2022年6月 8日 (水曜日)

2014年のホールズワースです。

アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)が亡くなったのは、2017年4月15日。既に4年が経過したことになる。享年70歳は今では「若すぎる」。前年の2016年に16年振りのソロ・アルバムをリリースした矢先の出来事であり、2017年4月10日にサンディエゴで、彼の最後のギグを元気に演奏していたというのだから、余りに急すぎる「死」であった。

Allan Holdsworth『Jarasum Jazz Festival 2014』(写真左)。2014年10月5日、韓国ジャラサムのジャズフェスでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g), Jimmy Haslip (b), Gary Husband (ds)。ホールズワース、鉄壁のトリオ演奏。ホールズワースのオフィシャル・ライヴ・アーカイヴ・シリーズの第5弾になる。

ホールズワースのエレギは、アームを駆使した捻れフレーズに、独特で流麗なレガート奏法をメインにバリバリ弾きまくるのだが、このライヴ盤でも同様な、テンションの高い、ハイテクニックで疾走感溢れる演奏が繰り広げられている。このライヴ録音当時、ホールズワースは67歳。このガンガンに高速フレーズを、アームを駆使してグチョングチョンに弾きまくるのだから凄い。還暦を過ぎた大ベテラン・ギタリストの仕業とは思えない。
 

Allan-holdsworthjarasum-jazz-festival-20

 
即興性を重んじたパフォーマンスなので、ジャズの範疇に留まっているが、このホールズワースのエレギは従来のジャズの範疇から、はみ出している。しかし、リズム&ビートはジャジーで、決してロックでは無い。加えて、ファンクネスは皆無。とにかく高速なカッ飛び&捻れフレーズを弾きまくる訳で、伝統的なモダン・ジャズの範疇の演奏では無い。いわゆるニュー・ジャズの範疇で、そこがホールズワースの個性であり、孤高の存在である所以である。

このライヴ盤でのホールスワーズのパフォーマンスは若かりし頃のそれと全く変わらない。こんな過激なエレギをフロントにした、バックのリズム隊、ハスリップのベース、ハズバンドのドラムについては、これまた「凄い」の一言。ホールズワースの最高レベルのパフォーマンスを向こうに回して、全くひけを取らない、対等に相対し、強烈なインタープレイを丁々発止とやりあう。このバンドの最高に近いパフォーマンスの記録である。

これだけ、先進的で過激、強烈な個性の下、アームを駆使した捻れフレーズ、独特で流麗なレガート奏法を弾きまくる、ジャズ・ギタリストにおける「代表的スタイリスト」の1人でありながら、生前はなかなか環境に恵まれなかったようだが、死後、リリースされ続けている「オフィシャル・ライヴ・アーカイヴ・シリーズ」はどれもが素晴らしい内容。このアーカイヴ・シリーズのリリースによって、ホールスワーズのギターが再評価されることを強く願っている。
 
 

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2022年5月16日 (月曜日)

Simon Phillips『Protocol V』

ホールズワースの初リーダー作や、マクラフリンのライブ盤を聴いていて、ふと、ギタリストがリーダーでは無いが、ホールズワースやマクラフリンの様な「ハードなクロスオーバー&ジャズロック」なバンドの存在を思い出した。ドラムのレジェンド、サイモン・フィリップスのソロ・プロジェクト 「プロトコル」である。

この「プロトコル」は、1988年から続いているのだが、これまでに4枚のアルバムをリリースしている。どれもが「ハードなクロスオーバー&ジャズロック」で、聴いていて、ホールズワースやマクラフリンの音世界を彷彿とさせる。そんなサイモン・フィリップスのソロ・プロジェクトが、今年の3月、前触れなく、5枚目のアルバムをリリースしたのだから、思わずビックリした。

Simon Phillips『Protocol V』(写真左)。2022年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Simon Phillips (ds), Otmaro Ruiz (key), Jacob Scesney (sax), Alex Sill (g), Ernest Tibbs (b)。

2017年の『プロトコルIV』以来、約5年振りとなる新盤。ドラマーのサイモン・フィリップスがリーダーのアルバムながら、内容は、エレギとサックスとキーボードがメインの「ハードなクロスオーバー&ジャズロック」である。

