2020年12月11日 (金曜日)

Jaco Pastorius『In New York』

最近、Weather Reportのアルバムを聴き直しているんだが、やはり『Black Market』から『Weather Report(1981)』までのアルバムが一番充実している。とりわけ、リズム・セクションの固定化が実現した『8:30』から『Weather Report(1981)』の3枚は、今のジャズと照らし合わせても「無敵」。群を抜いた内容の素晴らしさである。

特に、エレベの革新者、ジャコ・パストリアスの出現は度肝を抜かれた。『Heavy Wrather』の「Teen Town」でのエレベ・ソロは凄かった。僕は最初、ザヴィヌルがシンセでベース・ラインを弾いているんだと思った。せっかくベース奏者がいるのに無体なことするなあ、とザヴィヌルを疑った。が、これがジャコのエレベ・ソロだと知った時、唖然とした。

そして、彼の弾くベース・ラインについても明らかに革新的。ベース弦を弾くテクニックがずば抜けているが故に実現出来る、明らかに今までに無い、高速なベース・ライン。ベース・ラインにおける「シーツ・オブ・サウンド」。エレベがギターと共に、旋律楽器としてフロントを張ることだって出来る様になった。これは明らかにジャコのお陰である。
 
 
In-new-york-jaco-pastorius  
 
 
Jaco Pastorius『In New York』(写真左)。1985年11月、NYでのギグのライヴ録音。CD2枚組。ちなみにパーソネルは、Jaco Pastorius (el-b, vo), Hiram Bullock (el-g), Michael Gerber (ac-p), Alex Foster, Butch Thomas (sax), Delmar Brown (syn, vo), Kenwood Dennard (ds), Jerry Gonzalez (tp, congas)。

ジャコのブートレグ盤。音はまずまずで最後まで聴ける。演奏内容については、曲によっては「トホホ」なものもあるが、押し並べてまずまずの出来。ジャコのエレベについては、しっかりと楽しめる。「俺のベースについてこい」と言わんばかりに、強引に突っ走るような高速ベースライン。他のメンバーに合わせる気なぞ、さらさら無い。しかし、創造性溢れる「これしかない」的なベース・ライン。このライヴ盤、ジャコのエレベを愛でるには十分の内容になっている。

ハイラム・ブロックのエレギも凄い。以前、マイルスがエレ・ジャズをやる際に、ギタリストに耳打ちした指示が「ジミ・ヘンドリックスの様に弾け」。このライヴ盤でのハイラム・ブロックは、1970年代前半のマイルスが聴いたら喜ぶであろう、
本当にジミヘンの様に弾いている。部分的には「トホホ」な演奏もあるが、押し並べて、この盤のハイラム・ブロックのエレギは充実している。

ジャコのエレベとハイラムのエレギが突出している。ギクなので荒いところもあるが、生々しくて、意外と聴き応えのあるライブ盤である。
 
 
 

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2020年1月21日 (火曜日)

意味深なジャコとメセニーの共演

このアルバムは、パット・メセニーのディスコグラフィーを紐解くと必ず最初に出てくるのだ。メセニーのリーダー作でも無いのに、何故か必ず出てくるが、メセニーのリーダー作では無いので、ずっとうっちゃっておいた。しかし、やはり気になる。今回、メセニーのアルバムを聴き直す中で、やっとこの盤を聴くことが出来た。

Jaco Pastorius, Pat Metheny, Bruce Ditmas, Paul Bley『Jaco』(写真)。1974年の録音。メセニーもジャコもまだ単独でリーダー作を出していない頃。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (el-p), Jaco Pastorius (b), Bruce Ditmas (ds), Pat Metheny (el-g)。並列名義のアルバムだが、目立った順に並べると以上の様になる。ジャズ・ピアノの鬼才、ポール・ブレイがアコピではなく、全編エレピを弾いている。

