2023年12月11日 (月曜日)

シンタックスの最初の成果です。

アラン・ホールズワースのアルバムを聴いていると、ホールズワースって、クロスオーバー&フュージョンなジャズ・ギターの範疇だが、アレンジを聴いていると、プログレッシヴ・ロック濃厚なものも多々あって、さすが英国らしい、ジャズとロックの境界が曖昧な、英国独特のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの個性をしっかり引き継いでいるなあ、と思うのだ。

Allan Holdsworth『Sand』(写真左)。1987年の作品。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, SynthAxe), Alan Pasqua (key), Gary Husband (ds, tracks 1, 3), Chad Wackerman (ds tracks 4, 5, perc track 6), Jimmy Johnson (b, except track 6), Biff Vincent (b, track 6), John England (sound effects)。

ギター・シンセサイザー「シンタックス」に手を染めた最初のリーダー作『Atavachron』に続くアルバム。この盤、この「シンタックス」については、かなり使いこなした、効果的な弾き回しが印象的なアルバムに仕上がっている。さすが、ギターが基本のシンセである「シンタックス」。ばりばりギタリストのホールズワーズからすると、フレーズが作り易いのだろう、エレギの延長線上にあるシンセの「シンタックス」を効果的に弾き回している。
 

Allan-holdsworthsand

 
アルバム全体の雰囲気は、シンタックスを大々的に活用した、プログレッシヴ・ロック風のクロスオーバー・ジャズ。ロックというにはフレーズが複雑で、リズム&ビートはジャジー。音全体の作りは、間違いなく「ホールズワース」ワールドが展開されている。独特の捻れた変態エレギに、シンタックスの独特のシンセ・フレーズが拍車をかけて、「ホールズワース」ワールド濃厚になっている。

この辺りのホールズワースの音世界って、英国出身のジャズマンらしく、ロックとジャズの境界が曖昧で、プログレとエレ・ジャズが混じり合った、ホールズワース独特の音世界になっている。そんな独特の音世界を的確に表現するには「シンタックス」は必要不可欠な楽器だったのだろう。プログレとエレ・ジャズの融合。そして、そのプログレ・テイストの音を表現するホールズワースの「捻れ変態エレギ」と「捻れ変態シンタックス」。その最初の納得いく成果がこのアルバムだろう。

アルバム全体を覆う、どこかクールで落ち着いた雰囲気が、このアルバムの完成度を物語る。シンセ独特の音だけに囚われると、シンセはキーボード系のシンセで十分、となるのだが、ギタリスト独特の手癖とフレーズを反映したシンセの音は、キーボード系のシンセでは出せない。ホールズワースはギタリスト。ギタリストがシンセの響きを欲するなら「シンタックス」は必須の楽器。それを、この『Sand』は証明している様に感じている。
 
 

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2023年11月30日 (木曜日)

初シンタックスのホールズワース

超「変態捻れエレギ」の雄、Allan Holdsworth (アラン・ホールズワース) 。4枚目のリーダー作『Metal Fatigue』で、エレギ一本の「変態捻れエレギ」で勝負して、ホールズワースにしか作れない、捻れエレギの傑作を手にした。次はどうするんやろ、と思って聴く5枚目のリーダー作である。

Allan Holdsworth『Atavachron』(写真左)。1986年の作品。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, SynthAxe), Rowanne Mark (vo, track 7), William Edward Childs (key, tracks 2, 5), Alan Pasqua (key, tracks 3, 4, 6), Gary Husband (ds, tracks 1, 2, 4, 6), Chad Wackerman (ds, tracks 3, 7), Tony Williams (ds, track 5), Jimmy Johnson (b)。クロスオーバー・ジャズ的アプローチに力点が移ったイメージの音作り。

ホールズワースがシンタックスに手を染めた最初のリーダー作になる。シンタックスとは、シンセサイザー+アックス(斧)の合成造語。ギターを斧に見立てて名付けられた「ギター・シンセサイザー」である。

