2024年1月 4日 (木曜日)

心地良きハリスのエレ・グルーヴ

今年の冬は暖冬傾向だとは言うが基本的には冬、当然、寒い日が続く。寒い日には暖かい部屋でジャズを聴く、と言うのが定番なんだが、聴くジャズもクールなジャズは心までがクールになりそうでちょっと。ファンキーでソウルフルなジャズが温まって良い。と言うことで、この冬は「エディ・ハリス」を集中して聴き直している。

「趣味が悪いなあ」と言う声が聞こえてきそうなんだが、それもそのはず。エディ・ハリスは、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズがメイン。電気増幅サックスを導入したことでも知られ、それ故、我が国では「キワモノのテナー奏者」扱いされる傾向がある。彼のテナーは素性が良く、彼の奏でるソウルフルなジャズ・ファンクは今の耳にもしっかりと訴求する優れものである。

Eddie Harris『Plug Me In』(写真左)。1968年3月14 & 15日の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, varitone), Melvin Lastie, Joe Newman, Jimmy Owens (tp), Garnett Brown (tb), Haywood Henry (bs), Jodie Christian (p), Ron Carter, Melvin Jackson (b), Chuck Rainey (el-b), Richard Smith, Grady Tate (ds)。
 

Eddie-harrisplug-me-in  

 
前作『Mean Greens』で、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身。この盤では、セルマー社が開発した「ヴァリトーン」を大々的に導入している。「ヴァリトーン」とは、サックスのネック部分にピックアップを取り付け、アンプを通して変調させたり、エフェクターのオクターバーやコーラスのようなことができる代物。

冒頭の「 Live Right Now」は、エレクトリック・サックスが炸裂、渋〜いジャズ・ファンクが心地よい。4曲目の「Lovely Is Today」はエレベの絡みが実にファンキー。そして、面白いのは、5曲目の「Theme In Search Of A T.V. Commercial」。ダイナミックでスリリングなアレンジのビッグバンド・ジャズ・ファンクで、ビッグバンドをバックに、ソウルフルなハリスのテナーが乱舞する。

この盤の収録曲、現代においてサンプリングされているものが多い。それだけ、ソウルフルでファンキーで魅力的なフレーズが詰まっている。加えて、自在に音色を変化させ、ノリに乗ったブロウを吹き上げる、エレクトリック・サックスのグルーヴの心地よさ。クロスオーバー・ファンクとして、十分に楽しめる好盤です。
 
 

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2023年12月23日 (土曜日)

エディ・ハリスのファンキーな盤

エディ・ハリス(Eddie Harriss)は、『The In Sound』の「Freedom Jazz Dance」が転換点となって、聴き手に飽きられつつあった、イージーリスニング志向のジャズと決別。アーシーなファンキー・ジャズを経て、一気に、ソウルフルなエレ・ジャズ・ファンクへ志向を変えていく。この「志向の変化」を追いかけていくのが、意外と面白い。

Eddie Harris『The Tender Storm』(写真左)。1966年3月と9月の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, varitone), Ray Codrington (tp, track 5), Cedar Walton (p), Ron Carter (b), Billy Higgins (ds, track 5), Bobby Thomas (ds, tracks 1-4 & 6)。先にご紹介した『Mean Greens』(2023年12月20日のブログ)の次のリーダー作になる。

『Mean Greens』で、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンクに転身。録音が1966年3, 6月だったので、今回ご紹介する『The Tender Storm』と全く同時期の録音になる。

どちらも1966年のリリース。しかし、こちらの『The Tender Storm』は、アーシーでソウルフルなファンキー・ジャズ満載。どちらかと言えば、こちらの『The Tender Storm』の方が、メインストリーム系の純ジャズの面影濃厚である。
 

Eddie-harristhe-tender-storm

 
冒頭の「When a Man Loves a Woman」のアーシーでソウルフルな、どこかゴスペルの雰囲気濃厚なファンキー・ジャズが良い。まず、エディ・ハリスのテナーが、あっさりとした「ソウルフル&ファンキー」なテナーで唄いあげる。そんなエディ・ハリスのテナーをバックのシダー・ウォルトンが、これまた趣味の良いファンキーなピアノでガッチリとバッキングする。

