2022年9月24日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・251

ジャズにおいて「初リーダー作」は、そのリーダーであるジャズマンの「個性」を確実に反映している。ジャズにおいては、それぞれジャズマン毎の「個性」が非常に重要で、この「個性」が希薄だと、どのジャズマンの演奏を聴いても「皆同じに聴こえる」ということになる。

これでは、即興演奏が最大の特徴であるジャズにおいて、ジャズマンの存在意義が無くなる。よって、ジャズにおいては、それぞれジャズマンの個性が重要であり、それぞれのジャズマンの初リーダー作では、その「個性」を前面に押し出すプロデュースを施すのが通例である。

Bill Charlap『Souvenir』(写真左)。1995年6月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Scott Colley (b), Dennis Mackrel (ds)。現代のバップ・ピアニスト、ビル・チャーラップのメジャー・デビュー作になる。チャーラップは、1966年10月生まれなので、初リーダー録音当時、28歳と8ヶ月。一流ジャズマンとしては、少し遅いメジャー・デビュー作になる。

メジャー・デビュー作と言えば、その内容は初リーダー作に準ずるもの。チャーラップも、1991〜3年に、マイナー・レーベルに初リーダー作を録音しているが、マイナー・レーベルからのリリースなので、数も少なく、その盤はなかなかお目に(お耳に?)かかれない。そういう意味では「メジャー・デビュー盤=初リーダー作」と位置づけて良いかと思う。

さて、このメジャー・デビュー盤、聴いて面白いのは、チャーラップのピアノの個性が明確に出ていること。今までの他のピアニストとは明らかに違う響きがある。
 

Bill-charlapsouvenir

 
基本はバップ・ピアノ。しかし、フレーズの響きが従来のバップっぽく無い。幾何学っぽく(ちょっとモンクっぽい)、モーダルな弾き回しだけど「判り易い」。弾きっぷりは流麗。バップなマナーの中での「耽美的でリリカルな」弾き回しがユニーク。

そんなチャーラップの個性が、このメジャー・デビュー盤にギッシリ詰まっている。冒頭の「Turnaround」を聴けば、それが良く判る。オーネット・コールマンの曲を選曲していて、このコールマンの曲をバップ・ピアノで弾き回していく。

しかも、緩やかなフレーズから盛り上げていくユニークなアレンジ。左手の和音が「幾何学っぽく」、右手のフレーズがモーダル。コールマンの曲の個性を良く捉え、チャーラップのピアノの個性で、今までに聴いたことのない、バップな演奏に仕立て上げている。

この盤を聴いて、僕は一気にチャーラップのピアノが「お気に入り」になった。現代のネオ・ハードバップの先端を行く、従来のモダン・ジャズ・ピアノを見直し、焼き直し、新しい響きやフレーズを盛り込んで「深化」させていく。

チャーラップは、現代のジャズにおいて「進取の気性に富む」ピアニストの1人であり、このメジャー・デビュー盤では、個性的で見事なパフォーマンスを披露している。
 
 

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2022年9月21日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・250

米国や欧州では一流の人気ジャズマンとされるが、我が国では「さっぱり」というジャズマンが結構いる。昔は海外レーベルのアルバムは、日本のレコード会社が契約して、日本のレコード会社経由で、我が国で流通していた。日本のレコード会社と契約した海外レーベルの人気ジャズマンのリーダー作は良いが、契約していない海外レーベルの人気ジャズマンのリーダー作は、我が国では全く流通しないということになる。

これでは、日本のレコード会社と契約していないと、海外レーベルのレコードは手に入らない、ということになるのだから、何だか閉鎖的な話である。ネットの時代になって、CDやデジタル音源が日本のレコード会社抜きに、ダイレクトに購入出来る様になって、そんな閉鎖的な話はほとんど聞かなくなった。逆に我が国で売れる見込みが無いと扱わない、という日本のレコード会社の企業姿勢が、日本のレコード会社の存在意義を矮小化している。

Tom Harrell『Oak Tree』(写真左)。2020年11月24, 25日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Tom Harrell (tp, flh), Luis Perdomo (p, Fender Rhodes), Ugonna Okegwo (b), Adam Cruz (ds)。米国では「現代屈指のトランペッター&フリューゲル奏者」とされるトム・ハレルのリーダー作。ハレルのワンホーン・カルテット盤になる。

