2024年9月 9日 (月曜日)

ソウルフルなグラント・グリーン

昨日から、ブルーノート御用達、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグラント・グリーンのギターに着目、まだ、当ブログで記事化していないリーダー作を順に聴き直している。特にグリーンのキャリアの後半に未記事化のリーダー作が集中しているので、せっせと聴き直し、である。

Grant Green『Alive!』(写真左)。1970年8月15日、ニュージャージーの「クリシェ・ラウンジ」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Claude Bartee (ts), Willie Bivens (vib), Neal Creque (org, tracks 2 & 5), Ronnie Foster (org, tracks 1, 4) Idris Muhammad (ds), Joseph Armstrong (congas)。

爽快なライヴ盤。グラント・グリーンの「独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーな」ギターの周りを固めるのは、サックスにクロード・バーティ、オルガンにロニー・フォスター&ニール・クリーク 、ドラムにアイドリース・ムハマッド、ヴァイヴにウィリー・ビヴェンズ、コンガにジョセフ・アームストロング。

ハードバップ期からファンキー・ジャズ期に活躍したジャズマンの名前はなく、どちらといえば、R&B畑のミュージシャンがジャズに参入しているイメージで、演奏全体の雰囲気は、R&B志向が漂うソウル・ジャズ。そう、この盤には、ソウル・ジャズをやるグラント・グリーンが存在しているのだ。
 

Grant-greenalive

 
ファンキー・ジャズのグリーンに比べると、確かにポップになってはいるが、基本はジャズ。R&B志向は強いが、唄うようなアドリブ・フレーズは確実にジャジー。主旋律はR&Bの如く唄う様に、ちょっと上質のイージーリスニング・ジャズっぽく弾くが、アドリブ展開はメインストリーム志向のソウル・ジャズ。

グリーンのギターの「独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーな」本質は変わらないのだが、バックを固める、R&B畑のジャジーな演奏が、良い「ソウル・ジャズ」なグルーヴを醸し出していて、このグルーヴに乗ったグリーンのギターが「ソウル・ジャズ」に染まっていくのが良く判る。

ソウルフルなグラント・グリーンがこのライブ盤に溢れている。CDリイシューでは、オリジナルLPには未収録だった3曲がボートラとして追加されているが、このボートラは邪魔にならない。

オリジナルLPに収録されても、全く違和感の無い、熱くソウルフルな演奏で、この盤はCDリイシュー盤で聴きたい。ラストのハンコック作の「Maiden Voyage(処女航海)」のソウル・ジャズなバージョンには思わず、喝采の声をあげたくなる。
 
 

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2024年7月22日 (月曜日)

ソウル・ジャズの ”G・グリーン”

グラント・グリーン(Grant Green)という伝説のジャズ・ギタリスト、我が国ではあまりポピュラーな存在では無かった。

生まれは1935年6月6日、米国ミズーリ州セントルイス、ギタリストとしての活動期間は、概ね1959年〜1978年。1959年、セントルイスで演奏しているところを、ルー・ドナルドソンに見出され、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンに紹介される。

1961年から1965年まで彼はブルーノートの専属ギタリストとして、リーダーとサイドマンの両方で活躍。1966年にグリーンは一旦、ブルーノートを離れ、ヴァーヴを含む他のレーベルでレコーディング、1967年から1969年までは個人的な問題とヘロイン中毒の影響で活動を休止。1969年にブルーノートに復帰している。

Grant Green『Green is Beautiful』(写真左)。1970年1月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Blue Mitchell (tp), Claude Bartee (ts), Neal Creque (org, track 3), Emmanuel Riggins (org, tracks 1, 2, 4 & 5), Jimmy Lewis (el-b), Idris Muhammad (ds), Candido Camero (conga), Richie "Pablo" Landrum (bongos)。プロデューサーは「フランシス・ウルフ」に代わっている。

全5曲中、プーチョ&ラテン・ソウル・ブラザーズの音楽監督でもあったキーボード奏者のニール・クリーキーの曲が2曲(「The Windjammer」と「Dracula」)、以下、ジェイムス・ブラウンの「Ain't It Funky Now」、ビートルズ「A Day In The Life」、ディオンヌ・ワーウィックの「I'll Never Fall in Love Again」と、ロック、R&Bの有名曲のカヴァー集。
 

