2024年3月22日 (金曜日)

『The Other Side of Abbey Road』

バップの如く弾きまくり、ソフト&メロウにR&Bに唄いまくるギタリスト、ジョージ・ベンソン。バップの如く弾きまくるギタリストは沢山いるが、「ギターをバップの如く弾きまくり、R&Bに唄いまくる」ジャズ・ギタリストは、ジョージ・ベンソンしかいない。

George Benson『The Other Side of Abbey Road』(写真左)。1970年の作品。1969年10月と11月の2セッションの録音。ちなみにパーソネルは、基本セットは、George Benson (g, vo), Bob James, Herbie Hancock, Ernie Hayes (ac-p, org, harpsichord), Ron Carter, Jerry Jemmott (b), Idris Muhammad, d Shaughnessy (ds), Ray Barretto, Andy Gonzalez (perc)。ここに、ドン・セベスキーのアレンジ&指揮のジャズ・オーケストラがバックに付く。

この盤は、ベンソンのA&Mレコードからのリーダー作の2作目。A&Mレコードからの初リーダー作『Shape of Things to Come』は「唄いまくるが如くギターを弾く」ベンソンが凄かったが、この盤では「ギターを弾きまくり、唄いまくる」、ギターとボーカルの二刀流での大活躍のベンソンを捉えた秀作である。 

全曲、ビートルズ『アビイ・ロード』の収録曲のカヴァーで占められる。それも「Golden Slumbers〜You Never Give Me Your Money」から始まり、「Because〜Come Together」「Oh! Darling」「Here Comes the Sun〜I Want You (She's So Heavy)」そして「Something〜Octopus's Garden〜The End」まで、どういう基準で選曲されたがは不明だが、なかなかマニアックな曲が、オリジナルの曲順も意識せず、並んでいる。

元々、ウエス・モンゴメリー2世と形容されたベンソン。バップの如く弾きまくるギターは当然。繰り出すフレーズは、R&Bに、ソフト&メロウに唄うが如くのフレーズ。
 

George-bensonthe-other-side-of-abbey-roa
 

そして、濃厚なファンクネスを底に漂わせながら、ベンソンはソフト&メロウに唄いまくる。しかし、ベンソンにこれだけの「ソフト&メロウにR&Bに唄わせた」クリード・テイラーの慧眼恐るべし、である。

ビートルズ『アビイ・ロード』から選ばれた楽曲は、かなり斬新なアレンジが施されていて、原曲のメイン・フレーズは残ってはいるが、イントロや間奏、ビートルズ・オリジナルなアレンジはほどんどデフォルメされている。どの曲もイントロだけ聴けば、何の曲だか判らないほど。イージーリスニング・ジャズと曲解されない様に、かなり純ジャズ寄りのアレンジが施されている。

この「かなり純ジャズ寄り」のアレンジに、バップの如く弾きまくるベンソンのギターが映える。ベンソンのソロがイージーリスニングっぽく聴こえず、バップにジャジーに聴こえるので、ジャズ・ギターとして純粋に楽しめる。そして、「ソフト&メロウにR&B」に唄うベンソンの歌唱が、ビートルズの楽曲に濃厚なファンクネスを纏わせている。 

ビートルズの楽曲のジャズ化が主目的では無い、「ギターを弾きまくり、唄いまくる」ベンソンを的確にアピールすべく、当時、人気絶頂だったビートルズの楽曲をチョイスした、と解釈している。そして、その目論見はほぼ成功している。特に、ベンソンの歌唱は、のちのフュージョン・ジャズにピッタリの「ソフト&メロウにR&B」な雰囲気をしていることが、この盤の歌唱で顕になった。                                                         

この盤、意外とマイナーな存在なんだが、ギターを弾きまくり唄いまくる二刀流のジャズマン、ジョージ・ベンソンのターニングポイントとなったアルバムだと睨んでいる。次作以降、ソフト&メロウなソウル・ジャズから、レアグルーヴなファンキー・ジャズをメインに「弾きまくり唄いまくる」ギタリストとして、ベンソンは人気者になっていく。
 
 

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2024年3月21日 (木曜日)

唄いまくるが如くギターを弾く 『Shape of Things to Come』

ソフト&メロウに、R&Bに唄いまくるが如く、バップの如く弾来まくるギタリスト、ジョージ・ベンソン。これが凄い。弾きまくるギタリストや、バップの如く弾きまくるギタリストは沢山いるが、「唄いまくるが如く弾きまくる」ジャズ・ギタリストは、ジョージ・ベンソンしかいない。