リーダーのトム・ハレルであるが、現代屈指のトランペッター&フリューゲル奏者とされるが、我が国ではほとんど無名に近いのではないか。ハレルは1946年6月生まれなので、今年で76歳の大ベテラン、レジェンド級のトランペッターである。
 

Tom-harrelloak-tree

 
リーダー作も30枚以上、参加セッションは数知れず。米国では、これだけ人気の一流トランペッターなのだが、我が国では「さっぱり」である。僕は21世紀には入るまで、トム・ハレルの名前を知らなかった。

さて、このハレルの新作、聴けば、ハレルのトランペットの成熟度合い、伸びのあるストレートな音色、流麗で歌心溢れるアドリブ・フレーズ、味わい深い「間」を活かした吹き回し。確かに、大ベテラン、レジェンド級のトランペッターであることが良く判る。このトランペットは良い。もっと広く、ジャズ者の皆さんに聴いて貰いたい気持ちで一杯である。

ビ・バップ、アフロ・キューバン、クラシック志向、心地よいスムース・ジャズなど、幅広いスタイルのジャズを展開してきたが、この盤では、じっくりと落ち着いた、モーダルな「ネオ・ハードバップ」。印象的なユニゾン&ハーモニー、スムースなアドリブ・フレーズ、柔らかく落ち着いた力強い吹き回し、暖かい安らぎを感じる音世界。この新作でのハレルのトランペット、本当に良い味出してます。

ピアノのルイス・ペルドモ、ベースのウゴナ・オケグォ、ドラマーのアダム・クルーズ、この精鋭リズム隊、これまた、味わい深いリズム隊で、ハレルの暖かい安らぎのあるトランペット&フリューゲルホーンを、緩急自在、変幻自在、硬軟自在にサポートする。このリズム隊あってのハレルのトランペットである。実に良いリズム隊だ。

アルバム・タイトルが『Oak Tree』=「樫の木」。英語圏では「逆境に耐える十字架の木であったり、男性的な力と聖木として崇められていることが多い」とのこと。なんか、この新作のハレルの「柔らかく落ち着いた力強い吹き回し」に通じる、実に良いタイトルですね。ジャケットも不思議と雰囲気があって良い感じ。ハレルの晩年の代表作としても良い佳作だと思います。
 
 

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2022年9月19日 (月曜日)

デフランセスコの初リーダー作

今年の8月25日、Joey Defrancesco(ジョーイ・デフランセスコ)が逝去した。現代の現代ジャズ・オルガニストの代表的存在の1人。マルチ・インストルメンタルな面も持ち合わせ、トランペット、サックスにも一定のテクニックを保持し、時には、ボーカルも披露した。しかし、51歳での逝去。惜しまれて余りある、余りに早すぎる逝去であった。

Joey Defrancesco『All of Me』(写真)。1989年の作品。ちなみにパーソネルは、Joey Defrancesco (org), Lou Volpe (g), Alex Blake (el-b), Buddy Williams (ds)、そして、特別ゲストとして、Houston Person (ts)。Columbiaレーベルからのリリース。

デフランセスコの初リーダー作であり、同時にメジャー・デビュー作でもある。デフランセスコは1971年生まれなので、17歳での初リーダー作であり、メジャー・デビュー作であった。騒がれたという記憶は無いが「早熟の天才」ですね。

ジャズにおいて、初リーダー作とは、そのリーダーを担うジャズマンの個性がクッキリと浮かび出た、そのジャズマンの個性をしっかり確認出来るものなのだが、このデフランセスコの初リーダー作についても例に漏れない。

この盤には、デフランセスコのオルガンの個性が溢れている。デフランセスコのオルガンを理解するには、避けて通れない、というか、まず最初の頃に聴いて欲しい初リーダー作である。
 

Joey-defrancescoall-of-me

 
ジャズ盤紹介本やネットのジャズマン情報のデフランセスコ評の中では、デフランセスコは、ジャズ・オルガンの祖、ジミー・スミスの影響を強く受けているとされる。しかし、この初リーダー作を聴けば判るのだが、ジミー・スミスの忠実なフォロワーではない。

