2021年1月19日 (火曜日)

漆黒ソウルフルなタレンタイン

「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が個性のテナー、スタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine)。タレンタインは「ブルーノート御用達」。ブルーノート・レーベルのハウス・サックス奏者といっても良い。生涯のリーダー作の半数がブルーノート・レーベルからのリリース。

Stanley Turrentine with The Three Sounds『Blue Hour』(写真左)。1960年6月29日と12月16日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。後のブルーノート・レーベルのハウス・サックス奏者とピアノ・トリオの共演。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオン、なかなか小粋なマッチアップをする。

もともと、スリー・サウンズのリーダー・ピアニスト、ジーン・ハリスのピアノはファンキー&ブルージー、そしてソウルフル。バックを担うリズム隊の2人、シンプキンスのベース、ドゥディのドラムも「こってこてファンキー」。「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が個性のタレンタインのテナーを引き立てるのに恰好のリズム・セクションである。
 
 
Blue-hour  
 
 
冒頭の「I Want a Little Girl」から、こってこてのファンクネス全開。ゆったりと吹き上げるタレンタインのテナーは「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」。やり過ぎじゃないかと思えるくらいのファンクネス。オールド・スタイルとコルトレーン・スタイルの「間(あいだ)」をいくタレンタインのテナー。この「オールド・スタイル」を踏襲する部分がとりわけ「ソウルフル」。

バックのリズム・セクションがスリー・サウンズというのが完璧に効いている。ファンクネス&ソウルフルの相乗効果で、タレンタインのテナーは全編に渡って「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」。ジャケットのようにブルーに染まる、タレンタイン渾身のブロウが映える5曲。コンプリート盤も良いが、この盤は当初のオリジナル盤の5曲を聴いて欲しい。

この盤はタレンタインの「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」の個性が最大に発揮された好盤。逆にこれ以上に「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」に振れることは無い。タレンタインの「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」度合いの最高地点を記録した『Blue Hour』。リラックスして、じっくりと聴き込みたいですね。出来たら、まずまずのレベルのステレオ装置で。
 
 
 

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2021年1月18日 (月曜日)

タレンタインのBN初リーダー作

ちょっと前に、プレスティッジ時代のコルトレーンを聴き直して以来、ジャズ・テナーが気になっている。ロリンズやコルトレーンなど、レジェンド級の有名テナーマンのリーダー作については、このブログで順次取り上げてきたが、レジェンド級ですら、まだまだ残っている。例えば、スタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine)などは、ほとんど手付かずだ。

Stanley Turrentine『Look Out!』(写真左)。1960年6月18日の録音。ブルーノートの4039番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds)。漆黒ブルージーなテナーマン、スタンリー・タレンタインのブルーノートでの初リーダー作になる。

タレンタインのテナーは「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が特徴。このブルーノート初リーダー作については、溌剌としたタレンタインのテナーが聴ける。恐らく、バックのリズム隊が新進気鋭のモード・ジャズ系ピアノ・トリオなのが影響しているのかもしれない。
 
 
Look-out  
 
 
タレンタインのテナーは、それまでのジャズ・テナーの代表格、ロリンズやコルトレーンのテナーのフォロワーでは無い。ましてや、パーカー直系のバップなサックスでも無い。タレンタインのテナーは、オールド・スタイルとコルトレーン・スタイルの「間(あいだ)」をいくもの。レトロでも無く最先端でも無い。流行のスタイルに対して「我関せず」と言わんばかりのオリジナリティー。

意外と溌剌と健康的に吹いてはいるが、ファンクネスはしっかりと漂い、唄うようなアドリブ・フレーズは既に「適度にソウルフル」である。それでも、ボートラの「Yesterdays」などは、タレンタインのトレードマークである、どっぷり「漆黒の滴り落ちるファンクネス」なテナーが鳴り響いている。逆に、LPリリース当時、お蔵入りになったのが判る。

豪快なテナーの音を繊細に出す。タレンタインのテナーのテクニックは堅実で真摯。そして、出てくる音は、「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が特徴。そんなタレンタインの「テクニックと音」がこのブルーノート初リーダー作にしっかりと捉えられている。さすがブルーノート、さすがアルフレッド・ライオンである。
 
