2024年1月29日 (月曜日)

チャーラップとロスネスのデュオ

ちょっと「デュオ」づいている。ジャズのユニットの最小単位の「デュオ」。双方のテクニックと音楽性のバランスがバッチリ取れると、一人では出せない、スケールの広い、ダイナミズム溢れる、奥行きのある即興演奏を実現することが出来る演奏編成。二人というシンプルな編成なので、音が重なるのは最小限。個々の音の一つ一つをしっかり確認できるのも「デュオ」の良いところ。

Bill Charlap & Renee Rosness『Double Portrait』(写真)。2009年12月27-29日、NYのKaufmann Concert Hall でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap, Renee Rosness (p)。現代のバップ・ピアニストの第一人者の一人、ビル・チャーラップと女流ジャズ・ピアニスト最高峰の1人、リニー・ロスネスとのピアノの連弾デュオ。

ピアノの連弾デュオにはコツがあると思っている。同じ楽器同士なので、相手の音をしっかり聴いておれば、次に出てくるフレーズは予測が付き易い。フロントのフレーズ弾きとバックのリズム&ビート弾きの役割分担と分担交代のタイミングさえ、しっかりと意識合わせしておれば、音がぶつかることは無い。ただ、必要なのは、ピアノの個性と音楽性が似通っていないと連弾は成立しない。つまり、バップなピアノとフリーなピアノとは連弾が成立しない、ということ。

さて、このピアノ連弾のデュオ、チャーラップとロスネス、この二人は実生活では「夫婦」。夫婦だからということは無いが、相手のことを良く判っている同士なので、次に出てくるフレーズは予測が付き易いし、お互いの役割分担と分担交代のタイミングの意識合わせがし易いことこの上ない。
 

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そして、双方の「ピアノの個性と音楽性」なのだが、チャーラップは「バップなピアノ」、ロスネスは「モーダルなピアノ」。連弾するには、ちょっと合わないところが出てくるよなあ、と思うのだが、このデュオ盤を聴けば良く判るのだが、双方、しっかりと歩み寄った「バップでモーダルなピアノ」で着地させている。

つまり、アプローチはモードが基本なのだが、フレーズの弾き回しは音の拡がりをメインとしたモード弾きではなく、バップ・ピアノの様な音符の多いフレーズを活用したモード弾きで、二人は意思統一している様なのだ。聴けば、チャーラップでもなく、ロスネスでも無い。ロスネスの様に弾くチャーラップと、チャーラップの様に弾くロスネス。そんな二人が連弾デュオにチャレンジする。

出てくる音は、キース・ジャレットを想起させる、耽美的でリリカルな音だが、出て来るフレーズはバップでモーダル。キースの様にマイナー調をところどころぶっ込んでくるのでは無く、どこまでも明るく健康的な「バップでモーダルなピアノ」。どこか端正なクラシックな響きもするが、伴奏に回ったピアノのリズム&ビートはジャズ。そんなピアノを腕4本で、スケールの広い、ダイナミズム溢れる、奥行きのある即興演奏を弾きまくる。

しかも、感心するのはライヴ音源であるということ。これは二人の演奏テクニックと演奏勘がずば抜けて優れている、という証。一発勝負、やり直しの効かないライヴで、これだ淀みなく流麗に連弾デュオの即興演奏を弾きまくる、とは。疾走感も適度、スイング感も適度、チャーラップとロスネスの「バップでモーダルなピアノ」での連弾デュオは大成功である。
 
 

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2022年12月15日 (木曜日)

現代のピアノ・トリオの好例の1つ

New York Trio。トリオ名からして「胡散臭い」(笑)。とかく評判の良くない、日本発のヴィーナス・レコードからのリリースが主。これまた「胡散臭い」(笑)。才能ある若手〜中堅ピアニストのフォービートな純ジャズ・トリオで、しかも、スタンダード曲が中心の演奏。これまた「胡散臭い」(笑)。

正直言って、最初、このトリオのアルバムに出会った時、そんな「胡散臭さ」満載で触手が伸びなかった。が、ピアノ担当のビル・チャーラップのピアノがお気に入りになり、チャーラップがピアノを担当しているのなら、ありきたりな「やらせ」なピアノ・トリオ盤にはならないだろう、という見通しの中、一気に3〜4枚、New York Trioのアルバムを集中聴きした。

