2022年6月24日 (金曜日)

バディ・リッチを再評価したい

ジャズマンの人気について、米国では人気があるのに、我が国では「知る人ぞ知る」的存在な、人気イマイチのジャズマンは結構いる。

日本のジャズ評論家の皆さんが、それぞれの主観に基づき、こぞって「バッテン」を付けてしまったり、レコード会社がそのジャズマンが在籍するレーベルと販売契約を結んでいなくて、そもそも我が国にそのジャズマンの情報が入ってこなかったり、が主な原因だと思っている。

ジャズ・ドラマーでは「バディ・リッチ(Buddy Rich)」がそんな「我が国で何故か人気が無いジャズマン」の1人。米国では「ビッグバンド・ジャズの新境地を開いた人物、およびビバップの誕生に協力したジャズ・マンとして尊敬されている(Wikipediaより)」のだが、我が国では、その名前が挙がることは希。この落差について、確固たる理由は不明。

Buddy Rich Big Band『Keep the Customer Satisfied』(写真左)。1970年3月30日〜4月1日の録音。パーソネルについては、The Buddy Rich big bandであるが、そのメンバーについては、あまり馴染みの無い名前ばかりが並ぶ。中に、Richie Cole (fl, as), Joe Sample (key) の名前があって、おっ、と思う位。
 

Buddy-rich-big-bandkeep-the-customer-sat

 
バディ・リッチのドラミングは「超人的なテクニックと、迫力満点、ショウマン・シップに溢れる」ドラミング。正確無比に刻まれるビート、パワー溢れる叩きっぷり。この「ど迫力」のドラミングは、ジャズ畑、ロック畑を見渡しても、そうそういない。このドラミングを推進力として、1966年に自らの楽団「Buddy Rich Big Band」を結成し、以後、晩年までドラマー兼バンドリーダーとして活動した。

この盤は、ビッグバンド結成の4年後、バンド・サウンドもしっかり整った、とても迫力ある、とても判り易いビッグバンドのパフォーマンスが記録されている。とりわけ、リーダーのバディ・リッチのドラミングが凄い。ビッグバンドの音圧に全く負けていないどころか、凌駕している。このリッチのドラミングがバンド全体の推進役で、凄く判り易いアンサンブル、ユニゾン&ハーモニーがダイナミックに炸裂する。

電気楽器もしっかり導入済み。エレベ、エレギの音も芳しく、ファンク色漂い、ダイナミックなグルーヴ感が、Buddy Rich Big Bandの真骨頂。今の耳には、このビッグバンドの音は「モダン」に感じる。決してコマーシャルでも、俗っぽくも無い。このビッグバンドの音は「アリ」である。

1987年4月に逝去しているが、バディ・リッチのドラミング、ビッグバンドの影響は米国中心にまだまだ残っている。が、しかし、我が国での人気、知名度はイマイチなんですよね。そう言えば、トランペッターの「ウッディ・ショウ」に通じるところがあるな。バディ・リッチ、ウッディ・ショウ、再評価しなければ、と思う今日この頃である。
 
 

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2022年6月18日 (土曜日)

日本人独特のエレ・ファンク

SOIL &“PIMP”SESSIONS。「ソイル・アンド・ピンプ・セッションズ」と読む。2001年、東京のクラブイベントで知り合ったミュージシャンが集まり、「ステージと観客の間の壁を壊す」という明確な目的のもと、結成された日本の6人組ジャズバンド。そんなSOIL &“PIMP”SESSIONSの新盤が出た。

SOIL &“PIMP”SESSIONS『LOST IN TOKYO』(写真左)。2022年6月、約2年半振りのオリジナル盤をリリース。バンドのホームでもあるビクター・スタジオ(Victor Studio 302st)で行われたスタジオ・セッションの記録。ちなみにパーソネルは、タブゾンビ (tp), 丈青 (p), 秋田ゴールドマン (b), みどりん (ds) 社長 (Agitator) 。

この新盤は「東京」をテーマにしたコンセプチュアルな企画盤。思い入れのある街の地名などをもじったタイトルのもとに展開されるインスト楽曲がズラリと並ぶ。ジャズを基軸にしつつ、レアグルーブ、ジャズファンクからアシッドジャズまで、幅広く取り入れたバンド・サウンドが個性なのだが、この新盤では、ジャズに力点を置いて、純ジャズ基調のエレクトリック・ジャズといった風情。
 

