2024年2月24日 (土曜日)

復活直後の『Live at Donte’s』

1960年代後半、薬物中毒者の為のリハビリテーション施設シナノンで過ごしたブランクの時期を境に、1970年代〜亡くなる1982年までの活動期間を「後半のペッパー」 とするが、このライヴ音源は「後半のペッパー」の予告編的な演奏内容が記録されている。

Art Pepper Quintet『Live at Donte's, 1968』(写真)。1968年11月24日、ハリウッド「Donte」でのライヴ音源。ちなみにパーソネルは、Art Pepper (as), Joe Romano (ts), Frank Strazzeri (p), Chuck Berghofer (b), Nick Ceroli (ds)。

このライヴ録音の時期は、ペッパーはシナノンを出て、バディ・リッチ楽団で演奏を始めたところ、脾臓破裂の大手術を受け生死を彷徨った後、そんなに時間が経っていない頃ではないかと思われる。

確かに、ペッパーの吹き回しは、ちょっと元気が無い。逆に、フロント管の相方、ジョー・ロマーノのテナー・サックスがやけに元気一杯で、自由奔放、豪快でアグレッシヴな吹き回しは五月蝿いくらい。

演奏途中でのフェードアウトや,若干の音の欠落等もあって、音源の完成度としては「イマイチ」だが、テープ音源でありながら、音質はそこそこのレベルを維持しているので、「後半のペッパー」の特徴である、力強いバップで流麗なフレーズと、ややフリーキーなアグレッシヴでエモーショナルなフレーズが混在する吹き回しが良く判る。
 

Art-pepper-quintetlive-at-dontes-1968

 
ややフリーキーなアグレッシヴでエモーショナルなフレーズは、明らかにコルトレーンの影響が明らかなんだが、意外とこなれていて、コルトレーンのコピーには陥っていない。既に、ペッパー流のアグレッシヴな吹き回しになっているところが流石だなあ、と感心するところ。

もともと、メロディアスに流麗に吹き回すテクニックについては、「前半のペッパー」の最大の特徴だったのだが、「後半のペッパー」では、前半の「メロディアス」の部分が「力強いバップ」な吹き回しになっている。

ただ「流麗」なところは変わらないので、「後半のペッパー」は突如、演奏スタイルを180度変えた訳ではない。テクニック優秀、流麗な吹き回しの部分は「前半のペッパー」と変わらない。

つまりは「前半のペッパー」は、米国ウエストコースト・ジャズの音世界でのペッパーのパフォーマンスで、「後半のペッパー」は、コルトレーン後の、1970年代のモード・ジャズの音世界でのペッパーのパフォーマンスだった、ということで、「前半のペッパー」と「後半のペッパー」との優劣をつけることはナンセンス。どちらもペッパーで、どちらも僕からすると優れたペッパーである。

演奏曲はスタンダード曲がメインだが、このスタンダード曲についても、ペッパー流のアグレッシヴな吹き回しが、コルトレーン後の、1970年代のモード・ジャズな吹き回しで、決して懐メロ風には陥らず、当時として、時代の先端を行く、挑戦的な展開になっているのは立派。

このライヴ音源を聴くと、ペッパーは進化するタイプのジャズマンだったことが良く判る。
 
 

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2024年2月22日 (木曜日)

McCoy Tyner『Expansions』

ブルーノート時代のマッコイ・タイナーは、自らのモード・ジャズの完成に向けて鍛錬を積んでいた時期であり、そのタイナー流のモード・ジャズの確立に向けてのチャレンジ、試行錯誤が演奏から透けて見えて、なかなか味わい深いものがある。

McCoy Tyner『Expansions』(写真)。1968年8月23日の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Woody Shaw (tp), Gary Bartz (as, fl), Wayne Shorter (ts, cl), Ron Carter (cello), Herbie Lewis (b), Freddie Waits (ds)。

ピアノのマッコイ・タイナーがリーダー。若手有望株のウディ・ショウのトランペット、ゲイリー・バーツのアルト・サックス、そして、中核ジャズマンのウェイン・ショーターの3管フロント、ロン・カーターがチェロを弾いて、ハービー・ルイスとのダブル・ベース、そして、フレディー・ワッツのドラムの総勢7名の変則セプテット編成。

