2023年8月 7日 (月曜日)

ハンク・モブレーの『転換点』

ブルーノートの4100番台は、カタログ順に聴き進めていると意外と面白い。ジャズの多様化の時代、1950年代のハードバップが成熟し、そのハードバップな演奏に留まる者。逆に、ハードバップから新しい演奏トレンド、モード・ジャズやフリー・ジャズに進化する者、

はたまた、ジャズの大衆化に沿って、大衆のジャズに対するニーズに応えるべく、ファンキー&ソウル・ジャズにステップアップする者、それぞれ、苦心して、ジャズに対する新しいニーズに応えようとしているのが、実に見事に記録されている。

Hank Mobley『The Turnaround!』(写真左)。1963年3月7日(#2-3)、1965年2月4日(#1, 4-6)の2セッションからの収録。ブルーノートの4186番。

ちなみにパーソネルは以下の通り。1963年3月7日の録音は、Hank Mobley (ts) Donald Byrd (tp), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Philly Joe Jones (ds)。1965年2月4日の録音は、Hank Mobley (ts), Freddie Hubbard (tp), Barry Harris (p), Paul Chambers (b), Billy Higgins (ds)。

1965年7月、LPでの初リリース時は全6曲。収録曲は以下の通り。

1. The Turnaround
2, East of the Village
3. The Good Life (Sacha Distel, Jack Reardon)
4. Straight Ahead
5. My Sin
6. Pat 'n' Chat
 

Hank-mobleythe-turnaround

 
ちなみにCDリイシュー時、1989年のCDリイシューはLP時の収録曲のシークエンスに対応しておらず、1963年のセッションが省略され、1965年2月5日のセッションが収録された。これは酷い。 
 
我が国では、2014年11月に限定SHM-CDでリリース。オリジナルのLPシーケンスに加え、『ストレート・ノー・フィルター』のCD版に収録されていた1963年のセッションの2曲、および1965年のセッションの残りのトラックで構成されている。この記事では、1965年7月、LPでの初リリース時の6曲シークエンスを前提に話を進める。

2曲目「East of the Village」と3曲目「The Good Life」が、クールなハードバップ志向。1963年3月7日の録音で、ドラムがフィリージョー。ピアノにハンコックがいるが、ドラムが「こってこてハードバップ」のフィリージョーだとモードに走る訳にはいかない。ただ、録音年が1963年だとすると、内容的には「手垢が付いた」と感じるところは否めない。

1曲目「The Turnaround」と、6曲目「Pat 'n' Chat」がジャズロック志向。アドリブにモードなフレーズが見え隠れ。4曲目「Straight Ahead」と5曲目「My Sin」がモード・ジャズ志向。モブレー固有のモーダルなテナーが聴ける。ただし、ちょっとやりにくそう。逆にフロントの相棒、ハバードは喜々としてモダールなフレーズを吹きまくっている。

タイトルの「The Turnaround」は「転換点」を意味するのか。とあれば、この盤は、モブレーの「転換点」を記録した番と解釈出来る。1963年3月7日のクールなハードバップ志向、1965年2月4日の録音のジャズロック&モード志向。この2つの録音の間にある「転換点」をこの盤で表現しているのか。

そうであれば、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンのアルバム企画力には脱帽。確かに、明らかに、この盤では、2つの「顔」のモブレーが確認出来る。
 
 

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2023年6月12日 (月曜日)

モブレーのアウトテイク集です

CDの時代になって、アルバム1枚の収録時間が飛躍的に増えた。LPはAB両面で大体45分、CDについては当初74分。実に30分程度、収録時間が増えたことになる。ここでLP時代のアルバムをCDでリイシューする時、この収録時間の余裕が問題になる。

LP時代のアルバムはそれだけで完結しているのだから、そのままCD化すれば良いものを、この収録時間の余裕が出来た分、LP時代に収録されなかった音源、未発表音源や既収録曲のテイク違いをその余裕部分に追加収録し始めたのだ。いわゆる「ボーナス・トラック」。略して「ボートラ」である。

