2024年4月29日 (月曜日)

ドーハムのペスト・プレイの一つ

ケニー・ドーハムは、1924年8月生まれ、1972年9月に48歳で逝去。リリースしたリーダー作は20枚。最後のリーダー作は1965年だから、その後7年間は引退状態。初リーダー作が1953年なので、ドーハムの活動期間は12年と短いものだった。

ドーハムはちょっと不思議なトランペッターで、ジャズマン同士の中で、米国評論家の間では何故か評価が高い。しかし、人気はイマイチで、アルバムの売り上げも芳しいものではなかったらしい。

一方、我が国では、昨日ご紹介した『Quiet Kenny(静かなるケニー)』(1960年)の存在だけが突出していて、ドーハムに「哀愁のトランペッター」というキャッチフレーズを付けて、評論家はその哀愁感溢れるトランペットを褒めそさえ、聴き手はその哀愁感溢れるトランペットに聴き惚れる、という偏った状況が続いている。

『Kenny Dorham and The Jazz Prophets, Vol.1』(写真左)。1956年4月4日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), J.R. Monterose (ts), Dick Katz (p), Sam Jones (b), Arthur Edgehill (ds)。ケニー・ドーハムがリーダーの超短命のグループ「The Jazz Prophets」の唯一のスタジオ録音盤。ちなみに超短命なバンドだったので「Vol.2」はありません。

グループ名の「The Jazz Prophets」=「ジャズの預言者たち」となるのだが、この盤の内容は、こってこてのハードバップ。しかも、ドーハムの好調なトランペットと、マイナーな存在のテナー奏者、モンテローズの希少なパフォーマンス、白人ピアニスト、ディック・カッツの個性的なピアノが売りの盤で、グループ全体のパフォーマンスやインタープレイについては、当時のハードバップとして水準レベルかな。

全編に渡って、リーダーのドーハムのトランペットが元気溌剌。もともと、ドーハムのトランペットは、ビ・バップにバリバリ吹きまくるトランペット。この盤に詰まっているドーハムのパフォーマンスが「ドーハムのトランペットの本質」である。
 

Kenny-dorham-and-the-jazz-prophets-vol1

 
冒頭の「The Prophets」では、ドーハムとモンテローズが順に素晴らしくファンキーなソロを聴かせてくれる。ピアノのカッツが白人らしい小粋で流麗なフレーズで、フロント2管をサポートする。とにかくドーハムが元気。

2曲目の「Blues Elegante'」は、ドーハムのミュート・プレイもが秀逸。ミッドテンポな演奏の中でのモンテローズのテナーが良い。このテナーマンは、ミッドテンポの演奏に強い。イマージネーション溢れる上質なソロを聴かせてくれる。

3曲目の「DX」はアップテンポなファンキー・ジャズな演奏。ドーハムもモンテローズもバリバリ吹きまくっている。カッツの美しい響きのピアノが個性的で目立つ。

続く「Don't Explain」は、有名スタンダードなバラード曲。ドーハムの泣きのミュート・プレイが見事。このバラード曲でのドーハムのトランペットは端正で柔和で芯がしっかり入ったトランペット。どうも、ドーハムもバラード曲の様に、ミッドテンポ〜ややスローな演奏に強いみたい。とにかくドーハムが元気である。

ラストの「Tahitian Suite(タヒチ組曲)」は、どの辺が「組曲」なのかは判らないが、ドーハムが力感溢れるビ・バップなトランペットをバリバリ吹きまくる。とにかく、この曲でもドーハムは元気である。

「フレーズがちょっと危うい」ところ、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」ところが、ドーハムの個性のひとつとしてあるのだが、この盤ではその頻度が少ない。意外とこの盤は、ドーハムのトランペットの本質を明確に突いた、ドーハムの「ビ・バップなバリバリ吹きまくる」トランペットのベスト・プレイを記録した好盤の一枚として評価できるのではないか。

