2023年3月29日 (水曜日)

ルーさんとオルガンとギターと

1950〜1960年代のブルーノート・レーベルには、レーベルにずっと所属した「お抱えジャズマン」がいた。アルト・サックスのルー・ドナルドソンとジャキー・マクリーン、テナー・サックスのアイク・ケベック、ピアノのホレス・シルヴァー、トランペットのドナルド・バードなど、ブルーノートをメインにリーダー作をリリースし続けた強者共である。

ブルーノート・レーベルは中小規模の零細レーベルだったので資金力は無い。営業力も弱い。よって、ストリングスを交えてのゴージャズな編成での録音や、ビッグバンドなどの大人数編成の録音が出来ない。アルバムを米国全土で売り上げる営業力も期待出来ない。

それをやりたければ、期待するならば、大手のジャズ・レーベルに移籍する必要があった。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンに見出されて、メジャーな存在になったジャズマンの中で、そういう大手レーベルに移籍していったジャズマンも多くいる。

それでも、ライオンは自らが見出したジャズマンの大手レーベルへの移籍を喜んだ。自分が見出したジャズマンが大手のレーベルに認められて、メジャーな存在になっていく。それがライオンにとっては無上の喜びだったそうだ。ライオンは「ジャズマン・ファースト」なレーベル経営者であり、プロデューサーであったことが良く判る。

しかし、逆に、そのライオンのプロデュースの手腕とジャズマンに対する真摯な対応にほだされて、ブルーノートの「お抱えジャズマン」として、ずっと残ったジャズマンも多くいるのも事実。ライオンの人柄に惚れて惹かれてブルーノートに留まり、ライオンが引退した後も、1970年代半ば、ブルーノートが活動停止するまで、ずっと「お抱えジャズマン」であり続けた。
 

Lou-donaldsongood-gracious

 
Lou Donaldson『Good Gracious!』(写真左)。1963年1月24日の録音。ブルーノートの4125番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Grant Green (g), Big John Patton (org), Ben Dixon (ds)。ブルーノートのお抱えアルト・サックス奏者のルー・ドナルドソンがリーダー、ピアノレス、代わりにオルガンが入ってベースレス(ベースラインはオルガンが代替)、ギターを加えたカルテット編成。

もともと、ルーさんのアルト・サックスは、バップでファンキー、音は明るくフレーズは爽快。アーティスティックな面を突き詰めたジャズより、ポップで聴き心地の良いソウルフルなジャズに向くアルト・サックス。そんなルーさんのアルト・サックスは、ジョン・パットンの正統でどこかポップなファンキー・オルガンとの相性抜群。バップでご機嫌な演奏を繰り広げる。

そして、グリーンのパッキパキ硬質なシングルトーンが個性のファンキー・ギターとの相性も抜群。ルーさんのアルト・サックスは流麗で爽快。それに相対するグリーンのギターは、シングルトーンで硬質でバッキバキと真逆。そんなお互い真逆の音が、溢れるようなファンクネスという「共通項」を基に、ソウルフルでご機嫌な演奏を繰り広げる。

ディクソンのファンキーなドラミングは、そんなアルト・サックス、オルガン、ギターを、ソウルフルに鼓舞して、引き立てる。このディクソンもドラミングも、この盤の「キモ」。

あまり、ブルーノート盤の紹介に出てこないルーさんのリーダー作なんですが、内容は「間違いの無い」、バップでファンキーでソウルフルな「ご機嫌なオルガン・ジャズ」。ルーさんのアルト・サックスもその個性が十分に輝いていて、この盤、ファンキー&ソウル・ジャズの好盤だと思います。お勧め。
 
 

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2023年3月27日 (月曜日)

テキサス・テナーの雄の好盤

ブルーノートの4100番台は、1962年〜1965年に渡ってリリースされたアルバムで全100枚。1962年~1965年と言えば、ジャズの世界はハードバップ全盛期を経て、多様化の時代に突入していた。そして、ブルーノートはこの4100番台で、この「ジャズの多様化」にしっかりと応えている。

多様化とは、ハードバップからジャズのアーティスティックな部分にスポットを当てた「モード・ジャズ」「フリー・ジャズ」「スピリチュアル・ジャズ」が、ポップで大衆向けの音楽として「ファンキー・ジャズ」「ソウル・ジャズ」「ラテン・ジャズ」と、ハードバップから、様々な志向毎にジャズ演奏のトレンドが派生したことを指す。

