2024年1月24日 (水曜日)

デュオ盤『Crystal Silence』再び

『Return To Forever』と『Light As A Feather』の名盤2枚で、リリカルでメロディアスなユートピア志向のサウンドをメインとした「クロスオーバーなエレ・ジャズ」を表現したチック・コリア。

しかし、音楽性のバリエーションが豊かなチックは、その傍らで、メインストリーム系の純ジャズにも、しっかりと手を染めている。ただし、チックは旧来のハードバップをなぞることは無い。必ず、新しい「何か」にチャレンジする。この時点で、チックが手がけたのは「デュオ」。あの名デュオ、コリア&バートンの誕生である。

この名デュオの結成の経緯については以下の通り。1972年、ミュンヘンで開催されたジャズ・フェスで、コリアとバートンはデュオによるジャム・セッションを披露する。それを聴いていたECMの総帥プロデューサーのマンフレート・アイヒャーが、コリアとバートンに「デュオ盤」の制作を持ちかけた。つまりは、この名デュオは、アイヒャーの提案によって結成されたらしい。

Chick Corea & Gary Burton 『Crystal Silence』(写真左)。1972年11月6日、オスロ、タレント・スタジオで録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Gary Burton (vib)。ECMレコードからのリリース。プロデューサーは当然、マンフレート・アイヒャー。以降、チックが亡くなるまで、不定期にアルバムをリリースしライヴを敢行した「名デュオ」のファースト盤である。

透明な響きとロマンティシズム。チックとバートンの「共通の音の質と志向」が、この盤で出会った。デュオというフォーマットは、簡単そうに見えて難しい。まず「音の質と志向」が同質のものでないと苦しい。また、お互いの音が重なったり被ったりしてはいけないし、フロントに出るタイミングとバッキングに回るタイミングが一致していなければ、バラバラな演奏になる。
 

Crystal_silence_1  

 
片方が目立ちすぎてもいけないし、引っ込み思案でもいけない。その辺の「あうん」の呼吸と、相手の音を聴きながらの、機微を心得た、臨機応変なインプロが重要になる。それって、双方に高度なテクニックと音楽性が備わっていないと出来ない仕業。このチックとバートンのデュオは、その「デュオ」に関する必要な事柄が、奇跡的に全て双方に揃った、稀有なデュオ・ユニットである。

チックとバートンは、いとも簡単に、この難度の高い「デュオ」のフォーマットを征服する。この盤を聴けば、恐らくたいていの人は「デュオって意外と簡単やん」と感じるに違いない。それほど、チックとバートンは、自然にシンプルに、ポジティヴに柔軟に、ピアノとヴァイヴのデュオ演奏を紡ぎ上げていく。

さて、チックとバートンのデュオ盤と言えば、この1972年の『Crystal Silence』にとどめを刺す、と言って良い位の素晴らしい出来、奇跡的に充実した内容となっていて、収録されたどの曲も素晴らしい出来。

とりわけ、冒頭の「Senor Mouse」、5曲目の表題曲「Crystal Silence」、そしてラストの「 What Game Shall We Play Today」の出来が際立っている。適度な緊張感に包まれた、とてもスリリングでリリカルな、躍動感溢れるデュオ演奏。即興の妙が芳しく、ロマン溢れるフレーズがとても美しい。

聴けば判る。素晴らしい不滅のデュオ盤。両人フロントに立ってのユニゾン&ハーモニーは絶妙。フロントに立ったチックのソロもバートンのソロも素晴らしい。バックに回ったチックもバートンも、絶妙に機微を心得た、ハイ・テクニックで切れ味の良いバッキングを聴かせてくれる。

ちなみに、このデュオという演奏フォーマットについては、特にバートンは当初、「リズム・セクション無しで、ヴァイブとピアノだけの演奏を1時間も聴きたがるオーディエンスなんているのだろうか」と猜疑心を抱いていたという。しかし、そのパフォーマンスは歴史に残るほどの素晴らしさで「大当たり」。ECMという欧州ジャズのレーベルだからこそ出来た盤であり、アイヒャーの慧眼の成せる技であった。
 
 

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2024年1月 5日 (金曜日)

