2024年6月 6日 (木曜日)

マントラの隠れ名盤『Pastiche』

1973年の再結成後、順調に内容のあるアルバムを2枚、リリースしてきた、マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。そろそろ「マントラの音志向」を確立するタイミングでもあった。

The Manhattan Transfer『Pastiche』(写真左)。1976年12月から1977年9月の録音。1978年のリリース。ちなみにパーソネルは、Tim Hauser, Laurel Massé, Alan Paul, Janis Siegel (vo) 以上が「The Manhattan Transfer」。

前作、前々作同様、バックのバンドには、当時のクロスオーバー&フュージョン畑の有名ジャズマンから、ハイテクニックなスタジオ・ミュージシャンまで、多数の面子が参加して、マントラのコーラスをバックアップしている。特に、この盤では、ジャジーな音志向を強化していて、バックに豪華なビッグバンドが控えている。

ビッグバンドをバックにした、ジャジーな4人組コーラス。マントラ独特のコーラス・ワークを引き立たせるビッグバンド・アレンジが見事。ややもすれば、コーラス・ワークの邪魔になりそうな、ビッグバンドの重厚なユニゾン&ハーモニーなんだが、この盤でのビッグバンドのユニゾン&ハーモニーは重厚かつダイナミックだが、ユニゾンは効果的に抑制を効かせ、ハーモニーはコーラスの邪魔にならない、逆にコーラスを引き立たせる様な音の重ね方が上手い。
 

The-manhattan-transferpastiche

 
このアルバムを聴いていて、マントラの音作りって、往年の「ウエストコースト・ジャズ」がベースにあるのかな、と感じた。いわゆる、小粋なアレンジを施し、ハイテクニックだがお洒落に抑制を効かせて、じっくり「聴かせるジャズ」。マントラのアルバムの根底には、この「聴かせる」というキーワードがしっかりと「ある」。

まず、どの曲でも、マントラのコーラス・ワークのアレンジが見事。マントラならではのユニゾン&ハーモニーの個性を外さすに、原曲のニュアンスをしっかりと踏襲し、時に上回る。どこから聴いても「マントラ」を感じるコーラス・アレンジは見事という他ない。

選曲も良い。後にマントラの代表曲になる、ジミー・ジェフリー作の「Four Brothers」、エリントン作「In a Mellow Tone」、ヴィッド・バトー作「Walk in Love」。ルパート・ホルムズ作の「Who, What, When, Where, Why」。個人的には、ゴフィン=ゴールドバーグの「It's Not the Spotlight」。どの曲もアレンジが秀逸で、マントラのコーラス・ワークが映える。というか、アレンジが秀逸であれば、マントラのコーラス・ワークが映える曲を選んでいる様に見える。

この盤もマントラの数あるアルバムの中で、そのタイトルが特別に上がるアルバムでは無い。しかし、このジャズ・スタンダード曲からポップスの佳曲までを、ジャジーでライトなフュージョン・ジャズ風のアレンジでカヴァーした内容は、マントラのコーラス・アレンジの優秀さと演奏全体のアレンジの見事さを再認識させてくれる。

マントラの音志向が確立された感のある「マントラの隠れ名盤」だと僕は思う。
 
 

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2024年6月 5日 (水曜日)

マントラの「華麗なる開花」

1973年、一旦解散したマンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。その後、まもなく、リーダーのティム・ハウザーは、ローレル・マッセ、ジャニス・シーゲルと出会う。そして、アラン・ポールを紹介され、新生マントラを立ち上げることを決意、『The Manhattan Transfer (Atlantic, 1975) 』(左をクリック)で再デビューを果たす。

The Manhattan Transfer『Coming Out』(写真左)。1976年の作品。邦題「華麗なる開花」。ちなみにパーソネルは、Tim Hauser, Laurel Massé, Alan Paul, Janis Siegel (vo)、以上が「The Manhattan Transfer」。バックのバンドには、当時のクロスオーバー&フュージョン畑の有名ジャズマンから、ハイテクニックなスタジオ・ミュージシャンまで、多数の面子が参加して、マントラのコーラスをバックアップしている。