レーベルのプロデューサーとアルバムのリーダーのジャズマンは、LP時代のAB両面の収録曲で、1枚のアルバムとして納得してリリースしていたのに、当時、収録するつもりのなかった、いわゆる「ボツ音源」を後世のレコード会社が追加収録してアルバム・リイシューしたのだ。

これは意外と困る代物で、ジャズ盤を鑑賞する場合、基本的にこのボートラが邪魔になることが殆ど。僕はジャズ盤鑑賞の時は、最初はこのボートラを一切聴かない。省略して、本来のLP時代のアルバムの収録曲のみを鑑賞対象としている。それで無いと、アルバムのリリース当時と比べて、アルバムの印象が変わるので、正しいアルバム評がまとめられない。

Hank Mobley『Straight No Filter』(写真左)。ハンク・モブレーが、1963~65年に録音した音源のアウトテイクを、1985年にLPにて編集してリリースした盤。1985年のLPリリース時の収録曲は6曲。

Tracks 1–3は、1966年6月17日の録音。セッションそのものがボツになった音源で初アルバム化。「Straight No Filter」「Chain Reaction」「Soft Impressions」の3曲。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Lee Morgan (tp), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。

まずは、この3曲の内容が素晴らしい。モブレー&モーガンの2管フロントのクインテット編成で、迫力ある疾走感タップリのモード・ジャズが展開される。勢いたっぷり濃密な迫力のセッションを楽しめる。勢いのあるリズム・セクションが要で、特に、タイナーのピアノが格好良い。

Tracks 4–5は、1965年2月4日の録音。『The Turnaround!』セッションのアウトテイクで「Third Time Around」「Hank's Waltz」の2曲。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Freddie Hubbard (tp), Barry Harris (p), Paul Chambers (b), Billy Higgins (ds)。
 

Hank-mobleystraight-no-filter

 
Tracks 1–3から1年半前の録音になる。リズム・セクションがハードバップ志向のメンバーながら、意外とモード・ジャズしているのが面白い。頑張ってるなあ、という印象。内容的には悪く無い。Tracks 1–3と比較すると、やはりモード濃度は薄く、演奏の雰囲気はちょっと軽め。録音当時、ボツになったのも何となく納得出来る。それでも、Tracks 1–3との違和感はほとんど無い。

そして、Tracks 6は、1963年10月2日の録音。『No Room For Squares』セッションのアウトテイクで「The Feelin's Good」の1曲。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Lee Morgan (tp), Andrew Hill (p), John Ore (b), Philly Joe Jones (ds)。

Tracks 1–3から2年半前ほど前の録音になる。Tracks 1–3と同じ、モブレー&モーガンの2管フロントのクインテット編成。リズム・セクションに、ヒルのピアノが入っていて、それなりにモーダルな演奏としてまとまっている。が、演奏全体で雑なところが見え隠れして、録音当時、ボツになったのも頷ける。それでも、Tracks 1–3の雰囲気に繋がる、モブレー印のモーダルな演奏として成立していて、これはこれでアリかな。

ということで、このアウトテイク集は、もともとは、セッションごとボツになった1966年6月17日の録音を世に出したかったのではないかなあ、と感じている。それほど、1966年6月17日の録音は、モブレー印のモーダルな演奏として、かなり充実している。確かにボツにしたままでは勿体ない音源である。そういう意味で、LP時代の『Straight No Filter』は、収録曲6曲で意味のあるアウトテイク集だったと思う。

が、CDリイシュー時に、なんとさらに3曲が追加され、特にラス前からの2曲は、1963年3月7日の録音。『No Room For Squares』セッションのアウトテイク集で、フロント管の相棒がドナルド・バードになっていて、フロント2管のモーダルなフレーズが未だハードバップ風。LP時代の収録6曲とはちょっと演奏志向、雰囲気が異なっていて、ボートラとしての追加に意味が無いような気がする。