Grant-greengreen-is-beautiful

 
1969年、ブルーノートに復帰後のグラント・グリーンの快作。冒頭の「Ain't It Funky Now」を聴いて判るが、演奏されるジャズは「ソウル・ジャズ」。

ブルーノートを一旦離れる前は、こってこての「ファンキー・ジャズ」だったが、復帰後は、こってこての「ソウル・ジャズ」に変わっている。そして、この、こってこての「ソウル・ジャズ」が、グラント・グリーンのパッキパキでファンキーな、シングル・トーンのギターにバッチリ合っている。

グリーンのギターの音色は、骨太で硬質でホーンライク。そんな太くて硬い音色で、R&B曲の旋律を唄うが如く弾きまくるのだ。これが実にソウルフル。ジャズ・ファンク色溢れるグルーヴも芳しく、グリーンのギターは唄うが如く、踊るが如く、R&B色豊かなソウル・ジャズを弾きまくる。

このソウル・ジャズ色を更に確実に、更に色濃くしているのが、オルガンの存在。ニール・クリークとエマニュエル・リギンズの二人がオルガンを担当しているが、このオルガンが実に効いている。どちらかといえば、R&B系のオルガンの様で、この盤でのグリーンの「ソウル・ジャズ」にバッチリ填まっている。

1960年代後半から1970年代のソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク好きにはたまらない内容。逆に、硬派な「純ジャズ命」のジャズ者の方々には「際もの」以外の何者でも無い。しかし、そこはブルーノート、当時の流行をしっかりと踏まえて、なかなかアーティスティックなソウル・ジャズ志向にまとめているところが素晴らしい。メインストリーム系のソウル・ジャズとして、この盤は「アリ」ですね。
 
 

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2024年5月13日 (月曜日)

マンの傑作盤『Glory Of Love』

フュージョン・ジャズの源はどの辺りにあるのだろう。僕は、1960年代後半、A&Mレコードの諸作が、その源の一つだと思っている。

A&Mレコードは、元々は1962年にハーブ・アルパートとジェリー・モスが設立したレコード・レーベル。ジャズのジャンルについては、ファンキー&ソウル・ジャズのエレ化をメインに、当時、ポピュラーな楽曲のカヴァーなど、ポップでジャジーなフュージョン・ジャズの先駆けな音作りで人気を獲得した。

Herbie Mann『Glory Of Love』(写真左)。1967年7, 9, 10月の録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。

Herbie Mann (fl), Hubert Laws (fl, piccolo), Ernie Royal, Burt Collins (tp, flh), Benny Powell (tb), Joseph Grimaldi (sax), Leroy Glover (p, org), Paul Griffin (p), Roland Hanna (org), Jay Berliner, Eric Gale (g), Ron Carter (b), Herb Lovelle, Grady Tate (ds), Teddy Sommer (vib, perc), Ray Barretto, Johnny Pacheco (perc), Earl May (b), Roy Ayers (vib)。

手練れの豪華絢爛なパーソネル。予算をしっかり充てた充実の録音セッション。出てくる音は、エレトリック&8ビートなファンキー&ソウル・ジャズ。アニマルズがヒットさせたポップス曲「The House of the Rising Sun」や、レイ・チャールズがヒットさせたソウル曲「Unchain My Heart」など、当時の流行曲を見事なアレンジでカヴァーしている。
 

Herbie-mannglory-of-love

 
ポップス曲のカヴァーと聞くと、イージー・リスニング志向のジャズか、と思うのだが、このマンのA&M盤は、演奏自体が実にしっかりしている。リズム&ビートは、切れ味良く、ジャジーでソウルフルでファンキー。このリズム・セクションのリズム&ビートはとても良く効いている。

そのジャジーでソウルフルでファンキーなリズム&ビートに乗って、ハービー・マンのソウルフルなフルートが、爽やかなファンクネスを湛えて飛翔する。「In and Out」でのヒューバート・ローズとのダイアローグはとても楽しげ。フランシスレイの「Love is stronger far than we」では、ムーディーなマンのフルートが印象的。この盤でのマンのパフォーマンスは素晴らしい。

当時のA&Mレコードのジャズについては「質の高いリラックス出来るBGM」がコンセプト。しかし、このマンのA&M盤はBGMどころか、イージー・リスニング志向のエレ・ジャズでも無い、ソウルフルでファンキーなコンテンポラリー・ジャズとして成立している優れた内容。

