2023年11月15日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・269

クリス・ポッター(Chris Potter)。米国シカゴ出身、1971年1月1日生まれ。今年で52歳になる、ジャズ・サックス奏者の中堅。純ジャズのみならず、フュージョン、ファンク的なアプローチにも長けている、オールマイティーなサックス奏者だが、やはり、メインストリーム系の純ジャズを吹かせたら、現代ジャズ・サックス奏者の先頭集団に値するパフォーマンスを披露してくれる。

Chris Potter『Got the Keys to the Kingdom: Live at the Village Vanguard』(写真左)。2022年2月、ニューヨークのライヴ・ハウス「The Village Vanguard」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Chris Potter(ts), Craig Taborn (p), Scott Colley (b), Marcus Gilmore (ds)。ポッターのテナーがワンホーン・フロントの、いわゆる「ワンホーン・カルテット」編成。演奏楽器もしっかり「アコースティック」のみで編成されている。

ワンホーン・カルテットのパフォーマンスは、フロント1管の演奏内容が聴き取り易い。この盤では、フロント1管の、ポッターのテナーのパフォーマンスの内容をじっくりと味わい尽くすことが出来る。

加えて、本ライヴ盤は収録されている6曲全てがカヴァー、オリジナル曲は無い。ジャズ・スタンダード、アマゾン民謡、ボサノヴァ、静的なスピリチュアル・ジャズなどを演奏している。このオリジナル曲の無いライヴ音源というのは、アレンジ、楽曲の解釈、アドリブ展開の仕方などが、他のサックス奏者のライヴ・パフォーマンスと比較し易い。そのライヴ盤のリーダーが吹くサックスの力量と才能を推し量り易くなる。
 

Chris-pottergot-the-keys-to-the-kingdom-

 
力感溢れる、高テクニックで悠然とブロウするポッターのテナーは実に魅力的。実に硬派でクールで歌心満載のポッターのテナーは、メインストリーム系の純ジャズでのパフォーマンスにおいて「映えに映える」。ポッターのテナーの力量と才能がハイレベルであることを十分に確認することができる。

ネオ・ハードバップな、ネオ・モーダルな正統派なテナーで、スタンダード曲やボサノバ曲を悠然とブロウし、テクニックを駆使して、アブストラクトな展開、フリーな展開にも対応する。高速フレーズも難なくこなす。圧倒的である。ポッターのテナーの優れたところは「オリジナリティー」を保持していること。コルトレーン風の吹き方をしそうな展開でも、ポッターはそうはならない。ポッター・オリジナルな展開を吹き上げていく。これは「見事」というほか無い。

バックのリズム・セクションも優秀。ECMでお馴染みのフリー〜スピリチュアル系、ミネソタ州ミネアポリス出身のピアニスト、クレイグ・テイボーン。お爺さんがロイ・ヘインズ、ヴィジェイ・アイヤーのトリオでドラムを担当するマーカス・ギルモア。ポッターと何作も共演しているお馴染みのベーシスト、スコット・コリー。このリズム隊が、適応力抜群なネオ・ハードバップなリズム&ビートを叩き出す。

クリス・ポッターのテナーは純ジャズにこそ、ネオ・ハードバップにこそ、最高に「映える」。そんな事実をこのビレバガでのライヴ盤はしっかりと伝えてくれる。ポッターのメインストリーム系のテナーを愛でるに最適な一枚。良いライヴ盤です。
 
 

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  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2023年11月 4日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・268

イタリアン・ジャズの至宝であり重鎮であるピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィ(以下、エンリコと略)。1949年12月生まれだから、今年で74歳になる。大ベテランの域であり、今までの実績から「生けるレジェンド」的存在。ビル・エヴァンスのバップでリリカルで耽美的なピアノを欧州仕様にした様な、正統派かつ硬派なモダン・ジャズ・ピアニストである。

Enrico Pieranunzi Latin Jazz Quintet『Live At Birdland』(写真左)。2008年11月1日、NYのバードランドでの録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Diego Urcola (tp), Yosvany Terry (as, ss, per), John Patitucci (b, elb), Antonio Sanchez (ds)。録音当時、2008年のエンリコ・ピエラヌンツィのニュー・プロジェクトのライヴ録音。

