2020年10月 8日 (木曜日)

ジョシュアの最強カルテット盤

ジョシュア・レッドマンが好調である。1992年にメジャー・デビューして以来、コンスタントに、ほぼ1年に1作のペースでリーダー作を出し続けている。特にこの4〜5年は、ブラッド・メルドーやバッド・プラスと共同名義のアルバムを出したり、ネオ・ハードバップを掘り下げた、硬派でアーティスティックなメインストリームな純ジャズを展開したり、実に意欲的な活動を継続している。

Joshua Redman『RoundAgain』(写真)。今年7月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts, ss), Brad Mehldau (p), Christian McBride (b), Brian Blade (ds)。どこかで見たことのあるパーソネルだなあ、と思って資料を見たら、ジョシュアのリーダー作『Moodswing』のパーソネルがそのまま、26年振りに再集結したとのこと。なるほど納得。

さて、その内容であるが、モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏あり、アーシーでちょっとゴスペルチックでファンキーな演奏あり、コルトレーン・ライクなスピリチュアルな演奏あり、現代のネオ・ハードバップをより洗練し、より深化させた演奏内容となっている。モーダルな演奏なんて、出現して以来、50年以上が経過しているので、もはや手垢がついて、どこかで聴いたことのある展開に陥りそうなのだが、ジョシュアのフレーズは決してそうはならない。
  
 
Roundagain-redman  
 
 
冒頭の「Undertow」が、モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏で、ジョシュアの思索的なテナー・サックスが深みのあるフレーズを吹き上げている。特に低音が魅力的。続く2曲目の「Moe Honk」は、コルトレーン・ライクな疾走感溢れる、ややフリー気味な演奏。カルテットのメンバーそれぞれのテクニックが凄い。聴き込んでいるとあっと言う間に終わってしまうくらい、テンションの高い演奏。

3曲目の「Silly Little Love Song」は、アーシーでちょっとゴスペルチックでファンキーな演奏。素朴でフォーキーなメロディーが良い。米国ルーツ音楽的な響きが愛おしい。5曲目の「Floppy Diss」は、ブルージーでエネルギッシュな演奏ではあるが、どこか明るいユニークな演奏。この曲もメンバー4人のテクニックが凄まじい。特に、メルドー・マクブライド・ブレイドのリズム隊が凄い。

さすがにこれだけのメンバーが再集結しているのだ。今までのジャズの焼き直しにはならないし、過去の演奏スタイルをなぞることもしない。あくまで、現代の現時点でのメインストリームな純ジャズについて、これからの行く末を示唆する、含蓄に富んだ内容になっていると僕は思う。この盤を聴いて思う。まだまだジャズには、表現における「のりしろ」がまだまだあるなあ、と。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況》
 
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2020年2月 1日 (土曜日)

テナー・サックス+弦楽四重奏

ジャズは様々なジャンルの音楽と融合する。他のジャンルの音楽はある特定の音楽ジャンルと融合することはあっても、ジャズの様に複数の音楽ジャンルと何の違和感も無く融合する音楽ジャンルは他に無い。ジャズと他の音楽ジャンルとの融合の歴史を振り返ると、まず1950年代にジャズとクラシック音楽との融合の流行があった。ジャズの融合の歴史の中で、一番歴史があるのは「クラシックとの融合」であろう。

Joshua Redman & Brooklyn Rider『Sun on Sand』(写真左)。ちなみにパーソネルは、ジャズのカルテットとして、Joshua Redman (ts), Scott Colley (b), Satoshi Takeishi 武石 聡 (ds)。弦楽四重奏の名前は「Brooklyn Rider」。弦楽四重奏のメンバーとして、Colin Jacobsen, Johnny Gandelsman (violin), Nicholas Cords (viola), Eric Jacobsen (cello)。2015年4月29,30日,5月1日NYCのSear Sound録音。

パーソネルを見渡して、この盤、異色の企画盤になる。ジャズとクラシック(弦楽四重奏)が織りなす融合音楽。アルバム全体の雰囲気として、ジャズらしいノリ・スリルと現代クラシックらしい荘厳さとがバランスよく融和している。パトリック・ジマーリのアレンジが実に効いている。ストリングスの一糸乱れぬ精緻なアンサンブルをバックに、メインストリーム・ジャズな、即興&自由度の高いカルテット演奏が展開される。この「一糸乱れぬ精緻」と「即興&自由度の高い」の対比がこの盤の「肝」である。
 
