2023年3月18日 (土曜日)

「和製のヴァイブの新人」出現

我が国のジャズ・シーンにおいても、コンスタントに有望新人が出ている。何時頃からか、そう、21世紀に入って、2002年、ピアニスト山中千尋が初リーダー作を出した頃から、一気に将来有望な新人がどんどん出てきた。商業主義が反映されたボーカルを除けば、どの楽器でも、出てきた新人の多くは、今でも中堅として活躍している。

吉野智子(Tomoko Yoshino) Quartet『Kaleidoscope』(写真左)。2023年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、吉野智子 (vib), 雨宮彩葉 (p). 鉄井孝司 (b), 小田桐和寛 (ds)。パーソネルを見渡して、リーダーの吉野智子を含め、僕にとっては初見のメンバーばかり。特に、リーダー吉野の担当楽器は「ヴィブラフォン」。

吉野智子。東京都出身。10歳よりマリンバ、国立音楽大学に進学し、本格的に打楽器全般を演奏し始める。在学中、第13回JILA音楽コンクールマリンバ部門第1位を獲得。同大学ビッグバンド・サークルに所属しヴィブラフォンを担当、第40.41回山野ビッグバンドコンテストにて最優秀賞受賞。ジャズヴァイブ・作曲を赤松敏弘に師事。

アマチュア・ビッグバンド所属のヴァイブ担当が独立して、プロのヴァイビストになった訳で、確かに、吉野のヴァイブは素姓が良い。
 

Tomoko-yoshino-quartetkaleidoscope

 
音の個性としては、ファンクネスは皆無。硬質で透明度の高い音で、ヴァイブの音の質としては、4本マレット奏法を駆使している面も含めて「ゲイリー・バートン」に通じるものがある。音がバートンよりも暖かい感じなので、いわゆる「温和なバートン」という雰囲気。

ヴァイブのパフォーマンス自体は申し分無い。テクニックも優秀、弾き回しは流麗。アドリブ展開のスピード感も十分、速いパッセージは切れ味良く、スローなフレーズは歌心十分。初リーダー作とは思えない、完成度の高いヴァイブである。全9曲中、7曲が自作曲で、これがまた出来が良い。作曲の才能にも注目したい。

演奏全体の雰囲気は、モード奏法がメインの「ネオ・ハードバップ」。特にモーダルな展開は、過去の成果を踏まえながら、現代ジャズの響きを湛えていて立派。即興演奏のフレーズには淀みが無く、ポジティブな響きで清々しい。特にスタンダード曲の「I Hear a Rhapsody」では、アレンジが従来のジャズには無いユニークなもので、アレンジ能力も良さも垣間見える。チャレンジ精神も旺盛。

初デビュー作としては申し分の無い出来。吉野のヴァイブの個性も良く判るし、コンポーズ&アレンジの才能も注目に値する。特に、ジャズ演奏の絶滅危惧種の1つである「ヴィブラフォン」を担当する、将来有望な新人の出現である。次作についても、しっかりと見守っていきたい。
 
 

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2022年12月 6日 (火曜日)

ヴィクター・フェルドマンの到着

ジャズには「ジャケ買い」という言葉がある。ジャケットのデザインが優れているアルバムは、押し並べて良好な内容のアルバムである、という経験則からの言い回しなんだが、確かにこれが、ジャズに限っては当たることが多い。

特に、ジャケットのデザインに全く無頓着なジャズ・レーベルにおいても、これが当たるから面白い。ジャズ名盤のジャケットは、確かに優れたものが大多数である。

但し、逆もある。もともとジャズ・レーベルは、ブルーノートを除いて、ジャケットにはあまり感心が無いようなんだが、「これは一体どうしたんだ」とビックリする様な、劣悪なデザイン、ふざけたデザインがたまに出てくる。

こういう問題のあるジャケットの場合、LP時代は特に、レコード屋でカウンターに持って行くのが憚られた。店員がジャズに明るい場合は良いのだが、その逆の場合、カウンターに持って行った当方の感性が疑われる(笑)。

Victor Feldman『The Arrival of Victor Feldman』(写真左)。1958年1月21, 22日、ロサンゼルスでの録音。ちなみにパーソネルは、Victor Feldman (vib, p), Scott LaFaro (b), Stan Levey (ds)。リーダーのフェルドマンがヴァイブとピアノを担当、伝説の早逝ベーシスト、スコット・ラファロの参加が目を引く。ドラムには、ウエストコースト・ジャズの職人ドラマー、スタン・レヴィーが控えている。