エンリコがラテン・ジャズに寄り道したかの様なバンド名。しかも、バードランドでのライヴ・パフォーマンスの記録。おおよそ、こってこてなラテン・ジャズが展開される、いわゆる「楽しくコマーシャルで娯楽志向」なライヴ盤だと思って、あまり聴く気が起きなかった。

が、リズム隊を見ると、硬派で正統派な現代の純ジャズ志向のベーシストのジョン・パティトゥッチ。そして、これまた、硬派で正統派な現代の純ジャズ志向のドラマーのアントニオ・サンチェスが名を連ねている。これは意外と、現代の硬派でメインストリーム志向の純ジャズではなかろうか、と思わす拝聴である。

冒頭「Talk Introduction」から「Danza 2」「Choro Del Infinito Hombre」と続く演奏を聴いて、まず「これのどこがラテン・ジャズ」なんや、と首をかしげる。というか、「非常に正統派で硬派、ストイックで真摯な欧州の純ジャズ」が展開されるのだ。
 

Enrico-pieranunzi-latin-jazz-quintetlive

 
ラテンの雰囲気は、ところどころのキーの進行に見え隠れするが、全く「ラテン・ジャズ」色は前に出てこない。ネオ・ハードバップ〜ネオ・モードなアコースティック・ジャズが展開される。

特に前半は、トランペットのディエゴ・ウルコラ(アルゼンチン出身)と、サックスのヨスヴァニー・テリー(キューバ出身)のパフォーマンスが見事。この二人のフロント2管の大活躍で、前半はエンリコのピアノはあまり目立たない。

ありゃ〜?、と思って聴き進めると、明確にラテン・フレイバーの演奏が出てきたりし出して、エンリコのピアノがグイグイ前面に出てくる様になる。明らかにラテンなフレーズが出てきても「非常に正統派で硬派、ストイックで真摯な欧州の純ジャズ」な雰囲気は変わらない。ネオ・ハードバップ〜ネオ・モードな展開の中で、乾いた「ラテンなフレーズ」が見え隠れする。

不思議な雰囲気のライヴ盤。ラテン・ジャズ基調でありながら、俗っぽくて判り易い、こってこてなラテン・フレーヴァーは皆無。演奏全体の雰囲気は「非常に正統派で硬派、ストイックで真摯な欧州の純ジャズ」。そんな雰囲気の中で、ストイックなラテン・フレーズが展開される。欧州ジャズが考えるラテン・ジャズ、とでも形容したら良いだろうか。

バンド名に惑わされてはいけない。「ラテン」が付いているからといって、いわゆる「楽しくコマーシャルで娯楽志向」の、こってこてなラテン・ジャズが展開される訳ではない。そんな要素は皆無。現代のネオ・ハードバップ〜ネオ・モードなアコースティック・ジャズの好盤として聴かれるのが良いだろう。充実した内容の好盤である。
 
 

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2023年10月 9日 (月曜日)

エンリコのローマでのライヴ盤

ここ2〜3年ほどだろうか、イタリアン・ジャズの至宝ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィ(以降、エンリコと略)のリーダー作を数多く目にする。新盤もあるし、以前のお蔵入り音源のリリースもあるし、以前リリースされたアルバムのリイシューもある。とにかく、エンリコの人気は尋常ではない。欧州ジャズにおけるピアニストの第一人者であることは事実だし、とても欧州のモダン・ジャズらしい響きは、確かにジャズ者万人向けのピアニストではある。

Enrico Pieranunzi, Joey Baron & Marc Johnson『Current Conditions - Live in Rome at Radiotre』(写真左)。2001年11月、ローマでのライヴ演奏。マーク・ジョンソンのベース、ジョーイ・バロンのドラム、という「プレイ・モリコーネ・シリーズ」のトリオによるライヴ演奏。2007年にリリースされている。今回、僕はこのライヴ盤は初めて聴いた。

