2023年3月 1日 (水曜日)

ワシントンJr.の初リーダー作です

Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア)。このサックス奏者は、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの代名詞『Winelight』が大ヒットしたが故、かなり誤解されているなあ、と感じることが多い。彼のリーダー作の全てを聴き直してみると、やっぱり、彼の評価に偏りがあるなあ、と感じることが多い。

グローヴァー・ワシントン・ジュニアと言うと、ベテランのジャズ者の方々は「ああ、あのソフト&メロウなサックス奏者ね」と冷ややかに反応することが多い。でも、ですね。このサックス奏者、意外と硬派で正統派なサックスを吹くんですよ。『Winelight』は、彼のサックスのテクニックと表現力が高い証明で、あの究極のソフト&メロウなブロウは、彼の表現パターンのひとつに過ぎないのだ。

Grover Washington, Jr.『Inner City Blues』(写真)。1971年9月の録音。 Kudu Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr.(sax), Bob James (el-p, arr, cond), Richard Tee (org), Eric Gale (g), Ron Carter (b), Idris Muhammad (ds), Airto Moreira (perc), Donald Ashworth (bs), Wayne Andre (tb), Thad Jones (tp, French horn), Eugene Young (tp, flh)。プロデューサーは、フュージョンの仕掛け人の1人、クリード・テイラー。

ということで、グローヴァー・ワシントン・ジュニア(以降、ワシントンJr.と略)の初リーダー作を聴いてみる。ジャズマンにおいて、初リーダー作は、そのジャズマンの個性と特徴をしっかり反映しているので、そのジャズマンの素姓を知るには、まず初リーダー作を聴くに限る。
 

Grover-washington-jrinner-city-blues

 
このワシントンJr.の初リーダー作、パーソネルを見渡すと、当時のフュージョン・ジャズの担い手ジャズメンがズラリと顔を揃えている。アレンジはボブ・ジェームス。プロデューサーはクリード・テイラー。1971年の作品だが、後のフュージョン・ジャズを見据えた、コンテンポラリーでクロスオーバーなエレ・ジャズに仕上がっていて、ちょっとビックリする。これ、硬派なフュージョン・ジャズそのもの、と言っても良い位の「内容充実」な盤である。

バックのボブ・ジェームス節をしっかり踏まえた、お洒落でクールで躍動感溢れるアレンジに乗って、硬派で正統派なワシントンJr.のサックスのエモーショナルで力強くて流麗なサックスが乱舞する。明らかにフュージョン志向のアレンジなんだが、ワシントンJr.のサックスは意外とブリリアントで重心が低くてファンキー。説得力があり、訴求力のあるサックスで、ソフト&メロウな軟弱さなんて、どこにも無い。

ワシントンJr.は唄う様にサックスを吹き上げる。力感溢れエモーショナルでハードボイルドな吹きっぷりから、ソフト&メロウに囁くように吹く繊細な吹きっぷりまで、その表現力は高度で多彩。それは決してテクニカルで無く、しっかりと情感がこもっている。後のフュージョン・ジャズのサックスの雰囲気を先取りしたかの様な、このワシントンJr.の表現力豊かなサックスは、当時としてはかなり先進的だったのでは無いか。

このワシントンJr.の初リーダー作は、ワシントンJr.のサックスマンとして、とても優れた資質と個性を持っていることが良く判る。我が国では、何故か「ソフト&メロウなフュージョン・サックス野郎」の位置づけで留まっているが、もっとワシントンJr.のサックスの本質を再評価して欲しいなあ、とこの初リーダー作を久し振りに聴いて、再び思った次第。お気に入りのフュージョン好盤です。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2022年11月29日 (火曜日)

エレ・チックの未発表ライブ音源

チックが亡くなって、1年と10ヶ月が過ぎようとしている。チックが亡くなったのって、遠い昔みたいに感じるのだが、チックが亡くなって、まだ2年経っていないんやね。と思っていたら、最近、サブスクサイトに、チックの未発表音源がちょくちょくリリースされているのに気がついた。なんで生前に正式盤としてリリースしなかったのか、と思う、内容の充実した音源ばかりで、さすがはチック、演奏の出来にバラツキが無かったんやなあ、と改めて感心している。

