがソウルフルで、1970年代のジャマルのトレンドが継続されている。

ジャマルってピアニストは「経年変化」が著しいピアニストで、活躍した年代によって異なる顔を持つ。1950年代は「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。
 

Ahmad-jamal-gary-burtonlive-at-midem

 
1960年代の終わり〜1970年代の作品は、ファンキー&アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドに変化している。この1970年代のジャマルを継続しているのが良く判る。

それにしても強烈なグルーヴ感。「Morning of the Carnival」が全く別の曲に聴こえる。途中、「My Favorite Things」の引用が出まくって、この引用などは1950年代の古き良き中間派の影を引き摺っている。バートンのヴァイブは、そんなグルーヴ感溢れるファンキーな8ビート・ピアノに乗っかって、これまたグルーヴィーに8ビートに弾きまくる。

サブ・アデヨラのベースは、アタッチメントを付けたアコベなのか、エレベなのか、ちょっと判別がつかないが、エレクトリックなベースをブヨンブヨンと響かせる。これがまた良い方向に作用して、ジャマル&バートンのグルーヴ感を思い切り増幅している。ペイトン・クロスリーのドラムは、グルーヴ感豊かな、うねるような8ビートを叩き出し、演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支えている。

演奏曲もユニークで、ジャマルの78年のヒット曲「One」や、ラテン風の「Bogota」、チック・コリアのモーダルな「Tones for Joan’s Bones」と、なかなか他のバンドでは演奏しないぞ、と思われる佳曲を8ビートでぶっちぎっている。そして、有名スタンダードの「Autumn Leaves」。最後の「Autumn Leaves」だけが4ビートの演奏となっていて、これはこれで聴き応えがある。

実はこのライヴ盤、今回、小粋なジャズ盤を探索する中で出会った「初見」のライヴ盤で、ジャマルとバートン、それも、1981年という時代背景の中で、どんな演奏をしているのか、と興味津々で聴き始めた盤。ジャマルの訃報に触れた時、聴いていたのがこのライヴ盤で、不思議な縁にちょっと驚いている。
 
 

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2022年8月14日 (日曜日)

1960年代前半のジャマルの音

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)についての有名なエピソード、マイルスが麻薬禍から立ち直り、新しいクインテットを立ち上げる際、ピアニストとして、アーマッド・ジャマルに白羽の矢を立てたのは有名な話。結局、飛行機に乗るのが嫌で、マイルスの誘いを断った訳だが、この様に、ジャマルは米国では、デビューの頃から評価の高いピアニストだった。

しかし、我が国では人気のあるピアニストでは無い。ジャズ盤紹介本でも、ジャマルのリーダー作として挙がるのは『But Not For Me』(1958年)がほとんど。他にも優秀なリーダー作は沢山あるのだが、我が国での「アーマッド・ジャマル」の扱いは本当に小さい。しかし、米国では、コンスタントにリーダー作をリリースし続け、70枚超のリーダー作を世に送り出している。

Ahmad Jamal『At The Blackhawk』(写真左)。1961年11月、サンフランシスコのナイトクラブ「ブラックホーク」でのライヴ録音。Argoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。リーダーのジャマルとベースのクロスビーはシカゴ出身。ドラムのフォーニアは、ニューオリンズ出身でシカゴ在住。オール・シカゴのピアノ・トリオ。

ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1950年代は「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。1960年代の終わり〜1970年代の作品は、アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドに変化。
 

Ahmad-jamalat-the-blackhawk
 

この『At The Blackhawk』、1961年11月のライヴ音源を聴いて判るのは、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選したシンプルな弾き回しから、シンプルな弾き回しながら、メリハリを強くつけた奏法に変化しつつあるジャマルをしっかりと捉えている。1950年代のラウンジ・ピアノっぽい雰囲気から、ダイナミックでファンキーなジャズ・ピアノに変化している。

この変化にはちょっと驚いた。1960年代の終わりには、アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドへの変化は捉えられているが、1950年代のシンプルな弾き回しから、どうやって、アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドに変化したのか、良く判らなかったが、今回、「いきなり」の変化では無く、こういった、ダイナミックでファンキーなジャズ・ピアノを経由しているのが、この『At The Blackhawk』を聴いて良く判った。

ジャマルのピアノについては、テクニックに優れ、メリハリを強く付けるが、流麗なフレーズには、しっかりと「歌心」が宿っていて、強いタッチのフレーズも全く耳障りでは無い。これだけダイナミックにメリハリを付けたファンキーなピアノは、他に例が無い。この時代のジャマル独特の個性と言って良いかと思う。