 
Sun-on-sand  
 
 
ジョシュア・レッドマンのテナーについては、正統派で端正で品行方正。ジャズ・テナーのモデルにしても良い位の「品行方正」さで、メインストリーム・ジャズの中で演奏すると、余りの端正さが故に、余りに優等生的なテナーで、ちょっと面白く無い雰囲気が漂うことがある。逆に、今回の「ジャズとクラシック(弦楽四重奏)が織りなす融合音楽」の様に、異種格闘技風セッションにおいて、ジョシュアのテナーがその個性を最大限に発揮する傾向にある。

この盤でのジョシュアのテナー・サックスは良く鳴り、流麗にアドリブ・フレーズを吹き上げる。ジョシュアのテナー・サックスの一番良いところが、この盤で溢れている。この盤の一番の注目ポイントは、このジョシュアのテナーの伸び伸びとしたブロウ。このジョシュアの即興&自由度の高い「ジャズらしいサテナー」を、一糸乱れぬ精緻なアンサンブルで弦楽四重奏がガッチリと受け止めている。

とにかく、ジョシュアのテナーが良い意味で「目立つ」。そして、弦楽四重奏の演奏が「耳につかない」。というのも、弦楽四重奏が一糸乱れぬ精緻なアンサンブルでありながら、リズミカルなビートに乗せたジャジーなフレーズを連発しているのだ。そんなジャジーな弦楽四重奏のお陰で、ジョシュアのテナーの良いところが「目立つ」。この企画盤、実は、ジョシュアのテナー・サックスを愛でるのに最適なアルバムである。
 
 
 
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2019年4月 9日 (火曜日)

ジョシュアの個性を理解する

現代のジャズ。歴代のサックス奏者が長年受け継いできた系譜をしっかりと継ぐ者が何人かいる。その一人に「ジョシュア・レッドマン」がいる。1969年2月、米国はカリフォルニア州バークレー生まれ。スピリチュアル・ジャズを代表するサックス奏者、デューイ・レッドマンを父に持つ。
 
1991年にハーヴァード大学を卒業後、出場したセロニアス・モンク・コンペティションで優勝、ジャズ・シーンに身を投じることになる。以来、およそ四半世紀にわたってジャズ・シーンを牽引している。そんなジョシュア・レッドマンの初リーダー作、いわゆるデビュー盤を改めて聴いてみる。
 
『Joshua Redman』(写真左)。1992年の録音。ジョシュア・レッドマンの初リーダー作。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts), Kevin Hays (p), Christian McBride (b), Gregory Hutchinson (ds) がメイン。あと幾人かのゲスト・ミュージシャンが参加している。ベースのクリスチャン・マクブライドの参加がポイント。音全体の纏まりに大きく貢献している。
 
 
Joshua-redman-album  
 
 
当時 「テナー界に驚異の新人現る」 とされた一枚。収録曲を見渡すと、オリジナル曲はあるにはあるが、その他を聴けば、ブルース曲、モンク曲、モーダル曲、スタンダード曲等々、スローバラードあり、ファンクあり、バップあり、とごった煮の内容。なんでもござれの内容だが、どの演奏もクオリティ高く、新人のレベルとしては抜きんでている。ごった煮ではあるが、ジョシュアの優れたテクニックが故に、アルバム全体のトーンはブレることは無い。
 
ジョシュアのテナーのテクニックは素晴らしく、その高テクニックで演奏される楽曲のレベルは高く、ほぼ完璧な内容。これが新人のデビュー盤か、これが新人のテナーなのか、と思わずビックリしたことを覚えている。マクブライドのベースを牽引役にしたリズム・セクションの存在と演奏それぞれのアレンジとが、傍らでアルバムの統一感をしっかりと支えている。
 
ジョシュアのテナーの特徴は「キメのフレーズ」の格好良さ。アドリブ・フレーズが実に格好良く展開し、実に格好良く集結する。これって才能なんだ、と思う。ジョシュアのこのデビュー盤で、既にジョシュアのテナーの個性の全てを表現して、聴き手に聴かせた。これだけ全てをさらけ出して、次はどうするのかという不安すら覚えたデビュー盤。ジョシュアの個性を理解するにはまずこの盤を聴くこと。必須です。
 