どうしても好意的に評価できないアルバみが1枚、入手できなかったリーダー作が1枚、計2枚の欠盤はあるのですが、この盤のレビューにて、当ブログにおける「ドーハムのリーダー作のレビュー」は完了。当ブログの右下の「カテゴリー」欄の中で「ケニー・ドーハム」をクリックしていただければ、当ブログでドーハムのリーダー作のレビューを読むことが出来ます。よろしかったら、ご一読を。さて、お後がよろしいようで...(笑)。
 
 

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2024年4月28日 (日曜日)

「抑制の美のドーハム」の名演

哀愁のトランペッター、ケニー・ドーハム。キャッチフレーズの「哀愁の」については、ドーハムのワンホーンの名盤『Quiet Kenny』の印象が強くて、彼のキャッチ・フレーズには、頭に「哀愁の」が付くことが多い。

しかし、ドーハムって、もともとはビ・バップ時代から活躍する、筋金入りのバップ・トランペッターであって、基本は「溌剌とした、ビ・バップなトランペット」が身上。バリバリとビ・バップなフレーズを吹きまくるのがドーハム。しかし、音圧は少し弱い。そこが、ちょっと大人し目で、「哀愁」の印象がつきまとうのかもしれない。しかも、時々「フレーズの吹き回しがちょっと危うい」ところがあるが、これは「ご愛嬌」。

Kenny Dorham『Quiet Kenny』(写真左)。1959年11月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。ケニー・ドーハムのトランペットがワンホーンのカルテット編成。ドーハムのキャッチ・フレーズの頭に「哀愁の」を付けさせた、ドーハムのハードバップの名盤である。

理由は判らないが、溌剌とした、ビ・バップなトランペッターであるドーハムが、「抑制の美」を発揮したワンホーン盤である。ドーハムのリーダー作の中で、この盤だけ、ドーハムのトランペットが、抑制された、エッジの丸い、柔和でリリカルな音色になっていて、これが選曲された曲調とばっちり合って、ジャズ・トランペットの名盤の一枚となっている。

冒頭の「Lotus Blossom」のテイラーの静かな小刻みなシンバル・ワークから始まるイントロからして、タイトル通り「Quiet(静かな)」雰囲気が濃厚。チェンバースのベースがアジアチックな細かいラインを奏でて、そこにスッと滑り込む様に、ドーハムのトランペットが入ってくる。
 

Kenny-dorhamquiet-kenny

 
その音色が、エッジの丸い、柔和でリリカルな音色で、出てくるフレーズが、「ビ・バップなフレーズをグッと抑制したフレーズ」なのだ。曲調がマイナーなだけに、この抑制されたフレーズに哀愁感がどっぷり漂ってくる。

2曲目の「My Ideal」のスローなテンポの演奏が実に良い。フラナガンの小粋で耽美的なイントロが良い。フラナガンって、この人も基本は「バップなピアニスト」で、バップなフレーズをバリバリ小粋に弾き回すタイプなんだが、この盤では、ドーハムの「抑制された、哀愁のトランペット」に合わせて、抑制された小粋で耽美的なバップ・ピアノを聴かせてくれる。

これが、ほんと、ドーハムの「抑制された、哀愁のトランペット」にバッチリあっていて、ドーハムの「抑制された、哀愁のトランペット」を引き立て、ガッチリとサポートしている。さすが「名盤請負人」のニックネームを持つピアニスト。機微を心得た、その演奏にあった、リーダーの楽器を引き立てる術を熟知している。

この「My Ideal」でのスローなテンポでのドーハムのトランペットも「抑制の美」の極み。スローなテンポであるが、ドーハムのトランペットの弱点であるフレーズがふらついたり、よれたりすることがほとんど無い。堅実にスローなテンポのフレーズを吹き通すドーハムは素晴らしい。

続く「Blue Friday」から「Alone Together」「Blue Spring Shuffle」「I Had the Craziest Dream」、そしてラストの「Old Folks」まで、抑制の美が満載のドーハムのトランペットを堪能することが出来る。この盤での「抑制の美」のドーハムのトランペットは、本来のドーハムの本質とはちょっと外れたところにあると思うのだが、「抑制の美」を表現したジャズ・トランペットとして聴き応えは十分で、名演の類である。