Chick Corea『Live Under The Sky ’79』(写真左)。1979年7月27日、田園コロシアムでのライヴ録音。オフィシャル級のステレオ・サウンドボード録音にて収録らしい。確かに音はまずまず良い。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (key), Tony Williams (ds), Al Di Meola (g), Bunny Brunel (b)。「Live Under The Sky 1979」に向けて、特別に組成したカルテット編成。

チックのアグレッシヴでプログレッシヴなシンセの弾きまくりに、ディメオラが調節技巧エレギで応戦。チックとディメオラのバトルを、これまたアグレッシヴでポリリズミックで叩きまくりのトニーのドラムが煽りに煽る。これだけでも凄い迫力なのだが、ここに、バニー・ブルネルの重量級エレベが参戦、さらにその「ど迫力」に拍車をかけている。
 

Chick-corealive-under-the-sky-79

 
冒頭の「Night Street」、チックのソロ盤『My Spanish Heart』からの選曲なのだが、ディメオラ、トニー、ブルネルが演奏し慣れているが如く、疾走感溢れる弾きまくりである。チックとディメオラのフロントで、ど迫力のユニゾン&ハーモニー。どんだけ音が分厚いのか。そこに、マシンガンの如く、トニーのドラムが「ドドドドド」と迫り来る。そして、ブルネルのエレベがブンブン鳴り響く。

収録曲も魅力的。チックのファンであれば、タイトルだけ見ても「痺れる」曲がズラリと並ぶ。「All Blues」から「Senor Mouse」〜「Spain」には聴き惚れるばかり。そして、ディメオラのソロから、チックが参戦してデュオになり、トニーのドラムとブルネルのベースが入って来たな、と思ったら「Isfahan」に突入する。どの曲の演奏も素晴らしい「ど迫力」。生で聴きたかったなあ。ラストのチックのソロも絶品。チック者には堪らない。

ブートとして一部のマニアだけが聴けるだけなのは惜しい。こんな未発表音源が他にもあるのなら、もっと正式盤でリリースして欲しい。実は、チックのアコピのコンサートには何度か足を運んだが、エレピのチックは生で体験したことが無い。チックのエレピが聴ける、クロスオーバー〜フュージョン志向のエレ・チックのライヴ音源があるのなら、なおさらである。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2022年11月24日 (木曜日)

Return to Foreverのラジオ音源

Return to Forever(リターン・フォー・エヴァー・以下RTFと略)のブート音源はあまり見かけ無いのですが、今回、音源のサブスク・サイトにアップされてきた音源を見つけた。エレクトリック化したRTFの、ギターが、ビル・サマーズからアル・ディ・メオラに変わったばかり、『Where Have I Known You Before(邦題 : 銀河の輝映)』を録音したばかりの時期のライヴ音源である。

Return to Forever『Alive In America』(写真左)。1974年8月8日のライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (key), Stanley Clarke (b), Al Di Meola (g), Lenny White (ds)。コロラド州デンバーのエベッツ・フィールドのラジオ放送の音源とのこと。ラジオ音源なので、意外と音が良い。

冒頭「Beyond The Seventh Galaxy」から「Vulcan Worlds」〜「The Shadow Of Lo」〜「Where Have I Known You Before」と、『Where Have I Known You Before(邦題 : 銀河の輝映)』に収録されている楽曲が迫力あるパフォーマンスで展開される。たった4人の演奏とは思えない、ど迫力の分厚い演奏にちょっとビックリする。メンバーそれぞれの演奏能力の高さが窺い知れる。
 

Return-to-foreveralive-in-america

 
特に、さすがはチック、キーボードの演奏力はずば抜けている。当時、エレキの演奏といえば、プログレッシブ・ロックだが、プログレのキーボード演奏などとは比べものにならない、切れ味の良い高度なテクニック、迫力ある分厚い音、官能的に歪んだ音、疾走感溢れる弾き回し。とにかく、キーボードのテクニックが凄い。なるほど、当時、エレ・マイルスが愛したキーボーダーである。