「プレイ・モリコーネ・シリーズ」のトリオとは言っても、こライヴ盤では、モリコーネの楽曲は全く無い。トリオのメンバーそれぞれのオリジナル曲を持ち寄っての、21世紀の、欧州ジャズの「ネオ・ハードバップ」もしくは「ネオ・モード」な演奏がてんこ盛り。特に、マーク・ジョンソンのベース、ジョーイ・バロンのドラムという、現代における、最高レベルのベテラン・リズム隊に恵まれて、エンリコは自由奔放、変幻自在、硬軟自在に、モーダルなフレーズを弾きまくっている。
 

Enrico-pieranunzi-joey-baron-marc-johnso

 
このライヴ盤の魅力は、エンリコの欧州ジャズ的な、耽美的でリリカルでバップなピアノなんだが、その魅力をさらに押し上げているのが、マーク・ジョンソンのベース、ジョーイ・バロンのドラムの存在。このリズム隊の存在がエンリコのピアノの魅力を明らかに増幅している。このリズム隊、相当、強力にエンリコをバッキングし鼓舞しているのが、ありありと伝わってくる。

マーク・ジョンソンは、ビル・エヴァンスの最後のトリオのベース担当であったくらいで、エンリコの耽美的でリリカルでバップなピアノをよく理解し、よくサポートする様が実に頼もしい。そして、ジョーイ・バロンのドラムは、ピアノとベースのインタープレイの「底」をしっかり支え、自らもインタープレイの中に参加する。実は、ジョーイ・バロンのドラミングについては、こんなに素敵に、ネオ・ハードバップな、自由度と柔軟度の高いドラミングをするドラマーとは思わなかった。

音楽のサブスク・サイトを徘徊していて偶然見つけたライヴ盤であったが、これは「当たり」。ジャケはあまりに単純で、最初は、とるに足らない「イージーリスニング・ジャズ」と思って流したが、ジャケをよくよく見ると、エンリコ、ジョンソン、バロンの名前が見えるではないか。戻って、ストリームできいてみて、あらビックリである(笑)。しかし、エンリコのリーダー作にはハズレが無いなあ。感心することしきり、である。
 
 

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2023年9月 1日 (金曜日)

硬派で純ジャズなマクブライド

クリスチャン・マクブライド(Christian McBride)。現代ジャズにおけるファースト・コール・ベーシスト。1972年5月31日生まれなので、今年で51歳。初リーダー作『Gettin' To It』が1995年1月のリリース。サイドマン参加では1990年の記録があるから、約30年以上に渡って、ジャズ・ベーシストの第一集団を走ってきたことになる。

マクブライドはベーシストでありながらリーダー作が多い。約20枚のリーダー作をリリースしていて、平均1.5年に1枚のペース。ベーシストでリーダー作を一番リリースしているのは、恐らく「ロン・カーター」だろうと思うが、カーターで平均1年に1枚のペースだったかと思う。つまりは、マクブライドはロン・カーターと同程度の「多作」ベーシストなのだ。

Christian McBride's New Jawn『Prime』(写真左)。2023年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Christian Mcbride (b), Josh Evans (tp), Marcus Strickland (ts, b-cl), Nasheet Waits (ds)。クリスチャン・マクブライド・ニュー・ジョーンの、2018年のデビュー盤(ブログ記事はここをクリック)に次ぐ、2ndアルバムになる。

マクブライドは、様々なジャズのスタイルに適応する。それだけ、アレンジとセルフ・プロデュースの才に長けている訳だが、今回のこのクリスチャン・マクブライド・ニュー・ジョーンの 2ndアルバムは、現代のガッチガチ硬派でストイックな純ジャズ。聴き応えバッチバチである。従来からの「ジャズ・スタンダード曲」と呼ばれるものを1曲たりとも選曲していないところが実に硬派やなあ、と思う。
 

Christian-mcbrides-new-jawnprime

 
いきなりフリー・ジャズ風な展開から入る。いきなりビックリである。これはフリー・ジャズか、と思ったら、いきなりR&Bのようなオープニングが鳴り響いて、これまたビックリ。それぞれの楽器が太く良く鳴っているので、耳に心地良く響く。そして、ストリックランドのバスクラがブリブリッ。それぞれの楽器がかなり伸び伸び吹き回している。ふと気がついた。そう、このバンド演奏、ピアノレス。