チャーラップのピアノは「耽美的でリリカル、そしてバップなピアノ」。それまでに無い、新しいモーダルな響き。ハードバップ期の焼き直しでは無い、新しい感覚のモーダルなバップ・ピアノが新しい。そこに、レオンハート~スチュワートのリズム隊が、これまた新しいイメージのリズム&ビートを駆使して、チャーラップ共々、新しいイメージが散りばめられたインタープレイを繰り広げている。New York Trio 侮り難しである。
 

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New York Trio『The Things We Did Last Summer』(写真左)。2002年4月3ー4日、NYでの録音。邦題『過ぎし夏の思い出』。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Jay Leonhart (b), Bill Stewart (ds)。収録曲は全曲スタンダード曲で固めている。1〜2曲は自作曲を挟むのが慣わしだが、実に潔い選曲である。逆に、この方が、このピアノ・トリオの個性が良く判る。

選曲が渋い。このNew York Trioは、ゆったりとしたバップっぽい演奏が得意なんだが、この盤の選曲は「バッチリ」である。「The Things We Did Last Summer」「How High The Moon」「It's Only A Paper Moon」などは「ウットリ」。手垢の付いた、どスタンダードの「You'd Be So Nice To Come Home To」「As Time Goes By」は、斬新なアレンジと高度なテクニックで、今まで無い、新しい魅力を付加しているのは立派。

そして、冒頭の「The Shadow Of Your Smile(いそしぎ)」のチャーラップのピアノ・ソロが絶品。これこそ、チャーラップのピアノの個性。耽美的でリリカル、そしてバップなピアノ。それにバッチリ合わせたリズム&ビートを叩き出すレオンハート~スチュワートのリズム隊。現代のピアノ・トリオの「最良のパフォーマンス」のひとつがこの盤に記録されていると思う。
 
 

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2022年9月24日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・251

ジャズにおいて「初リーダー作」は、そのリーダーであるジャズマンの「個性」を確実に反映している。ジャズにおいては、それぞれジャズマン毎の「個性」が非常に重要で、この「個性」が希薄だと、どのジャズマンの演奏を聴いても「皆同じに聴こえる」ということになる。

これでは、即興演奏が最大の特徴であるジャズにおいて、ジャズマンの存在意義が無くなる。よって、ジャズにおいては、それぞれジャズマンの個性が重要であり、それぞれのジャズマンの初リーダー作では、その「個性」を前面に押し出すプロデュースを施すのが通例である。

Bill Charlap『Souvenir』(写真左)。1995年6月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Scott Colley (b), Dennis Mackrel (ds)。現代のバップ・ピアニスト、ビル・チャーラップのメジャー・デビュー作になる。チャーラップは、1966年10月生まれなので、初リーダー録音当時、28歳と8ヶ月。一流ジャズマンとしては、少し遅いメジャー・デビュー作になる。

メジャー・デビュー作と言えば、その内容は初リーダー作に準ずるもの。チャーラップも、1991〜3年に、マイナー・レーベルに初リーダー作を録音しているが、マイナー・レーベルからのリリースなので、数も少なく、その盤はなかなかお目に(お耳に?)かかれない。そういう意味では「メジャー・デビュー盤=初リーダー作」と位置づけて良いかと思う。

さて、このメジャー・デビュー盤、聴いて面白いのは、チャーラップのピアノの個性が明確に出ていること。今までの他のピアニストとは明らかに違う響きがある。
 

Bill-charlapsouvenir

 
基本はバップ・ピアノ。しかし、フレーズの響きが従来のバップっぽく無い。幾何学っぽく(ちょっとモンクっぽい)、モーダルな弾き回しだけど「判り易い」。弾きっぷりは流麗。バップなマナーの中での「耽美的でリリカルな」弾き回しがユニーク。

そんなチャーラップの個性が、このメジャー・デビュー盤にギッシリ詰まっている。冒頭の「Turnaround」を聴けば、それが良く判る。オーネット・コールマンの曲を選曲していて、このコールマンの曲をバップ・ピアノで弾き回していく。