マントラとしては3枚目、新生マントラとしては2枚目のアルバム。マントラのデビュー盤が、カントリー調の楽曲が中心の、米国ルーツ・ミュージックの音要素をメインにしたアルバムだったが、この『Coming Out』は、ジャズ以外のポップス、ロックやオールディズで占められたアルバム。再デビュー盤『The Manhattan Transfer』 (Atlantic, 1975)の内容が、かなりジャジーだったので、この正反対に振れた様な音作りにはビックリ。
 

The-manhattan-transfercoming-out

 
わざわざ「カントリー調の楽曲」は避けたみたいで、全11曲、当時のロック&ポップス曲がメインだが、ところどころに。ジャズ風のバラードや、ラテン調の楽曲、シャンソン風のコーラスありと、バラエティーに富んでいる。ただ、曲調や曲想が変わろうが、原曲がロックだろうがポップスだろうが、マントラのコーラスとしては全くブレがない。どんな元曲でも、マントラが唄えば、マントラのコーラスの響き、ボーカルの響きになっているから立派。

ジャジーな「コンテンポラリー・ジャズ・コーラス」なマントラ、ジャズ曲がメインだが、他のジャンルの曲についても、どこまで。マントラのコーラスは有効なのか、元曲のジャンルの幅を広げて、マントラ・コーラスの適応度を試してみた。そんん、あ少し実験的な匂いがしないでもない内容。ただ、アレンジが優れているので、陳腐な結果にはなっていない。ポップス、ロックやオールディズは、マントラの守備範囲として、十分「イケる」ということが、この盤でよく判る。

マントラの数あるアルバムの中で、恐らく、一番地味なイメージのアルバムで、マントラの紹介記事などには、この『Coming Out』というアルバム名は見たことが無い。しかし、マントラの音志向の広がりの限界点を理解する上で、このポップス、ロックやオールディズの楽曲カヴァーは、なかなか実験精神に満ちた内容で聴き応えがある。好盤です。
 
 

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2024年6月 4日 (火曜日)

「5人組マントラ」のデビュー盤

マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)は、1969年にティム・ハウザー(Tim Hauser)が中心となり結成したジャズ・コーラス・グループ。

マントラと言えば、1973年にティム・ハウザーをリーダーとして、アラン・ポール、ジャニス・シーゲル(1979年からシェリル・ベンティーン)、ローレル・マッセーの4人組という印象だが、これは再結成後の編成。マントラは、最初、リーダーのティム・ハウザー以外、全く異なるメンバーの5人組で結成され、1枚のアルバムを残して、1973年、一旦解散している。

The Manhattan Transfer『Jukin'』(写真左)。1969〜1971年の録音。ちなみにメンバーは、Tim Hauser, Erin Dickins, Marty Nelson, Pat Rosalia, Gene Pistilli の5人。結成当初の5人組マントラでの唯一のアルバム。

このアルバムは、カントリー調の楽曲が中心。もともと、マントラは、ジャズを基調とした楽曲が中心のはず。しかし、このマントラのファースト・アルバムは、ジーン・ピスティリの音楽志向が大きく反映されたものらしい。リーダーのティム・ハウザーの音楽志向は、ジャズやスウィング調の楽曲。しかし、ジーンの音楽志向は、カントリーやウェスタン、R&B、メンフィス・サウンド。全く、志向の全く異なるメンバーでのコーラス・ワーク。
 

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しかし、このアルバムを聴くと、このカントリー調のマントラが失敗だったとは思えない。ティム・ハウザー以外、メンバーは全く異なるとは言え、コーラスのアレンジ、コーラスの響き、コーラスのノリ、どれもが、再結成後のマントラに通じるものがあって、コーラス・ワークのレベルは高く、マントラとしてのコーラスの個性はしっかりと確立されている。

