2023年8月31日 (木曜日)

マンスの真の個性が満載な盤

ジュニア・マンスのピアノの真の個性とは何か、を追求している。初リーダー作『Junior』を聴き込み、そしてリーダー作2作目『The Soulful Piano of Junior Mance』を聴き込む。

『Junior』は大衆受けする売れる内容。イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易い、典型的なピアノ・トリオ演奏。『The Soulful Piano of Junior Mance』は、すっきり爽やか、端正で明確な「ファンキー・ジャズ」。端正で明確なタッチ、コッテコテなファンクネスは無くて、スッキリ爽やかなグルーヴ感。さて、どちらがマンスのピアノの本質か。

Junior Mance『Big Chief!』(写真左)。1961年8月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Jimmy Rowser (b), Paul Gussman (ds)。マンスの3枚目のリーダー作。お得意のトリオ作。

アタックの強い切れ味の良いタッチ。右手は多弁。しかし、五月蠅くは無い。「饒舌」一歩手前。ほど良い「多弁さ」。流麗で端正、破綻が無い。ファンクネスは軽め、爽やかでライトなブルージー感が個性。そんなマンスのピアノが溢れんばかりの3枚目のリーダー作である。

冒頭のタイトル曲「Big Chief!」はゴスペル風のブルースだが、決して、ファンクネス&ソウルはコッテコテでは無い。ピアノとベースのコール&レンポンスも印象的だが、決して、コッテコテのファンキー・ジャズにはならない。スッキリ爽やか、軽やかで端正なファンクネス&ソウル。
 

Junior-mancebig-chief

 
多弁な展開は意外と耳に付かない。タッチが明確なんだが硬質では無い。音のエッジが少しラウンドしている様な明確なタッチ。特に速いフレーズを弾き回す時、この個性が良い方向に作用している。この多弁な展開の弾き回しの個性はマンスならでは、だと思う。

逆にミッドテンポの曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。ミッドテンポの曲は、多弁なフレーズがちょうどフィットしていて、多弁なフレーズのエッジがほど良くラウンドしているので、多弁が多弁と感じ無い。

バラード曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。バラード演奏もバラードとしては少し多弁かもしれないが、ファンクネス&ソウルが爽やかな分、耳には爽やかさが残って、多弁でもフレーズが「もたれない」。

3枚目のリーダー作『Big Chief!』を聴き込んで、マンスの初リーダー作で代表作とされる『Junior』(Verve)は、マンスの本質を抑えて、イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易いピアノ・トリオとしてまとめた異色作だったことが良く判る。『Big Chief!』にはマンスの真の個性が満載。マンスの真の個性を感じるには、まずは『Big Chief!』。
 
 

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2023年8月16日 (水曜日)

軽快で聴き易いオルガン・ジャズ

4100番台はもう15年程前に「聴く」ことについて、つまりアルバムの蒐集についてはコンプリートしているのだが、当ブログでの「感想記事」についてはコンプリートしていない。現在、せっせと「記事」の落ち穂拾いをしているのだが、ブルーノートの4100番台の「記事」の落ち穂拾いも「あと8枚」。あと8枚で、当ブログの「記事化」のコンプリートである。

Big John Patton『Oh Baby!』(写真左)。1965年3月8日の録音。ブルーノートの4192番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Blue Mitchell (tp), Harold Vick (ts), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。オルガンのジョン・パットンがリーダー、ミッチェルのトランペット、ヴィックのテナーがフロント2管、グリーンのギター、そして、ディクソンのドラム。パットンがオルガンでベースの役割も兼ねるので、ベースレスのクインテット編成。

ビッグ・ジョン・パットンの4枚目のリーダー作になる。ジョン・パットンはデビュー盤以来、1960年代はブルーノートのハウス・オルガニストの位置づけ。リーダー作は全てブルーノートから、サイドマンとしては、アルト・サックスのルー・ドナルドソン、ギターのグラント・グリーンに絞って参加している。
 