ピアノレスがゆえにベースとドラムが前面に出てくる。マクブライドの太いソリッドで伸びやかなベースが実に魅力的。聴いて何だかゾクゾクする様なベースの胴鳴り。自由度の高い、変幻自在のドラミングがそんなマクブライドのベースに絡んで、独特のグルーヴを醸し出す。そこに、ストリックランドのテナー&バスクラが切り込み、エヴァンスのトランペットが炸裂する。フレーズの展開はモーダル時々フリーが基本。

選曲がふるっている。ストリックランド作曲のタイトル曲「Prime」、マクブライドが書き下ろしたオリジナル2曲「Head Bedlam」「Lurkers」、ラリー・ヤングの「Obsequious」、オーネット・コールマンの「The Good Life」、そしてソニー・ロリンズの「East Broadway Run Down」。

特に、ヤング、コールマン、ロリンズの楽曲のアレンジが尖っている。現代のモード&フリーな演奏を展開する時、ヤング、コールマン、ロリンズの楽曲が「現代ジャズのスタンダード曲」なんだろう。実に硬派で尖っている。良い音で鳴っている。
 
 

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2023年8月11日 (金曜日)

スコットのドラミングは新しい。

最近、ドラマーのリーダー作を追いかける中で、現在のジャズ・ドラマーの優秀どころのリーダー作を聴いている。21世紀に入った辺りから、現代のジャズ・シーンに繋がる、次世代のドラマーが幾人か出てきている。ブライアン・ブレイドもそんな中の1人だし、最近ではテリー・リン・キャリントン、ジョナサン・ブレイク、マーク・ジュリアナなど、優れた中堅ドラマーがどんどん頭角を現している。

Kendrick Scott『Corridors』(写真左)。2023年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Kendrick Scott (ds, vo), Walter Smith III (ts), Reuben Rogers (b)。

最近のドラマーがリーダーのアルバムの流行なんだろうか、ウォルター・スミスⅢのテナーがフロント1管、ピアノレスのワンホーン・トリオの編成。フロント管のアドリブの自由度とリーダーのドラマーのパフォーマンスの自由度が最大限に広がる編成である。

ケンドリック・スコットも、最近、頭角を現した現代ジャズ・ドラマーの優秀どころの1人。米国ヒューストン出身、現在43歳のバリバリ中堅のジャズ・ドラマー。テレンス・ブランチャードのクインテットでの活躍、それから、我が国の山中千尋『Abyss』『Forever Begins』への参加が印象的。リーダーとしての音作り、サイドマンとしての参加傾向から、現代の「ネオ・ハードバップ」「ネオ・フォービート」志向のドラマーであることが窺える。
 

Kendrick-scottcorridors

 
この『Corridors』を聴くと、スコットのドラミングが実に格好良い。冒頭の「What Day Is It?」では、音数多く炸裂する様なドラミングは見事。高速4ビートの疾走感が堪らない。ドラミングの切れ味が抜群なのだろう、音数が多いにも関わらず、煩くない。逆にキレッキレのビートが耳に心地良い位だ。加えて、スコットのドラミングは重心が低くて、ビートが分厚い。ズンズンと響く重低音がこれまた心地良い。

演奏全体は、オーソドックスな「ネオ・ハードバップ」「ネオ・モード」なんだが、スコットのドラミングが新鮮に響くので、レトロな雰囲気や温故知新な感じは全く無い。どこまでも現代的な、新しいモード・ジャズの響きがとても良い。これだけ自由度の高い、切れ味良く重心の低いドラミングがバックにいるのだ、フロント1管のウォルター・スミス三世は、そんな分厚いビートに乗って、伸び伸び、大らかに豪快に疾走感溢れるテナーを吹き上げる。

印象的で小粋なラインを刻みつつ、ウネウネと波の様に弾性に富んだルーベン・ロジャーズのベースは、このバンド演奏、ネオ・モードの展開の良き「道標」となって、演奏全体の底を支え、リズム&ビートをキッチリと押さえている。これまた見事。