この『Expansions』、次作の『Extensions』と併せて、タイナー流のモード・ジャズの確立を確認できる兄弟盤の様な位置付けのアルバムだと解釈している。

タイナー流のモード・ジャズは、アフリカ志向のモーダル・ジャズ。アフリカの大地を想起させるような躍動感、ワールド・ミュージック志向のフレーズの響きは「エスニック&アフリカン」。まるでビッグバンドを聴いている様な「分厚い」アンサンブル。そんなバンド・サウンドをバックに、それぞれのソロイストが完全モーダルなアドリブを展開する。
 

Mccoy-tynerexpansions

 
当然ながら、リーダーのマッコイ・タイナーのモーダルなピアノが素晴らしい。タイナー流の「シーツ・オブ・サウンド」の右手、重力感溢れる印象的な左手のハンマー奏法。フロント管やロンのチェロの完全モーダルなフレーズ展開のバックで、効果的にビートを刻むブロック・コード。マッコイ・タイナーのモーダルなピアノ全開である。

ショウのトランペット、バーツのアルト・サックス、若手の2管は溌剌と個性的なモーダル・フレーズを撒き散らしている。尖った熱い、自由度の高い高速モーダル・フレーズの吹き回しは若さ爆発、勢いがあって聴き応え十分。

そんな中でやはり際立っているのは、ウェイン・ショーターのテナー・サックス。ショーターのモーダル・フレーズは重量感溢れ、ショーター流「シーツ・オブ・サウンド」の高速フレーズ、音の広がりと間を活かしたモーダルな展開、どれもが唯一無二で、どこから聴いても「ショーターのモード」。ショーターのモーダルなテナー全開である。

この盤を聴いていると、初リーダー作『Inception』から追求してきた、マッコイ・タイナーならではの「タイナー流のモード・ジャズ」が遂に確立したなあ、と思う。この盤で確立した音世界をベースに、タイナーは1970年代の活動のピークへと進化を続けていく。
 
 

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2024年2月15日 (木曜日)

80年代タイナーの Double Trios

ジャズマンには、時代時代のトレンドに合わせて、スタイルや奏法をマイナーチェンジするタイプと、時代時代のトレンドには左右されず、一度確立したスタイルや奏法は滅多に変えないタイプと、大きく分けて2つのタイプに分類されると感じている。

迫力満点のモーダル・ピアノのレジェンド、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)は、一度確立したスタイルや奏法は滅多に変えないタイプ。コルトレーンの下で確立したスタイル、ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。タイナーは生涯、このスタイルと奏法を変えることは無かったように思う。

McCoy Tyner『Double Trios』(写真)。1986年6月の録音。日本のDenonレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは「tracks 1-4」について、McCoy Tyner (p), Avery Sharpe (ac-b), Louis Hayes (ds)。「tracks 5-8」について、McCoy Tyner (p), Marcus Miller (el-b), Jeff "Tain" Watts (ds) の、2つの異なったトリオで4曲ずつ演奏、Steve Thornton (perc) が「tracks 1, 3, 5-7」で入る。

1980年代に入っても、タイナーはスタイル&奏法は全く変えない。モーダルなフレーズや音の響きは、その時代時代の雰囲気や流行りを参考にしながら、自家薬籠中のものとしていて、古さは全く感じない。

特にLP時代のA面の4曲については、疾走感溢れ駆け抜けるがごとくの冒頭の「Latino Suite」、モーダルな展開が美しい3曲目「Dreamer」など、1980年代スタイルのタイナーの、オーソドックスでモーダルなピアノを楽しむことが出来る。

冒険しているのは、LP時代のB面の4曲で、ベースにエレべのファンキー・ベーシスト、マーカス・ミラーが、ドラムに、1980年代メインストリーム志向のコンテンポラリーなジャズ・ドラマーの筆頭、ジェフ・ティン・ワッツが担当している。この新世代のリズム隊をバックにタイナーがモダールなピアノを展開している。
 