 
 

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2020年12月19日 (土曜日)

フュージョン時代のジャケ惚れ盤

音源がCDからデジタル・リソースに急速に移行されつつある昨今。恐らく、マスターテープがデジタル化されて、そのデジタル・ソースが「音楽サイト」にダイレクトにアップされるのであろう、ネット上で「こんなアルバムが出てきたのか」と思わず唸るような、懐かしのアルバムに出会うことが多くなった。

O'Donel Levy『Time Has Changed』(写真左)。1977年の作品。NYでの録音。ちなみにパーソネルは、O'Donel Levy (g), David E. Smith (sax, fl), George Young (fl), Jimmy Wilson (tp), Robert Butta (p, syn), Marcel Turner (b), Robert Wyatt (ds), Jimmy Maelen (perc), Aleta Greene (vo)。フュージョン・ジャズらしく、スタジオ・ミュージシャン系のメンバーで固めている。

O'Donel Levy(オドネル・リーヴィー)。1945年生まれ。2016年に鬼籍に入っている。メリーランド州ボルチモア出身のリズム&ブルース、ファンク、ジャズのギタリスト。主な活動期間は1970年代。ソウル・ジャズからジャズ・ファンクの、どちらかと言えば、R&B系のフュージョン・ジャズ畑で活躍。風貌からして、ソウルフル&グルーヴ感満載。
 
 
Time-has-changed  
 
 
この盤は、ジャズを聴き始めた1979年の冬頃、大学近くの「秘密の喫茶店」でジャケットを見て、思わず「ジャケ買い」ならぬ「ジャケ惚れ」。こういった類の「ソウル・ジャズからジャズ・ファンク」系のアルバムは、ほとんど我が国では扱われていなかったと記憶している。当時は外盤はなかなか入手が難しく、例の「秘密の喫茶店」で、一時、ヘビロテさせてもらった。

スカイハイ・プロダクション系のメロウ・シンセとコーラスが心地良い。メロウ&グルーヴ。メロウながらもカッチリとした作りの冒頭のソウルフル・チューン「Have You Heard」がこの盤のイメージを決定付けている。ホーンのイントロからして、レトロなフュージョンっぽさを感じさせる「ソフト&メロウ」なイメージが良い。続く「Have You Heard」は伸びの良いシンセの響きが心地良いメロウ・チューン。3曲目の疾走感溢れる「Love Will Never Die」も聴き応え十分。

いやはや、涙が出るほどに懐かしい盤に再会しました。この印象的なジャケットは一目見れば判る。当時、我が国で流行っていたフュージョン・ジャズの本流とはちょっと外れた「ソウル・ジャズからジャズ・ファンク」ですが、このR&B系のフュージョンが醸し出す「グルーヴ感」が半端ない。この盤ではライトでメロウなグルーヴ感が堪らない。いや〜久し振りに当時の「ジャケ惚れ」盤との再会でした。
 
 
 

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2020年8月 2日 (日曜日)

ヤング・ホルト・アンリミテッド

ジャズを聴き始める前、高校時代の後半は、米国ルーツ・ミュージックが大好きになり、FMのエアチェックについては、ソウルやR&Bにも手を出すようになっていた。そして、大学に入ってジャズを聴き始めて、ジャズの合間の耳休めには、ソウルやR&Bを聴いたり、クロスオーバー・ファンクのアルバムを紹介して貰ったりして、足で拍子を取りながら、研究論文を読みながら、秘密のジャズ喫茶の昼下がりを過ごしていた記憶がある。

Young-Holt Unlimited『Oh Girl』(写真左)。1972年5月はシカゴ、1972年8月はNYでの録音。ちなみにパーソネルは、Eldee Young (b), Ralph MacDonald (perc), Isaac "Redd" Holt (ds), Marcus Curry (el-g), Bobby Lyle, Ken Chaney (el-p, ac-p)。内容としては、クロスオーバー・ジャズの範疇、ソウル・ミュージックとエレ・ジャズの融合。こってこてファンクで、むっちゃグルーヴィーな音世界である。