『バグス & トレーン』の再聴。

アトランティック・レコード時代のコルトレーンは、シーツ・オブ・サウンドを吹きまくったり、モード・ジャズやソプラノ・サックスにチャレンジするリーダー作は評価が高いが、それ以外のリーダー作については評価がイマイチ。20世紀の時代では、我が国でその傾向は顕著で、我が国のコルトレーン盤の紹介本では、評価は「けちょんけちょん」である。

今となっては、どうして、そんな評価になるのか、その真意はよくわからないが、どうも、コルトレーンは「シーツ・オブ・サウンド」か「モード・ジャズ」か「フリー&スピリチュアル・ジャズ」をやらないといけないらしく、それもワン・ホーンで、コルトレーンのみを愛でることが出来る盤でないと駄目みたいなのだ。しかし、それは余りに偏った評価で、現代においては参考程度に留めておいた方が良いだろう。

Milt Jackson and John Coltrane『Bags & Trane』(写真左)。1959年1月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), John Coltrane (ts), Hank Jones (p), Paul Chambers (b), Connie Kay (ds)。ミルト・ジャクソンのヴァイブとコルトレーンのサックスがフロントのクインテット編成。

クールでファンキーなミルトのヴァイブと、豪放でバップなコルトレーンのテナー、その個性が正反対のミルト(愛称・バグス)とコルトレーン(愛称・トレーン)の競演の「妙」が楽しめる。よってアルバム・タイトルが「バグス&トレーン」。この正反対の個性の共演、これはとんでもない「ミスマッチ」とするのが、20世紀の我が国のジャズ評論の評価。
 

Milt-jackson-and-john-coltrane_bags-tran

 
しかし、自分の耳で聴くと、ミスマッチどころか、バグスとトレーン、それぞれの個性が、双方の個性を引き立て合っているように聴こえる。正反対の個性なので、ユニゾン&ハーモニーを取るのはちょっと難しい。それでも、ソロ・パフォーマンスの受け渡しでは、クールでファンキーなミルトのヴァイブと、豪放でバップなコルトレーンのテナーの対比がとても印象に残る。

冒頭1曲目の「Stairway to the Stars」、この曲を聴くだけで「それ」が判る。ミルトの美しく響く、ブルージーなヴィブラフォンの調べ、そして、その後に入ってくるコルトレーンの豪快で真っ直ぐなテナー。正反対の個性、好対照な個性の共演。メリハリがあって陰影が深い。それでいて、底はブルースで一体となっている。申し分ないパフォーマンスである。

4曲目の「Be-Bop」は高速バップな演奏。当然、コルトレーンは「シーツ・オブ・サウンド」風の高速フレーズを吹きまくる。すると、ミルトは2本マレットで、これまたブルージーでファンキーな高速フレーズで応戦する。正反対の個性、好対照な個性の高速フレーズの共演。これも「聴きもの」、良好なハードバップなパフォーマンス。

バックのリズム・セクションも無難なハードバップ基調のバッキングをしていて、フロントの二人のパフォーマンスを損なうことは無い。そう、このミルトとコルトレーンの共演盤は「ハードバップ」。成熟したハードバップのアルバムとして聴けば、ミルトのヴァイブもコルトレーンのテナーも全く違和感は無い。

ミルトもコルトレーンものびのび、リラックスして演奏している。これだけ、のびのび、リラックスして演奏しているのだ。演奏している当の本人たちは「ミスマッチ」などとは全く感じていなかっただろう。そもそも、ミスマッチで出来が悪いセッションであれば「お蔵入り」だろう。
 
 

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2023年6月30日 (金曜日)

クラシック・オケとジャズロック

ECMレコードのアルバムがお気に入り。ジャズを本格的に聴き始めた1970年代後半、ニュー・ジャズ&欧州ジャズの担い手として、我が国でもECMブームが沸き起こっていた。

といっても、ECMのアルバムについては、明らかに「好き嫌い」が分かれる。米国ジャズ、特に東海岸ジャズが絶対とする「東海岸ジャズ者」の方々からは「ECMはジャズでは無い」と毛嫌いされていた。まあ、大凡、硬派なジャズ喫茶ではECMのレコードをリクエストするのには相当な勇気がいった。米国が本場のジャズについては、米国ジャズが絶対で、欧州ジャズはジャズでは無い、とされていた。