このライヴ音源には、メンバー各人のロング・ソロが入っている。その中でも、スタンリー・クラークのエレベのソロ・パフォーマンスが「ど迫力」。レニー・ホワイトのドラム・ソロも意外と聴き応えがある。チックのソロは曲目のタイトルに無いが、ラストの「Song to the Pharoah Kings」で、チックのキーボードがふんだんにフィーチャーされている。ディメオラのソロはとにかく超絶技巧。あまりに超絶技巧で聴いていて飽きてくる(笑)。

ただし、このメンバー各人のソロは、それぞれの楽器のパフォーマンスに興味のある向きには聴き甲斐があるが、一般のジャズ者の方々には、ちょっと冗長かもしれない。それを考えると、このライヴ音源って、ちょっと趣味性が高い。そこを勘案して、このライヴ音源を鑑賞していただきたい。当時のRTFの演奏力のずば抜けた高さをダイレクトに実感出来る内容で、聴き応えは十分です。
 
 

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2022年11月16日 (水曜日)

ジャズ・ファンクなヘインズ盤

ドラマーがリーダーのジャズ盤を聴き直している。最近、ロイ・ヘインズのリーダー作を何作か聴き直した訳だが、なかなかの内容の優秀盤が多い。その時代ごとのジャズの演奏志向、トレンドを捉え、メンバーもなかなか考えた人選で、コンテンポラリーな純ジャズを溌剌とやっている。

ただし、何故か、ロイ・ヘインズは我が国では人気がイマイチ。ロイ・ヘインズのリーダー作については、『We Three』『Out of the Afternoon』ばかりが紹介されて、他のリーダー作については、まともな評論はあまり見たことが無い。ハードバップ初期から、21世紀に入るまで、ずっと第一線を走ってきたのドラマーなのに、この過小評価な扱いは未だに納得しかねる。

Roy Haynes『Hip Ensemble』(写真左)。1971年の録音、作品。ちなみにパーソネルは、Roy Haynes (ds, timpani), George Adams (ts, fl), Marvin Peterson (tp), Mervin Bronson (el-b), Elwood Johnson (bongo, tambourine), Lawrence Killian (conga), Carl Schroeder (p), Teruo Nakamura (b)。

全体の音志向は、当時流行っていた「ジャズ・ファンク+クロスオーバー」なジャズ。純ジャズ畑のロイ・ヘインズが、ジャズ・ファンクに手を染めている訳で、ど〜なるの、と思って聴き進めたら、意外と思いっ切り雰囲気のあるジャズ・ファンクがバッチリ決まっているから面白い。
 

Roy-hayneship-ensemble

 
パーソネルを見渡すと、若き日のハンニバル・マーヴィン・ピーターソンのトランペット、ジョージ・アダムスのテナー・サックスがフロントに控えていて、こりゃ〜、思いっ切りスピリチュアルに傾くのか、と思って聴いていたら、ピーターソンのトランペットは、アグレッシブにハイノートでグイグイ攻め、アタムスのテナーは骨太で豪快。しっかりと従来のジャズの枠に填まって熱演している。
 
グルーヴ感溢れるファンキーなヘインズのドラミングに、ベースはエレベ、ボンゴやコンガのパーカッションが、そのグルーヴ感を増幅して、グルーヴ感濃厚なジャズ・ファンクが展開されている。ヘインズ中心に叩き出すビートが意外にアーバンでクールなので、下世話な「どファンク」になっていないところが、この盤の小粋なところ。

メインストリームな純ジャズからは外れる、ジャズ・ファンクな演奏なんだが、純ジャズ感は濃厚。特に、疾走するハンニバルのトランペットとアダムスのテナーは聴き応え満点。バックのリズム&ビートがジャズ・ファンクなのに、そんなことお構いなしに、ストレート・アヘッドなアドリブを吹きまくる。
 
 

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2022年10月 4日 (火曜日)

ロベンとエヴァンスのコラボ

9月は僕の好きなジャズマンの新盤が結構出たみたいで、聴き通すのにとても忙しい毎日である。特に今年は夏が蒸し暑くて、ジャズを聴くのに辛い気候だったのだが、有り難いことに、僕の好きなジャズマンの新譜はほとんど無かった。が、ちょっと涼しくなってきて、一気にドッと出た感じで、嬉しいやら忙しいやら(笑)。