Big-john-pattonoh-baby

 
ジョン・パットンのオルガンは、従来のファンクネスだだ漏れのネチっこいオルガンでは無く、軽快でテクニカル。この盤では、パットン・グリーン・ディクソンのオルガン・リズム隊が、軽快なファンクネスとソウルフルが疾走するかの如く、
ライトで乾いたグルーヴ感を醸し出していて、このジャズの多様化の時代、聴き易いソウルフルなオルガン・ジャズのお手本の様な内容。いわゆる「ながら」の如く、気楽に聴かせるオルガン・ジャズなのだ。

そこに、演奏の旋律をハッキリくっきりする様、ブルージー&ファンキーなトランペットのミッチェルと、ジャズとR&Bを股にかけるソウルフルなテナーのヴィックが効果的に吹きまくる。アドリブ展開もこのフロント2管が良いアクセントとなって、全編通して、オルガン・ジャズとしてマンネリに陥ることは無い。あっという間に聴き切ってしまう。

グリーンのギターのバッキングは絶妙。ディクソンのドラミングは軽快でファンキー。ちなみに、パットンのオルガンに派手な仰々しさが無いのは、レスリー・スピーカーを使用していないからだろう。このライトで乾いたグルーヴ感満載のオルガンがパットンの身上。オルガン特有の「コッテコテ」な雰囲気は皆無。ジャズロック志向でまとめられた好盤です。
 
 

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2023年8月15日 (火曜日)

フレディ・ローチの「教会音楽」

ブルーノートの4100番台は、ハードバップが成熟した後の「ジャズの多様化の時代」を反映したラインナップが素晴らしい訳だが、4100番台の終わり頃には、「正」の多様化であるファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなどがあれば、多様化の度が過ぎて、モダン・ジャズの範疇を飛び出た不思議な内容のアルバムも出現している。

Freddie Roach『All That's Good』(写真左)。1964年10月16日の録音。ブルーノートの4190番。ちなみにパーソネルは、Freddie Roach (org), Conrad Lester (ts), Calvin Newborn (g), Clarence Johnston (ds), Marvin Robinson, Phyllis Smith, Willie Tate (vo)。

フレディ・ローチのオルガンは端正で堅実。「ハモンド・オルガン」らしい、くすんだ伸びのある音は、とてもファンキー。ブルノートで初リーダー作『Down to Earth』を録音して以降、『Mo' Greens Please』『Good Move!』と、その端正で堅実でファンキーなオルガンで、変な癖が無く、端正で堅実でファンキーで「聴き易いオルガン・ジャズ」盤のリリースを重ねてきた。

が、4枚目のリーダー作『Brown Sugar』から、その演奏の志向が大きく変化した。モーダルなソウル・ジャズを志向し始めた。モーダルでクールな雰囲気漂う、乾いたファンクネスを湛えた、ご機嫌でユニークなソウル・ジャズが展開し始めた。

そして、ドナルド・バードの『I'm Tryin' To Get Home』に参加。ここで、バードの「ホーリーでゴスペルチックな教会音楽志向のソウル・ジャズ」の感化された様で、この『All That's Good』は、そのバードの教会音楽志向のソウル・ジャズの流れを踏襲している様に感じる。
 

Freddie-roach_all-thats-good

 
この盤は、ジャケに写る様な女声コーラス隊が加わった、怪しげなゴスペル調の楽曲が目立つコンセプチュアルな内容のアルバム。この女性コーラス隊のゴズペル調のコーラスが正統なゴスペル風な歌声では無く、バンシー(banshee)=家族に死人が出ることを泣いて予告する女の精霊の様な、軽妙で浮遊する様な歌声なところが、少し不気味でもあり、そこはかとなく「違和感」を感じるところ。これは、バードの『I'm Tryin' To Get Home』に酷似している。

この女性ボーカルの歌声が気に入るか否かで、この盤の評価は変わるだろう。ジャジーではあるが、この盤の内容はモダン・ジャズの範疇をはみ出して、スピリチュアル・ジャズの先駆け的響きも見え隠れした、ホーリーでゴスペルチックな「教会音楽」な内容である。

ドナルド・バードの『I'm Tryin' To Get Home』は、ビッグバンドのアレンジで、辛うじてモダン・ジャズの範疇に軸足を留めたが、このローチの『All That's Good』は、バックの演奏メンバーの顔ぶれも含めて、明らかにモダン・ジャズの範疇を飛び出している。この盤をジャズ盤としてリリースしたのは、ブルーノート・レーベルならではの仕業だろう。他のレーベルではちょっと難しかったのではないか、と思ってしまう。