このブレイのエレピが「エグい」。自由度の高い、切れ味の良い、メロディアスなエレピ。フリーキーなフレーズも見え隠れしつつ、モーダルでちょっと前衛に傾いた、テンションの高いエレピ。このブレイのエレピが、アルバム全編に渡ってグイグイ迫ってくる。このブレイのエレピを聴いていると、このアルバムの主導権はブレイが握っていたと思われる。
 
 
Jaco  
 
 
さて、気になるメセニーと言えば、ちょっと目立たない。しかし、メセニーのギターの音が出てくると、まだ単独でリーダー作を出していないのに、既に音の個性は完全に確立されているのにビックリする。逆に、メセニーのギターの個性は、ブレイのエレピとは相性が良くないことが聴いて取れる。水と油の様で上手く融合しない。この盤では、メセニーはブレイが前面に出て弾きまくっている時、そのフレーズに絡むことはほとんど無い。

逆に、ジャコのベースはブレイのエレピに適応する。ジャコについても、まだ単独でリーダー作を出していないのに、既に音の個性は完全に確立されているのにビックリする。フリーキーなフレーズにも、モーダルなフレーズにも、前衛に傾いたテンションの高いフレーズにも、クイックに対応する。それどころか、ブレイの自由度の高い弾き回しに、絡むようにエレベのラインを弾き回す。ブレイのエレピとの相性は良い。

しかし、ブレイのエレピは従来のブレイのアコピの延長線上にあるが、ジャコのベースとメセニーのギターはそれまでに無い新しい「何か」である。それまでのジャズには無いフレーズと弾き回し。アドリブ・フレーズに対する取り回しが「新しい」。つまり、ジャコやメセニーにとって、ブレイのエレピでは「変革」は起きない、ということ。後に、ジャコ、メセニー共に、それぞれの新しい個性を増幅させてくれるキーボード奏者と出会って、大ブレイクしていくのだ。
 
 
 
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2018年7月30日 (月曜日)

ブロンバーグの「ジャコ称賛」盤

ベーシストがリーダーのアルバムは面白い。ベーシストがリーダーのアルバムには、テクニックを重視した、その特徴的な演奏テクニックを全面に押し出した内容のものも多くある。テクニックの多彩さを追求するものもあれば、ベースの楽器自体のバリエーション(ピッコロ・ベースやチェロなどの活用)を追求したものもあって、聴いてみるとなかなかに面白い。

Brian Bromberg『Portrait of Jaco』(写真左)。2002年のリリース。当時のファーストコール・ベーシストの一人、ブライアン・ブロンバーグの「ジャコ・パストリアス名演作品集」。ジャコはエレベのイノベーターであり、早逝のレジェンドである。そんなジャコの作品をメインに、ブロンバーグがベースを弾き倒したアルバムである。

これだけ徹底的にジャコの作品を弾き倒したトリビュート盤はあまりない。ブロンバーグの優れたところは、ジャコの作品をジャコ風にベースを弾くのでは無く、自分流に置き換えて、ジャコのそれぞれの作品を弾き倒している。この自分流に置き換えて、というところがミソ。ジャコの作品を取り上げることで、ジャコをトリビュートしつつ、自分流のベースを弾くことで、ちゃっかり、ブロンバーグのベースを全面に押しだして、アピールしている。
 

Portrait_of_jaco_1  

 
ブライアンは様々なタイプのベースを駆使している。ピッコロ・ベースをはじめ各種ベースを採用して、それぞれのタイプのベースの可能性を改めて引き出している。テクニックは申し分無い。ジャコはエレベのイノベーターであったが、ここでのブロンバーグはアコベも弾いているところが面白い。アコベならではの響きや音が、ジャコのエレベとは違ったニュアンスに聴こえて、とっても興味深い。