Don Wilkerson『Elder Don』(写真左)。1962年5月3日の録音。ブルーノートの4121番。ちなみにパーソネルは、Don Wilkerson (ts), John Acea (p), Grant Green (g), Lloyd Trotman (b), Willie Bobo (ds)。テキサス・テナーの雄、ドン・ウィルカーソンのテナーと、グラント・グリーンのぱっきぱきシングル・トーンなファンキー・ギターがフロントのクインテット編成。

ドン・ウィルカーソンは、1932年、米国ルイジアナ州マローヴィル生まれの、R&Bとソウル・ジャズのテナー奏者&バンド・リーダー。テキサス・テナーの雄として知られる。テキサス・テナーとは、ブルースを基調とした、骨太で気合いや根性を優先、豪快なブロウを身上とした、米国南部の男らしい荒くれテナーのこと。
 

Don-wilkersonelder-don

 
そんなテキサス・テナーが心ゆくまで楽しめる。少しラテンなリズムが入ったダンサフルで躍動感のあるテナー、アーシーでブルージーで、ややゴスペルっぽいテナー、R&B基調のソウルフルでガッツのあるテナー、そんなテキサス・テナーをウィルカーソンが全編に渡ってガンガンに吹きまくっている。

そして、フロントの相棒、グラント・グリーンのパッキパキ・ファンキー・ギターが、このウィルカーソンのテキサス・テナーにばっちり合っている。グリーンのギターは切れ味の良い、骨太なシングルトーンが身上なんだが、ウィルカーソンの骨太テキサス・ギターとの相性抜群。

そして、ファンクネスだだ漏れのグリーンのギターが、ウィルカーソンのテナーと交わって、ソウルフルなギターに変身したりして、これがまたまた聴き応えがある。このウィルカーソンのテナーとグリーンのギターの化学反応も聴きものである。

ジャズ多様化の時代に、こういうテキサス・テナーがメインのリーダー作をリリースしてくるブルーノートって、懐深く、なんて粋なんだろう。だからこそ、ブルーノートの4100番台は、当時のジャズの演奏トレンドを幅広く捉えていて、聴いて楽しく、聴いて勉強になる。そして、ジャズって本当に他の音楽ジャンルに対して「懐が深い」なあ、と再認識した次第。
 
 

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2023年3月26日 (日曜日)

スリー・サウンズの音の変化

ブルーノートの4100番台の聴き直しを再開した。4100番台のカタログをチェックしていたら、まだまだ、当ブログにアップしていない盤がかなりあることに気がついた。どうも、4000番台について、全てのアルバムの記事をアップして、全部終わった気になったとみえる(笑)。で、この盤から再開である。

The Three Sounds『It Just Got To Be』(写真左)。1960年12月13–14日の録音、1963年のリリース。ブルーノートの4120番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ブルーノートのお抱えピアノ・トリオ「スリー・サウンズ」の好盤。従来の聴き易い、ストレート・アヘッドなピアノ・トリオから、新しいイメージへの変化の兆しが聴ける。

それまでは、ストレート・アヘッドでハードバップなピアノ・トリオ。アレンジが優れていて、スタンダード曲をライトに聴き易く仕立て上げていて、とても趣味の良い、小粋で聴き応えのある盤をリリースしてきた。が、ここに来て、リーダーのピアニスト、ジーン・ハリス(写真右)は、この「スリー・サウンズ」の音を、ファンキー・ジャズからソウル・ジャズへの転換を図りだしている。

録音が1960年12月なので、この転換については判断が早い方。1960年終わりと言えば、まだソウル・ジャズは兆しがあるくらい。リリースが伸びて1963年6月にになったのも頷ける。1963年6月であれば、ソウル・ジャズが流行始めた頃なので、このリリース時期については合点がいく。
 

The-three-sounds_it-just-got-to-be

 
冒頭の「One For Renee」から、ファンキー・ジャズが基本で、そこかしこにソウル・ジャズの雰囲気が漂う演奏でダンサフル。もともとのスリー・サウンズが持っていた「アレンジ良好で趣味の良い、小粋で聴き応えのある」雰囲気はそのままに、ソウルフルなイメージが濃厚になっている。

