2022年6月 4日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・98

最近、リッチー・バイラークのリーダー作をいろいろ聴き直していて、この盤をかけた時、このバイラークの初リーダー作であり、代表作の一枚について、当ブログで取り上げていないのに気がついた。いやはや驚いた。

Richard Beirach『Eon』(写真)。1974年11月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Richard Beirach (p), Frank Tusa (b), Jeff Williams (ds)。耽美的でリリカルで多弁なピアニスト、リッチー・バイラークの初リーダー作。

リッチー・バイラークはNY生まれ。当初、クラシック音楽とジャズの両方を学び始め、バークリー音楽大学に入学。1年後、彼はバークリーを離れ、マンハッタン音楽学校に移り、彼はマンハッタン音楽学校を音楽理論と作曲の修士号を取得して卒業した才人。確かに、バイラークのアレンジは「理詰め」の雰囲気が強い。

初リーダー作の冒頭に「Nardis」を収録したのが誤解のもと。「Nardis」は、耽美的でリリカルなバップ・ピアニストとされるビル・エヴァンスの十八番曲。我が国では、ビル・エヴァンスは「耽美的でリリカルな」ピアニストと誤解されることが多い。余りに短絡過ぎる評価だと思うが、その偉大なピアニストが十八番曲とした「Nardis」を弾くので、バイラークは今でも「耽美的でリリカルな」ピアニストと分類されることが多い。

が、この初リーダー作を隅々までしっかり聴き通すと、バイラークは単なる「耽美的でリリカルな」ピアニストに留まらず、とにかく「多弁」なピアニストであることが判る。この「多弁」がバイラークのピアノの最大の個性。
 

Richard-beiracheon

 
「耽美的でリリカルな」ピアニストの特徴として、「間」と「音の広がり」を活かしたインプロビゼーションが挙げられるが、バイラークはその反対。音符を敷き詰めた様に「多弁」なフレーズを弾きまくる。タッチは「耽美的でリリカル」。しかし弾きっぷりは「シーツ・オブ・サウンド」と言って良いくらい「多弁」。

しかし、その「多弁」な弾きっぷりが、テクニックが確かで端正、そして、タッチの響きが「耽美的でリリカル」なので、意外と五月蠅くない。特に速いフレーズにおける、バイラークのピアノのタッチと弾きっぷりは「クラシック・ピアノ」の雰囲気が色濃く反映されている。この弾きっぷりが五月蠅いならば、クラシック・ピアノの速いフレーズは全て「五月蠅い」ということになる。

バイラークは、単に「耽美的でリリカルで多弁なピアニスト」に留まらず、フリー&アヴァンギャルドな志向のピアノに走ったり、現代音楽風のピアノの様な無調の響きを醸し出したりするところが、チック&キース&ハービーなどの「新主流派世代」の括りのピアニストだと思う。故に、ニュー・ジャズが中心の、ECMレーベルのピアノ盤の中ではちょっと異質な雰囲気がする。

初リーダー作は、そのリーダーであるジャズマンの個性と特徴が如実に反映されている、というが、このバイラークの初リーダー作にもそれが言える。この盤を聴けば、バイラークのピアノが何たるか、をしっかり捉えることが出来る。バイラークの初リーダー作であり、代表作の一枚。名盤です。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2021年12月21日 (火曜日)

やっとバイラークの個性全開

ヴィーナス・レコードについては「コマーシャル先行、懐メロ志向のアルバム作り」のアルバム制作の志向もあるが、硬派なジャズ・レーベルとしてのアルバム制作の志向もある。以前から第一線で活躍していたが、いまいち「決め手」に欠けるジャズマンをピックアップしてリーダー作を制作し、以前とは違う「新しい成果」を上げた例もある。

Richie Beirach Trio『What Is This Thing Called Love?』(写真左)。邦題『恋とは何でしょう』。直訳のまんま、である。

1999年6月18, 19日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Richie Beirach (p), George Mraz (b), Billy Hart (ds)。リーダーのバイラークのピアノが印象的なモーダルなフレーズを撒き散らす。耽美的で柔軟度の高いモードな響きが芳しい秀作である。