エレギ命の「ホールズワース者」からすると、許しがたい楽器みたいだが、ホールズワースの音作りやフレーズの中に潜む「プログレッシヴ・ロック」な音の要素を全面に押し出すには最適の楽器と僕は評価している。

エレクトリック・ギターとシンタックスが混在して活用されているが違和感がない。それくらい、この盤でのホールズワースはシンタックスに精通している。
 

Allan-holdsworthatavachron

 
英国プログレッシヴ・ロック等で活躍してきたシンセサイザーの基本はキーボード。シンタックスの基本はギター。シンタックスから出てくる音はシンセサイザーの音だが、出てくるフレーズはギターという楽器ならではのフレーズが出てくる。キーボード系のシンセサイザーのフレーズを聴き慣れた耳に新鮮に響く。これが「肝」。

キーボードとギターは運指のアプローチが全く違う。よって、ギターにとっては、キーボード系シンセとのユニゾン&ハーモニーは意外と取りにくいし、フレーズの受け渡しも意外と難しい。シンタックスは基本がギターなので、ギター的アプローチが容易。エレギとのユニゾン&ハーモニーは取り易いし、フレーズの受け渡しもスムーズ。その点に着目して導入に至ったのだろう。

この盤を聴いて思うのだが、ホールズワースはエレギと絡めたシンタックスの使い方が上手い。今までのキーボード系シンセのキーボード的アプローチとは全く異なる響きのギター的響きのシンセの音。これが新しいエレギの音として鳴り響いている。明らかに「エレギの弾き手」の表現の幅が広がっている。

アルバム・タイトルは「Atavachron=アタヴァクロン」。Atavachron (アタヴァクロン) とは、米国のSFテレビドラマ「Star Trek (スター・トレック) 」の中に出てくるタイム・トラベル用の装置の名前だそう。確かに、ジャケのアートワークに描かれたホールズワース本人もスタートレックの衣装を着ている。しかし、その逸話とアルバムの内容との因果関係は、と問われると、「?」と返答するしかないんですけど(笑)。
 
 

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2023年11月29日 (水曜日)

ホールズワースの個性全開

アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)のリーダー作の落穂拾い。というか、当ブログ記事として扱っていなかった、ホールズワースのリーダー作を聴き直している。見直してみたら、ホールズワースのリーダー作の半分以上が、当ブログの記事として扱っていない。思わず、計画立てての聴き直しである。

Allan Holdsworth『Metal Fatigue』(写真左)。1985年の作品。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g), Paul Williams (vo, tracks 1, 4), Paul Korda (vo, track 6), Alan Pasqua (key), Chad Wackerman (ds, tracks 1–4), Gary Husband (ds, track 5), "Mac Hine" (drum machine, track 6), Jimmy Johnson (b, tracks 1–4, 6), Gary Willis (b, track 5)。基本的に知らない名前ばかり(笑)。

ホールズワースの4枚目のリーダー作。まだ、一部では「悪名高い」SynthAxe(シンタックス)には手を染めていない、純粋にエレギ一本で勝負している。しかも、ホールズワースのエレギが「捻れに捻れている」。変態拗れ(ねじれ)エレギと形容されるホールズワースのエレギだが、この盤では、とても気持よく、清々しいばかりに「捻れている」(笑)。
 

Allan-holdsworthmetal-fatigue  

 
ハーモナイザーとディストーションを効かせたヘビーなサウンドがメインで、曲によってはボーカルが入っていて、どこか「英国プログレッシヴ・ロック(プログレ)」風な響きがユニーク。さすが、ジャズとロックの境目が曖昧な英国クロスオーバー+フュージョンである。それでも、ホールズワースの変態捻れギターは、当時の英国プログレには存在しないので、これは「プログレ」ではないな、ということになる。