ジーン・ハリスのピアノのフレーズは、躍動感がさらに増し、ファンクネスが濃厚になり、グルーヴ感が増強されている。ソウル・ジャズへの転換の準備はすっかり整っている様なソウルフルなピアノ。もともとファンキーなピアノを弾くが、オフビートのタッチが強調されていて、ソウル、もしくはR&B基調のピアノに変化し始めている。

そして、シンプキンスのベースとダウディー のドラムのリズム隊は、もともとファンキーなリズム&ビートを叩きだしていたが、この盤ではそこにソウルフルなグルーヴ感が追加されていて、ソウルフルなピアノに転身しつつあるハリスのピアノを、効果的にサポートし鼓舞している。

このファンキー・ジャズからソウル・ジャズへの転換は、このスリー・サウンズのメンバー3人の能力の高さと優秀なアレンジ力が故に出来ること。新しいイメージを3人の共通の認識として、それぞれが新しいイメージへの転換を図っていて、それが「板につきつつある」。それが、この盤の「聴きどころポイント」だろう。聴き心地が良いトリオ盤です。
 
 

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2023年3月 2日 (木曜日)

ワシントンJr.のリーダー作第2弾

Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア、以降、ワシントンJr.と略)。クロスオーバー&フュージョン・ジャズの名サックス奏者。しっかりと情感が込めて、力感溢れエモーショナルでハードボイルドな吹きっぷりから、ソフト&メロウに囁くように吹く繊細な吹きっぷりまで、その表現力は高度で多彩。非常に優れたサックス奏者の1人だと思うのだが、何故か我が国では人気がイマイチ。

風貌が良くないのかなあ。クロスオーバー&フュージョン・ジャズの人気のあるジャズマンは、一様に「イケメン」揃い。そういう点では、ワシントンJr.はちょっと損をしているのかなあ。風貌はどう見ても、マッチョでガテン系の風貌で、どう見ても「イケメン」風では無いし、柔和な「優男」風でも無い。でも、良いサックスを吹くんですよ。ブリリアントで重心が低くてファンキーで、説得力があり、訴求力のあるサックスを吹くんだがなあ。

Grover Washington, Jr.『All The King's Horses』(写真)。1972年5ー6月の録音。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (sax), Bob James (key, arr, cond), Richard Tee (org), Gene Bertoncini, Cornell Dupree, Eric Gale, David Spinozza (g), Marvin Stamm (tp, Flgh), Gordon Edwards, Ron Carter (b), Bernard Purdie, Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc), Ralph MacDonald (congas)。ここに、ブラス・セクションとストリングスが加わるゴージャズな布陣。
 

Grover-washington-jrall-the-kings-horses

 
このワシントンJr.のセカンド盤もフュージョン畑の優れ者達が集結。特に、キーボードに、リチャード・ティー、エレギのコーネル・デュプリーとエリック・ゲイル、そして、ベースにゴードン・エドワーズと、後の伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」のメンバーがほぼ集結しているのが目を引く。このメンバーが中心の演奏は、グルーヴ感&ファンクネス漂う「R&B志向」の素敵な演奏に仕上がっている。そう、このワシントンJr.のリーダー作第2弾は「R&B志向」の音作りがメインになっている。

ソウル・エレジャズ、と形容したら良いかと思う。ビル・ウイザースの「Lean On Me」のカバーや、エモーショナルにファンキーに吹き上げる「Love Song」、ソフト&メロウでスムースな雰囲気が素敵な「Where is The Love」等が如何にもソウルフル&ファンキー。そして、極めつけは、ジャズ・スタンダードの「Lover Man」。この「Lover Man」のエレジャズ化は、メロウな序盤からファンキーに展開していく雰囲気は、とっても「ソウルフル」。これ、本当に良い雰囲気です。この盤でイチ推しの名演。

ワシントンJr.には「ソウルフル」が良く似合う。初リーダー作は、シンプルでストレート・アヘッドな、純ジャズ志向のエレジャズだったが、今回は、アルバムの雰囲気を「ソウルフル」&「R&B」に絞ったプロデュースが大正解。この盤が「全米・Jazzチャ-ト・第1位」に輝いたのも頷ける。クロスオーバー&フュージョン・ジャズも捨てたもんじゃない。
 
 

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2023年1月 5日 (木曜日)