スコットのドラミングは「新しい」。従来のハードバップ、モード・ジャズには無い、新しいドラミングの響きは、オーソドックスな「コンテンポラリーな純ジャズ」に新しい息吹を与えてるかのようだ。今から次作が楽しみ。
 
 

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2023年8月10日 (木曜日)

ジェフ・テイン・ワッツの新作盤

以前の記事で、ブライアン・ブレイドがドラムを担当するアルバムに「駄盤」は無いと言ったが、現代のジャズ・シーンには、ブレイドに比肩する「優れもの」ドラマーが幾人かいる。まずは、1990年代から、聴き込んだアルバムに良く見るドラマーの名前。Jeff "Tain" Watts(ジェフ・テイン・ワッツ)である。1990年代に頭角を現した、優れたドラマーの1人。

ジェフ・テイン・ワッツに初めて出会ったのは、確か、ブランフォード・マルサリスのリーダー作だったかと思う。ブランフォードはリーダー作ではドラムはほぼ「ジェフ・テイン・ワッツ」。よほど相性が良いのだろう。サックスとの相性が良いのかと思っていたら、ピアニストのデヴィッド・キコスキーのサイドマンでのドラミングも見事なので、楽器は厭わない、アドリブ展開の自由度が広がるドラミングが良いのだろう。

Watts, Turner, Le Fleming『Misterioso』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Jeff "Tain" Watts (ds), Mark Turner (ts), Orlando Le Fleming (b)。ピアノレスのテナー1管がフロントの「ワンホーン・トリオ」。

フロント管のアドリブ展開の自由度が広がる、バックのリズム隊の力量がその成否を左右する演奏フォーマット。ピアノレス・トリオの3人が並列に並んでいるが、リーダー格はドラムのジェフ・テイン・ワッツだろう。
 

Watts-turner-le-flemingmisterioso

 
全編に渡って、ワッツのドラミングが映えに映えている。ポリリズミックで小粋でダイナミック、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミングは見事。特に、これだけ高テクニックが要求されるドラミングだが、重量感があって、実にソリッドでしなやか。聴いていて、全く耳に付かないどころか、ついついドラムの音を追ってしまう。

マーク・ターナーのテナーがこれまた見事。ワッツのダイナミズム溢れるドラミングを推進力として、モーダルなフレーズをバンバン吹き上げていく。ワッツのドラミングに負けない素晴らしい吹きっぷり。ピアノのコードの制限が無い分、ターナーは限りなく自由に、ネオ・モーダルなフレーズを吹くターナーに耳を奪われる。とりわけ、2曲目の「Yesterdays」は素晴らしいインタープレイの応酬。

オーランド・ル・フレミングのベースがピアノレス・トリオ全体のビートの底をしっかり押さえて、限りなく自由度の高いワッツのドラミングとターナーのテナーをしっかりと導いている。フレミングのベースはこのトリオ演奏の中で、かなり重要な役割を果たしている。

この「優れたピアノレス・トリオ」の力量に見合った「玄人好みの選曲」も実に良い。ピアノレス・トリオのパフォーマンスの成否はドラマーが握る、と思っているが、この盤では「さすが、ジェフ・テイン・ワッツ」。ジェフ・テイン・ワッツのドラミングが、素晴らしい内容の「ピアノレス・トリオ」の演奏を引き出している。
 
 

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2023年7月30日 (日曜日)

今を行く硬派なギター・トリオ

当代のジャズ・ドラマーで、信頼して聴くことが出来るドラマーが幾人かいる。 ブライアン・ブレイド(Brian Blade)は、そんな「当代の信頼出来るジャズ・ドラマー」の1人。この人のドラミングは、初リーダー作『Brian Blade Fellowship』(1998年)から、ずっと聴いているが、リーダー、サイドマンどちらのドラミングも見事なもので、僕は「ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤は無い」と思っているくらいである。