バイラークのピアノは、耽美的で柔軟度の高い「多弁」な弾き回しが個性。コルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」ほどでは無いが、フレーズに「間」や「空間」があれば、音符で埋め尽くす様な「多弁」な弾き回し。しかし、初期のECMレーベルでの諸作は、ECMのレーベル色が勝って、耽美的で柔軟度の高い部分だけがクローズアップされた。
 

What-is-this-thing-called-love_richie-be

 
どうも、このECMレーベル時代の諸作の印象が強いのが良く無かったのか、ECMレーベルを離れてからのバイラークのリーダー作については「隔靴掻痒」の感が強かった。「もっと弾きたいんやないの」と感じるくらい、耽美的な面を前へ出そうとして、不完全燃焼っぽいパフォーマンスがとにかく「もどかしい」。

しかし、このヴィーナス・レコードに出会い、プロデューサーの原哲夫氏に出会ったことで、バイラークは吹っ切れた様に感じる。とにかく「弾きまくっている」。全編に渡って、耽美的で柔軟度が高いが、とにかく「多弁」な弾き回し。

バイラークのライフワーク的演奏の「ナーディス」、そして「枯葉」「恋とは何でしょう」などの「どスタンダード曲」についても、「間」や「空間」があれば、音符で埋め尽くす様な「多弁」な弾き回し。

これぞ「バイラークのピアノ」という様なパフォーマンスは爽快ですらある。バイラークはヴィーナス・レコードに出会って、その個性を100%発揮出来たのでは無いかと感じている。
 
 
 
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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

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2021年7月21日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・92

ジャズマンの中には、あるタイミングで音の個性がガラリと変わるタイプがいる。ジャズのトレンドに乗るタイミングで変わるジャズマンもいれば、所属レーベルが変わって、そのレーベルのプロデューサーの意向で変わるジャズマンもいる。しかし、いずれの場合も楽器の「音の基本」や「音の響きや癖」は変わらない。

Richard Beirach『Elm』(写真)。1979年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Richard Beirach(p), George Mraz (b), Jack DeJohnette (ds)。 当時は耽美的ピアニストの代表格の1人、リッチー・バイラークがリーダーのトリオ作品。ムラーツのベースとデジョネットのドラムの「リズム隊」が実に強力、かつ、バイラークとの相性が抜群。

バイラークのECMレーベルでの『Eon』『Hubris』『Elm』の耽美系3部作の中の一枚。この3部作は、明らかに「ECMレーベルの音」を具現化しており、ECMレーベルの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーの自らの監修・判断による強烈な「美意識」を反映した音である。ECMレーベルの個性に照らしあわせて、リリカルで明快、クールで耽美的という、バイラークのピアノの個性を最大限に引き上げた音である。
 

Eim

 
リズム隊がムラーツとデジョネットだからだと思うが、3部作の中でもダイナミックな展開になっている。ただ、ジャジーな雰囲気やファンクネスは希薄で、乾いたクリスタルな4ビートもしくは8ビートで、インプロビゼーションが展開される。このリズム隊が、バイラークのピアノの弾き回し感とピッタリ合っていて、多弁なバイラークが活き活きと弾き回している。

アイヒャーの強烈なプロデュースによって、バイラークのピアノの内面にある哀愁感が増幅されている。モーダルな弾き回しではあるが、決して「間」を活かした弾き回しでは無い。どちらかと言えば、多弁でバップな弾き回しである。が、決してうるさくない。ECM独特の深いエコーも邪魔にならない。ECMレーベルの音をよく理解して、バイラークがそのピアノの音をコントロールしているのだ。

このトリオ演奏はバイラークのキャリアの中でも「白眉の出来」。この後、音楽的意見の相違からマンフレート・アイヒャーと袂を分かつことになるのだが、この盤の優れた内容については揺らぐことは無い。バイラークのこの『Elm』を含む「耽美系3部作」は、アイヒャーの強烈なプロデュースと、それに100%応えたバイラークのパフォーマンスの「賜(たまもの)」である。
 
 
 
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  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
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2019年7月30日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・154

メインストリーム・ジャズ。いわゆる「純ジャズ」というやつである。奏法はいろいろあるが主流は「ハードバップ」。21世紀となった現代では「ネオ・ハードバップ」として、まだまだ現役、まだまだ深化している。そして、僕のお気に入りは「モード」。マイルスが大々的に始めた奏法であるが、これが実に良い。現代でも、このモード奏法をメインとしたジャズ演奏は多々存在する。