確かにジミー・スミスっぽいのだが、ジミー・スミスのオルガンを、ストレートでシンプルな弾きっぷりに変えて、ポップで判り易いアドリブ・フレーズを弾きまくるところが、デフランセスコの個性。音の基本は「アーバンでコンテンポラリーで小粋な」オルガン。ハモンドB-3を自由に操り、様々なフレーズを弾き込む様は「凄み」さえ感じさせる。

このデフランセスコの個性を前面に押し出して、それまでのジャズ・オルガンでは演奏し得なかった、カーペンターズの「Close to You(遙かなる影)」のカヴァーをやっている。この「Close to You」とタイトル曲「All of Me」が素晴らしい出来なのだ。

ジミー・スミスの「ダイナミズム」と「躍動感溢れるファンクネス」を踏襲しつつ、「アーバンでコンテンポラリーで小粋な」フレーズで、ストレートでシンプルに弾き進めている。

この初リーダー作をリリース後、マイルス・ディヴィスのバンドに参加して、アルバム『Amandla』ではキーボードを担当している。つまりは、マイルスも認めた、ジャズ・オルガニストの逸材だと言える。そのデフランセスコならではの個性が、この初リーダー作に詰まっている。

我が国では話題にほとんど上がらないデフランセスコの初リーダー作だが、僕は評価している。良い盤だと思います。
 
 

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2022年9月13日 (火曜日)

キューンの個性の変化を捉える

1970年代のECMレーベルからリリースされた諸作から、耽美的でリリカルな抒情派、前衛的なモーダルな弾き回しで、時にフリー、時にアブストラクトに硬派で尖った、ニュー・ジャズ系のピアニストと目されていたスティーヴ・キューン。

1981年に一旦、ECMレーベルを離れたが、再び、ECMレーベルに戻ったのが、1995年のリーダー作『Remembering Tomorrow』。この盤で、明らかにキューンのピアノは変わったと感じた。

耽美的でリリカルな抒情派な部分はそのままなのだが、前衛的なモーダルな弾き回しで、時にフリー、時にアブストラクトに硬派で尖った個性が後退し、バップな雰囲気の、どこか判り易い「ポップな」弾き回しが前面に出てきた。

そして、1997年の『Sing Me Softly of the Blues』、1998年の『Love Walked In』で、ヴィーナス・レコードからリーダー作をリリースするようになる。ここにきて、キューンのピアノの変化は決定的になる。まず、明るくなった。そして、耽美的でリリカル、幾何学模様的なモード展開、整ったリズム&ビートが判り易くなった。

そして、ジャズ・スタンダード曲を演奏するようになった。前衛的なモーダルな展開が魅力の自作曲中心だったキューンが、ここにきて、ジャズ・スタンダード曲を演奏するようになる。最初は、ヴィーナス・レコードの強い要望があったのかと邪推した。しかし、キューンは筋金入りのジャズ・ピアノ職人。ヴィーナスでの諸作を聴くにつけ、そんな要望に応えるのでは無く、自らがその選択肢を選んだ様に感じた。

Steve Kuhn『Countdown』(写真左)。1998年10月19, 20日、NJ,のVan Gelder Recording Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Steve Kuhn (p), David Finck (b), Billy Drummond (ds)。キューンの個性がダイレクトに伝わるピアノ・トリオ編成。この盤でも、収録曲を見渡せば、結構マニアックなジャズ・スタンダード曲を好んで演奏している。
 

Steve-kuhncountdown

 
この盤は「Reservoir」というレーベルからのリリースになるが、この盤でも、耽美的でリリカルな抒情派な部分はそのままなのだが、 バップな雰囲気の、どこか判り易い「ポップな」弾き回しがメインになっている。しかも、ヴィーナスの諸作に比べて、スイング感が半端ない。この盤での、ハードにスイングするキューンは、まさに「バップ・ピアノ」である。

しかし、1950年代から60年代の旧来のバップ・ピアノの焼き直しでは無く、前衛的なモーダルな弾き回しを織り交ぜながら、モーダルな展開にしろ、コードの基づいた展開にしろ、新しい響き、新しいフレーズを散りばめた、現代の「ネオ・ハードバップ」に通じる、新しい「バップ・ピアノ」に仕上がっているのには恐れ入った。さすがはキューン。硬派で尖った、ニュー・ジャズ系のジャズ・ピアニストの影が、この盤の「バップ・ピアノ」に宿っている。

