2023年7月25日 (火曜日)

新主流派の名演・名盤の1枚

1950年代から1960年代のブルーノート・レーベルはかなり「懐が深い」。1500番台からそんな傾向は出ていた訳だが、とにかく、その時その時に出現した、ジャズの「新しいトレンド&奏法」に長けたジャズマンをチョイスして、しっかりリーダー作を録音させている。4100番台を見渡すと、当時、ジャズの最先端を走るフリー・ジャズやモード・ジャズにもしっかりと対応しているから凄い。

Sam Rivers『Fuchsia Swing Song』(写真左)。1964年12月11日の録音。ブルノートの4184番。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts), Jaki Byard (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。新主流派の中でも先進的で尖ったテナーのサム・リヴァースがリーダー。ピアノに、これまた新主流派で尖ったジャッキー・バイヤード。ロンとトニーは新主流派のリーダー格。

サム・リヴァースの初リーダー作。リヴァースは、1923年生まれなので、40歳を過ぎての遅い初リーダー作になる。僕がリヴァースを初めて知ったのは、マイルスの『イルス・イン・トーキョー』でのサックス・プレイ。モーダルではあるが、かなり前衛的で、マイルスの下で限りなくフリーに走ったり、ちょっとだけアヴァンギャルドに傾いたり、当時として「かなりヤバい」サックス奏者だった。
 

Sam-riversfuchsia-swing-song

 
そんなリヴァースの初リーダー作。収録曲は全てリヴァースの自作曲。メンバーは皆、新主流派。当然、出てくる音はモードなんだが、かなりヤバいモードである。とにかく、フリーか、と思う位の自由度の高いモーダルな展開、最低限、伝統のジャズの範疇には留まって、最低限の決め毎に従って演奏してはいるが、とにかく尖っている。それでも、今の耳には五月蠅くない、しっかりとしたモード・ジャズをやっているのだから、その力量たるや、目を見張るものがある。

バックのリズム・セクション、バイヤードのピアノ、ロンのベース、トニーのドラム、皆、喜々として、リヴァースの相当に限りなくフリーに近いモーダルな吹奏に追従している。バイヤードがカチカチ硬質なモーダル・フレーズを叩き出し、ロンの自由奔放なベースラインが蠢き、トニーが安全装置を外して暴走叩きまくり。それでも、しっかりと伝統のジャズの範疇に留まった演奏でまとめているのだから、このリズム隊の力量も凄いものがある。

何だか、とんでもない「モーダルな」内容の演奏の数々だが、フリーに走っても、アブストラクトに傾いても、ちゃんと伝統のジャズの範疇に着地するのだから、このアルバムは素晴らしい。当時の新主流派の演奏の中でも、とびきり硬派でとびきりカッ飛んだ内容のアルバムで、21世紀の今から振り返ってみると、この盤、新主流派の名盤の1枚として評価してよいかと思う。
 
 

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2019年11月 9日 (土曜日)

リヴァースのモードへの対応力 『Contours』

このアルバムを聴けば、当時、サム・リヴァース(Sam Rivers)のモード・ジャズにおける先進性が良く判る。モード奏法はモードに基づく旋律による進行に変更したもので、演奏の自由度が飛躍的に高い。リヴァースのモーダルなテナーは、クールでメロディアスでバリエーション豊かなもの。特に、この「クールでメロディアス」な部分。リヴァースはこの部分に秀でていた。

アドリブ部に入った途端、このモードに基づく旋律による進行に乗って、アドリブを展開することになる。しかも自由度が飛躍的に高い。演奏する側は自らの閃きを基にアドリブを展開する。閃いたフレーズを一気に吹くので、大体が気合いの入った音になる。逆にそんなにバリエーション豊かに閃きがある訳ではないので、アドリブの手癖・展開がマンネリ化、パターン化する恐れがある。
 
リヴァースは閃いたフレーズをクールに吹き、アドリブの手癖・展開のバリエーションが豊かなのだ。そんなリヴァースが良く判るアルバムが、リーダー作第2弾の Sam Rivers『Contours』(写真左)。1965年5月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts, ss, fl), Freddie Hubbard (tp), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Joe Chambers (ds)。
 