Mccoy-tynerdouble-trios  

 
ベースがエレベのミラーということで毛嫌いすることは無い。5曲目「Down Home」、6曲目「Sudan」は、フュージョン・ファンクっぽい音世界なので、ミラーのパーカッシヴなエレベがピッタリハマる。

7曲目「Lover Man」、8曲目「Rhythm A Ning」は、こってこて4ビートのスタンダード曲だが、さすがはエレベの名手ミラー、なかなか繊細で緩急自在、硬軟自在な、エレベらしからぬ表現豊かなベースを刻んで、タイナーのピアノを盛り上げている。

ワッツのドラムは、1980年代の先端を行く、ポリリズミックで縦ノリで、流麗でスクエアにスイングするドラミングでタイナーのピアノを鼓舞している。

当のタイナーは、バックのリズム隊が新世代のメンバーということにはお構いなく、タイナーの個性溢れる、迫力満点のモーダル・ピアノを弾きまくっている。つまりは、新世代のミラーのベースとワッツのドラムが、タイナーのピアノの個性と特徴をよく理解して、タイナーに寄り添う様に、当時として新しいリズム&ビートを供給しているのだ。良いトリオ演奏だと僕は評価している。

我が国のジャズ・レーベルからのリリースだが、内容的には優れていると感じる。過去の「人気のモーダル奏法」に拘らず、選曲も人気の有名スタンダード曲に拘らず、タイナーの個性と特徴が表現しやすいスタンダード曲を選んでいる。実に潔い。

そんな優れたプロデュースのもと、タイナーのオーソドックスなモード・ピアノの延長線上の演奏と新世代のリズム隊とのチャレンジブルなインタープレイの対比で、1980年代のタイナーのモード・ジャズを的確に捉えている。なかなかの好盤である。
 
 

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2024年2月14日 (水曜日)

ショーターの「白鳥の歌」

2023年3月2日、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)は、89歳で逝去した。ジャズを聴き始めてから、リアルタイムでずっと聴き続けてきたジャズマンが逝去するのは単純に辛い。

ショーターのサックスのベースは「モード」。ショーターのモード奏法は、マイルスのモードの個性とコルトレーンのモードの個性を極端に拡張〜融合した、当時のモード奏法の究極形の様な吹き回し。

確実にステップアップしたモード解釈で、音の「スペースと間」を活かし、音の広がりを活かしたモーダルな展開は、明らかにショーターならではの音世界。確実にショーターは、ジャズ・サックスの偉大なスタイリストの一人だったし、後進に与える影響は大きかった。

Wayne Shorter, Terri Lyne Carrington, Esperanza Spalding, and Leo Genovese『Live at the Detroit Jazz Festival』(写真左)。2017年9月3日、デトロイト国際ジャズフェスティバルでのライヴ録音。2017年6月に逝去した、ピアニストで作曲家のジェリ・アレンの追悼のパフォーマンスでもあった。

ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (sax), Leo Genovese (p, key), Esperanza Spalding (b, vo), Terri Lyne Carrington (ds)。ショーターのサックスがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」。

ショーターがテリ・リン・キャリントンやエスペランサ・スポルディング、レオ・ジェノヴェーゼと共演、という「一期一会」のライヴ音源。プロデュースは、テリ・リン・キャリントンが担当している。2022年9月にアルバムとしてリリース。今のところ、2023年に亡くなる前のショーターにとって最後のレコーディングでもあった。
 

Live-at-the-detroit-jazz-festival

 
しかし、このカルテットの編成は凄い。こういう組み合わせもあったのか、と唸った。ショーターのモーダルなサックスは、その個性と特徴をよく理解していないと共演できない類のものだと思うのだが、この「一期一会」のカルテットは、まるでパーマネント・カルテットの様な、一体感溢れる、濃密なつながりの中で、モーダルなインタープレイを展開している。

キャリントンのドラム、スポルディングのベース、ジェノヴェーぜのピアノ、このリズム・セクションがショーターの個性と特徴に精通し、ショーターの音楽性にリスペクトの念を強く抱いていることが、とても良く判る。特に、ジェノヴェーぜのピアノが凄い。変幻自在、緩急自在、硬軟自在なピアノでショーターの音世界に追従する。