2局目以降、この「アーシーでソウルフルな、どこかゴスペルの雰囲気濃厚なファンキー・ジャズ」で突っ走るかと思いきや、とても趣味の良い、ダイナミックでソウルフルなファンキー・ジャズが展開される。

が、これがとても良い内容なのだ。演奏レベルも高く、完成度の高いファンキー・ジャズ。エディ・ハリスのテナーも良いが、この盤では、ピアノのシダー・ウォルトンが大活躍である。流麗でガッツのあるファンキー・ピアノで、バンド全体をグイグイ引っ張っていく。

同時期に「趣味の良い、ダイナミックでソウルフルなファンキー・ジャズ」と「ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンク」。おそらく、エディ・ハリスは「どちらの方向に進むのか」自らがしっかりと吟味した結果が、今回の『The Tender Storm』であり、前にご紹介した『Mean Greens』なんだろう。

そして、エディ・ハリスは次作『The Electrifying Eddie Harris』で、電気サックスを取り入れ、着実に「ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンク」志向に舵を切る。

2023年12月20日 (水曜日)

エディ・ハリスの「転身」盤です

エディ・ハリス(Eddie Harris)を聴き直すことにした。もともと、Les McCann and Eddie Harris『Swiss Movement』を聴いて、エディ・ハリスの名を知った。ソウルフルなテナーがとても気に入った。それから、彼のリーダー作を2〜3枚聴いて以降、忘れた存在になっていた。

エディ・ハリスは、シカゴ出身のテナー奏者。スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズでデビュー、1966年にソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身。電気増幅サックスを導入したことでも知られ、それ故、我が国では「キワモノのテナー奏者」扱いされる傾向がある。が、彼のテナーは素性が良く、彼の奏でるソウルフルなジャズ・ファンクは今の耳にもしっかりと訴求する優れものである。

Eddie Harris『Mean Greens』(写真左)。1966年3, 6月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, el-p), Ray Codrington (tp, tamb), Cedar Walton (p), Sonny Philips (org), Ron Carter (b), Billy Higgins (ds), Melvin Jackson (b), Bucky Taylor (ds), Ray Codrington, Ray Barretto & Bucky Taylor (perc)。
 

Eddie-harrismean-greens

 
革新的なラテン リズム、グルーヴ感溢れる柔らかなトーン。エディ・ハリスのジャズ・ファンク、クロスオーバー・ジャズの走り的な、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身した最初のアルバムだろう。もともとデビュー当時は、スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズを趣味よくやっていたのだが、この盤で突然、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身である。

ソウルフルなテナーを吹き上げる、ストレートなジャズ・ファンク、タイトル曲の「Mean Greens」。ジーン・ハリスのカヴァーから、エディ・ハリス自身のセルフ・カヴァーなどで知られる代表曲「Listen Here」。「Goin' Home」のワイルドで柔軟なシャッフル。アルバム全編に渡って、エディ・ハリスならでは、のジャズ・ファンク~ソウル・ジャズが展開される。

ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンク。ラテンのリズムの導入など、クロスオーバー的な音の融合もあり、単純にソウル・ジャズの範疇に留めるよりは、先に控えるクロスオーバーなジャズ・ファンクの先駆と捉えた方が座りが良い。そういう意味で、再評価するに値するエディ・ハリスの「転身」盤である。
 
 

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2023年12月 4日 (月曜日)

エディ・ハリスの初リーダー作

Eddie Harris(エディ・ハリス)。このテナー・サックス奏者については、当ブログで取り上げることがほとんど無かったのではないか。1934年10月、シカゴ生まれ。1996年11月に62歳の若さで鬼籍に入っている。エモーショナルでソウルフル&ファンキーなテナー&ヴォーカルが身上。電気的に増幅されたサックスを紹介したことでも知られる。