しかし、ホールズワースのエレギは気持ちよく捻れている。アタッチメントの選び方、使い方が上手くて、ホールズワースにしか出せない音がとんでもなく個性的。収録された曲それぞれがなかなかの出来で、様々な志向&嗜好がてんこ盛りな内容にも関わらず、曲の良さ、という点でアルバム全体に統一感がある不思議なアルバムである。

3つのセッションを合わせて作成したアルバム。色々な音の要素が散りばめられている「万華鏡」の様な内容だが、ホールズワーズの変態捻れエレギの個性は、それぞれの曲の中で一貫していて、どこから聴いても「ホールズワースしか作れない」アルバムに仕上がっているところが、このアルバムの「肝」。ホールズワースの名盤の一枚。
 
 

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2022年6月 8日 (水曜日)

2014年のホールズワースです。

アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)が亡くなったのは、2017年4月15日。既に4年が経過したことになる。享年70歳は今では「若すぎる」。前年の2016年に16年振りのソロ・アルバムをリリースした矢先の出来事であり、2017年4月10日にサンディエゴで、彼の最後のギグを元気に演奏していたというのだから、余りに急すぎる「死」であった。

Allan Holdsworth『Jarasum Jazz Festival 2014』(写真左)。2014年10月5日、韓国ジャラサムのジャズフェスでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g), Jimmy Haslip (b), Gary Husband (ds)。ホールズワース、鉄壁のトリオ演奏。ホールズワースのオフィシャル・ライヴ・アーカイヴ・シリーズの第5弾になる。

ホールズワースのエレギは、アームを駆使した捻れフレーズに、独特で流麗なレガート奏法をメインにバリバリ弾きまくるのだが、このライヴ盤でも同様な、テンションの高い、ハイテクニックで疾走感溢れる演奏が繰り広げられている。このライヴ録音当時、ホールズワースは67歳。このガンガンに高速フレーズを、アームを駆使してグチョングチョンに弾きまくるのだから凄い。還暦を過ぎた大ベテラン・ギタリストの仕業とは思えない。
 

Allan-holdsworthjarasum-jazz-festival-20

 
即興性を重んじたパフォーマンスなので、ジャズの範疇に留まっているが、このホールズワースのエレギは従来のジャズの範疇から、はみ出している。しかし、リズム&ビートはジャジーで、決してロックでは無い。加えて、ファンクネスは皆無。とにかく高速なカッ飛び&捻れフレーズを弾きまくる訳で、伝統的なモダン・ジャズの範疇の演奏では無い。いわゆるニュー・ジャズの範疇で、そこがホールズワースの個性であり、孤高の存在である所以である。

このライヴ盤でのホールスワーズのパフォーマンスは若かりし頃のそれと全く変わらない。こんな過激なエレギをフロントにした、バックのリズム隊、ハスリップのベース、ハズバンドのドラムについては、これまた「凄い」の一言。ホールズワースの最高レベルのパフォーマンスを向こうに回して、全くひけを取らない、対等に相対し、強烈なインタープレイを丁々発止とやりあう。このバンドの最高に近いパフォーマンスの記録である。

これだけ、先進的で過激、強烈な個性の下、アームを駆使した捻れフレーズ、独特で流麗なレガート奏法を弾きまくる、ジャズ・ギタリストにおける「代表的スタイリスト」の1人でありながら、生前はなかなか環境に恵まれなかったようだが、死後、リリースされ続けている「オフィシャル・ライヴ・アーカイヴ・シリーズ」はどれもが素晴らしい内容。このアーカイヴ・シリーズのリリースによって、ホールスワーズのギターが再評価されることを強く願っている。
 
 

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2022年5月 7日 (土曜日)

ホールズワースの最高傑作です

現代においても、ジャズ・ギタリストには従来の伝統的なモダン・ジャズギター系と、クロスオーバー・ジャズより生まれ出でて発展した、クロスオーバー&フュージョン系のギターと2通りのスタイルに分かれる。どちらのスタイルも順調に深化を続けていて、有望な後継者もしっかりと出現していて頼もしい限りだ。