最後に、CDリイシューに追加されたボートラ、CDでのラストの「Mack the Knife」だけはいただけない。ドーハムのトランペットの弱点が顕わになっていて、このボートラだけは僕は蛇足と思う。ちなみに僕は『Quiet Kenny』鑑賞時には、予め「Mack the Knife」はオミットしてから聴いてます(笑)。
 
 

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2023年8月19日 (土曜日)

全曲「春」にちなんだ企画盤 『Blue Spring』

1958年7月録音の『Portrait of Cannonball』で、やっと、メインストリームな純ジャズをメインとする「リヴァーサイド・レーベル」に移籍したキャノンボール。このリヴァーサイドで、当時のモダン・ジャズの最前線、小コンボでの演奏を実現した。さすが希有なインプロヴァイザー、キャノンボール・アダレイ、小コンボでのソロ・パフォーマンスは素晴らしい。 

Kenny Dorham & Cannonball Adderley『Blue Spring』(写真)。1959年1月20日 (#5-6) , 2月18日 (#1-4) の2セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Cannonball Adderley (as), David Amram (French horn), Cecil Payne (bs), Cedar Walton (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds, tracks 1-4), Philly Joe Jones (ds, tracks 5-6)。

基本の編成は、ドーハムのトランペットとキャンボールのアルト・サックスのフロント2管、ウォルトンのピアノ、チェンバースのベース、そして、コブとフィリージョーの2人が別々に担当するドラムのクインテット編成。アレンジの彩りにフレンチ・ホルンやバリトン・サックスが入っている。

この盤、タイトルからも判る様に、全曲「春」にちなんだ曲ばかりを集めた企画盤。こういうコンセプトがハッキリしたセッションにドーハムは強い。迷いがなくなるのだろう。
 
Kenny-dorham-cannonball-adderleyblue-spr  
 
かつ、この盤はミドル・テンポの曲がメイン。ミドル・テンポの曲にドーハムは強い。速いテンポの曲では、時々フレーズがふらつく、拠れるの悪い癖が出るが、ミッド・テンポでは全くそんなことは無く、堂々と柔らかくてブリリアントなフレーズを吹き上げていく。

ただ、ドーハムのトランペットは、モノトーンっぽくて、すんだようなフレーズが主なので、どこかメリハリと抑揚に欠ける嫌いがあるのだが、この盤ではそんな「気になる」ところを、キャノンボールの明るくメリハリの効いた切れ味の良いアルト・サックスをフロント管のパートナーに充てることで、良い意味でクリアしている。

確かに、ドーハムのトランペットとキャノンボールのアルト・サックスとのコントラストが実に良い雰囲気を出している。リヴァーサイドの総帥プロデューサーのオリン・キープニュースの手腕が映えに映えた内容になっているのだから見事という他ない。

良い雰囲気のハードバップ盤です。バリバリと丁々発止としたバップなパフォーマンスは無いんですが、アレンジも良好、コンセプトもしっかりしていて、聴かせるハードバップな内容に仕上がっています。歌心溢れるドーハムとキャノンボール。良い内容の良いハードバップ盤だと思います。
 
 

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2023年7月20日 (木曜日)

「無念」の最後のリーダー作 『Trompeta Toccata

哀愁のトランペッター、ケニー・ドーハム。キャッチフレーズの「哀愁の」については、ドーハムのワンホーンの名盤『Quiet Kenny』の印象が強くて「哀愁の」になるが、ドーハムって、もともとはビ・バップ時代から活躍する、筋金入りのバップ・トランペッター。基本は「溌剌としたバップなトランペット」。しかし、時々「フレーズがちょっと危うい」ところはご愛嬌。

そんなドーハム、1924年生まれ。しかし、1972年、腎臓病にて、48歳の若さでこの世を去っている。活動期間としては、初リーダー作が1953年、リーダー作の最後が1964年。活動期間としては僅か11年。それでも、20枚以上のリーダー作をリリースしているので、当時、人気のトランペッターだったことが窺える。