しかし、である。僕はECMレコードのアルバムがお気に入り。もともとクラシック音楽もいろいろ聴いていて、クラシック音楽の雰囲気が漂う、端正な欧州ジャズについては違和感が無い。ロックではプログレ小僧だったので、ニュー・ジャズの類については、プログレっぽくて違和感を感じない。そういうところから、ECMレコードのアルバムに違和感が無く、良いものは良い、の精神で、ECMのアルバムについては、延々と50年弱、聴き続けていることになる。

そんなECMのアルバムをカタログ番号順に聴き始めて、早5年。ECM1001〜1100番までの「ECM1000番台」のアルバムについては、明らかに現代音楽な内容のアルバムを除いて、ほぼ聴き終えた。ほぼ、というのは、3枚ほど入手出来ないでいたアルバムがあった。が最近、やっとのことで音源を確保することが出来た。あと3枚、しっかりと聴いた。3枚とも初聴きである。

Gary Burton Quartet『Seven Songs for Quartet and Chamber Orchestra』(写真左)。1973年12月、ハンブルグでの録音。ECMの1040番。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Mick Goodrick (g), Steve Swallow (b), Ted Seibs (ds), NDR Symphony Orchestra conducted by Michael Gibbs。
 

Gary-burton-quartetseven-songs-for-quart

 
当時のゲイリー・バートンのカルテットに、NDRのオーケストラがバックに就く布陣。クラシック・オーケストラの演奏を伴奏に、ゲイリー・バートンのヴァイブをメインとするジャズ・カルテットの演奏が展開される、如何にもニュー・ジャズっぽい、クラシックにも精通するECMレーベルのアルバムらしい内容。

クラシック・オーケストラの伴奏も、なかなかのもので、ありがちな米国ジャズの取って付けたような、チープなクラシック・オーケストラでは決して無い。オーケストラだけでも十分に聴ける。

そんな充実したクラシック・オケをバックに、まずは、ゲイリー・バートンのヴァイブがソロで乱舞する。バートンのヴァイブは、いかにもECMのニュー・ジャズっぽい雰囲気満載。バックのオケの伴奏に乗って、映えに映える。良い雰囲気、いかにも欧州ジャズ。

曲が進むにつれて、バートンのソロから、バートンのカルテットの演奏に展開していく。これがなかなかのもので、当時のバートン・カルテットの個性である、アーシーでジャズロック風のフレーズ、ゴスペルっぽい米国ルーツ・ミュージック風のフレーズが漂ってきて、クラシックな雰囲気が強かった出だしからすると、一気にニュー・ジャズっぽい、バートンお得意のアーシーなジャズロック風のフレーズが実に格好良い。

欧州っぽいクラシック・オケと米国ルーツ・ミュージックとジャズロックの融合音楽。いかにもECMらしい取り合わせ。聴く前は、クラシック・オケをバックにしたバートン・カルテットってなあ、と敬遠気味だったのだが、聴いてみると意外と良い。やはり「聴かず嫌い」は良く無いなあ、と改めて思った次第。意外性のあるECM好盤です。
 
 

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2023年4月18日 (火曜日)

アーマッド・ジャマルを追悼する

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)が、あの世に旅立った。4月6日、前立腺がんのため死去。92歳。また1人、レジェンド級のジャズマンがあの世に旅立ったことになる。

ん〜、辛いなあ。ジャズを本格的に聴き始めた1970年代以降、50余年、ジャマルはリアルタイムでそのパフォーマンスを聴くことの出来るピアニストだった。同じ時代を生きたジャズマンが鬼籍に入るのを見るのは、やはり辛い。

Ahmad Jamal & Gary Burton『Live At Midem』(写真左)。1981年1月26日、フランス、カンヌで開かれた国際音楽産業見本市の中のパーム・ビーチでのミデムフェアにおけるライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Gary Burton (vib), Sabu Adeyola (b), Payton Crossley (ds)。Ahmad Jamal名義で『In Concert』(写真右)というタイトルでリリースされていたり、はたまた、ジャケ・デザインも様々ある不思議なライヴ盤。

当時のジャマル、バートンの活動の経緯を見ていると、このクインテットは、ジャマルのトリオにバートンが客演した形のようだ。見本市のフェアにおけるライヴなので、そういう一期一会のブッキングが可能となったのだろう。