素敵なエレ・ジャズ・ファンク

ジャズといっても、なにも1950年代から60年代にかけての「ハード・バップ」が全てでは無い。ハード・バップは現代モダン・ジャズの源と言っても良いが全てでは無い。ハード・バップから、モード、ファンキー、ソウル、フリー、スピリチュアル、そして、電気楽器を活用したクロスオーバー、フュージョンなど、様々なバリエーションのジャズが派生している。

ジャズの好盤と言っても、なにもジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の名盤紹介にタイトルが上がるアルバムだけが好盤では無い。確かに、ジャズ盤紹介本や雑誌の名盤紹介に上がるジャズ盤は基本的に間違いが無い。

しかし、それらが全てでは無い。最近ではネットでのジャズ関連のブログやtwitterのツイートに上がるジャズ盤にも好盤、名盤の類がごまんとある。

ジャズに使用する楽器だって、なにもアコースティックな楽器だけが良い訳では無い。エレクトリックな楽器だって、良好なジャズは演奏出来る。以前は硬派なジャズ者の方々が「アコ楽器が全て、エレ楽器なんて認めない」なんて言いまくるもんだから、素直なジャズ者初心者の方々は、アコ楽器のみのジャズ盤を聴き漁る傾向にあるが、ジャズという音楽ジャンルは、楽器についても懐が深い。ジャズは基本的に楽器を選ばない。
 
Gene Harris『Nexus』(写真左)。1975年5月〜6月の録音。ブルーノート・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (key), Al Aarons (tp), George Bohanon (tb), Mike Altschul, Fred Jackson, Jr. (reeds), Lee Ritenour (g), John Rowin (g, el-b), Chuck Rainey (el-b), Kenneth Rice (ds), Ronaldo N. Jackson, Gerald Steinholtz (perc)。
 

Gene-harrisnexus

 
いわゆる「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。エレピ、シンセ大活躍。ゴスペルを基本に、ソウル、ソフト&メロウ、コズミックな音要素がごった煮の、こってこてドープなエレ・ジャズ。ファンクネスだだ漏れ、それでいて俗っぽくなく、ちょっと品が良くてスマートでアーバン。

ゴスペルの要素が強く出て、パーカッションがファンクネスを掻き立て、コズミックな音要素が面白い「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。R&Bなコーラスが魂を揺さぶり、ソフト&メロウな音世界が心を和ませる「エレクトリック・ソウル・ジャズ」。

1950年代から60年代前半は、ブルーノートのお抱えジャズ・トリオ「スリー・サウンズ」で、正統派ファンキー・ジャズなピアノで有名になったジーン・ハリス。1970年代は、様々なエレクトリック・キーボードを趣味良く駆使し、正統派なモダン・ジャズ・ピアノのリリカルな響きを覗かせつつ、フュージョン・ジャズの音要素と上手く同化しながらの「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」が見事。

確かに、この盤でのジーン・ハリスのキーボードの使い方は趣味が良く、センスがある。当時のキーボード使いの中でもトップレベルの使いこなし。これが我が国では殆ど注目されず、殆どスルーされていた訳だから、当時の我が国の「ハードバップ偏重、アコ楽器偏重」も度が過ぎていたんやなあ、と妙に感心する。

今の耳で聴けば、とても内容の濃い、上質の「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。これも素敵なジャズである。
 
 

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2022年9月 6日 (火曜日)

スイス発の「小粋なジャズ」盤

小粋なジャズ盤を探し始めて久しい。が、ジャズ盤の音を初めて耳にして以来、約50年が経過したが、未だに「この盤は聴いたことがない」という、自分にとっての「初出盤」に出会うことがある。特に、我が国では、米国ジャズほどは人気が無く、流通することが少なかった欧州盤は特にその傾向が強い。

Boillat Thérace Quintet『My Greatest Love』(写真)。1975年、スイスでのリリース。ちなみにパーソネルは、Jean-François Boillat (ac-p, el-p [Rhodes] ), Rogelio Garcia (ts, perc), Raymond Therace (ts, as,fl), Roger Vaucher (el-b), Eric Wespi (ds), guest : Benny Bailey (tp, flh)。スイスのワラ・テラセ・クインテットの1970年代レア盤のリイシューとのこと。