George Benson『Shape of Things to Come』(写真左)。1968年8-10月の録音。ちなみにパーソネルは、George Benson (g, vo), Ron Carter (b), Richard Davis (b), Herbie Hancock (p), Hank Jones (p), Idris Muhammad (ds), Don Sebesky (arr, cond) が主要メンバー。ここに、ドン・セベスキーのアレンジ&指揮のジャズ・オーケストラがバックに付く。

この盤は、ベンソンのA&Mレコードからの初リーダー作。当盤以前のコロンビアからのリリースの2枚、『It's Uptown』『The George Benson Cookbook』では、確かに、クロスオーバー・ジャズ、フュージョン・ジャズの確固たる片鱗が見え隠れした「バップな弾き回し」。そこに目をつけたクリード・テイラー。その慧眼に間違いは無かった。
 

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元々、ウエス・モンゴメリー2世と形容されたベンソン。バップの如く弾きまくるギターは当然。出てくるフレーズもウエス譲りかそれ以上の、ソフト&メロウに唄うが如くのフレーズ。唄いまくるが如く弾きまくるフレーズの雰囲気は「ソフト&メロウなR&B志向」。濃厚なファンクネスを底に漂わせながら、ベンソンはソフト&メロウに弾きまくる。しかし、ベンソンにこれだけの「ソフト&メロウにR&Bに、唄いまくるが如くギターを弾きまくらせた」クリード・テイラーのプロデュース恐るべし、である。

1曲目の「Footin' It」の、切れ味良く、ソフト&メロウにR&Bにグルーヴするギターが、2曲目「Face It Boy, It's Over」での、ソフト&メロウにバップに弾きまくるギターが、最高に「きまって」いる。セベスキー・アレンジのジャズオケは、いかにも「イージー・リスニング・ジャズ志向」だが、ベンソンの流麗でハイテクニックなギター・フレーズには「芯」がしっかり入っていてバップ風。メリハリが聴いていて、ジャズオケの聴き心地の良さに流されることはない。

グルーヴィーなジャズ・ファンクから、R&Bな「ノリの良い」ソウルフルなエレ・ジャズまで、ベンソンは底にファンクネスを湛えつつ、ソフト&メロウに、クール&グルーヴィーに、唄いまくるが如くギターを弾きまくる。地味な存在の盤だが、意外と内容充実の、クロスオーバー&フュージョンを基本とした、イージーリスニング・ジャズの好盤だと思う。
 
 

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2023年6月17日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・263

唄って弾きまくるギタリスト、ジョージ・ベンソン(George Benson)。その弾きっぷりは「ウエス・モンゴメリー」のファンキー・ギターの再来。その唄いっぷりはソウルフル&ムーディー。唄って弾きまくるその底には「R&B」の黒さが流れ、ソウル・ミュージックのファンクネスが流れる。今の耳で振り返れば、ソフト&メロウなフュージョン・ミュージックの発祥である。

George Benson『Tell It Like It Is』(写真左)。1969年の4ー5月の録音。 A&M/CTIレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは以下の通り。ドラムとパーカッションはほぼ固定。曲によって、ギターとサックス、ベースを使い分けている。後のフュージョン・ジャズの担い手ジャズマンが集結している。

George Benson (g, vo), Lew Soloff (tp), Jerome Richardson (tracks 1–5, 8, 10 & 11), Arthur Clarke, Sonny Fortune (sax, tracks 1–5), Joe Farrell Joe Henderson (sax, tracks 8, 10 & 11), Bob Porcelli, Hubert Laws (sax, tracks 6, 7 & 9), Rodgers Grant (p, tracks 6, 7 & 9), Richard Tee (p, tracks 1–5, 8, 10 & 11), Bob Bushnell (b, tracks 1–5), Jerry Jemmott (b, tracks 1–7 & 9), Jim Fielder (b, tracks 8, 10 & 11), Leo Morris (ds), Paul Alicea, Angel Allende, Johnny Pacheco (perc)。