「Four」や「When Lights Are Low」といった、マイルスの名演で有名なジャズ・スタンダード曲を、キューンの新しいイメージのピアノで切れ味良く再構築しているところなど、実に「小粋」。これまた超有名スタンダードの「Speak Low」では、「マイルストーンズ」のメロディを引用しているところは、まるで、1950年代のハードバップ。

この「Reservoir」盤を聴いていると、やはり、1990年代半ばでの、キューンの個性の変化はキューン自身が自ら企て、自発的に変化したものだということが良く判る。

なにも、ヴィーナス・レコードにそそのかされた訳では無い(笑)。耽美的でリリカルな抒情派な部分そのままに、 バップな雰囲気の判り易い「ポップな」弾き回しのキューンをタイムリーに捉えることが出来たのだから、逆にヴィーナス・レコードはラッキーだった。
 
 

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2022年9月 4日 (日曜日)

グリーンのメジャー・デビュー

ベニー・グリーンというピアニストは隅に置けない。日本人好みのピアノを弾くと評されるが、意外と我が国では人気はイマイチ。最近のジャズ・ピアニストの特集などで、現代のジャズ・ピアニストのお勧めで、ベニー・グリーンという名前を見かけたことが無い。しかし、このピアニスト、ネオ・ハードバップにおけるモーダル・ピアノの先駆者として、実に優れたパフォーマンスを聴かせてくれているのだ。

Benny Green『Lineage』(写真左)。1990年1月30日、2月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Benny Green(p), Ray Drummond (b), Victor Lewis (ds)。ブルーノート・レコードからのリリース。ネオ・ハードバップのバップ・ピアノを先取りしたピアニスト、ベニー・グリーンのメジャー・デビュー作になる。初リーダー作から3作目にして、メジャー・デビューである。その才能がいかに着目され、期待されていたかが判る。

そして、さすが、ブルーノートである。Matt Pierson(マット・ピアソン)のプロデュースによって、ベニー・グリーンのピアノの個性であ「明るく判り易く、どこかポップな、過去のモード・ジャズな演奏を下敷きにしていない、ネオ・ハードバップのバップ・ピアノを先取りしたモーダルな弾きっぷり」をしっかりと記録している。

Criss Cross時代の2枚のリーダー作と比べて、ベニー・グリーンのピアノ全体の雰囲気は「明るい」。明るくシンプルで端正なモード・ジャズ。この辺りも意外と当時としてはユニーク。1960年代のモード・ジャズが持つ、硬派で真摯でテンションが高い雰囲気の微塵も無い。
 

Benny-greenlineage

 
バックを司る、ベースのレイ・ドラモンド、ドラムのビクター・ルイスのリズム&ビートについても、1960年代のモード・ジャズ独特のリズム&ビートの影を一切反映していない。ベースとドラム、1990年時代で、二人が考える、将来のモーダルなリズム&ビートを叩きだしている。これが、グリーンのネオ・ハードバップのバップ・ピアノを先取りしたモーダルなピアノにぴったり合っているから堪らない。

収録曲は、ボビー・ティモンズ、セロニアス・モンク、エルモ・ホープ、バド・パウエルなど、ジャズのピアニストの歴史を彩る「スタイリスト」達の曲を選んでいる。それぞれ、演奏スタイル、踏襲するトレンド、どれも異なるのだが、その個性は強烈。そんなピアニスト達の自作曲を、グリーンは、グリーンの感覚でモーダルにアレンジし、モーダルに表現し直している。

これって、簡単な様で結構難しいアレンジと弾き回しかと思うのだが、この難度の高いアレンジを、グリーンは「明るく判り易く、どこかポップな、ネオ・ハードバップのバップ・ピアノを先取りしたモーダルな弾きっぷり」で、事も無げに対応している。

今までのジャズ雑誌でのジャズ・ピアノ盤の紹介記事や、ネットでのピアノ・トリオのお気に入り評についても、このベニー・グリーンのメジャー・デビュー作について、そのタイトルが挙がることはまず無い。でも、このトリオ盤は、現代のネオ・ハードバップのモード・ジャズに通じる、「ベニー・グリーンの考えるモード・ジャズ」をしっかりと記録している。ベニー・グリーンを理解する上では避けては通れないメジャー。デビュー盤だと思います。
 