しかも、緩やかなフレーズから盛り上げていくユニークなアレンジ。左手の和音が「幾何学っぽく」、右手のフレーズがモーダル。コールマンの曲の個性を良く捉え、チャーラップのピアノの個性で、今までに聴いたことのない、バップな演奏に仕立て上げている。

この盤を聴いて、僕は一気にチャーラップのピアノが「お気に入り」になった。現代のネオ・ハードバップの先端を行く、従来のモダン・ジャズ・ピアノを見直し、焼き直し、新しい響きやフレーズを盛り込んで「深化」させていく。

チャーラップは、現代のジャズにおいて「進取の気性に富む」ピアニストの1人であり、このメジャー・デビュー盤では、個性的で見事なパフォーマンスを披露している。
 
 

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2022年7月25日 (月曜日)

チャーラップの個性を再確認

ジャズ・ピアノについては、ジャズの基本楽器のひとつとして、粛々と伝統は引き継がれている。フュージョン・ジャズのブームの時も、電子ピアノやシンセなど、鍵盤楽器の系譜はしっかりと引き継がれている。1980年代半ばの純ジャズ復古のムーヴィメント以降は、堅調に若手ピアニストが出てきて、現代においても、ジャズ・ピアニストはコンスタントに活躍している。

Bill Charlap(ビル・チャーラップ)。1966年10月15日、米国NY生まれ。音楽的に恵まれた環境で育った「サラブレット」。2000年前後でサイドマンとしてデビュー。1993年、27歳で初リーダー作をリリース。現代の若手ピアニストとしては、至って順調に活躍の範囲を広げている。ヴィーナス・レコードの企画型ピアノ・トリオ「ニューヨーク・トリオ」のピアニストでもある。

Bill Charlap『'S Wonderful』(写真左)。1998年12月26日、NYの「Clinton Recording Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)。チャーラップの通算9枚目のリーダー作。日本のヴィーナス・レコードからのリリースで、この時点では、まだ米国での認知度は低かった。

この盤では、チャーラップは自らの演奏志向を前面に押し出している。盤全体の雰囲気、音の作りは、過度に耽美的でリリカルに傾倒すること無く、全くヴィーナス・レコードっぽくない。まるで、チャーラップのセルフ・プロデュース盤の様な演奏の雰囲気。ヴィーナス・レコードの録音志向である「深くて乾いたエコー」が良い方向に作用している。つまり、この盤、チャーラップのピアノの個性をしっかり確認出来る秀作なのだ。
 

S_wonderful_2

 
チャーラップのピアノは「耽美的でリリカル、そしてバップなピアノ」。一聴するとビル・エヴァンスのピアノの様に感じるのだが、しばらく聴いていると、確かに「耽美的でリリカル、そしてバップなピアノ」なんだが、エヴァンスとは音の響き、和音の響き、フレーズの弾き回しが全く違うことに気付く。

エヴァンスの音の響き、和音の響き、フレーズの弾き回しを避けた「耽美的でリリカル、そしてバップなピアノ」なのだ。演奏全体の雰囲気はエヴァンス風なのだが、演奏内容は「エヴァンスの様でエヴァンスで無い」チャーラップ独自の個性が息づいている。

ベースとリズム隊は、長年のパートナーとなる2人。前作『All Through the Night』で出会った2人だが、チャーラップとの相性は抜群。もう長年連れ添った様な「あうんの」呼吸でリズム&ビートをコントロール出来る、優れたリズム隊。そんなベースとドラムに恵まれて、チャーラップは、独自の個性溢れるバップなピアノを気持ちよさそうに弾き進めていく。

この盤以降が、チャーラップの真骨頂。逆に言えば、チャーラップのピアノの個性を理解するには、この盤から始めるのが良い。選曲もヴィーナス・レコードらしくない、渋いジャズ・スタンダード曲が選曲されていて、ジャズの素人さんにウケる「どスタンダード曲」は見当たらない。これも「好感度アップ」なポイントで、チャーラップってジャズを判ってるなあ、と嬉しくなるのだ。
 
 

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2021年12月 5日 (日曜日)

チャーラップの新作に感じ入る。

このピアニストの、このトリオについては、1998年以来、ずっと追いかけている。初めて、このチャーラップのトリオのアルバムを聴いたのは、ヴィーナス・レコードからリリースされた『'S Wonderful』(1998年12月の録音)だったかな。ジャケットは、ヴィーナスらしい「?」なものだったが、中身は一級品。ネオ・ハードバップな香りのする、アーティスティックなトリオ盤で、色んな意味で感じ入った思い出がある。