今、流行の「アメリカーナ」な音世界、ロック、ブルース、カントリー、そして、フォーク、ゴスペル、オールド・タイムなどの米国ルーツ・ミュージックの音要素が引用〜融合が評価を得ている「今」の耳で聴けば、この『Jukin'』というアルバム、意外と現代の「アメリカーナ」なジャズを先取りしている様な内容で楽しく聴ける。

確かに、再結成後のジャズを基調としたマントラの音と比較すると、再結成前のカントリーを基調とした音はポップで軽い。純ジャズなコーラスかと問えば、答えは「No」。しかし、フュージョンなコーラスかと問えば、答えは「Yes」。結成後のライトでポップな純ジャズ志向のコーラスでは無いが、カントリー基調のフュージョン・ジャズなコーラスと言えば納得の内容。

再結成前の唯一枚のアルバムだが、マントラとしてのコーラスの個性、アレンジはしっかりと確立されていて、結成後のマントラと並べてみても、違和感は余り無い。現代の「アメリカーナ」なジャズの先駆けの「フュージョン・コーラス」として聴けば、意外と楽しめる。
 
 

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2023年5月 8日 (月曜日)

マントラの50周年記念アルバム

ジャズの世界でも、ピンのボーカルは数あれど、ボーカルのグループは「稀少」。ピンであれば、何もかもが「自分次第」なので、何かとやり易いのだが、グループの場合、メンバー同士の声質の相性が良くないといけないそ、そのグループの個性を活かした高度なアレンジが必要で、意外とグループの結成〜運営の難度が高いのが原因だと睨んでいる。

The Manhattan Transfer with the WDR Funkhausorchester『Fifty』(写真左)。2022年9月のリリース。唯一無二のジャズ・コーラス・グループ、マンハッタン・トランスファー(略して「マントラ」)の50周年記念アルバム。ドイツのケルン放送管弦楽団との共演盤である。

マントラの現メンバーは、Alan Paul, Janis Siegel, Cheryl Bentyne, Trist Curless の4人。グループの創設者でありリーダーであった Tim Hauser が、2014年10月16日、72歳で逝去。交代メンバーとして、Trist Curless が加入して、現在も、結成時どおり、4人のコーラス・グループとして活動している。

そんなマントラも結成50周年。僕は、1975年リリースの『The Manhattan Transfer(マンハッタン・トランスファー・デビュー!)』からリアルタイムで聴き続けてきたので、それでも48年になる。リーダーのティム・ハウザーが亡くなった時には、マントラも解散やろなあ、と残念に思ったのだが、トリスト・カーレスを交代メンバーとして迎えて、活動を継続したのには、心底、心強く思ったものだ。

この盤は、キャリア50年間の中でのマントラ自身のヒット曲の数々を、ドイツのケルン放送管弦楽団と共演して再録音した「マントラ with ストリングス」。


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with ストリングス作品は、まずアレンジが一番の「キモ」。アレンジが陳腐だとイージーリスニングな軽音楽風に成り下がって、聴くに耐えない状態に陥る。が、この盤ではヴィンス・メンドーザ等の優秀なオーケストラ・アレンジャーが腕を振るっていて、マントラの個性を損なうこと無く、コンテンポラリー・ジャズな雰囲気をしっかり維持した内容になっている。

加えて、バックがストリングスなりのボーカル・アレンジも必要になるのだが、これも、アマンダ・テイラー等のヴォーカル・アレンジャーが腕を振るっていて、マントラのボーカル&コーラスの個性、アーバンで小粋でどこかコケティッシュな雰囲気、独特のコーラスの重ね方とフレーズの取り回し、それらを十分に活かした、ちょっと聴くだけで「マントラ」と判るボーカル・アレンジは素晴らしいものがある。