「Young-Holt Unlimited」は、ベースのエディー・ヤングとドラムのレッド・ホルトのリズム隊コンビがメイン。我が国では一般には知られていない。しかし、レア・グルーヴ、サンプリングの世界では有名。とにかくこの盤のファンクネスとグルーヴ感、ブラック・ミュージック好きには堪らない。しかも、この盤、ボーカルが入らない。クロスオーバー・ファンクな演奏だけで、このグルーヴ感を醸し出す。堪らない。
 
 
Oh-girl-youngholt-unlimited
 
 
リズム隊がメインなので、ドラムブレイクやうねるようなファンキー・ビート、粘るベースラインなど、ジャズ・ファンクな要素がギッシリ詰まっていて、聴き始めると、足でリズムを取る、腰が動く、体を揺する。とにかく強烈なグルーヴ感。キーボードもソウルフルで、コロコロとした単音のエレピが心地良さを増幅。時代として、まだまだ電気楽器の性能が低いなか、このうねるようなグルーヴ感は凄まじいものがある。

ポインター・シスターズ名曲のカヴァー「Yes We Can」、デオダートの指揮でチャイ・ライツの名曲をカヴァーした「Oh Girl」など、ファンクネスのうねりが芳しく、レッド・ホルト作の「Rubber Lips」のむっちゃ渋いドラムブレイク、ダンディズム溢れるジャズ・ファンク曲「Bumpin' On Young Street」等、聴きどころ満載。

実はこの盤、ヤング・ホルト・アンリミテッドの最後のアルバムで、1974年にバンドを解散、ヤングとホルトは1980年代にラムゼイ・ルイスのグループに戻っている。そう、このヤング・ホルト・アンリミテッド、やっぱり、1960年代後半のラムゼイ・ルイスが関係しているんですね。こってこてファンクでグルーヴィーでありながら、破綻せず端正でポジティヴなジャズ・ファンクを叩き出す。何となく、ラムゼイ・ルイスを彷彿とさせますね。なんか納得しました
 
 
 

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2020年7月21日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・131

このピアニスト、ラムゼイ・ルイス(Ramsey Lewis)は、ジャズ盤紹介本では『The in Crowd』(2011年3月19日のブログ参照)ばかりが紹介されるので、ジャズ・ピアニストの「一発屋」と思われていることがよくある。また、1970年代は、ソウル・ミュージックやR&Bと融合したフュージョン・ジャズに転身したので、硬派なジャズ者の方々からは「ゲテモノ」扱いされている。

確かに1970年代以降は、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズで「弾けて」、純ジャズからは遠いところで活躍していた訳だが、1950年代から1960年代前半にかけては、なかなか小粋なファンキー・ジャズをベースとした、なかなか硬派のジャズ・ピアニストであった。『The in Crowd』はポップな要素が強いが、ファンキー・ジャズとして、硬質のタッチと「こってこて」ファンキーな弾き回しが素敵なピアニストでもあったのだ。

『An Hour with the Ramsey Lewis Trio』(写真左)。1959年4月22日、,米国Chicagoは「Ter-Mar Studios」での録音。ちなみにパーソネルは、Ramsey Lewis (p), El Dee Young (b), Issac "Red" Holt (ds)。ラムゼイ・ルイスはシカゴ出身。この盤でのリズム隊、ドラムとベースは地元シカゴのジャズメンを起用している。
 
 
An-hour-with-the-ramsey-lewis-trio  
 
 
この盤でのピアノについては、初めて聴いた時は誰だか全く判らなかった。全体的に硬質で力強い、時に「叩き付ける様な」ダイナミックなタッチ、右手のこってこてファンキーなフレーズの弾き回し、ブルージーで黒い左手のブロック・コード。レッド・ガーランドやアーマッド・ジャマルをマッチョにした様なピアノ。マッチョだが歌心は満点。強弱のメリハリが強烈だが耳触りでは無い。

ファンクネスは「こってこて」、ゴスペルの要素もしっかり取り込んで、その部分はファンキー・ジャズの枠を超えて、ソウル・ジャズの先駆け的演奏になっている。長きに渡って、ラムゼイ・ルイスのトリオのリズム&ビートをを支える続けることとなる相棒のベースのエル・ディー・ヤング、ドラムのレッド・ホルト、どちらもパフォーマンスもなかなかイケる。

