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2019年4月15日 (月曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・68

ハードバップ時代の終わり、成熟したハードバップという演奏フォーマットで、かなり渋い内容の演奏が埋もれている。特に、中堅どころの職人的ジャズマンのリーダー作に、渋い内容の成熟したハードバップ演奏が詰まっていたりする。そんなリーダー作を探し、ピックアップし、ジャズ喫茶でかける。ジャズを聴いていて良かった、と思う瞬間である。
 
Gigi Gryce『The Rat Race Blues』(写真左)。1960年6月7日の録音。Prestige RecordsのNew Jazz Label からのリリース。ちなみにパーソネルは、Gigi Gryce (as), Richard Williams (tp), Richard Wyands (p), Julian Euell (b), Mickey Roker (ds)。1960年という録音年から、次のハードバップ時代を担うだろうメンバーが集結している。
 
渋い内容の成熟したハードバップ演奏が詰まっている盤が結構転がっているレーベルが「Prestige RecordsのNew Jazz Label」。このジジ・グライスのリーダー作もそのレーベルからのリリース。いやはや、渋い渋い内容のジャズ演奏がズラリ。決して派手派手しくないし、テクニック的にも中庸を行くもの。しかし、出てくるインプロビゼーションは粋で渋い。ジャジーで味わい深いハードバップ。
 
 
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もともとジジ・グライスのアルト・サックスは渋い。決して大向こうを張るものでは無いし、ハッとするハイ・テクニックで驚かせるものでも無い。どちらかと言えば、リラックスした飄々としたライトなフレーズを吹きながら、ジャジーでファンキーなフレーズを織り込んでいく様な、聴けば聴くほどに味が出てくるような、スルメの様なアルト・サックス。
 
もう一人のフロント楽器、トランペットのリチャード・ウィリアムスが元気溌剌。ハイ・テクニックで歌心を込めつつ、トランペットの真鍮を輝くが如く震わせながら、ブリリアントに吹き上げる。グライスのアルトとは正反対の雰囲気の躍動感溢れる、圧倒的にポジティブなトランペット。グライスとウィリアムス、味わい深いフロント2管である。
 
それまでのハードバップの演奏の成果を踏まえた、味わい深い、小粋な展開に思わずニンマリする。成熟したハードバップだからこそ出来る、ジャズ職人達の素晴らしき「職人芸」。ジャズ喫茶の昼下がり、ノンビリした時間が流れる中、こういう盤の演奏が流れると、その小粋な演奏を、小粋な技を愛でるだけで、「至福の時」が味わえる。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年4月12日 (金曜日)

ロシア出身のジャズ・ピアニスト

欧州ジャズのことを熟々と考えていて、第一にイタリア、そして英国、ドイツのジャズ、最近ではイスラエル、そしてポーランドのジャズが流行になってきている、と書いたが、そうそうロシアを忘れていた、と思った。ロシア出身のジャズメンも実は沢山いるんですね。忘れてました。そうそう、ロシアって、欧州で元々ジャズが盛んな国のひとつでした。
 
Eugene Maslov『When I Need to Smile』(写真左)。 1999年のリリース。ちなみにパーソネルは、Eugene Maslov (p), Eddie Gomez (b), Omar Hakim (ds)。ユージン・マスロフ(Eugene Maslov)。ロシアのサンクトペテルブルク出身のジャズ・ピアニストである。バックにジャズ・ベーシストのレジェンド、エディ・ゴメスとポリリズミックなドラマー、オマー・ハキムが控えています。
 
ユージン・マスロフは1959年生まれ。今年で満60歳、還暦になるベテラン・ピアニスト。「ムソルグスキー音楽カレッジ」でクラシック・ピアノを学んでいる。が、後にジャズ・ピアノに転身。1989年には米国に移住。現在ではマサチューセッツ州ボストンを拠点に活動している、ということである。ロシア出身の米国在住のジャズ・ピアニストである。
 