モード奏法にはちゃんとした「理論」があるが、この「理論」を読んだとして、楽理を経験した人は判るが、楽理に縁遠い人は全く判らないだろう。モード奏法は聴いた方が、聴いたフィーリングで理解した方が早い。聴けば判るが、ハードバップとは全く異なる旋律と音の響き。旋律の浮遊感、旋律の拡がり、旋律の自由度の高さ。モード奏法は聴いていて、とても楽しい。

Richie Beirach 『Romantic Rhapsody』(写真左)。2000年11月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Richie Beirach (p), George Mraz (b), Billy Hart (ds)。あの好き嫌いの分かれるヴィーナス・レコードからのリリース。ヴィーナス盤って「エロ・ジャケット」で有名なんだが、この盤は違う。ロゴタイプも秀逸。この盤には「正統で硬派な純ジャズ」の臭いがプンプンする。
 

Romantic-rhapsody-richie-beirach

 
冒頭の「Flamenco Sketches」から「Spring Is Here」「Blue In Green」「Old Folks」「Young And Foolish」と、怒濤の「モード映え」する楽曲のオンパレード。ゆったりと余裕のあるテンポで奏でられるモードな旋律。特にリーダーのバイラークのピアノが印象的なモーダルなフレーズを撒き散らす。耽美的で柔軟度の高いモードな響き。じっくり聴きこめる、素敵な旋律の数々。

ベースのムラーツは、テクニック優秀、ピッチはバッチリ合って、骨太なアコースティック・ベース。ブンブン、ゴリゴリなアコベでモーダルなベースラインを弾きまくる。フリーの様でフリーで無い。しっかりとベースラインを押さえつつ、これだけ伸び縮みする伸縮自在な、柔軟度の高いベース・ラインはそうそう聴けない。モーダルなベース・ラインって、このことを言うのか、と感心する。

ビリー・ハートのドラミングも自由度の高い優れもの。モーダルな旋律に相対するドラミングはこういうものなんだろう。バイラークとムラーツのモーダルな旋律にぴったり寄り添うが如く、彩りを添えるが如く、リズム&ビートを供給する。いや〜良いトリオ盤ですね〜。全編にモード・ジャズが蔓延する。モード・ジャズを「今風の音」で、しっかりと聴くことが出来る好盤である。
 
 
 
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2015年12月 9日 (水曜日)

昼下がりSP・デュオ盤特集・9

Richard Beirach & David Liebman『Omerta』(写真左)。デュオである。Richard Beirach (p), David Liebman (ts, ss,fl)。当時、まだまだ若手の部類の二人。多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックスが身上のリーブマン。この二人がデュオったらどうなるのか、そんなワクワク感の高い二人のデュオ盤である。

1978年6月、日本は東京の「Onkyo House」での録音。 TRIOレコードからのリリース。時は1978年。ジャズ界はフュージョン・ジャズのブーム真っ只中。純ジャズなど、大半のジャズ者の方々は見向きもしない。純ジャズなど「過去のもの」とバッサリ切り捨ててしまう評論家もいた。そんな時代である。

そんな時代に、多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックスが身上のリーブマンの二人を招聘して、純ジャズなデュオを演奏させ、録音して、アルバム化してリリースする。TRIOレコードって、なんて豪気なレーベルだろう。この素晴らしいデュオ盤が、純日本のレーベルからリリースされたことは誇って良いと思う。

さて、このデュオ盤であるが、素晴らしい内容である。ピアノのバイラーク、サックスのリーブマン、二人の息はピッタリ。二人とも多弁なミュージシャンではあるが、デュオ演奏が故、相手の音をしっかり聴く必要がある。よって、この多弁な二人が、ちょっと寡黙になって、結果、良い塩梅の口数になっているのだ。これは「瓢箪から駒」である。

多弁過ぎるほど音符だらけで疾走するバイラークのピアノが、良い塩梅に「間」と「ゆったりとしたスピード」なピアノになって、実に味わい深い、滋味溢れるピアノに変身している。見事である。こんなに安定した着実で地に足の着いたタッチで弾くバイラークを僕は他に知らない。
 

