2020年9月26日 (土曜日)

米国西海岸ジャズの小粋な好盤

米国西海岸ジャズ、いわゆるウエストコースト・ジャズって、一聴したら直ぐ判る。聴かれることを十分に意識したアレンジとパフォーマンス。しっかりと計算された演奏で、ジャム・セッションから突如、生まれ出でた様な「偶発的」な要素はほとんど無い。とにかく端正で正確。破綻したり脱線することは無い。

東海岸ジャズと正反対の西海岸ジャズ。悪く言えば、どの演奏もアレンジャーが同じであれば、同じ雰囲気の似たり寄ったりのアルバムになってしまう。そういう弱点を回避する為に、楽器編成に「捻り」を入れたり、採用する楽曲をスタンダード曲では無く、自作曲をメインに据えたり、結構、色々と工夫している。

Terry Gibbs『A Jazz Band Ball』(写真左)。1957年9月、Hollywood での録音。ちなみにパーソネルは、Terry Gibbs (vib, marimba), Larry Bunker, Victor Feldman (vib, xylophone), Lou Levy (p), Max Bennett (b), Mel Lewis (ds) 。この盤はとても珍しい楽器編成をしている。リーダーのテリー・ギブスはヴァイブ奏者だが、ギブス以外に二人のヴァイブ奏者が参加している。曲によってマリンバやシロフォンが使われていて、これがまた音色的に面白い。
 
 
A-jazz-band-ball-terry-gibbs
 
 
管楽器については同種楽器の組合せは珍しくないが、その他の楽器については珍しいだろう。しかし、この盤はテリー・ギブス、ヴィクター・フェルドマン、ラリー・バンカーというヴァイヴ奏者3人の競演となっている。さすがにプロのヴァイブ奏者である。ユニゾン&ハーモニーに、ソロ・パフォーマンスに、三者三様の個性を十分に発揮して、聴いていてとても楽しい内容になっている。

また、バックのリズム・セクションも充実したラインナップ。ルー・レヴィのピアノ、マックス・ベネットのベース、メル・ルイスのドラムス。いずれも西海岸ジャズでの一流どころ。管楽器と比べて、音の線が細いヴァイブのソロを、損なうこと無く、しっかりとサポートする、その技倆は素晴らしい。こういうところが「西海岸ジャズ」らしいところ。

ファンクネスはほぼ感じられない、パッキパキに固くスイングするギブスの流麗なヴァイブ。これも「西海岸ジャズ」らしい。モード・レーベル独特の「線画イラスト」を使ったジャケットもお洒落。聴き心地良く、その演奏力も高く、そしてアレンジも小粋。米国西海岸ジャズの良いところを集約した様な「お洒落な」好盤である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況》
 
 
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2020年9月20日 (日曜日)

バートンとブレイのデュオ盤です

面白いアルバムを再発掘した。ヴァイブのヴァーチュオーゾ、ゲイリー・バートン(写真右)のリーダー作を整理していたら、こんなデュオ盤が出てきた。ゲイリー・バートンとピアノ奏者とのデュオと言えば、相当に有名なのが、チック・コリアとのデュオ。コリア&バートンのデュオ盤には外れが無い。素晴らしい内容ばかりのデュオ盤の嵐なのだが、このデュオ盤の相手はチックでは無い。

Gary Burton『Right Time Right Place』(写真左)。1990年3月29日、Copenhagenの Denmarks Radio「Studio 3」での録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Paul Bley (p)。ヴァイブのヴァーチュオーゾ、ゲイリー・バートンとピアノの哲学者(と僕が勝手に付けた)ポール・ブレイとのデュオ盤である。

両名ともECMレーベルに在籍していたり、バートンは、比較的頻繁にカーラ・ブレイの作品を演奏しており、ポール・ブレイはカーラの夫という間柄でもある。この二人、以前にもデュオ盤を録音してそうなものだが、この盤が初めて。恐らく、ゲイリー・バートンとのデュオをやるピアニストとしては、チック・コリア、という強烈な先入観があったからでは、と思っている。
 