 
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出てくる音は明確に欧州ジャズの音。バックにゴメス、ハキムという米国ジャズのベテラン・ジャズメンを起用しているにも拘わらず、出てくることは「欧州ジャズ」。つまり、マスロフのピアノが明らかに欧州ジャズの特質を多く保有しており、バックの米国ジャズの二人は、二人の持つ高テクニックを駆使して、欧州ジャズの雰囲気に忠実に追従しているからだ、と認識している。
 
耽美的で「クールな熱さ」が第一の個性。透明感とダイナミズムに溢れ、幽玄な音の広がりとクラシック仕込みの明確で硬質なタッチが「欧州ジャズ」の雰囲気を増幅する。紡ぎ出されるフレーズは流麗。演奏全体の雰囲気は「ネオ・ハードバップ」。クールな熱気溢れるジャズ・ピアノがバップ風に飛翔し、バップ調のアドリブ・フレーズを繰り出している。
 
マスロフのオリジナル曲はポジティブなバップ調で、聴いていて思わず活き活きとしてくる。スタンダード曲はそれぞれ、実にユニークなアレンジが施されており、ネオ・ハードバップのお手本の様な音世界が展開されている。「The Man I Love」から「Dindi」〜「Milestones」の流れには惚れ惚れします。好盤です。
 
 
 
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2019年4月 2日 (火曜日)

60年代末期ならではの純ジャズ

ニュー・ジャズを聴いていて、新しい響きのジャズを感じていると、その反動でジャズの本流、旧来の典型的なジャズと言われる「ハードバップ」が聴きたくなる。といって、1950年代のハードバップ時代ど真ん中にドップリと浸かるにはちょっと反動が過ぎる。ということで、ニュー・ジャズの雰囲気を少しだけ宿した、1960年代後半から1970年代のハードバップが良い。
 
Dexter Gordon『A Day in Copenhagen』(写真左)。1969年3月10日、デンマークはコペンハーゲンの「Metronome スタジオ」での録音。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Slide Hampton (tb), Dizzy Reece (tp), Kenny Drew (p), Niels-Henning Orsted Pedersen (b), Art Taylor (ds)。米英+北欧の混成セクステット。
 
デックスは1960年初頭に、ハンプトンは1968年に、ドリューは1961年に、テイラーは1963年に渡欧している。いわゆる米国東海岸のハードバップ・ミュージシャンの渡欧組で、4人ともコペンハーゲンを活動の拠点の1つにしていた。リースはジャマイカ出身で、1960年代の大半は米国東海岸で活動したが結果が伴わず、以前の活動拠点のパリに戻ったはずなのだが、たまたまコペンハーゲンに来ていたのかなあ。ペデルセンはデンマーク出身でコペンハーゲンが活動拠点。
 
 
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ベースのペデルセン以外、他の5人は米国東海岸の本場「ハードバップ」を体験してきた強者ども。ジャズを芸術と理解して、しっかりと聴いて評価してくれる欧州の地で、バリバリ魅力的なハードバップな演奏を展開している。時代は1960年代の末期、当時の先端のジャズのトレンドを踏まえつつ、1950年代のハードバップとは一味違う、欧州仕様のモーダルなハードバップな演奏を繰り広げている。
 
主役のデックスのテナーは全く変わらない。朗々と大らかで悠然としたブロウは「我が道を往く」雰囲気である。テナー、トロンボーン、トランペットのフロント3管のうち、ハンプトンのトロンボーンが良い味を出している。フレーズと音色が先進的で、ハンプトンのモーダルなトロンボーンの存在がこの盤をユニークな存在にしている。そして、全く欧州風のペデルセンの骨太ソリッドなアコベが効いている。ペデルセンのベースが鳴ると、欧州ジャズの雰囲気が一気に濃厚になる。
 
