2023年4月11日 (火曜日)

エルヴィンの未発表音源です

ここ2〜3年、ジャズの未発表音源について、対象となるジャズマンのバリエーションが広がって来た様に感じる。以前は、決まって「ビル・エヴァンス」か「ジョン・コルトレーン」。この2人のジャズ・ジャイアントの未発表音源は「絶対に売れる」らしい。よって、この2人の未発表音源ばかりが出回っていた様な気がする。

しかし、最近は、なかなか興味深いジャズマンについての未発表音源のリリースが出てきていて、どの未発表音源も内容が実に濃い。最近の未発表音源で興味深かったのは「エルヴィン・ジョーンズ」「デイブ・ブルーベック」「ローランド・カーク」「チック・コリア」。この5人の未発表音源は良かったなあ。

Elvin Jones『Revival / Live at Pookie's Pub』(写真左)。1967年12月、NYの「Pookie's Pub」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Joe Farrell (ts), Wilbur Little (b), Billy Greene (p)。伝説のドラマー、エルヴィン・ジョーンズがリーダーのカルテット編成。コルトレーン死去からわずか2週間後の公演である。

当時、新進気鋭のジョー・ファレルのテナーがフロント1管、曲者ベーシスト、ウィルバー・リトルと、Elvin Jones & Richard Davis『Heavy Sounds』(1967年録音)で共演したピアニスト、ビリー・グリーンとリーダーのエルヴィン・ジョーンズのリズム隊のカルテット編成。

たった4人のライヴ演奏なんだが、音がとても厚くて迫力がある。これは、エルヴィン・ジョーンズの重戦車の様な、重くてポリリズミックでスピード感溢れるドラミングの賜物である。
 

Elvin-jonesrevival-live-at-pookies-pub

 
ライヴ演奏の基本は「モード・ジャズ」。ハードバップの延長線上にある「限りなく自由度の高い」従来の伝統的なモダン・ジャズ演奏の範疇にしっかりと軸足を残したモーダルな演奏。先頭を切って、フロントのジョー・ファレルのテナーが疾走する。このファレルのモーダルなテナーが個性的かつ印象的。1970年代以降の活躍も納得である。

そんなモーダルなテナーをエルヴィンのドラミングが、がっちりとサポートし、頼もしく鼓舞する。そして、リトルのベースとグリーンのピアノが追従する。そう、このリズム・セクションのパフォーマンスが見事なのだ。コルトレーンが、まだ「限りなく自由度の高い」従来の伝統的なモダン・ジャズ演奏の範疇にしっかりと軸足を残したモーダルな演奏をやっていた頃のリズム&ビートを進化させた、エルヴィンならではのリズム&ビート。

エルヴィンがリーダーのライヴ盤なので、エルヴィンのドラム・ソロがふんだんに入っている。大体はライヴ盤でのドラム・ソロって冗長感抜群で、聴いている途中で飽きが来たりするのが常なのだが、エルヴィンのドラム・ソロは飽きない。

コルトレーン死去からわずか2週間後の公演だが、エルヴィン以下、カルテットのメンバーは皆、溌剌とエネルギッシュに演奏している。当時、死去前のコルトレーンは、フリー&スピリチュアルに思いっ切り傾倒していたので、このライヴのカルテットのメンバーとは既に距離があったのかもしれない。

1960年代後半のモード・ジャズのホットなライヴ音源が「今」になって体感できた。やはり、当時の「限りなく自由度の高い」従来の伝統的なモダン・ジャズ演奏の範疇にしっかりと軸足を残したモーダルな演奏はレベルが高かったんやなあ、と改めて再認識した次第。ほんと、良い未発表ライヴ音源でした。
 
 

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2023年2月25日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・259

「小粋なジャズ」の探求は続く。20世紀のネット時代以前とは違って、現代ではネットを通じて、ジャズ盤の情報が結構、潤沢に入手出来る。「小粋なジャズ」の探索も、ジャズ盤紹介本からネットにシフトして、「これは聴いたことが無いなあ」と感じて即聴きして、これは「小粋なジャズやねえ」と感心する盤に出会うことが多くなった。