Kenny Dorham『Trompeta Toccata』(写真左)。1964年9月14日の録音。ブルーノートの4181番。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Joe Henderson (ts), Tommy Flanagan (p), Richard Davis (b), Albert Heath (ds)。筋金入りのバップ・トランペッター、ケニー・ドーハムの最終リーダー作。遺作になる。アンドリュー・ヒルの『Point of Departure』への全面参加で得た感覚をこの盤に反映している様な、当時のドーハムの新境地を感じることの出来る好盤。
 

Kenny-dorhamtrompeta-toccata

 
パーソネルが面白い。ドーハム、フラナガン、ヒースの3人は、ビ・バップ最終期からの、いわゆる「旧人類」。ヘンダーソンとデイヴィスは新主流派の、いわゆる「新人類」。新旧入り乱れてのパフォーマンスになる。それでも、ドーハム、フラナガン、ヒースは、新しい「新主流派」の演奏にも適応出来る柔軟性を持ったジャズマン達。この盤でも、果敢に、当時最先端のモーダルなジャズにチャレンジしている。

アフロ・ラテン・リズムの曲あり、ファンキー&ブルージーな曲あり、ジャズ・ロック調のボッサな曲あり、ストレード・アヘッドな曲あり、曲想がバリエーションに富んでいますが、アルバム全体を覆っているのは「モード・ジャズ」志向な展開。曲毎の雰囲気は、明らかにハードバップな曲とは雰囲気が異なる。しかし、どれもがバッチリ「キマっている」感じは無くて、まだまだ発展性のノリしろがある、ドーハムとしては、発展途上の過渡的な演奏だと思う。

この後、ドーハムはどこへ行くのだろう、どんなジャズを聴かせてくれるのだろう、そんな期待感を持たせてくれる、ポジティヴで発展途上な内容だが、これが最後のリーダー作となってしまった。なんと残念なことか。まだまだ先のある、ポジティヴで発展途上な音に、ドーハムの新境地を聴き損ねた、そんな「無念」を僕は感じる。
 
 

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2023年6月 8日 (木曜日)

ドーハムとマクリーンの相性は...『Matador』

ケニー・ドーハムのリーダー作の落ち穂拾いをしている。今日は、ドーハムの活動後半、後半も後半、最終リーダー作の『Trompeta Toccata』(1964年)の1枚前のリーダー作を取りあげる。

Kenny Dorham『Matador』(写真)。1962年4月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jackie McLean (as), Bobby Timmons (p), Teddy Smith (b), J.C. Moses (ds)。リーダーのケニー・ドーハムのトランペットとジャキー・マクリーンのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。ピアノにファンキー・ピアニスト、ボビー・ティモンズの名前が見える。

ドーハムの活動の最終期、リアルタイムでリリースされたリーダー作としては「ラス前」である。ドーハムのトランペットは、相変わらず、ハードバップしていて元気溌剌。バリバリ吹きまくっている。が、ちょっと元気が無いかな、と思うところが見え隠れ。

それは、マクリーンのアルト・サックスに原因がある。この盤でのマクリーンは絶好調。ちょっとピッチの外れた独特の音色で、マクリーンはどこかモーダルな響きのするフレーズを吹きまくる。これが目立ちに目立っている。

ドーハムは従来のハードバップな吹きっぷりなので、流麗かつメロディアス。耳に優しく聴き心地の良いフレーズ。マクリーンはどこかモーダルな吹きっぷりなので、緩急自在、強弱自在、どこかゴツゴツしてたり、音の拡がりや奥行きがダイナミックだったりで、耳にしっかり響き、フレーズの印象が強く残る。そういうところから、この盤ではマクリーンの方が目立ってしまっている。
 

Kenny-dorhammatador

 
しかし、目立ったからといって、マクリーンの吹きっぷりに問題は無い。マクリーンのベスト・プレイに近い吹きっぷりで、この盤がマクリーンのリーダー作だったら、至極納得である。

ドーハムのトランペットについては、問題は無いのだが、従来からのハードバップな吹きっぷりを全く変えていない分、印象が薄まり、マクリーンと比べて、ちょっと損をしている。確かにマンネリと言えばマンネリ気味かな。