 
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という背景もあって、この盤を聴いていると、どうしても「チック&バートン」とのデュオと比較してしまう。が、比較は意味が無いことが直ぐに判る。さすがはゲイリー・バートン、ポール・ブレイに対しては、ポール・ブレイのピアノの個性と音色に応じたヴァイブを繰り出している。チックの時とは全く異なるヴァイブの音色。デュオ演奏の醍醐味である。

面白いのはピアノ側(ブレイもチックも)は、その個性とスタイルをほとんど変えていない、ということ。バートンのヴァイブがデュオ相手のピアノの個性と音色に応じて、その個性と音色にあったヴァイブを奏でる、という展開。それでいて、バートンのヴァイブの個性と音色は全く損なわれておらず、しっかりとバートンのヴァイブの個性と音色が全面に押し出されているところが、これまた凄い。

穏やかで透明感のあるデュオ演奏が繰り広げられているが、その演奏のテンションは高く、相互のインタープレイは丁々発止として見事な反応。ライナーノーツには、欧州で偶然顔を合わせたので、せっかくだから急遽録音したそうだが、それで、この高度な内容、見事なパフォーマンス。いやはや、レジェンド級のジャズマンはやることが違う。次元が違う。
 
 
 

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2020年8月25日 (火曜日)

現代音楽テイストなECMジャズ

そのレーベルの名は「ECM(Edition of Contemporary Music)」。創立者はマンフレート・アイヒャー。演奏家としての素養と録音技術の経験を基に、自らが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問うべく、自らのレーベルを1969年に立ち上げる。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」。

Tom van der Geld & Children At Play『Patience』(写真左)。1977年5月の Tonstudioでの録音。ECMの1113番。ちなみにパーソネルは、Tom Van Der Geld (vib, perc), Roger Jannotta (fl, oboe, b-cl, ss, bs), Bill Elgart (ds, perc), Kent Carter (b)。ボストン出身のジャズ・ヴィブラフォン奏者Tom Van Der Geldの初リーダー作。

この盤に詰まっている音は、実にECMレーベルらしい。聴けば即興演奏なのは判る。ヴァイヴと管だけが目立つようだが、パーカッションとベースもしっかり参入した高度なインタープレイが素晴らしい。しかし、スインギーなリズム&ビートは存在しない。時々スインギーなビートも供給されるが、基本的には現代音楽風の打楽器の無調のパフォーマンス。これがジャズか、と問われれば、狭義の意味では「ジャズでは無い」。
 
 
Patience  
 
 
しかし、即興演奏という切り口とリズム&ビートの存在、使用楽器の類似性を勘案すると、これは「ジャズである」。この現代音楽のテイストがしっかり入った即興演奏は、その録音の個性と独特の深いエコーと相まって、これが「ECMの考える欧州ジャズ」の好例と言える。この盤の音世界は他のレーベルでは大凡聴けることは無い。ECMレーベルだからこそ「ジャズ」として成立するのだ。ECMの総帥、アイヒャーのプロデュースの成せる技だろう。

この盤でのECMレーベルならではの「ニュー・ジャズ」の音世界。高度なテクニックに裏打ちされた、レベルの高いインタープレイが展開される。時に幽玄に、時にアブストラクトに、時にクールに、とても自由度の高い、スピリチュアルなジャズが展開される。しかも、音の響きが、音のアンサンブルが印象的で、即興演奏のメロディーを楽しむ事が出来る。

これも「ジャズ」。別に絶対に体験することが必要とは言わないが、これも「ジャズ」。朝の喧噪が落ち着いた午前中の一時、昼食が終わって一息ついた午後の一時。人気の少ないジャズ喫茶で流すと、なんとも言えず、味わい深い音世界が耳に広がります。録音も素晴らしい。エンジニアはECMに数多くの名録音を残している「Martin Weiland」である。
 
 
 

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  ・太田裕美『Feelin’ Summer』



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2020年8月13日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・133