『Jay Jay Johnson Quintet / Live at Café Bohemia, 1957』(写真)。1957年2月、NYのカフェ・ボヘミアでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、J.J. Johnson (tb), Bobby Jaspar (ts, fl), Tommy Flanagan (p), Wilbur Little (b), Elvin Jones (ds)。パーソネルを見れば、1957年の『Dial J.J.5』と同一メンバー。内容はこのパーソネルを見るだけで期待出来ることが判る。

1957年は、J.J.にとっては素晴らしい年で、『Dial J.J.5』(1957年1月29, 31日 & 3月14日録音)、『First Place』(1957年4月11,12 & 26日録音)、『Blue Trombone』(1957年4月26日録音)と立て続けに、後世に残る、優れた内容のリーダー作を録音している。そして、このカフェ・ボヘミアでのライヴは『Dial J.J.5』と同一パーソネルでのパフォーマンスになる。
 

Jay-jay-johnson-quintet-live-at-cafe-boh

 
この『Dial J.J.5』のパーソネルの中の、フラナガン・リトル・エルヴィンのピアノ・トリオは、北欧ツアー中にピアノ・トリオの名盤、Tommy Flanagan『Overseas』を録音している。このピアノ・トリオがリズム・セクションを務めているのだ。さぞかし、J.J.とジャスパーのフロント2管は吹きやすかっただろう、このカフェ・ボヘミアのライヴでも、J.J.とジャスパーは、ベストに近い吹きまくりで迫力がある。

そして、このバックを務めるフラナガン・リトル・エルヴィンのリズム・セクションが、小粋で充実したリズム&ビートを叩きだし、フロント2管を完璧にサポートする。フラガナンのバップな弾き回し、リトルの個性的なベースライン、エルヴィンの繊細でダイナミックなブラシワーク。この上質でダイナミックで職人的なリズム・セクションが、このライヴ盤の聴きものにひとつ。

内容充実のハードバップな演奏にグイグイ引き込まれる。1978年に限定LPとして発売以来、一度、小ロットでCDリイシューされただけの「幻の名盤」級のライヴ盤が、今では、サブスク・サイトでダウンロードして、『Dial J.J.5』のパーソネルでのライヴ・パフォーマンスを聴くことが出来る。これは実に有り難いことである。
 
 

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2022年10月26日 (水曜日)

80年代のモード・ジャズの創造

ジャズ・ドラマーがリーダーのアルバムを色々聴き直しているのだが、今回はエルヴィン・ジョーンズに戻る。

エルヴィンは1960年代、ジョン・コルトレーンの伝説のカルテットに在籍したこともあって、エルヴィン単独になっても「コルトレーン・ミュージックの継承者」とか、「コルトレーン・ジャズのスピリッツの伝承者」とか、特に我が国のジャズ評論家の方たちが、こぞって、そんな「レッテル」を張るので、エルヴィン独自のソロ・リーダー作はかなり誤解されながら、その評価が世の中のジャズ者の方々に伝わっていたのだと思う。

Elvin Jones-McCoy Tyner Quintet『Love And Peace』(写真左)。1982年4月13&14日、Rudy Van Gelder Studioでの録音。Trioレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), McCoy Tyner (p), Richard Davis (b), Pharoah Sanders (ts), Jean-Paul Bourelly (g)。ファラオ・サンダースのテナーとジャン=ポール・ブレリーのギターがフロントのクインテット編成。
 
リーダーのエルヴィンがドラム、マッコイ・タイナーがピアノ、サックスにファラオ・サンダース、そして、タイトルに「Love」が入っていて、これが「A Love Supreme(至上の愛)」を想起するらしく、この盤「すわ、コルトレーン・ミュージックの再現」と思われる傾向がとても強い。

