2023年3月24日 (金曜日)

ベテランのネオ・ハードバップ

Smoke Sessions Records(以降、Smokeと略)。1999年、NYのアッパーウエストにオープンしたジャズクラブ「Smoke」のオーナーが、2014年に設立したジャズ専門レーベル。

「Smoke」に出演している人気アーティスト(ベテランが主)の録音を中心に「ポスト・バップ・ジャズ」、「メインストリーム」系のオーソドックスな作品が中心。今後のジャズシーンを担うであろう若手のリーダー作も積極的にリリースしている。

最近、Smokeのリリースするアルバムを良く聴く。これまで第一線を走ってきたベテラン・ジャズマンをメインにリーダー作を作成していて、モード・ジャズ、ネオ・ハードバップなど、ポスト・バップ〜メインストリーム系の純ジャズがメイン。

メンバーの選定も優秀。特に、このベテランのリーダー作が良い味を出している。感心するのは、昔の演奏をなぞるのでは無い、現代の新しい響きのモード・ジャズ、ネオ・ハードバップを表現していること。

そんな現代の新しい響きのモード・ジャズ、ネオ・ハードバップを、第一線を走ってきたベテランのジャズマンが、余裕と深みを持って、粛々と演奏する。その音世界は、現代のジャズの新しい響きを宿しているにも関わらず、決して尖ってはいない。燻し銀の如く「渋く」、堅実で余裕を持ったリズム&ビートは、決して「走る」ことは無い。それでいて、演奏のレベルは高く、テクニックも優秀。若手ジャズマンには出せない、年齢と経験の深さを基にした、クールで深みのある純ジャズである。

Bobby Watson『Back Home in Kansas City』(写真左)。2022年4月5日、NYでの録音。Smokeからのリリース。ちなみにパーソネルは、Bobby Watson (as), Jeremy Pelt (tp), Cyrus Chestnut (p), Curtis Lundy (b), Victor Jones (ds)、そして、ゲストに、Carmen Lundy (vo)。リーダーのボビー・ワトソンのアルト・サックスとジェレミー・ペルトのトランペットがフロント2管のクインテット編成が基本。
 

Bobby-watsonback-home-in-kansas-city

 
リーダーのボビー・ワトソンは、1953年カンザス州生まれ。今年で70歳になるベテランのアルト・サックス奏者。1977〜1981年、アート・ブレイキー& ジャズ・メッセンジャーズに在籍。メロディセンス溢れるプレイや作曲能力で人気を博した。メッセンジャーズを脱退後は自己のバンド“Bobby Watson & Horizon” を中心に、様々なセッション等で活躍。伝統的で安定したメインストリームな、歌心を湛えたアルト・サックスを吹くところが僕は好きだ。

この盤は、コロナ禍の中、故郷カンザスシティに思いを馳せた、ストレート・アヘッドな純ジャズ盤である。全11曲、全て、モード・ジャズ、ネオ・ハードバップな演奏で占められる。モーダルなフレーズが心地良いのだが、このモーダルなフレーズが全く古くない。「どこかで聴いた事がある」感が全く無く、新しい響きに満ちている。これには感動した。新伝承派のモード・ジャズなどは、もう遠い過去のものになったなあ、と改めて思った。

ボビー・ワトソンのアルト・サックスは絶好調。余裕があって流麗で歌心満点。音はブリリアントで、ブラスが良く鳴っている。この溌剌としたアルト・サックスが、今年70歳の大ベテランが吹いているとは。しかし、パフォーマンス全体を覆う「余裕と大らかさ」は若手には出せない「味」である。そして、中堅トランペッターのジェレミー・ペルトが、ワトソンのアルト・サックスにしっかり寄り添っていて、フロント2管をしっかりと盛り立てている。

ピアニストのサイラス・チェストナット、ベーシストのカーティス・ランディ、ドラマーのビクター・ジョーンズ。このリズム・セクションがとても良い。特に、サイラス・チェスナットの仄かにファンキーでモーダルなピアノが効いている。ベースとドラムが堅実にリズム&ビートをキープする中、チェスナットの歌心溢れるピアノが、歌心溢れるワトソンのアルト・サックスを鼓舞し引き立てる。ワトソンのアルト・サックスとチェスナットのピアノとの相性の良さ。メンバー選定の勝利である。