マントラのボーカル&コーラス自体は全く変わりなく、卓越したチームワーク&歌唱力で唄いまくる。その統率&規律がとれた一糸乱れの無いコーラス・ワークは圧倒的。そんなボーカル&コーラスが、ストリングスの力で、更に魅力を引き立たせ、この個性を前面に押し出し浮き出した、今までのマントラ盤に無い魅力が詰まった好盤である。

この盤の魅力って、マントラとして初録音となる、ジョージ&アイラ・ガーシュウィン作の有名スタンダート曲「The Man I Love」を聴けば良く判るかと思う。この歌唱はマントラとして最高の部類に入るのでは無いか、と思っている。

マントラ健在。そんな気持ちを強く持った傑作盤。しかし、2022年暮れから2023年にかけて「ファイナル・ワールド・ツアー」を敢行することがアナウンスされている。マントラも「レジェンド」の域に達したのか、と感慨深く思ったり残念にも思ったり。それだけ、唯一無二の稀少なジャズ・ボーカル・グループなんですよね、マントラって。
 
 

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 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

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2018年8月23日 (木曜日)

往年のマントラが甦った様な新作

ジャズの世界でも、複数人で構成されるボーカル・グループの存在については、そんなに数は多くない。パッと考えて、パッと浮かぶグループ名は、スイングル・シンガーズとマンハッタン・トランスファーくらいしか思い浮かばない。まあ、ジャズ・ボーカルは「ピン」でやるに十分で、グループでやる意味があまり無いことがその理由なんだろう。

マンハッタン・トランスファー(以下「マントラ」と略す)は大のお気に入りである。もともと、マントラのデビュー盤が1975年。FMで聴いて、一発でお気に入りになった。大学に入って、本格的にジャズを聴き始める中で、マントラのアルバムも幾枚か所有するようになる。『Extensions』『Mecca for Moderns』『Bodies and Souls』などがお気に入り盤である。

そんなマントラが今年の3月、9年ぶりの新アルバムをリリースした。マントラといえば、2014年にグループの創設者であったティム・ハウザーが亡くなり、同年にトリスト・カーレスが新たに加入。この新作は、2009年の『TKhe Chick Corea Songbook』以来、トリスト・カーレス新加入後、初のオリジナル・アルバムになる。
 

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そのアルバムは、Manhattan Transfer『The Junction』(写真左)。リーダーのティム・ハウザーが逝去した後、マントラの音世界はどう変わったのか、興味津々でアルバムを聴く。するとまあ、マントラらしいダイナミックでフレッシュなコーラスを聴くことが出来る。4人のハーモニー中心のアレンジが素晴らしい。トリスト・カーレス新加入が「吉」と出たようだ。

打ち込みを加えたアレンジは今風で、そのサウンドは現代ジャズのど真ん中。決して「懐メロ」では無い。今のジャズとしてのマントラの音がここにある。1曲目の「Cantaloop (Flip Out!)」を聴けば、それが良く判る。ハービー・ハンコックの「Cantaloupe Island」をベースにしたUS3のヒット曲「Cantaloop (Flip Fantasia)」のマントラ・ヴァージョン。新しい響き。創造的な内容。実に格好良い。

カーレスの声が声域も声質もポールとあまり変わらないので、区別が付きにくいのが難点と言えば難点だが、女性ボーカルを加えた、往年のマントラ・コーラスの響きを聴けば、あんまり気にするほどのことは無い。往年のマントラが甦った様な新作。我々「マントラ者」からすれば、この盤、実に嬉しいプレゼントです。さあ、旧作を一気に聴き直してみようか。

 
 

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2018年4月 7日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・117

ジャズ・ボーカリストは星の数ほどいるが、ジャズ・コーラス・グループは数が少ない。メジャーな存在になって、ジャズの歴史に名を残したジャズ・コーラス・グループは両手の数ほどである。そんなジャズ・コーラス・グループの中で、僕が愛して止まないのが、「マンハッタン・トランスファー(Manhattan Transfer)」。長いグループ名なので以下「マントラ」と略しますね。