Jeff Denson, Romain Pilon, Brian Blade『Finding Light』(写真左)。2022年1月17日,18日の録音。ちなみにパーソネルは、Jeff Denson (b), Romain Pilon (g), Brian Blade (ds)。米国中堅ベーシストのデンソン、フランス出身の才人ギターのピロン、そして、僕が信頼する当代きってのジャズ・ドラマーのブレイド、の3人が邂逅したギター・トリオ。

トリオの3名、並列の共同リーダー作。確かに、3人3様、それぞれがリーダーシップを取り合いながら、素晴らしいパフォーマンスを披露している。オーソドックスなスイング志向あり、変拍子な演奏あり、ジャズ・ファンクあり、ストイックで硬派なインプロビゼーションありで、それぞれのインタープレイの応酬が見事。
 

Jeff-denson-romain-pilon-brian-bladefind  

 
コロナ禍で収録スケジュールを3度、変更せざるを得なかったらしいが、間延びせず、鮮度の高いパフォーマンスを繰り広げている。演奏の基本はモード。現代の最先端の「ネオ・モード」な音が実に良い。何気なく、弾き流している様に感じるが、どうして、適度なテンションを張りつつ、かなりマニアックな、かなり難度の高いパフォーマンスが凄い。特に、ピロンのギターが流麗かつ耽美的、そしてリリカル。それでいて、ジャジーな雰囲気をしっかり湛えていて、かなり聴き応えのあるギターが印象的。

ベースとドラムのリズム隊は「素晴らしい」の一言。デンソンのベースは、トリオ演奏の「底」をしっかりと押さえて、他の2人が安心してパフォーマンス出来るベースラインを供給する。ブレイドのドラムは緩急自在、硬軟自在、変幻自在。ポリリズミックな展開も芳しく、トリオというシンプルな演奏の中、リズム&ビートに、ブレイドならはの「彩り」を添えていて、トリオ演奏をバラエティー豊かなものにしている。

現代のコンテンポラリー・ジャズ、「今」を行く硬派なギター・トリオとして、内容ある好盤だと思います。トリオ演奏として、音数は決して多くはないが、それぞれの「間」を上手く活かした、流麗でクールでエモーショナな演奏に、思わず聴き込んでしまう。ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤は無い」と感じて久しいが、この盤もブレイドがドラムを担当していて、その内容に「間違いは無い」。
 
 

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2023年5月27日 (土曜日)

ARTEMIS『In Real Time』良好

その時点での代表的なジャズマンを選定してグループを結成させ、スーパーグループとして売り出す、という企画型のレコーディングは、何時の時代にもある。1950年代には、ノーマン・グランツ主宰のJATP(Jazz at the Philharmonic)があった。フュージョン・ジャズの世界では「Fuse One」というスーパーグループがあったなあ。

一番覚えているのは、1980年代半ば、純ジャズ復古の時代に、新生ブルーノートがオーディションで発掘した20歳代前半のNY若手ミュージシャンによって結成された「Out of Blue(アウト・オブ・ブルー)」というスーパーグループ。このグループからは、有名どころとして、ケニー・ギャレット (Kenny Garrett) 、ラルフ・ピーターソン (Ralph Peterson Jr.) 、リニー・ロスネス (Renee Rosnes) を輩出している。

ARTEMIS『In Real Time』(写真左)。ちなみにパーソネルは、2023年5月のリリース。Ingrid Jensen (tp), Nicole Grover (ts), Alexa Tarantino (multi-reed), Renee Rosnes (p), Noriko Ueda (b), Allison Miller (ds)。現代ジャズの最高峰女性プレイヤーが集結したスーパー・グループ「アルテミス」の3年振りのアルバム。ブルーノート・レコードからの2作目になる。
 

Artemisin-real-time

 
音楽監督は、ピアニストのリニー・ロスネスが務める。ベースには、日本人女性ベーシストの上田典子が参加している。内容的には、現代の最先端を行く「ネオ・ハードバップ」もしくは「ネオ・モード・ジャズ」、いわゆるコンテンポラリーなメインストリーム・ジャズである。それぞれの演奏能力は非常に高く、様々な音楽要素へ柔軟に適応。これまでのジャズの様々な演奏スタイルやトレンドを包含して、新鮮でオリジナリティ溢れる「現代のモダン・ジャズ」の音を出していて見事。