Allan Holdsworth『I.O.U.』(写真)。1979年の録音。1982年のリリース。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, vln), Paul Williams (vo), Gary Husband (ds, p), Paul Carmichael (b)。借金までして自主制作した初ソロ・リーダー作。ハードで心地良く捻れて、ウネウネ・フレーズを擁して訴求力抜群なホールスワースのエレギが心ゆくまで堪能出来る。

この盤がアラン・ホールズワースの正式なソロ・デビュー盤になる。この『I.O.U.』の前に、CTIにて録音した『Velvet Darkness』があるが、ホールズワースは「この録音はリハーサル・テイクで、正式にリリースを許可した覚えは無い」ということで、自身のリーダー作として認めていない。
 
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確かに『Velvet Darkness』は荒削りな内容になっているので、それは「そういう理由やったんや」と思わず納得した。極的には『Velvet Darkness』は、ホールズワースとして納得いくものだった様で、よく聴けば、多くのトラックが、この『I.O.U.』に、より洗練され、完成度を上げて収録されていることが判る。とにかく、ホールズワースの初ソロ・リーダー作であり、かつ最高傑作の誉れ高い名盤である。

自身がもてるテクニックをふんだんに盛り込みつつ、しっかりとアレンジされた、ストイックでクールな演奏は、初リーダー作とはいえ、かなりのレベルにある。ホールズワースのエレギは、アームを駆使した捻れフレーズに、独特で流麗なレガート奏法をメインにバリバリ弾きまくっていて爽快。英国のプログレ・バンドを渡り歩いただけあって、基本はプログレ風、そこにジャジーな要素が加わるユニークな「ジャズロック」風フュージョン・ギターで、実に個性的。

バックのベース、ドラムのリズム隊も、ホールズワースのハードなエレギにしっかり耐え、なかなか迫力あるリズム&ビートを供給している。トリオでこれだけ迫力のある音が出せるなんて、凄いなあ。迫力だけじゃ無い、テクニックも優秀、歌心もあって、申し分の無いクロスオーバー&フュージョン系のエレギを聴くことが出来る。ホールズワースの才能の全てを感じ取る事ができる「ホールズワース入門」盤としても、なかなかイケる盤である。
 
 

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2021年1月21日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・197

寒い日が続いている。これだけ寒いと外に出るのが憚られる。ましてや、2回目の緊急事態宣言下でもある。こういう厳寒の日は、部屋の中で、好きなジャズを聴いて過ごすに限る。それでも、厳寒は体力を奪う。体力が落ちた耳にハードな純ジャズは辛い。こういう時は「フュージョン・ジャズ」。聴き心地の良い電気楽器がメインのフュージョン・ジャズで厳寒に耐える。

Allan Holdsworth『None Too Soon』(写真左)。1994年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, SynthAxe), Gordon Beck (el-p), Kirk Covington (ds), Gary Willis (b)。テクニカル&変態ギタリストの雄、アラン・ホールズワースが1996年に発表したアルバム。CTIからリリースされた『Velvet Darkness』から数えると通算9枚目の作品になる。

この盤、主にジャズ・スタンダードの個性的な解釈と、ピアニストで長年の協力者であるベックによって書かれた2曲のオリジナル作品で構成されている。ホールスワーズの「スタンダードの個性的な解釈」と書くと、すわ一大事、という感じになるが、曲名を確認すると、コルトレーンの「 Countdown」、ジャンゴ・ラインハルトの「Nuages」、ヘンダーソンの「Isotope」「Inner Urge」など、かなりマニアックで「捻くれた」ミュージシャンズ・チューンがメイン。
 
 
None-too-soon-allan-holdsworth  
 
 
これらのスタンダード曲を、ホールスワーズ独特の捻れギターによる、「フリージャズ的アプローチ」と「捻れたモーダルなフレーズ」で解釈している。これは以前からのホールスワーズ独特のスタンダード曲に対する解釈の定石で、この盤ならではの特筆すべき事柄では無い。しかし、このホールスワーズ独特のスタンダード曲に対する解釈が全編に渡り聴くことが出来るので、ホールスワーズの捻れギターが好みのジャズ者に関しては、実に嬉しい盤ではある。