バックを支えるミュージシャンも、Bob Mintzer (sax)、Alex Acuna (per)、Jeff Lorber(el-p) などの名手もゲスト参加していて、コンテンポラリーな純ジャズな、端正で締まった内容の演奏が繰り広げられている。グループ・サウンドとしても質が高く、聴き応えがある。単なるベーシストのテクニックのショーケース的な盤に留まっていないところが、好感度ポイントである。

このアルバム、「低音シリーズ」の一枚らしく、ベースについては、しっかりとした質の良いの良い重低音で録音されている。ベースを弾き倒しているアルバムなので、これだけしっかりとベースの音が録音されていると、ベースの音色、テクニック双方を十分に堪能できる。ジャズ・ベースの音に魅力を感じるジャズ者の方々にお勧めの好盤。

 
 

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2018年6月 8日 (金曜日)

見事な技、見事な表現力である

パット・メセニーがサイドマンのアルバムを聴いている。パットは伴奏上手。パットのギターは自らがリーダーのアルバムとサイドマンで参加したアルバムとで、雰囲気がガラッと変わる。特にサイドマンの時は、参加したそのセッションのリーダーの楽器を惹き立てるように、また、同じ雰囲気でユニゾン&ハーモニーをかまし、アドリブ・フレーズを紡ぎ上げる。

その好例がこのアルバム。Joni Mitchell『Shadows And Light』(写真)。1979年9月、カルフォルニアはSanta Barbara Bowlでのライブ録音。ジョニ・ミッチェルは米国の女性シンガーソングライターの草分けで、その浮遊感と神秘性のある歌詞と曲が彼女の最大の個性。その音楽性は複雑で高難度。通常のロック畑のスタジオ・ミュージシャンではちょっと不足な面が出てしまう。

そこで、ジョニは思い切って、ジャズ畑の一流ミュージシャンを招聘することを思い立つ。1970年代、1972年リリースの『For the Roses』から、クロスオーバー・ジャズ畑から、ジャズメンを採用し始める。そして、1979年の『Mingus』では、参加ミュージシャンは全てがジャズ畑からの招聘となった。確かに、彼女の複雑で高難度な音楽性を的確に表現出来るのは、ジャズ端のミュージシャンをおいて他に無い、と思う。
 

Shadows_light

 
さて、このジョニのライブ盤『Shadows And Light』の、バックバンドのパーソネルは、Pat Metheny (g), Jaco Pastorius (b), Don Alias (ds, perc), Lyle Mays (el-p, syn), Michael Brecker (sax)。いやはや、錚々たるメンバーでは無いか。録音当時、ジャズ界では、これらのメンバーは、人気&実力、共に既に超一流。そんなメンバーがバックを務めるのだ。悪かろう筈が無い。

そんなサイドメンの中で、特筆すべきは、ギターのパットとエレベのジャコ。この2人のテクニックと表現力は群を抜いている。ジョニの複雑で高難度な音楽性を、高度なテクニックと表現力で、的確に表現していく。特に彼女の楽曲が持つ浮遊感と神秘性をパットはギターシンセで、ジャコはフラットレスのエレベで表現していく。これがこのライブ盤での最大の聴きもの。ジョニの楽曲を惹き立て、ジョニのボーカルを浮き立たせるバッキング。

パットもジャコも自分たちの音を出すより、ジョニの楽曲にあった、ジョニの楽曲が表現する音世界を具現化するような音を選び、フレーズを紡ぎ上げる。見事な技であり、見事な表現力である。さぞかし、フロント・ボーカルを張ったジョニは唄いやすかっただろう。このライブ盤でのパットとジャコのバッキングは何度聴いても飽きないし、聴く度に感動する。

 
 
 

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2009年7月27日 (月曜日)

ジャコの最後のスタジオ録音

昨日のブログで『ジャコ・パストリアスの肖像』の話をした。デビュー・リーダー作であった『ジャコ・パストリアスの肖像』。ジャコは、あと一枚しか、正式なスタジオ録音を残していない。その「あと一枚」のスタジオ録音を、最後のリーダー作について語りたい。