当時のLP評やCDリイシュー時の評を見ると「コルトレーン・ジャズのスピリットを80年代によみがえらせた」とか「コルトレーンのスピリッツを踏襲した傑作」とか、安直にコルトレーンと結びつけて終わり、という、少しイージーな評価ばかりである。
 

Elvin-jonesmccoy-tyner-quintetlove-and-p

 
しかし、この盤をよくよく聴いてみると、コルトレーン・ミュージックとの共通点は「モード・ジャズである」ということだけだと思う。フレーズの組立てとか、ユニゾン&ハーモニーとか、リズム&ビートとか、コルトレーンの時代とは異なる、より深化したモード・ジャズが展開されていて、コルトレーン・ジャズを踏襲しているところは殆ど見当たらない。

ウィントン・マルサリス一派が標榜した様な「1960年代のモード・ジャズの難度を飛躍的に上げて再現する」様なアプローチでは無く、あくまで、1960〜70年代のモード・ジャズをより深化させた、1980年代のモード・ジャズを具現化するアプローチを志向していると僕は思う。

サンダースのサックスだって、音がストレートなところが共通点だけで、コルトレーンとは似ても似つかぬブロウに終始していると思う。リーダーのエルヴィンだって、ピアノのタイナーだって、ベースのデイヴィスだって、1960年代のコルトレーンの伝説カルテットのリズム・セクションとは異なる、より深化した、モーダルなリズム&ビートを供給している。

この盤、日本のレーベルである「トリオ・レコード」の制作なのが余計に誤解を生むのだろうが、トリオ・レコードの名誉の為に言うと、この盤、決して、コルトレーン・ミュージックの焼き直しでも無ければ、コルトレーン・ジャズの再現でも無い。

トリオ・レコードは、エルヴィン以下のクインテットのメンバーに、1980年代のモード・ジャズの創造を要求している様に感じる。そして、クインテットはそれにしっかり応えている。ちゃんと聴けば、この盤、1980年代のモード・ジャズの傑作の1枚だと思う。
 
 

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2022年9月20日 (火曜日)

意味深なエルヴィンとギャリソン

ポリリズミックなレジェンド・ドラマー、エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)のリーダー作を聴き直しているのだが、エルヴィンのリーダー作の基本コンセプトは「モード・ジャズ」。

それも、インパルス・レーベルからのリリースの『Coltrane』辺りの、自由度の高い、シーツ・オブ・サウンドと歌心のバランスが取れた「モード・ジャズ」。エルヴィンは「この時代のコルトレーン・ミュージック」が大好きだったんだろうなあ、とつくづく思ったりする。

Elvin Jones & Jimmy Garrison『Illumination!』(写真)。1963年8月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Jimmy Garrison (b), McCoy Tyner (p), Sonny Simmons (as, English Horn), Charles Davis (bs), William Prince Lasha (cl, fl)。

改めて、この盤を聴き直してみた。エルヴィン・ジョーンズと、ベースのジミー・ギャリソンの双頭リーダー盤。ピアノのマッコイ・タイナーが入っているので、これは、当時のコルトレーンの伝説のカルテットから、親分のコルトレーンを抜いたリズム・セクションになる。そして、フロントは、アルト・サックス or ホルン、バリトン・サックス、そして、クラリネット orフルートのフロント3管。全体でセクステット編成。

パーソネルを見渡して面白いのは、「コルトレーンの伝説のカルテット」のリズム・セクションがそのまま、この盤にスライドしているからか、律儀に親分コルトレーンの担当楽器であるテナー&ソプラノ・サックスをしっかり抜いて、フロント3管を形成している。

演奏の基本は「モード・ジャズ」。それも、親分コルトレーンの得意技「シーツ・オブ・サウンド」抜きの、モード・ジャズど真ん中の時代の「コルトレーン・サウンド」。
 

Elvin-jones-jimmy-garrisonillumination

 
限りなく高い自由度を追求したモーダルな演奏と「音楽」としての歌心を踏まえたメロディアスなフレーズを前提とした「コルトレーン・サウンド」で、ほどよくアレンジされた「ユニゾン&ハーモニーが」聴いて楽しい雰囲気を加えている。