ラテンとソウル、R&B、カリビアンとエレ・ジャズを融合させた、クロスオーバー・ジャズな音作り。リーダーのジョージ・ベンソン自体は、易きに流れず、かなり硬派でメインストリーム志向のファンキー・ギターを弾きまくっている。ウエスばりのオクターヴ奏法で弾きまくり、ソウルフルでソフト&メロウなヴォーカルを披露している。
 

George-bensontell-it-like-it-is

 
Booker T & M.G.'sの名曲をカヴァーした、ご機嫌なラテン・ジャズ「Soul Limbo」から始まり、Jerry Butlerのカヴァー、ソウルフルでR&Bな「Are You Happy?」、ベンソンのヴォーカルが心地良い「Tell It Like It Is」、こってこてラテンな「Land Of 1000 Dances」、
Dontcha Hear Me Callin' To Ya」「Water Brother」は小粋なジャズ・ファンク。

グルーヴィーなブラスのユニゾン&ハーモニーも芳しい、ソウルフルなカントリー・ナンバー「My Woman's Good to Me」でのベンソンの歌唱にグッとくる。「Jama Joe」のホットなラテン曲でギターを弾きまくるベンソンは熱い。

ラス前の、スティヴィー・ワンダーの名曲のカヴァー「My Cherie Amour」でのベンソンのオクターヴ奏法に思わず仰け反り、ラストのオールドR&Bチューンのカヴァー「Out in the Cold Again」でのベンソンのソフト&メロウな唄いっぷりに惚れ惚れする。

このベンソンの『Tell It Like It Is』というアルバム、ソフト&メロウなソウル・ジャズから、レアグルーヴなファンキー・ジャズまで、お洒落なアレンジに乗って、マニアックで玄人好みの演奏がてんこ盛り。

米国ルーツ・ミュージックと融合したクロスオーバーなジャズを、熱いギターとソフト&メロウなボーカル、そして、小粋なアレンジで聴かせてくれる。とにかく単純に聴いていて楽しく、思わず足踏みし腰が揺れる。そんなソウルフルな傑作だと思います。
 
 

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2020年12月 3日 (木曜日)

「メローなロンドンの週末」

もともとはマイルス・バンドに呼ばれる位に、先進的でロック寄りのジャズ・エレギを弾く新進気鋭のギタリストだった。そして、1970年代に入って、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズの大ブームの中で、ソフト&メロウを「ウリ」にしたギタリストとして有名になる。そして、遂にはソフト&メロウなフュージョンの中で歌を披露するようになる。

で、この歌が「とても素晴らしい」。ギタリストなのに歌も上手い。唄って弾きまくるギタリストとなり、遂には、上手いギターも弾くボーカリストになった。しかし、この人、ギターを弾かせると超一流な腕前なんだけどなあ。僕は今でも、この人のギターが大好きで、ギター弾きまくりの1970年代のリーダー作を、今でも好んで聴いているくらい。

George Benson『Weekend in London』(写真左)。先月のリリース。ジャズ・ギターのレジェンド、ジョージ・ベンソンが2019年、ロンドンの老舗ジャズ・クラブ、Ronnie Scott'sで行ったライヴを収録。このジャズ・クラブのキャパは250人。小さなジャズ・クラブでのライブならではの、熱気がダイレクトに伝わる、デッドな音空間が素敵なライヴ盤である。
 
 
Weekend-in-london
 
 
収録曲はベンソンの「ベスト集+カヴァー集」的なもの。まず「Give Me The Night」からスタートするところが良い。1980年に全米TOP5ヒット曲、懐かしい。十八番の代表曲「Love X Love」や「In Your Eyes」の選曲も良い。カヴァー曲は渋い選曲で、ダニー・ハサウェイの「The Ghetto」なぞ、思わず感嘆の声を上げてしまう。

このライヴ盤のベンソンの基本的スタンスは「上手いギターも弾くボーカリスト」。冒頭から唄いまくっている。時々、間奏のレベルでギターを弾くが、これが流石に「上手い」のだが、物足りない。しかし、ラストの「Cruise Control」ではスキャットは入るが、久し振りにセミアコを弾きまくっている。これが圧巻。やっぱり、ベンソンには「ギター弾きまくり」だけのアルバムを出して欲しいなあ。

ベンソンは1943年生まれなので、今年で77歳。もう大御所も大御所、レジェンドもレジェンド過ぎる年齢ではあるが、このライヴ盤での歌声は「まだまだ現役バリバリ」。衰えは全く感じ無い。ギターについても堂々とした弾きっぷりで、指が縺れることは全く無い。いやはや、凄いジャズ・ギター&ボーカルのレジェンドである。
 