アルバム全体を覆う適度なテンション、切れ味の良いジャジーでソウルフルでファンキーなリズム&ビート。マンを始めとするソウルフルなフロント隊の演奏。この盤には、1960年代前半から進化してきた、ファンキー&ソウル・ジャズの成熟形を聴くことが出来る。ハービー・マンの傑作の一枚であり、最高傑作と言っても良いかもしれない。

クリード・テイラーの優れたプロデュースの下、アレンジも良好、録音はルディ・バン・ゲルダー手になる「良好な音」。この盤がほとんど忘れ去られた存在で、廃盤状態が長く続いている。実に遺憾なことであるが、最近、ストリーミングで聴くことが出来るようになったみたいで、これは喜ばしいことである。
 
 

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2024年4月23日 (火曜日)

名盤『Uptown Conversation』

ロン・カーターはジャズ・ベーシストのレジェンド。リーダー作については、ベーシストとしては珍しく、かなりの数に上る。リーダー作というのは、まずテクニックがあって積極性があって、そして、プロデュース力があって、統率力がなければ出来ない。

加えて、サイドマンとして、他のジャズマンのリーダー作のセッションに参加した数は膨大な数にのぼる。「演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもベーシスト次第」という面からすると、ロンのベーシストとしての力量は、他の一流ジャズマンの面々の周知するところだったと思われる。

Ron Carter『Uptown Conversation』(写真)。1969年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (el-b, ac-b), Hubert Laws (fl, tracks 1, 4 & 5), Herbie Hancock (ac-p, el-p, all tracks except 2), Sam Brown (g, tracks 1, 2 & 4), Grady Tate (ds, tracks 1, 4 & 5), Billy Cobham (ds, tracks 3, 6, & 7)。
 
ロンの2枚目のリーダー作。初リーダー作が1961年。約8年ぶりのリーダー作になる。1960年代はほぼマイルスの下で専属ベーシストとして活躍。マイルスがエレクトリック化に踏み出した頃にリリースした、2枚目のリーダー作。

ロンのベースをメインに、以下の4つのパターンのセッションで、演奏を弾き分けている。

① ベース+ギター(ブラウン)のデュオ
② ベース+ピアノ(ハンコック)+ドラム(コブハム)
③ ベース+ピアノ(ハンコック)+フルート(ロウズ)+ドラム(テイト)
④ ベース+ギター(ブラウン)+ピアノ(ハンコック)+フルート(ロウズ)+ドラム(テイト)

当時、流行していたソウル・ジャズ。それもシュッとクールなソウル・ジャズ、そして、ハードバップ。これは、グラディ・テイトがドラムのユニットが担当。ハンコックもファンキーでソウルフルなピアノをガンガン弾きまくっている。ロウズのフルートも、それはそれはクールでファンキーでソウルフル。
 

Ron-carteruptown-conversation  

 
ソウル・ジャズ、ハードバップな演奏のバックで、演奏の底をガッチリ支えるロンのベースが見事。意外とファンキーでソウルフルなロンのベースにちょっとビックリする。リラックスして楽しそうにベースを弾くロン。ロンの適応力の高さと広さ。見事である。

コブハムがドラムのユニットは限りなく自由度の高いモード・ジャズ、そして、フリー・ジャズ。モード・ジャズでのベース・ラインは、ロンにとってはお手のものなんだが、フリーにアブストラクトに展開するロンのベースの切れ味とマージネーションには驚く。これだけソリッドで切れ味の良い、バリエーション豊かでフリーなベースラインを弾き通せるベーシストは希少。

しかも、ハンコックのフリーなピアノにクイックに反応して応戦している。ロンのベースは意外とアグレッシブでオフェンシブ。ちょっと驚く。そうそう、このハンコックのフリーなピアノも聴き応え十分。そして、後の千手観音ドラミングで名を馳せたコブハムのモーダル〜フリーなドラミングがこれまた見事。コブハムの純ジャズ系ドラマーとして力量を再認識する。

ロンとサム・ブラウンのデュオ、2曲目の「Ten Strings」でのベースとギターのフリーなインタープレイは内容が濃い。ロンのベースがフリー・ジャズに完全適応し、前衛音楽にしっかり軸足を置くことが出来る。ベーシストとしてのテクニックの面でも優れたものがあることが良く判る。