ジャケットは何故かサイケデリック調で「あんまりやなあ」と思うのですが、この盤、由緒正しきレーベルからのリリース。ジャケットのマークを見たら「MPSレーベル」のアルバムなんですね。欧州ハードバップの専門レーベル「MPS」。なかなかにユニークなメンバー編成で、1960年代末期ならではの「モーダルな純ジャズ」を記録してくれていたとは、MPSレーベルもなかなかやるなあ。
 
 
 
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2019年3月24日 (日曜日)

適度な泣きのマクリーンを聴く

1970年代以降のニュー・ジャズや現代のネオ・ハードバップやネオ・スピリチュアルなジャズを最近良く聴く。その演奏の創造性の高さや演奏テクニックの素晴らしさを愛でる訳だが、さすがに同じ傾向のジャズを聴き続けると耳が疲れる。そうするとふと聴きたくなるのがハードバップ。それも1950年代の「純正ハードバップ」な演奏にドップリ浸かりたくなる。
 
Jackie Mclean『A Long Drink of the Blues』(写真左)。1957年8月30日の録音 (#1-2)と同年2月15日の録音 (#3-5)とに分かれる。録音時期が違うので、当然、パーソネルを2つに分かれる。リーダーの Jackie Mclean (as, ts) は変わらないが、8月30日の録音は、Webster Young (tp), Curtis Fuller (tb), Gil Coggins (p), Paul Chambers (b), Louis Hayes (ds)、2月15日の演奏は、Mal Waldron (p), Arthur Phipps (b), Art Taylor (ds)。
 
こういうアルバム曲の編成って「プレスティッジ・レーベル」の仕業と睨んで間違い無い。LP時代のA面、1曲目と2曲目のタイトル曲「A Long Drink of the Blues」はマクリーンのオリジナル曲。1曲目は「false start(出だしの失敗)」で2曲目がやり直しテイクで、フロント3管のセクステット構成。マクリーンは珍しくテナーも吹いている。LP時代のB面、3曲目から5曲目についてはスタンダード曲で、マクリーンのアルト・サックスがフロント1管のカルテット構成。
 
  
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演奏の編成が異なる演奏が2種類、分かれているのだが、この盤については意外にそれが気にならない。というか気がつかない。マクリーンのアルト・サックスの音色と演奏が実に目立っていて印象的で、このマクリーンのアルト・サックスが、2種類に分かれる編成の演奏に「統一感」を持たせているのだ。確かに、マクリーンのアルト・サックスは個性的すぎるほど個性的。
 
クラシックではありえないであろう、ピッチが少しフラットした音色。フレーズのほぼ8割がピッチがフラットしているので、聴けば「これはマクリーン」と直ぐに判る。そんな超個性的なマクリーンのアルト・サックスを心ゆくまで愛でることの出来るアルバムの一枚がこの『A Long Drink of the Blues』である。適度にリラックスした雰囲気の中で、朗々とややピッチがずれたアルト・サックスで「鼻歌を唄うように」アドリブ・フレーズを繰り出していく。
 
特に3曲目から5曲目の3曲についてはいずれも有名なバラードで、情感がこもった適度な「泣き」のマクリーンの片鱗を聴くことが出来る。確かにマクリーンはバラード演奏が上手い。この「泣き」のマクリーンが堪らなく良いのだ。アルバム・ジャケットは「やっつけ風」で損をしているが、ハードバップ好きには堪らない内容だと思います。好盤です。


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2019年2月 6日 (水曜日)

フラーの初リーダー盤です。

ジャズの代表的な演奏スタイルは「ハードバップ」だろう。ジャズをあまり聴いたことが無い音楽好きの方々が「ジャズ」と聴いてイメージするのは、だいたいこの「ハードバップ」のスタイルのジャズである。そうそう、最近、飲食関係の店などで流れているジャズは、ほとんどがこの「ハードバップ」である。