この6重奏団の演奏、コルトレーン・サウンドを踏襲しているのだが、しっかりと親分の担当楽器と得意技をしっかり抜いている。コルトレーンの伝説のカルテットのリズム・セクションを担当している、

エルヴィン、ギャリソン、タイナーが、コルトレーンに「親分、一緒にどうですか、こんなモード・ジャズは。俺たちは、親分と一緒にやる、こんなモード・ジャズが好きなんです」と誘っている様な雰囲気を感じるのは僕だけだろうか。

この盤の録音の後(リリースは1964年)、コルトレーンは、1963年11月に『Impressions』をリリースしていて、その内容は、グループサウンドを横に置いて、唯我独尊、フリー一歩手前の自由度の高いモーダルなフレーズを、高速シーツ・オブ・サウンドで吹きまくるという内容をライヴ録音で披露している。

コルトレーンの伝説のカルテットのリズム・セクションを担当していた、エルヴィン、ギャリソン、タイナーは戸惑ったのでは無いか。この『Impressions』の演奏内容を振り返ると、リズム・セクションは、リズム&ビートだけ正確に供給してくれるならば、誰だって良い、という感じなのだ。実はそうではないのだが、この時期のコルトレーンは、自らの志向を追求することに集中した「唯我独尊」的なパフォーマンスに偏っていた。

グループ・メンバーで、グループサウンドを楽しみながら演奏する、という、バンド・セッションの基本を、このエルヴィン&ギャリソンの『Illumination!』ではしっかりと踏襲している。きっと、ここに戻りたかったんだろうなあ、と僕はこの盤を聴く度に思うのだ。
 
 

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2022年9月12日 (月曜日)

当時の流行を捉えたエルヴィン盤

ドラマーがリーダーのアルバムって、とても融通が利くと思っている。ジャズには様々なスタイルの奏法や流行(トレンド)があるが、リーダーのドラマーが「うん」と言えば、様々なスタイルの奏法や流行に則った演奏が可能になる。

何故なら、ジャズにおける様々なスタイルや流行は「フロント楽器ドリブン」が殆どで、ドラマーにとっては、その奏法や流行に従って、如何に効果的なリズム&ビートを供給するか、が重要な役割になるからだ。

Elvin Jones『Midnight Walk』(写真左)。March 23 & 24, 1966年3月23日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Thad Jones (tp), Hank Mobley (ts), Dollar Brand (p), Stephen James (el-p), Don Moore (b), George Abend (perc)。ドラムのエルヴィン・ジョーンズがリーダーの、フロント2管のクインテット編成が基本。曲によって、エレピとパーカッションがサポートに入っている。

昨日ご紹介した『And Then Again』は、ジョーンズ3兄弟、トロンボーンの大御所、J.J.ジョンソンや、モダン・テナーのベテラン、フランク・ウエスがいたりで、1950年代後半に立ち戻ったハードバップな演奏が詰まっていた。

が、その次作のこの『Midnight Walk』では、内容はガラッと変わって、当時のスタンダードな演奏スタイルであったモーダルなジャズと、アフリカン・ネイティヴなワールド・ミュージックの響きを宿したアーシーでファンクなジャズとが混在した、当時の流行をタイムリーに捉えた内容に変化している。これが、いわゆる「ドラマーがリーダーのアルバム」の役得ってもんだろう。
 

Elvin-jonesmidnight-walk

 
モーダルなジャズについては、フロントの2管、モブレーとサドが一手に引き受けている。特にモブレーはモーダルなフレーズを吹きまくっていて、これがモブレーの個性を色濃く反映したモーダルなフレーズで、それまでに無い響きがユニーク。サドのトランペットはそんなモブレーを、しっかりとフロント管のパートナーとして、がっちりサポートしている。