Robben Ford & Bill Evans『Common Ground』(写真左)。2022年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Robben Ford (g), Bill Evans (sax), Darryl Jones (b), Keith Carlock (ds)。ロックの様にジャズ・ギターを弾く男、ロベン・フォード、そして、ロック・ビートに乗った、切れ味の良いサックスを吹く男、ビル・エヴァンスが双頭リーダー。

ベースには、ローリング・ストーンズのサポート・メンバー、ダリル・ジョーンズ。そして、ドラムには、スティーリー・ダンなどで叩いていた、ロックな職人ドラマー、キース・カーロック。ロックの様なエレ・ジャズが出来る4人が集まった、現代のジャジーな「エレ・ファンク」な演奏がてんこ盛り。
 

Robben-ford-bill-evanscommon-ground

 
ロベン・フォードとビル・エヴァンスは、元マイルス・ディヴィスのバンドの経験者。ロベンは1986年、エヴァンスは1980~84年に在籍していた。双方、共演してはいないのだが、1981年にカムバックしたマイルス・デイヴィスのバンドは、一貫して、クールでヒップな「エレ・ファンク」志向。この盤の雰囲気も現代のジャジーな「エレ・ファンク」。

確かに、マイルス・バンドの「エレ・ファンク」の音世界を想起する音がする。マイルスのエレ・ファンクのビートを軽くして、フレーズをシンプルにした様な音がする。ロベンとエヴァンスはマイルス・スクールの門下生、ダリルのベースとカーロックのドラムはもともと筋金入りのロック畑。しかし、このロック畑の2人が、完璧な「エレ・ファンク」なリズム&ビートを叩きだしているので、聴いていてとても気持ちが良い。

タイトルが「Common Ground」=「共通点」。双頭リーダーのロベンとエヴァンスの共通点はと言えば「マイルスのエレ・ファンク」だろう。違うかなあ。でも、僕はこのロベンとエヴァンスは、忠実にマイルスの教えを守って、自分達なりの「エレ・ファンク」を展開しているように聴いた。そして、この現代のジャジーな「エレ・ファンク」はご機嫌で爽快でヒップである。
 
 

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2022年6月 8日 (水曜日)

2014年のホールズワースです。

アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)が亡くなったのは、2017年4月15日。既に4年が経過したことになる。享年70歳は今では「若すぎる」。前年の2016年に16年振りのソロ・アルバムをリリースした矢先の出来事であり、2017年4月10日にサンディエゴで、彼の最後のギグを元気に演奏していたというのだから、余りに急すぎる「死」であった。

Allan Holdsworth『Jarasum Jazz Festival 2014』(写真左)。2014年10月5日、韓国ジャラサムのジャズフェスでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g), Jimmy Haslip (b), Gary Husband (ds)。ホールズワース、鉄壁のトリオ演奏。ホールズワースのオフィシャル・ライヴ・アーカイヴ・シリーズの第5弾になる。

ホールズワースのエレギは、アームを駆使した捻れフレーズに、独特で流麗なレガート奏法をメインにバリバリ弾きまくるのだが、このライヴ盤でも同様な、テンションの高い、ハイテクニックで疾走感溢れる演奏が繰り広げられている。このライヴ録音当時、ホールズワースは67歳。このガンガンに高速フレーズを、アームを駆使してグチョングチョンに弾きまくるのだから凄い。還暦を過ぎた大ベテラン・ギタリストの仕業とは思えない。
 

Allan-holdsworthjarasum-jazz-festival-20

 
即興性を重んじたパフォーマンスなので、ジャズの範疇に留まっているが、このホールズワースのエレギは従来のジャズの範疇から、はみ出している。しかし、リズム&ビートはジャジーで、決してロックでは無い。加えて、ファンクネスは皆無。とにかく高速なカッ飛び&捻れフレーズを弾きまくる訳で、伝統的なモダン・ジャズの範疇の演奏では無い。いわゆるニュー・ジャズの範疇で、そこがホールズワースの個性であり、孤高の存在である所以である。