 
 

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  ・『Middle Man』 1980

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  ・The Band の「最高傑作」盤

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  ・僕達はタツローの源へ遡った

 

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2020年6月 3日 (水曜日)

故きを温ねて新しきを知る。

思いっきし蒸し暑い千葉県北西部地方。日が射したらモワッと体感気温30度越え。日が陰っても、涼しい風は湿気を帯びて、汗をかいた皮膚にまとわり付く。今日はどうしても外出しなければならない所用があり、となり駅までウォーキングがてら歩いたのだが、10分も歩くとジワッと汗ばんでくる。さすが6月。もう感じる季節は「夏」である。

これだけ蒸し暑くなってくると、聴きたくなるジャズは「爽やかな」「涼感感じる」ジャズになる。例えば「ボサノバ・ジャズ」。例えば「スムース・ジャズ」。ボサノバ・ジャズやスムース・ジャズを馬鹿にしてはいけない。確かに中には「これは一体なんなんだ」な内容の駄盤もある。しかし、これは純ジャズでも同じこと。ボサノバ・ジャズやスムース・ジャズにも、テクニック優秀、内容もある、純ジャズの好盤に相当するものも多々ある。

George Benson『That's Right』(写真左)。1995年、ミネアポリス、ニューヨーク、ロンドンにて録音。メインのプロデューサーは「売れる盤請負人」Tommy LiPuma。パーソネルについては、ザーッと見渡しても、知らない名前ばかり。つまりは旧来のモダン・ジャズ畑、フュージョン・ジャズ畑のメンバーは全く見当たらない。純粋に、スムース・ジャズ畑のメンバーばかりで固めている。ワーナーブラザーズを離れたベンソンのGRPレコード第一弾。
 
 
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もともとは「格好良く弾きまくって、ちょっと歌う」ギタリスト(これが凄く良かった)だったのだが、1980年代から1990年代前半の間、「歌う」ギタリストというか、ほぼボーカリストになってしまったベンソン。まあ、歌が上手すぎるから仕方の無いことだが、これではジャズ・ミュージシャンとは言い難い。しかし、この盤については「格好良く弾きまくって、ちょっと歌う」ギタリストが還って来た。久し振りだ、弾きまくるベンソン。さすがに上手い、ファンキー、グルーヴィーである。

打ち込みビートもあるにはあるが、これだけベンソンがジャジーなギターを弾きまくってくれれば、ギターのグルーヴが優先して、あんまり気にならない。そして、これだけベンソンがギターを弾きまくれば、ベンソンの「ちょっと歌う」ボーカルが逆に引き立つから不思議だ。この辺のプロデュースの妙、さすが、トミー・リピューマである。

当時として最新のスムース・ジャズと懐かしの70年代後期の「格好良く弾きまくって、ちょっと歌う」ベンソンを同居させた快心作だと思う。全体のプロデュースをトミー・リピューマが担い、リッキー・ピーターソン、インコグニートのブルーイのプロデュースで個々の曲作りをする。このプロデューサー陣の会心盤。「故きを温ねて新しきを知る」的なベンソンが格好良い。録音当時、52歳のベンソン。とんでもない中堅ギタリストである。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて      2020.05.11更新。

  ・『Another Page』 1983

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.05.24更新。

  ・Led Zeppelin Ⅱ (1969)

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2018年9月 2日 (日曜日)

1970年代の先駆け的ギタリスト 『Giblet Gravy』

昨日から涼しくなった千葉県北西部地方。今日などは半袖でじっとしていると肌寒いくらいだ。台風が西日本に接近しつつあるので、天気は良くないのだが、これだけ涼しくなると、ジャズ盤鑑賞の幅も広がるし、ジャズを聴いていても汗ばむことも無い。今年の夏は酷暑続きだったので、ジャズ鑑賞も辛かったですね。というか、まず体調が思わしく無い日が多かったなあ。

そこで、ジャズ・ギターである。熱く弾きまくるジャズ・ギター、クールに弾き進めるジャズ・ギター。様々なパターンのジャズ・ギターを聴き比べたくなる。ジャズ・ギターは、エレギとそのアタッチメントの進歩によって、表現の幅が広がった。今ではホーン楽器と変わらない、音のバリエーションと強弱を手に入れている。