フロントのショーターもそれを感じて、実に楽しそうにサックスを吹き上げている。時々、顔を出す「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」が無い。このライヴではショーターは地球人ジャズ・ミュージシャンとのみ、交信している。変に捻れたところが無く、ポジティヴで健康的なショーターのフレーズの数々が印象深い。

スポルディングが参加していることもあって、ボーカル曲も沢山入っている。しかし、そのボーカルも「ショーター調」がしっかり踏まえられていて、「ショーター節」を踏襲した唄い回しが実に微笑ましい。ネオ・ハードバップ&ネオ・モードの最先端の演奏であるが、このエスペランサのボーカルは決して邪魔にならない。どころか、ショーターのモード・ジャズに新しい彩りを添えている。

このショーターのワンホーン・カルテットでの演奏がもっと聴きたかったなあ。この4人でのカルテットの演奏はこのライヴの時だけ。真に「一期一会」のパフォーマンスを捉えた素晴らしいライヴ音源である。

この後、ほどなくショーターは引退し、2023年3月、鬼籍に入る。
 
 

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2024年2月13日 (火曜日)

ショウの名盤『The Iron Men』

1970年代の純ジャズ・シーンに現れ出た、不世出の偉大なスタイリストであるショウ。彼のトランペットを初めて聴いたのは、1981年の初めだったと記憶する。ジャズを本格的に聴き始めて丸3年。何とか、ジャズの聴き方が判って、演奏のトレンドの特徴や演奏自体の良し悪しが判ってきた頃だった。

ウディ・ショウについては、我が国のジャズ評論の世界では、ハバードのコピーの様なトランペットを吹く、ハバードの後塵を拝するトランペッター、という触れ込みで、トランペッターとしての評価はイマイチだった様な記憶がある。

しかし、FMでショウのトランペットを初めて聴いて、どうも、ジャズ評論でのショウの評価は違う、と感じた。それまでに無い、新しい響き、新しいフレーズのモーダルな演奏。ハバードなど相手では無い。ショウのトランペットを凌駕するのはマイルスだけ、と何故か感じた。そのFMで流れていた演奏が収録されていたアルバムがこれ。

Woody Shaw & Anthony Braxton『The Iron Men』(写真左)。1977年4月6, 13日の録音。ちなみにパーソネルは、Woody Shaw (tp, flh), Anthony Braxton (as, ss, cl), Arthur Blythe (as), Muhal Richard Abrams (p), Cecil McBee (b), Joe Chambers, Victor Lewis (ds)。

フロントが、ショウのトランペット、ブラックストンとブライスが交代でサックスの「2管フロント」のクインテット編成の演奏。ジャケは「キワモノっぽい」が、内容は「幻の名盤」として超一級なもの。

このアルバムは録音〜リリースの背景が少しややこしい。まず、1977年4月の録音ながらお蔵入り。1981年1月になってリリースされている。そして、アルバム単体としては未CD化。CDとしては、2013年、モザイク・レコードからリリースされた『Woody Shaw: The Complete Muse Sessions』の一部として全曲収録されているが入手は困難。

現在、サブスク・サイトにも存在しない。辛うじて、Youtubeに「Full Album」としてアップロードされているのみ。いわゆる、現代の「幻の名盤」である。
 

Woody-shaw-anthony-braxtonthe-iron-men

 
僕が初めて聴いたのは、この『The Iron Men』だった。ジャケには「Woody Shaw & Anthony Braxton」として、ショウとブラックストンの共同リーダーのアルバム風だが、ブラックストンは、2曲目の「Jitterbug Waltz」でクラリネットを、3曲目の「Symmetry」でアルト・サックスを、5曲目の「Song of Songs」でソプラノ・サックスを吹いているのだが、アルバムの全6曲中3曲のみの参加。

1曲目の「Iron Man」と5曲目の「Song of Songs」では、アーサー・ブライスがアルト・サックスを吹いている。ちなみに、4曲目の「Diversion One」と、6曲目の「Diversion Two」では、ショウのフリューゲルホーン1管のカルテット編成での録音で、サックスは入っていない。曲毎に少しずつパーソネルが変わるので、しっかり聴いていないと、特にブラックストンとブライスのサックスの音を取り違える危険性がある。