ジャケットが「ふざけたデザイン」(笑)。フェルドマンは英国ロンドン出身。1955年にロニー・スコットの強い勧めもあって、米国に移住。1957年にはロサンゼルスに定住。そして、その翌年早々に、この米国での初リーダー作『The Arrival of Victor Feldman』を録音している。
 

The-arrival-of-victor-feldman

 
このタイトル、直訳すると「ヴィクター・フェルドマンの到着」。つまり、英国から米国西海岸にフェルドマンがやって来たぞ、という意味だろう。しかし、フェルドマン(ラファロもレヴィーも同様だ)も良く、このパロディー風のジャケ写の撮影に付き合ったもんだ。

しかし、アルバムの内容はまずまず良好。ウエストコースト・ジャズの範疇での録音だと思うが、英国ジャズのフェルドマン、東海岸がメインのラファロの志向が前面に出ているのか、ウエストコースト・ジャズの範疇でありながら、ウエストコースト・ジャズ特有の「聴かせるアレンジ」「アーティスティックなアレンジ」の形跡はほどんど無い。

といって、東海岸特有の丁々発止としたインタープレイでも無い。趣味良く流麗で小粋なハードバップな演奏が小気味良い。この盤の聴きものはやはり、フェルドマンの洒脱なヴァイブとシンプルで軽快なピアノが良い。クールで乾いたヴァイブ&ピアノの音を聴けば、やはりこの盤は、ウエストコースト・ジャズの範疇の録音なんやなあ、と感心する。

以前から、この盤は、ラファロのベースが凄い凄い、と評判だが、ブンブン唸るベース音が、フェルドマンのシンプルで軽快な流麗なヴァイブ&ピアノと対照的で、逆にフェルドマンのクールで乾いたヴァイブ&ピアノの音が前面に出てくるから面白い。ラファロは我関せずとマイペースに弾きまくってはいるんだが、こういう効果も見越して、フェルドマンはベースにラファロを調達したんだろう。

スタン・レヴィーのドラム。彼の叩き出す、正確でスインギーなリズム&ビートが、フェルドマンのヴァイブ&ピアノと、ラファロの重低音ベースとのバランスを上手く取っている。フェルドマンはリーダーとして、上手くベースとドラムの選定をしているなあ、つくづく感心する。

ヴァイブ&ピアノにベースとドラム。変則な編成ではあるが、なかなか内容の良いトリオ盤。スタンダード曲を中心に、フェルドマンのシンプルで軽快な流麗なヴァイブ&ピアノが良い雰囲気です。 
 
 

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2022年7月12日 (火曜日)

楽しいチック・トリビュート盤

2021年2月9日、チック・コリアは永眠した。79歳であった。それから、既に1年5ヶ月が経過しった。チックがあの世に旅立ったことが、今でも信じられず、まだ、元気にピアノを弾いている様な気がしてならない。今年2月9日の一周忌に合わせて、チック・コリア・トリビュート盤がリリースされているのを見ると、やっぱり、チックはあの世に旅立ったんやな、としみじみしてしまう。

Steve Gadd & Mika Stoltzman『Spirit of Chick Corea』(写真左)。今年6月のリリース。スティーヴ・ガッドのプロデュース。日本のマリンバ奏者、ミカ・ストルツマン(吉田ミカ)がチックゆかりのジャズマン達と制作した、チック・コリア・トリビュート盤である。参加ミュージシャンは、Richard Stoltzman (cl), Mika Stoltzman (mrmb), Eddie Gómez (b), Gayle Moran (vo) 等々、チックゆかりのジャズマン達。録音エンジニアは、チックが絶大なる信頼を寄せ、ともに音楽世界をつくってきたバーニー・カーシュ。

収録曲も実に良いチョイス。今や、チック作のネオ・スタンダード曲と言える「Spain」「Armando's Rhumba」「Crystal Silence」、それから、チックがミカの為に作曲した「Marika Groove」、ジョン・パティトゥッチが書き下ろした「Chick's Groove」など、チック作の有名曲、そして、チックゆかりの曲が収録されていて、チック者の僕達からすると、聴いていてとても楽しい。
 