但し、どスタンダード曲の「How Deep Is the Ocean?」と、レノン=マッカートニーの「Norwegian Wood」については、この盤ならではの、ちょっと面白い内容になっている。「How Deep Is the Ocean?」はハードバップ風のアレンジがユニーク。「Norwegian Wood」については、原曲のテーマを生かしながら、ゴードン・ベックのエレピとホールスワーズのエレギがモーダルなソロを展開する。

電気楽器がメイン、ビートは8ビートがメインなので、フュージョン・ジャズかとも思うが、ソフト&メロウな雰囲気が希薄で、フュージョン・ジャズ特有の流麗でキャッチャーなフレーズは皆無なので、アルバム全体の内容としては、コンテンポラリーな純ジャズと評価して良いかと思う。意外と硬派な内容で聴き応えがあります。好盤です。
 
 
 
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 ★ AORの風に吹かれて        【更新しました】 2020.10.07 更新。

  ・『Middle Man』 1980

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  ・ジョン・レノンの40回目の命日

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  ・僕達はタツローの源へ遡った

 

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2020年8月29日 (土曜日)

アラン・ホールズワース入門盤

アラン・ホールズワースを腰を据えて聞き始めたのも、21世紀に入ってからである。それまで存在だけは知っていたし、テンペスト、ソフト・マシーン、ゴング、U.K.などといったプログレッシブ・ロック、ジャズ・ロックのバンドを渡り歩いていた時の彼の演奏も聴いている。

ジャズ寄りのアルバムとしては、1976年、CTIレーベルからのリリース『Velvet Darkness』は所有していた。まあ、このアルバムは、ホールズワースからすると、本人の了解無く、CTIレーベルが勝手にリリースしたもの、とのことで、ホールズワースは正式な彼のリーダー作とは認定していないらしい。

Allan Holdsworth『The Sixteen Men of Tain』(写真左)。1999年の録音、2000年のリリース。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, SynthAxe), Gary Novak (ds), Chad Wackerman (ds,track 6 only), Dave Carpenter (b), Walt Fowler (tp)。テクニカル系ギタリストの大御所、アラン・ホールズワース通算10枚目のリーダー作。

今回、聴き直した盤は「スペシャル・エジション盤」。オリジナル盤と何が違うのかと見たら、「Above And Below」という曲の別テイクが追加された、そして曲順が変更されている。どういう意図でこういう対応がなされたのか、本人から明確な説明が無いのだが、なんしか、やりたかったのでしょう(笑)。奇人ホールズワースの面目躍如っぽい仕業ではあります(笑)。
 
 
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さて、その内容は、というと、いつものホールズワース節が「てんこ盛り」で、唯我独尊、天涯孤独、我が道を往く風の弾きっぷりがたまりません。ホールズワースのエレギは、ストレートに「ひねる」様なギターで、同様な個性を持つギタリスト、ジョンスコは「ねじれる」のですが、ホールズワースは「ひねる」。

スーッと伸びて小粋に「ひねる」。フレーズはストレートでシンプル。音の端々で「ひねって」いるんですが、あんまり気にならない。個性の範囲内での「ひねり」で、なかなか聴き応えがあります。

何故か評判の芳しく無い「SynthAxe(シンタックス)」についても、この盤では趣味良く使い回していて、耳に付かない。ひねり方もこの盤では、どこか「穏やか」で、ジャズっぽくて聴き易い。ホールズワーズのジャズ・エレギを聴く上で、とても入り易い盤です。

フレーズはストレートでシンプル。音の端々で「ひねって」いるんですが、あんまり気にならない。個性の範囲内での「ひねり」で、なかなか聴き応えがあります。ホールズワース入門盤としてお勧めの好盤です。