それぞれのオリジナル曲も良い出来で、聴き応えは十分。ウェイン・ショーター作の「Penelope」、ライル・メイズ作の「Slink」のカヴァーもアルテミス自身の個性によってしっかり解釈された演奏で、とても新鮮に聴こえる。とにかく、演奏力は半端ない。そして、それぞれの楽器の音を良く聴き、適切な反応が素晴らしいインタープレイも見事。いやはや、とても良く出来た、現代の「ネオ・ハードバップ」もしくは「ネオ・モード・ジャズ」。

2020 年にデビューしたこのグループ「アルテミス」。今回は3年振りの録音となったみたいだが、これだけのコンテンポラリーで上質なジャズを表現出来るグループである。せっかくの企画、せっかくのスーパーグループである。もう少し短い頻度で、様々な企画盤を出し続けても良いと思うのだがどうだろう。こういうしっかりとした「音の志向」もったグループは稀少なので、僕はそれを期待したい。
 
 

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2023年5月18日 (木曜日)

レジェンドだけど「元気なロン」

1950年代のハードバップ期から、ずっと第一線で活躍してきたレジェンド級のベーシストについて、振り返って見ると、ほとんどが鬼籍に入ってしまっている。2020年辺りで、現役でプレイしているレジェンド級のベーシストは「ロン・カーター(Ron Carter)」しか見当たら無くなってしまったようだ。

Ron Carter『Foursight - The Complete Stockholm Tapes』(写真左)。2018年11月17日、ストックホルムのジャズクラブ「Fasching」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Jimmy Greene (ts), Renee Rosnes (p), Payton Crossley (ds)。テナー・サックスがフロント1管の、シンプルな「ワンホーン・カルテット」編成。

ロン・カーターは、このライヴ盤の録音時点で81歳。溌剌としたアコースティック・ベースを奏でていて素晴らしい。とても81歳とは思えないパフォーマンス。

ロンは、自身のリーダー作紐解くと、1960年代はリーダー作はドルフィー、マルとの『Where?』のみ。マイルスの下で「限りなくフリーなモード・ジャズ」を志向し、ベースの音は、いかにもモードな演奏に完全対応した様な、間と音の拡がりを活かしたもので、聴けば、これはロンのベースと直ぐ判るほどの個性溢れるベースだった。

しかし、1970年代、マイルスの下を去って独立すると、ほどなくCTIレーベルに移籍。フュージョン・ジャズをメインに活動を継続する。リーダー作の制作については、リーダーとして、ロンの志向するジャズをセッションで具現化する部分はまずまず良好な内容だったのだが、ロンのベースの音自体がいただけない。アンプで電気的に増幅し弦高の低いブヨンブヨンとゴムが伸びたように間延びした、しかも、ピッチが外れたベースの音で、聴くのが辛いリーダー作も多々あった。
 

Ron-carterfoursight-the-complete-stockho

 
1990年代、ブルーノート・レーベルに移籍して以降、ベースの効くに耐えない音が改善され、アコースティック・ベースの弦と胴の骨太な「鳴り」を活かした、ピッチのずれもかなり改善された、まずまずのベース音に修正されて、やっとまともに、ロンのリーダー作を鑑賞する気になった。誰かに指摘されたのかなあ、特に21世紀に入ってからは、安定して端正でロンの個性溢れるアコベで活躍している。

さて、このストックホルムでのライヴ盤に話を戻すと、ロンのベースの音は良好。演奏全体の志向は、過去のモード・ジャズを踏襲しつつ、新しいアレンジや響きを散りばめた「軽めのネオ・ハードバップ」な演奏になっている。大向こうを張ったハッとするような新鮮さはあまり感じられないが、絶対に過去のコピー、過去の焼き直しなモード・ジャズでは無い、どこか現代のモード・ジャズの響きをしっかり湛えた演奏は、意外と聴き応えがある。