その盤は Jaco Pastorius『Word of Mouth』(写真左)。ウエザー・リポート在籍中の1980年に録音したアルバム。自身のバンド「ワード・オブ・マウス」によるものである。これが、である。「唯一無二」とはこのこと。凄まじい内容であり、凄まじい出来である。

冒頭の「Crisis」で、激しく戸惑う。ジャコのベースをテープで循環処理して、そこにテナーなどのフリー・インプロビゼーションが被さっていくのだが、この、心揺さぶられる「不安感」「動揺」はなんだ。これが、5分21秒も続く。暗くて「きつい」テンション。以降の演奏が不安になる。聴くのを止めようとも思う。

で、2曲目「3 Views of a Secret」が滑るように出てくる。優しいブラスの響き、そして、癒されるようなハーモニカの旋律。優しく美しい調べ。冒頭の「Crisis」が、暗くて「きつい」テンションだっただけに、この「3 Views of a Secret」で、心が解き放たれる様な、凄い開放感を感じる。美しく、素晴らしい演奏である。美しく、素晴らしい曲である。

そして、ビッグバンド・ジャズの楽しさを堪能できる、3曲目の「Liberty City」。吟味されたブラスの響き。キャッチーなベース・ライン。ノリノリのリズム・セクション。楽しい。とにかく楽しい。体がリズムに合わせて動く。心がポジティブになる。
 

Word_of_mouth

 
バッハの無伴奏チェロ組曲をモチーフにした4曲目「Chromatic Fantasy」のジャコのベース・ソロには唖然とする。超絶技巧とはこのこと。そして、演奏半ばで出てくる、チャイニーズな、日本の雅楽のような、韓国のサムヌノリのような、東アジア的な響き。ジャコのコンポーサー&アレンジャーの才能には驚くばかり。

ビートルズ・ナンバーの5曲目「Blackbird」。ジャコの唯一無二、決して誰も真似の出来ないアレンジが凄い。ジミヘンばりに、ファズをかけた、ドライブ感溢れるエレクトリック・ベースが凄まじい、6曲目の「Word of Mouth」。このビートの効いたハードさには舌を巻く。

そして、ラストの「John and Mary」。ジャコの子供達の名前を冠した名曲・名演。ピアノの静謐な響きから、明るいパーカッションのリズムに乗って、スティール・パンが旋律を奏でていく。エスニックな雰囲気が楽しい、ゆったりとしたグルーヴ。印象的なウエイン・ショーターのソプラノ・サックス。クラシカルなストリングス&木管の響きをいかした後半の展開。様々な音楽の要素を飲み込みながら、優しく明るく広がりのある、ポジティブな演奏が展開されていく。ジャズの奥深さを感じる。

ジャコの才能がぎっしり詰まった、凄い内容のアルバムだと思います。1980年にリリースされたと同時に手に入れて、一通り聴き終えた後、その凄まじい内容に感動して、暫く動けませんでした。今でもこのアルバムを聴くと、なにかしらの感動を覚えます。ジャコの最高傑作であり、最後のリーダー作でした。

その後、ジャコの生活は荒れはじめ、ドラッグに溺れたり躁鬱病に悩まされ、1987年9月21日 午後9時25分、喧嘩による負傷が原因でフロリダで死去。享年35歳。ジャコは「もういない」。逝去して、既に20年以上が経過した。でも、この『Word of Mouth』は、ジャコの音楽家としての存在を「絶対」にしている。
 
 
 
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2009年7月26日 (日曜日)

これぞ「天才ジャコの成せる技」

暑い。暑すぎる。風が強くて、朝から快晴。ジリジリと焦げつくような、射すような日差し。これは体に悪い。今日は外出できる状況ではない、我が千葉県北西部地方。無理すると絶対に熱中症になること請け合いの「厳しい暑さと日差し」。