ちなみにジャケに写る女性6人は、「Grandassa Models」と呼ばれる、1960年代から1970年台にかけて、NYのハーレムで開催されたアフリカ系アメリカ人女性の美を競うコンテストに参加した面々の中から選抜された6人らしい。

もしかしたら、このアルバム、そんなアフリカ系アメリカ人女性モデルの人気とタイアップした「教会音楽志向のソウル・ジャズ」だったのかもしれない。それならば合点がいく。いわゆる「一過性の流行音楽」。確かにこの後、このゴスペルチックな女性ボーカルを活かしたソウル・ジャズのフォロワーは現れ出でてはいない。
 
 

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2023年8月12日 (土曜日)

教会音楽志向のソウル・ジャズ

ブルーノートの4100番台は、ジャズの多様化の時代を反映した、当時のジャズのトレンド、ジャズの奏法のほぼ全てに対応した多様なラインアップが素晴らしかった訳だが、4100番台も終わりの頃になると、ジャズの多様化の度が過ぎて、従来のモダン・ジャズの範疇を逸脱した、不思議な内容のジャズも出現してきた。

Donald Byrd『I'm Tryin' To Get Home』(写真左)。1964年12月の録音。ブルーノートの4188番。ドナルド・バードのビッグバンド編成でパフォーマンスした、こってこての「ソウル・ジャズ」。ジャジーなリズム&ビートが無ければ、ビッグバンド編成で奏でる、スピリチュアル・ジャズの先駆け的響きも見え隠れした、ホーリーでゴスペルチックな「教会音楽」である。

ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp, flh), Stanley Turrentine (ts), Herbie Hancock (p), Freddie Roach (org), Grant Green (g), Bob Cranshaw (b), Grady Tate (ds) のセプテットに、Joe Ferrante, Jimmy Owens, Ernie Royal, Clark Terry, Snooky Young (tp), Jimmy Cleveland, Henry Coker, J.J. Johnson, Benny Powell (tb), Jim Buffington, Bob Northern (french horn), Don Butterfield (tuba) の管セクションが付いたビッグバンド編成。
 

Donald-byrdim-tryin-to-get-home

 
冒頭の「Brother Isaac」でぶっ飛ぶ。男女コーラスの軽妙な(奇妙な?)スキャットと、ソウルフルな響きが怪しいビッグバンドが高揚しながらスイングする、摩訶不思議なソウル・ジャズ。というか、ゴスペル・コーラスを彷彿とさせる、ジャジーな教会音楽風で、さすがに、この演奏をコンテンポラリーな純ジャズとして聴くには無理がある。僕は、ジャズと教会音楽との融合がメインの、過度にソウルフルなジャズ・ファンクとして捉えている。

しかし、演奏の中核となるのは、リーダーのバード以下のセプテットの面々で、それぞれのソロ演奏は、当時のジャズの最新の演奏志向や奏法を捉えて、意外と尖った演奏をしている。2曲目「Noah」では、バードはファンキーなモーダル・フレーズでソロを展開し、ハンコックはモーダルなハーモニーでバッキングする。ソウル・ジャズな雰囲気の演奏の中で、モーダルな響きが飛び交う様はシュールですらある。この辺りはジャズと教会音楽との融合の中での「実験ジャズ」的な響きである。

サブタイトルが「Brass With Voices」。その通り、ブラスの響きとスキャット&コーラスを効果的にアレンジに反映した、教会音楽志向のソウル・ジャズがこの盤の中に充満している。内容的にあまりに尖っていて一般受けはしないだろう。しかし、内容的には実にアーティステックなチャレンジであり、こういった一般受けしそうもない尖った内容の「融合」ジャズをしっかりとアルバム化してリリースする、当時のブルーノートは、単純に凄いと思う。
 
 

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2023年7月29日 (土曜日)

ハバードにはジャズ・ロック

前作『High Blues Pressure』では、ジャズロックとモード・ジャズが混在、アルバム全体の印象がちょっと散漫になって、本当にジャズロック路線で攻めていって良いのか、世間の評価をどうなるのか、まだまだハバードには迷いがあったように感じた。しかし、僕の印象としては「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」。