もともとはロック畑のドラマーで、マイケル・シェンカー・グループ、ホワイトスネイクやザ・フーといった錚々たるグループで活躍してきたサイモン・フィリップス。ベースのアーネスト・ティブスは、前作にも参加した、サイモン・フィリップスの良き相棒。
 

Simon-phillipsprotocol-v

 
キーボードのオトマロ・ルイーズは、元ジョン・マクラフリン・バンドのメンバー。サックスのジェイコブ・セスニーは、ロベン・フォードやクリスチャン・スコットと共演し、ポストモダン・ジュークボックスにも参加している逸材。ギターのアレックス・シルは期待の若手。

サイモン・フィリップスは、今年で65歳。もうレジェンド級のドラマーなのだが、この新盤の音世界はとことん「尖っている」。まず、ギターのアレックス・シルの、とにかくプログレッシヴ・ロックっぽく、ハードでほどよく捻れたクロスオーバー風のエレギが「尖っている」。

同じフロントを担う、ジェイコブ・セスニーのサックスも、プログレッシヴ・ロックっぽく、ハードで捻れたクロスオーバー風のサックスが「尖っている」。ルイーズのキーボードは、しっかりと「クロスオーバー・ジャズ」に軸足をしっかり置いた、ジャジーなもの。決して、プログレッシヴ・ロック志向では無い。

そんなエレギとサックス、キーボードをサイモン・フィリップスのドラムが鼓舞し、リードする。サイモン・フィリップスのドラムはジャズロック。ジャジーでロックっぽい。フィリップスのドラムがジャジーになると、演奏全体はクロスオーバー志向となり、フィリップスのドラムがロックになると、演奏全体はロック志向になる。演奏全体をフィリップスのドラムがコントロールしているのが良く判る。

さすが、サイモン・フィリップスは、英国ロンドン出身のドラマー。この『Protocol V』の音は、プログレッシヴ・ロックとクロスオーバー・ジャズとの境界が曖昧な英国ジャズロックの音世界そのものであり、それがこの「プロトコル」の最大の個性。僕はこの音世界が意外と気に入っていて、意外とこの『Protocol V』、緩やかなヘビロテ盤になっている。
 
 

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2022年5月12日 (木曜日)

ジャマルの70年代ニュー・ジャズ

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)は「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1960年代終わり〜1970年代の作品は「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が中心。1960年代終わり以前のジャマルのスタイルは「しっとりシンプルでクールなサウンド」だった。そして、1969年〜1970年辺りで、いきなり「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変貌する。

Ahmad Jamal『Live at Oil Can Harry's』(写真)。1976年8月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Calvin Keys (g), John Heard (b), Frank Gant (ds), Seldon Newton (congas)。ギター・コンガ入りのピアノ・トリオ、クインテット編成での演奏。カナダ・バンクーバーの有名クラブ「Oil Can Harry's」でのパフォーマンスを収録した傑作ライヴ盤である。

1970年代のジャマルは「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」。このライヴ盤でも、ギターの存在が大きくクローズアップされて、どこか、クロスオーバー・ジャズの音志向に繋がるような、ビートの効いた、メリハリのある展開になっている。少なくとも、この演奏はハードバップ系の演奏内容では無い。1970年代ならではの「ニュー・ジャズ」な音世界である。
 

Live-at-oil-can-harrys_1

 
ECMを中心とする欧州の「ニュー・ジャズ」との相違点は「アーシー」な雰囲気の有無。このライヴ盤でのジャマル中心の演奏はとても「アーシー」。この「土臭い、泥臭い」音志向は米国ジャズ独特のものであり、特に米国南部にこの音志向が強い。ロックのおいても、米国南部中心のスワンプ・ロック、サザン・ロックの音志向が「アーシー」。

このライヴ盤での、カルヴン・キーズのエレギが、実にアーシーな響きを放っている。加えて、セルドン・ニュートンのコンガも、アーシーさを増幅させる。そして、ジャマルのピアノの左手のブロックコードが、どこかマッコイ・タイナーのハンマー奏法の響きと似たアーシーな響きを宿していて、ビートの効いた「軽めのジャズ・ファンク」に展開するところはスリリングだ。

1970年代半ば、ならではの「ニュー・ジャズ」。クロスオーバー・ジャズ志向の「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」は実にユニーク。当時のウェザー・リポートやジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラに通じる部分もあり、意外と格好良い「イケてる」サウンドですが、このライヴ盤、知る人ぞ知る存在に甘んじているのが実に残念です。
 