LP時代のアウトテイク集に、CDリイシュー時、さらにボートラを追加するのはちょっと乱暴な感じがする。さすがにCDリイシューの全9曲は、最後の3曲辺りでちょっとマンネリ気味で飽きてくる。そういう意味で、LP時代のアウトテイク集の全6曲は、しっかり吟味されて意味があるものだったんやなあ、と改めて思います。ボートラの功罪。ボートラはジャズ研究家、評論家向けに、別編集で供給した方が良いのでは、と最近、思います。
 
 

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2023年5月22日 (月曜日)

モブレー根明なモード・ジャズ

ハンク・モブレーのテナーも、その演奏志向のブレは無かった。もともと、こってこてのハードバップ。そして、モブレーのテナーの個性を活かしたモーダルなジャズへの変化。基本はモダン・ジャズの王道、ど真ん中を行くものだった。少なくとも、ポップなジャズ志向、ファンキー・ジャズやソウル・ジャズ、ジャズ・ロックに転身することは無かった。

Hank Mobley『A Caddy for Daddy』(写真左)。1965年12月18日の録音。ブルーノートの4230番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Curtis Fuller (tb), Lee Morgan (tp), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。

フロント3管は、ハードバップ初期から第一線で活躍してきた、ブルーノート・ファミリーなジャズマン3人、リーダーのモブレー、トランペットのモーガン、トロンボーンのフラー。バックのリズム・セクションは、新進気鋭のモード・ジャズが得意な若手トリオ。

冒頭のタイトル曲「A Caddy for Daddy」を聴くと、あれれ、と思う。リー・モーガンがやるようなジャズ・ロックな演奏。おお、遂にモブレーもポップなジャズ志向に舵を切ったか、と思うのだが、2曲目の「The Morning After」以降を聴くと、やっぱり、ポジティヴで根明なモード・ジャズで貫いている。

どうも冒頭のジャズ・ロックな「A Caddy for Daddy」は、ジュークボックスやラジオ用のシングル・カット対象の演奏だったのだろう。やっぱり、少しは売れないとブルーノートの屋台骨を支えられないからなあ。モブレーには似合わない様に感じるジャズ・ロックな演奏だが、意外と喜々と演奏しているモブレーが微笑ましい。やっぱり、モーガンとの相性が抜群なんだろうな。
 

Hank-mobleya-caddy-for-daddy

 
2曲目以降のポジティヴで根明なモード・ジャズは見事な演奏。というか、まず、曲が良い。モーダルなフレーズ展開を前提としたモブレーの書く曲がどれも良好。3曲目だけ、ウェイン・ショーター作の「Venus Di Mildew」なんだが、この盤の2曲目以降のモーダルな演奏についてはしっかりとした統一感があって、違和感が無い。逆に、1曲目のジャズ・ロックな演奏に違和感を感じる位だ。

プロデュースは、この盤ではまだ、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが担当しているので、モダン・ジャズとして、硬派な内容はしっかりと維持されている。

モブレー&モーガンはバリバリとモーダルなフレーズを連発し迫力満点。意外だったのは、カーティス・フラーがモーダルなジャズに適応していること。フラーがモーダルなフレーズを吹きまくるなんて思いもしなかった。この盤ではトロンボーンの特性を活かした、音の拡がりと浮遊感を宿したモーダルなフレーズを連発している。

しかし、このジャケットはなあ。来たるべき、サイケデリックで、ラヴ&ピースな雰囲気濃厚のジャケ。タイポグラフィーは辛うじて往年のアーティスティック度を維持しているが、ここまでジャケット・デザインが俗っぽくなるとはなあ。

ジャケはとほほ、だが内容は充実。ブルーノート・レーベルにとって、モダン・ジャズにとって、苦しい時代に突入した時代の、それでいて、アーティスティックな「ブルーノート・ジャズ」としての矜持を維持した、傾聴に値する内容だと思う。
 
 

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2023年5月16日 (火曜日)

硬派でモーダルなモブレー盤

ハンク・モブレーは、自身のリーダー作については、ほとんどが、ブルーノート・レーベルからリリースされている、いわゆる「ブルーノート専属」のテナー・マン。モブレーのパフォーマンの個性は、ブルーノートからリリースされたリーダー作を追うことで、しっかりと理解出来る。