さて、この『The Iron Men』、内容的には、一言で言うと「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」と「温厚な限りなく調整に近いフリーな演奏」のハイブリットな演奏。「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」をリードするのがショウ、「限りなく調性に近い無調性のフリーな演奏」をリードするのが、ブラックストン若しくはブライス。

素晴らしいなあ、と思うのは、ショウのトランペットが、そのどちらの演奏にも完全対応していること。ショウの十八番である「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」に完全対応なのは当たり前として、「限りなく調性に近い無調性のフリーな演奏」に完全対応しているのが凄い。

ブラックストン、ブライスが叩き出すフリーなフレーズに対して、そのエッセンスを瞬時に掴んで、ショウならではのフリーなフレーズで応戦している。むっちゃスリリング。内容が濃いので、フリーな演奏とはいえ、決して耳障りではない。

この盤には「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」と「限りなく調性に近い無調性のフリーな演奏」の、1970年代の最良な演奏の一つが記録されている。

Polygon(多角形)にスイングするモーダルなショウと、限りなく調性に近い無調性のフリーな演奏を具現化するブラックストン&ブライス。そして、そのフロント管をガッチリ支えるマクビーのベースとエイブラムスのピアノ、そして、チェンバース&ルイスのドラム。

1970年代も純ジャズは死なず、脈々と深化していたのだと再認識する。
 
 

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2024年2月12日 (月曜日)

ショウの優秀作『Rosewood』

ウディ・ショウ(Woody Shaw)のリーダー作を聴き直している。聴けば聴くほど、早くに亡くしたのは実に惜しいトランペッターだった。そんな気持ちがどんどん募ってくる。

ショウのトランペットは、1960年代の最先端のモード・ジャズを掘り下げて、新しい響きと新しいフレーズ展開を具現化したもの。今の耳で振り返ればそれが良く判る。明らか1960年代のモードには無いし、1980年代の純ジャズ復古以降、新伝承派のジャズマン達にも、ショウの響きは無かった。

Woody Shaw『Rosewood』(写真左)。1977年12月15–19日の録音。ちなみにパーソネルは、Woody Shaw (tp, flh), Carter Jefferson (ts, ss), Joe Henderson (ts), Frank Wess, Art Webb (fl), James Vass (ss, as), - Steve Turre, Janice Robinson (tb), Onaje Allan Gumbs (ac-p, el-p), Clint Houston (b), Victor Lewis (ds), Sammy Figueroa (congas), Armen Halburian (perc), Lois Colin (harp)。

この盤での一番の聴きどころは「ウディ・ショウ」。この盤では、ショウの「演奏、作曲、バンドリーダー」の力量を遺憾無く発揮した優秀作。切れ味の良いソリッドで柔軟なトランペットの響きが個性的。そして、収録曲の全てを自作曲で埋め尽くし、この自作曲の中で、ショウの個性を最大限にアピールする。

テクニックについては、当時の人気ナンバーワン・トランペッターだったハバードと比肩する高いレベル。その響きとテクニックで、それまでに無い、新しい響き、新しいフレーズのモーダルな演奏を繰り広げる。
 

Woody-shawrosewood

 
バックのメンバーについては、さすが、大手のCBSレコードでの録音で、純ジャズが一番苦しかった頃なので、新旧入り乱れたパーソネルではあるが「豪華絢爛」。ショウの新しい響き、新しいフレーズのモーダルな演奏にしっかりと追従し、しっかりとバッキングしている。

フロント楽器に同じ管楽器、テナー、アルト、トロンボーン、フルートなどを配しているが、前面に目立って出てくるのは、ショウのトランペット。1970年代の純ジャズ・シーンに現れ出た、不世出の偉大なスタイリストであるショウ。そんなショウの個性と特質が、この盤にぎっしりと詰まっている。

この盤で、ショウの「新しい響きのモーダルなジャズ」のイメージが固まった感がある。1960年代、決定打を欠いて、次世代に影響を与えるスタイリストになり切れなかったハバードを越え、次世代のジャズ・トランペッターに強い影響を与えたスタイリスト、ウディ・ショウの「基本」がこの盤に確実に存在している。

