2023年11月25日 (土曜日)

ウエスの弾きっぷりが見事。

リヴァーサイド・レーベル時代のウエス・モンゴメリーのリーダー作に「はずれ」は無い。どのリーダー作でも、ウエスのギターは絶好調。加えて、総帥プロデューサーのオリン・キープニュースのサイドマンの人選がとても良く、ウエスはそんなパーソネルに恵まれて、心おきなく、ギターを弾きまくっている。

Wes Montgomery『So Much Guitar!』(写真左)。1961年8月4日の録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Hank Jones (p), Ron Carter (b), Ray Barretto (conga), Lex Humphries (ds)。ウエス・モンゴメリーの6枚目のリーダー作。米国ではウエスの最高の録音の1つとされる。パーソネルのメンバーの人選も申し分ない。

しかし、まあ(笑)、思いっきり弾きまくるウエスである。鬼気迫る雰囲気ではない、軽やかに爽やかに疾走するように、超絶技巧なギターを弾きまくるウエス。

これが良い。収録された曲の選曲がふるっている。全8曲中、ウエスの自作曲が2曲のみ。他の6曲は渋めのスタンダード曲。意外とひと捻りもふた捻りもある、癖のあるスタンダード曲で、これは弾き甲斐があるだろう。

一本弾きからお得意のオクターブ奏法、そしてコード弾きまで、ウエスの持つテクニックを余すことなく駆使して、ウエスしか弾けないギターで、渋めのスタンダード曲を味わい深く聴かせてくれる。
 

Wes-montgomeryso-much-guitar  

 
あまりに軽くかっ飛んだ弾き回しなので、ジャズ・ギター初心者は、何が何だか判らなくなるかも(笑)。それでも、この弾き回しは凄いのはよく判るかと思います。

バックのリズム隊+コンガの叩き出すリズム&ビートは小粋で典雅。ハンク・ジョーンズのファンクネス漂う典雅なバップ・ピアノが効いている。伴奏上手、奥ゆかしく典雅にバッキングするハンクのピアノは、フロントのウエスにピッタリ。

ギターとピアノ、一本弾きからお得意のオクターブ奏法、そしてコード弾きまで全部できる楽器同士なので、音がぶつかったりするのだが、ハンクのテクニックが優れているのか、決して、音がぶつからないのには感心する。

この盤、米国ではウエスの最高の録音の1つとされるが、我が国では「コンガ入り」が良く無いのか、あまりこの盤を「名盤」として紹介される機会は僅少。

が、この「コンガ」の存在が、この盤のシリアスでハードな面を緩和し、若干、ポップな雰囲気を添加していて、効果抜群と僕は聴いている。

ウエス初期の名盤の一つとして、しっかりと聴いてもらいたいリーダー作。成熟し完成し切ったウエスのギターの弾きっぷりが見事です。
 
 

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2023年9月18日 (月曜日)

充実の『アフリカン・ワルツ』

リヴァーサイド・レーベルのキャノンボール・アダレイは、自らの個性を前面に出し、活き活きとしたパフォーマンスを発揮し、数々の傑作をものにしている。ひとえに、リヴァーサイドの総帥プロデューサーのオリン・キープニュースの賜物である、と僕は思っている。キャノンボールは本当に良いレーベルに巡り会えた。

Cannonball Adderley『African Waltz』(写真左)。1961年2, 5月の録音。リヴァーサイド・レーベルからのリリース。ビッグバンドをバックにしたキャノンボール・アダレイの企画盤。

ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley, Joe Newman, Ernie Royal, Clark Terry, Nick Travis (tp), immy Cleveland, George Matthews, Arnett Sparrow, Melba Liston (tb), Bob Brookmeyer (valve-tb), aul Faulise (b-tb), Don Butterfield (tuba), George Dorsey (as, fl), Oliver Nelson (ts, fl), Jerome Richardson (ts, fl, piccolo), Arthur Clarke (bs), Wynton Kelly (p), Sam Jones (b), Charlie Persip, Louis Hayes (ds), Michael Olatunji (congas, bongos), Ray Barretto (congas),