Steve-gadd-mika-stoltzmanspirit-of-chick

 
実は、僕はマリンバ奏者、ミカ・ストルツマン(吉田ミカ)を全く知らなかった。Wikipediaを見ると、チック・コリアをはじめ、スティーヴ・ガッドやエディ・ゴメスと共演歴があるんですね。知りませんでした。

マリンバは木製鍵盤打楽器。ヴァイブが鉄製鍵盤打楽器。違いはあるが、マリンバの音、そして、チック・コリアとくれば、どうしても「ゲイリー・バートン」を想起してしまうので、この盤での木製ならではの「軽くて乾いた」マリンバの音と弾き回しの雰囲気については、ちょっと違和感が残る。やはり、チックの曲には「クリスタルで硬質な」ヴァイブの音と弾き回しの雰囲気が合う。

ただ、チックの曲は流麗なフレーズを持つ曲が多いので、マリンバの流れる様な弾き回しについては、イメージがピッタリ。チックの曲のフレーズの流麗さが引き立つこのアルバムは聴き心地については問題無い。ただ、バリバリ丁々発止とした、メインストリームでコンテンポラリーな即興演奏が展開される訳では無いので、そのところはちょっと物足りなさは残る。

チックの名曲の個性と流麗なフレーズを愛でるに、聴いて楽しい「チック・コリア・トリビュート」盤である。
 
 

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2022年6月13日 (月曜日)

1970年代のギブス盤に感心する

テリー・ギブス(Terry Gibbs)は、米国のジャズ・ヴァイブ奏者。1924年生まれなので、今年で98歳。まだ存命中。いわゆる「伝説」のヴァイブ奏者である。久し振りに、テリー・ギブスのリーダー作をサブスク・サイトで目にして、思わず、即「ジャケ聴き」である。

ヴァイブのスタイルはライオネル・ハンプトンに代表される「オールド・スタイル」。旋律楽器=フロント楽器として、両手を使った単音の旋律弾きがメイン。後のジャズ・ヴァイブの代表格、ミルト・ジャクソン、ゲイリー・バートンとは、基本的に奏法が異なる「シンプル」なもの。

Terry Gibbs Dream Sextet『4am』(写真左)。1978年7月30日、米国カリフォルニア州の「Lord Chumley's」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Terry Gibbs (vib), Bob Cooper (ts), Conte Candoli (tp), Lou Levy (p), Bob Magnusson (b), Jimmie Smith (ds)。フュージョン華やかりし頃の、米国西海岸での「純ジャズ」ライヴの記録である。

この ”ドリーム” セクステットは、当時の米国西海岸ジャズの一流どころを招聘していて、とても充実している。ライヴの記録を聴いてみて、米国西海岸ジャズの良き時代の音が、このライヴ盤で再現されている。
 

Terry-gibbs-dream-sextet_4am

 
しかも、このライヴ盤に収録されている曲は全てギブスの自作曲で占められている。1970年代後半のライヴなので、古き良き時代の「ジャズ・スタンダード曲」ばかりが演奏された方が、聴衆ウケが良いのではと思うのだが、そうでは無い。ライヴ盤から伝わってくる聴衆の様子が意外にも「盛り上がっている」のだ。

この「ギブスのオリジナル曲で占められている」ところに、フュージョン華やかりし時代でも、メインストリームな純ジャズは生き残っていたんやなあ、懐メロに成り下がっていなかったんやなあ、と妙に感心する。

ギブスの曲はどれもが非常にメロディックで叙情的。また、ギブスの曲は、演奏する側に立つと、コードの変更が演奏していてとても楽しいらしく、このライヴ盤でも、ギブスをはじめ、他のフロント管のメンバーが実にリラックスして楽しげに演奏している様子が伝わってくる。とても「往年の純ジャズ」らしいジャズがこのライヴ盤の中で、魅力的に演奏されている。

全く、一般に知られていないライヴ盤だと思うが、聴けば、内容的には、とても「往年の純ジャズ」らしいジャズが展開されていて、聴いていてとても楽しい。1970年代後半、米国西海岸で、こんなメインストリームな純ジャズが息づいていたなんて、ちょっと感動した。良い内容のライヴ盤だと思います。
 
 

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2022年4月16日 (土曜日)