そして、意外とピアノのティモンズが活躍している。ミスター・ファンキーなピアノのティモンズ、しっかりとファンクネスを漂わせた躍動感溢れるバッキングは、しっかりとフロント2管を鼓舞する。

そして、どこかスパニッシュ・ムード漂うアルバム全体の雰囲気をしっかりと「ファンキーな純ジャズ」に着地させている。加えて、どちらかと言えば弱いと言わざるを得ないベースとドラムのリズム隊に代わって、演奏全体のリズム&ビートを統率しているのは見事。

ドーハムとマクリーン、好対照のフロント2管の相性を「良し」とするか「否」とするかで、評価の軽重が分かれるアルバムの内容かと思います。ハードバップ盤としては及第点以上。躍動感もあり、フロント2管それぞれの個性ははっきり出ていて、バックのリズム隊もピアノの大活躍で水準以上をキープ。ジャズの多様化の時代における「ユニークな内容の好盤」だと思います。
 
 

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2023年5月31日 (水曜日)

ハードバップな雰囲気を楽しむ 『2 Horns / 2 Rhythm』

何故か、梅雨の季節になると、ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)のトランペットが聴きたくなる。中音域を多用しながら、芯がしっかりしているが、まろやかな歌心ある「哀愁のトランペット」が良い。時々、テクニック的に「ヨレる」ところがあるが、それも個性でご愛嬌。張りのあるブリリアントな「哀愁のトランペット」は、この梅雨の季節に合う。

Kenny Dorham『2 Horns / 2 Rhythm』(写真左)。1957年11月13日と1957年12月2日の録音。リバーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp, p), Ernie Henry (as), Eddie Mathias (b), G.T. Hogan (ds)。12月2日の録音では、ベースが、Wilbur Ware (b) に代わっている。

基本は、リーダーのドーハムのトランペットとヘンリーのアルト・サックスが2管フロントの「ピアノレス」カルテット。3曲目の「Soon」にだけ、なんと、ドーハムがピアノを弾いている。12月2日のセッションでは、ベースがウエアに交代して、4曲目の「Is It True What They Say About Dixie?」と8曲目の「Jazz-Classic」を演奏、その他の曲は11月13日の録音。

ピアノレスの2管フロント・カルテットという変則な編成だが、演奏全体の纏まりは良い。アレンジが効いているのか、ファンキー・ジャズ志向の根明なハードバップが展開されていて、意外と聴き応えがある。
 

Kenny-dorham-quartet-two-horns-two-rhyth

 
但し、ベースが弱く、12月2日のセッションでは、ウエアに交代して、何とか体裁を整えている。が、ドーハムのトランペットとヘンリーのアルト・サックスが良く鳴っていて、リズム隊の弱さをしっかりカヴァーしている。特に、この録音が最後になる、ヘンリーのアルト・サックスがなかなか健闘している。

ドーハムのトランペットは好調で、この盤では意外と「根明」なバップ・トランペットを吹き回している。冒頭の「Lotus Blossom」は、後の『Quiet Kenny』の「哀愁感溢れる名演」で有名になるドーハム作の名曲だが、この盤では、哀愁感はなく、根明でブリリアントな吹き回し。とても健康的に明るい「Lotus Blossom」で、ちょっと面食らうが、演奏的には、しっかりハードバップしていて、充実している。

2曲目の「Sposin」は、他のジャズマンの演奏よりも、はるかに明るい雰囲気で演奏されていて、この盤のドーハムは「哀愁のトランペッター」というよりは「根明でブリリアントなトランペッター」として、速いフレーズも、テクニックよろしく、バリバリ吹き回している。

但し、3曲目「Soon」でのドーハムのピアノはたどたどしくて、宜しくない。無理にピアノを弾かなくても良かったのに、とも思うし、プロデューサーのオリン・キープニュースにしても、この演奏をアルバムに収録しなくても良かったのに、とも思う(笑)。

この盤については、ドーハムの代表作としては、ちょっと内容的に弱いが、ドーハムのトランペットとヘンリーのアルト・サックスの2管フロントが好調で、ファンキー・ジャズ志向のハードバップ盤として、意外と楽しめる「変則カルテット」の演奏になっている。この盤に溢れるハードバップな雰囲気は聴いていて、単純に楽しい。
 