我が国では、何故かハバードがもてはやされ、ショウはハバードの後塵を拝する存在とされたが、それは間違いなことがこの盤を聴けば判る。ショウのモード・トランペットはハバードの後継では無い。ショウのモード・トランペットは、マイルスのモード・トランペットの延長線上、発展した先にあると僕は思う。

この盤を聴いていて、ショウは絶対に再評価されるべきスタイリストだ、ということを改めて強く思った。これからしっかりとショウのリーダー作を、今一度、聴き直してみたい。
 
 

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2024年2月 3日 (土曜日)

『Eastern Rebellion 3』を聴け

そこはかとなくファンキーでバップな「情熱&躍動ピアノ」。テクニックは確か、端正で正確なタッチ。両手を一杯に使って、ダイナミックにスケールの大きいバップ・ピアノを弾きまくる。そんな「シダー・ウォルトン」のリーダー作の聴き直し。1970年代の純ジャズ。これが意外と興味深い。

Cedar Walton『Eastern Rebellion 3』(写真左)。1979年12月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), Curtis Fuller (tb), Bob Berg (ts), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。今回の第3弾では、ボブ・バーグのテナーはそのままに、カーティス・フラーのトロンボーンが加わったクインテット編成。

シダー・ウォルトンが率いる「イースタン・リベリオン」の第3弾。「イースタン・リベリオン」のサウンドは、基本的には、1960年代モード・ジャズの進化形、1970年代のモード・ジャズだと思うのだが、今回、フラーのトロンボーンが加わっただけで、イースタン・リベリオンのサウンドは、1960年代、ウォルトンが在籍した頃の「ジャズ・メッセーンジャーズ」のモード・ジャズの進化形の様なサウンドにガラッと変化している。
 

Cedar-waltoneastern-rebellion-3

 
ほんわかホノボノ、音のふくよかさ、フレーズの聴き心地の良さを前面に押し出した、安定したフラーのトロンボーンが、唯我独尊、自分の吹きたい様に吹く、バーグのテナーと好対照で、意外と相性の良いフロント2管になっているのが面白い。お互いのアドリブ・ソロが、お互いの個性を引き立たせている。

フロント2管のバックで、トリオ率いてリズム・セクションを司るシダー・ウォルトンのピアノは、この「イースタン・リベリオン」の第3弾でも絶好調。前々作、前作での「ウォルトンの音を敷き詰めた様なモーダルなフレーズ、躍動感を生む弾むようなコード弾き。そこに骨太なサム・ジョーンズがガッチリと音の底を支え、ビリー・ヒギンスの柔軟なドラミングが、グループ全体のスインギーなグルーヴを堅実にキープする」は変わらない。

イースタン・リベリオンの提示する「1960年代、ウォルトンが在籍した頃の、ジャズ・メッセーンジャーズのモード・ジャズの進化形」は内容が濃い。クロスオーバー&フュージョン・ジャズ隆盛の1970年代に入っても、しっかりと1960年代のモード・ジャズを進化させている。決して「懐メロ」に走らないウォルトン。硬派なジャズマンである。
 
 

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2024年1月20日 (土曜日)

『Eastern Rebellion 2』を聴け

Cedar Walton(シダー・ウォルトン)のリーダー作を追いかけている。存在はジャズを聴き始めた頃から知っていた。が、ビッグネームから追いかけていって、ウォルトンに辿り着くのに30年かかった。そして、今、記事を書く為に聴き直しを進めている。順にウォルトンのリーダー作を聴いていると、やはり、ウォルトンは優れたジャズ・ピアニストの一人だった、と再認識させられる。

Cedar Walton『Eastern Rebellion 2』(写真)。1977年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), Bob Berg (ts), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。ピアノのシダー・ウォルトンのリーダー作。ボブ・バーグのテナーがフロント1管のカルテット編成。