アフリカン・ネイティヴなワールド・ミュージックの響きを宿したアーシーでファンクなジャズについては、これはもう、3曲目の「 Tintiyana」のピアノを聴けば一発で判るんですが、ダラー・ブランド(現・アブドゥーラ・イブラヒム)のピアノが全体の雰囲気をリードする。「Lycra Too?」でのステファン・ジェームスのエレピが、後の「ジャズ・ファンク」の雰囲気を先取りしていて面白い。

こうやって改めて聴いてみて、その内容は意外と面白い。モブレーのモーダルなフレーズも面白いし、ダラー・ブランドの「アフリカン・ネイティヴなワールド・ミュージックの響きを宿したアーシーでファンクな」ピアノのフレーズも面白い。

当然、この当時の流行をタイムリーに捉えた、新しい響きのジャズをしっかり掌握し、しっかりとコントロールしているのは、エルヴィンのドラムである。要所要所でエルヴィンのポリリズミックなドラミングが炸裂する。モーダルなジャズとアーシーなジャズの両方で、エリヴンのドラミングが見事に映える。

エルヴィンのリーダー作として、あまり人気のある盤では無いのだが、聞き直してみて、意外に楽しめた。ジャケがイマイチなので、かなり損をしているが、意外と好盤である。
 
 

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2022年9月11日 (日曜日)

エルヴィンのハードバップ盤

Elvin Jones(エルヴィン・ジョーンズ)をリーダー作を聴き直し始めた。エルヴィン・ジョーンズと言えば、コルトレーンの伝説のカルテットのドラマーとして有名。高速テクニックの過激なモード・ジャズにおける、火を噴くようなポリリズムックなドラミングが彼の個性とされる傾向にあるが、他のリーダー作を聴けば判るが、エルヴィンのドラミングの本質はリーダー作にある。

粘りのあるシャープなドラミング。そして、何本腕があるんだ、この人のタイム感覚はどうなってるんだ、手と足はどうやってバラバラに動いているんだ、と思うほどの圧倒的なポリリズム。そして、硬質なスイング感溢れる、ダイナミックで大らかなドラミング。エルヴィンはなにも、モード・ジャズ専門のドラマーでは無い。ドラムを担当するセッション毎に、リーダーの意図を汲んで、その意図に合わせつつ、自らの個性を反映したドラムを叩き分ける。

Elvin Jones『And Then Again』(写真左)。1965年2月16日と3月18日、2つのセッションでの録音。2つのセッションのパーソネルは、まず1つが、Elvin Jones (ds), Thad Jones (cor), Hunt Peters (tb), Charles Davis (bs), Hank Jones (p), Art Davis (b)。もう1つが、Elvin Jones (ds), J. J. Johnson (tb), Frank Wess (ts,fl), Charles Davis (bs), Don Friedman (p), Paul Chambers (b)。
 

Elvin-jonesand-then-again

 
ドラムのエルヴィン・ジョーンズ自らがリーダー。メルバ・リストンの編曲・指揮による、3管フロントのセクステット編成。2セットのパーソネルを見渡すと、この盤はハードバップ志向の純ジャズである。ジョーンズ3兄弟が揃い踏みしていたり、トロンボーンの大御所、J.J.ジョンソンや、モダン・テナーのベテラン、フランク・ウエスがいたり、1965年の録音なんだが、1950年代のハードバップ全盛期に立ち戻った様な演奏が繰り広げられている。

たた、アレンジについては、メルバ・リストンが担当していて、1965年という時代に合わせた、家庭で聴く音楽として鑑賞に十分耐える、判り易いアレンジと、テクニック優秀で判り易いハードバップな演奏が詰まっている。ややもすれば、イージーリスニング・ジャズ風になりそうなところを、エルヴィンのドラミングが要所要所をビシッと締め、当時として、ベテランの域に達していた重鎮ジャズマン、J.J.ジョンソンやフランク・ウエス、そして、2人の兄貴、サドとハンクが硬派でハードバップなフレーズをバシッとキメている。