ハードバップはとにかく判り易い。テーマ部があって、ここはバンド全体でユニゾン&ハーモニーなぞをかましながら、テーマの旋律を判り易く演奏し、その後、それぞれの個々の楽器のアドリブ部に突入。それぞれの楽器のアドリブは、その技と歌心を堪能するに必要な程度の長さで、1曲の演奏が大体5〜7分程度。長いときは10分を超えるものもある。

Curtis Fuller『New Trombone』(写真左)。1957年5月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Curtis Fuller (tb), Sonny Red (as), Hank Jones (p), Doug Watkins (b), Louis Hayes (ds)。ジャズ・トロンボーンの名手、カーティス・フラーの初リーダー作になる。構成は、フラーとレッドのアルトの2管フロントにピアノ・トリオのリズム・セクションが加わる、オーソドックスなクインテット構成。
 

New_trombone  

 
カーティス・フラーのほのぼのとした優しさを感じさせるトロンボーンが、さすが初リーダー作、溌剌として若々しい。そこに鋭角な切れ味良いレッドのアルト・サックスが絡む。丸いトロンボーンと鋭角なアルト・サックスのコントラストが決まっている。アレンジも良好で、このユニゾン&ハーモニーには、ハードバップの良い香りがプンプンしている。

バックのリズム・セクションをメインを担っている、ハンク・ジョーンズのピアノが端正で小粋で良い。ハードバップの良心とも言うべき、堅実で明快なタッチ、ほのかにファンクネス漂う正統派なジャズ・ピアノ。ダグ・ワトキンスのベースも骨太で端正。派手さは無いが堅実さに秀でている。そして、ルイス・ヘイズは明らかにハードバップなドラミングを披露してくれる。

ハードバップの教科書の様な内容が詰まった、とっても魅力的な盤である。これが、である。ジャズ盤紹介本にあまりそのタイトルが挙がることがないのだから困る。あろうことか、カーティス・フラーの代表盤に名を連ねることが少ないのだから更に困る。このカーティス・フラーの初リーダー作、ハードバップの雰囲気を堪能出来る好盤として、ジャズ者初心者からベテランまで広くお勧めです。

 
 

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2019年1月25日 (金曜日)

ゴルソンのテナーとアレンジ

誰が書いたのか「ベニー・ゴルソンのテナーはヘタだ」。僕がまだジャズ者初心者駆け出しの頃である。Art Blakey & The Jazz Messengers『Moanin』で、ゴルソンの茫洋としたテナーを聴いていて、これが「下手なテナー」と勘違いした。よって、ゴルソンのリーダー作は長い間、敬遠し続けた。勿体ない話である。

ゴルソンのテナーは下手では無い。それを体感したのは『ターミナル』という映画でのこと。ラストでジャズの演奏シーンが出てくるのだが、ここでテナーを吹いていたのが、ベニー・ゴルソン。確かにテクニック溢れるものでは無く、ちょっと茫洋な響きだが、力感溢れる骨太なテナーを吹いていて、そのアドリブ・フレーズはなかなかのもの。ゴルソンのテナーって良いな、と思った。

それからである。ゴルソンのリーダー作に手を伸ばし始めたのは。ゴルソンはもう一つ、優れた技術を持っている。「アレンジ技術」である。彼のアレンジは、そのユニゾン&ハーモニーの響きと音の重ね方に独特の個性があって、「ゴルソン・ハーモニー」と呼ばれている。ジャジーでファンキーで哀愁溢れる響きを宿した「ゴルソン・ハーモニー」も聴きどころである。
 

The_modern_touch

 
Benny Golson『The Modern Touch』(写真左)。1957年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Benny Golson (ts), Kenny Dorham (tp), J. J. Johnson (tb), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Max Roach (ds)。ゴルソンのテナーを愛でるに相応しい盤である。ゴルソン・ハーモニーを引き立てる「ラウンドなエッジで芯がしっかり入ったホンワカ流麗な音」が得意のトランペッターとトロンボーンを選んでいる。