Soil-pimp-sessionslost-in-tokyo

 
このバンド特有のグルーヴ感が堪らない。エレ・ジャズだからといって、フュージョン・ジャズ基調かと言えば、そうでは無い。この新盤を聴き進めて行くと、ふと「マイルス・デイヴィスのエレ・ジャズ」を想起する。マイルスのエレ・ジャズは重量級のど・ファンクだったが、この「ピンプ」のエレ・ジャズは、軽快で切れ味の良い、日本人独特のライトなファンクネスを湛えたビートが基本で、爽快で躍動感のあるグルーヴ感がぐいぐい迫ってくる。

独特のグルーヴ感に乗って、ダンサフルでキャッチャーな演奏がズラリと並ぶ。特に、このバンドの自作曲は旋律がキャッチャー。印象的な曲が多く、旋律がキャッチャーなだけに、途中、フリーに展開したり、アブストラクトにブレイクしても、聴いた後の「後味」は爽快であり、良いジャズ聴いたな〜、って印象に落ち着くのだ。

コンテンポラリーな現代のエレ・ファンクとして、聴き応えのある新盤。現代の和ジャズのレベルの高さを再認識する。意外と純ジャズ志向の演奏の流れが実に「硬派」に響いて、聴き応え満点。米国のエレ・ファンクとは全く異なる、日本人独特のエレ・ファンクというところがニクい。現代エレ・ファンクの優秀盤。
 
 

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2022年3月31日 (木曜日)

ユッコの『Colorful Drops』

jazzLife誌の「Disc Grand Prix 年間グランプリ」の記事を読んでいて、久し振りに「ユッコ・ミラー」の名前に出会った。当音楽喫茶『松和』でも、2019年10月27日の記事で、この人の3rdアルバムを取り上げたことを思い出した。

このサックス奏者が出てきた時は、「我が国もここまできたか」とビックリするやら嬉しいやら。キャンディー・ダルファーを知った時、「ジャズもここまできたか」とビックリしたのだが、このユッコ・ミラー、和製キャンディー・ダルファーと形容するのがピッタリな、コンテンポラリーなジャズ・ロック&ジャズ・ファンクを得意としている。

そもそも「ユッコ・ミラー」とは何者か、である。エリック・マリエンサル、川嶋哲郎、河田健に師事。19歳でプロデビュー。 2016年9月、キングレコードからファーストアルバム「YUCCO MILLER」を発表し、メジャーデビュー。「サックスYouTuber」としても爆発的な人気を誇る、実力派サックス奏者である。確かに、彼女のサックスは正統派なもの。テクニックもブロウも確かなもの。決して、ヴィジュアル指向ではない。

ユッコ・ミラー(Yucco Miller)『Colorful Drops』(写真左)。2021年10月のリリース。ちなみにパーソネルは、ユッコ・ミラー (as, ss, vo, ewi), 岡聡志 (g), 半田彬倫 (key, vln, program), 須藤満, 岡田治郎 (b), 則竹裕之, 渡邊シン (ds)。ユッコ・ミラーの 4thアルバムである。ジャケットを見て引いてはいけない。正統派な、現代のジャズ・ロックとジャズ・ファンクがギッシリと詰まっている好盤である。
 

Colorful-drops_yucco-miller

 
冒頭のジャズ・ファンク「Smoky Light」を聴けば、ユッコ・ミラーは素姓確かなサックス奏者であることが良く判る。続く「New Experience」はアップテンポの難曲なのだが、ユッコ・ミラーは元気一杯の明るいブロウを披露する。これが実に良い。3曲目のスローなファンク・チューン「Be Myself」では、大らかな吹き回しの中に、そこはかとなく漂う哀愁感に耳が引かれる。

ユッコ・ミラーのサックスは、音がしっかり出て淀みが無い。速いフレーズは流麗に、ゆったりしたフレーズは情感豊かに吹き上げる。聴いていて耳に付かない、聴き心地の良い音はしっかりと印象に残る。ジャズ・ファンクの中にそこはかとなく漂う「マイナーな哀愁感」は、ユッコ・ミラー独特の個性。僕は「日本人らしいなあ」としみじみと聴いた。

6曲目の「Stream」のユッコと半田のピアノとのデュエットも哀愁メロディー・オンリーで訴求し、8曲目のジャズ・スタンダード曲「Fly Me to the Moon」のボサノバ基調のカヴァーも秀逸。ユッコのボーカルも味があって良い。