ユニット名「Eastern Rebellion」名義のセカンド盤。フロント1管がボブ・バーグに代わっている(前任は、ジョージ・コールマン)。フロントのテナーは交代したが、リーダーのウォルトン率いるトリオは変わらない。グループ・サウンドについても、ファースト盤(2016年7月20日の記事参照)と変化は無い。1960年代のモード・ジャズの「進化形」。

当時、流行っていた「V.S.O.P」や「Great Jazz Trio」は、1960年代のモード・ジャズの「マイナー・チェンジ」のイメージ。1960年代のモードを振り返って、そこにちょっと新しい要素を加えて、1960年代のモード・ジャズの完成形イメージを提示する。それが、当時「バカうけ」。
 

Cedar-waltoneastern-rebellion-2

 
しかし、このウォルトンの「Eastern Rebellion」のモード・ジャズは、明らかに1960年代のモード・ジャズの「先にある」イメージで、モーダルな展開やモーダルなアドリブなど、1960年代のものとは明らかに響きやアプローチが違う。1960年代のモード・ジャズの連続した延長線上にある「進化形」だと理解している。当時、ウケなかったけどね(笑)。

この『2』は、ボブ・バーグの存在が面白い。唯我独尊、バックのスインギーでグルーヴィーなトリオの音など関係なく、自分の吹きたい様に吹いている。コルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」の様に音符を敷き詰めた速吹きを披露したり、ちょっとフリーに吹いてみたり、スイングっぽく吹いてみたり、やりたい放題である。これが良い。バックのウォルトン率いるトリオの「端正さ」との対比が面白い。

この『2』でも、ウォルトンは好調を維持。ウォルトンの音を敷き詰めた様なモーダルなフレーズ、躍動感を生む弾むようなコード弾き。そこに骨太なサム・ジョーンズがガッチリと音の底を支え、ビリー・ヒギンスの柔軟なドラミングが、グループ全体のスインギーなグルーヴを堅実にキープする。

端正でスインギーでグルーヴィーなピアノ・トリオをバックに、自由闊達に独りよがりに、独特なモーダル・フレーズを吹きまくるボブ・バーグ。1960年代には無かったモーダルな音世界。今の耳で聴き直してみて、意外と個性的なモード演奏に、ふと嬉しくなったりする。

今の耳で聴くと、改めて「Eastern Rebellion」のモード・ジャズは良い感じ。思わず「再評価」である。
 
 

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2023年12月10日 (日曜日)

ヘンダーソンの円熟を聴く。

Smoke Sessions Records。コンスタントに良い内容のアルバムをリリースしていて、常々、感心している。

実績のある中堅〜ベテランのジャズマンをリーダーにしたアルバムをメインにリリースしているのだが、その内容は「昔の名前で出ています」的な旧来のハードバップな演奏を懐メロ風にやるのでは無く、しっかりと現在の「ネオ・ハードバップ」な演奏に果敢に取り組ませている。これが「当たり」で、あのベテランが、と感じる快作を多くリリースしている。

Eddie Henderson『Witness to History』(写真左)。2022年9月13日、NYの「Sear Sound Studio C」での録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Henderson (tp), Donald Harrison (as), George Cables (ac-p, el-p), Gerald Cannon (b), Lenny White (ds), Mike Clark (drums on 1)。

Eddie Henderson(エディ・ヘンダーゾン)は、エレ・ファンク出身のトランペット奏者。1970 年代初頭、ハービー・ハンコックの「ムワンディシ・バンド」のメンバーとして有名になり、その後、10年間を通じて、自身のエレクトリック・ジャズのグループを率いている。そして、ヘンダーソンは医学の学位を取得し、精神科医とミュージシャンとして並行してキャリアを積み、1990年代、アコースティック・ジャズに復帰している。
 

Eddie-hendersonwitness-to-history

 
エディ・ヘンダーソンのSmoke Sessions Records からの最新作、4枚目となるリーダーアルバム。冒頭「Scorpio Rising」は、エレ・マイルスを彷彿とさせる「エレ・ファンク」。ヘンダーソンのトランペットは、マイルスみたいなんだが、マイルスほど尖んがってはいない。エッジの丸い流麗なマイルス、って感じのトランペットが「今風」で良い。しっかり、現代のエレ・ジャズの雰囲気を醸し出す、なかなかのエレ・ファンク。