Bill Charlap Trio『Street of Dreams』(写真左)。2021年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)。1997年に結成、チャーラップの長年の「パーマネント・トリオ」による新作盤である。2000年に『Written in the Stars』をリリースして以降、定期的にブルーノートからリリースしているが、今回は、2003年の作品『Live at the Village Vanguard』以来、18年振りの、チャーラップ・トリオのブルーノートへの返り咲きになる。

ビル・チャーラップは、1966年、ニューヨーク生まれ。今や押しも押されぬ、ベテラン・ピアニストの一人。チャーラップのピアノは、一言で形容すると「耽美的でリリカルなバップ・ピアノ」。

総合力で勝負するピアニストっぽいが、ビル・エヴァンスを源とする「耽美的でリリカルなバップ・ピアノ」を踏襲しつつ、エヴァンスには無い「モダニズム」と歯切れの良い、少しエッジの立ったタッチが個性。「ながら」で聴き流すには、このチャーラップの個性が凄く心地良くになって、結局、じっくり聴き入ってしまう。
 

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そんなピアノのチャーラップをリーダーとした「パーマネント・トリオ」。このトリオの演奏は、旧来の「ビ・バップ」のフォーマットの上に、最先端のジャズ・ピアノの表現法と、ジャズ・トリオのインタープレイの展開を実践している様な、旧来のフォーマットに則っているようで、実は新しい要素が散りばめている、という、意外と「小粋な展開を旨とする」先進的なピアノ・トリオだと解釈している。

確かに、このチャーラップ・トリオの演奏には、明らかに1940年代後半から50年代中盤にかけての「バップなピアノ・トリオ」のパフォーマンスとは違う、緩急、濃淡、強弱を様々に織り交ぜた、複雑な、色彩豊かな「バップ・ピアノ」が表現されている。

リズム&ビートを支える「ダブル・ワシントン」のリズム隊も基本は「バップなリズム&ビート」。しかし、緩急の付け方、音色の変化、グルーヴ感などは、モード・ジャズやスピリチュアル・ジャズなどの変遷を経験した、新しい感覚に溢れる「バップ」なリズム&ビートであることは確か。

この「パーマネント・トリオ」が結成されて23年。長年の経験を踏まえて「程良く熟成された」新しい感覚の、今の時代の「ネオ・ハードバップな」ピアノ・トリオの、素晴らしいパフォーマンスがこの新作に記録されている。
 
 
 
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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

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2020年12月26日 (土曜日)

ヴィーナス臭さの無いトリオ盤

いわゆる「日本人好みの純ジャズ」を供給するレーベルとして、ヴィーナス・レコードがある。スタンダード曲がメインの選曲で、エコーたっぷり、耽美的でリリカルなフォービートな純ジャズを制作するレーベル。そのジャズマンの個性やスタイルに合致しなくても、フォービートな純ジャズ、しかも、スタンダード曲ばかりを中心に演奏させるレーベルとして有名。

確かに、昔、フリー・ジャズやファンキー・ジャズで活躍したジャズマンが、耽美的でリリカルでフォービートなスタンダード・ジャズをやるのには無理があって、これはなあ、と途中で聴くことを止めてしまう盤もある。しかし、このレーベルの「色」に無理なく合致して、活き活きと極上のパフォーマスを繰り広げるジャズマンもいる。

New York Trio『Love You Madly』(写真)。2003年4月7日、NYの「Avatar Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Jay Leonhart (b), Bill Stewart (ds)。チャーラップ~レオンハート~スチュワートによるピアノ・トリオ「ニューヨーク・トリオ」の作品。
 
 
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このトリオの演奏には、ジャズマンの個性を曲げて、スタンダード・ジャズをやる様な、無理な雰囲気が無い。プロデューサーによって「作られた感じ」も無い。ピアノ・トリオのパフォーマンスとして「どこかで聴いた様な」マンネリ感は皆無で、トリオのインタープレイとして、新しい響き、新しいアプローチが散見されていて、現代のピアノ・トリオという雰囲気が実に清々しい。