酷暑である。午前中でも外を歩くのが憚られる暑さ。午後などは、外を歩くなんてとんでもない。ジリジリと肌を焼くような陽射しとムッとするような湿気。数分外に出るだけで、着ている服やズボンがモワーッと生暖かくなるのだから、酷い暑さだ。こんな酷暑の日にはエアコンは欠かせない。今日もエアコンの効いた部屋の中に引きこもってジャズを聴いている。

J.J.Johnson & Milt Jackson『A Date In New York』(写真左)。1954年の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), J. J. Johnson (tb), Al Cohn (ts), Henri Renaud (p), Percy Heath (b), Charlie Smith (ds)。トロンボーンの名手J.J.ジョンソンとヴァイブの名手ミルト・ジャクソンの双頭リーダー盤。ピアノに仏のピアニスト、アンリ・ルノーが参加している。

不思議なパーソネル構成のアルバム。何故、フランスのジャズ・ピアニスト、アンリ・ルノー(写真右)がこのコッテコテな米国東海岸ハードバッパーの中に入っているのか不思議だった。調べてみたら、アンリ・ルノーが単身NYに渡ってきて、当時最先端のビバップを演奏する若手ミュージシャンとセッションした、とのこと。なるほど。
 
 
A-date-in-new-york  
 
 
ということならば、まず仏出身のアンリ・ルノーのピアノに着目したい訳だが、何だか、J.J.ジョンソンとミルト・ジャクソンの2人がやけに元気で、ソロ演奏についても前に前に出てくる。特にJ.J.ジョンソンのトロンボーンが元気溌剌で、いつもはビバップよろしく短時間ソロをバシッと決めるJ.J.が、こんなにハードバップな長く印象的なソロを取る人だったけ、と改めてビックリ。

故に、仏からわざわざ渡米してきたアンリ・ルノーが目立ってこない。それでも、この目立ちたがり屋の米国ジャズマンのバックで、端正で明確なタッチの伴奏ピアノを聴かせてくれる。ソロも端正、癖が無くややクラシックっぽい、破綻の無い無難なソロ。それでも一生懸命ソロを弾いている感じがビンビンに伝わってくる。

まあ、そりゃそうで、ジャズの本場、米国はNYでの、当時最先端をいく一流ジャズマン達とセッションする訳だから、気合いも入るし緊張もするよな。それでも、演奏全体の雰囲気は、仏出身のピアニスト、アンリ・ルノーも健闘していて、「スイング感良好な良質なハードバップ」に仕上がっている。昼下がりのジャズ喫茶でノンビリ聴きたい。
 
 
 

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2020年8月 9日 (日曜日)

酷暑の夏に「ライトなジャズ」

遅い梅雨明け以降、かなり暑い日が続いている。朝から陽の当たる場所は既に30度越えの真夏日。湿度も高くて蒸し蒸しして、もう朝9時くらいにはエアコンのお世話になっている。今年は久し振りの冷夏かも、なんて予報もあったがとんでもない。今年の暑さ、去年一昨年より厳しい様な気がする。

これだけ蒸し暑いと、まずエアコンの無い部屋で音楽を聴くなんてとんでもない。聴くとしたって耳当たりの良い、刺激の少ないソフト・ロックやAORがせいぜい。エアコンを入れて、外の喧噪をシャットダウンして、やっとこさ、ジャズを聴こう、と思い立つ。それでも、ハードで硬派な純ジャズは辛い。ましてやフリー・ジャズなど論外。耳当たりの良い、イージーリスニング志向のジャズやボサノバ・ジャズに手が伸びる。

Cal Tjader『Sounds Out Burt Bacharach』(写真左)。1968年の録音。ちなみにパーソネルは、Cal Tjader (vib), Mike Melvoin (org), Marvin Stamm (flh), Garnett Brown (tb), Harvey Newmark (el-b), James Helms (g), Jim Keltner (ds), George Berg, Joseph Grinaldi (Bassoon), Ray Alonge (French Horn), Lew Del Gatto (Oboe), George Marge, Jerome Richardson, Jerry Dodgion, Walter Kane (reeds), Albert Wagner, Henri Aubert (vln)。
 