このライヴ盤でのホールスワーズのパフォーマンスは若かりし頃のそれと全く変わらない。こんな過激なエレギをフロントにした、バックのリズム隊、ハスリップのベース、ハズバンドのドラムについては、これまた「凄い」の一言。ホールズワースの最高レベルのパフォーマンスを向こうに回して、全くひけを取らない、対等に相対し、強烈なインタープレイを丁々発止とやりあう。このバンドの最高に近いパフォーマンスの記録である。

これだけ、先進的で過激、強烈な個性の下、アームを駆使した捻れフレーズ、独特で流麗なレガート奏法を弾きまくる、ジャズ・ギタリストにおける「代表的スタイリスト」の1人でありながら、生前はなかなか環境に恵まれなかったようだが、死後、リリースされ続けている「オフィシャル・ライヴ・アーカイヴ・シリーズ」はどれもが素晴らしい内容。このアーカイヴ・シリーズのリリースによって、ホールスワーズのギターが再評価されることを強く願っている。
 
 

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2022年5月16日 (月曜日)

Simon Phillips『Protocol V』

ホールズワースの初リーダー作や、マクラフリンのライブ盤を聴いていて、ふと、ギタリストがリーダーでは無いが、ホールズワースやマクラフリンの様な「ハードなクロスオーバー&ジャズロック」なバンドの存在を思い出した。ドラムのレジェンド、サイモン・フィリップスのソロ・プロジェクト 「プロトコル」である。

この「プロトコル」は、1988年から続いているのだが、これまでに4枚のアルバムをリリースしている。どれもが「ハードなクロスオーバー&ジャズロック」で、聴いていて、ホールズワースやマクラフリンの音世界を彷彿とさせる。そんなサイモン・フィリップスのソロ・プロジェクトが、今年の3月、前触れなく、5枚目のアルバムをリリースしたのだから、思わずビックリした。

Simon Phillips『Protocol V』(写真左)。2022年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Simon Phillips (ds), Otmaro Ruiz (key), Jacob Scesney (sax), Alex Sill (g), Ernest Tibbs (b)。

2017年の『プロトコルIV』以来、約5年振りとなる新盤。ドラマーのサイモン・フィリップスがリーダーのアルバムながら、内容は、エレギとサックスとキーボードがメインの「ハードなクロスオーバー&ジャズロック」である。

もともとはロック畑のドラマーで、マイケル・シェンカー・グループ、ホワイトスネイクやザ・フーといった錚々たるグループで活躍してきたサイモン・フィリップス。ベースのアーネスト・ティブスは、前作にも参加した、サイモン・フィリップスの良き相棒。
 

Simon-phillipsprotocol-v

 
キーボードのオトマロ・ルイーズは、元ジョン・マクラフリン・バンドのメンバー。サックスのジェイコブ・セスニーは、ロベン・フォードやクリスチャン・スコットと共演し、ポストモダン・ジュークボックスにも参加している逸材。ギターのアレックス・シルは期待の若手。

サイモン・フィリップスは、今年で65歳。もうレジェンド級のドラマーなのだが、この新盤の音世界はとことん「尖っている」。まず、ギターのアレックス・シルの、とにかくプログレッシヴ・ロックっぽく、ハードでほどよく捻れたクロスオーバー風のエレギが「尖っている」。

同じフロントを担う、ジェイコブ・セスニーのサックスも、プログレッシヴ・ロックっぽく、ハードで捻れたクロスオーバー風のサックスが「尖っている」。ルイーズのキーボードは、しっかりと「クロスオーバー・ジャズ」に軸足をしっかり置いた、ジャジーなもの。決して、プログレッシヴ・ロック志向では無い。

そんなエレギとサックス、キーボードをサイモン・フィリップスのドラムが鼓舞し、リードする。サイモン・フィリップスのドラムはジャズロック。ジャジーでロックっぽい。フィリップスのドラムがジャジーになると、演奏全体はクロスオーバー志向となり、フィリップスのドラムがロックになると、演奏全体はロック志向になる。演奏全体をフィリップスのドラムがコントロールしているのが良く判る。