Freddie Hubbard『A Soul Experiment』(写真左)。1968年11月11日(#3, 7, 9),13日(#1-2, 10),1969年1月21日(#4-6, 8)の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Carlos Garnett (ts, #3-9), Kenny Barron (p), Gary Illingworth (org), Billy Butler (g, #3, 7, 9), Eric Gale (g, # 1–2, 4–6, 8, 10), Jerry Jemmott (b), Grady Tate (ds, #3, 7, 9), Bernard Purdie (ds, #1, 2, 5)。

タイトルを訳すと「ソウルの実験」。おお、遂にハバードも吹っ切れたか、と期待する。そして、聴いてみて、ジャズファンク、ソウル・ジャズで統一されたジャズロック志向のアルバムに仕上がっている。加えて、すべての演奏がエレギ&エレベの、完全「エレジャズ」な布陣の演奏になっている。思い切っているなあと感じる。
 

Freddie-hubbarda-soul-experiment

 
タイトルは「ソウルの実験」だが、演奏全体の雰囲気は「お試し」。ハバードが試しにソウル・ジャズをやってみた、それも、エレ・ジャズな編成で、かつ、ジャズロック志向で、といったところか。「お試し」とは言え、このアルバムについては、きっちりジャズロック志向で揃えているので、中途半端な感じが無い。実に潔い。

冒頭「Clap Your Hands」は、エキサイトなソウル・ジャズ。エレ楽器メインのジャズロックな8ビートに乗って吹くハバードのトランペットが心地良い。指がよく動き、テクニックが優れているので、8ビートに流麗に乗った、滑らかなアドリブ展開は違和感が全く無い。4曲目「Lonely Soul」は、ハードボイルドなハバードの哀愁感溢れるバラード・プレイが聴けて、これまた良好。

確かにタイトルは「ソウルの実験」なので、本格的にジャズロック志向に舵を切ったのかどうかは、次のリーダー作以降を聴かないと判らないが、このオール・ジャズ・ロックな盤を聴く限り、「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」という感覚は「確定」だろう。
 
 

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2023年7月21日 (金曜日)

グリーンとヤングとエルヴィンと

ブルーノートの4100番台の後半のアルバムの中で、このブログに記事として上げていないアルバムをメインに聴き直して、せっせと記事にしている。4100番台は、メインストリーム志向の純ジャズの範疇の中で、1960年代前半の「ジャズの多様化」の時代を確実に捉えて、当時のジャズのバリエーションを漏らさず網羅したアルバムを漏らさずリリースしている。

4100番台を通して聴けば、当時の成熟したジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」の全てが追体験できる。これは素晴らしいことである。そして、この4100番台で記録された、ジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」が、1980年代中盤以降の「純ジャズ復古」のベースとなっていて、現代のジャズに繋がっている。

Grant Green『Talkin' About!』(写真左)。1964年9月11日の録音。ブルーノートの4183番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。リーダーのグラント・グリーンのギター、プログレッシヴなモーダル・オルガニストのラリー・ヤング、そして、ポリリズムの塊ドラマーのエルヴィン・ジョーンズのトリオ編成。

この盤は、思いっ切り聴き応えがある。まず、リズム隊が、オルガンでモード・ジャズを演奏する、先進的で進歩的なオルガンと、ポリリズミックで自由度の高い革新的なドラムで構成されている。このリズム隊の叩き出すリズム&ビートは、従来のハードバップには無い、最先端のもの。
 

Grant-greentalkin-about

 
この最先端のリズム&ビートをバックに、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなシングル・トーンが個性のグラント・グリーンが先鋭的なフレーズを弾きまくる。演奏の基本は「ファンキー&ソウル」なジャズなんだが、演奏全体の雰囲気は先進的、先鋭的、進歩的な、実に硬派で、とてもストイックな演奏になっている。そして、アドリブの弾き回しは何時になく「熱い」。