ジャズの演奏トレンドの中でも歴史があるモード・ジャズ、ネオ・ハードバップな演奏で占められているが、古さを全く感じ無い、逆に、新しさを感じる、新しい響きを感じる「不思議な魅力」を湛えた、聴き応え十分の好盤です。
 
 

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2023年3月18日 (土曜日)

「和製のヴァイブの新人」出現

我が国のジャズ・シーンにおいても、コンスタントに有望新人が出ている。何時頃からか、そう、21世紀に入って、2002年、ピアニスト山中千尋が初リーダー作を出した頃から、一気に将来有望な新人がどんどん出てきた。商業主義が反映されたボーカルを除けば、どの楽器でも、出てきた新人の多くは、今でも中堅として活躍している。

吉野智子(Tomoko Yoshino) Quartet『Kaleidoscope』(写真左)。2023年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、吉野智子 (vib), 雨宮彩葉 (p). 鉄井孝司 (b), 小田桐和寛 (ds)。パーソネルを見渡して、リーダーの吉野智子を含め、僕にとっては初見のメンバーばかり。特に、リーダー吉野の担当楽器は「ヴィブラフォン」。

吉野智子。東京都出身。10歳よりマリンバ、国立音楽大学に進学し、本格的に打楽器全般を演奏し始める。在学中、第13回JILA音楽コンクールマリンバ部門第1位を獲得。同大学ビッグバンド・サークルに所属しヴィブラフォンを担当、第40.41回山野ビッグバンドコンテストにて最優秀賞受賞。ジャズヴァイブ・作曲を赤松敏弘に師事。

アマチュア・ビッグバンド所属のヴァイブ担当が独立して、プロのヴァイビストになった訳で、確かに、吉野のヴァイブは素姓が良い。
 

Tomoko-yoshino-quartetkaleidoscope

 
音の個性としては、ファンクネスは皆無。硬質で透明度の高い音で、ヴァイブの音の質としては、4本マレット奏法を駆使している面も含めて「ゲイリー・バートン」に通じるものがある。音がバートンよりも暖かい感じなので、いわゆる「温和なバートン」という雰囲気。

ヴァイブのパフォーマンス自体は申し分無い。テクニックも優秀、弾き回しは流麗。アドリブ展開のスピード感も十分、速いパッセージは切れ味良く、スローなフレーズは歌心十分。初リーダー作とは思えない、完成度の高いヴァイブである。全9曲中、7曲が自作曲で、これがまた出来が良い。作曲の才能にも注目したい。

演奏全体の雰囲気は、モード奏法がメインの「ネオ・ハードバップ」。特にモーダルな展開は、過去の成果を踏まえながら、現代ジャズの響きを湛えていて立派。即興演奏のフレーズには淀みが無く、ポジティブな響きで清々しい。特にスタンダード曲の「I Hear a Rhapsody」では、アレンジが従来のジャズには無いユニークなもので、アレンジ能力も良さも垣間見える。チャレンジ精神も旺盛。

初デビュー作としては申し分の無い出来。吉野のヴァイブの個性も良く判るし、コンポーズ&アレンジの才能も注目に値する。特に、ジャズ演奏の絶滅危惧種の1つである「ヴィブラフォン」を担当する、将来有望な新人の出現である。次作についても、しっかりと見守っていきたい。
 
 

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2023年3月 9日 (木曜日)

ピアノでジャズの歴史を駆け巡る

ジャズは死んだ、なんて言われて久しいが、2023年になった今でも、ジャズの新盤はコンスタントにリリースされているし、有望な新人もコンスタントに現れ出でている。今回も、なかなか将来有望な、米国東海岸の新進気鋭のジャズ・ピアニストの最新のリーダー作を聴く機会に恵まれた。

