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2019年6月14日 (金曜日)

ポップだがジャズに踏み留まる

ブルーノート・レーベルの4300番台。純ジャズのポップ化、イージーリスニング化。4300番台がリリースされたのは、1960年代の終わりから1970年代の初めまで。米国は公民権運動の荒波を抜け、ベトナム戦争が泥沼化の様相を呈する中、フラワー・ムーブメントが起こり、ヒッピー文化が花開いた頃。
 
このアルバムのジャケット写真を見ると、そんな時代のファッションが感じて取れる。Stanley Turrentine『Common Touch』(写真左)。1968年8月30日の録音。BNの4315番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Shirley Scott (org), Jimmy Ponder (g), Bob Cranshaw (el-b), Leo Morris (ds, tracks 1-6), Ray Lucas (ds, track 7)。
 
リーダーでテナー担当のスタンリー・タレンタインとオルガン担当のシャーリー・スコットは、録音当時、夫婦の間柄。当時は「おしどり夫婦」で通っており、この盤でも息の合ったユニゾン&ハーモニーを聴かせてくれる。このアルバム、全編に渡って、ポップなオルガン・ジャズが展開されていて、聴き心地良く、それでいて、メインストリームなジャズとしても十分に成立する内容の濃さ。 
  
 
Common-touch-stanley-turrentine
 
  
当時のロックの好曲をカヴァーしているが、時代を反映していて面白い。なんと2曲目には、ボブ・ディランの「Blowin' In The Wind(風に吹かれて)」が、ラストのボーナストラックには、アレサ・フランクリンの「Ain't No Way」がカヴァーされている。この2曲のカヴァーがなかなかの出来だから堪らない。俗っぽさは皆無。ライトで硬派なソウル・ジャズ風の演奏に好感度が高い。
 
熱気を押さえた、ちょっとクールでファンキーなタレンタインのテナーが良い感じ。そこに、ライトでファンクネスを押さえた、シンプルでウォームなスコットのオルガンが絡む。オルガンとテナーの良くある取り合わせの中で、この2人は夫婦だけあって相性が良い。テナーと相性が良いオルガン・ジャズは好盤がほとんど。この盤には、テナーとオルガンの相性の良さが内容の濃さに表れている。
 
イージーリスニング一歩手前で踏みとどまった、ライトでポップなオルガン・ジャズです。ブルーノート・レーベルらしい端正さとお行儀の良さが見え隠れし、最終的に「ジャズ」に踏みとどまっている分、大衆受けはしなかったように思います。しかし、今の耳で振り返ると、そこが良い。「ジャズ」として踏みとどまったところに、この盤の魅力が凝縮されています。
 
 
 
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年6月 4日 (火曜日)

ルーさんの考えるフュージョン

何故だか、我が国ではルーさんの人気はイマイチ。ルーさんとは「Lou Donaldson」のこと。伝説のアルト・サックス奏者。1926年生まれ。今年で93歳、未だ現役。ジャズの演奏スタイルとしては、ビ・バップから始まり、ハード・バップ、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、そしてジャズ・ファンク、フュージョンとジャズの主だった演奏スタイルの殆どを経験している。素晴らしいのは、それぞれのリーダー作で相応の成果を出していること。NEAジャズ・マスターを受賞しているのも頷ける。

Lou Donaldson『Sassy Soul Strut』(写真左)。Blue NoteのBN-LAシリーズの「109-F」。1973年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Thad Jones (tp), Garnett Brown (tb), Seldon Powell (ts, fl), Buddy Lucas (harmonica), Paul Griffin (ac-p, el-p, org), Horace Ott (el-p), David Spinozza, John Tropea (el-g), Wilbur Bascomb Jr (el-b), Bernard Purdie (ds), Omar Clay, Jack Jennings (perc)。有名無名入り交じったパーソネルだが、冗長にならず概ね良い音を出している。

ジャズ・ファンク時代のアルバムなんだが、これが何だか、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの先駆けの様な音なのだ。アレンジはポップで流麗。ちょっとだけ聴くと思わず「イージーリスニングかい」と思うんだが、ルーさんのバップでブリリアントなアルト・サックスが入ってくると、思わず音の全てはジャズ色に染まる。この雰囲気が7曲続くのだから「堪らない」。ポップにイージーリスニングにギリギリ染まらない、ルーさんの矜持に思わず感じ入る。
 