マントラは米国のジャズ・コーラス・グループ。男性2名+女性2名の4名構成。卓越したボーカル技術とハーモニーで、フュージョン・ジャズ系のボーカル・コーラスを展開する。純ジャズ系でないところが、僕にとっての最大の「愛すべきポイント」で、様々な音楽ジャンルの楽曲をジャズ・コーラスに変えて、素敵なフュージョン・ジャズとして、小粋にクールに聴かせてくれる。

今日聴いたマントラは、Manhattan Transfer『Swing』(写真左)。1997年の作品。モダンジャズのスタンダード曲でも無く、米国ポップスのヒット曲でも無く、1920〜30年代に流行したジャズのスタイルである「スイング・ジャズ」の楽曲をチョイスして、ジャズ・コーラスとしてアレンジして聴かせてくれる。これが、とっても良い出来なのだ。
 

Mantra_swing  

 
まず、スイング時代の楽曲をチョイスしたところがミソ。ダンス・ミュージックの起源とも評されるスイング・ジャズ、その名の通り、スイング感が抜群なのだ。つまり、スイング時代の楽曲って、ジャズ・コーラスに不可欠のスイング感が既に備わっている。そして、この盤の収録に選ばれたスイング時代の楽曲の旋律がとっても良い。どれもが、ダンサフルでポップでメロディアス。

加えて、スイング時代の楽曲は、カウント・ベイシーやベニー・グッドマン、グレン・ミラーなど、ジャズ・オーケストラでの演奏を前提としていて、ユニゾン&ハーモニーを取りやすいアレンジがなされている。このジャズ・オーケストラの演奏をジャズ・コーラスにしっかりと置き換えて、ユニゾン&ハーモニーの響きを最大限の増幅させている。

とにかく聴いて楽しいマントラのジャズ・コーラス。しっかりジャジーな要素も踏まえていて、極上のフュージョン系のジャズ・コーラスがとにかく素晴らしい。内容がシッカリとしていて濃いので、聴き始めたら一気に聴き切ってしまう。マントラのジャズ・コーラスの良い面が全て出た傑作盤。僕にとってのマントラ好盤のベスト3に入るお勧め盤である。

 
 

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2015年12月24日 (木曜日)

マントラの秀逸なXmas曲集

ジャズのソロ・ボーカルやコーラス・グループについては「Xmas曲集」が出しやすい。もともとXmas曲って、歌詞があって唄があって、という曲がほとんどだからね。メジャーどころのボーカリスト、コーラス・グループは、その活動の歴史の中で、必ず一枚は「Xmas曲集」を制作しリリースしている。

僕の長年お気に入りのジャズ・ボーカル・グループ、マンハッタン・トランスファーも「Xmas曲集」を出している。その「Xmas曲集」とは、Manhattan Transfer『The Christmas Album』(写真左)。

1992年のリリースになる。Manhattan Transfer=マンハッタン・トランスファー、略して「マントラ」なんだが、マントラは1972年の結成なので、結成20周年にして、満を持してのXmas曲集のリリースである。

Xmas曲集をリリースしてこそ、名実共にメジャーな存在になる、と言われるだけに、この1992年のマントラのXmas曲集のリリースについては「よかったな〜」って「万感の想い」を感じたことを覚えている。マントラについては、デビュー盤の『Manhattan Transfer』から聴き続けてきたからなあ。
 

Manhattan_trasfer_christmas

 
さすがに結成後20年経ってからの「Xmas曲集」である。その内容の充実度合いと来たら、それはそれは素晴らしい出来である。「Xmas曲集」ということを離れて、ジャズ・コーラスの好盤としても十分に鑑賞に耐える、逆に言うと、このアルバムを「Xmas曲集」として留めるには勿体ないくらいの内容の充実度となっている。