こういう雰囲気のピアノ・トリオがあるとは思わなかった。こってこてのファンクネス、ゴスペルの要素の取り込み、聴いた後から「ラムゼイ・ルイス」の仕業と知って至極納得。しかし、これだけ力強いタッチなのに、ラムゼイ・ルイスの指って、結構回っている。この盤では「ラムゼイ・ルイスはテクニシャン」だということを再認識させてくれる。僕はこの盤のラムゼイ・ルイス、好きだなあ。
 
 
 

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2020年7月16日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・177

ジャズを聴き始めてはや40年あまり。所有するアルバムの数も、リアルのジャズ喫茶が開けるほどの枚数になり、ジャズ盤紹介本などで紹介されるアルバムについては、ほぼ、一度は聴いたことがあるものばかりになった。しかし、それでも、まだ知らない、未知のジャズマンの好盤にバッタリ出会うのだから、ジャズの裾野は広い。

Lafayette Harris Jr. Trio『You Can’t Lose with the Blues』(写真左)。2018年5月3日、NYのVan Gelder Recording Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Lafayette Harris Jr. (p), Peter Washington (b), Lewis Nash (ds)。リーダーの「Lafayette Harris Jr.」を僕は全く知らなかった。今回は「ジャケ買い」。なんか、良い音が聴けそうなジャケットなのだ。

まず「Lafayette Harris Jr. = ラファイエット・ハリスJr.」とは誰か。1963年生まれ。フィラデルフィア出身、NYブルックリン在住。幼少時代に教会音楽を体験、R&Bバンドやファンクバンドに所属。そして、ジャズについては、ケニー・バロンやバリー・ハリス、サミー・プライスらに師事。今年で57歳。ベテランの域に達した、ファンキーでソウルフルなピアニストである。でも、僕は今まで全く知らなかった。

サイドマンが良いのもこの盤をチョイスした理由。ベースのピーター・ワシントンは渋く堅実なアコースティック・ベースが身上。そして、ドラムのルイス・ナッシュは燻し銀の様なクールで小粋なドラミングで鳴らしたベテラン。この二人がリズム隊としてサポートするのだ。その内容は悪かろう筈が無い。 
 
 
You-cant-lose-with-the-blues  
 
 
ラファイエット・ハリスJr. のピアノはオーソドックスな純ジャズ志向。ハードバップ〜ファンキー・ジャズの弾き回し。実に判りやすく、その弾き回しはソウルフル。ブルージーであり、ポジティヴであり、グルーヴィー。聴いていて、思わず足でリズムを取り、思わず頭が微かに揺れる。それでいてファンクネスの度合いは適度。とても上品なファンクネス。俗っぽくならない、ちょっと凛とした弾き回し。

収録曲は全12曲、3曲がラファイエットのオリジナル曲でなかでも「You Can't Lose With The Blues」は上質のブルースナンバー。残りはスタンダード曲。ビル・エヴァンスで有名な「Ev’ry Time We Say Goodbye」はファンクネス漂うソウルフルな弾きっぷりに耳をそばだてる。パーカー作のビ・バップ曲「Bloomdido」はファンキーな弾回しがユニーク。「Please Send Me Someone to Love」では、ソロ・ピアノを披露している。これがまた絶品。

この盤、ルディ・ヴァン・ゲルダースタジオでの録音で、長い間ルディ・ヴァン・ゲルダーのアシスタント・エンジニアを努めていたモーリン・シックラーの録音。これがなかなか良い雰囲気。この録音の良さもこの盤の特筆すべき事項。録音も良しのオーソドックスなピアノ・トリオ盤。我がバーチャル音楽喫茶『松和』ではヘビロテ盤となっております。
 
 
 

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  ・『You’re Only Lonely』 1979

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  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

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  ・太田裕美『手作りの画集』

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2020年6月15日 (月曜日)