 

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2022年5月10日 (火曜日)

モントルーのマクラフリン集です

昨日、ジョン・マクラフリンのアルバムについて語った訳だが、ちょうど、もう一枚、マクラフリン関連のライヴ盤があることに気がついた。しかし、マクラフリンは、1942年生まれなので、今年で80歳の大台に乗る。21世紀に入ってからも、過激でダイナミックで尖ったエレギの「トップ集団」をキープしているのは凄い。

John McLaughlin & The Mahavishnu Orchestra『John McLaughlin: The Montreux Years』(写真左)。1984~2016年 歴代モントルー・ジャズ・フェスティヴァル出演時のライヴ音源を収録したベスト盤的内容。1984年のマハヴィシュヌ・オーケストラを率いての演奏から、1987年のパコ・デ・ルシアとのライヴ、そして新しい所では 2016年のフォース・ディメンションを率いてのライヴまでが収録されている。

マクラフリン自らが、膨大なライヴ音源の中から、選曲と編集を手掛けているらしく、演奏内容はどの曲もピカイチ。マクラフリン本人のエレギ・アコギはもとより、共演者のパフォーマンスもピカイチ。どの演奏も「どれだけ凄い人選をしてるん」と呆れるほどの、エモーショナルでダイナミックで尖り具合である。いかに、モントルー・ジャズ・フェスでの演奏は内容が濃かったか、である。
 

John-mclaughlin_the-montreux-years

 
マハヴィシュヌ・オーケストラ、シャクティ、スーパー・ギター・トリオ、ファイヴ・ピース・バンドなどの、その時代毎の先端を行くグループやユニットで活躍してきたマクラフリンだが、このモントルー・ライヴを聴いていると、これだけ個性の強いギターでありながら、バンドや共演者が異なれば、個性のベースはそのままに、しっかりとそのバンドの目指す音世界や共演者と目指す音世界に合わせて「音や弾き方」を微妙に変えているのには感心する。

特に「マハヴィシュヌ・オーケストラ」名義の演奏は、1970年代、一世を風靡したマハヴィシュヌでのエレギの音を忠実に再現している、というか、テクニック的に深化しているのが凄い。パコ・デ・ルシアとの共演では、あの「スーパー・ギター・トリオ」の時と同じ、アコギの音がブワーッと広がって、「ああ、これこれ、この音」と懐かしく思い出される。エレギ、アコギの音を聴いて、その時のバンドや共演者がすぐに浮かぶって、やっぱり凄い。

マクラフリンのギターの歴史を、モントルーのライヴ音源で振り返るって、やっぱり良い企画ですね。音もかなり良いし、演奏内容は充実してる、で聴き応え十分。やっぱり、マクラフリンって凄いな、って改めて思いました。脱帽です。
 
 

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2022年5月 9日 (月曜日)

未だ過激で捻れるマクラフリン

アラン・ホールズワースの初リーダー作を聴いていて、やっぱり、クロスオーバー系のジャズ・エレギって、ロックよりもバカテクで、ロックよりも尖っていて捻れていないとな、と思った次第。と同時に、やわなロック・ファンはついてこられない、過激でダイナミックで尖ったエレギの始祖「ジョン・マクラフリン」の名前が浮かんだ。で、ライブラリーを漁っていたら、好適な盤に出くわした。

John McLaughlin & The 4th Dimension『The Boston Record』(写真左)。2013年6月22日、米国ボストンの「Berklee Performance Center」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g), Gary Husband (key), Etienne M'Bappe (b), Gary Husband, Ranjit Barot (ds), Ranjit Barot (voice)。

2013年に行われノースカロライナ、ニューヨーク、トロントなど8カ所を廻ったツアーのボストン公演の演奏を収めたライブ盤になる。ギター、キーボードに、ベース、そして、部分的にダブル・ドラムの厚みのある編成。マクラフリンは1942年生まれなので、録音当時71歳(!)。往年のハードで捻れたエレギに磨きがかかって、大迫力のパフォーマンスである。とても70歳を過ぎた翁とは思えない。
 

John-mclaughlin-the-4th-dimensionthe-bos

 
キーボードのゲイリー・ハズバンドは「Allan Holdsworth Group」などで活躍、ベースのエティエンヌ・ムバッペは「The Zawinul Syndicate」などで活躍、そして、ドラムのランジット・バロットはジョン・マクラフリンから「ドラムの最先端の1つ」と評価されるインド人打楽器奏者。現代の最先端のエレクトリック・ジャズをやる上で、申し分の無いラインナップである。