先に書いたが「ジャケットを見て引いてはいけない」。正統派な、現代のジャズ・ロックとジャズ・ファンクがギッシリと詰まっている好盤である。フュージョン・ジャズ者の方々には一聴をお勧めしたい盤ですね。
 
 

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2021年10月17日 (日曜日)

フュージョン・ジャズの完成形

米国シカゴ出身のピアニストのレジェンド、ラムゼイ・ルイス(Ramsey Lewis)。2018年、音楽界からの引退を表明した。う〜ん、惜しいなあ。でも、引退の記事を読むと、83歳となった今「移動が前に比べて困難になってしまった」とのこと。寄る年波には勝てない、ということだが、ジャズ者初心者の頃からお世話になったレジェンドの1人なので、この引退の報には万感の想いがあった。

ラムゼイ・ルイスと言えば、1965年の『The 'In' Crowd』。このファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズの究極形ライヴ盤は、ジャズ者初心者の頃、良く聴いた。そして、フュージョン・ファンク、R&B系フュージョンに転身して、アース・ウインド & ファイアーのモーリス・ホワイトとともに制作『Sun Goddess(太陽の女神)』や『Salongo』『Tequila Mockingbird』は学生時代に良く聴いた盤である。

Ramsey Lewis『Ivory Pyramid』(写真左)。1992年の作品。GRPレーベル移籍第一弾。ちなみにパーソネルは、Ramsey Lewis (ac-p). Mike Logan (el-p), Charles Webb (b), Steve Cobb (ds, perc), Henry Johnson (g)。フュージョン・ジャズの完成形を思わせる、演奏良し、曲良し、録音良し、の3拍子揃った好盤である。
 

Ivory-pyramid_1

 
まず、とにかく音が抜群に良い。オーディオのリファレンス盤として、活用している方々がかなりいるという話も頷ける。まず、重低音で腹を揺さぶる様なベースの音が生々しい。ピアノの音の鮮度の良さと響きの豊かさが極上で、ドラムの臨場感が半端ない。ギターのサスティーンの伸びとボーカル・コーラスの倍音の響きが心地良い。

当然、それぞれの曲の演奏も素晴らしい。1992年の作品なので、一聴した時点での演奏のテイストは、深いエコーのかかり方と併せて「スムース・ジャズ」かな、と思うのだが、聴き進めて行くうちに、リズム&ビートのファンクネス、エレギのアドリブ・フレーズの作り方、ラムゼイ・ルイスのアコピのテイスト、どれもがしっかり「フュージョン・ジャズ」していることに気が付いて、何だか嬉しくなる。

心地良さを前面に押し出したスムース・ジャズでは無い、楽器それぞれの演奏テクニックと「音」、そして、アドリブ・パートの展開の「妙」が聴きどころの「フュージョン・ジャズ」の完成形がこの盤に詰まっている。ラムゼイ・ルイスの音の基本である「ファンクネス&ソウルフル」な要素もしっかりと織り込まれていて、なかなか聴き応えのある、1990年代のフュージョン好盤である。
 
 
 
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2021年10月 9日 (土曜日)

エレ・マイルスを進化させる者

高校1年生の頃だったか、マイルス・ディヴィスが来日、とてつもないエレ・ファンクをかましていった、その大阪フェスティバル・ホールの実況ライブ録音をFMで聴いて「スゲぇー」。まず「エレ・マイルス」のファンになった。その4年後、本格的にジャズを聴き初めてから、まず、エレ・マイルスのアルバムを買い漁ることとなる。

このエレ・マイルスのバンドのメンバーって、殆どがマイルスが目に留めた無名の新人を選んでいることを知る。そして、マイルスに鍛えられた新人が、マイルスの下を離れ、後に一国一城の主として、リーダーを張れる一流ジャズマンに育っていく。その「マイルス・スクール」出身の一流ジャズマンのリーダー作を聴くのが楽しみになる。

Kenny Garrett『Sounds from the Ancestors』(写真)。ちなみにパーソネルは、以下の通り。Kenny Garrett (as, vo, el-p), Vernell Brown, Jr. (p), Corcoran Holt (b), Ronald Bruner (ds), Rudy Bird (per) が、メインのメンバー。