 
Sassy-soul-strut-lou-donaldson
 
 
冒頭の、クインシー・ジョーンズがTV番組のために書いた「Sanford And Son Theme」のカヴァーがライトで流麗でファンキーなソウル・ジャズ。ロフトクラシックのWARの人気曲「City, Country, City」のカヴァーが堪らない。エロティックで思いっきりジャズ・ファンクな、Sylvia Robinson「Pillow Talk」のカヴァーも堪らない。それでもコッテコテのジャズ・ファンクにはならない。ソフト&メロウな、後のフュージョン・ジャズの様な流麗でキャッチャーなジャズ・ファンク。
 
いつものルーさんなら、バップでブリリアントなアルト・サックスで、こってこてのジャズ・ファンクをやるんだが、この盤では違う。アレンジもソフト&メロウで優しく流麗で軽い。それでも、ルーさんのアルト・サックスは明るくポジティヴである。このバップでブリリアントなルーさんのアルト・サックスを聴いていて、思わず、渡辺貞夫さんのアルト・サックスを思い出した。
 
渡辺貞夫さんはフュージョン・ジャズの寵児となって売れに売れたんだが、ルーさんはそうでもなかったなあ。電気楽器がメインのフュージョン・ジャズのフォーマットはお気に召さなかったのかなあ。この盤を聴いていて思う。この盤の路線を推し進めて、フュージョン・ジャズのブームに突入していったら売れたんやないかなあ。この盤の内容はそれほどまでに見事な、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの先駆けである。
 
 
 
日本大震災から8年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年5月29日 (水曜日)

ルーさんのジャズ・ファンク

ブルーノート・レーベルの4300番台は、とにかく「ジャズのポップス化」がメイン。様々な中堅ジャズマンが、この「ジャズのポップス化」の洗礼を浴びている。しかし、ブルーノート・レーベルのポップス化されたジャズの音は、意外と「シュッと」していて、切れ味が良く、演奏内容は濃い。ただただ売れんが為のポップス化で無いところが「隅に置けない」。
 
ジャケットだってそうだ。ブルーノート・レーベルといえば、そのジャケットのデザイン・センスは芸術の域。しかし、この4300番台のジャケットは「芸術」な側面はどこへやら。思いっきり俗っぽいデザインばかり。しかし、当時のサイケデリックやフラワー・ムーヴメントを意識したデザインが多くあって、今の目で振り返ると、意外と「イケて」たりするから面白い。

Lou Donaldson『Hot Dog』(写真左)。1969年4月25日の録音。ブルーノートの4318番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as, vo), Ed Williams (tp), Charles Earland (org), Melvin Sparks (g), Leo Morris (ds)。この時、ルーさんは43歳。ジャズマンとして脂の乗り切った中堅。オルガンのアーランドは28歳。ギターのスパークスは23歳。ドラムのモリスは30歳。
 
 
Hot-dog-lou  
 
 
ルーさんは一回りも年下のメンバーと組んで、真剣に「ジャズのポップス化」に取り組んでいる。決して適当にやっているのではない。ルーさんのアルト・サックスの音は、ハードバップ時代そのままの艶やかでブリリアント。とても魅力的で訴求力抜群。キレ味良く、躍動感に満ちている。ブルーノート・レーベルの音の矜持をしっかりと維持しているところが素晴らしい。
 
バックの若手メンバーも良い演奏をしている。特にアーランドのオルガンが良い雰囲気。いやいや、モリスのドラミングのグルーヴ感も侮れない。スパークスのギターの適度に緩んだキレ味も捨てがたい。ルーさんとの相性はバッチリ。ライトですっきりファンキーなグルーヴ感が良い。爽快すっきりなジャズ・ファンク。
 
しかし、この盤のジャケットの凄いこと(笑)。ホットドックを持って笑う女性。雰囲気はフラワー・ムーヴメント濃厚。このジャケット、以前はとても評判が悪かったんですよね。ついでに演奏内容も硬派なジャズ者の方々からは散々な評価でした。でも、最近ではライトなジャズ・ファンクとしてしっかりと再評価され、このケバいジャケットもフラワー・ムーヴメント時代のアートとして再評価されています。目出度し目出度し。
 
 
 
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2019年5月28日 (火曜日)

ライトで緩やかジャズ・ファンク

先週の金曜日、24日から故あって、故郷に帰っていました。帰阪した途端に真夏日に突入。とにかく暑い。もともと暑い土地柄なんだけど、やっぱり日差しの強さも含めて、とにかく暑い。まだ湿度が真夏に比べて低かったので、何とかやり過ごしましたが、いや〜暑かったですね。ホテルでも今年初めての冷房をかけて寝ました。そして、昨日、こちら千葉県北西部地方に帰り着いた次第でございます。
 