さすが、サイモン・フィリップスは、英国ロンドン出身のドラマー。この『Protocol V』の音は、プログレッシヴ・ロックとクロスオーバー・ジャズとの境界が曖昧な英国ジャズロックの音世界そのものであり、それがこの「プロトコル」の最大の個性。僕はこの音世界が意外と気に入っていて、意外とこの『Protocol V』、緩やかなヘビロテ盤になっている。
 
 

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2022年5月12日 (木曜日)

ジャマルの70年代ニュー・ジャズ

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)は「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1960年代終わり〜1970年代の作品は「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が中心。1960年代終わり以前のジャマルのスタイルは「しっとりシンプルでクールなサウンド」だった。そして、1969年〜1970年辺りで、いきなり「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変貌する。

Ahmad Jamal『Live at Oil Can Harry's』(写真)。1976年8月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Calvin Keys (g), John Heard (b), Frank Gant (ds), Seldon Newton (congas)。ギター・コンガ入りのピアノ・トリオ、クインテット編成での演奏。カナダ・バンクーバーの有名クラブ「Oil Can Harry's」でのパフォーマンスを収録した傑作ライヴ盤である。

1970年代のジャマルは「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」。このライヴ盤でも、ギターの存在が大きくクローズアップされて、どこか、クロスオーバー・ジャズの音志向に繋がるような、ビートの効いた、メリハリのある展開になっている。少なくとも、この演奏はハードバップ系の演奏内容では無い。1970年代ならではの「ニュー・ジャズ」な音世界である。
 

Live-at-oil-can-harrys_1

 
ECMを中心とする欧州の「ニュー・ジャズ」との相違点は「アーシー」な雰囲気の有無。このライヴ盤でのジャマル中心の演奏はとても「アーシー」。この「土臭い、泥臭い」音志向は米国ジャズ独特のものであり、特に米国南部にこの音志向が強い。ロックのおいても、米国南部中心のスワンプ・ロック、サザン・ロックの音志向が「アーシー」。

このライヴ盤での、カルヴン・キーズのエレギが、実にアーシーな響きを放っている。加えて、セルドン・ニュートンのコンガも、アーシーさを増幅させる。そして、ジャマルのピアノの左手のブロックコードが、どこかマッコイ・タイナーのハンマー奏法の響きと似たアーシーな響きを宿していて、ビートの効いた「軽めのジャズ・ファンク」に展開するところはスリリングだ。

1970年代半ば、ならではの「ニュー・ジャズ」。クロスオーバー・ジャズ志向の「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」は実にユニーク。当時のウェザー・リポートやジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラに通じる部分もあり、意外と格好良い「イケてる」サウンドですが、このライヴ盤、知る人ぞ知る存在に甘んじているのが実に残念です。
 
 

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2022年5月10日 (火曜日)

モントルーのマクラフリン集です

昨日、ジョン・マクラフリンのアルバムについて語った訳だが、ちょうど、もう一枚、マクラフリン関連のライヴ盤があることに気がついた。しかし、マクラフリンは、1942年生まれなので、今年で80歳の大台に乗る。21世紀に入ってからも、過激でダイナミックで尖ったエレギの「トップ集団」をキープしているのは凄い。

John McLaughlin & The Mahavishnu Orchestra『John McLaughlin: The Montreux Years』(写真左)。1984~2016年 歴代モントルー・ジャズ・フェスティヴァル出演時のライヴ音源を収録したベスト盤的内容。1984年のマハヴィシュヌ・オーケストラを率いての演奏から、1987年のパコ・デ・ルシアとのライヴ、そして新しい所では 2016年のフォース・ディメンションを率いてのライヴまでが収録されている。

マクラフリン自らが、膨大なライヴ音源の中から、選曲と編集を手掛けているらしく、演奏内容はどの曲もピカイチ。マクラフリン本人のエレギ・アコギはもとより、共演者のパフォーマンスもピカイチ。どの演奏も「どれだけ凄い人選をしてるん」と呆れるほどの、エモーショナルでダイナミックで尖り具合である。いかに、モントルー・ジャズ・フェスでの演奏は内容が濃かったか、である。
 