ここに以下のメンバーがゲスト参加する。Jean Baylor, Linny Smith, Chris Ashley Anthony, Sheherazade Holman, Dwight Trible (vo), Dreiser Durruthy (bata, vo), Maurice Brown (tp), Johnny Mercier (p, org, Rhodes), Lenny White (snare), Pedrito Martinez (vo, congas)。
 

Sounds-from-the-ancestors_kenny-garrett

 
リーダーのケニー・ギャレットは、1986年から1991年にかけて帝王マイルス・デイヴィスのバンドに在籍。その後、自身のグループを中心に活動する中で、マイルスの遺伝子を受け継ぐ、エキサイティングでスピリチュアルな、エレ・ファンクな音世界をメインに展開している。ストレート・アヘッドなギャレットも素晴らしいが、やはり、マイルスの遺伝子を継ぐ、エレ・ファンクなギャレットが一番だと僕は思う。

今回のこの『Sounds from the Ancestors(先祖からの音)』には、マイルス譲りのエレ・ファンクの音世界が濃厚。そのエレ・ファンクの中に、ヒップホップ、ゴスペル、アフリカ音楽、デトロイトのモータウン・サウンド等を融合して、今までの音世界を一気に拡げ、ポップでスピリチュアルな要素も加え、よりステップアップした「ケニー・ギャレットのエレ・ファンク」を聴かせてくれる。

これが聴いていてとても心地良い。バックバンドのクールでファンキーなリズム&ビートに乗った、スピリチュアルなエレ・ファンクは聴き応えがある。アメリカン・ルーツ・ミュージックの響きが郷愁をそそり、ヒップホップなビートは、ジャズの「今」を感じさせてくれる。ビートはシンプル&クールで、意外とさりげない雰囲気のエレ・ファンクだが、内容はかなり充実している。

どこか、マイルス・ミュージックの「肝」の部分が見え隠れしてる雰囲気が凄く魅力的。ギャレットはマイルス門下生として、ジャズの得意技である「融合」をキーワードに、マイルス・ミュージックを進化させているようだ。上質のエレ・ファンク、上質のコンテンポラリーな純ジャズである。
 
 
 
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2021年8月29日 (日曜日)

ゲイリー・バーツの異色盤です

ゲイリー・バーツ(Gary Bartz)は、スピリチャル・ジャズ系のアルト・サックス奏者。1970年にマイルス・バンドに抜擢されたことで、メジャーな存在になった。アフリカ回帰的なスピリチャル・ジャズがメインの音楽性を推し進め、1980年代後半以降のレア・グルーヴ・ムーブメントからヒップホップ、クラブジャズにおいて、バーツの作品がしばしばサンプリングされていて、バーツ再評価の動きが高まっている。

僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、ゲイリー・バーツはまだまだ尖っていて、バーツのアフロ回帰なスピリチュアル・ジャズは、アフリカン・ネイティヴな響きが心地良いながら、そのスピリチュアルなアルト・サックスは何となく「強面」で、すぐには手を出すことが出来なかった。バーツのスピリチュアルなジャズを抵抗なく聴き始めたのは、ここ20年位かな。

Gary Bartz『Love Affair』(写真)。1978年の作品。ゲイリー・バーツのソフト&メロウ・フュージョン期の一枚。ちなみにパーソネルはおおよそ以下の通り。

Gary Bartz (as, ss, cl, per, vo), Juewett Bostick, Wah Wah Watson, John Rowin (g), George Cables (key), Nate Morgan (syn), Welton Gite (b), Curtis Robertson (b), Tony Robertson, Howard King (ds), Bill Summers (perc, congas), Vince Charles (perc, timbale) Dorothy Ashby (harp), Beloyd Taylor, Patryce "Chocolate" Banks, Sybil Thomas (vo) 等々。
 

Love-affair-1

 
スピリチュアル・ジャズの闘士的アルト・サックス奏者が、ソフト&メロウなフュージョンに手を染めた訳だから、聴く前は半信半疑。聴いて思わず苦笑い。ヴォーカルをフィーチャーした、流麗でスピリチュアルな「フュージョン風ジャズ・ファンク」がてんこ盛り。硬派で尖ったスピリチュアルな要素はどっかへ行ってしまった(笑)。しかし、この音世界を「フュージョン・ジャズ」とするには、ちょっと乱暴かと思う。あくまで、フュージョン風のジャズ・ファンクである。