そんなジャズ・ギター、ギタリストによって個性が明らかに異なるので、聴いていて楽しい。今日は、George Benson『Giblet Gravy』(写真左)を選盤。1968年2月の録音。1968年の録音とは言え、曲毎にミュージシャンを選んで録音する、という、1970年代の録音手法が取られていて、録音時、リーダー以外、パーマネントなメンバーは存在しない。
 

Giblet_gravy

 
それでもパーソネルを見渡すと、Eric Gale (g), Herbie Hancock (p), Ron Carter, Bob Cranshaw (b), Billy Cobham (ds) らの名前が確認出来て、ジャズロック〜クロスオーバーな音が顕著である。フュージョン・ジャズ全盛時にはソフト&メロウなフュージョン・ギターがウリのベンソンではあるが、この盤が録音されたのは1968年。まだまだバリバリに弾きまくっている。

そう、ベンソンは1960年代後半はソウル・ジャズ、ラテン・ジャズに大活躍。かなりハードなエレギに惚れ惚れする。これだけハードだとジャズよりはちょっとロックに寄っている雰囲気。聴き応え抜群である。特に、アドリブ展開におけるグルーヴ感とドライブ感が半端ない。このエレギの音を聴くと、当時、マイルスがセッションに呼んだ理由が理解できるような気がする。

ジャケ写を見れば時代を感じるんだが、若き日のギラギラしたベンソンが実に精悍。この頃のベンソンについては、単にウエス・モンゴメリーの後継者という切り口では無く、ハードバップを越え1970年代への橋渡しとなる、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズなエレギの先駆者という位置づけで、もっと語られるべきギタリストであると僕は思う。
 
 
 
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2018年8月14日 (火曜日)

ベンソンのブラコンAOR盤

ジャズの世界で「唄って弾きまくる」ギタリスト、と言えば、ジョージ・ベンソン(George Benson)である。デビューから暫くは、ウェス・モンゴメリーの後継として、先進的に弾きまくる純ジャズなギタリストだった。が、フュージョン・ジャズの大流行の波に乗り、もともと余芸だった「唄う」部分を前面に押し出し始めた。

そして「ソフト&メロウ」なAORの流行に乗って、「唄って弾きまくる」ギタリストとして、フュージョン・ジャズの代表的存在として売れに売れた。余芸とは言え、ベンソンのボーカルは一級品。弾きまくるギターは超一級品。その個性の組合せで奏でる「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズは強力な訴求力があった。

1980年代に入って、ベンソンは「唄って」の部分の割合を上げ始める。「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズから、ブラック・コンテンポラリー(ブラコン)へのシフトである。リーダー作を重ねる毎にボーカルの度合いを上げていった。それに比例して、ベンソンの人気は上がっていった。そして、このアルバムを聴いた時には「もはやベンソンはジャズには戻ってこないだろう」と思った。
 

2020

 
George Benson『20/20』(写真)。1985年1月のリリース。フュージョン・ジャズの大流行が終焉を迎え、スムース・ジャズへの変換と「純ジャズ復古の大号令」がかかった頃。ベンソンは、フュージョン・ジャズの斜陽に合わせて、ブラコンへのシフトを進めていった。そして、このアルバムでブラコンへのシフトを完遂する。

もはやこのアルバムはジャズでは無い。ジャズの要素を色濃く仕込んだブラコンである。それでも、ベンソンのボーカルはジャズ出身の正統なものであり、ジャズの耳にも違和感無く楽しめる内容になっているところが素敵である。特にボーカル・ナンバーがいすれも「白眉の出来」で、ギターについても、短いフレーズではあるが、ハッとするような切れ味の良いソロを弾いていて、なかなか楽しませてくれます。

ロバータ・フラック、パティ・オースティン、ジェイムス・テイラーら豪華なゲスト陣もなかなかの「聴きどころ」を提供してくれています。デジタル化の影響も最小限に留めていて録音もまずまず。この盤、ベンソンの代表盤の一枚に挙げてもよいくらい、充実した内容になっていると思います。
 
 
 
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2017年7月22日 (土曜日)