が、グリーンのギターにも増して、ラリー・ヤングのオルガンが凄い。「ファンキー&ソウル」なグリーンを向こうに回して、プログレッシヴでストイックな「モーダルな雰囲気のオルガン」を弾きまくる。モーダルな雰囲気の中で、ファンキー&ソウルなフレーズを織り込んでくる。責めに攻めるヤングのオルガン。グリーンもこの先鋭的なオルガンをしかと受け止めて、熱くて硬派なソウルフル・フレーズを弾きまくる。

そして、そんな二人をしっかりと支え、しっかりと鼓舞しつつ、演奏全体のリズム&ビートをコントロールするのが、エルヴィンのドラミング。グリーンのギターとヤングのオルガンを前面に押し出し、引き立たせるエルヴィンのドラミングは相変わらず見事。このエルヴィンのポリリズミックで切れ味の良いドラミングがアルバム全体の雰囲気をビシッと締めている。

このブルーノートの4183番、ジャズ盤紹介本や雑誌記事に上がることが殆ど無い、地味な存在に甘んじている作品だが、どうして、この盤、グリーンの代表作の1枚だと思うし、1960年代半ばの「ジャズ多様化の時代」のクリエイティブで熱い、当時のジャズの「深化」をタイムリーに記録した名盤だと思う。
 
 

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2023年7月19日 (水曜日)

スマートなオルガン・ジャズ。

ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。1500番台から、4000番台、4100番台、4200番台と、カタログを見渡せば、要所要所のオルガン・ジャズ盤が存在する。しかも、ジャズ・オルガニストのメンバーが豊富。ジミー・スミスばかりがクローズアップされるが、他にパットン、フェイス、ローチ、マクグリフ、スミス、ウィルソンなど、オルガニストを多く抱えている。

"Big" John Patton『The Way I Feel』(写真左)。1964年6月19日の録音。ブルーノートの4174番。ちなみにパーソネルは、"Big" John Patton (org), Richard Williams (tp), Fred Jackson (ts, bs), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。明らかにファンキーなハモンド・オルガン奏者、ジョン・パットンのリーダー作第3弾。

1960年代、ブルーノートのハウス・オルガニストとして多くのソウル・ジャズ盤に参加したジョン・パットン。このリーダー作第3弾では、初リーダー作以来のフレッド・ジャクソン、初リーダー作からずっとのグラント・グリーンの参加で、この盤も、おおよそ「ソウル・ジャズ」志向であることが判る。 
 

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全体を見渡すと、とても聴き易いファンキー&ソウル・ジャズ。全曲がパットンの自作曲で占められている。弾き易かったのだろうか。前2作に比べて、スイング感とファンクネスは軽め、どこか洗練されたスマートな弾き回しと、ポップで親しみ易いフレーズがこの番の特徴。各曲、突出した個性は無いが、一様にポップで親しみのあるファンキー&ソウル・ジャズが展開される。

冒頭の「The Rock」のソウルフルでエモーショナルで雰囲気に思わずグッとくる。ウィリアムス~パットン~ジャクソンが繰り出す、ファンキー&ソウルなソロがたまらなくエモい。ホーン2本を抜いて、オルガン、ギター、ドラムのトリオで演奏した4曲目「Davene」がスマートで「粋」。ファンクネスを湛え、ライトでソウルフルなフレーズをオルガンとギターが繰り出す。

有名なスタンダード曲が無いので、どこか掴みどころの無い、ちょっと地味な印象の盤という向きもあるが、その分、明らかにファンキーなハモンド・オルガン奏者、ジョン・パットンの持つ、本来の個性を堪能することが出来る好盤だと思う。ゆったりとしたファンキーでソウルフルな雰囲気が堪らない。良い雰囲気のオルガン・ジャズ。
 
 

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2023年7月14日 (金曜日)

ブレイスのブルーノート最終作

ジョージ・ブレイス(George Braith)。 ブルーノート4100番台の異色の存在だろう。ブレイスは、NY出身のソウル・ジャズ・サックス奏者。ブレイスの一番の特徴は「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」ところ。但し、カークの様に難度高く複雑にモーダルに展開することは無く、平易にシンプルなフレーズに終始する。

George Braith『Extension』(写真左)。1964年3月27日の録音。ブルーノートの4171番。ちなみにパーソネルは、George Braith (sax), Billy Gardner (org), Grant Green (g), Clarence Johnston (ds)。ブレイスがブルーノートに残したリーダー作の3枚目、最終作になる。3作ともドラムはコロコロ変わるが、グラント・グリーンのギターとビリー・ガードナーのオルガンは不変。