1960年代前半のジャマルのリーダー作は、Argoレーベルに集中しているのだが、以前は入手が難しい盤ばかりだった記憶があるのだが、最近、Argoレーベルのオリジナル盤が結構、まとまってアップされている様で、ストリーミングで聴くことが出来るようだ。この機会を捉えて、一気に聴いてみたいと思っている。
 
 

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2022年5月12日 (木曜日)

ジャマルの70年代ニュー・ジャズ

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)は「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1960年代終わり〜1970年代の作品は「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が中心。1960年代終わり以前のジャマルのスタイルは「しっとりシンプルでクールなサウンド」だった。そして、1969年〜1970年辺りで、いきなり「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変貌する。

Ahmad Jamal『Live at Oil Can Harry's』(写真)。1976年8月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Calvin Keys (g), John Heard (b), Frank Gant (ds), Seldon Newton (congas)。ギター・コンガ入りのピアノ・トリオ、クインテット編成での演奏。カナダ・バンクーバーの有名クラブ「Oil Can Harry's」でのパフォーマンスを収録した傑作ライヴ盤である。

1970年代のジャマルは「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」。このライヴ盤でも、ギターの存在が大きくクローズアップされて、どこか、クロスオーバー・ジャズの音志向に繋がるような、ビートの効いた、メリハリのある展開になっている。少なくとも、この演奏はハードバップ系の演奏内容では無い。1970年代ならではの「ニュー・ジャズ」な音世界である。
 

Live-at-oil-can-harrys_1

 
ECMを中心とする欧州の「ニュー・ジャズ」との相違点は「アーシー」な雰囲気の有無。このライヴ盤でのジャマル中心の演奏はとても「アーシー」。この「土臭い、泥臭い」音志向は米国ジャズ独特のものであり、特に米国南部にこの音志向が強い。ロックのおいても、米国南部中心のスワンプ・ロック、サザン・ロックの音志向が「アーシー」。

このライヴ盤での、カルヴン・キーズのエレギが、実にアーシーな響きを放っている。加えて、セルドン・ニュートンのコンガも、アーシーさを増幅させる。そして、ジャマルのピアノの左手のブロックコードが、どこかマッコイ・タイナーのハンマー奏法の響きと似たアーシーな響きを宿していて、ビートの効いた「軽めのジャズ・ファンク」に展開するところはスリリングだ。

1970年代半ば、ならではの「ニュー・ジャズ」。クロスオーバー・ジャズ志向の「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」は実にユニーク。当時のウェザー・リポートやジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラに通じる部分もあり、意外と格好良い「イケてる」サウンドですが、このライヴ盤、知る人ぞ知る存在に甘んじているのが実に残念です。
 
 

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2021年5月30日 (日曜日)

21世紀のアーマッド・ジャマル

アーマッド・ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1950年代は、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。ビ・バップのピアノの真逆を行く、ハードバップ時代ならではの個性とアプローチ。マイルスが名指しで共演を望んだとか、レッド・ガーランドに彼の様に弾けと言ったとか、逸話にも事欠かない。

1960年代終わり〜1970年代の作品は「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が、1980年代になって、アーシーさがすっかり抜けきって、豪快でメリハリのある力強いタッチが特徴に変化。左手の叩き付けるようなガーン、ゴーンという骨太な音はマッコイ・タイナーばり。右手の早弾きテクニックがフィーチャーされる。しかし、劇的な変化は、この1980年代で一旦の終息をみる。

1990年代のジャマルは、豪快でメリハリのある力強いタッチが特徴。テクニックの素晴らしさは相変わらず。煌びやかなピアノの音が実に魅力的である。右手のフレーズがとてもシンプルで判り易い。カクテル・ピアノっぽくなりそうなんだが、左手の骨太なタッチがジャジーなので、極上のジャズ・ピアノとしてのトリオ演奏が成立している。
 

Blue-moon-ahmad-jamal
 

Ahmad Jamal『Blue Moon』(写真左)。2011年10月、NYの「Avatar Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Reginald Veal (b), Herlin Riley (ds), Manolo Badrena (perc)。ジャズ・ピアノのレジェンド、ジャマルがリーダーのピアノ・トリオ盤。21世紀のジャマルの個性が良く判る好盤。パーカッションのマノロ・バドレナの参加が効いている。