冒頭「Big Apple Love」は、重厚なホーンのグルーヴにゴスペルチックなコーラスが絡むソウルフルなジャズ・ファンク。4曲目の「At Last」は、チョッパー・ベースが黒く、ブラック・フィーリング効きまくり、ラストの「Giant Steps」は、コルトレーンの名曲だが、ここではブラジリアン・フュージョンなアレンジの「ソフト&メロウなフュージョン・ファンク」曲に変身していて、思わずビックリ。

2曲目では、我が国ではポールモーリア楽団で有名なイージーリスニング曲「エーゲ海の真珠」をカヴァーしていて、これはやり過ぎやろう、と思いきや、バーツの切れ味良く流麗なアルト・サックスを堪能できる、ソフト&メロウなフュージョン調の仕上がりで、意外と聴かせてくれる。

純粋に流麗でスピリチュアルな「ソフト&メロウなフュージョン・ファンク」盤として聴くと、なかなかの内容。バーツのアルト・サックスは、切れ味良く流麗。ファンクネスを湛えつつ、印象的でリリカルなフレーズを連発している。加えて、ドロシー・アシュビーのドリーミーなハープが要所要所で効いている。意外と出来映えの良いフュージョン・ファンク盤である。
 
 
 
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2021年8月28日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・216

Arthur Blythe(アーサー・ブライス)。自分のジャズ盤のコレクションを確認していて、この人の名前を思い出した。黒人ロフト系のサックス奏者。1970年代〜1980年代に最も輝いたサックス奏者の1人。僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、1970年代後半、メジャーな存在となり、我が国でもジャズ雑誌中心に、ブライスのアルバムが紹介されていたので、ブライスの名前には馴染みがある。

1940年、米国LA生まれ、2017年に鬼籍に入っている。1970年代中期にNYに移住後、ジャック・ディジョネットのSpecial Editionのフロントとして世界的知名度を獲得。初リーダー作は、1977年、アバンギャルド・ジャズ専門レーベルから。以降、2003年まで、年1枚程度のペースでリーダー作をリリースしている。

Arthur Blythe『Lenox Avenue Breakdown』(写真左)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Arthur Blythe (as), James Newton (fl), Bob Stewart (tuba), James "Blood" Ulmer (g), Cecil McBee (b), Jack DeJohnette (ds), Guillermo Franco (perc)。フロント楽器は、ブライスのアルト・サックスをメインに、フルートとチューバが脇を固める。ギターに鬼才ジェームス・ブラッド・ウルマー、ベースにセシル・マクビー、ドラムにジャック・デジョネットの名前が確認できる。

このパーソネルを見ただけで、まず、旧来の純ジャズ系の内容では絶対無い、ということが判る。ギターにウルマーの存在が実に不穏で(笑)、ベース+ドラムのリズム隊はニュー・ジャズな8ビートを叩き出す。音的には、8ビートがメインの、黒人ロフト系の「フュージョン・ファンク」。今の耳で聴いても、ほとんど古さを感じない「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」である。
 

Lenox-avenue-breakdown1

 
これが、むっちゃ格好良い。まず、リーダーのブライスのアルト・サックスが弾けまくっている。8ビートに乗って、格好良いクールなフレーズを連発する。そして、ウルマーの妖しげなコード弾きがアバンギャルドな雰囲気を漂わせ、切れ味の良いコンテンポラリーなグルーヴ感を醸し出す。フルートのフランコはエモーショナルで飛翔感溢れる吹き回し、スチュワートのチューバは魅力的な低音フレーズを撒き散らす。

そして、何と言っても、セシル・マクビーのベース、ジャック・デジョネットのドラムによるニュー・ジャズな8ビートが素晴らしく格好良い。特に、デジョネットの叩き出す8ビートには惚れ惚れするほどだ。このリズム隊の8ビートがこの盤の演奏全体の「要」になっている。そして、時々、8ビートから4ビートへリズム・チェンジするのだが、これがまた格好良い。これだけ気持ち良いリズム・チェンジはそうそう無い。

タイトル曲「Lenox Avenue Breakdown」などは、適度な緊張感を伴ったロック系の8ビートなリフが特徴的で、マクビーとデジョネットの叩き出す8ビートなリズム&ビートがジャジーなので、演奏全体の雰囲気はジャズに留まっているが、ほとんど「ロック」と言っても良いユニークな内容が面白い。一方、ラストの「Odessa」は、フリー・ジャズの要素が濃いが、個々のソロは充実の内容。