この盤、聴き進めると「あれれ」と思う。ブレイスの一番の特徴は「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」ところ、が鳴りを潜め、サックス1本でストレートに吹きまくっている。これだと、聴いていて誰なのか判らない。ブレイスのサックス1本だけの吹奏を取ると、これと言って強烈な個性が無いのだから困る。

しかし、アルバム全体としては「間の抜けた調子外れのテーマを吹いていたブレイスは何処へ行った」なんだけど、ブレイスの曲が良くて、そのテーマを吹くブレイスのサックスが良い感じで聴こえるから不思議。この盤は、収録されたブレイスの自作曲の「曲の良さ」に救われている。とにかく、ブレイス曲の格好良さが耳に残る。
 

George-braithextension

 
演奏の雰囲気はソウル・ジャズが基本なんだが、演奏のスピード感は「こってこてのハードバップ」。冒頭の「Nut City」から「Sweetville」まで、ブレイスはストレートにサックスを吹きまくる。

そして、やはりグラント・グリーンの「ぱっきぱき硬質で、こってこてファンキーなシングルトーン・ギター」が効いている。グリーンのギターがファンクネスをどっぷり供給して、この盤はソウル・ジャズに留めている。グリーンのファンキー・ギターが、ブレイスの吹くストレートにハードバップなサックスの中に漂うソウルフルな要素を呼び起こして、演奏全体の雰囲気をソウル・ジャズに引き戻している。

ラストのコール・ポーター作の有名スタンダード曲「Ev'ry Time We Say Goodbye」は、ブレイスの面目躍如。スローでバラードチックに演奏されることが多いこの曲を、「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」個性の封印を解いて、軽快なテンポで、ややアバンギャルドな響きのする叙情的な吹奏を繰り広げるブレイスが実に格好良い。

実はこのラストのスタンダード曲の吹奏で、「ああ、この盤のリーダーって、ブレイスなのね」と判る。そして、ブルーノートのブレイスとは、このラストの「Ev'ry Time We Say Goodbye」で、お別れなのだ。何だか意味深ですね。
 
 

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2023年6月28日 (水曜日)

モーダルなソウル・ジャズです。

ブルーノート・レーベルの4100番台は、成熟したファンキー・ジャズ、そこから派生したソウル・ジャズの好盤が結構存在している。しかし、そこはブルーノート、易きに流れた、売らんが為の内容のアルバムは一切無い。少なくとも、過去を振り返った、過去の成果をなぞったものは無い。その時代の先端を行く、内容の濃いものばかりである。

Freddie Roach『Brown Sugar』(写真左)。1964年3月19日の録音。ブルーノートの4168番。ちなみにパーソネルは、Freddie Roach (org), Joe Henderson (ts), Eddie Wright (g), Clarence Johnston (ds)。ウネウネなモード・テナーのジョー・ヘンダーソンの1管フロント、ギター入りのオルガン・トリオがリズム・セクションを務める。

当時、ブルーノートほぼ専属のオルガニスト、フレディ・ローチのソウルフルな1枚。しかし、ただの聴き応えの良いソウル・ジャズでは無い。フロント1管に、モード・テナーの使い手の1人、ジョーヘンがいる。グルーヴ感満載のローチのオルガンと、ウネウネモードのジョーヘンのテナー。不思議な響きのするソウル・ジャズである。

グルーヴ感溢れるファンクネス度の高いオルガン・ジャズなんだが、どこかクールな雰囲気が漂う。とてもクールでスマートなソウル・ジャズ。ジョーヘンのウネウネモードのテナーが、その雰囲気を醸し出している。

そして、グルーヴ感溢れ、ファンクネス濃厚、ソウルフルなローチのオルガンが、モーダルな響きを漂わせたジョーヘンのテナーに歩み寄る。逆に、ジョーヘンは、モーダルだがソウルフルなフレーズで、ローチのオルガンに歩み寄る。
 