これだけ暑くなると、いわゆる「日中」は、純ジャズというよりは、聴いた時の爽快感が抜群のジャズを聴きたくなる。逆に、難しいジャズや感情の赴くままに吹きまくるフリー・ジャズは絶対に敬遠である。聴いていて苦にならない、爽快感溢れるクロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズが良い。夕方から夜になって気温が下がったら「純ジャズ」の出番。

Reuben Wilson『Love Bug』(写真左)。ブルーノートの4317番。1969年3月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Reuben Wilson (org), Lee Morgan (tp), George Coleman (ts), Grant Green (g), Leo Morris (ds)。緩くファンキーなジャズ・オルガン奏者、リューベン・ウィルソンのリーダー作。アルバムの内容を一言で言うと、緩やかでソウルフルなジャズ・ファンク。
 
 
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爽快感豊かな、適度に緩やかで、適度にスッカスでソウルフルなジャズ・ファンク。ケバケバしくなく、サイケデリックに傾くことなく、適度にユルユルだけど、しっかり適度なテンション張って、適度にソウルフルなジャズ・ファンク。ライトで端正なグルーヴ感が個性的。気がつけば不思議としっかり耳を傾け、ウィルソンのオルガンを追っている。
 
グラント・グリーンのギターが決まっている。このグリーンのギターが「ライトで端正なグルーヴ感」を増幅。ウィルソンのオルガンとの相性抜群である。新主流派の中堅テナー奏者、ジョージ・コールマンが参加しているが、そのテナーの音は、しっかりとリーダーのウィルソンの標榜する音世界を理解し、早速、できる限り早く、適度にソウルフルでライトで端正なグルーヴ感に馴染んでいる。これにはちょっとビックリした。
 
リー・モーガンのトランペットも同じく、ウィルソンの標榜する音世界を理解し、早速、ライトでソウルフルな、ジャズ・ファンク風トランペットを吹いているのは凄い。サイドメンは皆、ウィルソンを惹き立ててはいるものの、決して前へ出て目立とうとせず、しっかりと「適度にスッカスで緩やかでソウルフルなジャズ・ファンク」を一丸となって演奏している様子には少なからず感心した。
 
 
 
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2019年5月14日 (火曜日)

ブルーノート流クロスオーバー

ブルーノートのBN-LAシリーズは、ほぼ1970年代を網羅しているシリーズである。その時代ならではの内容のアルバムが多くを占めており、その時代の流行の音世界でありながら、その底にしっかりとブルーノート色を色濃く保持しているところが実にニクい。ジャズロックやクロスオーバー、フュージョンなジャズが嫌いな人は仕方ないが、そうでなければ、このBN-LAシリーズは是非とも聴いて欲しいシリーズである。
 
このBN-LAシリーズは、4300番台と同様、ポップス化に走ったものもある。例えば、Ronnie Foster『Sweet Revival』(写真左)。1972年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Ronnie Foster (org), Garnett Brown (tb), Seldon Powell (ts), Ernie Hayes (el-p), David Spinozza, John Tropea (el-g), Wilbur Bascomb Jr. (el-b), Bernard Purdie (ds)。ロニー・フォスターのオルガンをメインに、トロンボーンとテナーの2管、バックのリズム・セクションはオール電化(ドラム以外)。
 
フェンダーローズからエレキ・ギターといった電子楽器を大々的に取り入れたアルバムである。いわゆる典型的な「クロスオーバー・ジャズ」。しかし、演奏の底にはしっかりと純ジャズの雰囲気が残っていて、決して、イージーリスニング・ジャズにはならないし、チープなジャズロックにもならない。意外と硬派な「クロスオーバー・ジャズ」な内容に、聴いていて思わず「ドキッ」とする。
 
 
Sweet-revival-ronnie-foster  
 
 
選曲も、Gilbert O'Sullivan「Alone Again (Naturally)」や、Stevie Wonder「Superwoman」、Crusaders 「Sweet Revival 」など、当時のSSWやR&Bのヒット曲をいち早くカヴァーしている。しかし、当時のポップス系のヒット曲のカヴァーである。さぞかし、ポップでイージーリスニング風なんだろうなあ、とあんまり期待せずに聴くと、意外とジャジーで、コンテンポラリーな純ジャズ風な演奏に、思わず「おおっ」と思う。