日だまりのようなジャズです。

ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)は、メインストリーム志向のジャズ・ヴィブラフォン(ヴァイブ)の第一人者。伝説のカルテット、Modern Jazz Quartet(MJQ)のメンバー。しかし、1974年、ミルトが退団したいと申し出たのが発端で解散。理由は22年間、MJQで地道に音楽活動を続け、それなりの評価を得て来たにも拘わらず、新進のロック・ミュージシャンに較べ報酬が少ないことが不満だったから、とか。

が、解散後、ミルト・ジャクソンはロック・ミュージシャンに転身した訳ではない。逆に、純ジャズ志向のミルト・ジャクソンは、クリード・テイラーが設立したクロスオーバー&フュージョン・ジャズがメインのジャズ・レーベルの下で、解散前の1970年代前半に4枚のリーダー盤をリリースしている。その最初の一枚がこの盤。

Milt Jackson『SunFlower』(写真左)。1972年12月12, 13日の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Freddie Hubbard (tp, flh), Herbie Hancock (p), Jay Berliner (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds), Ralph MacDonald (perc)。このパーソネルに、ストリングス・オーケストラが加わる。アレンジは Don Sebesky (arr, cond)。

錚々たる面子による、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズだが、ミルト・ジャクソンのヴァイブが全面的にフィーチャーされている。ミルト・ジャクソンのヴァイブの個性がしっかり押し出されている。マイルドで優しいヴァイブの音色。途方も無く素晴らしい演奏テクニック。ブルージー&ジャジーな、そして、グルーヴ感溢れるパフォーマンス。
 

Sunflower_milt-jackson

 
そんなミルト・ジャクソンのパフォーマンスを聴いていて、「日だまりのようなジャズ」をイメージした。ホンワカして柔らかで、それでいて、芯がしっかり通っていて優しくて心地良い。ストリングス・オーケストラとエレピで優しく包んだ、どこか切なくなるような柔らかいミルトのヴァイブ。

そんな「日だまりのようなジャズ」は、1970年代、クロスオーバー&フュージョン・ジャズを牽引し、後のスムース・ジャズの源を作った、CTIレーベルのアルバムに多く聴くことが出来る。1950年代のハード・バップの様に熱くは無い。1960年代のファンキー・ジャズの様にノリノリでは無い。フリー・ジャズやアヴァンギャルド・ジャズの様に激しくない。聴いていて柔らかく心地良い、ソフト&メロウなモダン・ジャズ。

バックは決して甘きに流れない、一本芯の入った、玄人好みのバッキング。超一流のバックの面々。彼らの演奏テクニックが、甘きに流れてしまいそうな、イージーリスニングに陥りそうなソフト&メロウなジャズを、しっかりと、メインストリーム志向のモダン・ジャズに留めている。

聴き入っていると、ついつい、まどろんでしまいそうな儚さ。ほんわかして柔らかで、それでいて、芯がしっかり通っていて、優しくて心地良い、甘美で官能的な響き。1970年代ジャズの成果である、フュージョン・ジャズの音世界のひとつがここにある。
 
 

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2022年4月 7日 (木曜日)

最近出会った小粋なジャズ盤・6

ゲイリー・バートンの音楽が好きである。1960年代後半のサイケデリックなジャズも良いし、クロスオーバーなバートンも良い。1970年代以降のニュー・ジャズなバートンも良い。チックとのデュエットなどは至高の音だ。ゲイリー・バートンの参加作品はできる限り全部聴くことにしている。今でも、たまに「こんなバートン盤ってあったっけ」という盤に出くわすことがある。

このジャケットを見た時は、1960年代後半のクロスオーバー・ジャズ時代のゲイリー・バートンのアルバムかと思った。逆に、こなアルバムあったっけ、という疑問が頭をよぎる。ジャケットを見ると、メンバーの名前が印刷されているが、どう考えても1960年代後半の面子では無い。とにかく聴いてみることにした。

Gary Burton『Cool Nights』(写真左)。1991年のリリース。GRPレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Will Lee (b, perc), Peter Erskine (ds, perc), Wolfgang Muthspiel (g), Bob James (key), Bob Berg (ts)。錚々たるメンバーである。この面子から、フュージョン・ジャズ指向の盤だと察しが付く。
 