マクラフリンは、若かりし頃、1960年代後半から1970年代の尖りまくった、他の追従を許さないハードなエレギに、約半世紀の年を経て、成熟と余裕、そして更なるバカテクをかまして、このライブで弾きまくっているから凄い。アドリブ・フレーズは大らかに尖って展開し、他の楽器とのインタープレイは更に過激に立ち回る。それでいて、聴き心地は良好で、決して耳に五月蠅くない。成熟と安定のエレ・ジャズである。

ホールズワースが鬼籍に入り、ジョンスコとパットがやや大人しくなって、過激でダイナミックで尖ったエレギ・ギターの担い手もマイナーな存在になりつつある昨今、この大御所マクラフリンが「この過激さ、この捻れ具合」は脱帽もの。スピリチュアルな側面も充実していて、まだまだ現役。逆に、若手ギタリストの奮起を促す様な、素晴らしいパフォーマンスの記録である。
 
 

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2022年5月 7日 (土曜日)

ホールズワースの最高傑作です

現代においても、ジャズ・ギタリストには従来の伝統的なモダン・ジャズギター系と、クロスオーバー・ジャズより生まれ出でて発展した、クロスオーバー&フュージョン系のギターと2通りのスタイルに分かれる。どちらのスタイルも順調に深化を続けていて、有望な後継者もしっかりと出現していて頼もしい限りだ。

Allan Holdsworth『I.O.U.』(写真)。1979年の録音。1982年のリリース。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, vln), Paul Williams (vo), Gary Husband (ds, p), Paul Carmichael (b)。借金までして自主制作した初ソロ・リーダー作。ハードで心地良く捻れて、ウネウネ・フレーズを擁して訴求力抜群なホールスワースのエレギが心ゆくまで堪能出来る。

この盤がアラン・ホールズワースの正式なソロ・デビュー盤になる。この『I.O.U.』の前に、CTIにて録音した『Velvet Darkness』があるが、ホールズワースは「この録音はリハーサル・テイクで、正式にリリースを許可した覚えは無い」ということで、自身のリーダー作として認めていない。
 
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確かに『Velvet Darkness』は荒削りな内容になっているので、それは「そういう理由やったんや」と思わず納得した。極的には『Velvet Darkness』は、ホールズワースとして納得いくものだった様で、よく聴けば、多くのトラックが、この『I.O.U.』に、より洗練され、完成度を上げて収録されていることが判る。とにかく、ホールズワースの初ソロ・リーダー作であり、かつ最高傑作の誉れ高い名盤である。

自身がもてるテクニックをふんだんに盛り込みつつ、しっかりとアレンジされた、ストイックでクールな演奏は、初リーダー作とはいえ、かなりのレベルにある。ホールズワースのエレギは、アームを駆使した捻れフレーズに、独特で流麗なレガート奏法をメインにバリバリ弾きまくっていて爽快。英国のプログレ・バンドを渡り歩いただけあって、基本はプログレ風、そこにジャジーな要素が加わるユニークな「ジャズロック」風フュージョン・ギターで、実に個性的。

バックのベース、ドラムのリズム隊も、ホールズワースのハードなエレギにしっかり耐え、なかなか迫力あるリズム&ビートを供給している。トリオでこれだけ迫力のある音が出せるなんて、凄いなあ。迫力だけじゃ無い、テクニックも優秀、歌心もあって、申し分の無いクロスオーバー&フュージョン系のエレギを聴くことが出来る。ホールズワースの才能の全てを感じ取る事ができる「ホールズワース入門」盤としても、なかなかイケる盤である。
 
 

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2022年1月23日 (日曜日)

高中正義『T-WAVE』を聴き直す

高中正義の1970年代〜80年代前半、「Kitty Records」時代のリーダー作がサブスク解禁になったようで、1st.作から11th.作まで、一気に聴き直している。すると、意外と今の耳で聴いてみると、リリース当時など、以前に聴いた印象とは違った音が聴こえてきて、意外と面白い。恐らく、歳を取るにつけ、耳が肥えて、良い意味で音に対する許容度が高くなってきたのだろう。