午前中早々に、1週間の食料の買い出しに出て、帰ってきてからは、エアコンのかかった部屋で、じっとしている。決して、外に出てはいけない(笑)。ということで、今、久しぶりにジャコ・パストリアスのファースト・リーダーアルバム『Jaco Pastorius(邦題:ジャコ・パストリアスの肖像)』(写真左)を聴いている。

しかし、このアルバムを聴く度に、毎度毎度思うんだが、これぞ「天才の成せる技」なんだろう。にわかには信じがたいエレクトリック・ベースの演奏が、全編に渡って展開される。とにかく、これだけ凄まじいベース演奏は、ジャズの歴史を振り返っても皆無である。チャールズ・ミンガスも真っ青。

冒頭の「Donna Lee」、5曲目の「Portrait of Tracy」のベース・ソロを聴けば、その凄さが判る。初めて聴いた時、まさか、この「Donna Lee」が、フラット・ベースのソロとは思わず、「ジャコって、シンセサイザーを使って、速いフレーズのベース・ラインを弾くのか」と勘違いしたのを覚えている。

雑誌で、この「Donna Lee」は、ジャコが実際に、フラット・ベースを弾いているのだ、と書いてあるのを読んでも、まだその事実がにわかに信じられず、ある循環フレーズをフラット・ベースで弾いて、それの録音したテープを循環再生したもの、所謂、テープ処理を施したものだと思った(笑)。それほど、この「Donna Lee」のベース演奏は衝撃的だった。逆に、5曲目の「Portrait of Tracy」は、フラット・ベースでの演奏っていうことが明確な演奏で、この「Portrait of Tracy」を聴いた瞬間に、ジャコ・パストリアスって凄いぞ、思った(単に「凄いぞ」って感じではないですぞ・笑)。
 

Jaco_first

 
こんなベース演奏を聴いたことが無い。ジャズ初心者の時は、凄いベースやなあ、と感心するばかりだったが、今、振り返って、このアルバムのジャコの演奏を聴いてみると、ジャズの歴史の中で「唯一無二」、彼に比肩するジャズ・ベーシストは未だに現れ出でず、ということを実感する。

ジャコは、コンポーザー&アレンジャーとしての才能も素晴らしく、3曲目の「Continuum」など、ロング・トーンのフラット・ベースの旋律が、実に美しく幽玄で、その幽玄なジャコのベースに絡む、ハービー・ハンコックのキーボードが、シンプルながら美しいバッキングを聴かせてくれる。

4曲目の「Kuru/Speak Like a Child」、8曲目の「(Used to Be A) Cha Cha」などは、当時、最先端の純ジャズ、実に硬派な「メインストリーム・ジャズ」が展開される。とにかく、ベースのジャコは凄い。弾きまくりである。そして、バックのハービーのキーボードも秀逸。「バッキングのハービー」の面目躍如。両者を中心に、火の出る様な熱い演奏を聴かせてくれる。

6曲目の「Opus Pocus」でのスチール・パンのフューチャーは、後のジャコの最高傑作『ワード・オブ・マウス』での、ジャコ・パストリアス・ビッグバンドの特徴ある演奏を彷彿とさせる。7曲目「Okonkole y Trompa」は、出だしのベースの単純リズムの連続フレーズが、実にアフリカンなビートを供給し、そのフロントで、印象的で、アーシーなソロを供給する、Peter Gordon のフレンチ・ホルン。牧歌的な雰囲気が実に魅力的である。

こうやって、全編、聴き終えてみると、邦題の『ジャコ・パストリアスの肖像』とは、言い得て妙。ジャコの音楽家としての全ての要素が、ショーケース的に配置された演奏の数々。ジャコの天才的な才能を体験できる、ジャコの「名刺代わりの」ファースト・リーダーアルバムである。しかし、このアルバムを「名刺代わり」と言われると、その内容の濃さと内容の凄さに、ちょっと唖然、愕然とする(笑)。
 
 
 
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