Hank Mobley『No Room for Squares』(写真左)。1963年3月7日と1963年10月2日、2つの異なるセッションのカップリング。ブルーノートの4149番。アルバム・タイトルは「四角四面なヤツお断り」という意味。

ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Philly Joe Jones (ds), は2つのセッション共通。トランペットとピアノとベースが交代していて、1963年3月7日(#3 & 6)は、Donald Byrd (tp), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b)、1963年10月2日(# 1, 2, 4, 5, 7 & 8)は、Lee Morgan (tp), Andrew Hill (p), John Ore (b) が担当している。

録音年は1963年。ジャズはハードバップが成熟し、そのハードバップをベースとした「多様化」の時代に突入していた。ポップスとしてのジャズに追従した「ファンキー・ジャズ」「ソウル・ジャズ」、ジャズの芸術性を追求した「モード・ジャズ」「フリー・ジャズ」と、モダン・ジャズは両極端な演奏志向に二分されて、更なる進化をしていた時代である。

そこで、ハンク・モブレーである。モブレーは「ポップスとしてジャズ」を良しとしなかった様で、硬派にも「ジャズの芸術性を追求」する志向を突き進む。後にエレ・ジャズやジャズロックにも殆ど手を染めなかった様で、どうもモブレーは「硬派な志向のジャズマン」だった様な気がする。
 

Hank-mobley-no-room-for-squares

 
このアルバムも、2つのセッションに分かれているが、どちらも、こってこてのモード・ジャズである。2つのセッションに参加しているメンバーは、皆、モード・ジャズに精通しているメンバーばかりなので、これはこれで統一感があって良い。リーダーのモブレー自身、モーダルなテナーは得意中の得意なので、このアルバムのモブレーは堂々と思索溢れるフレーズを吹きまくっている。

1963年3月7日のセッション(#3 & 6)では、ハンコックが素晴らしい。こってこてモーダルなフレーズをガンガンに連発する。間の取り方といい、フレーズの拡げ方といい、絶妙としか言いようのない弾き回し。

1963年10月2日のセッションでは、モーガンのトランペットとモブレーのテナーの「モーダルなフロント2管」が格好良くって、モーガンもモブレーも、こってこてモーダルなフレーズをガンガンに吹きまくっている。しかし、モブレーのテナーって、モーガンのトランペットとの相性がとても良いよね。

タイトルの「四角四面なヤツお断り」というよりは「軟弱なヤツお断り」ってな感じの、筋金入りのモード・ジャズ盤。この盤を初めて聴いた時、モブレーがこんなに硬派な、こだわりのあるジャズマンだとは思わなかった。

偉大なるB級テナー・マンとか、ミドル級のテナー・マンとか、はたまた「バップ時代で最も過小評価されているミュージシャンの一人」(wikipediaより引用)とか、あまり芳しい評価が無いモブレーだが、モード・ジャズをガンガンに吹きまくるモブレーは無敵。モブレーはウェイン・ショーターに比肩する「こってこてモーダルなテナー・マン」と僕は解釈している。
 
 

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2021年10月18日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・7

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズは、1954年から1990年の36年間、アート・ブレイキーの下、活動し続けた、伝説のジャズ・バンドである。リーダーはブレイキーだが、他のメンバーはそれぞれの時代で入れ替わる。しかも、このジャズ・メッセンジャーズに所属して活躍したジャズマンは、おおよそ、一流のジャズマンとして育っていった。

Art Blakey & The Jazz Messengers『At the Cafe Bohemia, Vol. 1&2』(写真)。1955年11月23日、NYのライヴ・スポット「カフェ・ボヘミア」でのライヴ録音。ブルーノートの1507 & 1508番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Kenny Dorham (tp). Hank Mobley (ts), Horace Silver (p), Doug Watkins (b)。ブレイキーとシルヴァーが共存した時代のザ・ジャズ・メッセンジャーズの傑作ライヴである。