底抜けに明るいソウル・ジャズ

暑いですね〜。最近の夏はいつも「猛暑モード」。予報で「冷夏かも」という年もあったが、すべて「猛暑」。もう猛暑日と聞いてもビックリしなくなって久しい。ここ千葉県北西部地方では、特に今年は空梅雨状態で大した雨も無く(台風が来た時、結構降った位かなあ)いきなり夏空に突入したので、とにかく暑い。

暑い時は難しいジャズは絶対に回避。音楽を聴く心が「バテる」。聴いていて心がウキウキするようなジャズが良い。ノリの良いブルージーでリズミックなジャズが良い。そんなジャズをエアコンの効いた部屋の中で、好きな本でも読みながらゆったり過ごす。暑い夏でも「至福の時」である。

そんなこんなで選んだアルバムが、George Benson『It's Uptown』(写真左)。1966年の作品。ちなみにパーソネルは、George Benson (g, vo), Ronnie Cuber (bs), Bennie Green (tb), Lonnie Smith (org), Jimmy Lovelace (ds), Ray Lucas (ds, tracks 2, 3)。渋い、渋いパーソネルである。
 

Its_uptown

 
ロニー・キューバのバリサク、ベニー・グリーンのボーン、そしてなんと、ロニー・スミスのプログレッシブなオルガンがバックに控えている。明らかにファンキーでソウルフルな、聴いていて心がウキウキするようなジャズが聞こえてきそうなメンバー構成である。R&B基調のとびきり楽しいジャズが展開される。

当時のベンソンの紹介文に「The Most Exciting New Guitarist on the Jazz Scene Today(今日のジャズシーンで最もエキサイティングな新進ギタリスト)」と書かれていた様に、その期待に違わず、ベンソンはソウルフルにブルージーに、R&Bっぽいギターを弾きまくる。少しだけ披露するボーカルも良い感じ。後の「唄って弾きまくるジャズギタリスト」の片鱗を見せてくれる。

後のソフト&メロウなフュージョン・ギタリスト兼ボーカリストのベンソンとは雰囲気が異なるが、このあっけらかんとした、明るいキャラクターの方がベンソンの本質なんだろう。アルバム全編に渡って、底抜けに明るいソウルフルなジャズが聴ける。こういう、あっけらかんとしたジャズは、難しいこと考えずに楽しく聴ける。この猛暑の夏にピッタリである。
 
 
 
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2015年8月 7日 (金曜日)

ジョージ・ベンソンの純ジャズ

酷暑である。我が千葉県北西部地方の県庁所在地・千葉では最高気温38.5度、観測史上の最高気温を記録したとのこと。夕方、陽が落ちても熱風が吹き荒れている。

1970年代後半、ギターを弾いて唄えば、「フュージョン・ギタリストの余芸だろ」と揶揄され、1980年代に入って、唄いながらギターを弾けば、「ブラコンでしょ」と曲解され、ジョージ・ベンソンのボーカルは正当に評価されることが無かった様に思う。

とにかくジャズ評論家の方々が手厳しい。何をやっても「ギタリストの余芸」、何をやっても「ブラコンであってジャズじゃ無い」。ベンソンとしては、この訳の判らない人達を一度仕切ってしまわねば、と思っていたに違いない。

1989年、ベンソンは満を持して、このアルバムをリリースする。George Benson『Tenderly』(写真左)。ジョージ・ベンソンがジャズ・ギターを弾いて、ジャズ・ボーカルを披露する、ベンソンの戦略的なアルバムである。

アレンジは、西海岸ジャズの代表的アレンジャーのMarty Paichが担当する。ベースはRon Carter、ドラムスはLouis Hayes/Herlin Riley/Al Fosterの3人が分担、ピアノはMcCoy Tynerの、純ジャズ志向のリズム・セクション。もちろんギターはジョージ・ベンソン(George Benson)。

収録曲は以下の通り。1曲目から3曲目は、ジャズ者であれば直ぐに判る「超・スタンダード曲」。冒頭は「You Don't Know What Love Is」。この名曲バラードをボーカルとお得意のギター&スキャットでクールに唄い上げていく。2曲目の「Stella By Starlight」はスインギーなビートで爽やかなアレンジがユニーク。3曲目の「Stardust」は、もう黙って聴き耳を立てるしか無い熱唱。
 

George_benson_tenderly 

 
1.You Don't Know What Love Is
2.Stella By Starlight
3.Stardust
4.The Mambo Inn
5.Here There And Everywhere
6.This Is All I Ask
7.Tenderly
8.I Cpuld Write A Book