スイスですよ、スイス発の純ジャズ盤。1975年と言えば、我が国では米国ジャズがメインで、欧州ジャズはECMレーベルの情報がジャズ雑誌経由で流れてくる程度。欧州ジャズ盤はレコード屋ではまずお目にかかれなかった時代。そんな時代に「スイス・ジャズ」盤である。聴いたことが無いのも無理は無い、と思いつつ、2022年の今、何故にして、この1975年リリースのスイス盤がリイシューされたのか、理解に苦しむ。

しかも、このジャケット・デザインである。最初は見た時は「お洒落な聴き心地の良いジャズのコンピ盤」かと思った。しかし、ジャズ盤というのは「聴いてみるもの」である。
 

Boillat-thrace-quintetmy-greatest-love

 
冒頭の「Prompt」の洒落たフェンダー・ローズの音、軽めだがソウルフルで歌心溢れるサックス&トランペット。端正でソフト&メロウな、エレクトリック・ビートを刻むリズム隊。一聴すると、フュージョン・ジャズかな、と思うのだが、リズム&ビート含めて、しっかりと「純ジャズ」している。

選曲も1975年リリースらしく、フレディ・ハバードの「ジブラルタル」、ケニー・ドーハムの「ブルーボッサ」が入っていて、この演奏が、これまた「小粋」なのだ。クインシー・ジョーンズ・オーケストラやディジー・ガレスピー楽団に参加した、いぶし銀トランぺッター、ベニー・ベイリーがゲスト参加していて、これがまた、雰囲気の良い、リリカルで耽美的でスムースなトランペット&フリューゲルホーンを聴かせてくれる。

ガリガリ硬派の純ジャズ志向の欧州ジャズでは無く、どこかポップでライトで明るいエレ・ジャズ。それでいて、しっかりと「純ジャズ」しているから隅に置けない。リラックスして気楽に聴ける「小粋なジャズ」盤。これが、1975年のスイスでリリースされたというから驚きである。

でもなあ、このジャケットは無いよなあ。ほんと、最初見た時は「お洒落な聴き心地の良いジャズのコンピ盤」かと思いましたよ。
 
 

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2022年4月10日 (日曜日)

『Midnight Special』との兄弟盤

ジャズ・オルガンのイノベーター、ジミー・スミスは、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンに見出され、ジャズ・オルガンのスター的存在となった。当然、スミスのオルガン盤はいずれもヒットし、零細企業のブルーノートにとっては「ドル箱」だった。

が、スミスは、さらなる好条件を提示したヴァーヴに移籍する。自分が育てたジャズマンがステップアップしていくことを、アルフレッド・ライオンは一切止めることは無かった。喜んで送り出したくらいだそうだ。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音を残していった。

Jimmy Smith『Back at the Chicken Shack』(写真左)。1960年4月25日の録音。1963年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Kenny Burrell (g), Donald Bailey (ds)。前作の名盤『Midnight Special』と同一メンバー、同一日のセッション。

「Back at the Chicken Shack」と「Messy Bessie」2曲がギター入りカルテットの演奏、「When I Grow Too Old to Dream」と「Minor Chant」、CDボートラの「On the Sunny Side of the Street」は、オルガン+テナー+ドラムのトリオ演奏。名盤『Midnight Special』と同一セッションである。『Midnight Special』との兄弟盤的位置づけの盤で、演奏内容は「折り紙付き」である。
 

Back-at-the-chicken-shack_jimmy-smith

 
ジミー・スミスは1962年にヴァーヴ・レコードに移籍したので、このブルーノート盤はスミスの移籍後のリリースになる。ジミー・スミスのオルガン盤は、ブルーノート・レーベルでの「ドル箱」、そして、この『Midnight Special』セッションの未発表音源の出来が凄い良い。当然、アルバム化してリリースするよな、というところか。

ジミー・スミスがハード・バップから、ソウル・ジャズに深化した、歴史的セッションの一部である。初期の頃の様に、攻撃的にオルガンを弾きまくること無く、余裕を持った包み込む様なオルガンの音、ファンクネスだだ漏れ、アーバンでジャジーでソウルフルな、ジミー・スミスのソウル・ジャズがこの盤の中に詰まっている。

『Midnight Special』とセットで聴き通したい。スタンリー・タレンタインのテナー・サックスが「ソウル・ジャズ」を具現化、スミスのオルガンと共に、とってもソウルフルな響きが魅力です。長年の相棒、ベイリーのドラム、漆黒アーバンでブルージーなバレルのギターも良し。良いアルバムです。
 
 

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2022年3月15日 (火曜日)