とても整った内容のハードバップ演奏。録音当時として新しい何かがある訳では無いが、1965年の時点で、新しい響きのハードバップなフレーズがそこかしこに散りばめられているのには感心する。録音メンバーそれぞれの「矜持」を感じる、素敵なハードバップである。しかし、エルヴィンのドラミングの「ど迫力」には、いつも「仰け反って」しまう(笑)。
 
 

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2022年9月10日 (土曜日)

エルヴィンの「ショーケース」盤

この人のドラミングは個性的。1曲聴き込めば直ぐに判るほど強い個性。粘りのあるシャープなドラミング。そして、何本腕があるんだ、この人のタイム感覚はどうなってるんだ、と思うほどの圧倒的なポリリズム。フロント楽器をポリリズムで煽るところなんぞは圧巻である。その人とは、Elvin Jones(エルヴィン・ジョーンズ)。

Elvin Jones『Puttin' It Together』(写真)。1968年4月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Joe Farrell (ts, ss, fl, piccolo), Jimmy Garrison (b)。ジョー・ファレルのサックスがフロント1管のピアノレス・トリオ。リーダーのエルヴィンのドラムのパートナーとして、同じコルトレーン・カルテットに所属していた、ギャリソンがベースを担当している。

この盤、エルヴィン・ジョーンズのブルーノート・レーベルでの初リーダー作。プロデューサーは、デューク・ピアソンに変わっている。エルヴィンは、自らのリーダー作の場合、ピアノレスが多い様な気がする。恐らく、ポリリズミックなドラミングでリズム&ビートをリードするエルヴィンにとって、リズム楽器としてのピアノは必要が無いんだろう。旋律楽器としてのピアノは、管楽器があるから必要が無い。
 

Elvin-jonesputtin-it-together
 

この盤は、エルヴィン・ジョーンズの「ドラミングのショーケース」の様な盤。エルヴィンのドラムの個性の全てがこの盤に詰まっている。力感溢れるポリリズミックなドラミングはエルヴィンならでは。しかし、しばらく聴いていると、コルトレーン・カルテットでの叩きっぷりと雰囲気が違うことに気がつく。この盤でのドラミングがエルヴィンのオリジナルなドラミングで、コルトレーン・カルテットでは、コルトレーンの好みのドラミングに合わせていることが良く判る。

これがレジェンド級のジャズ・ドラマーの卓越したテクニックである。エルヴィンのドラミングは、ファンクネスを底に忍ばせた、ジャズ・ファンクなドラミング。加えて、途方も無いポリリズムなドラミングで、硬軟自在、緩急自在、変幻自在な、モーダルなフレーズにパーフェクトに対応している。あらゆるモーダルなフレーズに、それぞれに適したリズム&ビートを供給している。そんなポリリズミックなドラミングに淀み、迷いは一切無い。

充実のブルノート・レーベルでの初リーダー盤。エルヴィンのリズム&ビートに合わせて、ギャリソンの骨太ベースが、強靱なベースラインをフロントに供給する。そんなリズム隊をバックにして、フロントのファレルはとても気持ちよさそうに、サックスをフルートを吹きまくる。自由度の高い、ハイテクニックなモード・ジャズだが、演奏全体が流麗で明るい。当時のジャズの閉塞感を全く感じさせない快作である。
 
 

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2022年7月20日 (水曜日)

エルヴィンのJCへのメッセージ

エルヴィン・ジョーンズのドラミングがお気に入りである。もともとは、ジャズを聴き始めた頃、ジョン・コールトレーンの「伝説のクインテット」の諸作を聴く中で、ドラムのパフォーマンスがとても気に入って、そのドラムを叩いているのが「エルヴィン・ジョーンズ」だった。それ以降、40年以上が経過した今でも、エルヴィン・ジョーンズのドラミングはお気に入りである。