 

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2022年8月30日 (火曜日)

ベニー・グリーンの初トリオ盤

1988年の2月にクインテット編成で、初リーダー作を録音した、ピアニストのベニー・グリーン(Benny Green)。ピアニストにとって、個性が露わになる「ピアノ・トリオ」の演奏は次のリーダー作に申し送られた訳だが、その次のリーダー作は、初リーダー作の10ヶ月後、早々に録音されている。

Benny Green Trio『In This Direction』(写真左)。1988年12月29日、1989年1月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Benny Green (p), Buster Williams (b), Lewis Nash (ds)。初リーダー作のクインテットでは、リズム・セクションのパートナーとして、Peter Washington (b), Tony Reedus (ds) を選んでいたが、今回のトリオ盤については、ベース、ドラムをガラッと入れ替えている。

冒頭の「In This Direction」を聴けば、ベニー・グリーンのピアノの個性が良く判る。ビ・バップ・ピアノ、モダン・ジャズ・ピアノの祖であるバド・パウエル作の曲を、グリーンの個性でモーダルに解釈している。これがとても面白い。

セロニアス・モンク作のバップ曲「Trinkle Tinkle」を自分なりのハイテクニックな弾き方で、モンクの弾きかたの「癖」をモーダルに料理していくところなど「豪気」ですらある。

純ジャズ復古の後、1988年、新伝承派が1960年代のモード・ジャズを下敷きにした、モード・ジャズの深化形を世に問うていた訳だが、ベニー・グリーンのアプローチは、新伝承派のアプローチとは全く異なる。

バド・パウエル作の「In This Direction」、いわゆる、バップ・ピアノな曲にモーダルな解釈を施して、新しい響きのハードバップ・ピアノを表現している。モンク作の「Trinkle Tinkle」についても同様なことが言える。これが実にユニークなのだ。
 

Benny-green-trioin-this-direction

 
ベニー・グリーンのモーダルな展開は、明るく判り易く、どこかポップで判り易い。新伝承派のモーダルな展開は難解さが伴う。この違いはなんだろう。思うに、新伝承派は1960年代のモード・ジャズをベースに深化させている。グリーンは、ベースは何であれ、グリーンのモーダルな解釈をベースに新しいモード・ジャズを志向している。

つまり、新伝承派のモード・ジャズは、国語の世界で言うと「旧仮名遣い」が混じっている感じで、グリーンのモードジャズは「新仮名遣い」な感じがする。1960年代のモード・ジャズは、1960年代として最新の音だったが、1988年のモード・ジャズは、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの大流行を経験して、その遺伝子がしっかりと残っている。

1960年代のモード・ジャズは、シビアで硬派でストイックな、ちょっと難解なジャズだったと感じているが、これをベースにモード・ジャズを深化させたら、その「難解さ」はしっかり残る。グリーンのアプローチは、1960年代のモード・ジャズをあまり意識していない様なので、新伝承派が持つ「難解さ」は無い。

超絶技巧に近いテクニックでモーダルなフレーズを弾き回すので、難解なモーダルなフレーズが「流麗」かつ「端正」に聴こえるところも、グリーンのピアノならではの個性だろう。

加えて、トリオのパートナー、ベースのバスター・ウィリアムスとドラムのルイス・ナッシュのサポートが絶妙。このリズム隊に恵まれて、グリーンは心おきなく、自分なりのモーダルなフレーズを自由奔放に弾き回している。

覇気溢れる、ファンキーでモーダルな、高テクニックなピアノ。これだけ聴けば「さぞ五月蠅い、粘っこい」ピアノかな、と思うのだが、グリーンのピアノは、爽快感溢れ、どこかポップな感覚が漂う「聴き易い」ピアノ。この盤は、録音年から10年ほど経った頃、初めて聴いたのだが、「面白いモード・ピアニストがいたもんだ」と嬉しくなったのを覚えている。
 
 

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2022年8月26日 (金曜日)

Benny Greenというピアニスト

1990年代半ば辺りから、ベニー・グリーン(Benny Green)というピアニストをずっと追いかけている。いわゆる「お気に入りのピアニスト」の1人である。1963年4月生まれ。今年で59歳のベテランの域に達したピアニストである。