Emmet Cohen『Uptown in Orbit』(写真左)。2021年12月1ー2日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Emmet Cohen (p), Russell Hall (b), Kyle Poole (ds), Patrick Bartley (as), Sean Jones (tp)。米国東海岸の新進気鋭のジャズ・ピアニスト、エメット・コーエンがリーダーのクインテット編成。トリオ演奏とクインテット演奏、2種類にフォーマットで演奏している。

エメット・コーエンは、1990年、米国フロリダ州マイアミの生まれ。今年33歳のバリバリ若手のジャズ・ピアニストである。クラシック音楽にも造詣が深く、コーエンのピアノを聴いていると、確かにクラシックの影響が垣間見える。2011年に初リーダー作『In the Element』をリリース。以降、1年に1枚のペースでコンスタントにリーダー作をリリースしている。

さて、このコーエンの『Uptown in Orbit』、内容的に面白い。冒頭、ラグタイム風のピアノに面くらう。そして、ラグタイム〜ストライド〜デキシーランドな雰囲気濃厚な「Finger Buster」へと展開する。
 

Emmet-cohenuptown-in-orbit

 
オールド・スタイルなピアノだが、実にスインギーに弾き進めていく。オールド・スタイルのジャズへのオマージュ的な内容かと思いきや、2曲目のタイトル曲は、6/8拍子で、硬派でハードバップなモード・ジャズをガンガン展開する。

この2曲目の「Uptown in Orbit」では、バートリーのアルト・サックスとジョーンズのトランペットが参入して、クインテットの演奏になっているが、熱気溢れる演奏で聴き応え十分。クインテットの演奏も実に魅力的だ。で、3曲目の「My Love Will Come Again」は、非4ビートでメロディアスな演奏に早変わり。

以降、ジャングルスタイルやラテン的な要素も見え隠れ、コンテンポラリーな純ジャズ、ポスト・バップな8曲目「Distant Hallow」、9曲目の「Mosaic」のアップテンポな演奏は見事。

恐らく、このコーエンの『Uptown in Orbit』は、デキシーランド〜現代までのジャズの歴史がテーマになっているのだと思うが、コーエンのピアノ・トリオが、この様々なスタイルのジャズに対して、変に拘ること無く、サラッと柔軟に素直に対応しているのには凄く感心した。このコーエン、ホール、ポールのトリオのポテンシャルは相当なものと推察する。

とりわけ、コーエンが実に楽しそうにピアノを弾きまくっている様子が、このアルバムの各演奏から伝わってきて、実に微笑ましい。テクニック優秀、歌心も備わっていて、ピアノの弾き回しに勢いがあって、疾走感が溢れる。これから、コーエンのピアノからは目が離せない。歳を重ね、今のピアノに成熟が伴ってきたら、どんな素晴らしいピアノに進化するのだろうか。今から楽しみである。
 
 

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2023年3月 8日 (水曜日)

思い出しては聴く好トリオ盤

「小粋なジャズ」を探索していると、これは聴いたことないぞ、と思って聴いたら「当たり」という盤に出くわすことが良くある。もちろん、ジャズ雑誌の新盤紹介や、様々なジャズ本紹介本、そして、ネットでのジャズ盤レビューの記事を参考にしてはいるのだが、こういう「当たり盤」に出くわすと、何だか一日が明るくなるから不思議だ。

Joel Weiskopf『Devoted To You』(写真左)。2005年11月30日録音の録音。CRISS CROSSレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Joel Weiskopf (p), John Patitucci (b), Eric Harland (ds)。ポスト・バップ・スタイルのピアニスト、ジョエル・ワイスコフがリーダーのトリオ作品。中堅技巧派ベーシスト、ジョン・パティトゥッチと、これまた、中堅の堅実実直なドラマー、エリック・ハーランドがリズム隊を務める。

Joel Weiskopf(ジョエル・ワイスコフ)は、1962年、米国ニューヨーク州シラキュース生まれのアメリカのジャズ・ピアニスト。今年で61歳のベテランである。我が国ではその名前はマイナーな存在。ウディ・ハーマン・ビッグ・バンドや多くのサイドマンとして活躍してきたピアニストらしく、もともと「ピン」で活躍してきたタイプでは無いらしい。僕は10年ほど前に、ワイスコフの名前を知った。
 