例えば、ベースの哲人、チャーリー・ヘイデンに比肩する、高いレベルのテクニックと個性。この盤で、ロンのベーシストとしての実力、力量、適応力の全てが判る内容になっている。

今でもネットの世界では、ロンのベースに対して、一部に手厳しい評価がある。ベース音にピックアップを付けて増幅している音が許せない、時折ピッチが狂っている、そう言ったマイナス面だけがクローズアップされている。

しかし、この盤を聴いてみると、ベースの音が整っていて、ピッチを合わせたロンのベースは、やはり優れている。リーダー作の多さ、サイドマンとしてのセッション参加機会の莫大な数。それらが、ロンのベースの優秀性を如実に物語っていると僕は思う。
 
 

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2024年3月21日 (木曜日)

唄いまくるが如くギターを弾く 『Shape of Things to Come』

ソフト&メロウに、R&Bに唄いまくるが如く、バップの如く弾来まくるギタリスト、ジョージ・ベンソン。これが凄い。弾きまくるギタリストや、バップの如く弾きまくるギタリストは沢山いるが、「唄いまくるが如く弾きまくる」ジャズ・ギタリストは、ジョージ・ベンソンしかいない。

George Benson『Shape of Things to Come』(写真左)。1968年8-10月の録音。ちなみにパーソネルは、George Benson (g, vo), Ron Carter (b), Richard Davis (b), Herbie Hancock (p), Hank Jones (p), Idris Muhammad (ds), Don Sebesky (arr, cond) が主要メンバー。ここに、ドン・セベスキーのアレンジ&指揮のジャズ・オーケストラがバックに付く。

この盤は、ベンソンのA&Mレコードからの初リーダー作。当盤以前のコロンビアからのリリースの2枚、『It's Uptown』『The George Benson Cookbook』では、確かに、クロスオーバー・ジャズ、フュージョン・ジャズの確固たる片鱗が見え隠れした「バップな弾き回し」。そこに目をつけたクリード・テイラー。その慧眼に間違いは無かった。
 

George-bensonshape-of-things-to-come_2

 
元々、ウエス・モンゴメリー2世と形容されたベンソン。バップの如く弾きまくるギターは当然。出てくるフレーズもウエス譲りかそれ以上の、ソフト&メロウに唄うが如くのフレーズ。唄いまくるが如く弾きまくるフレーズの雰囲気は「ソフト&メロウなR&B志向」。濃厚なファンクネスを底に漂わせながら、ベンソンはソフト&メロウに弾きまくる。しかし、ベンソンにこれだけの「ソフト&メロウにR&Bに、唄いまくるが如くギターを弾きまくらせた」クリード・テイラーのプロデュース恐るべし、である。

1曲目の「Footin' It」の、切れ味良く、ソフト&メロウにR&Bにグルーヴするギターが、2曲目「Face It Boy, It's Over」での、ソフト&メロウにバップに弾きまくるギターが、最高に「きまって」いる。セベスキー・アレンジのジャズオケは、いかにも「イージー・リスニング・ジャズ志向」だが、ベンソンの流麗でハイテクニックなギター・フレーズには「芯」がしっかり入っていてバップ風。メリハリが聴いていて、ジャズオケの聴き心地の良さに流されることはない。

グルーヴィーなジャズ・ファンクから、R&Bな「ノリの良い」ソウルフルなエレ・ジャズまで、ベンソンは底にファンクネスを湛えつつ、ソフト&メロウに、クール&グルーヴィーに、唄いまくるが如くギターを弾きまくる。地味な存在の盤だが、意外と内容充実の、クロスオーバー&フュージョンを基本とした、イージーリスニング・ジャズの好盤だと思う。
 
 

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2024年3月12日 (火曜日)

サウンドの確立 『Hollywood』

ジャズ・クルセイダーズから「ジャズ」を外して、クロスオーバー&フュージョン志向へ、バンド・サウンドの方向性の舵を切ったクルセイダーズ。

クルセイダーズとなって初のアルバム『Pass the Plate』では、試行錯誤が見え隠れして、クルセイダーズ・サウンドの確立は今一歩だったが、次作のこの盤では、そんな迷いを断ち切った、クルセイダーズ・サウンドの確立が感じ取れる。