要所要所に一流ジャズマンを配置した、内容のあるスキルフルなビッグバンドをバックにした、充実の企画盤。ビッグバンドをバックにしたキャノンボールと言えば、エマーシー時代の「ウケ狙いのイージーリスニング・ジャズ」を想起して、ちょっと眉をひそめるのだが、この盤を聴けば、それは杞憂であったことにホッとする。
 

Cannonball-adderleyafrican-waltz

 
アレンジが良い。アーニー・ウィルキンスのアレンジとのことだが、1960年代のジャズ黄金期の「録音の為のビッグバンド」といった音作りがとても良い。ウィントン・ケリーのピアノ、サム・ジョーンズのベース、チャーリー・パーシップとルイス・ヘイズのドラム、この1960年代ならではのリズム・セクションが、当時の最先端のハードバップらしいリズム&ビートを供給する。これが意外と洒脱なのだ。

ホーン隊は逆に、実に「俗っぽい」。どこから聴いても、下世話なスイングの雰囲気を引き継いだ、どこから聴いても、モダン・ジャズらしい、大衆受けするユニゾン&ハーモニー。新しさは無いが、ジャズ黄金期のブラスの響き、ブリリアントな音の輝きが「どジャズ」していて、とても良い。

そんなビッグバンドをバックに、キャノンボール・アダレイの初のシングルヒット曲「African Waltz」が展開される。これがまた実に良い。ただ、この「African Waltz」は、アドリブ・パートが無くて、ジャズの曲調を借りたビッグバンドをベースとしたイージーリスニング志向の演奏。それでも、曲自体が良くて、音的にもアフリカ色が散りばめられていて良い感じ。

他の曲も、スタンダード曲、若しくは、ミュージシャンズ・チューンがほとんどだが、演奏自体のレベルは良好。さすが、メンバーがメンバーだけに、それぞれのアドリブ・パートや要所要所のユニゾン&ハーモニーは聴き応え十分。

エマーシー時代とは一線を画した、リヴァーサイドでの内容のあるスキルフルなビッグバンドをバックにした、充実の企画盤。本当に、キャノンボールって、リヴァーサイドに移籍して良かったなあ、とこの盤を聴く度に、つくづく思うのだ。
 
 

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2023年9月15日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・266

キャノンボール・アダレイは、ファンキーで明るいアルト・サックスが身上。しかし、デビューから暫くは、エマーシー・レーベルの下、明るい明確なアルト・サックスをメインに、ストリングスやジャズオケをバックにした、大衆受け狙いの「イージーリスニング・ジャズ」志向のリーダー作を連発。

リヴァーサイド・レーベルに移籍して、ハードバップなジャズにやっと立ち戻ったが、ファンキー・ジャズには未だ至らす。しかし、1959年の『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』で一気にファンキー・ジャズ志向に大転換。以降、暫く、キャノンボール・アダレイは、ファンキー・ジャズ一直線で、売れっ子人気ジャズマンの仲間入り。

Cannonball Adderley『Them Dirty Blues』(写真左)。1960年2月1日はNY、1960年3月29日はシカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cornet), Bobby Timmons (p, tracks 5–9) , Barry Harris (p, tracks 1–4), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。

ピアノをバップなピアニストであるバリー・ハリスとファンキーなピアニストであるボビー・ティモンスとで使い分けているが、編成の基本はアダレイ兄弟がフロント2管のクインテット編成。こってこてバップなピアニストのハリスが、とってもファンキーなピアノを弾いている。こってこてファンキーなティモンズのピアノよりファンキーなのでは、と思う位、ファンキーなハリスのピアノが効いている。
 

Cannonball-adderleythem-dirty-blues  

 
ナット・アダレイのファンキー・チューンの名曲、冒頭の「Work Song」が突出して良い出来。コール・アンド・レスポンスでゴスペルチックなテーマ、展開部は徹底的にファンキーなフレーズで埋め尽くす。根明でストレートなキャノンボールのアルト・サックスと、根明でブリリアントなナットのトランペットが映えに映える。

ちなみに、CDリイシュー盤では、バリー・ハリスがピアノを弾いているテイクと、ボビー・ティモンズがピアノを弾いているテイクとを聴き比べることが出来る。聴き比べると判るのは、LP時代、正式に採用されたのは、バリー・ハリスがピアノを弾いたテイク。ハリスがこってこてファンキーに切れ味良く、ファンキーなバップ・ピアノよろしく、フロントのアダレイ兄弟をバッキングしている。うん、やはり、これはハリスのテイクの方が良い。