2局目「Why Not?」以降、エレ・ファンクから、ネオ・モードな演奏に変わるが、このモーダルな演奏の中で、ヘンダーソンのモーダルなトラペットが実に映える。流麗でドライなマイルスの様な、モーダルなヘンダーソンのトランペットが良い感じ。ただし、モーダルなフレーズはどれもが「今風」で、昔のモーダルなフレーズを模したりはしていない。この辺りに、ヘンダーソンの矜持を強く感じる。

マイルスのモード・ジャズからエレ・ファンクを踏襲しているが、マイルスのフレーズやアイデアを模すことなく、現代のエレ・ファンクやネオ・ハードバップの感覚をしっかりと踏まえて、ヘンダーソンなりのエレ・ファンク、ヘンダーソンなりのモード・ジャズを展開しているところに僕は感心する。今回のセッションに参加しているベテラン・ジャズマンも良い味を出している。

ヘンダーソンは1940年10月生まれ。録音時は83歳。もう大ベテランの域に達したヘンダーソン。今回のアルバムは「ヘンダーソンの円熟」を音に変えて我々に聴かせてくれた様な「快作」である。
 
 

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2023年10月21日 (土曜日)

1970年代のファラオの名盤です

Pharoah Sanders(ファラオ・サンダース)。ファラオはコルトレーンの晩年に行動を共にし、コルトレーンの死後、後継者として一番名乗りを挙げたサックス奏者。力強いブロウ、スピリチュアルな演奏、長いフレーズと極端に短いフレーズを組み合わせたグニャグニャ・ラインが特徴。このグニャグニャ・ラインが「はまると癖になる」。

サンダースは「スピリチュアル ジャズ」初期の代表的存在。サンダースはコルトレーンの弟子、あるいはアルバート・アイラーが言ったように「トレーンは父であり、ファラオは息子」な存在。後年では、バラード集を出したりで、メンストリームなモード・ジャズにもその才覚を発揮した。つまりは、サックス奏者として素性がすごく良いのだ。

Pharoah Sanders『pharoah』(写真左)。1976年8, 9月の録音。ちなみにパーソネルは、Pharoah Sanders (ts, perc, vo), Bedria Sanders (harmonium/ track 1), Clifton "Jiggs" Chase (org/ tracks 2 & 3), Tisziji Munoz (g), Steve Neil (b), Greg Bandy (ds/ tracks 2 & 3), Lawrence Killian (perc)。1976年、フュージョン・ジャズ全盛期の中でのスピリチュアル・ジャズの名盤である。
 

Pharoah-sanderspharoah

 
1970年代のスピリチュアル・ジャズの音がする。浮遊感溢れるサイケデリックなエレギ、重量感&躍動感溢れるベース、そこにストレートで伸びのあるファラオのサックスが印象的なフレーズを吹き切る。後半にはハーモニウムまで参加する恍惚感溢れる、冒頭の「Harvest Time」は、スピリチュアル・ジャズの名演・名曲である。

基本は自由度の高いモード・ジャズ。この部分は正統派のメインストリーム志向の純ジャズの面持ちで、これだけでも聴き応え十分。この部分だけでも純ジャズ、スピリチュアル・ジャズとして名演の類なのだが、それぞれの曲の途中、完全フリーにブレイクダウンする。叫びとも咆哮とも言える豪快なフリーなブロウ。時代として、このフリーなブロウも聴き手に訴求する上で必要不可欠だったんだろう。まあ、今の耳で聴けば、このフリーなブロウの部分は必須では無いと感じるんだが...。

今回、このファラオの、スピリチュアル・ジャズの歴史に残る名盤『Pharoah』がリマスターが施され、CD・アナログそれぞれ2枚組限定ボックスセットにて初の正規リイシューがなされている。1枚目には、オリジナルの『Pharoah』本編。2枚目「Harvest Time」の未発表ライヴ音源2曲を収録している。スピリチュアル・ジャズ者の方々には必須のアイテム。通常のジャズ者にも十分訴求する、1970年代ファラオの名盤だと思います。
 
 

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