 

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2023年5月21日 (日曜日)

演奏志向にブレが無い 『Jazz Contemporary』

昨日から、ケニー・ドーハムのトランペットを愛でるべく、当ブログで扱っていないリーダー作を「落ち穂拾い」している。

いろいろリーダー作を聴いていて、意外とドーハムって、どの盤でも溌剌としたバップなトランペットを吹いているんやなあ〜、と改めて感心した。加えて、ドーハムって、「フレーズがちょっと危うい」ところ、滑らかにアドリブ・フレーズを吹き進めていくのだが、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」ところがあるのだが、これは、どのリーダー作にも頻度の多少はあるが、必ず入っている。

このドーハムの「フレーズがちょっと危うい」ところって、セッション毎に好不調があるのでは無く、押し並べて、ドーハムの個性として備わっている類のものなんだろう、と感じる。この部分が気になるかならないかで、ドーハムの評価は分かれるのだろう。

Kenny Dorham『Jazz Contemporary』(写真左)。1960年2月11–12日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Charles Davis (bs), Steve Kuhn (p), Jimmy Garrison (b, tracks 2, 3, 7, 8 & 10), Butch Warren (b, tracks 1, 4-6 & 9), Buddy Enlow (ds)。ベースは、11日の録音がジミー・ギャリソン、12日の録音がブッチー・ワーレンと分担している。

ジャケが、ちょっと胡散臭い「手抜きのモダン・アート」な感じなので、ブートか、と思ったりするが、Timeレーベルからリリースされたハードバップな好盤である。

しかし、ピアノには、当時22歳、新進気鋭の新しい感覚のモーダルなピアニストのスティーヴ・キューン、バリトン・サックス(略してバリサク)には、最初はペッパー・アダムスかと思ったが、響きがちょっと違う。この盤では、R&B志向でソウルフルなチャールズ・ディヴィスがアサインされている。
 

Kenny-dorhamjazz-contemporary

 
録音年は1960年。ハードバップが成熟、このハードバップを基本に様々な志向のモダン・ジャズが展開され始めた時代。この盤では、その「新しい響き」を、まず、スティーヴ・キューンのピアノがそれを担っている。

この盤、リーダーはドーハムで、基本は、こってこてのハードバップなので、キューンも神妙にハードバップなピアノで応じているのだが、和音の重ね方とかアドリブ・フレーズの展開が、どこかモーダルな響きがしているのだが、これがドーハムの中音域がメインの、ブルージーでファンキーなバップ・トランペットとの相性が殊の外良い。

そして、R&B志向でソウルフルなチャールズ・ディヴィスのバリサクがかなり目立つ。演奏全体の志向はハードバップだが、チャールズ・ディヴィスのバリサクは、ソウルフルでR&B志向の「ジャズ・ファンク」な響きが個性。水と油かな、と危惧したのだが、これがドーハムの中音域がメインの柔軟で流麗なバップ・トランペットとの「好対象」な響きで、フロント2管として、意外と魅力的な響きを醸し出している。

ベースも、コルトレーンの下でモーダルなベースをブイブイ弾きまくるギャリソン、そして、当時、新進気鋭のブッチー・ワーレンが担当しているが、この二人もリーダーのドーハムの志向に沿って、神妙にハードバップなベースで応じている。

パーソネルを見渡せば、筋金入りの「ビ・バップ」なトランペッター、ドーハムが、新進気鋭のメンバーに応じて、新しい響きのモーダルなジャズに挑戦しているのか、と思うのだが、どうして、従来の「こってこてなハードバップ」でガンガンやっている。

そういう意味で、この盤の演奏を聴いていて、ドーハムって、演奏志向について「ブレの無い」ジャズマンやったんやな、と再認識。当然、ドーハムは好調、「フレーズがちょっと危うい」ところは頻度は低い。この盤、ドーハムの代表作の1枚として良い、充実した内容のリーダー作だと思います。
 
 

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2023年5月20日 (土曜日)