冒頭、恐らくジャマルであろうMCから始まり、1曲目は「Morning of the Carnival」。のっけから、ジャマルがぶっ飛ばす。ファンキーでグルーヴ感満載、速弾きパッセージてグイグイ攻めて、硬質なタッチでガンガン叩きまくる。華のなる流麗なアドリブ・フレーズとコーラスがソウルフルで、1970年代のジャマルのトレンドが継続されている。

ジャマルってピアニストは「経年変化」が著しいピアニストで、活躍した年代によって異なる顔を持つ。1950年代は「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。
 

Ahmad-jamal-gary-burtonlive-at-midem

 
1960年代の終わり〜1970年代の作品は、ファンキー&アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドに変化している。この1970年代のジャマルを継続しているのが良く判る。

それにしても強烈なグルーヴ感。「Morning of the Carnival」が全く別の曲に聴こえる。途中、「My Favorite Things」の引用が出まくって、この引用などは1950年代の古き良き中間派の影を引き摺っている。バートンのヴァイブは、そんなグルーヴ感溢れるファンキーな8ビート・ピアノに乗っかって、これまたグルーヴィーに8ビートに弾きまくる。

サブ・アデヨラのベースは、アタッチメントを付けたアコベなのか、エレベなのか、ちょっと判別がつかないが、エレクトリックなベースをブヨンブヨンと響かせる。これがまた良い方向に作用して、ジャマル&バートンのグルーヴ感を思い切り増幅している。ペイトン・クロスリーのドラムは、グルーヴ感豊かな、うねるような8ビートを叩き出し、演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支えている。

演奏曲もユニークで、ジャマルの78年のヒット曲「One」や、ラテン風の「Bogota」、チック・コリアのモーダルな「Tones for Joan’s Bones」と、なかなか他のバンドでは演奏しないぞ、と思われる佳曲を8ビートでぶっちぎっている。そして、有名スタンダードの「Autumn Leaves」。最後の「Autumn Leaves」だけが4ビートの演奏となっていて、これはこれで聴き応えがある。

実はこのライヴ盤、今回、小粋なジャズ盤を探索する中で出会った「初見」のライヴ盤で、ジャマルとバートン、それも、1981年という時代背景の中で、どんな演奏をしているのか、と興味津々で聴き始めた盤。ジャマルの訃報に触れた時、聴いていたのがこのライヴ盤で、不思議な縁にちょっと驚いている。
 
 

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2023年3月18日 (土曜日)

「和製のヴァイブの新人」出現

我が国のジャズ・シーンにおいても、コンスタントに有望新人が出ている。何時頃からか、そう、21世紀に入って、2002年、ピアニスト山中千尋が初リーダー作を出した頃から、一気に将来有望な新人がどんどん出てきた。商業主義が反映されたボーカルを除けば、どの楽器でも、出てきた新人の多くは、今でも中堅として活躍している。

吉野智子(Tomoko Yoshino) Quartet『Kaleidoscope』(写真左)。2023年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、吉野智子 (vib), 雨宮彩葉 (p). 鉄井孝司 (b), 小田桐和寛 (ds)。パーソネルを見渡して、リーダーの吉野智子を含め、僕にとっては初見のメンバーばかり。特に、リーダー吉野の担当楽器は「ヴィブラフォン」。

吉野智子。東京都出身。10歳よりマリンバ、国立音楽大学に進学し、本格的に打楽器全般を演奏し始める。在学中、第13回JILA音楽コンクールマリンバ部門第1位を獲得。同大学ビッグバンド・サークルに所属しヴィブラフォンを担当、第40.41回山野ビッグバンドコンテストにて最優秀賞受賞。ジャズヴァイブ・作曲を赤松敏弘に師事。

アマチュア・ビッグバンド所属のヴァイブ担当が独立して、プロのヴァイビストになった訳で、確かに、吉野のヴァイブは素姓が良い。
 

Tomoko-yoshino-quartetkaleidoscope

 
音の個性としては、ファンクネスは皆無。硬質で透明度の高い音で、ヴァイブの音の質としては、4本マレット奏法を駆使している面も含めて「ゲイリー・バートン」に通じるものがある。音がバートンよりも暖かい感じなので、いわゆる「温和なバートン」という雰囲気。