1955年と言えば、ハードバップ初期から中期への移行期。ハードバップについて、その演奏の方法、雰囲気、音楽理論が体験的に整理され、その方法論が確立された時期。この『カフェ・ボヘミア』は、そんな時期にライヴ録音された、奇跡的なハードバップ演奏の記録である。なんせ、このライヴ盤2枚に録音されている内容については「文句の付けようが無い」。
 

At-the-cafe-bohemia

 
演奏の要は「ブレイキーとシルヴァー」。ブレイキーのドラミングは、ハードバップ期の代表的ドラミングの1つ。演奏のリズム&ビートを牽引し、フロント楽器を鼓舞し、フロント楽器の展開をコントロールする。コードがベースのハードバップにおいて、シルヴァーのピアノの演奏スタイルは、ハードバップ期の流行スタイルの1つ。後のファンキー・ピアノの先駆。ワトキンスのベースは、ブレイキーとシルヴァーとの「ビート」の橋渡し役。このバンド演奏の「ビート」の方向性を示し続けている。

フロント楽器に目を転じると、このライヴ盤でのハンク・モブレーは何時になく絶好調。というか、モブレーのサックス奏者としての生涯最高のブロウかもしれない。それほどまでに内容が素晴らしい。ケニー・ドーハムのトランペットも同様。そのパフォーマンスがバラツキがちなドーハムが、優れたテクニックでバリバリ吹きまくっている。このフロント2管のパフォーマンスは、ハードバップ期を代表するものの1つだろう。

このライヴ盤のハードバピッシュ度は相当に高い。ハードバップ演奏の良好なサンプルであり、ショーケースでもある。ハードバップとは何か、に迷ったら、僕はこの盤を聴く。この盤にある演奏の好要素を記憶に留めて、他のハードバップの演奏を聴く。ハードバップ演奏の基準となる演奏がこのライヴ盤に詰まっている。
 
 
 
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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
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2021年1月23日 (土曜日)

整然と整ったモブレー=モーガン

ブルーノート・レーベルのアルバムは「ジャケット・デザイン」の面でも優れたものを多く残している。この盤も例に漏れず、実に粋なアルバム・ジャケットである。セッションを録音したであろうオープンリール・テープを運ぶキャリング・ケースをあしらったデザイン。そして、それにそぐった絶妙なロゴタイプ。

Hank Mobley & Lee Morgan『Peckin' Time』(写真左)。1958年2月9日の録音。ブルーノートの1574番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Lee Morgan (tp), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Charlie Persip (ds)。双頭リーダーのハンク・モブレーのテナー、リー・モーガンのトランペットがフロント2管のクインテット構成。整然と整った躍動感溢れるスッキリとした演奏で、ジャズの良さがギッシリ詰まった盤。

共演者が同年代若しくは年下の時のモブレーは好調だ。ケリーのピアノもご機嫌。モーガンのペットも溌剌。アルバム全体を通して、モブレーのリーダー作の中で、一番、内容が整った盤ではないか。もともと、モブレーとモーガンの相性は良く、この2人の2管コンビには外れが無い。その2人が絶好調なこの盤。アレンジも良好、フロント2管のバランスも良くて、ほんと整った内容に惚れ惚れする。
 
 
Peckin-time  
 
 
特に、唯一のスタンダード、3曲目の「Speak Low」はアレンジも良好、フロント2管が朗々と鳴り響いて、とても素敵な演奏に仕上がっている。ほんと、この盤ではモブレーがテナーを伸び伸びと吹いている。伸び伸びと吹く分、テクニックにも良い影響を与えていて、ミスの無い流麗なアドリブ・フレーズは特筆すべきもの。もしかしたら、この盤、総合的に見て、ハンク・モブレーの一番出来の盤かもしれない。

バックのリズム・セクションの活躍も見逃せない。もともと、モブレーとベースのポール・チェンバースも相性が良い。そして、ハッピー・スインガーでそこはかとなくブルージーなウィントン・ケリーのピアノが、モブレー=モーガンのフロント2管のスピード感とバッチリ合っていて、演奏全体のスピード感の供給に貢献、そして、パーシップのドラムが演奏全体のリズム&ビートをしっかりと「締めて」いる。