1970年代クインシーの第一歩

久々に「クインシー・ジョーンズ」を聴き直している。特に1970年代。クインシー・ジョーンズのビッグバンドが一番充実していた時代である。クインシーのアレンジは「融合」志向。1960年代から、ジャズをベースとしながらも、他のジャンルの音世界と融合して、クインシー独特の音世界を創り出してきた。

そして、1970年代のクインシーは「R&B」をメインとした米国ルーツ・ミュージック、アフリカン・アメリカンのルーツ・ミュージックをピックアップした、例えばソウル、R&B、そしてゴスペルとの融合。そして、いち早い「フュージョン・ジャズ」への適応。そんなクインシー独特の個性を反映したビッグバンド・ミュージックを収録したアルバムが多数リリースされている。その先鞭をつけたのがこのアルバム。

Quincy Jones『Smackwater Jack』(写真)。1971年の作品。ちなみにパーソネルは、メインストリーム・ジャズ系、クロスオーバー・ジャズ系の一流ミュージシャンが多数参加している。主だった者を上げると、Freddie Hubbard (flh), Eric Gale, Jim Hall, Joe Beck (g), Toots Thielemans (harmonica), Grady Tate (ds, perc), Bob James, Joe Sample (key), Jaki Byard, Monty Alexander (p), Jimmy Smith (org), Milt Jackson (vib), Chuck Rainey, Bob Cranshaw, Ray Brown (b) 等々、新旧織り交ぜた優れもの集団。
 
 
Smackwater-jack
 
 
アレンジが素晴らしい。かつ、選曲がユニーク。冒頭、タイトル曲の「Smackwater Jack」は、1971年のキャロル・キングの名盤 『Tapestry』収録の名曲。この名曲をいち早く採用し、グルーヴ感溢れる、クールでR&B風なアレンジを施している。続く2曲目の「Cast Your Fate To The Wind」はメロウな名演で、既に後のフュージョン・ジャズの「ソフト&メロウ」を先取りしている。

3曲目の「Ironside」は、邦題「鬼警部アイアンサイドのテーマ」。イントロのサイレン音、ブラスのユニゾン&ハーモニーを聴くだけで「ああ、あれか」とニンマリする有名曲。我が国でもテレビ番組やコマーシャルのBGMに使われている。続く4曲目の「What's Going On」はマーヴィン・ゲイの名曲のカヴァー。この曲はジャズの世界で結構カヴァーされているが、このクインシー版のカヴァーが秀逸。前半のボーカル部も良い雰囲気だし、後半のインストは、1971年にして極上のフュージョン・ジャズな展開。惚れ惚れする。

続く「Theme from "The Anderson Tapes”」は極上のジャズ・ファンク。ビル・コスビーのヴォーカルをフューチャリングした「Hikky Burr」もクールでジャジーなR&B風アレンジが効いている。1970年代のクロスオーバー〜フュージョン・ジャズの雰囲気を先取りした、クインシーのビッグバンド・サウンドは実に「新しい」。正統なビッグバンド・ジャズという観点では、このクインシーのビッグバンドは「異端」。しかし、今の耳で聴くと実に「新しい」。今でも古さを感じさせないのは流石だ。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.06.12更新。

  ・『Bobby Caldwell』 1978

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  ・Led Zeppelin Ⅲ (1970)

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  ・太田裕美『心が風邪をひいた日』
 

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2020年6月 2日 (火曜日)

日本製のソウル・ジャズがある

我が国では、ソウル・ジャズやジャズ・ファンクは「俗っぽい」ものとされ、ジャズの中でまともに扱われることは無かった。特に、1970年代に入ってからは、ジャズはマニアの聴くものとされていて、そのマニアのジャズ者の方々は「硬派」な人が多い。ハードバップ、モード・ジャズ、フリー・ジャズが絶対であり、ファンキー・ジャズやソウル・ジャズは認めない、という極端に走るジャズ者の方々が多かった様に思う。

本田竹彦『What's Going on』(写真)。1973年の録音。ちなみにパーソネルは、本田竹彦 (p, el-p), 伏見哲夫, 森川周三 (tp), Teddy Adams (as), 峰厚介 (as), 武田和命 (ts), Ken Lawson (g), 川端民生 (b), 楠本卓司, James Cheek (ds), 今村裕司 (conga)。11人編成。ビッグバンドまではいかないまでも、ビッグバンドまがいの分厚い演奏が格好良い。