ヴァイブのパフォーマンス自体は申し分無い。テクニックも優秀、弾き回しは流麗。アドリブ展開のスピード感も十分、速いパッセージは切れ味良く、スローなフレーズは歌心十分。初リーダー作とは思えない、完成度の高いヴァイブである。全9曲中、7曲が自作曲で、これがまた出来が良い。作曲の才能にも注目したい。

演奏全体の雰囲気は、モード奏法がメインの「ネオ・ハードバップ」。特にモーダルな展開は、過去の成果を踏まえながら、現代ジャズの響きを湛えていて立派。即興演奏のフレーズには淀みが無く、ポジティブな響きで清々しい。特にスタンダード曲の「I Hear a Rhapsody」では、アレンジが従来のジャズには無いユニークなもので、アレンジ能力も良さも垣間見える。チャレンジ精神も旺盛。

初デビュー作としては申し分の無い出来。吉野のヴァイブの個性も良く判るし、コンポーズ&アレンジの才能も注目に値する。特に、ジャズ演奏の絶滅危惧種の1つである「ヴィブラフォン」を担当する、将来有望な新人の出現である。次作についても、しっかりと見守っていきたい。
 
 

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2022年12月 6日 (火曜日)

ヴィクター・フェルドマンの到着

ジャズには「ジャケ買い」という言葉がある。ジャケットのデザインが優れているアルバムは、押し並べて良好な内容のアルバムである、という経験則からの言い回しなんだが、確かにこれが、ジャズに限っては当たることが多い。

特に、ジャケットのデザインに全く無頓着なジャズ・レーベルにおいても、これが当たるから面白い。ジャズ名盤のジャケットは、確かに優れたものが大多数である。

但し、逆もある。もともとジャズ・レーベルは、ブルーノートを除いて、ジャケットにはあまり感心が無いようなんだが、「これは一体どうしたんだ」とビックリする様な、劣悪なデザイン、ふざけたデザインがたまに出てくる。

こういう問題のあるジャケットの場合、LP時代は特に、レコード屋でカウンターに持って行くのが憚られた。店員がジャズに明るい場合は良いのだが、その逆の場合、カウンターに持って行った当方の感性が疑われる(笑)。

Victor Feldman『The Arrival of Victor Feldman』(写真左)。1958年1月21, 22日、ロサンゼルスでの録音。ちなみにパーソネルは、Victor Feldman (vib, p), Scott LaFaro (b), Stan Levey (ds)。リーダーのフェルドマンがヴァイブとピアノを担当、伝説の早逝ベーシスト、スコット・ラファロの参加が目を引く。ドラムには、ウエストコースト・ジャズの職人ドラマー、スタン・レヴィーが控えている。

ジャケットが「ふざけたデザイン」(笑)。フェルドマンは英国ロンドン出身。1955年にロニー・スコットの強い勧めもあって、米国に移住。1957年にはロサンゼルスに定住。そして、その翌年早々に、この米国での初リーダー作『The Arrival of Victor Feldman』を録音している。
 

The-arrival-of-victor-feldman

 
このタイトル、直訳すると「ヴィクター・フェルドマンの到着」。つまり、英国から米国西海岸にフェルドマンがやって来たぞ、という意味だろう。しかし、フェルドマン(ラファロもレヴィーも同様だ)も良く、このパロディー風のジャケ写の撮影に付き合ったもんだ。

しかし、アルバムの内容はまずまず良好。ウエストコースト・ジャズの範疇での録音だと思うが、英国ジャズのフェルドマン、東海岸がメインのラファロの志向が前面に出ているのか、ウエストコースト・ジャズの範疇でありながら、ウエストコースト・ジャズ特有の「聴かせるアレンジ」「アーティスティックなアレンジ」の形跡はほどんど無い。

といって、東海岸特有の丁々発止としたインタープレイでも無い。趣味良く流麗で小粋なハードバップな演奏が小気味良い。この盤の聴きものはやはり、フェルドマンの洒脱なヴァイブとシンプルで軽快なピアノが良い。クールで乾いたヴァイブ&ピアノの音を聴けば、やはりこの盤は、ウエストコースト・ジャズの範疇の録音なんやなあ、と感心する。