The Crusaders 『Hollywood』(写真)。1972年の作品。ちなみにパーソネルは、Wilton Felder (ts, el-b), Wayne Henderson (tb), Joe Sample (key), Reggie Johnson (ac-b), "Stix" Hooper (ds) 以上が「クルセイダーズ」。ゲストに、Arthur Adams (g), David T. Walker (g), Chuck Rainey (b), Reggie Johnson (b)。

全編に渡って、クルセイダーズの音世界が溢れている。前作の『Pass the Plate』で見え隠れしていた、ジャズ・ロック志向への試行錯誤はこの盤には無い。

ライトでアーバンで洒落たファンクネス、キャッチャーで心地良いフレーズを吹き上げるブラスのフロント管。ソフト&メロウでグルーヴィーなキーボードがムーディーな雰囲気を醸し出し、リズム隊がクルセイダーズ独特のリズム&ビートを叩き出す。
 

The-crusadershollywood

 
後の人気グループ「クルセイダーズ」の音がこの盤で確立している。ただし、まだ洗練される前、米国南部のゴスペルチックで、こってこてファンキーで泥臭いグルーヴがバンド・サウンドの礎で、この米国南部志向のソウルフルなグルーヴが、この「クルセイダーズ・グルーヴ」が、なんともはや心地良い。

この独特の「クルセイダーズ・グルーヴ」は、キーボードとギターによるもの。この盤は、クルセイダーズが本格的にギターを加えた最初の作品で、このギターの加入が、クルセイダーズの音世界を確立させたと言える。

ギターは、デヴィティーとアダムス。ワウワウを駆使したファンキーに粘るフレーズ、小粋なカッティングによるファンキーな切れ味良いビート、印象的でソウルフルなリフ、これらが、サンプルのソフト&メロウでグルーヴィーなキーボードと絡んで、独特のソウルフルなグルーヴを生み出している。これが「クルセイダーズ・グルーヴ」の礎になっているのだ。

この盤では、ソウル、R&B、ブラス・ロックなどの音要素を融合、クロスオーバー志向のジャズ・ロックをベースとして、米国南部のゴスペルチックで、こってこてファンキーで泥臭いグルーヴを纏った「クルセイダーズ・サウンド」が確立している。

この盤以降、しばらくは、この米国南部のゴスペルチックで、こってこてファンキーで泥臭いグルーヴを纏った「クルセイダーズ・サウンド」で数々の好盤を生み出していくことになる。
 
 

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2024年1月 4日 (木曜日)

心地良きハリスのエレ・グルーヴ

今年の冬は暖冬傾向だとは言うが基本的には冬、当然、寒い日が続く。寒い日には暖かい部屋でジャズを聴く、と言うのが定番なんだが、聴くジャズもクールなジャズは心までがクールになりそうでちょっと。ファンキーでソウルフルなジャズが温まって良い。と言うことで、この冬は「エディ・ハリス」を集中して聴き直している。

「趣味が悪いなあ」と言う声が聞こえてきそうなんだが、それもそのはず。エディ・ハリスは、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズがメイン。電気増幅サックスを導入したことでも知られ、それ故、我が国では「キワモノのテナー奏者」扱いされる傾向がある。彼のテナーは素性が良く、彼の奏でるソウルフルなジャズ・ファンクは今の耳にもしっかりと訴求する優れものである。

Eddie Harris『Plug Me In』(写真左)。1968年3月14 & 15日の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, varitone), Melvin Lastie, Joe Newman, Jimmy Owens (tp), Garnett Brown (tb), Haywood Henry (bs), Jodie Christian (p), Ron Carter, Melvin Jackson (b), Chuck Rainey (el-b), Richard Smith, Grady Tate (ds)。
 

Eddie-harrisplug-me-in  

 
前作『Mean Greens』で、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身。この盤では、セルマー社が開発した「ヴァリトーン」を大々的に導入している。「ヴァリトーン」とは、サックスのネック部分にピックアップを取り付け、アンプを通して変調させたり、エフェクターのオクターバーやコーラスのようなことができる代物。

冒頭の「 Live Right Now」は、エレクトリック・サックスが炸裂、渋〜いジャズ・ファンクが心地よい。4曲目の「Lovely Is Today」はエレベの絡みが実にファンキー。そして、面白いのは、5曲目の「Theme In Search Of A T.V. Commercial」。ダイナミックでスリリングなアレンジのビッグバンド・ジャズ・ファンクで、ビッグバンドをバックに、ソウルフルなハリスのテナーが乱舞する。