実はこの盤の後は自主制作盤が出ただけで、レコード会社からのメジャーなアルバムはこの『The Sixteen Men of Tain』最後でした。そして、2017年、70歳で鬼籍に入りました。この唯我独尊、天涯孤独、我が道を往く風のホールズワースのエレギが聴けなくなった訳ですが、音源はある程度残っているのが救いです。今では徐々に聴き直しをしつつ、彼を偲んでいます。
 
 
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 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.08.04 更新。

  ・『Your World and My World』 1981

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  ・『Music From Big Pink』

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  ・太田裕美『Feelin’ Summer』

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2015年10月23日 (金曜日)

ホールズワース起死回生の一枚

アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)との出会い。つらつらと盤コレクション、アルバム鑑賞のキャリアを振り返る。う〜ん、あれは今から35年ほど前に遡る。

ソフト・マシーン(Soft Machine)の『Bundles(収束)』というアルバムだった。『英国の70年代フュージョン』(2010年12月21日のブログ・左をクリック)にご紹介しているが、これがまあ、思いっきり超絶技巧な弾きまくりギター。誰だ、このギタリスト、とパーソネルを確認して、アラン・ホールズワースの名前を初めて確認した。

アラン・ホールズワースのギターは凄い。「超絶技巧」とはこのこと。どうやったら、これだけギターが弾きたおせるのか、理解に苦しむ。破綻の無い、疾走感溢れる超絶技巧な世界。凄いギタリストがいたもんや、と心から感心した。

しかし、そんなアラン・ホールズワースは正統に評価されていた訳では無い。1980年代に入って、子どものミルク代に困って機材を売り払うなど金銭的にも困窮していたそうで、そういう意味では、音楽というのは実力と収入とは常に比例するものでは無い、ということを改めて認識する。

そんなホールズワースが、もうこのアルバムが駄目ならミュージシャンをやめる、という位の不退転の決意で、1982年に自主制作で出したのがこの作品。Allan Holdsworth『I.O.U.』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g), Paul Carmichael (b), Gary Husband (ds), Paul Williams (vo)。
 

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アラン・ホールズワース本人をして「初めてやりたいことができた」とコメントした位の起死回生の一枚。さすが本人が「初めてやりたいことができた」とコメントした位である。凄まじい出来である。ここまで弾き倒したエレギのアルバムを僕は他に知らない。

しかも、ファンクネスは全く希薄。ジャズからのアプローチというよりは、ロックからのアプローチと評した方が合点がいく。ロックからのフュージョンへのアプローチ、いわゆる僕が勝手に名付けた「フュージョン・ロック」である。

恐らく、このアラン・ホールズワースが、エレギ弾き倒しの最高峰だろう。とにかく、エレギがどこまで弾き倒せるのか、どれだけの音色が出せるのか、エレギの最高限界地点を確認出来る、それはそれは素晴らしい内容のアルバムです。

それでいて歌入りは8曲中4曲。これが良かった。アダルト・コンテンポラリーな雰囲気が色濃く漂う。単純なギター弾き倒しの盤では無かった。上質のフュージョン・ロック盤である。

アルバムタイトルの「I.O.U.」とは「I Owe You」、つまり借用金証明という意味ですが、アラン・ホールズワースは、この自主制作のアルバムを機会に飛躍することができました。 目出度し目出度し。
 
 
 
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2014年6月12日 (木曜日)

梅雨に爽快、英国クロスオーバー

毎日ジメジメの日、気分も滅入ってくる。そんな時、何か景気付けになる音楽は無いのか。と、昨日から、僕にとっての景気付けのジャズ、フュージョン・ジャズの好盤は無いのか、と物色している。

フュージョン・ジャズのその以前、クロスオーバー・ジャズと呼ばれた時期がある。このクロスオーバー・ジャズの基本は「ジャズとロックの融合」。超絶技巧なテクニックを引っさげ、目眩くインストルメンタルの音世界。ビートはエイト、疾走感抜群。