2曲目以降もファンキー・ジャズ志向の演奏がてんこ盛り。ハリスのファンキー・ピアノが目立っているが、ティモンズのソウルフルなファンキー・ピアノが良い味を出している。

この『Them Dirty Blues』、スタジオ録音での、アダレイ兄弟のファンキー・ジャズ志向を決定付けたエポック・メイキングな盤という位置づけで、ファンキー・ジャズの名盤の1枚として良いのではないか。アルバムのどの曲を聴いても「ファンキー・ジャズ」。アダレイ兄弟の「ファンキー・ジャズ事始め」を、『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』と併せて聴いて確かめたい。
 
 

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2023年9月12日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・99

ジュニア・マンスのピアノはファンキーでソウルフル、端正で明確なタッチが身上。ドライブ感溢れるグルーヴィーな、爽快感溢れる弾きっぷりは爽快感抜群。ビ・バップなピアノを洗練して、ハードバップに乗せたイメージで、高速弾きの曲についても、フレーズが洗練されているので、耳に付かないのが特徴。

Junior Mance『Happy Time』(写真左)。1962年6月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Ron Carter (b), Mickey Roker (ds)。リヴァーサイドの傍系レーベル「Jazzland」からのリリース。ベースにレジェンド、ロン・カーター、ドラムにモーダルなドラマー、ミッキー・ローカー。

伸びるトーンと強靱なビート。当時、最先端をいくモーダルなリズム隊をバックにマンスが弾きまくる。といっても、マンスがモーダルなピアノを弾く訳では無い。バックのリズム隊のロンもローカーも、リズム&ビートの基本はハードバップ。逆に、1963年の録音年で、ロンとローカーがハードバップ志向のリズム&ビートを供給している様は珍しいと言えば珍しい。
 

Junior-mancehappy-time

 
端正で明確なタッチ、ドライブ感溢れる、グルーヴィーで爽快感溢れる弾きっぷりのマンスのピアノを引き立てる様な、伸びるトーンと強靱なビートを供給するこのリズム隊は素晴らしい。こんな素晴らしいリズム隊に恵まれて、マンスは当時としての「ベスト・パフォーマンス」を繰り広げる。

収録されたどの演奏も、マンスのパフォーマンスの良いところが前面に押し出されていて良い出来。乾いたブルース・フィーリングを湛えた、遅れてきたハードバップ・ピアノ・トリオの名盤といった面持ちで、聴いていてとても心地良く、マンスらしい愛嬌や軽妙さが見え隠れして、聴いていてとても楽しい。

マンスの代表的名盤の1枚として良い、優れた内容。ジャケットもシンプルで良好。それでも、マンスの人気については、我が国ではイマイチなのが残念。何がいけないのか、良く判らないが、少なくとも、初リーダー作『Junior』がマンスの最高作と評価している間はどうしようも無いかな。僕は思う。この『Happy Time』の内容は明らかに『Junior』の上を行く。
 
 

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2023年8月31日 (木曜日)

マンスの真の個性が満載な盤

ジュニア・マンスのピアノの真の個性とは何か、を追求している。初リーダー作『Junior』を聴き込み、そしてリーダー作2作目『The Soulful Piano of Junior Mance』を聴き込む。

『Junior』は大衆受けする売れる内容。イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易い、典型的なピアノ・トリオ演奏。『The Soulful Piano of Junior Mance』は、すっきり爽やか、端正で明確な「ファンキー・ジャズ」。端正で明確なタッチ、コッテコテなファンクネスは無くて、スッキリ爽やかなグルーヴ感。さて、どちらがマンスのピアノの本質か。

Junior Mance『Big Chief!』(写真左)。1961年8月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Jimmy Rowser (b), Paul Gussman (ds)。マンスの3枚目のリーダー作。お得意のトリオ作。

アタックの強い切れ味の良いタッチ。右手は多弁。しかし、五月蠅くは無い。「饒舌」一歩手前。ほど良い「多弁さ」。流麗で端正、破綻が無い。ファンクネスは軽め、爽やかでライトなブルージー感が個性。そんなマンスのピアノが溢れんばかりの3枚目のリーダー作である。