以前から、この盤は、ラファロのベースが凄い凄い、と評判だが、ブンブン唸るベース音が、フェルドマンのシンプルで軽快な流麗なヴァイブ&ピアノと対照的で、逆にフェルドマンのクールで乾いたヴァイブ&ピアノの音が前面に出てくるから面白い。ラファロは我関せずとマイペースに弾きまくってはいるんだが、こういう効果も見越して、フェルドマンはベースにラファロを調達したんだろう。

スタン・レヴィーのドラム。彼の叩き出す、正確でスインギーなリズム&ビートが、フェルドマンのヴァイブ&ピアノと、ラファロの重低音ベースとのバランスを上手く取っている。フェルドマンはリーダーとして、上手くベースとドラムの選定をしているなあ、つくづく感心する。

ヴァイブ&ピアノにベースとドラム。変則な編成ではあるが、なかなか内容の良いトリオ盤。スタンダード曲を中心に、フェルドマンのシンプルで軽快な流麗なヴァイブ&ピアノが良い雰囲気です。 
 
 

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2022年7月12日 (火曜日)

楽しいチック・トリビュート盤

2021年2月9日、チック・コリアは永眠した。79歳であった。それから、既に1年5ヶ月が経過しった。チックがあの世に旅立ったことが、今でも信じられず、まだ、元気にピアノを弾いている様な気がしてならない。今年2月9日の一周忌に合わせて、チック・コリア・トリビュート盤がリリースされているのを見ると、やっぱり、チックはあの世に旅立ったんやな、としみじみしてしまう。

Steve Gadd & Mika Stoltzman『Spirit of Chick Corea』(写真左)。今年6月のリリース。スティーヴ・ガッドのプロデュース。日本のマリンバ奏者、ミカ・ストルツマン(吉田ミカ)がチックゆかりのジャズマン達と制作した、チック・コリア・トリビュート盤である。参加ミュージシャンは、Richard Stoltzman (cl), Mika Stoltzman (mrmb), Eddie Gómez (b), Gayle Moran (vo) 等々、チックゆかりのジャズマン達。録音エンジニアは、チックが絶大なる信頼を寄せ、ともに音楽世界をつくってきたバーニー・カーシュ。

収録曲も実に良いチョイス。今や、チック作のネオ・スタンダード曲と言える「Spain」「Armando's Rhumba」「Crystal Silence」、それから、チックがミカの為に作曲した「Marika Groove」、ジョン・パティトゥッチが書き下ろした「Chick's Groove」など、チック作の有名曲、そして、チックゆかりの曲が収録されていて、チック者の僕達からすると、聴いていてとても楽しい。
 

Steve-gadd-mika-stoltzmanspirit-of-chick

 
実は、僕はマリンバ奏者、ミカ・ストルツマン(吉田ミカ)を全く知らなかった。Wikipediaを見ると、チック・コリアをはじめ、スティーヴ・ガッドやエディ・ゴメスと共演歴があるんですね。知りませんでした。

マリンバは木製鍵盤打楽器。ヴァイブが鉄製鍵盤打楽器。違いはあるが、マリンバの音、そして、チック・コリアとくれば、どうしても「ゲイリー・バートン」を想起してしまうので、この盤での木製ならではの「軽くて乾いた」マリンバの音と弾き回しの雰囲気については、ちょっと違和感が残る。やはり、チックの曲には「クリスタルで硬質な」ヴァイブの音と弾き回しの雰囲気が合う。

ただ、チックの曲は流麗なフレーズを持つ曲が多いので、マリンバの流れる様な弾き回しについては、イメージがピッタリ。チックの曲のフレーズの流麗さが引き立つこのアルバムは聴き心地については問題無い。ただ、バリバリ丁々発止とした、メインストリームでコンテンポラリーな即興演奏が展開される訳では無いので、そのところはちょっと物足りなさは残る。

チックの名曲の個性と流麗なフレーズを愛でるに、聴いて楽しい「チック・コリア・トリビュート」盤である。
 
 

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2022年6月13日 (月曜日)