僕が、日本には「ソウル・ジャズ、または、ジャズ・ファンク」は無いのかな、と思っていたのが1990年代。やっぱり硬派なジャズ者の方々がメインの我が国のジャズ・シーン。俗っぽいものは基本的に売れない。だからレコード会社も作らない。と思っていたら、2000年代後半、2008年だったかこの盤に出会い、ありゃりゃ、日本にも「ソウル・ジャズ、または、ジャズ・ファンク」な盤があったんや、と感動した。
 
 
Whats-going-on  
 
 
収録されていた曲を見渡せば、当時のソウル・ミュージック、R&Bの好曲をカヴァーしている。どの曲も、日本人特有のカラッカラに乾いたファンクネスが蔓延、これまた日本人独特の端正で整然としたユニゾン&ハーモニー。いずれも結構有名な曲のカヴァーなので、イージーリスニングっぽくなると思いきや、ジャズ演奏の基本はしっかりと押さえている様で、しっかりとジャズに聴こえるところがこの盤の良いところ。

本田はアコピのみならず、エレピも弾きこなしており、どちらも「乾いたファンクネス」がしっかり漂うところがニクい。バンド全体の演奏の雰囲気は、ビートはジャズ・ロック、旋律はソウル・ジャズ、または、ジャズ・ファンク。演奏自体に破綻は全く無い。優等的演奏。それでも、原曲の良さが秀でていて、ライトなソウル・ジャズ、または、ジャズ・ファンクとして、上手くまとまっている。

この盤によって、本田は我が国で「黒人的なプレイができるとピアニスト」という評価を受けるようになる。しかし、この「ソウル・ジャズ、または、ジャズ・ファンク」路線を踏襲すること無く、メインストリーム系ジャズの佳作を数枚リリース。そして1978年、突如、峰厚介らと純日本フュージョン・グループ、ネイティブ・サンを結成し、人気バンドの一員として時代の寵児の1人となる。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて      2020.05.11更新。

  ・『Another Page』 1983

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.05.24更新。

  ・Led Zeppelin Ⅱ (1969)

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年5月27日 (水曜日)

軽快なフュージョン・ファンク

ハードバップの主だったジャズマンは、1960年代の「ジャズの多様化の時代」を様々な工夫とテクニックで乗り切った。しかし、商業ロックの台頭により、ジャズはポップスのメイン・ステージから滑り落ちることとなる。そして、1970年代はロックとの融合を図った「クロスオーバー・ジャズ」、そして、その発展形の「フュージョン・ジャズ」の隆盛に対して、適応できたジャズマンと出来なかったジャズマンに分かれていった。

Ramsey Lewis『Tequila Mockingbird』(写真左)。1977年、 Columbia Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルを見渡すと、主だったところでは、Ramsey Lewis (p, elp, harpsichord, syn), Ron Harris, Verdin White (b), Keith Howard, Leon Ndugu Chancler, Fred White (ds), Byron Gregory, Al McKay, Johnny Graham (g), Derf Reklaw Raheem, Philip Bailey, Victor Feldman (perc) 辺りかな。ここにファンキーで洒落たホーンセクションが加わる。

Ramsey Lewis(ラムゼイ・ルイス)は、1960年代、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズで鳴らしたピアニスト。ジャズの大衆化に大いに貢献したのだが、商業ロックの台頭には対抗できなかった。しかし、1970年代のロックとの融合を図った「クロスオーバー・ジャズ」、そして、その発展形の「フュージョン・ジャズ」には、自らのファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズのイメージを変えること無く器用に適応し、人気ミュージシャンとして活躍していた。
 
 
Tequila-mockingbird
 
 
そんなラムゼイ・ルイスのフュージョン・ジャズの好盤がこの『Tequila Mockingbird』である。本盤のプロデュースは Bert deCoteauxと、EW&FのメンバーだったLarry Dunnが担当、フュージョン・ジャズの中でも、ファンク色の濃い「フュージョン・ファンク」志向の盤。但し、フュージョン・ファンクと言うが、そのリズム&ビートはライトなもの。軽快で明るいフュージョン・ファンクである。