Cool-nights_gary-burton

 
GRPレコードのロゴがジャケットに無いジャケ写を見たので、1960年代後半のクロスオーバー・ジャズ時代のゲイリー・バートンのアルバムと勘違いしたが、この面子を見れば、これは1980年代後半以降のフュージョン・ジャズ指向の音作りだ、と思いつつ聴くと、やはり、上質のフュージョン・ジャズの音が満載。いずれも百戦錬磨の強者ばかりなので、詳細は割愛するが、とにかく上手い。但し、決して上手いだけでは無い。

しっかりとそれぞれの個性をそこはかとなく出しつつ、バートンのヴァイブとフレーズにあったバッキングをガッチリとやってのける。ベースのリー、キーボードのジェームス、ギターのムースピールなど、少し聴けば直ぐに判る強烈な個性を持ちながら、バートンのバッキングでは、バートンのヴァイブを引き立て、鼓舞する役割に徹している。ううん、これは真の「職人技」やなあ。

純ジャズっぽい8ビートを叩き出すアースキンのドラムが肝。この盤の音を「コンテンポラリーな純ジャズ志向」のフュージョン・ジャズな音に仕立て上げている。決して、ソフト&メロウなフュージョンの音ではない。意外と硬派で純ジャズ志向の演奏は聴いていて爽快。アーバンなグルーヴ感や趣味の良いブルージーな感覚も見え隠れして、聴き応え十分。1990年代のフュージョン・ジャズの優秀盤として、フュージョン者の方々は必聴でしょう。
 
 

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2022年3月19日 (土曜日)

ベイシーのジャム・セッション盤

何故だか判らないのだが、パブロ・レーベルのカタログを見渡していると、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのライヴ音源が結構あって、それも、1975年と1977年に集中している。何かモントルー・ジャズ・フェスとパブロ・レーベルの間に、ライヴ・レコーディングの専属契約でもあったのだろうか。どのライヴ盤も充実した内容で、録音状態もとても良いばかりである。

このライヴ盤を聴かない手は無い。それぞれのライヴ盤の内容を見ても、パーソネルはそれぞれ、ベテラン〜中堅の一流ジャズマンで固められ、モントルー・ジャズ・フェスという伝統的な、由緒正しきジャズ・フェスでのライブ演奏なので、内容的にも、伝統的なスイング〜ハードバップな演奏がメインで、それぞれが充実したものばかり。

『Count Basie Jam Session At the Montreux Jazz Festival 1975』(写真)。1975年7月19日、スイスはモントルーのジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Count Basie (p), Roy Eldridge (tp), Johnny Griffin (ts), Milt Jackson (vib), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Louis Bellson (ds)。伝説のジャズバンドの総帥、カウント・ベイシーがピアノを担当、エルトリッジのトランペットとグリフィンのテナー、ミルトのヴァイブがフロントを張るセクステット編成(6重奏団)。
 

Count-basie-jam-session-at-the-montreux-

 
1975年時点での、このパーソネルを見れば、このライヴ演奏には絶対に触手が伸びる。ベイシーがビッグバンドを離れて「ピアニスト」として参加、スイング時代からの人気トランペットである、エルトリッジがフロントを担当、同じくスイング時代からの人気ドラマー、ルイ・ベルソンがドラムを担当していること、そして、このスイング時代からの人気ベテラン・ジャズメン達が、ハードバップの中核を担うメンバーと合流して、思いっ切りハードバップなジャム・セッションを繰り広げているのだ。

メンバー全員ノリノリのジャムセッションが繰り広げられる。収録曲はパーカー作の「Billie's Bounce」、メンバー全員の即席ナンバー「Festival Blues」、そして、レスター・ヤング作の「Lester Leaps In」の、たった3曲だが、どの曲も10分以上の長い収録時間の演奏で、メンバーそれぞれの長尺のアドリブ演奏心ゆくまで堪能できる。

破綻が全く無く、テクニックにも優れた「ハードバップなジャム・セッション」が繰り広げられていて、爽快ですらある。ミルト・ジャクソンのヴァイブがこれほどまで、ジャム・セッションに適応するとは思わなかったし、ベイシーのピアノがハードバップ演奏のリズム・セクションの一端を担うなんてことも思いもしなかった。しかし、メンバー6人とも好調な演奏で、ハードバップなジャム・セッションを心から楽しんでいる雰囲気がビンビンに伝わってくる。
 
 

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2022年3月18日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・232