Eddie Harris 『Exodus To Jazz』(写真左)。1961年の録音&作品。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Joseph Diorio (g), Willie Pickens (p), William Yancey (b), Harold Jones (ds)。リーダーのエディ・ハリスのテナーとジョセフ・ディオリオのギターがフロントのクインテット編成。エモーショナルでソウルフル&ファンキーなテナー奏者、エディ・ハリスの初リーダー作。

収録曲を見渡せば、全8曲中、ハリスの自作曲が4曲、ピアノを担当するピケンズの作曲が2曲、スタンダード曲が2曲と、初リーダー作としてバランスの取れた選曲に好感が持てる。ジャズマンの初リーダー作は、そのリーダーのジャズマンの持つ個性&特徴が把握、理解しやすいのだが、自作曲でそのジャズマンの長所が理解でき、スタンダード曲など他人の作曲の曲で、そのジャズマンの個性&特徴が把握できる。そういう面で、このハリスのリーダー作は選曲のバランスがとても良い。
 

Eddie-harris-exodus-to-jazz

 
初リーダー作なので、後の「圧倒的熱量とエモーショナルなファンクネスを撒き散らしたソウルフルなテナー」はまだ存在しないが、ファンキー&ソウルフルなテナーについては、その片鱗がそこかしこに散りばめられている。エディ・ハリスのテナーについては、この初リーダー作にして、他のテナー・マンには無い個性&特徴が備わっていることが良く判る。

冒頭の映画音楽「Exodus」での、情感溢れ、ファンクネスを湛えたテナーの音色。決してハードバップなテナーの延長線上に無い、ファンキー&ソウル・ジャズに端を発したエモーショナル&ソウルフルで典雅なテナーの吹き回し。そして、2曲目の自作バラード曲の「Alicia」での、寂寞感、切ない情感のこもったスピリチュアルなブロウ。ダイナミックかつ繊細、ファンクネス&ソウルフル溢れる情感たっぷりのテナー。エディ・ハリスのテナーの個性&特徴が良く理解出来る。

後のダンサフルでエモーショナル、ソウルフル&ファンキーなテナー&ヴォーカルのハリスと比べると、地味で大人し目の初リーダー作でのテナーだが、ジャズ・テナーとしての個性と特徴について、エディ・ハリスは素性確かなものだ、ということが良く判る。決して「際もの」なテナーでは無い。メインストリームで正統派なファンキー&ソウル・ジャズのテナーである。
 
 

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2023年8月31日 (木曜日)

マンスの真の個性が満載な盤

ジュニア・マンスのピアノの真の個性とは何か、を追求している。初リーダー作『Junior』を聴き込み、そしてリーダー作2作目『The Soulful Piano of Junior Mance』を聴き込む。

『Junior』は大衆受けする売れる内容。イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易い、典型的なピアノ・トリオ演奏。『The Soulful Piano of Junior Mance』は、すっきり爽やか、端正で明確な「ファンキー・ジャズ」。端正で明確なタッチ、コッテコテなファンクネスは無くて、スッキリ爽やかなグルーヴ感。さて、どちらがマンスのピアノの本質か。

Junior Mance『Big Chief!』(写真左)。1961年8月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Jimmy Rowser (b), Paul Gussman (ds)。マンスの3枚目のリーダー作。お得意のトリオ作。

アタックの強い切れ味の良いタッチ。右手は多弁。しかし、五月蠅くは無い。「饒舌」一歩手前。ほど良い「多弁さ」。流麗で端正、破綻が無い。ファンクネスは軽め、爽やかでライトなブルージー感が個性。そんなマンスのピアノが溢れんばかりの3枚目のリーダー作である。

冒頭のタイトル曲「Big Chief!」はゴスペル風のブルースだが、決して、ファンクネス&ソウルはコッテコテでは無い。ピアノとベースのコール&レンポンスも印象的だが、決して、コッテコテのファンキー・ジャズにはならない。スッキリ爽やか、軽やかで端正なファンクネス&ソウル。
 