ブルーノート・レーベルのアルバムの中でも、ジャズの即興演奏でありがちな「破綻」が全く無い。スリリングな演奏を好む向きには、ちょっと物足りないかも。しかし、フロント2管の抑制がほどよく効いたバリバリな吹きまくりと、バックのリズム隊の躍動感と疾走感。アーティステックな側面を強く感じる、素敵なハードバップ盤である。
 
 
 

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  ・『The More Things Change』1980

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  ・The Band『Stage Fright』

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  ・僕達は「タツロー」を聴き込んだ

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2020年12月22日 (火曜日)

よくよく考えると「不思議な」盤

ハンク・モブレーは、ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンが特に目をかけていたテナー・マンである。テナーの腕前もさることながら、彼の作曲能力を高く評価していたフシがある。が、それでも、1500番台では、ハンク・モブレーのリーダー作は6枚を数える。これは「破格の待遇」である。

『Hank Mobley』(写真左)。1957年6月23日の録音。BNの1568番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Bill Hardman (tp),Curtis Porter (as, ts), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。ハンク・モブレーのテナー、ビル・ハードマンのトランペット、カーティス・ポーターのアルトのフロント3管のセクステット編成。

この盤でのモブレーはまずまず好調。パーソネルを見渡すと、同世代から年下のメンバーで固められており、こういう編成の下では、モブレーは遠慮無く、気持ち良くテナーが吹けるようだ。比較的元気の良いブロウを繰り広げている。出来としては「中の上」程度かな。ただ、本人の名前をズバリ掲げたリーダー作としてはちょっと物足りない。
 
 
Hank-mobley-album  
 
 
カーティス・ポーターという、この盤以外のジャズ盤であまり聞かれない、マイナーなアルト・サックス奏者が実に良いプレイを披露している。冒頭、ポーター作の「Mighty Moe and Joe」のファンキーでテンポの良いノリに「おおっ」と思わず身を乗り出す。続くスタンダード曲の「Falling in Love with Love」「Bag's Groove」では、モブレーのテナーとの絡みが実に良い。

しかし、ここまでポーターのサックスが目立つと、この盤って、誰のリーダー作だっけ、という気分になる。収録曲を見渡せば、リーダーのモブレーの自作曲は4曲目の「Double Exposure」の1曲のみ。あれれ。モブレーのテナーや作曲能力ににスポットと当てているのでは無い、このモブレーのリーダー作って、何なんだろう。いつもこの盤を聴く度に感じる「疑問」である。

アルトのポーターについては、この後、1960年代に入るとその名前を見ることは無くなる。といって、この盤で「これはポーターの素晴らしいプレイを記録した貴重盤だ」と推すには「何かが足らない」。リーダーのモブレーも出来としては「中の上」程度。よくよく考えると「不思議」な盤である。ただし、ハードバップな盤としては、雰囲気のある、まずまずの内容。そういう意味では「ブルーノート1500番台に外れ無し」。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて        【更新しました】 2020.10.07 更新。

  ・『Middle Man』 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.12.08 更新。

  ・ジョン・レノンの40回目の命日

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.10.07 更新。

  ・僕達はタツローの源へ遡った

 

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2020年12月14日 (月曜日)

中身はご機嫌なハードバップ

ハンク・モブレーのテナー・サックスは、上手いんだか、下手なんだか、アルバム毎にそのパフォーマンスの好不調が変わるので、ジャズ者初心者の頃は「良く判らん」テナー・マンだった。

ずっと彼のリーダー作を聴き続けていると、どうも録音時のパーソネルによって好不調が変わるみたいで、モブレーのテナーは、アルバムによって好不調が変わる「ギャンブル性」が特徴。当たれば良いが、外れれば悲しい。

Hank Mobley『Hank』(写真左)。1957年4月21日の録音。BNの1560番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), John Jenkins (as), Donald Byrd (tp), Bobby Timmons (p), Wilbur Ware (b), Philly Joe Jones (ds)。アルバムの収録曲は、全5曲中、2曲がハンク作、残りがスタンダード曲。