Omerta

 
多弁でモーダルなリーブマンのサックスが、「間」と「余裕ある展開」を獲得することによって、リーブマン独特のアドリブ・フレーズの個性をしっかりと確実に理解することが出来る様になり、実に味わい深い、滋味溢れるサックス&フルートに変身している。これだけリーブマンのフレーズをしっかりと体感できる演奏はなかなか他に無い。

そんな二人のデュオ盤である。デュオという演奏のフォーマットの妙を存分に味わえる。デュオ演奏が故、相手の音をしっかりと聴きながらの「対話」である。ちょっと「間」を外したり、コード進行に変化を付けたり、スタンダード曲のメロディーに捻りを加えたりと、なかなか丁々発止としたやりとりが実に魅力的です。

多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックス。バイラークとリーブマン、お互い意気投合し、長年デュオ演奏を続ける仲でありつつ、丁々発止とした熱いやりとりも出来る、理想的なデュオ・パートナーなんだなあ、と改めて感心します。

浜辺で遊ぶ裸の子供二人の写真のアルバム・ジャケット。この子供二人が、このアルバムでの無垢で純粋なデュオ演奏を展開するバイラークとリーブマンの二人を表現している様で秀逸。良いアルバムです。
 
 
 
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2013年5月 5日 (日曜日)

凛とした静謐感漂うソロ・ピアノ

ECMレーベルといえば、ベルリン・フィルで主席コントラバス奏者を勤めたマンフレート・アイヒャーが、1969年、ミュンヘンで創立したレーベル。アイヒャー独特の美意識のもと、新しいジャズの在り方のみならず、新しい感覚の音楽の在り方を追求した、個性派レーベルである。

この個性派ジャズ・レーベルには、独特の雰囲気を持ったソロ・ピアノのアルバムが沢山ある。おおよそ、ハードバップの様な旧来のジャズとは違うマナーの、どちらかといえば現代音楽の雰囲気が強い、凛とした静謐感漂うソロ・ピアノがメインである。欧州のジャズ・レーベルならではのアプローチ。これがまた良い。

そんなECMレーベルの「凛とした静謐感漂うソロ・ピアノ」の中で、良くCDプレイヤーのトレイに載る盤が、Richie Beirach『Hubris(ヒューブリス)』(写真左)。1977年6月の録音。Richie Beirach(リッチー・バイラーク)の初のソロ・ピアノ盤である。全曲オリジナルで固めている。

私事になるが、このソロ・ピアノ盤、今から30年以上前のLPの時代、ジャズ者初心者駆け出しの頃から、欲しい欲しいと思っていながら入手できず、CDでリイシューされる度に、そのうちと思っていたら廃盤となって、口惜しい想いをしたアルバムで、20世紀の終わり、2000年のリイシュー時にやっと入手した、曰く付きの盤である。やはり、欲しいと思う盤は見かけた時に迷わず買うべきですね(笑)。

さて、このRichie Beirach『Hubris』であるが、とにかく美しい録音、とにかく美しいソロ・ピアノである。初夏の眩しい日差しの中、誰もいない静かな山間の公園か、その木々の合間から垣間見る穏やかな海を連想する音世界。確かなテクニックに裏打ちされた、力強くも優しいバイラークのピアノがここにある。
 

Richie_beirach_hubris

 
そして、ECMレーベルのアルバムは殆どがそうなのだが、アルバム・ジャケットのデザインや写真が、まさにそのアルバムの内容や雰囲気とピッタリなのだ。言い換えると、ECMレーベルのアルバムは、ジャケットの印象で買って良い、ということが言える。

この『Hubris』も例外では無い。ジャケットのイメージにピッタリのピアノ・ソロが繰り広げられている。しかも、この盤のジャケットは、昔のLPサイズだと更に格別な、秀逸なデザインである。

この盤のピアノ・ソロに、メインストリーム・ジャズ的な4ビート展開や、ファンキーでアーシーな左手のビートを期待してはいけない。いわゆる「純ジャズ」的な雰囲気のソロ・ピアノでは無い。バイラークの左手は辛うじて、リズム&ビートをキープしてはいるものの、演奏全体の雰囲気は現代音楽の域に近い。