 
 
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2010年12月23日 (木曜日)

気軽に気楽に聴けるジャズ

ジャズの聴き方には色々ある。スピーカーに面と向かって対峙して、真剣に耳を傾ける聴き方もあるし、本などを読みながら、ちょっとした家事をこなしながらの「ながら聴き」もある。最近では、iPodを活用し、インナーイヤー型ヘッドホンを活用して、電車の中でのジャズ鑑賞も可能になった。

ジャズのアルバムにも色々ある。しっかりと真剣に耳を傾けないといけない盤もあれば、ひょいと気軽に気楽に聴ける盤もある。演奏形態とかミュージシャンによって分けられるとかいう単純なものではなさそうで、どうもそれぞれの盤が持つ演奏の雰囲気が決め手となるみたいだ。

若手気鋭のテナー奏者Joshua Redman(ジョシュア・レッドマン)の『Wish』(写真左)というアルバムがある。1993年のリリース。若手気鋭のテナー奏者ジョシュアのアルバムである。純ジャズを追求した、さぞかしストイックでハードな内容なんだろうと構えてしまう。

何せ1曲目が、フリー・ジャズの創始者オーネット・コールマン作の「Turnaround」から始まる。それだけでも「構える」。パーソネルを見渡すと、Joshua Redman (ts), Charlie Haden (b), Billy Higgins (ds), Pat Metheny (g)。そうそうたるメンバーでは無いか。ヘイデン、ヒギンス、メセニーのリズムセクションが凄い。しかも「ピアノレス」である。メンバー構成を見ても「構える」。

で、聴いてみてどうか、というと、これが「聴き易い」。冒頭の「Turnaround」なぞ、オーネットの作なので、なんでいきなり1曲目にフリー・ジャズなハードな演奏を持ってくるかなあ、と沈鬱な思いで、CDのスタートボタンを押すと「あらまあ」(笑)。ジョシュアのテナーとメセニーのギターのユニゾンが躍動感を持ってスピーカーから飛び出してきて、これが中々印象的なフレーズを奏でていて、とっても聴き易い、躍動感のある名演になっている。

この「聴き易く、躍動感のある」演奏がアルバム全体に散りばめられている。結構、ストレート・アヘッドなジャズ演奏を繰り広げているんですが、この独特の「緩さ」というか「ラフさ」というか「気軽さ」はどこから来るのか。
 
 
Joshua_redman_wish
 
 
これ、きっと、ドラムのヒギンスにあると思うんですよね。ヒギンスのドラミングって、どこか「緩い」というか、どこか「すこんすこん」している。これがヒギンスのドラミングの魅力なんですが、これが良い意味での「緩さ」をこのアルバムに与えているように思う。

その「緩さ」をしっかりとヒギンス自身が「ズドン」というリズムのアクセントでグッと締め、加えて、ヘイデンのベースが演奏全体のビートをビシッと決める。このヒギンスとヘイデンのリズム・セクションがあればこそ、ジョシュアとメセニーがフロントを張って、インプロビゼーションに専念出来るってものだ。

そうそう主役のジョシュアのテナーは良い音出してます。若手気鋭のテナー奏者って、猫も杓子もコルトレーン風に吹きまくる人が多いのですが、このアルバムでのジョシュアは違います。気持ち良く唄う様に、歩きながらの鼻歌の様に、本当に気持ち良い音で、適度にテンションを張り、適度にリラックスした、聴き心地の良いブロウを繰り広げています。

そして、やはりパット・メセニーのギターは素晴らしいですね。メセニーはバックに回っても素晴らしいギターを聴かせてくれます。これだけ個性の強い音を出すギタリストだと、フロント楽器のバッキングは、なかなか辛いのでは、と思うのですが、流石にメセニーは違う。自らの個性の強いギターの音を活かして、フロントの演奏、ジョシュアのテナーをグッと惹き立てる。確かにバックでメセニーが弾いていることは判るのだが、決してジョシュアのテナーの邪魔はしない。ジョシュアが一人で吹いている時よりも、ジョシュアのテナーが惹き立っている。

良いアルバムです。僕にとって、気軽に気楽に聴けるジャズ盤の一枚です。1〜8曲目まではスタジオ録音で、落ち着いた演奏になっていますが、9〜10曲目はライブ録音で、熱気溢れる臨場感のある演奏になっています。この対比もなかなかの聴きどころ。僕にとってのヘビーローテーションな一枚です。
 