モブレーのテナー・サックス、ジェンキンスのアルト・サックス、そして、バードのトランペットの3管フロント。ファンキー・ピアノのティモンズ、プログレ・ベースのウエア、バップ・ドラムのフィリージョーのトリオがリズム・セクションを担当する。

ブルーノートにしては珍しい、地味なジャケットであり、愛想の無いアルバム・タイトルである。このジャケットとタイトルだとまず触手が伸びない。
 
 
Hank-hank-mobley  
 
 
しかし、パーソネルを見ると、ハンクから見て、リズム隊のベースのウエアとドラムのフィリージョーは年上だが、残りのメンバーは年下。年上で腕が確かなリズム隊は安心、他の旋律が取れる楽器は年下で遠慮しなくて良い。もしかして、この盤、ハンクは好調かもしれないと当たりを付けて聴き始める。

予想通り、この盤のハンクのテナー・サックスは好調。しっかり気合いを入れて堂々と吹いている。本当に不思議なテナー・マンである。好調が故にテナー・サックスの音色も明るい。好調な時のハンクのテナー・サックスが奏でるスタンダード曲は聴き応えがある。

アルト・サックスのジェンキンスも好調、トランペットのドナルド・バードも好調。好調ハンクのテナー・サックスと併せて、魅力的なフロント3管である。バリバリ「ハードバップ」なユニゾン&ハーモニーを聴くことが出来る。

ファンキー・ピアノのティモンズも好調。良き捻れベースのウエアとバップなドラムのフィリー・ジョーもご機嫌なリズム&ビートを供給する。

地味なジャケットであり、愛想の無いアルバム・タイトルだが、中身はご機嫌なハードバップ。さすが、ブルーノートの1500番台は裏切らない。
 
 
 

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2020年11月 8日 (日曜日)

時には「ジャケ買い」の逆もある

「ジャケ買い」という言葉がある。ジャズのアルバムで、ジャケット・デザインの良いものは中身の演奏も良いものが多い。つまり、ジャケットが良ければ、その場で衝動買いしても悔いは残らないことが多い、という格言みたいなものなんだが、時には「ジャケ買い」の逆もある。だから、アルバムのコレクションって楽しいのかもしれない。

Hank Mobley『The Jazz Message Vol.2』(写真左)。1956年の録音。前半2曲が11月の録音。パーソネルは、Lee Morgan (tp), Hank Mobley (ts), Hank Jones (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。後半3曲が遡ること7月の録音。パーソネルは、Donald Byrd (tp), Hank Mobley (ts), Barry Harris (p), Doug Watkins (b), Kenny Clarke (ds)。サボイ・レーベルからのリリースになる。

ハード・バップ全盛に向かって、若きジャズ・ミュージシャン達が技を競い合った時期。いや〜錚々たるメンバーやなあ。サボイ・レーベルにしては珍しい、ハードバップの第一線で活躍している、メジャーなスター・ジャズマンを一斉に集めている。このメンバーを見ただけで、このアルバムの内容の良さは約束されたようなものだ。
 
 
The-jazz-message-vol2
 
 
リーダーのモブレーをはじめとして、若きドナルド・バードやダグ・ワトキンス、リー・モーガンが熱気溢れるハード・バップを展開。とりわけ、リーダーの若きハンク・モブレーの荒削りで野太い、それでいて歌心を感じさせるテナー・サックスは「これぞハードバップ、これぞモダン・ジャズ」的な音で、聴いていて心が和む。

トランペットのモーガンやバードは、もうこの頃、既に彼らそれぞれ特有の「クセ」が、ところどころに見え隠れして個性的。思わず口元が緩む。ワトキンスのベースは太くて堅実。ブンブン鳴る。早逝が惜しまれる。ハードバップの美味しいところが詰め込まれていて、代表的名盤で無い分、リラックスして聴ける。しかし、このアルバム、ジャズ盤紹介本などで、そのタイトルが挙がることは少ない。