Junior-mancebig-chief

 
多弁な展開は意外と耳に付かない。タッチが明確なんだが硬質では無い。音のエッジが少しラウンドしている様な明確なタッチ。特に速いフレーズを弾き回す時、この個性が良い方向に作用している。この多弁な展開の弾き回しの個性はマンスならでは、だと思う。

逆にミッドテンポの曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。ミッドテンポの曲は、多弁なフレーズがちょうどフィットしていて、多弁なフレーズのエッジがほど良くラウンドしているので、多弁が多弁と感じ無い。

バラード曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。バラード演奏もバラードとしては少し多弁かもしれないが、ファンクネス&ソウルが爽やかな分、耳には爽やかさが残って、多弁でもフレーズが「もたれない」。

3枚目のリーダー作『Big Chief!』を聴き込んで、マンスの初リーダー作で代表作とされる『Junior』(Verve)は、マンスの本質を抑えて、イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易いピアノ・トリオとしてまとめた異色作だったことが良く判る。『Big Chief!』にはマンスの真の個性が満載。マンスの真の個性を感じるには、まずは『Big Chief!』。
 
 

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2023年8月16日 (水曜日)

軽快で聴き易いオルガン・ジャズ

4100番台はもう15年程前に「聴く」ことについて、つまりアルバムの蒐集についてはコンプリートしているのだが、当ブログでの「感想記事」についてはコンプリートしていない。現在、せっせと「記事」の落ち穂拾いをしているのだが、ブルーノートの4100番台の「記事」の落ち穂拾いも「あと8枚」。あと8枚で、当ブログの「記事化」のコンプリートである。

Big John Patton『Oh Baby!』(写真左)。1965年3月8日の録音。ブルーノートの4192番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Blue Mitchell (tp), Harold Vick (ts), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。オルガンのジョン・パットンがリーダー、ミッチェルのトランペット、ヴィックのテナーがフロント2管、グリーンのギター、そして、ディクソンのドラム。パットンがオルガンでベースの役割も兼ねるので、ベースレスのクインテット編成。

ビッグ・ジョン・パットンの4枚目のリーダー作になる。ジョン・パットンはデビュー盤以来、1960年代はブルーノートのハウス・オルガニストの位置づけ。リーダー作は全てブルーノートから、サイドマンとしては、アルト・サックスのルー・ドナルドソン、ギターのグラント・グリーンに絞って参加している。
 

Big-john-pattonoh-baby

 
ジョン・パットンのオルガンは、従来のファンクネスだだ漏れのネチっこいオルガンでは無く、軽快でテクニカル。この盤では、パットン・グリーン・ディクソンのオルガン・リズム隊が、軽快なファンクネスとソウルフルが疾走するかの如く、
ライトで乾いたグルーヴ感を醸し出していて、このジャズの多様化の時代、聴き易いソウルフルなオルガン・ジャズのお手本の様な内容。いわゆる「ながら」の如く、気楽に聴かせるオルガン・ジャズなのだ。

そこに、演奏の旋律をハッキリくっきりする様、ブルージー&ファンキーなトランペットのミッチェルと、ジャズとR&Bを股にかけるソウルフルなテナーのヴィックが効果的に吹きまくる。アドリブ展開もこのフロント2管が良いアクセントとなって、全編通して、オルガン・ジャズとしてマンネリに陥ることは無い。あっという間に聴き切ってしまう。

グリーンのギターのバッキングは絶妙。ディクソンのドラミングは軽快でファンキー。ちなみに、パットンのオルガンに派手な仰々しさが無いのは、レスリー・スピーカーを使用していないからだろう。このライトで乾いたグルーヴ感満載のオルガンがパットンの身上。オルガン特有の「コッテコテ」な雰囲気は皆無。ジャズロック志向でまとめられた好盤です。
 
 

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2023年8月15日 (火曜日)

フレディ・ローチの「教会音楽」

ブルーノートの4100番台は、ハードバップが成熟した後の「ジャズの多様化の時代」を反映したラインナップが素晴らしい訳だが、4100番台の終わり頃には、「正」の多様化であるファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなどがあれば、多様化の度が過ぎて、モダン・ジャズの範疇を飛び出た不思議な内容のアルバムも出現している。