1963年生まれで、初リーダー作が1988年、25歳の頃なので、ウィントン率いる「新伝承派」か、それに相対する「M-BESE派」のピアニストか、と思うのだが、彼のピアノを聴いてみると判るのだが、新伝承派でも無ければ、M-BASE派でも無い。どちらかと言えば、21世紀に入ってからの「ネオ・ハードバップ」なピアノの個性が独特である。

Benny Green『Prelude』(写真左)。1988年2月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Benny Green (p), Terence Blanchard (tp), Javon Jackson (ts), Peter Washington (b), Tony Reedus (ds)。ブランチャードのトランペットとジャクソンのテナーがフロント2管のクインテット編成。メンバー全員、アート・ブレイキーとの共演の経歴を持つ。

メンバー皆、同じ世代なので、新伝承派の音になりそうなんだが、これがならない。新伝承派は、1960年代のマイルス・クインテットのモーダルな演奏を下敷きに、テクニックを向上させ、展開の難度を高めた、1960年代のモード・ジャズの改良イメージなんだが、ベニー・グリーンの初リーダー作の音は「それ」では無い。

モード・ジャズはモード・ジャズなんだが、過去のモード・ジャズな演奏を下敷きにしていない。響きがまるで違うのだ。グリーンのモーダルな展開は、明るく判り易く、どこかポップ。
 

Benny-green-prelude

 
テクニックは優秀、バリバリ高速な弾き回しもOKなんだが、とても流麗で堅実で、難解には聴こえない。ピアノの弾き回しの印象は、マッコイ・タイナー風、セロニアス・モンク風、オスカー・ピーターソン風な雰囲気が見え隠れするが、基本的には、ベニー・グリーン流のバップ・ピアノ。

モードなピアノではあるが、弾き回しの雰囲気が、モード以前のタイナー風であったり、モードとは無縁のモンク風であったり、ピーターソン風であったりするので、1960年代の優れたモード・ジャズの演奏を想起する「切っ掛け」が皆無。

モーダルな弾き回しは弾き回しなんだが、ファンクネスは薄め、1970年代のECMを中心とする「ニュー・ジャズ」の中のモード・ジャズな響きもあり、21世紀の「ネオ・ハードバップ」なモード・ジャズに近しい雰囲気である。その辺が「新伝承派」と大きく異なる部分。世代が世代なので、新伝承派の影響をモロに受けても不思議は無いのだが、ベニー・グリーンは独自の響きを持ったモード・ジャズを展開しているところがユニーク。

初リーダー作をリリースした1988年は、新伝承派の活動が活発だった頃。グリーンは、アレンジャー&コンポーザーの力量とフロント楽器をサポートし鼓舞する「伴奏上手」なピアノを世に問うべく、管楽器がフロントのカルテット、クインテット編成が米国ではウケが良いことも考慮に入れて、まずはクインテット編成で、初リーダー作を打って出ている。意外と「グリーン」は戦略家。

グリーンのピアノの個性が露わになる「ピアノ・トリオ」の演奏は、この初リーダー作のすぐ後、セカンド盤『In This Direction』でお披露目される。ネオ・ハードバップのバップ・ピアノを先取りしたグリーンのピアノは、このセカンド盤で楽しむ事が出来る。
 
 

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2022年8月24日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・247

アラン・ブロードベントはジャズ・ピアニスト。1947年生まれ、ニュージーランド、オークランド出身。今年で75歳のレジェンド級のピアニスト。

どこかで聴いたことがある名前やな、と思って調べてみたら、ナタリー コールのアルバム『Unforgettable... with Love』のレコーディングに参加していたピアニストであり、チャーリー・ヘイデンのアルバム『Quartet West』にピアニストとして参加、ポール・マッカートニーのアルバム『Kisses on the Bottom』には、オーケストラのアレンジャー&指揮者として参加している。

Alan Broadbent Trio『New York Notes』(写真左)。2018年4月と11月の録音。ちなみにパーソネルは、Alan Broadbent (p), Harvie S (Harvie Swartz) (b), Billy Mintz (ds)。リーダーは、ピアノのアラン・ブロードベント。リーダー作は生涯20作を優に超えているいるが、この盤は、そんなブロードベントの最新作。73歳での録音になる。