この盤の収録曲、現代においてサンプリングされているものが多い。それだけ、ソウルフルでファンキーで魅力的なフレーズが詰まっている。加えて、自在に音色を変化させ、ノリに乗ったブロウを吹き上げる、エレクトリック・サックスのグルーヴの心地よさ。クロスオーバー・ファンクとして、十分に楽しめる好盤です。
 
 

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 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2023年12月23日 (土曜日)

エディ・ハリスのファンキーな盤

エディ・ハリス(Eddie Harriss)は、『The In Sound』の「Freedom Jazz Dance」が転換点となって、聴き手に飽きられつつあった、イージーリスニング志向のジャズと決別。アーシーなファンキー・ジャズを経て、一気に、ソウルフルなエレ・ジャズ・ファンクへ志向を変えていく。この「志向の変化」を追いかけていくのが、意外と面白い。

Eddie Harris『The Tender Storm』(写真左)。1966年3月と9月の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, varitone), Ray Codrington (tp, track 5), Cedar Walton (p), Ron Carter (b), Billy Higgins (ds, track 5), Bobby Thomas (ds, tracks 1-4 & 6)。先にご紹介した『Mean Greens』(2023年12月20日のブログ)の次のリーダー作になる。

『Mean Greens』で、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンクに転身。録音が1966年3, 6月だったので、今回ご紹介する『The Tender Storm』と全く同時期の録音になる。

どちらも1966年のリリース。しかし、こちらの『The Tender Storm』は、アーシーでソウルフルなファンキー・ジャズ満載。どちらかと言えば、こちらの『The Tender Storm』の方が、メインストリーム系の純ジャズの面影濃厚である。
 

Eddie-harristhe-tender-storm

 
冒頭の「When a Man Loves a Woman」のアーシーでソウルフルな、どこかゴスペルの雰囲気濃厚なファンキー・ジャズが良い。まず、エディ・ハリスのテナーが、あっさりとした「ソウルフル&ファンキー」なテナーで唄いあげる。そんなエディ・ハリスのテナーをバックのシダー・ウォルトンが、これまた趣味の良いファンキーなピアノでガッチリとバッキングする。

2局目以降、この「アーシーでソウルフルな、どこかゴスペルの雰囲気濃厚なファンキー・ジャズ」で突っ走るかと思いきや、とても趣味の良い、ダイナミックでソウルフルなファンキー・ジャズが展開される。

が、これがとても良い内容なのだ。演奏レベルも高く、完成度の高いファンキー・ジャズ。エディ・ハリスのテナーも良いが、この盤では、ピアノのシダー・ウォルトンが大活躍である。流麗でガッツのあるファンキー・ピアノで、バンド全体をグイグイ引っ張っていく。

同時期に「趣味の良い、ダイナミックでソウルフルなファンキー・ジャズ」と「ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンク」。おそらく、エディ・ハリスは「どちらの方向に進むのか」自らがしっかりと吟味した結果が、今回の『The Tender Storm』であり、前にご紹介した『Mean Greens』なんだろう。

そして、エディ・ハリスは次作『The Electrifying Eddie Harris』で、電気サックスを取り入れ、着実に「ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンク」志向に舵を切る。

2023年12月20日 (水曜日)

エディ・ハリスの「転身」盤です

エディ・ハリス(Eddie Harris)を聴き直すことにした。もともと、Les McCann and Eddie Harris『Swiss Movement』を聴いて、エディ・ハリスの名を知った。ソウルフルなテナーがとても気に入った。それから、彼のリーダー作を2〜3枚聴いて以降、忘れた存在になっていた。

エディ・ハリスは、シカゴ出身のテナー奏者。スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズでデビュー、1966年にソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身。電気増幅サックスを導入したことでも知られ、それ故、我が国では「キワモノのテナー奏者」扱いされる傾向がある。が、彼のテナーは素性が良く、彼の奏でるソウルフルなジャズ・ファンクは今の耳にもしっかりと訴求する優れものである。