 
Sounds-out-burt-bacharach  
 
 
ジャズ・オーケストラをバックに従え、キーボードはピアノではなくオルガンを採用、ギターも入れて、ベースはエレベ。パーソネルを見るだけで、これは1960年代後半のイージーリスニング志向のライト・ジャズでは無いかと思う。聴けばズバリ。しかし、演奏されるそれぞれの曲がこれまた良い曲ばかりで、それもそのはず、この盤、タイトルからも判る様に、カル・ジェイダーによるバカラック作品のカヴァー集である。

カル・ジェイダーは、米国西海岸はサンフランシスコ出身の彼は、クール聴かせる西海岸ジャズにラテンのリズムを融合させ、ポップでソウルなジャズを展開、この盤についても、どこかラテン風のフレーズが見え隠れしつつ、そこはかとなくソウルフルでファンキーなライト・ジャズである。プロデューサーはGary McFarland。アレンジはマクファーランド含め3名が分担して担当しているが、どの曲のアレンジも優秀。聴いていて爽やかである。

バカラック作品のカヴァー集なので、楽曲自体がしっかりしている分、優れたアレンジと相まって、クールで上質なイージーリスニング志向のライトなジャズに仕上がっている。とにかく肩肘張らずに心地良く聴きながせるのが良い。この季節にピッタリの企画盤です。
 
 
 

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2020年7月27日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・179

キャノンボール・アダレイは強烈なファンクネス漂うアルト・サックスを吹く。ミルト・ジャクソンは流れる様なファンクネス溢れるヴァイブを弾く。このファンクネスの申し子の様な二人。強烈なファンクネスの持ち主同士なので、基本的には共演をすることは無い。ファンクネスが強すぎて、アルバム全体のバランスが崩れるのだ。しかし、一枚だけ共演盤を残している。

Cannonball Adderley with Milt Jackson『Things Are Getting Better』(写真左)。1958年10月28日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Milt Jackson (vib), Wynton Kelly (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。リヴァーサイド・レーベルからのリリース。担当プロデューサーはオリン・キープニュース(Orrin Keepnews)。

強烈なファンクネスの持ち主同士の共演。どうまとめるのか、この盤を聴く前まで興味津々だった。が、さすが、プロデューサーを担当したキープニュース。そして、キャノンボールとミルトの二人。キャノンボールのファンクネスを「動」、ミルトのファンクネスを「静」と役割分担して、ファンクネス満点のハードバップ・ジャズを展開している。躍動感溢れるキャノンボールのアルト・サックス、クールでブルージーなミルト・ジャクソンのヴァイブ。
 
 
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バックのリズム・セクションも小粋な人選。キープニュースの慧眼には感服する。ウィントン・ケリーは健康優良児的なファンキー・ピアノ、パーシー・ヒースはオールマイティーなベーシスト。ファンキー・ベースもお手のもの。そして、ドラムのアート・ブレイキーはファンキー・ジャズの生みの親の一人。このクールでファンキーなリズム・セクションが、フロントのファンクネス溢れるフロント管とヴァイブを引き立てる。

選曲を見れば判るが、キャノンボールのオリジナルとスタンダード曲のミックス。この盤、あくまでキャノンボールの「動」のファンクネスを前面に押し出したアルバムではあるが、サポート側に回ったミルト・ジャクソンのクールで流麗でアーバンなヴァイブが実に見事。ミルトのヴァイブがキャノンボールのアルト・サックスを強烈に引き立てている。ぴったり填まったキープニュースのプロデュース。この強烈なファンクネスの持ち主同士の共演、見事、成功裡に終わっている。

