2021年12月21日 (火曜日)

やっとバイラークの個性全開

ヴィーナス・レコードについては「コマーシャル先行、懐メロ志向のアルバム作り」のアルバム制作の志向もあるが、硬派なジャズ・レーベルとしてのアルバム制作の志向もある。以前から第一線で活躍していたが、いまいち「決め手」に欠けるジャズマンをピックアップしてリーダー作を制作し、以前とは違う「新しい成果」を上げた例もある。

Richie Beirach Trio『What Is This Thing Called Love?』(写真左)。邦題『恋とは何でしょう』。直訳のまんま、である。

1999年6月18, 19日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Richie Beirach (p), George Mraz (b), Billy Hart (ds)。リーダーのバイラークのピアノが印象的なモーダルなフレーズを撒き散らす。耽美的で柔軟度の高いモードな響きが芳しい秀作である。

バイラークのピアノは、耽美的で柔軟度の高い「多弁」な弾き回しが個性。コルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」ほどでは無いが、フレーズに「間」や「空間」があれば、音符で埋め尽くす様な「多弁」な弾き回し。しかし、初期のECMレーベルでの諸作は、ECMのレーベル色が勝って、耽美的で柔軟度の高い部分だけがクローズアップされた。
 

What-is-this-thing-called-love_richie-be

 
どうも、このECMレーベル時代の諸作の印象が強いのが良く無かったのか、ECMレーベルを離れてからのバイラークのリーダー作については「隔靴掻痒」の感が強かった。「もっと弾きたいんやないの」と感じるくらい、耽美的な面を前へ出そうとして、不完全燃焼っぽいパフォーマンスがとにかく「もどかしい」。

しかし、このヴィーナス・レコードに出会い、プロデューサーの原哲夫氏に出会ったことで、バイラークは吹っ切れた様に感じる。とにかく「弾きまくっている」。全編に渡って、耽美的で柔軟度が高いが、とにかく「多弁」な弾き回し。

バイラークのライフワーク的演奏の「ナーディス」、そして「枯葉」「恋とは何でしょう」などの「どスタンダード曲」についても、「間」や「空間」があれば、音符で埋め尽くす様な「多弁」な弾き回し。

これぞ「バイラークのピアノ」という様なパフォーマンスは爽快ですらある。バイラークはヴィーナス・レコードに出会って、その個性を100%発揮出来たのでは無いかと感じている。
 
 
 
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2021年7月21日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・92

ジャズマンの中には、あるタイミングで音の個性がガラリと変わるタイプがいる。ジャズのトレンドに乗るタイミングで変わるジャズマンもいれば、所属レーベルが変わって、そのレーベルのプロデューサーの意向で変わるジャズマンもいる。しかし、いずれの場合も楽器の「音の基本」や「音の響きや癖」は変わらない。

Richard Beirach『Elm』(写真)。1979年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Richard Beirach(p), George Mraz (b), Jack DeJohnette (ds)。 当時は耽美的ピアニストの代表格の1人、リッチー・バイラークがリーダーのトリオ作品。ムラーツのベースとデジョネットのドラムの「リズム隊」が実に強力、かつ、バイラークとの相性が抜群。

バイラークのECMレーベルでの『Eon』『Hubris』『Elm』の耽美系3部作の中の一枚。この3部作は、明らかに「ECMレーベルの音」を具現化しており、ECMレーベルの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーの自らの監修・判断による強烈な「美意識」を反映した音である。ECMレーベルの個性に照らしあわせて、リリカルで明快、クールで耽美的という、バイラークのピアノの個性を最大限に引き上げた音である。
 

Eim

 
リズム隊がムラーツとデジョネットだからだと思うが、3部作の中でもダイナミックな展開になっている。ただ、ジャジーな雰囲気やファンクネスは希薄で、乾いたクリスタルな4ビートもしくは8ビートで、インプロビゼーションが展開される。このリズム隊が、バイラークのピアノの弾き回し感とピッタリ合っていて、多弁なバイラークが活き活きと弾き回している。

アイヒャーの強烈なプロデュースによって、バイラークのピアノの内面にある哀愁感が増幅されている。モーダルな弾き回しではあるが、決して「間」を活かした弾き回しでは無い。どちらかと言えば、多弁でバップな弾き回しである。が、決してうるさくない。ECM独特の深いエコーも邪魔にならない。ECMレーベルの音をよく理解して、バイラークがそのピアノの音をコントロールしているのだ。

このトリオ演奏はバイラークのキャリアの中でも「白眉の出来」。この後、音楽的意見の相違からマンフレート・アイヒャーと袂を分かつことになるのだが、この盤の優れた内容については揺らぐことは無い。バイラークのこの『Elm』を含む「耽美系3部作」は、アイヒャーの強烈なプロデュースと、それに100%応えたバイラークのパフォーマンスの「賜(たまもの)」である。
 
 
 
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2019年7月30日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・154

メインストリーム・ジャズ。いわゆる「純ジャズ」というやつである。奏法はいろいろあるが主流は「ハードバップ」。21世紀となった現代では「ネオ・ハードバップ」として、まだまだ現役、まだまだ深化している。そして、僕のお気に入りは「モード」。マイルスが大々的に始めた奏法であるが、これが実に良い。現代でも、このモード奏法をメインとしたジャズ演奏は多々存在する。

モード奏法にはちゃんとした「理論」があるが、この「理論」を読んだとして、楽理を経験した人は判るが、楽理に縁遠い人は全く判らないだろう。モード奏法は聴いた方が、聴いたフィーリングで理解した方が早い。聴けば判るが、ハードバップとは全く異なる旋律と音の響き。旋律の浮遊感、旋律の拡がり、旋律の自由度の高さ。モード奏法は聴いていて、とても楽しい。

Richie Beirach 『Romantic Rhapsody』(写真左)。2000年11月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Richie Beirach (p), George Mraz (b), Billy Hart (ds)。あの好き嫌いの分かれるヴィーナス・レコードからのリリース。ヴィーナス盤って「エロ・ジャケット」で有名なんだが、この盤は違う。ロゴタイプも秀逸。この盤には「正統で硬派な純ジャズ」の臭いがプンプンする。
 

Romantic-rhapsody-richie-beirach

 
冒頭の「Flamenco Sketches」から「Spring Is Here」「Blue In Green」「Old Folks」「Young And Foolish」と、怒濤の「モード映え」する楽曲のオンパレード。ゆったりと余裕のあるテンポで奏でられるモードな旋律。特にリーダーのバイラークのピアノが印象的なモーダルなフレーズを撒き散らす。耽美的で柔軟度の高いモードな響き。じっくり聴きこめる、素敵な旋律の数々。

ベースのムラーツは、テクニック優秀、ピッチはバッチリ合って、骨太なアコースティック・ベース。ブンブン、ゴリゴリなアコベでモーダルなベースラインを弾きまくる。フリーの様でフリーで無い。しっかりとベースラインを押さえつつ、これだけ伸び縮みする伸縮自在な、柔軟度の高いベース・ラインはそうそう聴けない。モーダルなベース・ラインって、このことを言うのか、と感心する。

ビリー・ハートのドラミングも自由度の高い優れもの。モーダルな旋律に相対するドラミングはこういうものなんだろう。バイラークとムラーツのモーダルな旋律にぴったり寄り添うが如く、彩りを添えるが如く、リズム&ビートを供給する。いや〜良いトリオ盤ですね〜。全編にモード・ジャズが蔓延する。モード・ジャズを「今風の音」で、しっかりと聴くことが出来る好盤である。
 
 
 
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