Joel-weiskopfdevoted-to-you

 
ワイスコフのピアノは耽美的でリリカル、ファンクネスは希薄で、米国出身でありながら、欧州ジャズ的な響きが個性。弾き回しは流麗でモーダルなフレースが切れ味良く展開される。どこかで聴いたことがある雰囲気なんだが、バップな弾き回しとは無縁なので、エヴァンス派とは言い難い。ポスト・バップな弾き回しと時折出てくる「静的なスピリチュアル」風のフレーズが独特。あれ〜このピアノって聴いたことがありそうで無いなあ、と思って耳を傾けているうちに一気に聴き通してしまう。

バックのリズム隊は、手練の強者中堅ジャズマンの2人が担当している。パティトゥッチは重低音でしなりのあるブンブン・ベースを弾きまくり、ハーランドはフロントのワイスコフのピアノを鼓舞し押しまくる様に、変幻自在、硬軟自在に叩きまくっている。このトリオ演奏って、ベースとドラムのリズム隊が結構、積極的に前面に押し出ているのだが、不思議とワイスコフのピアノとのバランスが程良く取れている。ワイスコフのポスト・モダンなピアノが「芯が入っていて、音の根幹が太い」からだろう。

トリオのメンバーが3人三様、しっかりと平等に全面に押し出たインタープレイが意外と聴き応えがあって、良い感じです。ジャズの歴史の1ページにその名を残す様な名盤では無いんですが、不思議と時々、思い出しては繰り返し聴く、不思議な魅力を持った「スパンの長いヘビロテ盤」です。この「時々思い出しては繰り返し聴く」位のスパンが最適なピアノ・トリオ盤です。
 
 

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2023年2月24日 (金曜日)

ネオ・ハードバップ志向の快作

しかし、Smoke Sessions Records って、良いアルバムをリリースするよな、とつくづく思う。日本ではあまり知られていない、ベテラン・ジャズマンを中心に、ネオ・ハードバップ志向の内容の濃いアルバムをコンスタントにリリースしている。しかも、ジャケット・デザインに統一感があって、以前のブルーノート・レーベルの様な雰囲気がとても良い。

Steve Davis『Bluesthetic』(写真左)。2022年2月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Steve Davis (tb), Peter Bernstein (g), Steve Nelson (vib), Geoffrey Keezer (p), Christian McBride (b), Willie Jones III (ds)。トロンボーンのスティーヴ・デイヴィスがリーダー、デイヴィスのトロンボーン、バーンスタインのギター、ネルソンのヴァイブがフロントのセクステット編成。

面白い編成である。定番のトランペット、サックスがフロント楽器に「居ない」。力感溢れるホンワカ・ブロウのトロンボーン、線が細くて繊細なギター、流麗で硬質な響きのヴァイブ。そんな、ジャズにおいて、ややマイナーな楽器がフロント張っているのだ。通常の純ジャズとは音の響きが異なる。これが、この盤の個性であり、一番の特徴。
 

Steve-davisbluesthetic_20230224210901

 
内容的には、時代の先端を行く「ネオ・ハードバップ」の響きが色濃く漂う。お洒落なモーダルなメロディ−・ライン、ややアブストラクトにブレイクダウンする、限りなくフリーに近い自由な響き、フロント楽器のユニゾン&ハーモニーも響きは新しく洗練されており、昔のモード・ジャズの焼き直しで留まっていないことが良く判る。

バックのリズム隊が、そんな新しい響きを湛えた「ネオ・ハードバップ」な雰囲気作りに、大いに貢献している。キーザーのピアノ、マクブライドのベース、ジョーンズIIIのドラム。現代の最先端のネオ・ハー痔バップなリズム&ビートを叩き出している。実に現代のネオ・モードらしいフレーズとビート。このリズム隊があって、ユニークなフロント3楽器が更に輝きを増している。