1970年代のギブス盤に感心する

テリー・ギブス(Terry Gibbs)は、米国のジャズ・ヴァイブ奏者。1924年生まれなので、今年で98歳。まだ存命中。いわゆる「伝説」のヴァイブ奏者である。久し振りに、テリー・ギブスのリーダー作をサブスク・サイトで目にして、思わず、即「ジャケ聴き」である。

ヴァイブのスタイルはライオネル・ハンプトンに代表される「オールド・スタイル」。旋律楽器=フロント楽器として、両手を使った単音の旋律弾きがメイン。後のジャズ・ヴァイブの代表格、ミルト・ジャクソン、ゲイリー・バートンとは、基本的に奏法が異なる「シンプル」なもの。

Terry Gibbs Dream Sextet『4am』(写真左)。1978年7月30日、米国カリフォルニア州の「Lord Chumley's」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Terry Gibbs (vib), Bob Cooper (ts), Conte Candoli (tp), Lou Levy (p), Bob Magnusson (b), Jimmie Smith (ds)。フュージョン華やかりし頃の、米国西海岸での「純ジャズ」ライヴの記録である。

この ”ドリーム” セクステットは、当時の米国西海岸ジャズの一流どころを招聘していて、とても充実している。ライヴの記録を聴いてみて、米国西海岸ジャズの良き時代の音が、このライヴ盤で再現されている。
 

Terry-gibbs-dream-sextet_4am

 
しかも、このライヴ盤に収録されている曲は全てギブスの自作曲で占められている。1970年代後半のライヴなので、古き良き時代の「ジャズ・スタンダード曲」ばかりが演奏された方が、聴衆ウケが良いのではと思うのだが、そうでは無い。ライヴ盤から伝わってくる聴衆の様子が意外にも「盛り上がっている」のだ。

この「ギブスのオリジナル曲で占められている」ところに、フュージョン華やかりし時代でも、メインストリームな純ジャズは生き残っていたんやなあ、懐メロに成り下がっていなかったんやなあ、と妙に感心する。

ギブスの曲はどれもが非常にメロディックで叙情的。また、ギブスの曲は、演奏する側に立つと、コードの変更が演奏していてとても楽しいらしく、このライヴ盤でも、ギブスをはじめ、他のフロント管のメンバーが実にリラックスして楽しげに演奏している様子が伝わってくる。とても「往年の純ジャズ」らしいジャズがこのライヴ盤の中で、魅力的に演奏されている。

全く、一般に知られていないライヴ盤だと思うが、聴けば、内容的には、とても「往年の純ジャズ」らしいジャズが展開されていて、聴いていてとても楽しい。1970年代後半、米国西海岸で、こんなメインストリームな純ジャズが息づいていたなんて、ちょっと感動した。良い内容のライヴ盤だと思います。
 
 

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2022年4月16日 (土曜日)

日だまりのようなジャズです 『SunFlower』

ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)は、メインストリーム志向のジャズ・ヴィブラフォン(ヴァイブ)の第一人者。伝説のカルテット、Modern Jazz Quartet(MJQ)のメンバー。しかし、1974年、ミルトが退団したいと申し出たのが発端で解散。理由は22年間、MJQで地道に音楽活動を続け、それなりの評価を得て来たにも拘わらず、新進のロック・ミュージシャンに較べ報酬が少ないことが不満だったから、とか。

が、解散後、ミルト・ジャクソンはロック・ミュージシャンに転身した訳ではない。逆に、純ジャズ志向のミルト・ジャクソンは、クリード・テイラーが設立したクロスオーバー&フュージョン・ジャズがメインのジャズ・レーベルの下で、解散前の1970年代前半に4枚のリーダー盤をリリースしている。その最初の一枚がこの盤。

Milt Jackson『SunFlower』(写真左)。1972年12月12, 13日の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Freddie Hubbard (tp, flh), Herbie Hancock (p), Jay Berliner (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds), Ralph MacDonald (perc)。このパーソネルに、ストリングス・オーケストラが加わる。アレンジは Don Sebesky (arr, cond)。

錚々たる面子による、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズだが、ミルト・ジャクソンのヴァイブが全面的にフィーチャーされている。ミルト・ジャクソンのヴァイブの個性がしっかり押し出されている。マイルドで優しいヴァイブの音色。途方も無く素晴らしい演奏テクニック。ブルージー&ジャジーな、そして、グルーヴ感溢れるパフォーマンス。
 