Elvin Jones『Dear John C.』(写真左)。1965年2月23 & 25日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds). Charlie Mariano (as), Roland Hanna (p, 1, 3, 8), Hank Jones (p, 4, 5, 7), Richard Davis (b)。リーダーのドラマー、エルヴィン・ジョーンズが、まだコルトレーンの下にいた頃、コルトレーンがフリー・ジャズに染まりだした頃、ちょうど、大名盤『A Love Supreme(至上の愛)』の後の録音になる。

このエルヴィンのリーダー作、意味深なタイトルが付いている。まだ、コルトレーンの下にいたのにも関わらず、「親愛なるジョン・コルトレーン」。何だか他人行儀なタイトルである。この盤の内容がコルトレーンに対する、何らかのメッセージ、若しくは示唆、であることを感じさせるタイトルである。ウィットに富んでいる、ととるか、アイロニーに富んでいる、ととるか。
 

Elvin-jonesdear-john-c

 
この盤を聴けば、この盤の内容は、モーダルでシーツ・オブ・サウンドを駆使した、当時、限りなく先進的で尖ったハードバップなジャズがてんこ盛り。コルトレーンのリーダー作で言うと、Atlanticレーベルからの『Coltrane Jazz』や、Impulse!レーベルからの『Coltrane』辺りの音の志向をベースとしている様で、そこから、さらにモーダルな展開の充実度を上げ、流麗でスピード感のある演奏にステップアップさせている。

収録された演奏自体は優れたもので、特に、チャーリー・マリアーノのアルト・サックスが好調だ。ピアノのハナもハンクもモーダルな展開について、しっかりと対応していて立派。特に、ハンクのモーダルなピアノは堂に入っていて、70年代の「グレイト・ジャズ・トリオ」での圧倒的モーダルなパフォーマンスを先取りしている。デイヴィスのベースも申し分無く、勿論、リーダーのエルヴィンのドラミングは、ポリリズミックで、変幻自在、緩急自在、硬軟自在で絶好調。

恐らく、エルヴィンは、この辺りの音の志向のジャズ、モーダルでシーツ・オブ・サウンドを駆使した、当時、限りなく先進的で尖ったハードバップなジャズを、コルトレーンとやり続けたかったのでは無いか、と僕は感じている。エルヴィンは、フリーに傾くコルトレーンに、心情的に「ついていけなくなりつつあった」のでは無いか。それでも、コルトレーンはエルヴィンが大好きなジャズマン。「俺はコルトレーンと、本当はこんな感じのジャズがやりたいんだよ」と言う様なメッセージが、この盤に込められている感じがしてならない。
 
 

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2020年1月 7日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・123

この1〜2年で、音楽のストリーミング・サイトについてはコンテンツが急速に充実してきた。ストリーミング・サイトをあてもなく徘徊していると、「こんなアルバム、アップされてるんや」とビックリすることがある。CDでは廃盤になって久しい、CDとしては、いわゆる「入手不能」なジャズ盤の音源がストリーミング・サイトにアップされていたりするのだ。

Elvin Jones Introduces Takehisa Tanaka『When I Was at Aso-Mountain』(写真)。1990年12月 10&11日、NYでの録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Sonny Fortune (fl, ts), Takehisa Tanaka (p), Cecil McBee (b)。当時メインストリーム・ジャズ系の精鋭部隊。そこに、僕には見慣れない名前があった。

ピアノ担当の「Takehisa Tanaka」=「田中武久」である。「田中武久」とは誰か。僕はつい先日まで知らなかった。面目無い。「田中武久」って、関西を代表するピアニストでジャズクラブ、セント・ジェームスのオーナーピアニストとのこと。知らんかった。 1934年(昭和9年)3月生まれ。惜しくも、2014年の12月28日に逝去されている(享年80歳)。
 
 
When-i-was-at-aso-mountain
 
 
このカルテットの演奏については、ブラインドフォールド・テストすると全く誰だか判らない。辛うじて、ドラマーについては、自由度の高い、明らかにポリリズミックなので「これって、エルヴィン?」とうっすら判るが、ベースは骨太で歯切れの良い躍動的なもの。しかも、アドリブ展開がお洒落にモーダルだ。暫く聴き耳を立て、アルバムのパーソネルを確認すると「セシル・マクビー」。納得である。