しかし、である。このフュージョン・ジャズの前身のクロスオーバー・ジャズ。僕はこのクロスオーバー・ジャズは大好きなんだが、米国のクロスオーバー・ジャズはどうしてもジャジーなファンクネスが漂い、単純に爽快感抜群、単純に疾走感抜群とはいかない。どうしても、ねっとりとファンクネスが後を引く。

それって仕方の無いこと。米国のクロスオーバー・ジャズは、ジャズのミュージシャンがロックの要素を取り入れてやるケースがほとんどで、ロックのミュージシャンがジャズの要素を取り入れてやることは殆ど無い。ジャズがロックを取り入れる形なので、どうしてもジャジーなファンクネスが絶対に残る。

しかし、英国のクロスオーバー・ジャズは違う。超絶技巧なテクニックで、目眩くインストルメンタルの音世界、とここまでは米国と同じなんだが、ジャジーなファンクネスは皆無。単純に、ロックビートに乗って、素直にジャズの如く、目眩くアドリブ・フレーズが展開されていく。

このアドリブ・フレーズの部分は絶対に即興の音楽、ジャズのマナーなんだが、ジャジーなファンクネスが皆無で、単純に爽快感抜群、単純に疾走感抜群となる。超絶技巧なレベルも半端では無い。正確無比、スクエアで徹底的に超絶技巧なのだ。英国人気質がモロ出ている。
 

Bundles

 
実は、英国の音楽シーンにおいては、ジャズとロックの境界がかなり曖昧。ジャズ畑とおぼしきミュージシャンがロックをやったりするし、ロックのミュージシャンがジャズをやったり、平気でジャズの要素を取り入れたりする。1970年代から、英国ではジャズとロックの境界が曖昧。

当然、英国人にはアフリカンの血は希薄なので、ファンクネスとは疎遠。よって、英国のクロスオーバー・ジャズは、ジャジーな雰囲気やファンクネスは希薄、シンプルに超絶技巧なテクニックで演奏しまくる。ビートはエイトだが、ファンクネスで粘ることは無い。

そんな英国クロスオーバー・ジャズの好盤が、Soft Machine『Bundles(邦題;収束)』(写真左)。1974年7月の録音。1974年と言えば、世界的にクロスオーバー・ジャズの全盛期。ソフト・マシーンは、英国のプログレッシブ・ロック・バンド、英国のジャズ・ロック・バンド。この紹介からして、ジャズとロックの境界がかなり曖昧なのが判るでしょう(笑)。

この『Bundles』は、英国出身の超絶技巧ギタリスト、アラン・ホールズワースが参加した唯一のアルバムとして有名、数あるソフト・マシーンのアルバムの中でも最高に近い評価を得ている好盤である。確かに、このアルバムでのアラン・ホールズワースのギター・プレイは凄い。超絶技巧とはこのことか、と納得至極。それはそれは速い速い、それはそれは正確無比。

ジャズ系独特のジャジーなファンクネスが希薄で、単純に爽快感、疾走感を心ゆくまで味わえる。ジメジメした梅雨の季節に、ファンクネス希薄の乾いたクロスオーバー・ジャズは、かなりの景気付けになること請け合いである。

梅雨のジメジメした日に、景気付けのSoft Machine『Bundles』。フュージョン・ジャズ者、クロスオーバー・ジャズ者の方々、皆さんにお勧めである。ちょっと入手し難いかもしれませんが、頑張ってゲットして、乾いた爽快感、疾走感をしっかりと味わっていただきたいと思います。
 
 
 
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Never_giveup_4

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2010年12月21日 (火曜日)

英国の70年代フュージョン

英国のジャズ事情というのは、実に複雑というかユニークである。米国では、ロックとジャズは相容れ無い、全く別々な独立したジャンルだった訳だが英国は違う。
  
英国は長年、ジャズト言えば「バップ」こそがジャズであり、エレクトリックなジャズはもう既にジャズでは無い。ましてやクロスオーバーなんぞ、ジャズでは無く、当然、フュージョンは絶対にジャズとは言わない。実に英国らしい頑なさである。
 