Sunflower_milt-jackson

 
そんなミルト・ジャクソンのパフォーマンスを聴いていて、「日だまりのようなジャズ」をイメージした。ホンワカして柔らかで、それでいて、芯がしっかり通っていて優しくて心地良い。ストリングス・オーケストラとエレピで優しく包んだ、どこか切なくなるような柔らかいミルトのヴァイブ。

そんな「日だまりのようなジャズ」は、1970年代、クロスオーバー&フュージョン・ジャズを牽引し、後のスムース・ジャズの源を作った、CTIレーベルのアルバムに多く聴くことが出来る。1950年代のハード・バップの様に熱くは無い。1960年代のファンキー・ジャズの様にノリノリでは無い。フリー・ジャズやアヴァンギャルド・ジャズの様に激しくない。聴いていて柔らかく心地良い、ソフト&メロウなモダン・ジャズ。

バックは決して甘きに流れない、一本芯の入った、玄人好みのバッキング。超一流のバックの面々。彼らの演奏テクニックが、甘きに流れてしまいそうな、イージーリスニングに陥りそうなソフト&メロウなジャズを、しっかりと、メインストリーム志向のモダン・ジャズに留めている。

聴き入っていると、ついつい、まどろんでしまいそうな儚さ。ほんわかして柔らかで、それでいて、芯がしっかり通っていて、優しくて心地良い、甘美で官能的な響き。1970年代ジャズの成果である、フュージョン・ジャズの音世界のひとつがここにある。
 
 

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2022年4月 7日 (木曜日)

最近出会った小粋なジャズ盤・6

ゲイリー・バートンの音楽が好きである。1960年代後半のサイケデリックなジャズも良いし、クロスオーバーなバートンも良い。1970年代以降のニュー・ジャズなバートンも良い。チックとのデュエットなどは至高の音だ。ゲイリー・バートンの参加作品はできる限り全部聴くことにしている。今でも、たまに「こんなバートン盤ってあったっけ」という盤に出くわすことがある。

このジャケットを見た時は、1960年代後半のクロスオーバー・ジャズ時代のゲイリー・バートンのアルバムかと思った。逆に、こなアルバムあったっけ、という疑問が頭をよぎる。ジャケットを見ると、メンバーの名前が印刷されているが、どう考えても1960年代後半の面子では無い。とにかく聴いてみることにした。

Gary Burton『Cool Nights』(写真左)。1991年のリリース。GRPレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Will Lee (b, perc), Peter Erskine (ds, perc), Wolfgang Muthspiel (g), Bob James (key), Bob Berg (ts)。錚々たるメンバーである。この面子から、フュージョン・ジャズ指向の盤だと察しが付く。
 

Cool-nights_gary-burton

 
GRPレコードのロゴがジャケットに無いジャケ写を見たので、1960年代後半のクロスオーバー・ジャズ時代のゲイリー・バートンのアルバムと勘違いしたが、この面子を見れば、これは1980年代後半以降のフュージョン・ジャズ指向の音作りだ、と思いつつ聴くと、やはり、上質のフュージョン・ジャズの音が満載。いずれも百戦錬磨の強者ばかりなので、詳細は割愛するが、とにかく上手い。但し、決して上手いだけでは無い。

しっかりとそれぞれの個性をそこはかとなく出しつつ、バートンのヴァイブとフレーズにあったバッキングをガッチリとやってのける。ベースのリー、キーボードのジェームス、ギターのムースピールなど、少し聴けば直ぐに判る強烈な個性を持ちながら、バートンのバッキングでは、バートンのヴァイブを引き立て、鼓舞する役割に徹している。ううん、これは真の「職人技」やなあ。

純ジャズっぽい8ビートを叩き出すアースキンのドラムが肝。この盤の音を「コンテンポラリーな純ジャズ志向」のフュージョン・ジャズな音に仕立て上げている。決して、ソフト&メロウなフュージョンの音ではない。意外と硬派で純ジャズ志向の演奏は聴いていて爽快。アーバンなグルーヴ感や趣味の良いブルージーな感覚も見え隠れして、聴き応え十分。1990年代のフュージョン・ジャズの優秀盤として、フュージョン者の方々は必聴でしょう。
 
 

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