ドラミングは明らかにエルヴィン。特徴的なポリリズム、ダイナミズム溢れるシンバル・ワーク。印象的かつ劇的なタムタムの連打。エルヴィンのドラム、マクビーのベースに支えられ、鼓舞されて、端正で印象的な「ノリ」のピアニストが弾きまくる。誰有ろう「田中武久」である。一聴して直ぐに誰だか判る様な「強烈な個性の持ち主」ではないが、堅実かつ端正なミッドテンポのピアノが身上。

そんな玄人好みのリズム・セクションをバックに、ソニー・フォーチュンが素敵なテナーを聴かせてくれる。この盤、ストレート・アヘッドなモードジャズ。田中のピアノも独特な日本人ならではの音で健闘している。LP時代からEnjaレーベルの盤は有名なもの以外は入手し難かったが、最近のストリーミング・サイトでは結構な数がアップされている。良い時代になりました。
 
 
 
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2019年4月16日 (火曜日)

エルヴィンの理想の純ジャズ

このジャケットには参った。こういう変態ジャケットがところどころ存在するところも、BN-LAシリーズがイマイチ信頼されない所以なんだろう。ただでさえ、BN-LAシリーズはブルーノート・レーベルを電化〜フュージョン化して、純ジャズの世界をポップスに身売りしたと軽視されがちなシリーズなのに、だ。しかし、この首無しイラストに何か意味があったのかなあ(笑)。
 
Elvin Jones『Mr. Jones』(写真左)。BN-LA110-F。1972年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Dave Liebman (ts, ss, fl), Steve Grossman (ts, ss), Jan Hammer (p), Gene Perla (b), Carlos "Patato" Valdes (congas), Frank Ippolito (perc), Pepper Adams (bs), Thad Jones (flh), Albert Duffy (timpani)。当時、ポスト・コルトレーンと目された、リーブマンとグロスマンがサックスを担当している。
 
パーソネルを見渡すと、リーブマンとグロスマンというポスト・コルトレーンのサックス新鋭二人とベテラン・バリサクのペッパー・アダムス、そして、サド・ジョーンズのフリューゲルホーンの4管フロントが超弩級の布陣である。ピアノは後の「捻れシンセの使い手」ヤン・ハマーで、テクニカルでモーダルな演奏が意外と目立つ。ドラムは当然、エルヴィン・ジョーンズ。その脇をコンガ、パーカッション、ティンパニが固める。
 
 
Mr-jones
 
 
この「首無しジャケット」で強い印象を与えてくれる盤だが、これ、ポリリズムの達人ドラマー、エルヴィン・ジョーンズのリーダー作である。中の演奏は徹頭徹尾、モーダルなジャズ。リーブマンとグロスマンがコルトレーン・ライクなテナーを聴かせるが、コルトレーンよりもスッキリ&ライトである。このテナー2管にアダムスのバリサクが絡んで「重厚感抜群」。コルトレーン・ライクであるが決して、アブストラクトに、フリーにならない。
 
この盤の演奏を聴いていると、エルヴィン・ジョーンズが気合い十分ながら、実に気分良く叩いている様に聴こえる。この盤に詰まっているモーダルなジャズは、コルトレーンがフリーに走る直前の、限りなく自由ではあるが統制の取れたモード・ジャズを彷彿とさせる。エルヴィンはあの頃のモード・ジャズが理想のジャズだったのかもしれないなあ、とこの盤を聴く度に思うのだ。
 
1972年と言えば、クロスオーバー・ジャズやジャズ・ロックが流行っていた頃。そんな時期に、こんなに硬派で素敵なモード・ジャズを録音していたなんて、意外とBN-LAシリーズは隅に置けない。録音も良く、モード・ジャズとして一流の内容。確実に斜陽の時代だったが、さすがはブルーノート・レーベルである。
 
 
 
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