「動」のキャノンボール、「静」のミルト・ジャクソン、この盤の演奏のダイナミック・レンジは広い。この盤はヘッドフォンやイヤホンで聴くのでは無く、しっかりとしたステレオ・セットでそこそこの音量で聴いて欲しい。躍動感溢れ、クールでアーバンなファンキー・ジャズを、爽やかに浴びるように感じることが出来る。内容十分なファンキー・ジャズ。好盤です。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.07.19 更新。

  ・『Black Rose』 1976

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.07.19 更新。

  ・Led Zeppelinの「西部開拓史」

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.07.19 更新。

  ・太田裕美『十二月の旅人』


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2020年7月14日 (火曜日)

久し振りのタイガー大越です。

ネットの音楽系サブスク・サイトを徘徊していて、懐かしい名前を見つけて喜んでいる。「タイガー大越」。1981年にメジャー・デビュー。フュージョン・ジャズの大ブーム後期に、ちょっと遅れて出てきた印象があった。でも、デビュー盤の『Tiger's Baku』は、良質のフュージョン・ジャズ盤で、当時、結構ヘビロテだった。
 
Gary Burton『Times Square』(写真)。1978年1月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Steve Swallow (b), Roy Haynes (ds), Tiger Okoshi (tp)。バートンのリーダー作については、ホーンが参入した盤は珍しい。この盤については、師匠格のヴァイブ奏者、ゲイリー・バートンがレギュラー・メンバーに抜擢して、日本人トランペッター、タイガー大越がレコーディング・デビューしている。

1983年以降、タイガー大越の名前を見なくなったが、この10年ほど前から、バークリー音楽院で教鞭を執っている話から、彼の情報が再び入る様になった。タイガー大越は、1950年芦屋生まれ。バークリー音楽院に進み、首席で卒業している。ゲイリー・バートンは、タイガー大越のバークリー音楽院時代の先生だったわけですね。

この盤のリーダー、ゲイリー・バートンは1970年代初めより、バークリー音楽大学で教鞭を取っており、このタイガー大越をはじめ、パット・メセニー、エバーハルト・ウェーバー、ラルフ・タウナー、小曽根真 等、有望な新人を数多く世に紹介している。
 
 
Times-square   
 
   
ゲイリー・バートンのリーダー作としては、珍しくトランペットが入ったコンボでの演奏なので、何故が耳新しく響く。トランペットならでは、の音の流れ、吹きやすいフレーズがあって、それに合わせて、タイガー大越のトランペットを引き立たせる様なバートンのヴァイブのフレーズが耳新しく響くのだろう。それにしても、バートンのフロントのトランペットに対するサポートは見事。さすが、タイガー大越の「お師匠様」である。
 
そのタイガー大越のトランペットも見事である。柔らかくて暖かい音。テクニックは優秀だが、それをひけらかすことは無い。嫌味の無い「流麗さ」。フレディ・ハバードを温和に柔らかにした様な感じ。日本人トランペッターであるが故、ファンクネスは希薄。アドリブ・フレーズは、どこまでも「メロディアス」。当時、ありそうで無い、個性的なトランペットである。
 
ベースのスワローは、バートンの片腕みたいな存在で、曲毎に適正な「リズム&ビート」を供給する。そして、バートンにとっては珍しい客演、ドラマーのロイ・ヘインズがご機嫌なドラミングを披露している。
 
良質のメインストリーム系のジャズ演奏に思わずニンマリ。とりわけバートンのヴァイブが絶品。優れた教え子をフロントに迎えてのリーダー・セッションである。気合いが入っていたんだろうなあ。この盤の「バートン先生」のパフォーマンスには脱帽です。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・『You’re Only Lonely』 1979

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・太田裕美『手作りの画集』

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2020年5月20日 (水曜日)

無名の盤だがソウルフルな好盤

ジャズ盤の数は相当数に上る。レジェンド級になれば、リーダー作の数だけでもかなりの数になる。しかも、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌に挙がる盤のタイトルはその「ごく一部」。ネットの時代になって、ジャズ盤の情報が入手し易くなった訳だが、今まで紹介されなかった盤が「ごまん」とあることに気がついた。