冒頭のタイトル曲「Big Chief!」はゴスペル風のブルースだが、決して、ファンクネス&ソウルはコッテコテでは無い。ピアノとベースのコール&レンポンスも印象的だが、決して、コッテコテのファンキー・ジャズにはならない。スッキリ爽やか、軽やかで端正なファンクネス&ソウル。
 

Junior-mancebig-chief

 
多弁な展開は意外と耳に付かない。タッチが明確なんだが硬質では無い。音のエッジが少しラウンドしている様な明確なタッチ。特に速いフレーズを弾き回す時、この個性が良い方向に作用している。この多弁な展開の弾き回しの個性はマンスならでは、だと思う。

逆にミッドテンポの曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。ミッドテンポの曲は、多弁なフレーズがちょうどフィットしていて、多弁なフレーズのエッジがほど良くラウンドしているので、多弁が多弁と感じ無い。

バラード曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。バラード演奏もバラードとしては少し多弁かもしれないが、ファンクネス&ソウルが爽やかな分、耳には爽やかさが残って、多弁でもフレーズが「もたれない」。

3枚目のリーダー作『Big Chief!』を聴き込んで、マンスの初リーダー作で代表作とされる『Junior』(Verve)は、マンスの本質を抑えて、イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易いピアノ・トリオとしてまとめた異色作だったことが良く判る。『Big Chief!』にはマンスの真の個性が満載。マンスの真の個性を感じるには、まずは『Big Chief!』。
 
 

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2023年8月29日 (火曜日)

ジュニア・マンスの「良き個性」

ジュニア・マンス(Junior Mance)。1928年生まれ。2021年1月、92歳で逝去。活動期間は1959年の初リーダー作から、2015年の遺作まで、50年以上のキャリアを誇る。ファンキーでソウルフル、端正で明確なタッチのピアノが身上。ドライブ感溢れるグルーヴィーな、爽快感溢れる弾きっぷりは、僕のお気に入りのピアニストの1人でる。

『The Soulful Piano of Junior Mance』(写真左)。1960年10月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Ben Tucker (b), Bobby Thomas (ds)。リヴァーサイド・レーベルの傍系「Jazzland」からのリリース。ジュニア・マンスの2枚目のリーダー作である。

いきなり、大手ジャズ・レーベルのヴァーヴからリーダー作『Junior』をリリースしたマンス。大手レーベルのヴァーヴである。大衆受けする売れる内容のピアノ・トリオ演奏をプロデュースする。イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易い、典型的なピアノ・トリオ演奏でまとめた。ピアノ・トリオ盤としては聴き易い、モダン・ジャズらしい内容だったが、マンスのピアノの個性を前面に押し出したものでは無かった。
 

The-soulful-piano-of-junior-mance

 
2枚目のリーダー作である当盤は、名プロデューサー、オリン・キープニュースのいるリヴァーサイドからのリリース。アルバム全体の内容は明確に「ファンキー・ジャズ」。それも、すっきり爽やか、端正で明確な「ファンキー・ジャズ」。リヴァーサイドに移って良かったなあ、という内容。端正で明確なタッチ、コッテコテなファンクネスは無くて、スッキリ爽やかなグルーヴ感。これが、マンスのピアノの個性なんだろう。

汗の飛び散る様なメリハリの効いたファンキー・ジャズでは無い。どこか気怠い雰囲気を漂わせた、落ち着いた端正で明確なファンキー・ジャズ。いわゆる「ブルージー」なのだ。その「ブルージー」な感覚を、この盤のタイトルは「ソウルフル」と形容しているみたい。ハードバップな弾き回しを踏襲しているので、基本的に右手は「多弁」。それでも、五月蠅くは無い。どこか端正で落ち着いているので、多弁が耳につくことは無い。どちらかといえば「心地良い」。