他のメンバー、特に、これまたベテラン女流ピアニスト、リニー・ロスネスのパフォーマンスが充実している。そう、ロスネス、モーダルなピアノ、弾きまくりである。とっても溌剌として元気なパフォーマンスにはビックリ。往年のロスネスがここにいる。

サックスのジミー・グリーン、ドラムのペイトン・クロスリーも、あまり馴染みのあるジャズマンでは無いにしろ、当ライヴ盤でのパフォーマンスは大健闘だろう。良い雰囲気、良い感じでのパフォーマンスは聴き応えがある。

選曲も奇をてらわず、と言って、皆がとても知っている「どスタンダード曲」に依存することもなく、ロンの自作曲も交えて、ちょっと小粋なスタンダード曲をチョイスしているところも良い感じ。

現代の「軽めのネオ・ハードバップ」盤として、なかなかの内容の好盤です。録音当時、81歳のロンが元気にプレイしているところも好感度アップ。レジェンド級ジャズマンのリーダー作として、一聴の価値アリ、ですね。
 
 

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2023年4月21日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・260

小粋なジャズ盤を探索していると、特定のレーベルに「小粋なジャズ盤」が集まっているように感じる時がある。「Criss Cross Jazz(クリス・クロス・ジャズ)」もその1つ。ジェリー・ティーケンスによって、1980年に設立されたオランダのジャズ・レーベル。現代メインストリーム・ジャズにおける最重要レーベルのひとつである。

約40年もの間、有望な若手や新人ジャズマンをメインに、リーダー盤を数多く手掛けてきている。プロデューサー、エンジニア、ジャケット・デザイナーらジャズを専門とするスタップによる一貫した音作り。パッケージングやデザイニングは統一感があり、見れば「Criss Cross Jazz」と判るほどの徹底ぶり。いわゆる「現代のブルーノート」の様な雰囲気のレーベルである。

Richard Wyands Trio『Reunited』(写真左)。1995年6月18日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Richard Wyands (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)。通好みのピアニストとして著名なリチャード・ワイアンズがリーダーのトリオ編成。リズム隊は、ベースのピーター、ドラムのケニーの「Wワシントン」。

リチャード・ワイアンズ(Richard Wyands)は、1928年7月生まれの米国オークランド出身のジャズ・ピアニスト。2019年9月に惜しくも91歳で鬼籍に入っている。ジーン・アモンズ、ケニー・バレルのサイドマンをはじめ、多くの一流ジャズマンのセッションに参加している。リーダー作は長いキャリアの中で僅か7枚。しかし、その内容は良い。
 

Richard-wyands-trioreunited

 
この『Reunited』は、そんな数少ないリーダー作の中の3作目。現代のNYを代表する最強リズム隊「Wワシントン」を従えて、いつになく充実したパフォーマンスを繰り広げている。選曲を見渡せば、なかなか味のあるスタンダード曲やジャズメン・オリジナル曲がピックアップされていて、原曲のフレーズの良さもあって、メロディアスで小粋な弾き回しは味わい深いものがある。

それと、当時67歳のワイアンズが、いつになく覇気溢れるピアノを弾き回しているのは、バックのリズム隊、ドラムのケニーの「Wワシントン」の存在が大きい。アルバム全体を覆う心地良いスイング感、小粋な「間」とファンクネスは、「Wワシントン」の叩き出すリズム&ビートが醸し出している。

そこに、ワイアンズの小粋でジャジーなピアノが乗っかって、実に味わい深い、ネオ・ハードバップなトリオ演奏に仕上がっているのだ。1995年という録音時期ながら、古き良きハードバップ時代の、スリリングでハイ・テクニックなインタープレイが展開されていて、聴き応えも十分。決してラウンジ・ジャズ風には展開しないところに、「Criss Cross Jazz」の矜持を感じる。

1995年の録音なので、ワイアンズは67歳。有望な若手や新人ジャズマンをメインにリーダー作を制作する「Criss Cross Jazz」としては、この大ベテランのワイアンズのリーダー作は異色ではあるのだが、味わい深い、小粋で安心感のある演奏にしあがっているのは、さすが「Criss Cross Jazz」だと感心している。
 
 

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