まず、リーダー格のピアニスト、ビル・チャーラップのピアニストとしての個性が、このヴィーナス・レコードの「色」にピッタリ合っているんだろう。耽美的でリリカル、それでいてタッチは明確で意外とダイナミック。よって、このトリオ盤を聴いていて、ヴィーナス・レコード臭さが全く感じられない。これが、このトリオの良さ。

リズム隊のベースのレオンハート、ドラムのスチュワートが、このチャーラップのピアノに反応して、チャーラップのピアノを引き立て、その魅力を増幅させる様なパフォーマンスを連発。新鮮な響きのリズム&ビートを供給していて、これがまた、このトリオの良さ。ヴィーナス・レコードの盤だと敬遠せずに、ピアノ・トリオ者であれば、一度、耳を傾けて欲しい好盤です。
 
 
 

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2020年12月18日 (金曜日)

ニューヨーク・トリオの第一弾

ヴィーナス・レコードは1992年10月に原哲夫プロデューサーによって設立された「日本発のジャズ専門レーベル」。スタンダード曲がメインの選曲で、エコーたっぷり、耽美的でリリカルなフォービートな純ジャズのみを制作するレーベル。しかも、昔の有名ジャズマンを中心に、そのジャズマンの個性やスタイルに合致しなくても、フォービートな純ジャズ、しかも、スタンダード曲ばかりを中心に演奏させるレーベル。

いわゆる「日本人好みの純ジャズ」を供給するレーベルとして活動している訳だが、そのジャズマンの個性やスタイルに合致しなくても、フォービートな純ジャズ、しかも、スタンダード曲を中心に演奏させる強引さについては、あまり評判が良くない。加えて、ジャケット・デザインが「セミヌード」がメインの「エロい」ジャケットで、これまた評判が良く無い(中にはなかなかのデザインのものもあるにはあるのだが)。

しかし、ヴィーナス・レコードの「レコーディングの志向」にピッタリ合ったジャズマンもいて、この場合はその演奏内容について、なかなかの盤が多い。まあ無理矢理、レーベルの「レコーディングの志向」に合わせる訳では無いので、これはこれで「レーベルのあるべき姿」。このケースについては、僕は、ヴィーナス・レコードについては高評価をしている。
 
 
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New York Trio『Blues In The Night(夜のブルース)』(写真左)。2001年6月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Jay Leonhart (b), Bill Stewart (ds)。チャーラップ~レオンハート~スチュワートによるピアノ・トリオ「ニューヨーク・トリオ」の第一弾。耽美的でリリカル、ゆったりとしたフレーズが個性のチャーラップのピアノが実に美しく響いている。

フォービートな純ジャズ、しかも、スタンダード曲が中心の演奏なので、才能ある若手ピアニストの「ありきたり」なトリオ盤と思いきや、レオンハート~スチュワートのリズム隊が新しいイメージのリズム&ビートを駆使して、チャーラップ共々、新しいイメージが散りばめられたインタープレイを繰り広げている。特に、有名「どスタンダード」曲の「My Funny Valentine」や「Don't Explain」でのインタープレイは、新しい響きと展開に満ちていて立派だ。

他のスタンダード曲については、ちょっと耳新しい「小粋な選曲」。まるでキース・ジャレットのスダンダーズ的なアプローチで、これはこれで良い演奏だ。チャーラップのピアノの個性が、ヴィーナス・レコードの「レコーディングの志向」にバッチリ合っていて、素敵なピアノ・トリオ盤に仕上がっている。このトリオ盤については、ヴィーナス・レコードという「色眼鏡」を外して、じっくり味わうべき、現代のピアノ・トリオ演奏のひとつだと評価している。
 
 
 

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2018年11月19日 (月曜日)

テイトの素敵なボーカル盤です

ひょんな事から、Half Note Recordsのカタログを入手した。Half Note Recordsは、N.Y.の名門ジャズクラブ「ブルーノート・ニューヨーク」が設立したレコード・レーベル。カタログを見渡すと、なかなか渋い渋い純ジャズ盤がズラリと並んでいる。しかも、リーダーを張るジャズメンは、これまた渋い職人肌の中堅どころばかり。悪かろう筈が無い。