実に趣味の良いファンキー・ジャズなピアノである。小気味良いスイング感も特筆すべき個性だろう。メリハリ効いた、大向こうを張ったコッテコテなファンキー・ジャズなピアノも良いが、マンスの様な、落ち着いた端正で明確なファンキー・ジャズなピアノも良い。デューク・エリントンの言う「良い音楽」について、1つの個性、1つのスタイルに絞る必要はないだろう。良いものは良い、悪いものは悪い。僕はこのマンスのピアノが好きだ。
 
 

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2023年8月20日 (日曜日)

硬派でバップなキャノンボール

エマーシー・レコード時代は「大衆受けする売れるジャズ」を余儀なくされたキャノンボール・アダレイ。ビッグバンドや弦オケをバックにした、ゴージャズな「イージーリスニング志向のジャズ」盤を幾枚かリリースする。小コンボのリーダー作も3枚ほどあるが、当時、成熟しつつあるハードバップな雰囲気では無く、どこか聴き易い柔和なトーンで滑らかな吹奏に終始している。

Cannonball Adderley『Portrait of Cannonball』(写真左)。1958年7月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Blue Mitchell (tp), Bill Evans (p), Sam Jones (b), Philly Joe Jones (ds)。キャノンボールのアルト・サックスと、ミッチェルのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

この盤から、やっとエマーシーを離れ、リヴァーサイド・レーベルに移籍したキャノンボール。水を得た魚のように、伸び伸びとエネルギッシュに、ブリリアントな響きを振り撒きながら、お得意のファンキーなアルト・サックスを吹きまくっている。フロントの相棒、ミッチェルのトランペットとの相性も良く、エマーシー時代とはちょっと違う、エネルギッシュで切れ味良く、ファンキーな吹奏を繰り広げている。
 

Cannonball-adderleyportrait-of-cannonbal

 
リズム・セクションがとても良好。当時、リヴァーサイドの専属ピアニストだったビル・エヴァンス、ソリッドで躍動感溢れる重音ベースのサム・ジョーンズ、ミスター・ハードバップ・ドラマーのフィリージョーのトリオが実にストレート・アヘッドでバップなリズム&ビートを叩き出す。とても切れ味の良い、ストイックで硬派なバップ・ビート。このリズム隊が、この盤を上質のハードバップ盤に仕立て上げている。

キャノンボールのアルト・サックスとミッチェルのトランペットは、双方の個性通り、ファンキーな吹奏なんだが、前述の様な「ストレート・アヘッドでバップなリズム&ビート」を叩き出すリズム隊に合わせて、ファンキー度合い控えめ。ストレート・アヘッドな純ジャズ志向の、切れ味良いバップな吹奏を繰り広げるキャノンボール&ミッチェルは意外と珍しい。

リヴァーサイドに移籍して、いきなり、どっぷりファンキー・ジャズなアルバムにしなかったところに、リヴァーサイドの総帥プロデューサー、オリン・キープニュースの深慮遠謀を感じる。キャノンボールは決して「コマーシャルなジャズマン」では無い、第一線級の優れたハードバッパーなのだ、と主張するように、ストイックで硬派でバップなキャノンボールがこの盤の中で躍動している。
 
 

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2023年8月19日 (土曜日)

全曲「春」にちなんだ企画盤

1958年7月録音の『Portrait of Cannonball』で、やっと、メインストリームな純ジャズをメインとする「リヴァーサイド・レーベル」に移籍したキャノンボール。このリヴァーサイドで、当時のモダン・ジャズの最前線、小コンボでの演奏を実現した。さすが希有なインプロヴァイザー、キャノンボール・アダレイ、小コンボでのソロ・パフォーマンスは素晴らしい。 

Kenny Dorham & Cannonball Adderley『Blue Spring』(写真)。1959年1月20日 (#5-6) , 2月18日 (#1-4) の2セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Cannonball Adderley (as), David Amram (French horn), Cecil Payne (bs), Cedar Walton (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds, tracks 1-4), Philly Joe Jones (ds, tracks 5-6)。

基本の編成は、ドーハムのトランペットとキャンボールのアルト・サックスのフロント2管、ウォルトンのピアノ、チェンバースのベース、そして、コブとフィリージョーの2人が別々に担当するドラムのクインテット編成。アレンジの彩りにフレンチ・ホルンやバリトン・サックスが入っている。