安定感抜群の懐深いネオ・ハードバップ。ストレート・アヘッドでメインストリーム志向の純ジャズは聴いていてスカッとする。全ての曲がオリジナル曲ではあるが、親しみのあるフレーズがてんこ盛りで、小難しいところが無いところも評価出来るところ。ジャズはまず「判り易い」が重要なことを再認識させてくれる好盤。
 
 

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2022年12月15日 (木曜日)

現代のピアノ・トリオの好例の1つ

New York Trio。トリオ名からして「胡散臭い」(笑)。とかく評判の良くない、日本発のヴィーナス・レコードからのリリースが主。これまた「胡散臭い」(笑)。才能ある若手〜中堅ピアニストのフォービートな純ジャズ・トリオで、しかも、スタンダード曲が中心の演奏。これまた「胡散臭い」(笑)。

正直言って、最初、このトリオのアルバムに出会った時、そんな「胡散臭さ」満載で触手が伸びなかった。が、ピアノ担当のビル・チャーラップのピアノがお気に入りになり、チャーラップがピアノを担当しているのなら、ありきたりな「やらせ」なピアノ・トリオ盤にはならないだろう、という見通しの中、一気に3〜4枚、New York Trioのアルバムを集中聴きした。

チャーラップのピアノは「耽美的でリリカル、そしてバップなピアノ」。それまでに無い、新しいモーダルな響き。ハードバップ期の焼き直しでは無い、新しい感覚のモーダルなバップ・ピアノが新しい。そこに、レオンハート~スチュワートのリズム隊が、これまた新しいイメージのリズム&ビートを駆使して、チャーラップ共々、新しいイメージが散りばめられたインタープレイを繰り広げている。New York Trio 侮り難しである。
 

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New York Trio『The Things We Did Last Summer』(写真左)。2002年4月3ー4日、NYでの録音。邦題『過ぎし夏の思い出』。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Jay Leonhart (b), Bill Stewart (ds)。収録曲は全曲スタンダード曲で固めている。1〜2曲は自作曲を挟むのが慣わしだが、実に潔い選曲である。逆に、この方が、このピアノ・トリオの個性が良く判る。

選曲が渋い。このNew York Trioは、ゆったりとしたバップっぽい演奏が得意なんだが、この盤の選曲は「バッチリ」である。「The Things We Did Last Summer」「How High The Moon」「It's Only A Paper Moon」などは「ウットリ」。手垢の付いた、どスタンダードの「You'd Be So Nice To Come Home To」「As Time Goes By」は、斬新なアレンジと高度なテクニックで、今まで無い、新しい魅力を付加しているのは立派。

そして、冒頭の「The Shadow Of Your Smile(いそしぎ)」のチャーラップのピアノ・ソロが絶品。これこそ、チャーラップのピアノの個性。耽美的でリリカル、そしてバップなピアノ。それにバッチリ合わせたリズム&ビートを叩き出すレオンハート~スチュワートのリズム隊。現代のピアノ・トリオの「最良のパフォーマンス」のひとつがこの盤に記録されていると思う。
 
 

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2022年12月11日 (日曜日)

"キング・オブ・カルテット" である

コロナ禍でどうなることかと思ったが、現代ジャズはコロナ禍に負けること無く、その活動と深化を継続している。コロナ禍当初は、スタジオ録音が出来なかったり、ライヴ演奏が出来なかったりで、ジャズのみならず、音楽活動というものが潰えてしまうのでは無いか、と不安になったが、何とか厳しい時期を乗り越えた様だ。

その現代ジャズであるが、深化は脈々と続いている。21世紀に入って、ネオ・ハードバップの成熟、クールで静的なスピリチュアル・ジャズ、21世紀版フュージョン&スムース・ジャズの充実など、1950年年代〜1960年代のジャズに回帰すること無く、モダン・ジャズの「クラシック化」は進んでいない。

Redman Mehldau McBride Blade『LongGone』(写真左)。2019年9月10–12日の録音。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts, ss), Brad Mehldau (p), Christian McBride (b), Brian Blade (ds)。現代ジャズのおける「若きレジェンド」が集結した、レッドマンのサックスが1管のワンホーン・カルテットの編成。