John-mclaughlin_the-montreux-years

 
マハヴィシュヌ・オーケストラ、シャクティ、スーパー・ギター・トリオ、ファイヴ・ピース・バンドなどの、その時代毎の先端を行くグループやユニットで活躍してきたマクラフリンだが、このモントルー・ライヴを聴いていると、これだけ個性の強いギターでありながら、バンドや共演者が異なれば、個性のベースはそのままに、しっかりとそのバンドの目指す音世界や共演者と目指す音世界に合わせて「音や弾き方」を微妙に変えているのには感心する。

特に「マハヴィシュヌ・オーケストラ」名義の演奏は、1970年代、一世を風靡したマハヴィシュヌでのエレギの音を忠実に再現している、というか、テクニック的に深化しているのが凄い。パコ・デ・ルシアとの共演では、あの「スーパー・ギター・トリオ」の時と同じ、アコギの音がブワーッと広がって、「ああ、これこれ、この音」と懐かしく思い出される。エレギ、アコギの音を聴いて、その時のバンドや共演者がすぐに浮かぶって、やっぱり凄い。

マクラフリンのギターの歴史を、モントルーのライヴ音源で振り返るって、やっぱり良い企画ですね。音もかなり良いし、演奏内容は充実してる、で聴き応え十分。やっぱり、マクラフリンって凄いな、って改めて思いました。脱帽です。
 
 

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2022年5月 9日 (月曜日)

未だ過激で捻れるマクラフリン

アラン・ホールズワースの初リーダー作を聴いていて、やっぱり、クロスオーバー系のジャズ・エレギって、ロックよりもバカテクで、ロックよりも尖っていて捻れていないとな、と思った次第。と同時に、やわなロック・ファンはついてこられない、過激でダイナミックで尖ったエレギの始祖「ジョン・マクラフリン」の名前が浮かんだ。で、ライブラリーを漁っていたら、好適な盤に出くわした。

John McLaughlin & The 4th Dimension『The Boston Record』(写真左)。2013年6月22日、米国ボストンの「Berklee Performance Center」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g), Gary Husband (key), Etienne M'Bappe (b), Gary Husband, Ranjit Barot (ds), Ranjit Barot (voice)。

2013年に行われノースカロライナ、ニューヨーク、トロントなど8カ所を廻ったツアーのボストン公演の演奏を収めたライブ盤になる。ギター、キーボードに、ベース、そして、部分的にダブル・ドラムの厚みのある編成。マクラフリンは1942年生まれなので、録音当時71歳(!)。往年のハードで捻れたエレギに磨きがかかって、大迫力のパフォーマンスである。とても70歳を過ぎた翁とは思えない。
 

John-mclaughlin-the-4th-dimensionthe-bos

 
キーボードのゲイリー・ハズバンドは「Allan Holdsworth Group」などで活躍、ベースのエティエンヌ・ムバッペは「The Zawinul Syndicate」などで活躍、そして、ドラムのランジット・バロットはジョン・マクラフリンから「ドラムの最先端の1つ」と評価されるインド人打楽器奏者。現代の最先端のエレクトリック・ジャズをやる上で、申し分の無いラインナップである。

マクラフリンは、若かりし頃、1960年代後半から1970年代の尖りまくった、他の追従を許さないハードなエレギに、約半世紀の年を経て、成熟と余裕、そして更なるバカテクをかまして、このライブで弾きまくっているから凄い。アドリブ・フレーズは大らかに尖って展開し、他の楽器とのインタープレイは更に過激に立ち回る。それでいて、聴き心地は良好で、決して耳に五月蠅くない。成熟と安定のエレ・ジャズである。

ホールズワースが鬼籍に入り、ジョンスコとパットがやや大人しくなって、過激でダイナミックで尖ったエレギ・ギターの担い手もマイナーな存在になりつつある昨今、この大御所マクラフリンが「この過激さ、この捻れ具合」は脱帽もの。スピリチュアルな側面も充実していて、まだまだ現役。逆に、若手ギタリストの奮起を促す様な、素晴らしいパフォーマンスの記録である。
 
 

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