本作はブロードベントの自宅にあるプライベート・スタジオ(RVS Studio)で、2018年に録音された音源とのこと。ベースのハービー S は、ボストンのバークリー音楽大学時代からの友人。ドラムのビリー・ミンツは、LA時代に一緒にプレイしていた気心知れたドラマー。演奏を聴けば判るが、トリオの3者、息がピッタリ合った、素敵なインタープレイを聴かせてくれる。
 

Alan-broadbent-trionew-york-notes

 
トリオ演奏の雰囲気は、現代のバップなピアノ。ネオ・バップ・ピアノとでも形容出来る、コンテンポラリーなバップ・ピアノである。バップ・ピアノと言えば、バド・パウエルから始まり、トミー・フラナガンやケニー・ドリュー、デューク・ジョーダンらの名前が浮かぶが、そんな旧来のバップ・ピアノとは、音の切れ味、音の透明度、フレーズ展開のテクニック、どれもが全く異なる。異なるというか、全ての面で深化している。

冒頭の「Clifford Notes」は、タイトル通り、伝説の早逝の天才トランペッター、クリフォード・ブラウンに捧げた曲。軽快な4ビートのトリオ演奏がまさに「バップ」。続く「Minority」は、ジジ・グライスの曲だが、どこかで聴いたことが、と思って記憶を辿ったら、ビル・エヴァンスの初期の名盤『Everybody Digs Bill Evans』のオープニングを飾った曲。ライトでエヴァンス風のバップ・ピアノが映える。

バラード曲の「 I Fall in Love Too Easily」や「On a Misty Night」も、バップ・ピアノのマナーで弾き進めるが、実に「流麗」で「端正」。まるで唄うが如くのフレーズの連続で、弾きまくるだけでは無い、歌心をしっかり忍ばせた、ブロードベントならではのバップ・ピアノ・バラードを聴かせてくれる。

こういう現代のバップ・ピアノ・トリオの好盤があるとは知らなかった。ネットでのレコメンド情報さまさまである。ちょっとバップなピアノ・トリオを聴きたい、と思った時に、意外と繰り返し手にするトリオ盤になっている。
 
 

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2022年6月 3日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・236

長年、ジャズを聴いていると、あまり名盤ばかり聴いていると、はっきりいって「飽きる」。ジャズの世界で「名盤」と呼ばれる盤は、1950年代〜60年代に集中している。いわゆる「オールド・スタイル」なジャズである。ジャズは長い年月を経て、進化&深化しているのだから、現代のジャズにも当然「優秀盤」は沢山ある。そんな「現代の名盤」候補となる優秀盤を見つけては聴き込む。これが、ジャズ盤鑑賞の醍醐味でもある。

David Kikoski『Surf's Up』(写真左)。2001年1月18日、NYはBrooklynでの録音。Criss Crossレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、David Kikoski (p), James Genus (b), Jeff 'Tain' Watts (ds)。中堅ピアニスト、デヴィッド・キコスキーのピアノ・トリオ盤。ベースにジェームス・ジーナス、ドラムにジェフ・ティン・ワッツ。リズム隊に一流どころを配して、聴き応えのあるトリオ・パフォーマンスを聴くことが出来る。

デヴィッド・キコスキーは、1961年米国はニュージャージ生まれのピアニスト。1980年代にはバークレー音楽院でジャズを学ぶ。いわゆる「正統な教育を受けた」ジャズ・ピアニストである。タッチはやや硬質で端正、流麗な右手。ひねったり、ねじったりしたところは一切無し。ダイナミックにバリバリ弾き進めるバップなピアノ。いわゆる「総合力で勝負する」タイプのピアニストである。
 

David-kikoskisurfs-up

 
「総合力で勝負する」タイプのピアニストのトリオ盤は、アルバム自体の「企画性」と収録した楽曲の「アレンジ力」が重要になる。今回のこのキコスキー盤は収録曲が面白い。1曲目がフランク・ザッハの「Oh No」、4曲目がデュラン・デュランの「A Noite Do Meu Bem」、6曲目がビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン作の「Surf's Up」という風で、ポップス・ロック畑の有名曲をジャズ・アレンジしている。これがなかなか出来が良い。キコスキーの「アレンジ力」の高さをしっかりと感じることが出来る。