2020年リリースの前作『RoundAgain』は強烈だった(2020年10月8日のブログ参照)。モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏あり、アーシーでちょっとゴスペルチックでファンキーな演奏あり、コルトレーン・ライクなスピリチュアルな演奏あり、現代のネオ・ハードバップをより洗練し、より深化させた演奏内容となっていた。振り返って見ると、2020年までのモダン・ジャズの総括的な内容だった気がしている。

今回のアルバムは、その先を行くものと認識した。落ち着いた、クールで静的なネオ・ハードバップ。しかし、録音年月日を見てみると、前作『RoundAgain』と同一録音ではないか。そして、ラストに「2007年のSFJAZZの25周年記念のライブ演奏」から1曲追加して、今回の新作となっている。う〜ん、前作と同じ録音なのか〜。
 

Redman-mehldau-mcbride-bladelonggone

 
今回の新作と前作と基本的な雰囲気が全く違う。前作はエネルギッシュに、2020年までのモダン・ジャズの総括し、今回の新作は、これからのモダン・ジャズをクールに静的に落ち着いた雰囲気で披露する。

しかも、今回はラストのライヴ音源以外、全6曲がジョシュア・レッドマンのオリジナルで固められている。そういう意味では、このカルテット、ジョシュアがリーダー的立場なんだろうな。

この新作を聴いて、痛く感心したのが、モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏がメインなんだが、フレーズや音の響きの新鮮さ。決して、過去のジャズの焼き直しでは無い、「どこかで聴いたことがある」感が無い、鮮烈で機微に富むモーダルなフレーズがこれでもか、と出てくる。

前作でもそう感じたが、この新作では更に、フレーズや音の響きの新鮮さが増している。さすが、現代ジャズにおける「キング・オブ・カルテット」である。

アルバム全体の雰囲気が「落ち着いた、クールで静的」な演奏がメインだったので、ちょっと地味ではないのか、と感じたのは最初だけ。聴き込めば聴きこむほど、このカルテットの演奏は滋味深い。

このカルテットの演奏、しばらく、続けて欲しいなあ。聴く度に、現代のモダン・ジャズの到達点のひとつを確認出来る。現代のモダン・ジャズ、現代のネオ・ハードバップの最高レベルの演奏のひとつである。
 
 

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2022年9月24日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・251

ジャズにおいて「初リーダー作」は、そのリーダーであるジャズマンの「個性」を確実に反映している。ジャズにおいては、それぞれジャズマン毎の「個性」が非常に重要で、この「個性」が希薄だと、どのジャズマンの演奏を聴いても「皆同じに聴こえる」ということになる。

これでは、即興演奏が最大の特徴であるジャズにおいて、ジャズマンの存在意義が無くなる。よって、ジャズにおいては、それぞれジャズマンの個性が重要であり、それぞれのジャズマンの初リーダー作では、その「個性」を前面に押し出すプロデュースを施すのが通例である。

Bill Charlap『Souvenir』(写真左)。1995年6月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Scott Colley (b), Dennis Mackrel (ds)。現代のバップ・ピアニスト、ビル・チャーラップのメジャー・デビュー作になる。チャーラップは、1966年10月生まれなので、初リーダー録音当時、28歳と8ヶ月。一流ジャズマンとしては、少し遅いメジャー・デビュー作になる。

メジャー・デビュー作と言えば、その内容は初リーダー作に準ずるもの。チャーラップも、1991〜3年に、マイナー・レーベルに初リーダー作を録音しているが、マイナー・レーベルからのリリースなので、数も少なく、その盤はなかなかお目に(お耳に?)かかれない。そういう意味では「メジャー・デビュー盤=初リーダー作」と位置づけて良いかと思う。