聴いて楽しい「踊れる」ジャズ

ブルーノート60周年を記念して1998年から始まった、ルディ・ヴァン・ゲルダーの手による24ビット・リマスター・シリーズ「RVG Edition」は、今まで、聴いたことが無かった、見たことが無かったアルバムも復刻されていて、CDコレクターとしては、貴重な復刻シリーズだった。この復刻を切っ掛けに、ブルーノートの1500番台、4000〜4200番台のアルバム・コレクションをコンプリートしたのも、今となっては懐かしい思い出だ。

Don Wilkerson『Preach Brother!』(写真左)。1962年6月18日の録音。ブルーノートの4107番。ちなみにパーソネルは、Don Wilkerson (ts, tambourine), Sonny Clark (p), Grant Green (g), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds), Jual Curtis (tambourine, tracks 3-4)。アルバムのキャッチ・フレーズは、“テキサス・テナー”の雄、ドン・ウィルカーソンによる「踊れる」ジャズ・アルバム。

ドン・ウィルカーソン。僕はこのサックス奏者の名前を全く知らなかった。1998年から始まった一連の復刻の中で、初めて、ドン・ウィルカーソンの名前を知った。こういう時にはライナーノーツが役に立つ。ウィルカーソンは、1950年代後半、レイ・チャールズ (p,vo)との共演で注目された、ソウル・ミュージック畑のサックス奏者。
 

Preach_brother_1

 
このウィルカーソンのサックスがとてもソウルフル。加えて、ソウル・ビートが利いていて、グルーヴ感が半端ない。収録されたどの演奏も実にダンサフル。聴いていると、自然と足でリズムを取り始め、上半身が左右に動き始める。それもそのはず、全編を通して、リーダーのウィルカーソンをはじめ、メンバー全員が心から「ソウルフル」なプレイを楽しんでいるのが、ビンビンに伝わってくるのだ。

バックのリズム隊がこれまた「ソウルフル」。見れば、ハードバップの精鋭達なんだが、思いっ切りソウルフルでグルーヴ感溢れる演奏で、ウィルカーソンのソウルフルなテナーをサポートし鼓舞する。ソニー・クラークが、グラント・グリーンが、ファンキーでソウルフルでダンサフルなフレーズを叩き出せば、ワーレンとヒギンスが、ソウルフルなリズム&ビートを叩き出す。

とにかく聴いて楽しい「踊れる」ジャズ。「聴いていて体が動いてこないとしたら、それは良質なジャズではない」と言ったのはアート・ブレイキー。そういう切り口では、この盤の演奏は「ジャズ」だろう。聴いて楽しいからといって、敬遠すべき「俗っぽい」ジャズでは無い。内容的にはテクニック、アレンジ、共にしっかりした、硬派で楽しいジャズ盤である。
 
 

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2022年2月13日 (日曜日)

硬派グリーンのポップな異色盤

グラント・グリーン(Grant Green)は、パッキパキな一本弾きファンキー・ギタリスト。そのブルージーかつジャジーなファンキー・ギターは唯一無二なもので、振り返って聴くにつけ、実にジャズらしいギターだなあ、と感心する。しかし、グリーンの現役当時は、あまりウケなかったみたいで、ブルーノートの売り上げに貢献した、という話は聞いたことが無い。

Grant Green 『Sunday Mornin'』(写真左)。1961年7月4日の録音。ブルーノートの4099番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Kenny Drew (p), Ben Tucker (b), Ben Dixon (ds)。

パッキパキなファンキー・ギタリスト、グラント・グリーンが単独フロントのカルテット編成。漆黒ブルージーなバップ・ピアニスト、ケニー・ドリューがピアノを担当しているのが珍しい組合せ。

1961年といえば、ハードバップなジャズが技術的にピークを迎え、それぞれの特質を活かした「多様化」に踏み出した頃。ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、フリー・ジャズ、モード・ジャズなど、ジャズのポップ化、イージーリスニング化、逆に、アート志向、精神性志向など、ジャズを音楽芸術のひとつとして捉える向きなど、様々な志向のジャズが現れ出でていた。
 

Sunday-mornin

 
このグリーンの『Sunday Mornin'』は、パッキパキな一本弾きファンキー・ギターの「大衆化」盤である。一本弾きが基本なので、メロディーをクッキリ表現し易い。そこに目を付けたのか、アルバム全体の雰囲気としては、グリーンのギターの個性を活かした「イージーリスニング志向」の演奏、という感が強い。