ちなみに、英国においては、フュージョン・ジャズは、米国のようなジャズのジャンルの発展形ではなく、1970年代ロックのジャンルの人気のジャンルである「プログレッシブ・ロック」との、ミュージシャンの「共有(シェア)」で主に発展した。つまり、プログレバンドが、その超絶技巧なテクニックを駆使して、ジャジーなアレンジを導入して、英国なりのフュージョン・ジャズに発展したということ。
 
例えば、このソフト・マシーン(Soft Machine)の『Bundles(収束)』(写真左)が良い例だろう。ソフト・マシーンは、1960年代後半から1980年代初頭にかけて、英国で活動した、サイケデリック+プログレッシヴなロック、いわゆる「カンタベリー・ミュージック」の最右翼のバンドである。
 
このバンドは、当初、確かにアコースティックな演奏が中心のサイケデリックなバンドだった。途中、ジャズの要素を取り入れたりして「ジャズ・ロック」の旗手ともてはやされたが、アコースティック中心で音が薄く、ジャジーなビートは希薄、キャッチャーなフレーズも乏しかったので、僕は好きになれなかった。
 
また、前衛性が先に立ち過ぎて、プログレと呼ぶには分厚く劇的な展開に乏しく、ジャズ・ロックというには、ジャジーでファンキーな要素が乏しい。どうにも、音の厚さに乏しいところが、好きになれない決定的な原因だった。
 

Softmachine_bundles_3

 
しかし、このソフト・マシーンの不思議なところは、バンドの音楽性を節操なく変化させていったところにある。この8作目にあたるこの『Bundles』は、カンタベリー・ミュージックに端を発し、ジャズロックに傾倒しつつ、いきなりフュージョン路線へと一大転換を図った、突然変異的なアルバムである。しかも、音の厚さに乏しいところが、劇的に改善されている。聴いてビックリである。
  
とにかく、細かい理由は良く判らないが、超絶技巧な弾きまくりギタリスト、アラン・ホールズワースを迎えて、ソフト・マシーンは、いきなり、フュージョン・ジャズに転身した。
 
ちなみにパーソネルは、Roy Babbington (b), Allan Holdsworth (g), Karl Jenkins (oboe, p,ss), John Marshall (ds,per), Mike Ratledge (org,el-p,syn), Ray Warleigh (fl)。メンバー名を見ても、全く馴染みの無い名前が連なるが、このアルバムは、完璧な「超絶技巧アルバム」である。
 
とにかく、アラン・ホールズワースのギターが凄い。「超絶技巧」とはこのこと。どうやったら、これだけギターが弾きたおせるのか、理解に苦しむ。破綻の無い、疾走感溢れる超絶技巧な世界。リーダー格だった、カール・ジェンキンスの曲造りの巧みさも見逃せない。インスト中心で、ビートに乗った演奏は、フュージョン・ジャズそのもの。
 
それでいて、ファンキーさは希薄、抑制されたオフ・ビート、技巧は徹底的に追求されるが、ポップでキャッチャーな売れ筋の追求は皆無。サイケデリック+プログレッシヴなロックな時代で培ってきた前衛性は全く無し。素朴でシンプルでドライな展開が特徴の、英国フュージョン・ジャズならではの演奏を聴くことができます。とにかく、全編に渡って、疾走感あふれる超絶技巧な演奏は「圧巻」の一言。
 
ちなみに、ホールズワースはこのアルバムにのみに参加したのみでソフト・マシーンを脱退。トニー・ウイリアムス率いるライフタイムに加入することになります。素朴でシンプルでドライな展開はこのアルバムのみで聴かれるものです。この『Bundles』は、英国ならではの、フュージョン・ジャズの名盤だと思います。
 
 
 
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