さて、このメジャー・デビュー盤、聴いて面白いのは、チャーラップのピアノの個性が明確に出ていること。今までの他のピアニストとは明らかに違う響きがある。
 

Bill-charlapsouvenir

 
基本はバップ・ピアノ。しかし、フレーズの響きが従来のバップっぽく無い。幾何学っぽく(ちょっとモンクっぽい)、モーダルな弾き回しだけど「判り易い」。弾きっぷりは流麗。バップなマナーの中での「耽美的でリリカルな」弾き回しがユニーク。

そんなチャーラップの個性が、このメジャー・デビュー盤にギッシリ詰まっている。冒頭の「Turnaround」を聴けば、それが良く判る。オーネット・コールマンの曲を選曲していて、このコールマンの曲をバップ・ピアノで弾き回していく。

しかも、緩やかなフレーズから盛り上げていくユニークなアレンジ。左手の和音が「幾何学っぽく」、右手のフレーズがモーダル。コールマンの曲の個性を良く捉え、チャーラップのピアノの個性で、今までに聴いたことのない、バップな演奏に仕立て上げている。

この盤を聴いて、僕は一気にチャーラップのピアノが「お気に入り」になった。現代のネオ・ハードバップの先端を行く、従来のモダン・ジャズ・ピアノを見直し、焼き直し、新しい響きやフレーズを盛り込んで「深化」させていく。

チャーラップは、現代のジャズにおいて「進取の気性に富む」ピアニストの1人であり、このメジャー・デビュー盤では、個性的で見事なパフォーマンスを披露している。
 
 

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2022年9月21日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・250

米国や欧州では一流の人気ジャズマンとされるが、我が国では「さっぱり」というジャズマンが結構いる。昔は海外レーベルのアルバムは、日本のレコード会社が契約して、日本のレコード会社経由で、我が国で流通していた。日本のレコード会社と契約した海外レーベルの人気ジャズマンのリーダー作は良いが、契約していない海外レーベルの人気ジャズマンのリーダー作は、我が国では全く流通しないということになる。

これでは、日本のレコード会社と契約していないと、海外レーベルのレコードは手に入らない、ということになるのだから、何だか閉鎖的な話である。ネットの時代になって、CDやデジタル音源が日本のレコード会社抜きに、ダイレクトに購入出来る様になって、そんな閉鎖的な話はほとんど聞かなくなった。逆に我が国で売れる見込みが無いと扱わない、という日本のレコード会社の企業姿勢が、日本のレコード会社の存在意義を矮小化している。

Tom Harrell『Oak Tree』(写真左)。2020年11月24, 25日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Tom Harrell (tp, flh), Luis Perdomo (p, Fender Rhodes), Ugonna Okegwo (b), Adam Cruz (ds)。米国では「現代屈指のトランペッター&フリューゲル奏者」とされるトム・ハレルのリーダー作。ハレルのワンホーン・カルテット盤になる。

リーダーのトム・ハレルであるが、現代屈指のトランペッター&フリューゲル奏者とされるが、我が国ではほとんど無名に近いのではないか。ハレルは1946年6月生まれなので、今年で76歳の大ベテラン、レジェンド級のトランペッターである。
 

Tom-harrelloak-tree

 
リーダー作も30枚以上、参加セッションは数知れず。米国では、これだけ人気の一流トランペッターなのだが、我が国では「さっぱり」である。僕は21世紀には入るまで、トム・ハレルの名前を知らなかった。

さて、このハレルの新作、聴けば、ハレルのトランペットの成熟度合い、伸びのあるストレートな音色、流麗で歌心溢れるアドリブ・フレーズ、味わい深い「間」を活かした吹き回し。確かに、大ベテラン、レジェンド級のトランペッターであることが良く判る。このトランペットは良い。もっと広く、ジャズ者の皆さんに聴いて貰いたい気持ちで一杯である。

ビ・バップ、アフロ・キューバン、クラシック志向、心地よいスムース・ジャズなど、幅広いスタイルのジャズを展開してきたが、この盤では、じっくりと落ち着いた、モーダルな「ネオ・ハードバップ」。印象的なユニゾン&ハーモニー、スムースなアドリブ・フレーズ、柔らかく落ち着いた力強い吹き回し、暖かい安らぎを感じる音世界。この新作でのハレルのトランペット、本当に良い味出してます。