この今までジャズ紹介本などで紹介されたことの無い盤を聴くのが意外と楽しい。紹介されていない盤については、紹介されていないのだから内容の無い盤だろう、とするのは間違いで、まずは自分の耳で聴いてみることが大切になる。自分の耳で聴いてみて、その盤が意外と内容のある盤だと感じる。そして、なぜその盤は今まで紹介されなかったのかなあ、と思ったりする。

Milt Jackson『Soul Route』(写真)。1983年12月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Gene Harris (ac-p, el-p), Ray Brown (b), Mickey Roker (ds)。

リーダーは、ヴァイブのミルト・ジャクソン、バックのリズム・セクションは、ジーン・ハリスのピアノをメインに、ベースにジャズ・ベースの巨人の一人、レイ・ブラウン、ドラムには、職人ミッキー・ローカー。皆、ハードバップ時代から第一線で活躍してきたベテラン・ジャズマンである。
 
 
Soul-route  
 
 
パブロ・レーベルからのリリース。もともと、パブロ盤については、我が国ではあまり評価されていない様で、名盤紹介などに挙がったケースは少ない。よってこの盤もジャズ盤紹介本などで、まず見たことが無い。

しかし、である。この盤、一言で言うと「ブルージーで、スインギーで、ソウルフルな純ジャズ」。1980年代前半、フュージョン・ジャズを経験して、ソフト&メロウな雰囲気もあり、純ジャズの良いところであるスイング感、ソウル・ジャズの流れを汲む、小粋なグルーヴ感。リラックスして聴ける、ファンキーな純ジャズの好盤である。

特にジーン・ハリスのエレピがソウルフル。この電気ピアノの存在が我が国では受けないのかなあ。でも、このハリスのエレピのソウルフルなグルーヴ感に乗って、爽やかにファンキーなミルトのヴァイブが乱舞する。そして、そのフロントの演奏をレイのベースとローカーのドラムが、これまたファンキーに骨太に鼓舞する。

ベテラン・ジャズメンで固めた、レトロな雰囲気のする盤であるが、どうして、1980年代前半の、良い雰囲気のコンテンポラリーな純ジャズな音が詰まっていて、お勧めの好盤である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.05.11更新。

  ・『Another Page』 1983

 ★ まだまだロックキッズ       2020.04.19更新。

  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年4月16日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・165

コロナウィルスに関する緊急事態宣言の下、基本的に「引きこもり」の毎日が続いている。一昨日は北風が強くて外出できず、今日はヒンヤリしていて外出出来ない。最近は、ジャズのアルバム・ライブラリーの整理と更新、そして、ジャズ盤紹介本の読み直しをしつつの、まだ聴いたことのない「隠れ好盤」の発掘作業が楽しい。

かなりの数のジャズ盤紹介本が書庫にストックされていて、昔のジャズ盤紹介本を読み返すと「こんな盤、あったんや」とビックリすることもしばしば。ジャズ盤の評価については、評価者の「音に対する志向」が結構影響するので、1冊で済ますと危険だ。僕は最低3種類の異なった選定基準の紹介本を読み返すことにしている。

Milt Jackson『Ain't But a Few of Us Left』(写真)。1981年11月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Grady Tate (ds)。プロデューサーは、Norman Granz。パブロ・レーベルからのリリースになる。僕はこの盤を最近まで全く知らなかった。どのジャズ盤紹介本にも無い。大した盤や無いのかな、と期待せずに聴いてみた。
 
 
Aint-but-a-few-of-us-left  
 
 
これが、である。なかなかの「好内容」なのだ。まあ、パーソネルを見れば、これはこれは、実に渋い、玄人好みのメンバーが集結している。逆に先進的なジャズが好きな方々から見ると、なんだまた「懐古趣味のハードバップでしょ」ということになるのだが、かなりハイ・レベルの、かなり硬派なハードバップが展開されているのだから無視出来ない。