Grady Tate『From the Heart - Songs Sung Live At the Blue Note』(写真左)。2006年10月のリリース。ちなみにパーソネルは、Jay Leonhardt (b), Dennis Mackrel (ds), Bill Charlap (p), Bill Easley (sax, fl), Glen Drews (tp), Grady Tate (vo)。リーダーのグラディ・テイト(Grady Tate)は、もともとはドラマー。1932年生まれ、惜しくも2017年10月逝去している。

そのドラミングは堅実で味のあるもので、小粋な純ジャズ盤に、よくグラディ・テイトの名前を見ていた様な気がする。そんなグラディ・テイトが歌い出したのは何時からなんだろう。僕がグラディ・テイトのボーカルを初めて聴いたのが『All Love - Grady Tate Sings』。Eighty-Eight'sレーベルから、2003年のリリース。正統派で味のあるボーカルで、聴いてビックリしたのを覚えている。
 

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さて、このライブ盤『From the Heart』は、グラディ・テイトが亡くなる4年前のリリース。凄く渋い正統派な男性ボーカルを聴かせてくれる。ドラマーの余芸というレベルでは無い。声質も実に魅力的で、男性ボーカルの第一人者、フランク・シナトラのボーカルと並べてもひけをとらないレベル。それが証拠に、このライブ盤では、ドラムをデニス・マックレルに任せて、ボーカルに専念している。

バックのリズム・セクションもふるっている。ピアノがビル・チャーラップ。現代の「ネオ・ビ・バップ」なピアノの第一人者。歌伴もバッチリで、素晴らしいバッキングを披露している。ジェイ・レオンハートのベースが骨太でソリッドで印象的。グラディ・テイトのボーカルをしっかりと支え、鼓舞する。良い雰囲気だ。

このライブ盤、もちろん、収録場所は「ブルーノート・ニューヨーク」。ライブ感溢れる、ライブハウスの適度な音の広がりがバッチリと収録されていて、とても魅力的なボーカル・ライブ盤に仕上がっている。Half Note Records自体が我が国ではマイナーな存在なのか、この素敵なライブ盤が埋もれてしまっているのが残念だ。純ジャズ・ボーカルとして好盤の一枚です。
 
 
 
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2017年6月14日 (水曜日)

安定のチャーラップ・トリオです

ピアノ・トリオが好きだ。ジャズ盤を続けて聴いていると、4枚に1枚の割合でピアノ・トリオが入ってこないと調子が出ない。昔、自分もピアノを弾いていた時代があって、ピアノを弾く、という行為の難しさや面白さを、他の楽器よりも自らの体験をもとに理解できるということで、ピアノ・トリオが良い。

もともと昔から、Bill Charlap(ビル・チャーラップ)のピアノが好きで、20年ほど前からずっと追いかけている。ビル・エバンスからブラッド・メルドーへと通じるピアノの個性の系譜ありながら明確で硬質な「バップなタッチ」。突出した個性では無いので、ちょっと判り難いのだが、耽美的ではあるが雰囲気に流されず、明確で硬質なタッチで、流麗かつ端正に弾き回す。これがチャーラップの個性である。

そんなチャーラップの最新作がこれ。Bill Charlap『Notes from New York』(写真左)。2015年6月の録音。昨年4月のリリース。パーソネルは、Bill Charlap (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)。最近の鉄壁のトリオ。ベースとドラムの「Washington」姓はたまたまで、血縁関係がある訳では無いそうだ。
 

Notes_from_new_york1

 
安定のチャーラップである。本当に安定している。冒頭の「I'll Remember April」を聴くだけで、ああチャーラップやなあ、と思う。オーソドックスなスタンダード曲なんだが、ただ流麗に弾き回すのでは無い。印象的な音の「ずらし」や間の取り方で、アドリブ・フレーズが印象的に浮かび上がる。そう、ただ流麗で端正なピアノでは無いところがチャーラップの曲者たる所以である。

ただ流麗で端正なピアノであれば、イージーリスニングと揶揄されても仕方が無いが、チャーラップのピアノはそんなに簡単なピアノでは無い。流麗で端正なフレーズの中に、なんか良い意味で「引っかかる」何かが仕掛けられている。小粋なフレーズ回しとでも形容すれば良いのか、聴き込めば聴き込むほど、面白さが増していく、そんな玄人好みのピアノである。

