2020年1月21日 (火曜日)

意味深なジャコとメセニーの共演

このアルバムは、パット・メセニーのディスコグラフィーを紐解くと必ず最初に出てくるのだ。メセニーのリーダー作でも無いのに、何故か必ず出てくるが、メセニーのリーダー作では無いので、ずっとうっちゃっておいた。しかし、やはり気になる。今回、メセニーのアルバムを聴き直す中で、やっとこの盤を聴くことが出来た。

Jaco Pastorius, Pat Metheny, Bruce Ditmas, Paul Bley『Jaco』(写真)。1974年の録音。メセニーもジャコもまだ単独でリーダー作を出していない頃。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (el-p), Jaco Pastorius (b), Bruce Ditmas (ds), Pat Metheny (el-g)。並列名義のアルバムだが、目立った順に並べると以上の様になる。ジャズ・ピアノの鬼才、ポール・ブレイがアコピではなく、全編エレピを弾いている。

このブレイのエレピが「エグい」。自由度の高い、切れ味の良い、メロディアスなエレピ。フリーキーなフレーズも見え隠れしつつ、モーダルでちょっと前衛に傾いた、テンションの高いエレピ。このブレイのエレピが、アルバム全編に渡ってグイグイ迫ってくる。このブレイのエレピを聴いていると、このアルバムの主導権はブレイが握っていたと思われる。
 
 
Jaco  
 
 
さて、気になるメセニーと言えば、ちょっと目立たない。しかし、メセニーのギターの音が出てくると、まだ単独でリーダー作を出していないのに、既に音の個性は完全に確立されているのにビックリする。逆に、メセニーのギターの個性は、ブレイのエレピとは相性が良くないことが聴いて取れる。水と油の様で上手く融合しない。この盤では、メセニーはブレイが前面に出て弾きまくっている時、そのフレーズに絡むことはほとんど無い。

逆に、ジャコのベースはブレイのエレピに適応する。ジャコについても、まだ単独でリーダー作を出していないのに、既に音の個性は完全に確立されているのにビックリする。フリーキーなフレーズにも、モーダルなフレーズにも、前衛に傾いたテンションの高いフレーズにも、クイックに対応する。それどころか、ブレイの自由度の高い弾き回しに、絡むようにエレベのラインを弾き回す。ブレイのエレピとの相性は良い。

しかし、ブレイのエレピは従来のブレイのアコピの延長線上にあるが、ジャコのベースとメセニーのギターはそれまでに無い新しい「何か」である。それまでのジャズには無いフレーズと弾き回し。アドリブ・フレーズに対する取り回しが「新しい」。つまり、ジャコやメセニーにとって、ブレイのエレピでは「変革」は起きない、ということ。後に、ジャコ、メセニー共に、それぞれの新しい個性を増幅させてくれるキーボード奏者と出会って、大ブレイクしていくのだ。
 
 
 
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2018年7月30日 (月曜日)

ブロンバーグの「ジャコ称賛」盤

ベーシストがリーダーのアルバムは面白い。ベーシストがリーダーのアルバムには、テクニックを重視した、その特徴的な演奏テクニックを全面に押し出した内容のものも多くある。テクニックの多彩さを追求するものもあれば、ベースの楽器自体のバリエーション(ピッコロ・ベースやチェロなどの活用)を追求したものもあって、聴いてみるとなかなかに面白い。

Brian Bromberg『Portrait of Jaco』(写真左)。2002年のリリース。当時のファーストコール・ベーシストの一人、ブライアン・ブロンバーグの「ジャコ・パストリアス名演作品集」。ジャコはエレベのイノベーターであり、早逝のレジェンドである。そんなジャコの作品をメインに、ブロンバーグがベースを弾き倒したアルバムである。

これだけ徹底的にジャコの作品を弾き倒したトリビュート盤はあまりない。ブロンバーグの優れたところは、ジャコの作品をジャコ風にベースを弾くのでは無く、自分流に置き換えて、ジャコのそれぞれの作品を弾き倒している。この自分流に置き換えて、というところがミソ。ジャコの作品を取り上げることで、ジャコをトリビュートしつつ、自分流のベースを弾くことで、ちゃっかり、ブロンバーグのベースを全面に押しだして、アピールしている。
 