恐らく、メンバー全員が精神面、体調面ともども好調だったのだろう。この録音面子だとお互いが良く知った仲なので「手慣れた」お決まりのハードバップをササッとやって終わり、って感じになりがちなんだが、この盤ではそうはなっていない。それぞれのメンバーが当時の年齢でのベストに近いプレイを披露している。6曲中5曲がスタンダード曲なんだが、全く「手慣れた」感が無い。

それどころか、適度な緊張感が漲っていて、緩んだところが全く無い。他のセッションでは前面に出て目立つ傾向の強い、ピアノのピーターソンも、ベースのブラウンも趣味良く、リラックスした演奏を聴かせていて、決して変に目立ったりはしない。テイトのドラムの妙技にも耳を奪われる。良い意味で「仲の良い、手慣れた演奏」の数々。この盤は、まだ聴いたことのない「隠れ好盤」。いやはや、今回の「発掘」には大満足です。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

【更新しました】2020.03.29
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2020年4月12日 (日曜日)

テオ・ヒルという中堅ピアニスト

ジャズの新盤のチェックは楽しい。新盤の情報については、ジャズ雑誌の新盤コーナーの記事、そして、サブスク音楽サイトの「New Music」の情報欄から入手する。昨日の様に、レジェンド級のベテランの新盤もあれば、若手有望株の新盤もある。コンスタントに内容のある盤をリリースし続ける中堅の新盤もある。ジャズ雑誌やサブスク音楽サイトの新盤情報は、事前に内容の良し悪しをチェックしてくれているので、基本的に間違いが無いのが嬉しい。

Theo Hill『Reality Check』(写真左)。2020年1月、Posi-Tone レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Theo Hill (p), Joel Ross (vib), Rashaan Carter (b), Mark Whitfield Jr. (ds)。2014年にSmalls Liveからデビュー作をリリースしたNYのピアニスト、テオ・ヒルの最新作。テオ・ヒルは、1982年生まれで今年38歳。中堅に差し掛かった、先行き有望なジャズ・ピアニストの一人。

この新盤では、ブルーノートから昨年、鮮烈デビューしたシカゴ生まれ、現在はNYブルックリンをベースに活動している若き天才ヴァイブ奏者ジョエル・ロスをフィーチャーしたカルテット編成となっている。ピアノとヴァイブのソロの取り分は同じくらい。ヴァイブをフィーチャーというよりは、ヴァイブを入れて、ピアノ・トリオの演奏にアクセントを付け、ユニークな色づけがなされているように思う。
 

Reality-check-theo-hill

 
選曲については、先行き有望なジャズマンらしく、自身のオリジナルが全10曲中7曲を占める。ヒルのオリジナル曲はフレーズも聴きやすく印象的。独りよがりなところは全く無い。残りの3曲は、デビッド・バークマン、マルグリュー・ミラー、スティービー・ワンダーのナンバーを収録。この残りの3曲の選曲もユニーク。新進気鋭なヒルの心意気を感じる。

オリジナル曲については、自前の曲ゆえ、当然のことながら、モーダルな演奏トレンドを基本に、自由度の高い、極上の「ネオ・ハードバップ」な演奏を展開、ヒルのピアノをメインとしたピアノ・トリオの演奏能力の高さを見せつけてくれる。ヒルのピアノはクリアで明確で硬質なタッチで耽美的で流麗なフレーズが個性。ファンクネスは殆ど感じ無い。NY生まれながら、ピアノのタッチと雰囲気は「欧州ジャズ」に近い。

このヒルのピアノが、同じくクリアで明確で硬質な音質のロスのヴァイブと相性バッチリで、ユニゾン&ハーモニーなどは、ピアノとヴァイブ、瓜二つの双子の様な響きで、濁りが全く無くて爽快。ヒルのピアノトリオに対して、ロスのヴァイブが違和感無く、溶け込んでいる。現代の「ネオ・ハードバップ」な演奏として、内容の濃い新盤である。この「Theo Hill(テオ・ヒル)」という中堅ピアニストの名前は覚えておいた方が良い。
 
 
 

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