パブロ・レコード(Pablo Records)は1973年にノーマン・グランツによって設立されたジャズ・レコード・レーベル。ビ・バップ期以降のレジェンド〜ベテラン級のジャズマンをメインにセッションをセットアップし、1970年代、フュージョン・ジャズ全盛期にありながら、純ジャズに特化したアルバムを多数リリースしたレーベルである。

このパブロ・レーベルのカタログの特色の1つが「モントルー・ジャズ・フェスティヴァル」のライヴ録音盤が多くあるということ。しかも、フェスティヴァルの催し物の中でも「目玉」のひとつである「ジャム・セッション」のライヴ盤が多数出ている。

レジェンド〜ベテラン級のジャズマン達のジャム・セッションがメインという先入観があって、口の悪いジャズ者の方々は、聴く前から「予定調和で定型的な、旧来のハードバップっぽい、お決まり展開のジャム・セッションなんでしょ」と散々なのだが、これが聴いてみると意外と「イケる」のだ。フェスティヴァルのジャム・セッションの記録なので「臨場感」も半端ないところも「イケる」のだ。

The Dizzy Gillespie Big 7『At the Montreux Jazz Festival 1975』(写真)。1975年7月16日、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dizzy Gillespie (tp), Eddie "Lockjaw" Davis, Johnny Griffin (ts), Milt Jackson (vib), Tommy Flanagan (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Mickey Roker (ds)。フロント3管+ヴァイブ+リズム隊の「セプテット(七重奏団)」編成。
 

The-dizzy-gillespie-big-7at-the-montreux

 
パーソネルを見渡すと、このセプテットって「昔の名前で出ています的なロートル・ジャズマン」の集まりでは無い。暫定リーダーのガレスピーですら当時58歳。ロックジョーで53歳。この2人がメンバーの中で最古参と思われるが、この年齢だとすると「ベテラン」の域を出ていない。残りの5人は、当時の純ジャズの中核メンバーばかり。このメンバーで「予定調和な定型的なジャム・セッション」は無いだろう。

フロント3管が好調。ガレスピー、ロックジョーはバップなトランペットを鳴り響かせ、グリフィンのハードバップなテナーは、モダンで骨太でブルージー。ミルトのヴァイブは流麗かつ躍動的。トミフラのピアノが率いる、ペデルセンのベース、ロッカーのリズム隊は、すこぶるハードバップで切れ味の良い、力感溢れ、そこはかとなくファンクネス漂う、上質のリズム&ビートを供給する。

収録曲はジャム・セッションの記録(括弧内は収録時間)なので、LP時代は以下の2曲のみ「Lover, Come Back to Me」(16:43), 「I'll Remember April」(16:02)。 CDリイシュー時、ボートラとして以下の2曲「What's New?」(12:13), 「Cherokee」(11:01) が追加されて、全4曲構成となっている。

この追加されたボートラの内容もかなり充実していて、LP時代の2曲だけではちょっと聴き足りない気分になるだが、追加の2曲が加わって、このジャム・セッションが如何に充実していたか、をしっかり体感出来る様になっている。このボートラの追加は「正解」である。このジャム・セッションの記録の価値がさらに上がった、と言える。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2022年2月 2日 (水曜日)

スピリチュアルなディッカーソン

ウォルト・ディッカーソン(Walt Dickerson)は、1928年に米国フィラデルフィア生まれのヴァイブ奏者。1962年にはダウンビート誌がベスト・ニュー・アーティストと選出されるくらい、将来を嘱望されたヴァイブ奏者であった。活動期間は1961年〜1985年辺りまで。2008年に鬼籍に入っている(享年80歳)。

ディッカーソンは従来の4ビート基調のスインギーなハードバップ基調では無く、ポスト・バップのヴァイブ奏者である。モーダルでスピリチュアルな展開が持ち味。「ヴァイブのコルトレーン」と呼ばれることもあるほど、ヴァイブの音の広がりを活かした幻想的なフレーズや、フリー一歩手前の限りなく自由度の高いモーダルなフレーズ、感覚的で印象派の様な音の広がりのある無調のフレーズが特徴。