この盤、タイトルからも判る様に、全曲「春」にちなんだ曲ばかりを集めた企画盤。こういうコンセプトがハッキリしたセッションにドーハムは強い。迷いがなくなるのだろう。
 
Kenny-dorham-cannonball-adderleyblue-spr  
 
かつ、この盤はミドル・テンポの曲がメイン。ミドル・テンポの曲にドーハムは強い。速いテンポの曲では、時々フレーズがふらつく、拠れるの悪い癖が出るが、ミッド・テンポでは全くそんなことは無く、堂々と柔らかくてブリリアントなフレーズを吹き上げていく。

ただ、ドーハムのトランペットは、モノトーンっぽくて、すんだようなフレーズが主なので、どこかメリハリと抑揚に欠ける嫌いがあるのだが、この盤ではそんな「気になる」ところを、キャノンボールの明るくメリハリの効いた切れ味の良いアルト・サックスをフロント管のパートナーに充てることで、良い意味でクリアしている。

確かに、ドーハムのトランペットとキャノンボールのアルト・サックスとのコントラストが実に良い雰囲気を出している。リヴァーサイドの総帥プロデューサーのオリン・キープニュースの手腕が映えに映えた内容になっているのだから見事という他ない。

良い雰囲気のハードバップ盤です。バリバリと丁々発止としたバップなパフォーマンスは無いんですが、アレンジも良好、コンセプトもしっかりしていて、聴かせるハードバップな内容に仕上がっています。歌心溢れるドーハムとキャノンボール。良い内容の良いハードバップ盤だと思います。
 
 

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2023年7月16日 (日曜日)

リラックス度満点のウェス盤。

モダン・ジャズ・ギターの巨匠ウェス・モンゴメリー(1923-1968)。今年3月6日に生誕100周年を迎えたそうである。

全く意識していなかったなあ、面目ない。ウェスは1960年代以前のモダン・ジャズ・ギタリストの中で、3本の指に入るお気に入りのギタリスト。それなのに生誕100周年を忘れていたとはなあ。

確かに、ジャズ雑誌などを読んでいて、が遺した名盤のリイシューやベスト・アルバム、ムック本のリリースの宣伝が結構目についていたのだが、「最近、ウェスの再評価の機運が盛り上がっているのかなあ」と呑気に捉えていた。

Wes Montgomery『Movin' Along』(写真)。1960年10月12日の録音。リヴァーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g, bass-g), James Clay (fl, ts), Victor Feldman (p), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。

ウェス・モンゴメリーのギターとジェームス・クレイのテナー&フルートがフロントを担う。ジェームス・クレイは当時、米国ウエストコースト・ジャズで活躍していたテナー奏者。ピアノのヴィクター・フェルドマンも西海岸で活躍していたピアニスト。2人の西海岸ジャズの名手を招いたクインテット編成になっている。

『The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery』と『Full House』ばかりが、もてはやされるウェスのリヴァーサイド盤だが、この盤、こってこてモダン・ジャズの雰囲気濃厚な内容で、聴き心地がとても良いギター・クインテット盤。ジャケも単純なデザインなので、かなりの長きに渡って触手が伸びなかったのだが、10年ほど前、ウェスのリーダー作の一気聴きの折、この盤を初めて聴いて「おおっ」と思って、以来、愛聴盤の1枚になっている。
 

Wes-montgomerymovin-along_20230716213801  

 
ウェスはバリバリ弾きまくるのでは無く、しっかり抑制の効いた、とても余裕あるパフォーマンスを披露しており、とてもリラックスして聴くことが出来る。メンバー全体が適度にリラックスして演奏している様子が伝わってくる。恐らく、このアルバムを録音する前に、メンバー全員で意思統一したとみえる。

この抑制の効いた、余裕溢れる弾きっぷりのウェスのギターが凄く良い。排気量の大きいスポーツカーが、速度を落として余裕をかましてゆったりと走っているかのような、余裕はあるが、力強くしっかりと凄みのある弾きっぷりには、思わず「ええなあ」と思いつつ耳を奪われる。こういうウェスのギター、好きやなあ。

フェルドマンのピアノが「粋」。この人のピアノが実に良いバッキングをしていて、この盤の余裕ある演奏の雰囲気は、フェルドマンのピアノの存在に寄るところが大きい様な気がする。そんな「粋」なバッキング。さすが、ウエストコースト・ジャズの人気ピアニストである。流麗でリリカルで「聴かせる」ピアノがニクい。

