2021年12月 5日 (日曜日)

チャーラップの新作に感じ入る。

このピアニストの、このトリオについては、1998年以来、ずっと追いかけている。初めて、このチャーラップのトリオのアルバムを聴いたのは、ヴィーナス・レコードからリリースされた『'S Wonderful』(1998年12月の録音)だったかな。ジャケットは、ヴィーナスらしい「?」なものだったが、中身は一級品。ネオ・ハードバップな香りのする、アーティスティックなトリオ盤で、色んな意味で感じ入った思い出がある。

Bill Charlap Trio『Street of Dreams』(写真左)。2021年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)。1997年に結成、チャーラップの長年の「パーマネント・トリオ」による新作盤である。2000年に『Written in the Stars』をリリースして以降、定期的にブルーノートからリリースしているが、今回は、2003年の作品『Live at the Village Vanguard』以来、18年振りの、チャーラップ・トリオのブルーノートへの返り咲きになる。

ビル・チャーラップは、1966年、ニューヨーク生まれ。今や押しも押されぬ、ベテラン・ピアニストの一人。チャーラップのピアノは、一言で形容すると「耽美的でリリカルなバップ・ピアノ」。

総合力で勝負するピアニストっぽいが、ビル・エヴァンスを源とする「耽美的でリリカルなバップ・ピアノ」を踏襲しつつ、エヴァンスには無い「モダニズム」と歯切れの良い、少しエッジの立ったタッチが個性。「ながら」で聴き流すには、このチャーラップの個性が凄く心地良くになって、結局、じっくり聴き入ってしまう。
 

Sweet-of-dreams_1

 
そんなピアノのチャーラップをリーダーとした「パーマネント・トリオ」。このトリオの演奏は、旧来の「ビ・バップ」のフォーマットの上に、最先端のジャズ・ピアノの表現法と、ジャズ・トリオのインタープレイの展開を実践している様な、旧来のフォーマットに則っているようで、実は新しい要素が散りばめている、という、意外と「小粋な展開を旨とする」先進的なピアノ・トリオだと解釈している。

確かに、このチャーラップ・トリオの演奏には、明らかに1940年代後半から50年代中盤にかけての「バップなピアノ・トリオ」のパフォーマンスとは違う、緩急、濃淡、強弱を様々に織り交ぜた、複雑な、色彩豊かな「バップ・ピアノ」が表現されている。

リズム&ビートを支える「ダブル・ワシントン」のリズム隊も基本は「バップなリズム&ビート」。しかし、緩急の付け方、音色の変化、グルーヴ感などは、モード・ジャズやスピリチュアル・ジャズなどの変遷を経験した、新しい感覚に溢れる「バップ」なリズム&ビートであることは確か。

この「パーマネント・トリオ」が結成されて23年。長年の経験を踏まえて「程良く熟成された」新しい感覚の、今の時代の「ネオ・ハードバップな」ピアノ・トリオの、素晴らしいパフォーマンスがこの新作に記録されている。
 
 
 
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2020年12月18日 (金曜日)

ニューヨーク・トリオの第一弾

ヴィーナス・レコードは1992年10月に原哲夫プロデューサーによって設立された「日本発のジャズ専門レーベル」。スタンダード曲がメインの選曲で、エコーたっぷり、耽美的でリリカルなフォービートな純ジャズのみを制作するレーベル。しかも、昔の有名ジャズマンを中心に、そのジャズマンの個性やスタイルに合致しなくても、フォービートな純ジャズ、しかも、スタンダード曲ばかりを中心に演奏させるレーベル。

いわゆる「日本人好みの純ジャズ」を供給するレーベルとして活動している訳だが、そのジャズマンの個性やスタイルに合致しなくても、フォービートな純ジャズ、しかも、スタンダード曲を中心に演奏させる強引さについては、あまり評判が良くない。加えて、ジャケット・デザインが「セミヌード」がメインの「エロい」ジャケットで、これまた評判が良く無い(中にはなかなかのデザインのものもあるにはあるのだが)。

しかし、ヴィーナス・レコードの「レコーディングの志向」にピッタリ合ったジャズマンもいて、この場合はその演奏内容について、なかなかの盤が多い。まあ無理矢理、レーベルの「レコーディングの志向」に合わせる訳では無いので、これはこれで「レーベルのあるべき姿」。このケースについては、僕は、ヴィーナス・レコードについては高評価をしている。
 
 
Blues-in-the-night  
 
 
New York Trio『Blues In The Night(夜のブルース)』(写真左)。2001年6月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Jay Leonhart (b), Bill Stewart (ds)。チャーラップ~レオンハート~スチュワートによるピアノ・トリオ「ニューヨーク・トリオ」の第一弾。耽美的でリリカル、ゆったりとしたフレーズが個性のチャーラップのピアノが実に美しく響いている。

フォービートな純ジャズ、しかも、スタンダード曲が中心の演奏なので、才能ある若手ピアニストの「ありきたり」なトリオ盤と思いきや、レオンハート~スチュワートのリズム隊が新しいイメージのリズム&ビートを駆使して、チャーラップ共々、新しいイメージが散りばめられたインタープレイを繰り広げている。特に、有名「どスタンダード」曲の「My Funny Valentine」や「Don't Explain」でのインタープレイは、新しい響きと展開に満ちていて立派だ。

他のスタンダード曲については、ちょっと耳新しい「小粋な選曲」。まるでキース・ジャレットのスダンダーズ的なアプローチで、これはこれで良い演奏だ。チャーラップのピアノの個性が、ヴィーナス・レコードの「レコーディングの志向」にバッチリ合っていて、素敵なピアノ・トリオ盤に仕上がっている。このトリオ盤については、ヴィーナス・レコードという「色眼鏡」を外して、じっくり味わうべき、現代のピアノ・トリオ演奏のひとつだと評価している。
 
 
 

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