ドーハムの初リーダー作 『Kenny Dorham Quintet』

この季節の雨の日の午後、しとしと降る暖かい雨を見ながら、聴きたいなあ、と思うのが、ケニー・ドーハムの『静かなるケニー』。バップ仕込みの溌剌とした丸みのあるトランペットがベースのドーハム。シットリしたバラード演奏にも味があって、ついついしみじみと聴き入ってしまう。

で、ケニー・ドーハムのトランペットが無性に聴きたくなって、当ブログで扱っていないアルバムはあるのかしら、と物色して、なんと、ドーハムの初リーダー作については、まだ、当ブログで扱っていないことが判明。ということで、改めて、聴き直してみた。

『Kenny Dorham Quintet』(写真左)。1953年12月15日、Van Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jimmy Heath (sax), Walter Bishop Jr. (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。改めて、哀愁のバップ・トランペッター、ケニー・ドーハムの初リーダー作になる。ドーハムは録音当時は29歳。初リーダー作としては「遅咲き」である。

演奏内容としては、ビ・バップな演奏のそれぞれのパートが長くなった感じで、成熟したハードバップな演奏では無い。アレンジもビ・バップ時代の雰囲気濃厚。
 

Kenny-dorham-quintet

 
それでも、それはそれで「まずまずの出来」で、リーダーのドーハムのトランペットは溌剌としていて、しっかり吹き切っている。ドーハムのトランペットの特徴がしっかり記録されていて、音色は明朗で滑らか。テクニックもまずまず確か。

まあ、それでも、ドーハムの個性のひとつである「フレーズがちょっと危うい」ところ、滑らかにアドリブ・フレーズを吹き進めていくのだが、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」ところが、この初リーダー作でも見え隠れしているところは「ご愛嬌」。耳にすれば気になるが、もう今では、ドーハムやからなあ、と諦めて、拘らずに聴いている(笑)。

その弱点を凌駕して余りある「ビ・バップ仕込みの、中音域を活かした、溌剌として哀愁を帯びたファンクネス漂うフレーズ」がドーハムにはあるので、「よれる」もしくは「ふらつく」部分は許容出来る範囲。収録曲はオリジナル曲は1曲のみ。あとは、結構渋めのスタンダード曲とセロニアス・モンク曲。どの曲でもドーハムは溌剌とトランペットを吹き上げている。

CDリイシューの時、LP時代の未収録曲「I Love You(Take 2)」「Chicago Blues」「Lonesome Lover Blues」が入っているが、これはオミットした方が良いだろう。特に「Chicago Blues」「Lonesome Lover Blues」は、ドーハムのボーカル入りで、これが聴けたものでは無いのだ。僕はいつも飛ばしている(笑)。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2021年10月18日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・7 『At the Cafe Bohemia』

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズは、1954年から1990年の36年間、アート・ブレイキーの下、活動し続けた、伝説のジャズ・バンドである。リーダーはブレイキーだが、他のメンバーはそれぞれの時代で入れ替わる。しかも、このジャズ・メッセンジャーズに所属して活躍したジャズマンは、おおよそ、一流のジャズマンとして育っていった。

Art Blakey & The Jazz Messengers『At the Cafe Bohemia, Vol. 1&2』(写真)。1955年11月23日、NYのライヴ・スポット「カフェ・ボヘミア」でのライヴ録音。ブルーノートの1507 & 1508番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Kenny Dorham (tp). Hank Mobley (ts), Horace Silver (p), Doug Watkins (b)。ブレイキーとシルヴァーが共存した時代のザ・ジャズ・メッセンジャーズの傑作ライヴである。

1955年と言えば、ハードバップ初期から中期への移行期。ハードバップについて、その演奏の方法、雰囲気、音楽理論が体験的に整理され、その方法論が確立された時期。この『カフェ・ボヘミア』は、そんな時期にライヴ録音された、奇跡的なハードバップ演奏の記録である。なんせ、このライヴ盤2枚に録音されている内容については「文句の付けようが無い」。
 