Walt Dickerson『Peace』(写真左)。 1975年11月14日、NYでの録音。SteepleChaseレーベルのSCS 1042番。ちなみにパーソネルは、Walt Dickerson (vib), Lisle Atkinson (b), Andrew Cyrille (ds)。管もピアノも無い、ディッカーソンのヴァイブが唯一フロント楽器のトリオ編成。正式な収録曲が僅か2曲のみの大作である(CDには短いボートラが1曲加わる)。
 

Peace_walt-dickerson

 
ディッカーソンは、1965年から10年間ジャズシーンから離れていたが、この1975年録音のアルバムから、SteepleChaseレーベルより、優れたリーダー作をリリースする様になり、1985年までに11枚のリーダー作をリリースしている。欧州の「ブルーノート」と呼ばれた、バップなジャズがメインのスティープルチェイスのカタログの中では、ちょっと異質な「モーダル&スピリチュアル」な内容のリーダー作が異彩を放っている。

この盤の内容も一言で言うと「スピリチュアル」。適度なテンションの下、限りなく自由度の高いフリーキーなフレーズを繰り出しながら、ヴァイブの音の伸びを活かした幻想的なフレーズで、スピリチュアルな雰囲気を増幅している。ヴァイブって、こういう演奏にも使えるんやなあ、と妙に感心する。硬質でクリスタルな響きが充満した、如何にも欧州的な「スピリチュアル・ジャズ」である。

ブルーノート・レーベルが、エリック・ドルフィーやセシル・テイラーのフリー・ジャズを録音し、残したのと同じ感覚で、スティープルチェイス・レーベルは、このディッカーソンのスピリチュアル・ジャズを録音し、残したのだろう。さすがスティープルチェイス、1970年代の欧州ジャズのトレンド&歴史を、しっかりと残してくれているのだ。
 
 
 
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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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2021年7月26日 (月曜日)

パブロ・レーベルらしい優秀盤

パブロ・レコード(Pablo Records)は1973年にノーマン・グランツによって設立されたジャズ・レコード・レーベル。ビ・バップ期以降のレジェンド〜ベテラン級のジャズマンをメインにセッションをセットアップし、1970年代、フュージョン・ジャズ全盛時にありながら、純ジャズに特化したアルバムを多数リリースした。

Milt Jackson『The Big 3』(写真)。1975年8月25日の録音。パブロ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Joe Pass (g), Ray Brown (b)。ジャズ・ヴァイブの神様、ミルト・ジャクソンが筆頭リーダーのドラムレス・トリオ。管は全く無し。

ジャケットについては2種類あって、カラー版とモノクロ版。私たち、オールドなジャズ者からすると、LP時代のモノクロ版のジャケットに親近感がある。

フロント楽器の役割は、ミルトのヴァイブとパスのギターが担い、リズム&ビートは、パスのギターとブラウンのベースが担う。このヴァイブ+ギター+ベースのドラムレス・トリオの場合、3人の演奏テクニックについて、相当な力量が必要になる。特に、ギターとベースは大変忙しい。
 

The-big-3_1

 
まず、ミルトのヴァイブが絶好調。奇をてらうこと無く、ハードバップ期の好調時のミルトのヴァイブが帰ってきている。目新しさは全く無いが、品の良いファンクネスを偲ばせた、スインギーでジャジーな、成熟したヴァイブを聴かせてくれる。これが良い。「これぞ、極上のモダン・ジャズ」と思わず感じ入る。

他の2人に目を向けると、旋律楽器とリズム楽器の両方の役割を担うパスのギターは大変で、これをいとも容易い風に弾きこなしていくパスのギターについては「凄いなあ」の一言。レイ・ブラウンのベースも凄い。骨太でソリッドなベースでリズム&ビートをキープするのは当然、ソロ・パフォーマンスもハイ・テクニックを駆使して、唄うが如く、素晴らしい旋律弾きを披露している。

私がジャズを聴き始めたのが1970年代後半。この頃の我が国のパブロ・レーベルの評価は「過去のジャズメンを集めて、懐メロよろしく、旧来のハードバップをやらせてアルバムを量産する、商業ジャズ・レーベル」と揶揄されていた。が、そんなことは全く無い。たまに凡盤はあるが、概ね、良好なハードバップなジャズが記録されている。

パブロ・レーベルのアルバムを初めて聴いて以来40年。そんなパブロ・レーベルを再評価したい、と思っている。
 
 
 
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  ・Santana『Inner Secrets』1978

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  ・イエスの原点となるアルバム

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  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
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