イージーにポップ化しないところに、ブルーノートの矜持を感じる。そして、それぞれの演奏に独特のグルーヴ感が漂い、思わず体が動く。そうこのアルバム、意外とグルーヴ感を感じる内容で、ラストの「Inot」など、硬派で良質なレア・グルーヴ・トラックである。硬質でくすんだ響きのエレピのソロが格好良き、電気楽器中心に刻む8ビートはキレ味抜群。
 
参加者の名前は不明なんですが、女性コーラスやストリングスも活躍しているんですが、意外と俗っぽくなっていないところも「良い」。収録曲だけ見ると、ポップでイージーリスニング風なジャズをオルガン中心にやってるんだろうなあ、なんて思うんですが、聴いてみると「とんでもない」。ブルーノート・レーベルの矜持を織り込んだクロスオーバー・ジャズがこの盤に詰まっています。意外と好盤。
 
 
 
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2019年5月 7日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・147

ジャズって歴史が長い分、時に「え〜何、この盤」と歓声を上げてしまうくらいの「幻の名盤」が突然、リイシューされることがある。恐らく、突然マスターテープが発見されたり、突然リイシューの企画が持ち上がったりするのだろう。それでも「幻の名盤」クラスのリイシューである。いったいどれだけの需要があるのだろう。謎である。

今回出会ったリイシュー盤は、Richard "Groove" Holmes『Swedish Lullaby』(写真左)。ジミー・スミス、ジミー・マクグリフなどと並ぶジャズ・オルガンの巨人リチャード・グルーヴ・ホームズがスウェーデンのレーベル〈SISON MUSIC〉に遺したアルバム。オルガン・ジャズ好きには堪らないアルバムのリイシューである。
 
1984年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Richard "Groove" Holmes (org), Edward Lee Layman (ds), Willie Pettis Jr. (g), Willie Akins (ts)。オルガン・ジャズの定番の組合せ、オルガン+ドラムス+テナーサックスにギターが加わった変則カルテット。ギターが入っている分、オルガン・ジャズとしての音世界の幅が拡がっている。
 
 
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典型的なオルガン・ジャズ。ファンクネスは適度、すっきりコテコテで耳にもたれない、趣味の良いファンクネス。端正なフレーズ、淡々とシンプルに弾き進める小粋なマナーが素敵である。結構、軽快で疾走感のあるオルガンで、爽快感のあるソウルフルなアドリブ・フレーズを展開する。加えて、この盤に漂うリラックスな雰囲気が、ホームズのオルガンの妙技を際立たせる。
 
冒頭の「Just one of those things」から「Groove's Groove」、そして「One hundred ways」と続く3曲には思わず聴き惚れてしまう。スタンダードから、ミュージシャンズ・チューンズ、そしてソウルフルでフュージョン・ファンクな音世界がとても芳しい。端正で小粋なグルーブ感がホームズのオルガンの「味」。

この盤のプロデューサーであるシグヴァードソンいわく、当時、ホームズはこの盤が自分の全レコーディング中で最大のお気に入りだったそうだ。さもありなん。しかし、それでもこの盤、1984年のリリース時は、スウェーデンで数百枚とリチャード本人が数百枚販売したのみで広く世界には流通しなかった。良い盤が売れるとは限らない。そんな状態の代表的な例がこの『Swedish Lullaby』である。
 
 
 
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2019年4月21日 (日曜日)

ブルーノートの4301番である。

ブルーノート・レーベルはジャズ・レーベルの老舗。ブルーノートの音を聴けば、ジャズの歴史、ジャズのトレンドがたちどころに判る。それだけの内容のある、由緒あるレーベルである。有名なラインナップとしては、1500番台、4000番台、4100番台、4200番台、4300番台、BN-LAシリーズ、Classic LTシリーズがある。
 
この中で、僕は4300番台が手薄である。4300番台のスタートは1969年。ジャズがポップスとロックに押され、コルトレーンという精神的支柱の大きな柱の一本を失い、エモーショナルなフリー・ジャズが台頭し、本来の純ジャズがマイナーな存在に押しやられた時代。しかし、まずは売れなければならない。イージーリスニング志向に舵を切って、大衆に受けようとするアプローチがひとつのトレンドだった。
 