Portrait_of_jaco_1  

 
ブライアンは様々なタイプのベースを駆使している。ピッコロ・ベースをはじめ各種ベースを採用して、それぞれのタイプのベースの可能性を改めて引き出している。テクニックは申し分無い。ジャコはエレベのイノベーターであったが、ここでのブロンバーグはアコベも弾いているところが面白い。アコベならではの響きや音が、ジャコのエレベとは違ったニュアンスに聴こえて、とっても興味深い。

バックを支えるミュージシャンも、Bob Mintzer (sax)、Alex Acuna (per)、Jeff Lorber(el-p) などの名手もゲスト参加していて、コンテンポラリーな純ジャズな、端正で締まった内容の演奏が繰り広げられている。グループ・サウンドとしても質が高く、聴き応えがある。単なるベーシストのテクニックのショーケース的な盤に留まっていないところが、好感度ポイントである。

このアルバム、「低音シリーズ」の一枚らしく、ベースについては、しっかりとした質の良いの良い重低音で録音されている。ベースを弾き倒しているアルバムなので、これだけしっかりとベースの音が録音されていると、ベースの音色、テクニック双方を十分に堪能できる。ジャズ・ベースの音に魅力を感じるジャズ者の方々にお勧めの好盤。

 
 

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2018年6月 8日 (金曜日)

見事な技、見事な表現力である

パット・メセニーがサイドマンのアルバムを聴いている。パットは伴奏上手。パットのギターは自らがリーダーのアルバムとサイドマンで参加したアルバムとで、雰囲気がガラッと変わる。特にサイドマンの時は、参加したそのセッションのリーダーの楽器を惹き立てるように、また、同じ雰囲気でユニゾン&ハーモニーをかまし、アドリブ・フレーズを紡ぎ上げる。

その好例がこのアルバム。Joni Mitchell『Shadows And Light』(写真)。1979年9月、カルフォルニアはSanta Barbara Bowlでのライブ録音。ジョニ・ミッチェルは米国の女性シンガーソングライターの草分けで、その浮遊感と神秘性のある歌詞と曲が彼女の最大の個性。その音楽性は複雑で高難度。通常のロック畑のスタジオ・ミュージシャンではちょっと不足な面が出てしまう。

そこで、ジョニは思い切って、ジャズ畑の一流ミュージシャンを招聘することを思い立つ。1970年代、1972年リリースの『For the Roses』から、クロスオーバー・ジャズ畑から、ジャズメンを採用し始める。そして、1979年の『Mingus』では、参加ミュージシャンは全てがジャズ畑からの招聘となった。確かに、彼女の複雑で高難度な音楽性を的確に表現出来るのは、ジャズ端のミュージシャンをおいて他に無い、と思う。
 

Shadows_light

 
さて、このジョニのライブ盤『Shadows And Light』の、バックバンドのパーソネルは、Pat Metheny (g), Jaco Pastorius (b), Don Alias (ds, perc), Lyle Mays (el-p, syn), Michael Brecker (sax)。いやはや、錚々たるメンバーでは無いか。録音当時、ジャズ界では、これらのメンバーは、人気&実力、共に既に超一流。そんなメンバーがバックを務めるのだ。悪かろう筈が無い。

そんなサイドメンの中で、特筆すべきは、ギターのパットとエレベのジャコ。この2人のテクニックと表現力は群を抜いている。ジョニの複雑で高難度な音楽性を、高度なテクニックと表現力で、的確に表現していく。特に彼女の楽曲が持つ浮遊感と神秘性をパットはギターシンセで、ジャコはフラットレスのエレベで表現していく。これがこのライブ盤での最大の聴きもの。ジョニの楽曲を惹き立て、ジョニのボーカルを浮き立たせるバッキング。

パットもジャコも自分たちの音を出すより、ジョニの楽曲にあった、ジョニの楽曲が表現する音世界を具現化するような音を選び、フレーズを紡ぎ上げる。見事な技であり、見事な表現力である。さぞかし、フロント・ボーカルを張ったジョニは唄いやすかっただろう。このライブ盤でのパットとジャコのバッキングは何度聴いても飽きないし、聴く度に感動する。

 
 
 

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