テクニック素晴らしく、豪快でメリハリのある力強いタッチは変わらないが、「間」を活かしたモーダルな弾きっぷりが、21世紀のジャマルの個性だろう。ネオ・ハードバップでは無い、ちょっとエキゾチックなモードの響きが特徴。加えて、リズム&ビートもパーカッションを入れて、ポリリズミックで、どこかアフリカン・ネイティヴなワールド・ミュージック風のアーシーなリズム&ビートが印象的。

20世紀のジャマルの印象は全く継承していない、21世紀に入って、これまた個性的なピアノ・トリオ演奏を聴かせてくれる。少しフリーに少し傾くところも今までのジャマルには無い「新境地」。20世紀のECMの様な、21世紀の「ニュー・ジャズ」の響きと形容しても良いかもしれない。録音当時、既に81歳。しかし、この盤でのパフォーマンスはとても新鮮。レジェンド=ジャマル、恐るべし、である。
 
 
 

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  ・浪花ロック『ぼちぼちいこか』
 
 
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2020年11月24日 (火曜日)

90年代のアーマッド・ジャマル

アーマッド・ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1950年代は、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。ビ・バップのピアノの真逆を行く、ハードバップ時代ならではの個性とアプローチ。マイルスが名指しで共演を望んだとか、レッド・ガーランドに彼の様に弾けと言ったとか、逸話にも事欠かない。

1960年代終わり〜1970年代の作品は「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が、1980年代になって、アーシーさがすっかり抜けきって、豪快でメリハリのある力強いタッチが特徴に変化。左手の叩き付けるようなガーン、ゴーンという骨太な音はマッコイ・タイナーばり。右手の早弾きテクニックがフィーチャーされる。しかし、劇的な変化は、この1980年代で一旦の終息をみる。

Ahmad Jamal『I Remember Duke, Hoagy & Strayhorn』(写真左)。1994年6月2, 3日の録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Ephriam Wolfolk (b), Arti Dixson (ds)。ジャマルお得意のトリオ編成。内容はタイトル通り、デューク・エリントン、ホーギー・カーマイケル、ビリー・ストレイホーンのトリビュート。
 
 
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1950〜1960年代までの「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」の面影は全く無い。1980年代以降のジャマルは、豪快でメリハリのある力強いタッチが特徴。テクニックの素晴らしさは相変わらず。煌びやかなピアノの音が実に魅力的である。右手のフレーズがとてもシンプルで判り易い。カクテル・ピアノっぽくなりそうなんだが、左手の骨太なタッチがジャジーなので、極上のジャズ・ピアノとしてのトリオ演奏が成立している。

そして、ジャマルの素晴らしさは「アレンジメント」。エリントン、カーマイケル、ストレイホーンの「縁の楽曲」をとても魅力あるアレンジで、新しいイメージを付加している。シンプルな右手のフレーズだが、結構、複雑なコード変更や捻れた音の重ね方をしていて、特にエリントン作の楽曲に関して、ありきたりな解釈になっていないところが感じ入るところ。

1990年代のジャマルのピアノの良いところがギッシリ詰まったトリビュート盤。リズム隊のベーシスト、ドラム共に無名に近いメンバーだが、堅実にジャマルのピアノのサポートをしているところは評価出来る。ジャマルのピアノが前面に押し出たピアノ・トリオ盤ではあるが、ジャマルのピアノを愛でる、という点では、恰好の好盤である。
 
 
 

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2020年7月30日 (木曜日)

ジャマル、ソロ・ピアノで大変身

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)は「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。大きく括って、1950〜1960年代までの作品は「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」、1960年代終わり〜1970年代以降の作品は、うってかわって「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が中心。

マイルスが着目した『But Not For Me』の「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」も悪くは無い。間を活かし、音数を厳選した限りなくシンプルな奏法は魅力的ではある。しかし、1960年代晩期から1970年代、インパルス・レーベルに吹き込まれた以降の作品は、それまでの「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」とはうってかわって豪快な激しいサウンドを求めるようになり、「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」へと変貌。

基本的には、1980年代以降についても、豪快でメリハリのある力強いタッチ、右手の早弾きテクニックは変わらない。左手の叩き付けるようなガーン、ゴーンという骨太な音は穏やかになっている。その分、ピアノを鳴らしまくるような、スケールの大きい弾きっぷりが目立つようになる。