Gene Harris & The Three Sounds『Elegant Soul』(写真左)。1968年9月19日の録音。ブルーノートの4301番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Carl Burnett (ds)。このジーン・ハリス率いるピアノ・トリオが「スリー・サウンズ」。そこにストリングスが絡む。
 
 
Elegant-soul-4301  
 
 
いやはや、4300番台最初にして、ストリングス絡みの「イージーリスニング・ジャズ」である。冒頭の「Elegant Soul」を聴けばそう思う。しかし、である。曲が進むにつれて、ライトではあるが、ジャズ・ファンクな演奏に徐々に染まっていく。これが当時、大衆に受けたかどうかは定かでは無いが、2曲目以降に「こってこてファンキーな」ジャズ・ファンクが詰まっている。
 
3曲目の「Sittin' Duck」はライトでポジティブなジャズ・ファンク。続く「(Sock It To Me) Harper Valley P.T.A.」は女性ボーカルの絡みが思い切りソウルフル。8曲目は「Book Of Slim」、ストリングス込みのジャズ・ファンク。いやはや、冒頭の「Elegant Soul」に騙されるところだった。
 
しかし、このライトで耳当たりの良いジャズ・ファンクは大衆に受けたのだろうか。今の耳で聴けば、レトロな響きのするジャズ・ファンクで、これはこれで味がある。純ジャズ至上主義の硬派なジャズ者の方々からすると眉をひそめそうなジャズ・ファンクだが、このライトでコッテコテのファンクネスは聴き応え満点である。
 
 
 
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2019年3月11日 (月曜日)

スピリチュアルなソウル・ジャズ

21世紀に入って、様々なジャンルのジャズCDが入手出来る様になった。ネットショップで外国盤が直接購入出来る様になったことが大きい。それまでは日本盤に頼るしか無く、日本盤は売れ筋しかCDリイシューしないので、なかなかソウル・ジャズはリイシューされない。日本では人気がイマイチだから仕方が無い。

1990年代までは、米国盤については、海外出張でNYやSFOに行った折に、大手CDショップを訪問して、しこたまジャズCDを購入して日本に持ち帰ったもんだ。大体1回の出張で20〜30枚は買って帰った。今から考えれば、一体、何をしにNYやSFOに出張していたのか。え、勿論仕事です(笑)。

Benny Bailey Sextett『Soul Eyes (Jazz Live at Domicile Munich)』(写真左)。最近聴いたソウル・ジャズ盤。初見だった。1968年1月11日、ドイツはミュンヘンの "Domicile"でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Benny Bailey (tp), Nathan Davis (ts), Mal Waldron (p), Jimmy Woode (b), Makaya Ntshoko (ds), Charly Campbell (congas)。
 

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メンバーを見渡すと、ハードバップ期から活躍している有名なメンバーはピアノのマルくらいかなあ。ソウル・ジャズのパーソネルの特徴は、それまでのビ・バップ〜ハードバップの流れとは異なる個性を持ったメンバーを選んでいること。これがハードバップを聴き込んできたジャズ者の方々からすると取っ付きが悪いのかなあ。

演奏は熱気ムンムン、コッテコテのソウル・ジャズ。聴いていて思わず体が動いて、とても楽しい気分になる。ベニー・ベイリーはトランペッター。彼の肉厚でファンキーなトランペットがソウルフルに鳴り響く。ゴリゴリなネイザン・デイヴィスのテナーも良い感じ。このフロント2管の、ソウル・ジャズながら、アーシーでスピリチュアルな響きが印象的です。

ファンクネスが滴るような数々の演奏。ソウル・ジャズは聴いているだけでハッピーな気分になります。気分転換にピッタリ。気分をガラリと変えたい時にはソウル・ジャズですね。1968年のリリースながら、ジャケットもタイポグラフィーがばっちり決まって、なかなか格好良いです。ソウル・ジャズの好盤としてお勧め。

 
 
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2019年3月 9日 (土曜日)

ソウル・ジャズの基本盤の一枚

僕がジャズを聴き始めたのは、今から40年前。1978年から本格的にジャズ盤を集集し始めた訳だが、その頃、ジャズについては、フュージョン・ジャズの大ブームの真っ只中。加えて、ハービー・ハンコックの「V.S.O.P」クインテットが切っ掛けとなって、純ジャズが見直され始めていた。

逆に、ジャズの中でもポップな方向に発展した「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」は忘れ去られていった。特に我が国では、「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」は俗っぽさの象徴として、硬派なジャズ者の方々から毛嫌いされた。しかも、である。当時の我が国はこの「硬派なジャズ者の方々」が多いことから、この「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」のアルバムはレコード屋の店頭に並ぶことは無かった。