ジャズ・ファンク〜フュージョンなダンス音楽の冒頭のタイトル曲「Tequila Mockingbird」が軽快で小粋。滑らかなフレーズが印象的な、2曲目「Wandering Rose」、そして続くは、絵に描いた様なフュージョン・ナンバー「Skippin'」、ラテンの濃厚な雰囲気満載の「Camino El Bueno」など、どの収録曲もジャズ・ファンクしていて、聴いていて思わず腰が動き、足でリズムを取ってしまう。

ソフト&メロウなフュージョン・ジャズとは趣が異なる、ラムゼイ・ルイスのフュージョン・ファンク。日本で流行のフュージョン・ジャズとは違った、趣味の良いライトで軽やかなファンクネス漂うフュージョン・ファンクは、我が国では受けなかった思い出がある。でも、僕はこの盤、好きなんだよな。可愛い鳥のイラストのジャケットも良い。実は、フュージョン・ジャズの隠れ好盤だと思っている。
 
 
 

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2020年5月21日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・170

1960年代に入って、ハードバップは様々な個性を持ったジャズに枝分かれしていった。その1つに、1960年代後半から1970年代にかけて、R&B(ソウル・ミュージック)の隆盛と共に、そのエッセンスをジャズに取り込んだ、ファンキー・ジャズの発展形「ソウル・ジャズ」がある。

その特徴は、押し並べて「ブルースのフィーリングをさらに強調し、ゴスペルの要素も加えた、ファンクネス濃厚でダンサフルな」ジャズ。ソウル・ミュージックをジャズにそっくり置き換えた、と解釈しても良い。それだけ、ポップで聴いていてダンサフルなジャズである。

しかしながら、我が国では、あからさまに「こってこてファンキー」で、思わず腰がウネウネ動くような「俗っぽさ」が硬派なジャズ者の方々から敬遠され、ソウル・ジャズは、しばらくの間、封印された状態になっていた。

Gary Chandler『Outlook』(写真)。1972年の作品。ちなみにパーソネルは、Gary Chandler (tp), Harold Ousley (ts), Dick Griffin (tb), Cornell Dupree (g), Ceasar Frazier (org), Gordon Edwards (b: A1, B1, B3), Buddy Caldwell (Congas, Tambourine: A1, B1 ~ B3), Idris Muhammad (ds: A1, B1 ~ B3), Robert Battle (ds: A2)。ルディ・ヴァン・ゲルダーが録音エンジニアを務めており、意外と音が良い。
 
 
Outlook-gary-chandler  
 
 
パーソネルを見渡すと、文字通りソウルフルな、ソウル・ジャズが得意なジャズマンの名前がズラリと並ぶ。リーダーのゲイリー・チャンドラーは、ルー・ドナルドソンのグループでも活躍したファンキーなトランペッター。音が太くてメリハリが効いている。良く唄うトランペットで、ソウル・ミュージック特有のファンキーではあるが、どこか哀愁感溢れるフレーズを印象深く吹き回している。

ソフト&メロウなど全く無縁の「ハードボイルド」なパフォーマンスが、いかにもソウル・ジャズらしい。オルガンが良い音出している。グルーヴ感丸出しで、ファンキーにうねる。これも後のジャズ・ファンクに通じる、ソウル・ジャズ独特のオルガンのパフォーマンス。

リズム隊も負けずにソウルフル。特にコンガの音が効いている。チャカポコ〜チャカチャカと軽快なリズムが疾走し、ダンサフルなビートが途絶えること無く「うねる」。思わず腰が動く、思わず足が動く。

この盤、明らかにソウル・ジャズの好盤である。ソウル・ジャズが我が国で復権してきたのは、21世紀に入ってからである。これもネットのお陰。我が国では全く陽の目を見ることが無かったソウル・ジャズではあるが、やっとこの10年来、再評価されつつある。これからもっと、ソウル・ジャズの好盤を発掘していきたいと思っている。
 
 
 

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