ジャズの「Xmas曲集」の成否は、ひとえにアレンジにかかっていると言えるが、このマントラの「Xmas曲集」はアレンジが秀逸。フルオーケストラやコーラスをバックにしたアレンジが素晴らしい。「Xmas曲」は皆が知っている、キャッチャーで、ちょっと俗っぽい旋律が多いので、アレンジに手を抜くと、途端に「陳腐なXmas曲」に陥ってしまう危険性を孕んでいる。

そういう点では、このマントラの「Xmas曲集」については全く問題無い。というか、アレンジが優れている分、俗っぽい「Xmas曲」ですら、高尚で敬虔なジャズ・コーラスに早変わりする。適度に洒落ていて小粋なジャズ・コーラスに昇華して、それはそれは思わず聴き惚れてしまう位の典雅でモダンな雰囲気。

このマントラの「Xmas曲集」は、マントラの実力の素晴らしさを再認識させてくれる、素晴らしい内容のアルバムに仕上がっています。ジャジーで高尚で敬虔、適度にお洒落で小粋なコーラスが奏でる「Xmas曲集」。ジャズ・ボーカルの好盤としてもお勧め。

それでは「Merry Christmas」。

 
 

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2015年10月 5日 (月曜日)

マントラのジャジーなデビュー盤

いつの間にやら、秋たけなわ。ここまで涼しくなると、ジャズ盤もジャンルを選ばない。久し振りにジャズ・ボーカル盤に耳を傾ける。苦手のジャズ・ボーカル。どうにも、ジャズ・ボーカル者の方々の推薦盤は耳に馴染まない。

ジャズ・ボーカルの中でも、最初はコーラス・グループがお気に入り。ジャズを聴き始めた頃、このグループが耳に馴染んで、最初のお気に入りジャズ・ボーカル盤になった。そのアルバムとは『The Manhattan Transfer』(写真左)。1975年のリリース。邦題は確か「デビュー!マンハッタン・トランスファー」だったと記憶している。

略して「マントラ」は、男女各2人による4人編成。1978年、シェリル・ベンティーンが正式加入して現在のメンバー構成となる。ちなみにメンバー構成は、ティム・ハウザー(グループの創設者でありリーダー)、アラン・ポール、ジャニス・シーゲル、シェリル・ベンティーン。グループ名は、ジョン・ドス・パソスの小説「マンハッタン乗換駅(Manhattan Transfer)」から取ったとのこと。
 

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とにかく粋なコーラス・グループである。テクニックも優秀。バックの伴奏は明らかにフュージョン・ジャズ。フュージョン・ジャズに乗って、メインストリームなジャズ・コーラスを、ソフトにメロディアスに唄い上げる。芳しきユニゾン&ハーモニー。唄から湧き出るリズミカルなオフビート。弾むようなスキャット。

マントラのアルバムの中で、実は、この実質上のデビュー作『The Manhattan Transfer』が一番ジャズっぽい。このデビュー盤のコッテコテのジャズっぽさから、アーバンなポップさが加わって、マントラはどんどんコンテンポラリーなジャズ・コーラスとして進化していく。

そのマントラの原点を示すアルバムがこの『The Manhattan Transfer』。ジャケットも実にお洒落で格好良い。1970年代半ばから後半の古き良きニューヨークを感じる様な、そんな小粋な4人組ボーカル・グループである。とにかく良いです。ジャズ者万民向け。お気に召したなら、次のアルバム達もどうぞ。『Extensions』(2011年6月28日のブログ・左をクリック)、そして『Mecca for Moderns』(2012年3月5日のブログ・左をクリック)。
 
 
 
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2012年3月 5日 (月曜日)

マントラの個性が確立された傑作

40歳を過ぎるまで、ビッグバンド・ジャズとジャズ・ボーカルは意識的に避けてきた。最近、50歳を過ぎて、感性の許容量に余裕が出てきたところで、ビッグバンド・ジャズトジャズ・ボーカルにチャレンジしている。あの世に行く前には、いっぱしの「うんちく」を垂れるようにはなりたいものだ。