しかし、もともとR&Bやソウル・ミュージックが好きな僕は、この「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」がお気に入りのジャズ・スタイルの1つ。この「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」のCD復刻がなったのは、1990年代半ば以降と記憶している。そして、21世紀に入って、この10年でやっと、「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」の基本盤はあらかたCDリイシューされた。
 

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Valerie Capers『Portrait In Soul』(写真左)。1966年のリリース。盲目の黒人女流ピアニスト、ヴァレリー・ケイパースのリーダー作である。ちなみにパーソネルは、Valerie Capers (p), Vincent McEwen (tp), Robin Kenyatta (as), Frank Perowsky (ts), John Daley (b), Richy Landrum (conga, ds), Chrly Hawkins (ds)。アルバムの基本的な雰囲気は「ソウル・ジャズ」。

冒頭の「Little David Swing」などは、ゴスペル調の雰囲気が漂う、高速テンポのソウル・ジャズだが、例えば、5曲目の「Odyssey」などは疾走感溢れるモード・ジャズである。ケイバースのピアノは切れ味が良く真摯なタッチ。決して安易にポップに傾かず、過度なファンクネスを戒めている。アルバム全体を覆うストイックさが故、この盤には俗っぽさよりもどこかアーティスティックな雰囲気が漂う。

僕はこの盤を21世紀になってから知りました。この盤はソウル・ジャズの要素とジャズ・ファンクの要素をモード・ジャズに融合した様な雰囲気で実にユニーク。ソウル・ジャズの基本盤の一枚として、是非聴いて頂きたいアルバムです。ブラック・ミュージックな雰囲気が濃厚で、これもジャズやなあ、と改めて感心してしまいます。

 
 
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2019年2月 4日 (月曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・66

ああ、このアルバムはええなあ、このエレギはええなあ。1973年、時代はクロスオーバー・ジャズの流行期。この盤の基本は「ソウル+エレジャズ」のクロスオーバー。しかし、この盤の音世界はその先を行っている。ファンキーでメロウなエレクトリック・ジャズ。1970年代後半からの「フュージョン・ジャズ」の先駆けである。

David T. Walker『Press On』(写真左)。1973年のリリース。ちなみにパーソネルは目立ったところで、David T. Walker (G), Harvey Mason (Dr), Charles Larkey (B), Joe Sample (Key), Bobbye Hall (Congas etc) 等々。キャロル・キングの『Fantasy』録音というきっかけで集まったメンバーが、その手応えを携えて録音されたアルバム。

ソウルの名曲の数々をメロウなエレギでカヴァー、ニュー・ソウル的なクロスオーバー・ジャズである。エレギのフレーズはファンクネス濃厚、優しく美しいメロウな音色。ミドルな速さで弾き進める、歌心溢れるアドリブ・フレーズはまさに「ソウルフル」。も〜たまらん、である(笑)。今から40年ほど前、ジャズを聴き始めた頃にこの盤に巡り会って以来、ずっと大好きなクロスオーバー・ジャズ盤の一枚。
 

Press_on_david_t_walker  

 
David T. Walker(デヴィッド・T.ウォーカー)は、米国オクラホマ州出身のクロスオーバーなギタリスト。1941年生まれなので、今年で78歳。バリバリ現役、伝説のソウル・ギタリスト。モータウンでの活躍はつとに有名。デヴィッド・T.ウォーカーのギターは決してジャズに縛られない。ジャズをメインにソウル、R&B、ロックなどを融合したファンキー&メロウなギターで、この音は唯一無二。

硬軟自在でニュアンスが豊富なエレギの音は、Isley Brothersの「I Got Work To Do」、Stevie Wonderの「Superstition」、Carol King「Brother Brother」、The Beatlesの「With a Little Help From My Friend」など、1960〜70年代ソウル好きには堪らないカヴァー曲で絶好調。自身の手になるジャズファンク曲「Press On」でも切れ味良く格好良い。

デヴィッド・T.ウォーカーのエレギが思いっきり格好良い。ソウルでファンキーでメロウなエレギ。ニュアンス豊かで、こだわりなく自然にシンプルに弾き進めていくデヴィッド・T.ウォーカーのエレギは絶品。こういうギターは何時までも聴き続けることが出来ますね。思えばもう40年、聴き続けています。

 
 

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