そして、5曲目のビートルズ・ナンバーが実に良い。もはやジャズ・スタンダード曲となった「Here There And Everywhere」。この曲ではベンソンのボーカルも良いが、やっぱり聴きものはギターでしょう。このギターを聴くと、やっぱりベンソンはギターがええなあ、と改めて感心してしまいます。

7曲目の「Tenderly」では、ベンソンのギターを堪能できます。何かと揶揄されるベンソンのギターですが、この曲でのプレイを聴いていると、これだけの表現力の幅の広さ、奥の深さのあるジャズ・ギターはそうそうあるものではありません。揶揄されるいわれのない素晴らしい才能です。

ラストの「I Cpuld Write A Book」は、もはやこれはコンテンポラリーな純ジャズ。ロンのベース、フォスターのドラム、マッコイのピアノ、そしてベンソンのギター。非常にオーソドックスな味わいに満ちた演奏。実にアーティスティック。

実に良い出来のコンテンポラリーな純ジャズ盤です。ベンソンのギター、ベンソンのボーカル、共に徹頭徹尾、ジャズしてます。プロデューサーのTommy Lipumaが良い仕事してます。リッチでゴージャスなサウンドを創出しながら、決して陳腐にならない、優れたプロデュースが、このベンソンのジャズ盤を惹き立てています。
 
 
 
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2015年8月 6日 (木曜日)

暑い夏、聴くジャズは「ギター」

暑い夏、酷暑の夏。今日も暑かった。今日も東京は最高気温36度。夕方6時過ぎには久し振りに震度4の地震のおまけ付きである。

暑い夏に聴くジャズは、決まって「ギター」が優先。テナーやペットは暑苦しくていけない。ギターは爽快感があって耳当たりが良い。ギタリストは選ばなければならないが、「夏にはギター」が、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の長年の習わしである。

そんな習わしの中で選んだアルバムが、George Benson『I Got a Woman and Some Blues』(写真左)。1969年に録音されたが、1984年までリリースされなかった音源である。ちなみにパーソネルは、リーダーでギター+ボーカルのジョージ・ベンソン以外、不詳。この記録の不備が、1984年までリリースされなかった理由の一つかもしれない。

収録された演奏は当時の未発表テイクを含む、6つのセッションからの落ち穂拾い集である。落ち穂拾い集というのは、アルバム全体の統一感が損なわれる傾向が強いが、このベンソンの落ち穂拾い集はそんな印象は全く無い。逆に、意外と統一感があって、一つのセッションからの正式盤ではないか、とも聴き取れる。

1969年の6つのセッションからの寄せ集めではあるが、もう既にベンソンは唄っている。それも実に堂々と唄っていて、ウエスの様に弾き、自らが唄うギタリストであるジョージ・ベンソンの個性が既にしっかりと確立されているのに感心する。とにかく、この落ち穂拾い集に収録されているベンソンの唄は実に味がある。
 

I_got_a_woman

 
唄の傍らで弾くギターも堂々としたものだ。イメージは「ウエス・モンゴメリー」。オクターブ奏法も堂に入っており、ぼ〜っと聴いていたら、ウエスのアルバムかと勘違いしそうなほど良く似ている。が、ベンソンの方が明らかにポップ。ウエスはそこはかと無く、伝統的な古き良き時代のジャズ・ギターの雰囲気を引き摺っているが、ベンソンはそこはスカッと抜けている。

イージーリスニング・ジャズと言われようが、ムード・ジャズと言われようが、これは俺のジャズ・ギターのスタイルなんだ、という、ベンソンの絶大なる自信めいた矜持が窺い知れる。とにかく、ギターも唄も堂々としていて爽快である。

そういう爽快なところが僕はお気に入りである。フュージョン・ジャズ系のギタリストの中では、このベンソンは真っ先に僕のお気に入りギタリストになった。最初のお気に入り盤は『In Concert-Carnegie Hall(邦題:サマータイム2001)』(2013年7月24日のブログ参照・左をクリック)だった。

この落ち穂拾い盤『I Got a Woman and Some Blues』も「なかなか」である。出会って5年ほどになるが、意外と気軽に聴くベンソン盤である。ベンソンのギターと唄はポップ。でも、底にはしっかりジャズがある。そこが良い。
 
 
 
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