Freddie Roach『All That's Good』(写真左)。1964年10月16日の録音。ブルーノートの4190番。ちなみにパーソネルは、Freddie Roach (org), Conrad Lester (ts), Calvin Newborn (g), Clarence Johnston (ds), Marvin Robinson, Phyllis Smith, Willie Tate (vo)。

フレディ・ローチのオルガンは端正で堅実。「ハモンド・オルガン」らしい、くすんだ伸びのある音は、とてもファンキー。ブルノートで初リーダー作『Down to Earth』を録音して以降、『Mo' Greens Please』『Good Move!』と、その端正で堅実でファンキーなオルガンで、変な癖が無く、端正で堅実でファンキーで「聴き易いオルガン・ジャズ」盤のリリースを重ねてきた。

が、4枚目のリーダー作『Brown Sugar』から、その演奏の志向が大きく変化した。モーダルなソウル・ジャズを志向し始めた。モーダルでクールな雰囲気漂う、乾いたファンクネスを湛えた、ご機嫌でユニークなソウル・ジャズが展開し始めた。

そして、ドナルド・バードの『I'm Tryin' To Get Home』に参加。ここで、バードの「ホーリーでゴスペルチックな教会音楽志向のソウル・ジャズ」の感化された様で、この『All That's Good』は、そのバードの教会音楽志向のソウル・ジャズの流れを踏襲している様に感じる。
 

Freddie-roach_all-thats-good

 
この盤は、ジャケに写る様な女声コーラス隊が加わった、怪しげなゴスペル調の楽曲が目立つコンセプチュアルな内容のアルバム。この女性コーラス隊のゴズペル調のコーラスが正統なゴスペル風な歌声では無く、バンシー(banshee)=家族に死人が出ることを泣いて予告する女の精霊の様な、軽妙で浮遊する様な歌声なところが、少し不気味でもあり、そこはかとなく「違和感」を感じるところ。これは、バードの『I'm Tryin' To Get Home』に酷似している。

この女性ボーカルの歌声が気に入るか否かで、この盤の評価は変わるだろう。ジャジーではあるが、この盤の内容はモダン・ジャズの範疇をはみ出して、スピリチュアル・ジャズの先駆け的響きも見え隠れした、ホーリーでゴスペルチックな「教会音楽」な内容である。

ドナルド・バードの『I'm Tryin' To Get Home』は、ビッグバンドのアレンジで、辛うじてモダン・ジャズの範疇に軸足を留めたが、このローチの『All That's Good』は、バックの演奏メンバーの顔ぶれも含めて、明らかにモダン・ジャズの範疇を飛び出している。この盤をジャズ盤としてリリースしたのは、ブルーノート・レーベルならではの仕業だろう。他のレーベルではちょっと難しかったのではないか、と思ってしまう。

ちなみにジャケに写る女性6人は、「Grandassa Models」と呼ばれる、1960年代から1970年台にかけて、NYのハーレムで開催されたアフリカ系アメリカ人女性の美を競うコンテストに参加した面々の中から選抜された6人らしい。

もしかしたら、このアルバム、そんなアフリカ系アメリカ人女性モデルの人気とタイアップした「教会音楽志向のソウル・ジャズ」だったのかもしれない。それならば合点がいく。いわゆる「一過性の流行音楽」。確かにこの後、このゴスペルチックな女性ボーカルを活かしたソウル・ジャズのフォロワーは現れ出でてはいない。
 
 

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2023年8月12日 (土曜日)

教会音楽志向のソウル・ジャズ

ブルーノートの4100番台は、ジャズの多様化の時代を反映した、当時のジャズのトレンド、ジャズの奏法のほぼ全てに対応した多様なラインアップが素晴らしかった訳だが、4100番台も終わりの頃になると、ジャズの多様化の度が過ぎて、従来のモダン・ジャズの範疇を逸脱した、不思議な内容のジャズも出現してきた。