At-the-cafe-bohemia

 
演奏の要は「ブレイキーとシルヴァー」。ブレイキーのドラミングは、ハードバップ期の代表的ドラミングの1つ。演奏のリズム&ビートを牽引し、フロント楽器を鼓舞し、フロント楽器の展開をコントロールする。コードがベースのハードバップにおいて、シルヴァーのピアノの演奏スタイルは、ハードバップ期の流行スタイルの1つ。後のファンキー・ピアノの先駆。ワトキンスのベースは、ブレイキーとシルヴァーとの「ビート」の橋渡し役。このバンド演奏の「ビート」の方向性を示し続けている。

フロント楽器に目を転じると、このライヴ盤でのハンク・モブレーは何時になく絶好調。というか、モブレーのサックス奏者としての生涯最高のブロウかもしれない。それほどまでに内容が素晴らしい。ケニー・ドーハムのトランペットも同様。そのパフォーマンスがバラツキがちなドーハムが、優れたテクニックでバリバリ吹きまくっている。このフロント2管のパフォーマンスは、ハードバップ期を代表するものの1つだろう。

このライヴ盤のハードバピッシュ度は相当に高い。ハードバップ演奏の良好なサンプルであり、ショーケースでもある。ハードバップとは何か、に迷ったら、僕はこの盤を聴く。この盤にある演奏の好要素を記憶に留めて、他のハードバップの演奏を聴く。ハードバップ演奏の基準となる演奏がこのライヴ盤に詰まっている。
 
 
 
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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
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2020年11月 9日 (月曜日)

ドーハムにしみじみする 『Showboat』

晩秋である。最低気温も10度を切って、季節は冬への歩みを始めた様だ。部屋から眺める空も陽射しも弱くなって、なんだかしみじみする。こういう時はジャズが良いが、ハードなイメージのジャズは駄目だ。芯がしっかりしていて、それでいて癒されるような、歌心のあるジャズ盤が良い。良い塩梅で「しみじみ」したいのだ。

そんな盤あったかなあ、と思いながら、アルバム棚を見渡す。すると、おお、あったではないか。トランペットのケニー・ドーハムである。彼のトランペットは中音域を多用しながら、芯がしっかりしているが、まろやかな歌心あるトランペットが特徴。テクニックは基本的に優秀。好不調の波が少ない、安定した吹き回しが良い。

Kenny Dorham『Showboat』(写真左)。1960年12月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jimmy Heath (ts), Kenny Drew (p), Jimmy Garrison (b), Art Taylor (ds)。ジャケットを見れば「ピン」と来る、タイム・レーベルからのリリース。リーダーのケニー・ドーハムのトランペットと、渋い玄人好みのジミー・ヒースのテナー・サックスの2管フロントのクインテット編成である。
 
 
Showboat-kenny-dorham  
 
 
この盤は「企画盤」で、タイトル通り、Oscar Hammerstein II(オスカー・ハマースタイン2世)の作詞、Jerome Kern(ジェローム・カーン)の作曲の『ショウボート』というミュージカルの挿入曲集になる。「スタンダード曲作りの名コンビ」によるミュージカル曲である。どの曲も素敵なメロディーを湛えた好曲ばかり。

こういう歌モノを吹かせたら、ケニー・ドーハムって結構イケる。まろやかな彼のトランペットが申し分の無いアルバムである。加えて、一聴すると「ロリンズみたいな音がするんだが、吹き回し自体はモブレーみたいな」渋い落ち着いたテナーで、誰だこれ、って思って、パーソネルをみたら、ジミー・ヒースでした。バックのリズム隊も好演で、ギャリソンなぞ、ベースをブンブン、魅力的に唸らせてます。

歌モノ中心の選曲ですが、決して甘く流れることなく、ドーハムのトランペットもヒースのテナーも、しっかりメリハリが効いていて飽きることが無い。バックのリズム・セクションも良好。決して、歴史に残る様な、ジャズ盤の入門書に必ず出てくる様な有名盤ではないが、リラックスして長きに渡って聴き続けることの出来る「愛聴盤」の類。これ、なかなか良いアルバムですよ。
 
 
 

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【更新しました】 2020.10.07 更新。




  ・『Middle Man』 1980
 
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  ・The Band の「最高傑作」盤
 
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  ・僕達はタツローの源へ遡った


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