ピアノのルイス・ペルドモ、ベースのウゴナ・オケグォ、ドラマーのアダム・クルーズ、この精鋭リズム隊、これまた、味わい深いリズム隊で、ハレルの暖かい安らぎのあるトランペット&フリューゲルホーンを、緩急自在、変幻自在、硬軟自在にサポートする。このリズム隊あってのハレルのトランペットである。実に良いリズム隊だ。

アルバム・タイトルが『Oak Tree』=「樫の木」。英語圏では「逆境に耐える十字架の木であったり、男性的な力と聖木として崇められていることが多い」とのこと。なんか、この新作のハレルの「柔らかく落ち着いた力強い吹き回し」に通じる、実に良いタイトルですね。ジャケットも不思議と雰囲気があって良い感じ。ハレルの晩年の代表作としても良い佳作だと思います。
 
 

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2022年9月19日 (月曜日)

デフランセスコの初リーダー作

今年の8月25日、Joey Defrancesco(ジョーイ・デフランセスコ)が逝去した。現代の現代ジャズ・オルガニストの代表的存在の1人。マルチ・インストルメンタルな面も持ち合わせ、トランペット、サックスにも一定のテクニックを保持し、時には、ボーカルも披露した。しかし、51歳での逝去。惜しまれて余りある、余りに早すぎる逝去であった。

Joey Defrancesco『All of Me』(写真)。1989年の作品。ちなみにパーソネルは、Joey Defrancesco (org), Lou Volpe (g), Alex Blake (el-b), Buddy Williams (ds)、そして、特別ゲストとして、Houston Person (ts)。Columbiaレーベルからのリリース。

デフランセスコの初リーダー作であり、同時にメジャー・デビュー作でもある。デフランセスコは1971年生まれなので、17歳での初リーダー作であり、メジャー・デビュー作であった。騒がれたという記憶は無いが「早熟の天才」ですね。

ジャズにおいて、初リーダー作とは、そのリーダーを担うジャズマンの個性がクッキリと浮かび出た、そのジャズマンの個性をしっかり確認出来るものなのだが、このデフランセスコの初リーダー作についても例に漏れない。

この盤には、デフランセスコのオルガンの個性が溢れている。デフランセスコのオルガンを理解するには、避けて通れない、というか、まず最初の頃に聴いて欲しい初リーダー作である。
 

Joey-defrancescoall-of-me

 
ジャズ盤紹介本やネットのジャズマン情報のデフランセスコ評の中では、デフランセスコは、ジャズ・オルガンの祖、ジミー・スミスの影響を強く受けているとされる。しかし、この初リーダー作を聴けば判るのだが、ジミー・スミスの忠実なフォロワーではない。

確かにジミー・スミスっぽいのだが、ジミー・スミスのオルガンを、ストレートでシンプルな弾きっぷりに変えて、ポップで判り易いアドリブ・フレーズを弾きまくるところが、デフランセスコの個性。音の基本は「アーバンでコンテンポラリーで小粋な」オルガン。ハモンドB-3を自由に操り、様々なフレーズを弾き込む様は「凄み」さえ感じさせる。

このデフランセスコの個性を前面に押し出して、それまでのジャズ・オルガンでは演奏し得なかった、カーペンターズの「Close to You(遙かなる影)」のカヴァーをやっている。この「Close to You」とタイトル曲「All of Me」が素晴らしい出来なのだ。

ジミー・スミスの「ダイナミズム」と「躍動感溢れるファンクネス」を踏襲しつつ、「アーバンでコンテンポラリーで小粋な」フレーズで、ストレートでシンプルに弾き進めている。

この初リーダー作をリリース後、マイルス・ディヴィスのバンドに参加して、アルバム『Amandla』ではキーボードを担当している。つまりは、マイルスも認めた、ジャズ・オルガニストの逸材だと言える。そのデフランセスコならではの個性が、この初リーダー作に詰まっている。

我が国では話題にほとんど上がらないデフランセスコの初リーダー作だが、僕は評価している。良い盤だと思います。
 
 

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