Eddie Harris『Mean Greens』(写真左)。1966年3, 6月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, el-p), Ray Codrington (tp, tamb), Cedar Walton (p), Sonny Philips (org), Ron Carter (b), Billy Higgins (ds), Melvin Jackson (b), Bucky Taylor (ds), Ray Codrington, Ray Barretto & Bucky Taylor (perc)。
 

Eddie-harrismean-greens

 
革新的なラテン リズム、グルーヴ感溢れる柔らかなトーン。エディ・ハリスのジャズ・ファンク、クロスオーバー・ジャズの走り的な、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身した最初のアルバムだろう。もともとデビュー当時は、スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズを趣味よくやっていたのだが、この盤で突然、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身である。

ソウルフルなテナーを吹き上げる、ストレートなジャズ・ファンク、タイトル曲の「Mean Greens」。ジーン・ハリスのカヴァーから、エディ・ハリス自身のセルフ・カヴァーなどで知られる代表曲「Listen Here」。「Goin' Home」のワイルドで柔軟なシャッフル。アルバム全編に渡って、エディ・ハリスならでは、のジャズ・ファンク~ソウル・ジャズが展開される。

ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンク。ラテンのリズムの導入など、クロスオーバー的な音の融合もあり、単純にソウル・ジャズの範疇に留めるよりは、先に控えるクロスオーバーなジャズ・ファンクの先駆と捉えた方が座りが良い。そういう意味で、再評価するに値するエディ・ハリスの「転身」盤である。
 
 

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2023年12月 4日 (月曜日)

エディ・ハリスの初リーダー作

Eddie Harris(エディ・ハリス)。このテナー・サックス奏者については、当ブログで取り上げることがほとんど無かったのではないか。1934年10月、シカゴ生まれ。1996年11月に62歳の若さで鬼籍に入っている。エモーショナルでソウルフル&ファンキーなテナー&ヴォーカルが身上。電気的に増幅されたサックスを紹介したことでも知られる。

Eddie Harris 『Exodus To Jazz』(写真左)。1961年の録音&作品。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Joseph Diorio (g), Willie Pickens (p), William Yancey (b), Harold Jones (ds)。リーダーのエディ・ハリスのテナーとジョセフ・ディオリオのギターがフロントのクインテット編成。エモーショナルでソウルフル&ファンキーなテナー奏者、エディ・ハリスの初リーダー作。

収録曲を見渡せば、全8曲中、ハリスの自作曲が4曲、ピアノを担当するピケンズの作曲が2曲、スタンダード曲が2曲と、初リーダー作としてバランスの取れた選曲に好感が持てる。ジャズマンの初リーダー作は、そのリーダーのジャズマンの持つ個性&特徴が把握、理解しやすいのだが、自作曲でそのジャズマンの長所が理解でき、スタンダード曲など他人の作曲の曲で、そのジャズマンの個性&特徴が把握できる。そういう面で、このハリスのリーダー作は選曲のバランスがとても良い。
 

Eddie-harris-exodus-to-jazz

 
初リーダー作なので、後の「圧倒的熱量とエモーショナルなファンクネスを撒き散らしたソウルフルなテナー」はまだ存在しないが、ファンキー&ソウルフルなテナーについては、その片鱗がそこかしこに散りばめられている。エディ・ハリスのテナーについては、この初リーダー作にして、他のテナー・マンには無い個性&特徴が備わっていることが良く判る。

冒頭の映画音楽「Exodus」での、情感溢れ、ファンクネスを湛えたテナーの音色。決してハードバップなテナーの延長線上に無い、ファンキー&ソウル・ジャズに端を発したエモーショナル&ソウルフルで典雅なテナーの吹き回し。そして、2曲目の自作バラード曲の「Alicia」での、寂寞感、切ない情感のこもったスピリチュアルなブロウ。ダイナミックかつ繊細、ファンクネス&ソウルフル溢れる情感たっぷりのテナー。エディ・ハリスのテナーの個性&特徴が良く理解出来る。

後のダンサフルでエモーショナル、ソウルフル&ファンキーなテナー&ヴォーカルのハリスと比べると、地味で大人し目の初リーダー作でのテナーだが、ジャズ・テナーとしての個性と特徴について、エディ・ハリスは素性確かなものだ、ということが良く判る。決して「際もの」なテナーでは無い。メインストリームで正統派なファンキー&ソウル・ジャズのテナーである。
 
 

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