ジャジーでコンテンポラリーなリズム&ビートと、それに乗った魅力的なアドリブ展開で、この盤は、とても素敵な「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」満載。チューバの低音とギターの妖しげなコードがファンクネスに拍車をかける。ジャズ・ファンクが基調のエレクトリック・ジャズと評価しても良い内容。とにかく「コンテンポラリーな純ジャズ者」にとっては、とっても聴いて楽しい「ブライス盤」である。
 
 
 
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2021年8月13日 (金曜日)

デイヴ・ホランドのエレベが凄い

この新盤を聴いた時、「この人、幾つになったんだっけ」と思った。1946年10月、英国生まれなので今年で75歳になる。75歳と言えば、もはや「ジャズ・レジェンド」である。僕がジャズを聴き始めた1970年代後半には、ECMレーベルをメインに先鋭的なフリー・ジャズやコンテンポラリーな純ジャズを展開していた。なんだか、強面のベーシスト、というイメージが強かった。それは今でもその印象が強い。

Dave Holland『Another Land』。2019年9月10-11日、NYでの録音。つい先月のリリース。ちなみにパーソネルは、Dave Holland (b), Kevin Eubanks (g), Obed Calvaire (ds)。音が分厚い演奏であるが、なんとギター、ベース、ドラムのいわゆる「ギター・トリオ」である。リーダーのデイブ・ホランドは、アコースティック、エレクトリック、両方のベースをガンガンに弾きまくっている。

演奏は、全て非4ビートのいわゆる「コンテンポラリーな純ジャズ」。1970年代後半から1980年代前半の、ECMレーベルお得意の「ニュー・ジャズ」な雰囲気が満載。しっかりと切れ味の良いファンクネスが入っているところから、エレ・マイルスの延長線上にある「エレ・ジャズ・ファンク」な雰囲気も濃厚。ただ音作りはスマートでシンプルなので、ファンクネスが耳にもたれることは無い。
 

Another-land-1

 
さすが、リーダーのホランドのベースが凄い。アコースティック・ベースは、いつもの、ホランドならではの重力感と鋼性溢れる骨太なものだが、この盤では、とりわけ、エレクトリック・ベースの弾きっぷりが凄い。ソリッドで切れ味の良いエレクトリック・ベースは、その重力感がホランドならではのもの。他のエレベには、この丸く固まった様な鋼性溢れるエレベの重量感は無い。

ケヴィン・ユーバンクスのエレギも「ワン・アンド・オンリー」な弾きっぷりが素敵で、過去のジャズ・エレギ、例えば、マクラフリンやディメオラあたりを引用して良さそうなものだが、ユーバンクスはそれを絶対にやらない。それと、この新盤を聴いて思ったのは、ホランドのベースとの相性の良さ。ギター・トリオというシンプルな編成で、これだけの厚みをある音を出すのだから脱帽である。

ドラムのカルヴェールも、アイデア豊富でアグレッシブなドラミングが魅力的。ホランドのベースとユーバンクスのギターに押されていないところが立派。円熟の非4ビートのエレトリックな「コンテンポラリーな純ジャズ」。何となく1970年代後半から1980年代前半のニュー・ジャズの雰囲気が漂うが、決して音やビートは古くない。その辺りは、このギター・トリオは良く心得たもので、今の「聴く耳」を飽きさせないところはさすがである。
 
 
 

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2021年7月13日 (火曜日)

ラムゼイの異色フュージョン盤

ジャズ盤には、ジャズ盤紹介本を賑わす「歴史にその名を留める名盤」もあるが、逆にジャズ盤紹介本にその名が挙がることは少ないが、ジャズ者ベテランの方々を中心に愛聴される「小粋なジャズ盤」というのもある。

意外とこの「小粋なジャズ盤」って、隠れた人気盤だったりする。公に「この盤好きだ」というと、硬派なジャズ者としてちょっと差し障りのある「曰く付き」のリーダーだったり内容だったりするのだが、この「小粋なジャズ盤」って、とてもジャズとして「愛らしい」内容で、皆、密かに愛聴していたりする。