バックの「Wワシントン」のリズム・セクションも申し分無い。チャーラップのピアノとの合い相性は抜群。そして、なんといっても、このアルバムのジャケット・デザインが秀逸。抽象画の様なイラストをあしらった秀逸なもの。ジャケ買い対象としても良い盤。我がバーチャル音楽喫茶「松和」では、意外とヘビロテ盤になっています。聴けば聴くほど味わい深くなる。そんな好盤です。
 
 
 
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2009年3月29日 (日曜日)

時代先端のハードバップを聴く

最近の若手〜中堅ミュージシャンの演奏で、時代の先端のハードバップを体感できる、中々に魅力的な企画盤が出た。その名も『The Blue Note 7』(写真左)。1939年にスタートしたブルーノート・レコードの創立70周年記念盤。近年このレーベルへの貢献度が高いミュージシャンを中心に結成された7人編成のグループということで『The Blue Note 7』。

パーソネルは、Nicholas Payton(tp), Steve Wilson(as,fl), Ravi Coltrane(ts), Peter Bernstein(g), Bill Charlap(p), Peter Washington(b), Lewis Nash(ds)。ブルーノート・レコードの創立70周年である2009年(1月6日)を記念して、ジャズ界最高のレーベルにトリビュートする為、結成されたスーパー・グループ。

「ビ・バップ」ライクで爽快なピアノ・トリオを率いて、今や信頼のおける中堅のピアニストとなった Bill Charlap(ビル・チャーラップ)。ジョン・コルトレーンの末っ子として生まれ、最近、自身の個性をしっかりと確立しつつある Ravi Coltrane(ラヴィ・コルトレーン)。味のあるドラミングが粋なバンド最年長の Lewis Nash(ルイス・ナッシュ)。

そして、92年から94年まで、エルヴィン・ジョーンズ・バンドのミュージカル・ディレクターを勤めた Nicholas Payton(ニコラス・ペイトン)。チック・コリアのオリジンや、マリア・シュナイダーのオーケストラなどで活躍する Steve Wilson(スティーヴ・ウィルソン)。NYジャズ・シーン屈指の人気ギタリスト、Peter Bernstein(ピーター・バーンスタイン)。アート・ブレイキーのジャズメッセンジャーズに23歳で参加。信頼感抜群のベーシスト、Peter Washington(ピーター・ワシントン)。
 

Bluenote_7

 
7人のメンバーを見渡すだけで、ワクワクしてしまう。口元が綻ぶ。いや〜、良いメンバーですね〜。このメンバーの名前を見るだけで、もうこのアルバムの内容は保証されたようなもの。あとは、どのレベルまで高みに達しているかですね。

収録された曲も良く選ばれている。シダー・ウォルトンの「Mosaic」、ジョー・ヘンダーソンの「Inner Urge」、マッコイ・タイナーの「Search for Peace」、ボビー・ハッチャーソンの「Little B's Poem」、セロニアス・モンクの「Criss Cross」、ハービー・ハンコックの「Dolphin Dance」、デューク・ピアソンの「Idle Moments」、ホレス・シルヴァーの「The Outlaw」で全8曲。確かに、これぞブルーノート・サウンド、と言っても良い、なかなかの選曲である。

それぞれの演奏は「言わずもがな」。皆、溌剌とした演奏を繰り広げていて、聴いていて実に気持ちが良い。爽快感抜群の演奏である。1950年代〜60年代前半のハードバップに比べると、もったりとした雰囲気が払拭されて、実に洗練されて切れ味の良いビートが供給される。アドリブも、当時に比べると、現在までのジャズの歴史の成果を反映されたアドリブで、実に味わい深いアドリブが展開される。

アルバムには、収録曲のオリジナル曲をカップリングした2CDのデラックス盤もありますが、まずは、The Blue Note 7 の演奏だけのCDで良いかと思います。後、収録曲のオリジナルを聴くのは、そのオリジナル曲が収録されている、ブルーノートのアルバムを通して聴いて欲しい、と思います。ハードバップと呼ばれる、当時のジャズの演奏スタイルが十分に体感できると思います。

良い演奏、良いアルバムです。ジャズ初心者の方々が、「ハードバップって、どんな感じの演奏を言うの?」という質問に答えるのに格好のアルバムですね。
 
 
 
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