さて、そのジャズ・ボーカル、歌詞が判らんと意味が無い、と避けてきたが、インターネットが発達して、インターネットを活用して様々な情報が即座に入手出来る様になった。ジャズ・スタンダードの歌詞も和訳付きで手に入る。インターネットを活用したら、ジャズ・ボーカルで歌われる歌詞も何が歌われているのか、なんとか判るようになった。

ジャズ・ボーカルにチャレンジするに当たり、意識的に避けてきたとは言え、お気に入りとして親しんできた、数少ないボーカル・アルバムがある。その辺のおさらいから始めている。その「おさらい」の対象の一つが「Manhattan Transfer(マンハッタン・トランスファー)」。略して「マントラ」。

「マントラ」は、男女各2人による4人編成。1978年マッセーに代わりシェリル・ベンティーンが正式加入して現在のメンバー構成となる。ちなみにメンバー構成は、ティム・ハウザー(グループの創設者でありリーダー)、アラン・ポール、ジャニス・シーゲル、シェリル・ベンティーン。グループ名は、ジョン・ドス・パソスの小説「マンハッタン乗換駅(Manhattan Transfer)」から取ったとのこと。

僕にとって、ジャズ・ボーカルもので最初にヘビロテになったアルバムが、1979年リリースの5th.アルバム『Extensions』。このアルバムについては、2011年6月28日のブログ(左をクリック)に詳しいので、一度ご参照願いたい。正統派ジャズ・ボーカル・グループのマントラとしては異質と言えば異質。コンテンポラリーなジャズをバックに、というよりは、完璧な「フュージョン・ジャズ」をバックにしたエレクトリックなジャズ・コーラス。しかし、これが「受けた」。ヒットアルバムになった。
 

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そして、1981年、その次の作品としてリリースされた6th.アルバムが『Mecca for Moderns』(写真)。前作の路線を踏襲し、引き続きJay Graydonの製作。前作の、完璧な「フュージョン・ジャズ」をバックにした、エレクトリックなジャズ・コーラスに磨きをかけたというか、完璧な「フュージョン・ジャズ」をバックにしたエレクトリックなジャズ・コーラスに、トラディショナルなジャズ・コーラスの要素を上手い具合にブレンドさせて、マントラのグループとしての個性を確立させている。

このアルバムでは、前作でそこはかとなく漂っていた違和感、バックの完璧な「フュージョン・ジャズ」とマントラが根底に持つトラディショナルなジャズの要素が微妙に噛み合わない「違和感」が完全に払拭されている。前作での「違和感」は、プロデューサーのJay Graydonの「宿題」であった。この「宿題」をJay Graydonとマントラは完全に払拭している。

全編、コンテンポラリーでフュージョンなジャズ・ボーカルで、聴いていて惚れ惚れする。疾走感、爽快感が趣味良く漂い、ボーカル&コーラスは、トラディショナルな雰囲気漂う正統なもの。とにかく、マントラは上手い。その上手さ故、トラディショナルなアレンジに乗せると、従来のジャズ・ボーカルの路線に埋もれてしまって、ポップ性、ヒット性が損なわれてしまうのだが、その「懸念」をバックの完璧な「フュージョン・ジャズ」なアレンジが払拭する。

Jay Graydonのプロデュースとアレンジワークの勝利だろう。マントラの持つ、ポップなイメージ、トラディショナルなジャズのエッセンス、本来マントラが持つ華麗なコーラスワークとボーカル・テクニック、これらが見事にミックスされて、マントラの個性として確立されている。

今や「Boy from New York City」はすっかり、コンテンポラリーなジャズ・スタンダード曲として定着し、ラストの「A Nightingale Sang In Berkeley Square」のアカペラ・コーラスは、今でも鳥肌ものだ。この2曲が、完璧な「フュージョン・ジャズ」をバックにしたエレクトリックなジャズ・コーラスに、トラディショナルなジャズ・コーラスの要素を上手い具合にブレンドさせて確立した「このアルバムの個性」を代表している。