  
Contours  
 
 
バックのリズム・セクションについては、当時、若手の新主流派の精鋭揃い。バックの不手際に引き摺られて、モードな演奏の精度や内容を損なわれることは無い。逆にフロントのソロイストの「モードに対する対応力」をしっかりと見極めることが出来る。フロントはリーダーのリヴァースのテナーと、ハバードのトランペット。既にハバードはモードへの対応力に定評がある。
 
しかし、リヴァースのテナーが明らかに素晴らしい。クールでメロディアスでバリエーション豊かな「モーダルなソロ」が展開される。逆にハバードは、吹きすぎる、パターン化した、ちょっと平凡な「モーダルなソロ」に終始している。特にリヴァースのソロがクール。そして、モーダルなアドリブのバリエーションが豊か。新主流派の「新しい風」を感じる。
 
サム・リヴァースのモードに対する対応力の高さを再認識できる優れたリーダー作である。ハバードの存在のお陰であるが、逆にリヴァースのワンホーンでも良かったのでは、と思う。それだけ、リヴァースのモーダルな演奏は、それまでのモードを得意とするジャズマンとは一線を画するものだったと思う。しかし、それが即、人気の高さに繋がらないのがジャズの不思議。
 
 
 
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2019年11月 1日 (金曜日)

サム・リヴァースの初リーダー作

昨日、デイビット・サンチェスのサックスを聴いていて、突如として「サム・リヴァース(Sam Rivers)」を聴きたくなった。サム・リヴァースのサックスを初めて聴いたのは、マイルスの『ライヴ・イン・トーキョー』。1964年のライブ録音であるが、黄金のクインテットにまだウェイン・ショーターが参加していない時期。そこにサックスとして参加したのが「サム・リヴァース」。

このマイルスの『ライヴ・イン・トーキョー』でのリヴァースのサックスを聴くと、ショーターのサックスよりも、凛としてシュッとしたサックス。ショーターのサックスはちょっとウネウネしているところがある。意外とリヴァースの方がマイルス・クインテットに合ったりして、と思っていたら、どうもマイルスも留まるようオファーしたらしい。それをリヴァースは断った。

Sam Rivers『Fuchsia Swing Song』(写真左)。1964年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts), Jaki Byard (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。先ほどのマイルスの『ライヴ・イン・トーキョー』の5ヶ月後の録音。リズム・セクションのうち、ベースとドラムは、マイルス・クインテットと同じメンバー。ピアノだけはハービー・ハンコックでは無い、当時、新進気鋭のジャキ・バイヤード。
 
 
Fuchsia-swing-song-sam-rivers
 
 
このブルーノート・レーベルの4184番は、サム・リヴァースの初リーダー作。リヴァースのテナーが実に魅力的。端正でスッと伸びのある、切れ味の良いテナー。モーダルなフレーズで、限りなく自由なフレーズを吹き上げていくが、決して絶対にフリーに傾かない。どこか節度のある、どこか理知的な響きの宿ったフレーズ。モードのフレーズなので難解そうだが、意外とシンプル。適度な隙間があって聴き易い。

バックのリズム・セクションでは、ピアノのバイヤードが個性的。ハンコックのモーダルなピアノより、フレーズの輪郭がクッキリしていて、適度にエッジが立っている。速いフレーズではスピード感が豊かで、モーダルなフレーズは幾何学的な展開がユニーク。もちろん、ベースのロン、ドラムのトニーは当然、素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれる。

ブルーノートの「新主流派のモーダルなテナー」のアルバムの中でも屈指の出来だと思います。変に急いでフリーに走らず、限りなく自由度の高いモーダルな吹きっぷりに、リヴァースの「受け狙い」では無い、我が道を往く「矜持」を感じます。本能、直感で勝負しない、理論派テナーマンの面目躍如です。僕はそんなリヴァースのテナーが「隅に置けない」。
 
 
 
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