この盤では、ケニー・ドーハムのトランペットの個性がかなり良く判る。ラウンドなエッジでホンワカ流麗なフレーズ。しかも、この盤では珍しく力感溢れブリリアント。これだけ煌びやかな音で吹き上げるドーハムのトランペットは他ではなかなか聴けない。それとテクニックは、ですね「ちょっと危ない」。たまにミストーンがあって「オヨヨ」となるのだが、決定的な破綻には至らない。何とか持ちこたえて、適度に緩やかなでユルユル丸いフレーズを連発する。明らかにドーハムのトランペットである。

それぞれのメンバーの演奏を聴かせることを第一にしている様で、この盤での「ゴルソン・ハーモニー」は控えめ。それでも「ゴルソン・ハーモニー」の特徴である、ジャジーでファンキーで哀愁溢れる響きを宿した音は、この盤のそこかしこに聴くことが出来る。アレンジャー、リーダー、テナー奏者と、ゴルソンの実力がフルに発揮された好盤です。
 
 
 

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2019年1月24日 (木曜日)

オリバー・ネルソンのテナーって

オリバー・ネルソン(Oliver Nelson)は中堅のテナー奏者である。しかし、アレンジャーの面ばかりが取り立たされる、ある意味「気の毒な」ジャズメンである。ジャズ盤紹介本に挙がるアルバムは『The Blues and the Abstract Truth』(邦題『ブルースの真実』)ばかり。テナー奏者の側面に着目したアルバム紹介にお目にかかったことが無い。

オリバー・ネルソンって、自らのリーダー作だけでも、コンボからジャズオケまで、30枚以上のアルバムをリリースしている。米国では一流のテナー奏者扱いである。しかし、我が国ではオリバー・ネルソンと言えば、ジャズを良く知っている人手さえ、ああ、あの『ブルースの真実』のアレンジャーね、で終わり。テナー奏者のアルバムは、と問えば、大体が「知らんなあ」。あの『ブルースの真実』でも良いテナー吹いているのにねえ。

で、オリバー・ネルソンのテナー奏者の側面に着目したアルバムを選んでみる。まずはこれでしょう。『Meet Oliver Nelson』(写真左)。オリバー・ネルソンの初リーダー作である。1959年10月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Oliver Nelson (ts), Kenny Dorham (tp), Ray Bryant (p), Wendell Marshall (b), Art Taylor (ds)。フロント2管のクインテット構成。
 

Meet_oliver_nelson

 
さすが初リーダー作、ネルソンのテナーが堪能出来る。素直で力感程良く、ファンクネスが適度に漂う、とても趣味の良い正統派テナー。テクニックはそこそこなんだが、濃すぎず薄すぎず、それでいてしっかりと芯の入ったフレーズを連発する。聴き易いテナーで、ネルソンのメロディックな自作曲にピッタリのテナー。というか、自分のテナーの魅力を最大限に聴かせてくれる自作曲ですね。

レイ・ブライアントのピアノ、ウェンデル・マーシャルのベースにアート・テイラーのドラムスによる、これまた適度にファンクネス漂うリズム・セクションも秀逸。それと、この盤でのケニー・ドーハムが意外と溌剌とブリリアントなトランペットを聴かせてくれています。時代は1959年、ファンキー・ハードバップな演奏がとても魅力的です。

アルバムに収録された演奏それぞれのアレンジは、明らかに「ネルソン流のアレンジ」。後に有名となる『ブルースの真実』に出てくるネルソン流のアレンジの個性や癖が、この初リーダー作にも既に漂っています。思わずニンマリしてしまいますねえ。ファンキー・ハードバップな演奏良し、ネルソン流のアレンジ良し、オリバー・ネルソンのテナーを堪能出来る好盤です。

 
 

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2019年1月22日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・108