ミュージシャンズ・チューン系のスタンダード曲にも「アレンジ力」が発揮されている。チャーリー・パーカー作の2曲目「Cardboard」は、テンポが速くてゴキゲンな明るさでトリオが疾走。セロニアス・モンク作の3曲目「Four In One」はちょっとコミカルにお茶目にモンク・ライクな旋律を弾き回す。ジャッキー・マクリーン作の5曲目「Little Melonae」は、アップテンポでノリが良いが、どこか影のある印象的な表現。キコスキーの個性溢れる「アレンジ」が印象的。

リズム隊がしっかりしているので、この「総合力で勝負する」タイプのピアノ・トリオの演奏がとても魅力的に仕上がっている。そんな魅力的な演奏力のあるトリオが、小粋なアレンジを施されたポップス・ロック畑の有名曲とミュージシャンズ・チューン系のスタンダード曲を演奏する。これ、なかなか良い感じのピアノ・トリオ盤ですよ。硬派でストイックな現代のピアノ・トリオ盤ですが、どこか「小粋」な雰囲気漂う優秀盤です。
 
 

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2022年6月 2日 (木曜日)

マクブライドのビレバガ・ライヴ

クリスチャン・マクブライド(Christian McBride)は、現代のモダン・ジャズにおける最高峰のベーシスト。超絶技巧、歌心溢れるフレーズ、鋼の如く硬質にしなるようなウォーキング・ベース。どんな曲想にも適応する、どんな奏法にも適応する高いテクニック。ファースト・コール・ベーシストとして君臨するマクブライドも、今年で50歳。

Christian McBride『Live at the Village Vanguard』(写真左)。2014年12月5–7日、NYのヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Christian McBride (b), Steve Wilson (as, ss), Carl Allen (ds), Peter Martin (p), Warren Wolf (vib)。

2014年12月に2週間に渡って行われた、クリスチャン・マクブライド・グループのギグの未発表音源を収録したライヴ盤。2014年の年末最後の6日間に出演したクインテット(Inside Straight)のパフォーマンスが記録されている。フロント楽器として、サックスとヴァイブの2楽器が採用されたクインテット編成。

このライヴ盤を聴けば、現代のネオ・ハードバップの現状が良く判る。モーダルで限りなく自由度の高いインタープレイ中心の演奏。ルーツは、1950年代後半、マイルス・デイヴィスを中心としたメンバーが「モード・ジャズ」にチャレンジし、1960年代には「新主流派」として、当時のジャズ演奏のトレンドを牽引。

一度は沈滞した純ジャズだったが、1980年代中盤の「純ジャズ復古」のムーヴメントの中で現れ出でた、1960年代の「新主流派」の音が最良のジャズとして、1990年代、ウィントン・マルサリスを中心したメンバーが「新伝承派」として、モード・ジャズを深化させた。
 

Christian-mcbride_live-at-the-village-va

 
そして、21世紀に入って、難解になり過ぎた「新伝承派」の音に、1950年代のハードバップの親しみ易さ、ポップさを回帰させた「ネオ・ハードバップ」が主流となって現在に至る、なのだが、この「ネオ・ハードバップ」の好例が、このマクブライドのライヴ盤に詰まっている。

結構、難しいことをやっている割に難解には聴こえない、流麗でポップでキャッチャーな演奏がメイン。要所要所で、それぞれの楽器のロング・ソロがあって、高度なテクニックを披露するところは、ハードバップ時代の良き慣習の「踏襲」。

モーダルで限りなく自由度の高いインタープレイ中心の演奏をやっているのだが、1960年代の「新主流派」や、1990年代の「新伝承派」の音のクセや志向といったものを全く感じさせないところが、このクリスチャン・マクブライド・クインテットの凄いところ。

マクブライドのベースが、そんなモーダルで限りなく自由度の高いインタープレイ中心の演奏を自在にコントロールしているのが、ライヴ盤全般で聴いて取れる。マクブライドのグループ・リーダーとしての優れた手腕にほとほと感心する。グループ・メンバーの優秀性については「言わずもがな」。

今から7年ほど前の演奏になるが、古さは感じない。我が国では、あまり人気が芳しく無いマクブライドであるが、どうして、コンスタントに素晴らしい内容のリーダー作をリリースし続けている。当ライヴ盤も例に漏れず、現代のネオ・ハードバップを代表する素晴らしい内容の演奏がギッシリ詰まっている。 
 
 

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