クレイはテナーとフルートを担当しているが、この盤ではフルートが主体の吹奏。恐らく、ウェスのギターの音色の太さを考慮しての選択だと思われる。

テナーの場合、ギターと交互に演奏しあう場合は、その音の対比が良い方向に作用するが、ユニゾン&ハーモニーになるとテナーの音が買ってしまう。その点、フルートは、ギターと交互に演奏しあうにも、ユニゾン&ハーモニーを取るにせよ、ギターの音色とのバランスが格段に良い。

そして、リズム隊のベースのサム・ジョーンズが良い音を出している。ルイス・ヘイズのドラムも堅実。端正で歯切れのいいスイング感を生み出すベースとドラムはこの盤のリズム&ビートをより豊かなものにしている。
 
 

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2023年5月31日 (水曜日)

ハードバップな雰囲気を楽しむ

何故か、梅雨の季節になると、ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)のトランペットが聴きたくなる。中音域を多用しながら、芯がしっかりしているが、まろやかな歌心ある「哀愁のトランペット」が良い。時々、テクニック的に「ヨレる」ところがあるが、それも個性でご愛嬌。張りのあるブリリアントな「哀愁のトランペット」は、この梅雨の季節に合う。

Kenny Dorham『2 Horns / 2 Rhythm』(写真左)。1957年11月13日と1957年12月2日の録音。リバーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp, p), Ernie Henry (as), Eddie Mathias (b), G.T. Hogan (ds)。12月2日の録音では、ベースが、Wilbur Ware (b) に代わっている。

基本は、リーダーのドーハムのトランペットとヘンリーのアルト・サックスが2管フロントの「ピアノレス」カルテット。3曲目の「Soon」にだけ、なんと、ドーハムがピアノを弾いている。12月2日のセッションでは、ベースがウエアに交代して、4曲目の「Is It True What They Say About Dixie?」と8曲目の「Jazz-Classic」を演奏、その他の曲は11月13日の録音。

ピアノレスの2管フロント・カルテットという変則な編成だが、演奏全体の纏まりは良い。アレンジが効いているのか、ファンキー・ジャズ志向の根明なハードバップが展開されていて、意外と聴き応えがある。
 

Kenny-dorham-quartet-two-horns-two-rhyth

 
但し、ベースが弱く、12月2日のセッションでは、ウエアに交代して、何とか体裁を整えている。が、ドーハムのトランペットとヘンリーのアルト・サックスが良く鳴っていて、リズム隊の弱さをしっかりカヴァーしている。特に、この録音が最後になる、ヘンリーのアルト・サックスがなかなか健闘している。

ドーハムのトランペットは好調で、この盤では意外と「根明」なバップ・トランペットを吹き回している。冒頭の「Lotus Blossom」は、後の『Quiet Kenny』の「哀愁感溢れる名演」で有名になるドーハム作の名曲だが、この盤では、哀愁感はなく、根明でブリリアントな吹き回し。とても健康的に明るい「Lotus Blossom」で、ちょっと面食らうが、演奏的には、しっかりハードバップしていて、充実している。

2曲目の「Sposin」は、他のジャズマンの演奏よりも、はるかに明るい雰囲気で演奏されていて、この盤のドーハムは「哀愁のトランペッター」というよりは「根明でブリリアントなトランペッター」として、速いフレーズも、テクニックよろしく、バリバリ吹き回している。

但し、3曲目「Soon」でのドーハムのピアノはたどたどしくて、宜しくない。無理にピアノを弾かなくても良かったのに、とも思うし、プロデューサーのオリン・キープニュースにしても、この演奏をアルバムに収録しなくても良かったのに、とも思う(笑)。

この盤については、ドーハムの代表作としては、ちょっと内容的に弱いが、ドーハムのトランペットとヘンリーのアルト・サックスの2管フロントが好調で、ファンキー・ジャズ志向のハードバップ盤として、意外と楽しめる「変則カルテット」の演奏になっている。この盤に溢れるハードバップな雰囲気は聴いていて、単純に楽しい。
 
 

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