この6th.アルバム『Mecca for Moderns』は、マントラの傑作のひとつとして、今でも僕は愛聴している。

 
 

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2011年6月28日 (火曜日)

疾走感溢れるボーカル・グループ

ジャズを聴き始めた頃のことである。とにかく、ジャズを聴かなければならぬ、数をこなさなければならぬ。沢山ジャズを聴いて、ジャズの経験を深めなければならぬ。

しかし、その当時は大学生。バイトはしていても財力に限りがある。数をこなすにはFM。FMのエアチェックで片っ端から、ジャズ、フュージョンの演奏をどんどんエアチェックし、ガンガンに聴いていた。

そんなFMのエアチェックで引っ掛かってきたボーカル・グループがあった。抜群のテクニック、抜群の歌唱力、抜群のユニゾン&ハーモニー。それはそれは、素人でも「これは凄い」と思わせるボーカル・グループに出会った。そのボーカル・グループの名は「The Manhattan Transfer」。

The Manhattan Transferは、男女各2人による4人編成。1978年マッセーに代わりシェリル・ベンティーンが正式加入して現在のメンバー構成となる。ちなみにメンバー構成は、ティム・ハウザー(グループの創設者でありリーダー)、アラン・ポール、ジャニス・シーゲル、シェリル・ベンティーン。グループ名は、ジョン・ドス・パソスの小説「マンハッタン乗換駅(Manhattan Transfer)」から取ったとのこと。

初めて聴いたアルバムはデビュー・アルバム。抜群のテクニック、抜群の歌唱力、抜群のユニゾン&ハーモニー。そして、最新のジャズ・フォーマットを採用しつつ、エレクトリック・ジャズのトラディショナルな伴奏をバックに歌いまくるボーカル・グループに、ぞっこん惚れ込んだ。
 

Extentions

 
そして、時は1979年。あの「秘密の喫茶店」で流れていたボーカル・グループのアルバム。聴き覚えのあるユニゾン&ハーモニー。そう、The Manhattan Transfer(以降、略して「マントラ」) である。しかし、今までに聴いたことのない展開、というか、これって、ウェザー・リポートの「バードランド」ではないのか。というか「バードランド」である。歌詞付きの「バードランド」。

その「バードランド」が収録されたアルバムが『Extensions』(写真左)。エアプレイで有名なジェイ・グレイドンによるプロデュースで文句無く楽しい作品。というか、正統派ジャズ・ボーカル・グループのマントラとしては異質と言えば異質。コンテンポラリーなジャズをバックに、というよりは、完璧な「フュージョン・ジャズ」をバックにした、エレクトリックなジャズ・コーラス。

冒頭のウェザー・リポートの名曲「バードランド」を始めとして、収録されている楽曲は全て、電気楽器をベースとした、完璧な「フュージョン・ジャズ」である。そして、その完璧な「フュージョン・ジャズ」をバックにマントラは歌いまくる。そう「歌いまくる」のだ。切れ味鋭く、抜群の歌唱力を武器に歌いまくる。

そして、このマントラの最大の特色は「疾走感」。抜群の歌唱力、抜群のユニゾン&ハーモニーとバックの完璧なまでの「フュージョン・ジャズ」が相まって、その「疾走感」が増幅される。『Extensions』では、その「疾走感」が溢れていて、それはもう限りなく爽快ですらある。全編約37分のアルバムではあるが、聴き終えた後、心地良い疲労感が残る位だ。

傑作「バードランド」を始めとして、1979年テレビ番組「トワイライト・ゾーン」の同名テーマ曲「Twilight Zone/Twilight Tone」、そして、完璧にフュージョン・ジャズ化された「Body And Soul」。その他、収録された曲が全て、硬派な疾走感溢れるAOR的なジャズ・コーラスに仕立て上げられている。一度は聴いて欲しい、ジャズ・ボーカル・グループの名盤です。 

 

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