そんな「弾き方」の変遷を経たレジェンド級のジャズ・ピアニストである「アーマッド・ジャマル」。1951年の初レコーディング以来、70年に近いキャリアを重ねて来て以来、初の「ソロ・ピアノ」の盤をリリースした(2016年の録音)。1930年生まれだから、なんと86歳でのソロ・ピアノ盤である。
 
 
Ballads-ahmad-jamal  
 
 
Ahmad Jamal『Ballades』(写真左)。2019年9月のリリース。録音は2016年。ジャマルのソロ・ピアノ盤である。21世紀のジャマルのピアノは相変わらず「豪快でメリハリのある力強いタッチ、右手の早弾きテクニック」。しかし、このソロ盤では、クラシック・ピアノのマナーも見え隠れする、流麗でエレガント、気品を感じさせる、ファンクネスが希薄なピアノ・ソロの弾きっぷりになっている。このソロ・ピアノを聴いただけでは、ジャマルのピアノとは判らない。

しかし、これだけ「グループの中での弾きっぷり」と「ソロ・ピアノでの弾きっぷり」が違うピアニストの珍しい。冒頭の「Marseille(マルセイユ)」は、ジャマルの代表曲の1つだが、これを弾くピアニストがジャマルだとは全く判らない。同じく、ジャマルの代表曲のひとつ「Poinciana」も同様。

1950年代からのプレイ・スタイルの変遷も併せ持って考えると、ジャマルは適用範囲の広いピアニストだということが言える。演奏フォーマットや時代の要求に応じて、自らの「弾きっぷり」をコントロールすることが出来るピアニストなのだ。

この盤におけるピアノ・ソロだけ捉えれば、流麗でエレガント、気品を感じさせる、ファンクネスが希薄なピアノ・ソロは素晴らしい。スピリチュアルな側面も新鮮で、なかなかに充実した内容のソロ・ピアノ盤である。しかし、ジャマルが、こんなに流麗でエレガントなピアノを弾きこなせるとは思わなかった。面食らったり、戸惑ったりの「心の整理と新たな納得」が必要な、意外と厄介な新盤ではある。
 
 
 

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2017年8月20日 (日曜日)

ながら聴きのジャズも良い・24

今年の新作の中にアーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)の名前を見つけた。アーマッド・ジャマルと言えば、ハードバップ時代、あの帝王マイルスがメンバーに欲しがった伝説のピアニストである。幾つになるんだ。1930年7月生まれだから、今年で87歳になる。大ベテランというか、生きる「レジェンド」である。

そんな生きる「レジェンド」のジャマルであるが、21世紀になってからも(70歳を過ぎてからも)、リーダー作を2〜3年に1作はリリースしていて、その内容は十分に水準以上の内容を維持しているのだから凄い。ピアノのタッチは、マイルスの言う「間(スペース)のコンセプト、タッチの軽さ、控えめな表現、そして独特のリズム感」は全く1950年代から変わっていない。これも凄いこと。

Ahmad Jamal『Marseille』(写真左)。今年の新作である。本作は南仏の魅惑的な都市「マルセイユ」に捧げた一作。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), James Cammack (b), Herlin Riley (ds), Manolo Badrena (perc), Abd Al Malik, Mina Agossi (vo)。基本はピアノ・トリオ。リズムのアクセント付けにパーカッションを入れている。
 

Ahmad_jamal_marseille

 
このアルバムの特色はボーカルの存在だろう。このボーカルの存在で、現在のジャズのトレンドのひとつである「スピリチュアル」な表現を獲得している。ボーカルとは言え、朗々と唄うのでは無い、語りかける様な「ラップ」的表現であり、ゴスペル的な雰囲気も漂わせつつ、 このアルバムでも良いアクセントになっている。

主役のアーマッド・ジャマル・トリオの演奏は相変わらずのもので、特にジャマルのピアノについては、彼独特の「間(スペース)のコンセプト、タッチの軽さ、控えめな表現、そして独特のリズム感」は全く変わっていない。ジャマル独特の充実のピアノ・トリオのパフォーマンスが楽しめる。これで今年87歳なんだから、ジャマルって凄いなあ。

爽快感溢れる演奏がメイン、とりわけジャマルのピアノの、間を活かしたアドリブ展開が仄かに影を落としつつ、陰影のある墨絵の様な表現に思わず耳を奪われる。ベースとドラムのリズム・セクションもジャマルのピアノの特性に追従していて、軽快かつ控えめではあるが堅実なリズム&ビートを供給していて、これも聴き心地が実に良い。久々にながら聴きに最適なピアノ・トリオ盤。好盤です。
 
 
 
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