Donald Byrd『I'm Tryin' To Get Home』(写真左)。1964年12月の録音。ブルーノートの4188番。ドナルド・バードのビッグバンド編成でパフォーマンスした、こってこての「ソウル・ジャズ」。ジャジーなリズム&ビートが無ければ、ビッグバンド編成で奏でる、スピリチュアル・ジャズの先駆け的響きも見え隠れした、ホーリーでゴスペルチックな「教会音楽」である。

ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp, flh), Stanley Turrentine (ts), Herbie Hancock (p), Freddie Roach (org), Grant Green (g), Bob Cranshaw (b), Grady Tate (ds) のセプテットに、Joe Ferrante, Jimmy Owens, Ernie Royal, Clark Terry, Snooky Young (tp), Jimmy Cleveland, Henry Coker, J.J. Johnson, Benny Powell (tb), Jim Buffington, Bob Northern (french horn), Don Butterfield (tuba) の管セクションが付いたビッグバンド編成。
 

Donald-byrdim-tryin-to-get-home

 
冒頭の「Brother Isaac」でぶっ飛ぶ。男女コーラスの軽妙な(奇妙な?)スキャットと、ソウルフルな響きが怪しいビッグバンドが高揚しながらスイングする、摩訶不思議なソウル・ジャズ。というか、ゴスペル・コーラスを彷彿とさせる、ジャジーな教会音楽風で、さすがに、この演奏をコンテンポラリーな純ジャズとして聴くには無理がある。僕は、ジャズと教会音楽との融合がメインの、過度にソウルフルなジャズ・ファンクとして捉えている。

しかし、演奏の中核となるのは、リーダーのバード以下のセプテットの面々で、それぞれのソロ演奏は、当時のジャズの最新の演奏志向や奏法を捉えて、意外と尖った演奏をしている。2曲目「Noah」では、バードはファンキーなモーダル・フレーズでソロを展開し、ハンコックはモーダルなハーモニーでバッキングする。ソウル・ジャズな雰囲気の演奏の中で、モーダルな響きが飛び交う様はシュールですらある。この辺りはジャズと教会音楽との融合の中での「実験ジャズ」的な響きである。

サブタイトルが「Brass With Voices」。その通り、ブラスの響きとスキャット&コーラスを効果的にアレンジに反映した、教会音楽志向のソウル・ジャズがこの盤の中に充満している。内容的にあまりに尖っていて一般受けはしないだろう。しかし、内容的には実にアーティステックなチャレンジであり、こういった一般受けしそうもない尖った内容の「融合」ジャズをしっかりとアルバム化してリリースする、当時のブルーノートは、単純に凄いと思う。
 
 

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2023年7月29日 (土曜日)

ハバードにはジャズ・ロック

前作『High Blues Pressure』では、ジャズロックとモード・ジャズが混在、アルバム全体の印象がちょっと散漫になって、本当にジャズロック路線で攻めていって良いのか、世間の評価をどうなるのか、まだまだハバードには迷いがあったように感じた。しかし、僕の印象としては「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」。

Freddie Hubbard『A Soul Experiment』(写真左)。1968年11月11日(#3, 7, 9),13日(#1-2, 10),1969年1月21日(#4-6, 8)の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Carlos Garnett (ts, #3-9), Kenny Barron (p), Gary Illingworth (org), Billy Butler (g, #3, 7, 9), Eric Gale (g, # 1–2, 4–6, 8, 10), Jerry Jemmott (b), Grady Tate (ds, #3, 7, 9), Bernard Purdie (ds, #1, 2, 5)。

タイトルを訳すと「ソウルの実験」。おお、遂にハバードも吹っ切れたか、と期待する。そして、聴いてみて、ジャズファンク、ソウル・ジャズで統一されたジャズロック志向のアルバムに仕上がっている。加えて、すべての演奏がエレギ&エレベの、完全「エレジャズ」な布陣の演奏になっている。思い切っているなあと感じる。
 

Freddie-hubbarda-soul-experiment

 
タイトルは「ソウルの実験」だが、演奏全体の雰囲気は「お試し」。ハバードが試しにソウル・ジャズをやってみた、それも、エレ・ジャズな編成で、かつ、ジャズロック志向で、といったところか。「お試し」とは言え、このアルバムについては、きっちりジャズロック志向で揃えているので、中途半端な感じが無い。実に潔い。