今日は「ジャズの日」。JAZZの「JA」が「January(1月)」の先頭2文字であり「ZZ」が「22」に似ていることから、1月22日は「ジャズの日」。東京都内の老舗ジャズクラブ「バードランド」「サテンドール」「オールオブミークラブ」のオーナーらによって立ち上げられた「JAZZ DAY実行委員会」が制定した記念日だそうです。

そんな「ジャズの日」の話題。ジャズ喫茶で流すと面白い盤って、結構あるんですよね。ジャズ喫茶で流すと、ジャズ喫茶が色めくというか、ざわつくというか「何だ何だ、この盤は何なんだ」とお客の皆さんが色めく盤。お客のリクエストに応えるのもいいんですが、たまにこういう「お客が色めく盤」を投下するのも、ジャズ喫茶の面白さ。

この盤をかけると、決まってお客が色めく気がするんですよね。僕もこの盤を聴いた時は色めきました。冒頭の曲を聴きながら、まず感じたのが「この盤の演奏ってハードバップ。音のちょっと古い感じから1950年代前半から中盤の音かな」。そして、イントロからのピアノの音を聴いて、これは大好きなピアニストのひとり「ホレス・シルバー」。ここまでは判る。
 

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トランペットはテクニック確かでブリリアント、溌剌とした健康的な音色。テナーもちょっと大人しめだが、力強さがあって滑らかな音。1950年代前半から半ばのピアノがシルバーなら「6 Pieces of Silver」を思い浮かべて、トランペットはドナルド・バード、テナーはハンク・モブレーと当たりを付ける。しかし、である。1950年代前半から中盤のシルバーのリーダー作にこんな演奏曲あったっけ。

「何だ何だ、この盤は何なんだ」となる(笑)。Horace Silver『Silver's Blue』(写真)。「この盤」の正体である。1956年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (pi), Donald Byrd (tp, tracks 1, 4, 6 & 7), Joe Gordon (tp, tracks 2, 3 & 5), Hank Mobley (ts), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds, tracks 1, 4, 6 & 7), Kenny Clarke (ds, tracks 2, 3 & 5)。

トランペットとドラムが二人ずついる。これが聴いていて実に紛らわしい(笑)。盤全般に渡って、発展途上ではあるが良質のハードバップがここにあります。この盤、シルバーのピアノの個性が音の基本。ファンキーでブルージーなピアノは聴いていて「ああ、シルバーやなあ」と思わず、溜息が出ます。ノリが良くグルービーなタッチは「やっぱ良いですねえ」。
 
 
 
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2019年1月21日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・138

ジョニー・グリフィン(Johnny Griffin)は「玄人好み」のテナー・サックス奏者。小柄ながら豪快且つスピード感あふれる演奏をすることから「リトルジャイアント」と呼ばれている。音は大きくテクニックは一流、シャープでスケールの大きい歌心溢れるフレーズを吹き上げる。基本のスタイルは「ハードバップ」。

これだけの個性豊かで正統派なテナーであれば、人気は高いと思われるのだが、何故か日本では人気はイマイチ。グリフィンがニューヨークに出てきた当時(1956年頃)、NYのテナー・サックス界は、若手有望株として、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンが覇を争っていた訳だが、そこに、グリフィンが参入して、当時の評価としては、グリフィン一番、ロリンズ二番、コルトレーン三番の序列。

日本では、このコルトレーン対ロリンズの対決図式で、テナー・サックスの世界が語られることが多かったんで、NYではこの2人より評価の高かったグリフィンが全く日本では無視された格好になった上に、1960年代以降は、グリフィンは欧州に移住しちゃったんで、日本に余計に情報が入ってこなくなって、まったくマイナーな扱いになったんでしょうね。
 

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Johnny Griffin Quartet『Night Lady』(写真)。1964年2月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Griffin (ts), Francy Boland (p), Jimmy Woode (b), Kenny Clarke (ds)。ドイツ(ケルン)での録音。1963年以降、欧州に移住したので、この盤は欧州に移住の1年後の録音になります。グリフィンが、クラーク=ボラン・ビッグ・バンドの中核としてバリバリに活動していた頃のワンホーン作。