恐らく、このアルバムのジャケットに問題があるんじゃないかと睨んでいる。悩みに悩んだモブレーの横顔。しかも、額に手を当てて痛々しいことこの上ない。アルバムのジャケットに、こんな写真、使うかなあ。タイポグラフィーはサボイ・レーベル特有の古くさい、どうでも良い感じのタイポグラフィー。このジャケットじゃあ、触手は伸びないな。でも、内容はなかなかの好盤です。
 
 
 

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2020年11月 6日 (金曜日)

モブレーの作曲の才能の高さ

ブルーノートの総帥、プロデューサーのアルフレッド・ライオンの価値基準は、ジャズというジャンルの音楽を「総合芸術」として捉えていたところにあるんじゃなかろうか、思っている。

ブルーノート・レーベル、特に1500番台、4000〜4200番台にかけて「駄盤無し」と言われる。確かに「駄盤無し」なのだが、初めて聴いた時に「ライオンって、どうしてこの音源をアルバム化したんやろ」と思うものがある。逆に「当時、お蔵入り」した音源については、どれもが「なんでお蔵入りしたんやろ」と思うものばかりである。

『Hank Mobley And His All Stars』(写真左)。1957年1月13日、お馴染みVan Gelder Studioでの録音。ブルーノートの1544番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Milt Jackson (vib), Horace Silver (p), Doug Watkins (b), Art Blakey (ds)。

フロントにヴァイブのミルト・ジャクソンを加え、リズム・セクションにホレス・シルヴァーのピアノを加えた、確かに、当時のブルーノートの「オールスターズ」である。この人選、このアルバムを聴き終えた後で、なるほどなあ、と感心することになる。

ブルーノートの総帥、プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、テナーのハンク・モブレーを「買っていた」。特に、1957年はハンク・モブレー使いまくり。全部で4枚のリーダー作を作らせ、他のリーダーのセッションにも、参加させまくり、である。その「こころ」は何処にあったのか。

この盤はブルーノートにおいて、モブレーにとって2枚目のリーダー作。収録曲はモブレーの自作曲で固めている。当時27歳の若手だったモブレー。そんな若手の自作曲で固めたリーダー作に、ミルトやホレスなど、当時、ハードバップのスター・ジャズメンを参加させている。聴く前はその真意が分からなかった。
 
 
Hank-mobley-and-his-all-stars_20201106174401
 
 
ハンク・モブレーは好不調の波が激しい。どうもセッションのメンバーによるところ、つまり相性が強く出る感じなのだ。この盤では、モブレーのテナーは萎縮している訳では無いが(指はしっかり動いている)「神妙で大人しい」。どうも周りを固めたメンバーが、モブレーにとって「気さくに相対できる相手」では無かったようである。加えて、自作曲をこのメンバーで演奏して貰うことに「恐縮」していたのではないか。

逆に、モブレー以外のメンバーは溌剌と演奏している。特にミルト・ジャクソンのヴァイブ、ホレス・シルヴァーのピアノは絶好調。モブレーの自作曲の中で、喜々として素敵なアドリブ・パフォーマンスを展開している。これって、恐らくモブレーの自作曲の出来が素晴らしいのだと思う。曲の出来によって、アドリブの質は変わる。ジャズとはそういうものなんだが、この盤がそれを証明しているようだ。

スタンダード曲を一曲も入れずに、モブレーの自作曲で固めた、アルフレッド・ライオンの真意。恐らく、ライオンはモブレーの作曲の才能を、テナーのプレイ以上に「買って」いたのではないだろうか。だからこそ、リーダーのモブレーが「慎重で大人しい」プレイに終始して、サイドマンのプレイの方が目立つセッションにも拘わらず、この音源をアルバム化したのではないかと感じている。

モブレーのテナー・プレイに着目していたのならば、この盤は「お蔵入り」では無かったか。しかし、ライオンはモブレーの作曲の才能を「買って」いた。だから敢えてこの音源をアルバム化した。そして、サイドマンの溌剌としたアドリブ・パフォーマンスがそれを証明している。この盤は「モブレーの作曲の才能の高さ」を確認する盤だと理解している。

モブレーが控えめに「得意げに」楽譜を差し出している、このアルバムのジャケ写もそれを物語っているようだ。
 
 
 
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