冒頭「Clap Your Hands」は、エキサイトなソウル・ジャズ。エレ楽器メインのジャズロックな8ビートに乗って吹くハバードのトランペットが心地良い。指がよく動き、テクニックが優れているので、8ビートに流麗に乗った、滑らかなアドリブ展開は違和感が全く無い。4曲目「Lonely Soul」は、ハードボイルドなハバードの哀愁感溢れるバラード・プレイが聴けて、これまた良好。

確かにタイトルは「ソウルの実験」なので、本格的にジャズロック志向に舵を切ったのかどうかは、次のリーダー作以降を聴かないと判らないが、このオール・ジャズ・ロックな盤を聴く限り、「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」という感覚は「確定」だろう。
 
 

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2023年7月21日 (金曜日)

グリーンとヤングとエルヴィンと

ブルーノートの4100番台の後半のアルバムの中で、このブログに記事として上げていないアルバムをメインに聴き直して、せっせと記事にしている。4100番台は、メインストリーム志向の純ジャズの範疇の中で、1960年代前半の「ジャズの多様化」の時代を確実に捉えて、当時のジャズのバリエーションを漏らさず網羅したアルバムを漏らさずリリースしている。

4100番台を通して聴けば、当時の成熟したジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」の全てが追体験できる。これは素晴らしいことである。そして、この4100番台で記録された、ジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」が、1980年代中盤以降の「純ジャズ復古」のベースとなっていて、現代のジャズに繋がっている。

Grant Green『Talkin' About!』(写真左)。1964年9月11日の録音。ブルーノートの4183番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。リーダーのグラント・グリーンのギター、プログレッシヴなモーダル・オルガニストのラリー・ヤング、そして、ポリリズムの塊ドラマーのエルヴィン・ジョーンズのトリオ編成。

この盤は、思いっ切り聴き応えがある。まず、リズム隊が、オルガンでモード・ジャズを演奏する、先進的で進歩的なオルガンと、ポリリズミックで自由度の高い革新的なドラムで構成されている。このリズム隊の叩き出すリズム&ビートは、従来のハードバップには無い、最先端のもの。
 

Grant-greentalkin-about

 
この最先端のリズム&ビートをバックに、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなシングル・トーンが個性のグラント・グリーンが先鋭的なフレーズを弾きまくる。演奏の基本は「ファンキー&ソウル」なジャズなんだが、演奏全体の雰囲気は先進的、先鋭的、進歩的な、実に硬派で、とてもストイックな演奏になっている。そして、アドリブの弾き回しは何時になく「熱い」。

が、グリーンのギターにも増して、ラリー・ヤングのオルガンが凄い。「ファンキー&ソウル」なグリーンを向こうに回して、プログレッシヴでストイックな「モーダルな雰囲気のオルガン」を弾きまくる。モーダルな雰囲気の中で、ファンキー&ソウルなフレーズを織り込んでくる。責めに攻めるヤングのオルガン。グリーンもこの先鋭的なオルガンをしかと受け止めて、熱くて硬派なソウルフル・フレーズを弾きまくる。

そして、そんな二人をしっかりと支え、しっかりと鼓舞しつつ、演奏全体のリズム&ビートをコントロールするのが、エルヴィンのドラミング。グリーンのギターとヤングのオルガンを前面に押し出し、引き立たせるエルヴィンのドラミングは相変わらず見事。このエルヴィンのポリリズミックで切れ味の良いドラミングがアルバム全体の雰囲気をビシッと締めている。

このブルーノートの4183番、ジャズ盤紹介本や雑誌記事に上がることが殆ど無い、地味な存在に甘んじている作品だが、どうして、この盤、グリーンの代表作の1枚だと思うし、1960年代半ばの「ジャズ多様化の時代」のクリエイティブで熱い、当時のジャズの「深化」をタイムリーに記録した名盤だと思う。
 
 

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