2020年8月24日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・185

ケニー・ドーハムのトランペットの特徴は「ヘタウマ」。誤解しないで欲しいが「下手」と言っている訳では無い。音色は明朗で滑らか。テクニックもまずまず確か。しかし、そのフレーズはちょっと危うい。滑らかにアドリブ・フレーズを吹き進めていくのだが、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」。

しかし、ドーハムのパフォーマンスは「良い」と「普通」が混在するので、「良い」方向に振れると、それはそれは素晴らしいトランペットを吹いたりするから困る。つまり、ドーハムのリーダー作は全部聴いてこそ、ドーハムのトランペッターとしての個性と力量が理解出来る、ということ。「普通」のリーダー作に出会っても諦めず、どんどん他のリーダー作を聴き漁ることが肝要である。

Kenny Dorham『Whistle Stop』(写真左)。1961年1月15日の録音。ブルーノートの4063番。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Hank Mobley (ts), Kenny Drew (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。「良い」と「普通」のパフォーマンスがリーダー作毎に混在するドーハムとモブレーのフロント2管。聴く前にパーソネルだけ見て、ちょっと不安になる。

ハードバップが成熟仕切った時代の録音。我が国では、ジャズ盤紹介本でこの盤の名前が挙がることはまず無い。ドーハムの紹介の中でも、ドーハムの代表的好盤として紹介されることはまず無い。
 
 
Whistle-stop
 
 
が、である。まず、このジャケットを見て欲しい。なんか「好盤っぽい」面構えをしている。ブルーノート・レーベルはもともとジャケット・デザインは優秀だが、そんな中でもこのジャケットは良い。ということで聴いてみて「あらビックリ」。成熟したハードバップな演奏がギッシリ。演奏内容、演奏テクニック、どれをとっても「素晴らしい」の一言。

まず、リーダーのドーハムのトランペットが素晴らしい。がっしりと気合いの入った、ブリリアントで骨太なトランペットを吹きまくる。決して「ブレない」ドーハムのトランペット。ちょっと優しくラウンドした音のエッジと流麗なフレーズの吹き回しが、ドーハムらしい。

が、何と言っても、この番の最大の「サプライズ」は、ハンク・モブレーのテナーサックス。堂々として力感溢れる骨太なサックスをガンガンに聴かせてくれるのだ。あの気分屋の「迷える」モブレーがである。「ブレない」ドーハムと「迷わない」モブレーのフロント2管が相当な迫力を持って、我々の耳に迫ってくる。

そして、当時、過小評価されていたピアニストのケニー・ドリューが、黒くてブルージーな弾き回しで我々の耳を驚かせる。ベースの名手「ポールチェン」とドラムの「フィリージョー」とのリズム隊が実に良い「フロント2管のサポート」をしている。

堂々とブレないドーハムのトランペットが最大の魅力。もっともっと評価されていいアルバムだとしみじみ思う。
 
 
 

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2020年8月23日 (日曜日)

モーダルなケニー・ドーハム

どうにも、僕は「ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)」に対して印象が良くない。『Quiet Kenny』という哀愁のトランペット好盤なんかを残していて、ベテランのジャズ者の方から人気を得ているが、僕はどうにもいけない。

このケニー・ドーハムのトランペットの特徴は「ヘタウマ」。誤解しないで欲しいが「下手」と言っている訳では無い。音色は明朗で滑らか。テクニックもまずまず確か。しかし、そのフレーズはちょっと危うい。滑らかにアドリブ・フレーズを吹き進めていくのだが、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」。

この「よれる」もしくは「ふらつく」が、すごく「気になる」。テクニック全体としては水準以上のものがあるのに、フレーズの端々で、フレーズの終わりが、不定期に突然「よれる」もしくは「ふらつく」のだ。聴いていて、そこだけ「オヨヨ」となる。スリリングではあるのだが、精神衛生上、あまり宜しくない。

Kenny Dorham『Una Mas』(写真左)。1963年4月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Joe Henderson (ts), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Tony Williams (ds)。録音時期は1963年、ジャズの多様化の時代。ハードバップから様々な演奏志向のジャズが展開されていた時代。そして、この面子。でもなあ、ドーハムってハードバッパーなんだけど。

結論から言うと、この盤、内容充実の「モード・ジャズ」である。ドーハムのスタイルからすると、完全に「異質」の演奏志向なのだが、フロントの相棒テナー、そして、バックのリズム・セクションの面子を見渡すと、当時の若手精鋭の「モード・ジャズ」大好きメンバー。このメンバーが大人しくドーハムに従って、旧来のハードバップをやるとは思えない。
 
 
Una-mas
 
 
恐らく、ブルーノートの総帥、プロデューサーのアルフレッド・ライオンが、ドーハムに対して「モード、やってみなはれ」と指導したんではないか。ジャズの世界でも、新しい演奏志向や技術が出てきたら、それに適応するに越したことはない。生き残るためには必要なこと。そういう意味で、ライオンはドーハムに引導を渡したのでは無いかと推察している。

で、ある。この盤で、ドーハムは見事に「モード・ジャズ」に適応している。「よれる」もしくは「ふらつく」ことも全く無い。端正で明確なトランペットで「モーダルなフレーズ」を吹きまくる。

フロントの相棒テナー、そして、バックのリズム・セクションはバリバリのモード・ジャズを展開しているのだが、そのバッキングに対して全く違和感無く、モードなトランペットを流麗に吹き回している。

ドーハムもモード・トランペットはゴツゴツしていないし、雄々しくも無い。思慮深く流麗なのだ。しかも「端正で正確」なトランペット。「なんやドーハム、やれば出来るやん」と嬉しくなる。

ドーハムのトランペットの本質を殺すこと無く、無理をせず「モード・ジャズ」に適応している。これ、ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンの慧眼のなせる技。この後、1970年代、欧州に渡っても、ドーハムはモード・トランペットを引っさげて、活躍するのだから、先見の明があったと思うし、ドーハムにとっても、大変「実になった」チャレンジであった。
 
 
 

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