Ramsey Lewis『Love Notes』(写真左)。1977年の作品。ちなみにパーソネルは、Ramsey Lewis (key), Stevie Wonder (syn, key), Jimmy Bryant (key, vo, clarinet), Michael Davis (tp, vo), Rahmlee Michael Davis (horn), Terry Fryer (sun, key), Byron Gregory (g), Ron Harris (b), Keith Howard (ds), Zuri Raheem (vo), Derf Reklaw-Raheem (fl, perc, bongos, conga, el-p, as, vo)。
 

Love-notes

 
なんとこの盤、スティーヴィー・ワンダーが参加している。このアルバムのために2曲、書き下ろしをしていて、しかもレコーディングに参加している。この盤、このスティーヴィー・ワンダーをフィーチャーした、内容的にはジャズ・ファンク、若しくは、フュージョン・ラテン&ファンク。

冒頭のスティーヴィー書き下ろしの1曲「Spring High」が、この盤の象徴的な1曲。ラムゼイのピアノとスティーヴィーのシンセが上品に絡み合うテーマを聴くだけで、思わずウットリしてしまいます。もう1曲は「Love Notes」。スティーヴィー独特の極上のメロディーが素敵すぎる。このスティーヴィー書き下ろしの2曲で、この盤全体の雰囲気がグッと締まっています。

他の曲も良い曲ばかりで、どファンキーな曲あり、ラテンのリズムが素敵な曲あり、ラムゼイ・ルイスのクロスオーバーでファンクな音世界がてんこ盛り。それでもこの盤、意外とシュッとしていて、ジャズ・ファンク独特の下世話な粘りが希薄な分、どこかポップでエレガントな、極上のフュージョン・ファンクなアルバムに仕上がっています。
 
 
 
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2021年6月15日 (火曜日)

オルガン・ジャズの新しい融合

う〜ん、実に雰囲気のあるジャケットだなあ。タイポグラフィーも秀逸。まるで往年のブルーノート・レーベルのアルバムのよう。ジャズ者であれば、パッと見ただけで「ああ、これはジャズ盤のジャケやなあ」と思う。ジャケの文字をたどると「ジャズ・オルガン」がメインのアルバムだと判る。思わず「ジャケ買い」風にポチッである(笑)。

Delvon Lamarr Organ Trio『I Told You So』(写真左)。2021年1月のリリース。シアトルで活動するオルガン・ジャズ・ファンク・トリオの3枚目のアルバム。Delvon Lamarr (key), Jimmy James (gt), David McGraw (ds) の3人によって2015年にシアトルにて結成、ローカルシーンから全米に名を馳せていった実力派トリオのヴィンテージでポップなジャズ・ファンク。

全8曲、オルガン・ジャズを収録したインスト・アルバム。まず、グルーヴ感が半端ない。オルガン・ジャズは抑揚を付けるにはコツがあって、下手すると単調ポップで平凡な演奏になるのだが、この盤はそうはならない。アルバム全体がグルーヴの塊の様で、冒頭の「Hole In One」から、ラストの「I Don't Know」まで、ファンクネス滴る、こってこてのグルーヴ感が満載。
 

I-told-you-so

 
旧来のオルガン・ジャズを踏襲していない。基本はあくまで「オルガン・ジャズ」。しかし、リズム&ビートが今までに無い響き。フレーズやビートの展開にはヒップホップの要素を融合していて、独特の「ループ感」が漂っているところなど、今までの「オルガン・ジャズ」には無かった音の要素が耳に刺さって、ついつい引き込まれてしまう。

とにかく、オルガンがユニーク。伝統的なジャズ・オルガンの音なのですが、濁りが軽くて切れ味良く軽快、そして、反復が執拗なのと、ちょっと捻れたフレーズが癖になる。このオルガンは唯一無二。過去にこの音は無かった。エレギは、これも面白くて「こってこての従来のジャズ・ファンク」なギター。これが、ユニークなオルガンと絡んで、独特のグルーヴ感を生み出しているのだ。

オルガン・ジャズって、我が国ではあまり人気が無かった様に思う。オルガン・ジャズ独特のグルーヴ感が「俗っぽい」とされ、ちょっと横に置かれてきた様に思う。しかし、ジャズは「融合」の音楽である。この盤の様に「ヒップホップ」と融合して独特のグルーヴ感を生み出し、今までに無い新しい「オルガン・ジャズ」を創造する。いやはや、ジャズはまだまだ深化しているなあ、と思わず感心した次第。好盤です。
 
 
 
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