 
 
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2010年12月20日 (月曜日)

実にクールなジャズ・オルガン

ジャズ・オルガンと言えば、コテコテ・ファンキーな、粘っこく黒くジャジーな音色を思い浮かべる。

ジャズ・オルガンの巨匠ジミー・スミスを筆頭として、このコテコテ・ファンキーな、粘っこく黒くジャジーな音色は、正統なジャズ・オルガンの印。ベイビー・フェイス・ウィレット然り、フレディ・ローチ然り、ビッグ・ジョン・パットン然り、ロニー・スミス然り。現在の日本代表、敦賀明子も、粘っこく黒くは無いがこの系統。

しかし、この正統なジャズ・オルガンの印の真逆を行くジャズ・オルガニストがいる。サム・ヤエル(Sam Yahel・写真右)である。実にクールなジャズ・オルガンである。クールと言っても「格好良い」という意味でのクールでは無い。冷静な、静的な意味での、ホットの逆の意味での「クール」である。

サム・ヤエルのジャズ・オルガンは、決して、コテコテ・ファンキーでは無い。黒くジャジーではあるが、粘っこくは無い。サラリとスマートで、黒くジャジーではあるが、ファンキーさは「かなり希薄」。しかし、スピード感が溢れ、メリハリがばっちり効いている。ジャズ・オルガンの王道の真逆を行く、サム・ヤエルのオルガンである。

そのサム・ヤエルが、テナーのジョシュア・レッドマン(Joshua Redman)、ドラムのブライアン・ブレイド(Brian Blade)と組んだトリオがる。3人対等の立場のバンドだが、実質上のリーダーはサム・ヤエル。その3人が2002年に発表したアルバムが『yaya3』(写真左)。ちなみに「yaya3」は「ヤ・ヤ・キューブド」と読むとのこと。「キューブド(cubed)」は数字の3乗の意。サックス+ドラム+ハモンド・オルガンという、実にユニークな編成のトリオである。

このトリオの演奏が実に「クール」。ここでの「クール」は「格好良い」の意(ややこしいなあ)。このオルガン・トリオの演奏は、「クール」という言葉が実に相応しい演奏である。3者3様、実に「格好良い」。理屈はいらない。とにかく、音を聴いていると、演奏を聴いていると、「く〜かっこええなあ」という感じが心の底から沸き上がってくる。
 
  
Yaya3
 
     
サラリとスマートで、黒くジャジーではあるが、ファンキーさは「かなり希薄」。しかし、スピード感が溢れ、メリハリがばっちり効いている。ジャズ・オルガンの王道の真逆を行く、サム・ヤエルのオルガンは、伴奏に回ると、その真価を最大限に発揮する。

ジョシュア・レッドマンのテナーのバックで、ジョシュアのテナーとぶつかることなく、ジョシュアのテナーの音の合間、隙間を埋めつつ、ジョシュアのテナーのソロを浮き立たせていく。これが、とにかく絶妙なのだ。相性が良い、というのはこういうことを言うのだろう。

サックスとオルガンが互いに触発しながら、相互に影響しあいながら、それぞれの個性を発揮しつつ、実にクールなインタープレイを展開していく。実に柔軟で実に理知的なインタープレイにゾクゾクする。そんなゾクゾクするようなサックスとオルガンのインタープレイを、ブライアン・ブレイドの、これまた「格好良い」ドラミングが、ガッチリとサポートする。

ブライアン・ブレイドのドラミングも、ハイテクニックで手数が多いが、決して、サックスとオルガンのインタープレイを邪魔したりしない。それどころか、サックスとオルガンのインタープレイを煽り、励まし、盛り立てる。このブライアン・ブレイドのドラミングも、このアルバムの聴きどころ。

すっごくクールなトリオ・ジャズです。発売当時、偶然、CDショップで手にして以来、長年の愛聴盤です。ほとんど何も無いところからのインプロビゼーション中心の積み上げなので、演奏内容はかなり抽象的ですが、演奏の芯はシッカリ通っているので、決して飽きません。というか、聴き込めば聴き込むほど、その都度いろいろな発見があって、なんというか、スルメの様なアルバムですね。噛めば噛むほど味が出る(笑)。お後がよろしいようで・・・。
 
 
  
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