しかしながら、現代音楽の幾つかがそうであるような難解さは無い。現代音楽風でありながら、実にシンプルで判り易い、印象的な響きのフレーズが特徴のピアノ・ソロ。

しかも、タッチにはジャズ的な力強さがあるので、クラシック・ピアノの様な繊細さ、儚さが希薄。流行の癒し系ではなく、健全で明快なタッチ、そこはかとなく明るく印象的な響きのフレーズが特徴の、いわゆる現代ジャズのひとつのバリエーションと言える演奏なのだ。

アルバム収録のどの曲も素晴らしいソロばかりであるが、一番良い演奏を1つ選べと言われたら、冒頭の「Sunday Song」を迷わず、僕は選ぶ。とにかく美しく、透明感溢れ、そこはかとなく明るく、初夏の眩しい青空のような、初夏の日を一杯に浴びた「穏やかな海」を連想させるような冒頭の1曲だけでも、このアルバムは買いだ。
 
 
 
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2011年4月25日 (月曜日)

実に硬派な欧州風ジャズである

ジョージ・ムラーツのベースの威力を感じ取ったのは、この『QUEST』(写真左)。このアルバムで、ジョージ・ムラーツの名を知った。Dave Liebman (ss,a-fl), Richie Beirach (p), George Mraz (b), Al Foster (ds)というECM系のスーパースターが終結したスーパーバンド、「QUEST」の1981年のデビューアルバムです。

このアルバムを手に取ったのは、当時はディブ・リーブマンが目当て。1970年代、エレクトリック・マイルス・バンドの重要メンバーとして先鋭的なサックスを吹きまくったディブ・リーブマンである。そのディブ・リーブマンがメインストリームなジャズをやるのだ。これは聴きたいなあ、と思うのは当たり前。

しかも、ドラムのアル・フォスターも1970年代、エレクトリック・マイルス・バンドの重要メンバーである。そんなアル・フォスターがメインストリームなジャズをやるのだ。うへ〜っ、と思った。

そして、リッチー・バイラークは、ジャズ者初心者の当時、お気に入りのピアニストの一人。手数の多い、テクニック旺盛でありながら、良く唄うバイラークのピアノは、ジャズ者初心者の僕にとって判り易く、親しみ易いピアニストの一人だった。そんなバイラークがメインストリームなジャズをやるのだ。凄い、と思った。

しかし、このアルバムの冒頭「Dr. Jekyll And Mr. Hyde」を聴いて、ディブ・リーブマンは当然のことながら、その音を聴いて「えっ」と思ったのが、ジョージ・ムラーツのベースの音。質実剛健、正統派、太くて重心の低い、心地良くブンブン唸るベース。この生々しい太いベースの音は、米国のジャズではなかなか聴けない。「これ、誰や?」と思ったのは言うまでもない。
 

Quest

 
このジョージ・ムラーツの正統派ベースの音が、欧州派なベースの音が、この『QUEST』のアルバム全体の雰囲気を決定づけているようだ。あのポリリズムの塊のようなアル・フォスターが、ヨーロピアンなセンシティブでテクニカルなドラミングを披露する。手数の多い、饒舌なバイラークも、いつになく落ち着いた耽美的で印象派的なピアノを聴かせてくれる。

そして、意外なことに、フロントのリーブマンも、ここでは純ジャズ、メインストリームなサックスではあるが、完全にその雰囲気は「欧州派」。実に、音がスッキリと通った、メリハリのある、透明感溢れるサックスを聴かせてくれる。あのリーブマンがヨーロピアンなサックスをフルートを聴かせてくれる。犯人は「ジョージ・ムラーツのベース」である(笑)。

まあ、それが実のところ、本当かどうかは知らないが、この『QUEST』というアルバムは、全編を通じて、ヨーロピアンな雰囲気満載である。不思議だなあ。ジョージ・ムラーツのベース以外は、米国のジャズメンなんだけどなあ。

ジャズの世界って、凄いベーシストがいるもんだなあ、と単純に感心した。そして、この『QUEST』を何回も聴いているうちに、もしかして、このジョージ・ムラーツのベースって、かなり凄いかも、と思うようになった。そして、ジョージ・ムラーツは僕のお気に入りのベーシストの一人となった。

とにかく、この『QUEST』を通じて、ジョージ・ムラーツのベースを知った、というか意識した。1981年の出来事である。
 
 
 
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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
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