選曲をみるとそれが良く判る。当時の映画音楽「Exodus(栄光への脱出)」とか、聴き心地の良いスタンダード曲「God Bless the Child」、そして、マイルスの「So What」のポップ化には思わず苦笑い。グリーンの自作曲も主メロディーがキャッチャーで耳当たりの良いものばかりで、グリーンのギターの個性である「一本弾き」が活きて、聴き心地が良い。

ただし、パッキパキでファンキーなところは全く変わっていないので、「イージーリスニング志向」の演奏はしていても、どっぷりジャジーでブルージー、硬派でメインストリーム志向な雰囲気は相変わらずで、ポップでムーディーな雰囲気を得るには至っていない。逆に、パッキパキなファンキー・ギタリスト、グラント・グリーンが「ポップな弾き回しをした」企画盤として捉えると、グラント・グリーンのディスコグラフィーの中での「異色盤」と評価出来て座りが良い。

とにかく、ブルーノート・レーベルには、総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンには、ジャズのポップ化、大衆化は似合わない、ということが、このグラント・グリーンの「ポップな弾き回しをした」異色盤を聴いても良く判る。
 
 
 
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2022年2月 4日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・227

スタンリー・タレンタインは、ダンディズム溢れる、ファンキー&ソウルフルなテナー・サックス奏者。兄にトランペッターのトミー・タレンタインがいる。長い名前なので、スタンリー・タレンタインは「スタタレ」、トミー・タレンタインは「トミタレ」と省略して呼んでいる。

スタタレのテナー・サックスは個性が強い。1曲聴けば、スタタレと判る、骨太でブレの無い、こってこてファンキーで「黒い」テナー。フレーズを吹けば、歌心満点のブロウで、こってこてソウルフル。ストレートな吹きっぷりの「どテナー」である。スタタレのテナーを聴けばいつも「全くジャズらしいテナーやなあ」と思うのだ。

が、何故か我が国では人気はイマイチ。ジャズに精神性を求める向きが強い我が国では、スタタレの様な、こってこてファンキー&ソウルフルな判り易いテナーは「俗っぽい」とか、「ポップ過ぎる」とか言われて、硬派なジャズ者であればあるほど、スタタレのテナーを遠ざけてきた。でもなあ、スタタレのテナーほど、ジャズっぽいテナーは無いんだけどなあ、というのが、僕の本音。

Stanley Turrentine『That's Where It's At』(写真左)。1962年1月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Les McCann (p), Herbie Lewis (b), Otis Finch (ds)。ソウル・ジャズなピアニスト、レス・マッキャンのトリオがリズム・セクションに付いた、スタタレのテナーがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」な編成。
 

Thats-where-its-at

 
バックにレス・マッキャンのピアノが控えているので、アルバム全体の雰囲気は「ソウル・ジャズ」。硬派なジャズ者の方々が聞けば眉をひそめそうだが、そこはブルーノート・レーベル。過度に俗っぽくならず、過度にポップにならず、真摯でアーティスティックな「ソウル・ジャズ」に仕上げているところは流石である。

もともとスタタレのテナーは「ファンキー&ソウルフル」なので、レス・マッキャンのトリオをバックにしても、違和感は全くない。どころか、ばっちりフィットしている。レコーディングの為の急造カルテットとは思えない、素敵な一体感がこの盤の魅力の1つ。こういうところも、さすがはブルーノート、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの敏腕の成せる技である。

しかも、スタタレのワンホーン・カルテットなので、スタタレのテナーの個性がしっかり確認出来る。そういう意味でも、バックのリズム・セクションが、ソウル・ジャズなピアニスト、レス・マッキャンのトリオであることに意味があって、マッキャンのソウル・ジャズな要素に、スタタレのテナーの個性である「ファンキー&ソウルフル」がしっかり反応している。

この盤、意外と「隠れた名盤」だと思うんだけど、どうだろう。真摯でアーティスティックな「ソウル・ジャズ」の好例として、我がヴァーチャル音楽喫茶『松和』では息の長い、長年のヘビロテ盤で、時々、思い出しては聴いています。ジャケットもいかにもブルーノートらしい、アーティスティックな、味のあるデザインで「グッド」ですね。
 
 
 
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