この盤はグリフィンのテナーを心ゆくまで堪能出来る好盤である。特にスタンダード曲のグリフィンが魅力的。「Summertime」「Little Man You've Had A Busy Day」「All the Things You Are」のグリフィンのテナーから溢れ出る歌心が聴きもの。速いフレーズもゆったりとしたフレーズも分け隔て無く歌心が溢れ出る。その確かなテクニックと相まって、思わず耳を傾け惹き込まれてしまう。他の3曲も内容は濃く、特にグリフィンのテナーのテクニックの素晴らしさに耳を奪われる。

欧州の移住してからのジョニー・グリフィンのリーダー作には好盤が多い。米国での諸作より欧州での方が、グリフィンの個性と特徴がよても良く表現されていて、良質なジャズ・テナーが体感出来る。その一枚がこの『Night Lady』。録音も良く、是非とも、ジャズ者中堅からベテランの方々に耳を傾けて頂きたいですね。

 
 
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2019年1月18日 (金曜日)

西海岸のビッグバンドな好盤

米国西海岸ジャズの特徴のひとつは「優れたアレンジ」。ジャズを鑑賞音楽として捉えて、勢い任せの一過性の即興演奏では無く、しっかりとアレンジを施して、良質の鑑賞音楽としてのジャズを世に供給する。これが、1950年代、米国西海岸ジャズの大きな特徴である。事実、優れたアレンジが施された好盤が米国西海岸ジャズには沢山ある。

『Theme Music from "The James Dean Story"』(写真)。「Featuring Chet Baker & Bud Shank」がサブ・タイトルに付く。1956年11月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (tp), Bud Shank (as, fl), Don Fagerquist, Ray Linn (tp), Milt Bernhart (tb), Charlie Mariano, Richie Steward (as), Bill Holman, Richie Kamuca (ts), Pepper Adams (bs), Claude Williamson (p), Monty Budwig (b), Mel Lewis (ds), Mike Pacheco (bongos)。

チェットのトランペットとシャンクのアルトの2管をメインに、トランペットとテナーとアルトが2本ずつ、トロンボーン、バリサクが1本ずつ。バックにピアノ・トリオがリズムセクションに就く。総勢13名の小ぶりなビッグ・バンド構成。この13名が、米国西海岸ジャズの最大の特徴の1つである優れたアレンジを施して、ディーンの伝記映画に使用された音楽をお洒落なジャズに仕立て上げたもの。
 

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まず、フィーチャリングされている、チェットのトランペットとシャンクのアルト・サックスがさすがに素晴らしい。優れたアレンジに乗って、流麗かつ力感溢れるクリアな音で即興演奏を繰り広げている。とにかく上手い。結構、難しいアドリブ展開をしているんだが、事も無げに流麗に吹き上げていくので聴き易いことこの上無い。良い意味で、耳に優しい、耳当たりの良いジャズである。

バックに耳を向けると、クロード・ウィリアムソンの哀愁感漂うピアノが印象的。ジェームス・ディーンは1955年9月30日に亡くなっているので、この盤の録音時には、まだまだディーンに対する追悼の意が強くあったと思うが、この盤でのウィリアムソンのピアノには哀愁が強く漂う。これが意外とジャジーで良い雰囲気なのだ。

そして、バックの管のアンサンブルの中で、突出した音を奏でるペッパー・アダムスのバリサク。このブリッゴリッとしたバリサクの音は、流麗なチェットのトランペットとシャンクのアルトとは全く正反対の音で、この音の対比が優れたアレンジと合わせて相乗効果を生んで、演奏全体のジャズ感を増幅している。優れたアレンジと合わせて、米国西海岸ジャズでのビッグバンドの好盤としてお勧めの一枚です。

 
 
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