Freddie-roachbrown-sugar

 
この盤の中に、モーダルなクールな雰囲気漂うソウル・ジャズが詰まっている。ユニーク極まりない響き。そして、そのクールさを最大限に活かして、ソウルフルなイージーリスニング・ジャズまでもが展開される。

ファンクネス滴り落ちるソウルフルなジャズ・オルガン。売れ筋のこってこてファンキーなオルガン・ジャズになるのが本筋なんだが、ブルーノートではそうはならない。

モーダルなテナーをフロント1管に据え、ギターを入れて、リズム&ビートを強化。ここに、モーダルでクールな雰囲気漂う、乾いたファンクネスを湛えた、ご機嫌でユニークなソウル・ジャズが展開されている。

ブルーノートならではのソウル・ジャズ。しかし、ファンクネス滴り落ちるソウルフルなジャズ・オルガンに、こってこてモーダルでウネウネなテナーを引き合わせるなんて、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンって凄いことを発想したもんだ、と単純に感心する。

ジャケはブルーノートらしからぬ、俗っぽくてコテコテなデザイン。これだと、こってこてファンクネスなオルガン・ジャズを想起するが、そうはならないところが、この盤のユニークなところ。中身は、意外と硬派な「モーダルなクールな雰囲気漂うソウル・ジャズ」が詰まっている。
 
 

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2023年6月19日 (月曜日)

ソウル・ジャズなオルガン盤

ジミー・スミス(Jimmy Smith)は、1950年代から1960年代の初めまで、ブルーノート・レーベルの「ドル箱」ジャズマンだった。ジミー・スミスは、ジャズ・オルガンの祖。ジャズ・オルガンの歴史は、ジミー・スミスの出現から始まったと言って良いかと思う。

ジミー・スミスの伝説は、マイルスがブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンに紹介したところから始まる。ライオンはスミスのオルガンに惚れ込み、1956年から1962年の6年間に、なんと20枚以上のリーダー作をリリースしている。年に3枚以上のペースでのリリースで、これはこれで驚きだが、セールス的にも十分な実績を残したというのだから、これもこれで驚きである。

1962年、スミスは破格の好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が見出し育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくのは面白く無いはずだが、なんと、ライオンは一切止めること無く揶揄すること無く、喜んで送り出した。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音をストックとして残していった。

Jimmy Smith『Prayer Meetin'』(写真左)。1963年2月8日の録音。ブルーノートの4164番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Quentin Warren (g), Donald Bailey (ds)。スミスのそんな「鶴の恩返し」的レコーディング・ストックの1枚。相性の良いフロント管、スタンリー・タレンタインのテナー・サックスとの共演盤である。
 

Jimmy-smithprayer-meetin

 
1950年代のデビューから暫くは、硬派でバップな、そして、ハイ・テクニックなオルガンでブイブイ言わせていたのだが、1960年の『Crazy! Baby』あたりから、歌心と味のある「聴かせる」オルガンへシフト。さらに人気が高まり、1961年『Midnight Special』の大ヒットを生む。

そして、この『Prayer Meetin'』は、その『Midnight Special』の雰囲気を踏襲する、「聴かせる」ソウルフルなオルガン・ジャズで統一されている。

もともとテクニック抜群、流麗でバップなフレーズを紡ぎ出すのが得意なオルガニストである。そこに歌心が加われば、無敵である。そんな「じっくり聴かせる」歌心溢れるオルガンがギッシリ詰まっている。

そして、その歌心溢れるスミスのオルガンをがっちりサポートし、がっちりと引き立てているのが、タレンタインのテナー・サックス。スミスがポップなオルガンを弾けば、硬派な男気溢れる漆黒テナーをタレンタインが吹き、スミスが硬派でストイックなフレーズを弾けば、タレンタインはポップで悠然としたフレーズで応える。この2人のアンサンブルとインタープレイが良い感じ。相性が良いんでしょうね。

1960年代前半、ジャズの「多様化」の時代のニーズに合わせた様な、ちょっとポップで歌心溢れる「聴かせる」ソウル・ジャズがこの盤に詰まっています。ジャズの即興の妙など、刺激的な要素は希薄ですが、とにかく聴いていて心地良く、聴いていて楽しい。聴いて楽しい、リラックスして聴き込める、極上のソウル・ジャズなオルガン盤です。
 
 

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