高中正義『T-WAVE』(写真)。1980年6月のリリース。高中6枚目のオリジナル盤。セルフ・プロデュースで、パーソネルも曲毎に異なるが、基本は、高中正義 (g), 小林"MIMI"泉美 & 石川清澄 (key), 高橋ゲタ夫 & 田中章弘 (b), 井上茂 (ds), 菅原裕紀 (perc)。当時のフュージョン・ジャズ畑のミュージシャンとは一線を画した、「高中の音世界」独特のメンバーである。

冒頭の目覚まし時計の音で始まる「Early Bird」から、爽快で疾走感溢れる高中のギターが疾走する。演奏の内容的には「クロスオーバー・ロック」。ロックとジャズが融合した「クロスオーバー」な演奏だが、リズム&ビートは「ロック」。当然、オフビートではあるが「ファンクネス」は皆無。しかし、8ビートが疾走するギター・インストのテイストは「クロスオーバー」。
 

Twave_masayoshi_takanaka

 
そして、3曲目「Mambo No.6」に至っては、ロック・ビートに乗ったマンボな演奏が繰り広げられる。ラテン系のテイストが個性の「高中の面目躍如」。ロックとマンボの融合。フュージョン(融合)なロックである。4曲目「Crystal Memories」やラストの「Le Premier Mars」は、当時の流行である、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズなテイストのギター・インストがメインの演奏。

今の耳で聴きながら思うに、この盤って、日本人ならではの「クロスオーバー〜フュージョン・ジャズ」なのではないか、と感じている。米国の「クロスオーバー〜フュージョン・ジャズ」とは異なり、リズム&ビートは「ロック」、それでいて、疾走感溢れる「弾きまくるギター」はクロスオーバー・ジャズに近いし、ソフト&メロウなギター・インストは、明らかにフュージョン・ジャズ。

特にこの『T-WAVE』は、高中のリーダー作の中でも完成度が高く、テクニック的にも内容的にも、米国のフュージョン・ジャズと比肩するレベル。そういう面からも、この盤は日本人ならではの「クロスオーバー〜フュージョン・ジャズ」の傑作の1枚と評価しても良いかと思う。今の耳で聴くと、この盤のクールな爽快感と疾走感はしっかりと耳に残る。日本のクロスオーバー〜フュージョンの名盤の1枚だろう。
 
 
 
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2021年12月29日 (水曜日)

NHØペデルセンの好リーダー作

Niels-Henning Ørsted Pedersen(ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン)。デンマーク・ジャズの至宝。ジャズ・ベーシストのレジェンド。1946年5月生まれ、2005年4月、58歳にて心不全で急逝。まだまだ中堅の働き盛りだったので、逝去の報に接した時には、かなりビックリした。

ペデルセンのベースは硬質で骨太で、しなり豊かなブンブンなベース。しかも、ピッチがバッチリ合っている。テクニックは抜群、ベース・ソロなどはギターの様に唄う様なフレーズは、なかなか他に無い。それでいて、フロント楽器の邪魔をすることは絶対に無い。逆にフロント楽器を引き立てるベースなのだ。見事という他は無い。僕はこの人のベースが大好きだった。

Niels-Henning Ørsted Pedersen『Jaywalkin'』(写真左)。スティープルチェイス・レーベルのSCS1041番。1975年9月と12月、コペンハーゲンの「Rosenberg Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Philip Catherine (g), Ole Kock Hansen (el-p), Billy Higgins (ds)。

リーダーはもちろん、ベースのペデルセン。ドラムは柔軟なユーティリティー・ドラマーのビリー・ヒギンズ。ギターは、ベルギー出身のフィリップ・カテリーン、エレピは、デンマーク出身のオーレ・コク・ハンセン。ほぼ欧州ジャズなラインナップ。
 

Jaywalkin

 
ピアノはアコースティックでは無く、エレクトリック、ギターもエレクトリック中心なので、アルバム全体の音作りは、ガッチガチの純ジャズでは無く、ちょっとポップでコンテンポラリーな、いかにも1970年代らしい「ニュー・ジャズ」な雰囲気。ペデルセンの考える「クロスオーバー・ジャズ」な雰囲気が聴いていてとても楽しい。

それにしても、ペデルセンのベースは「ヤバい」。ウッド・ベースが持つウッディーな重厚さや温みを失わず、凄まじい重低音をブンブンしならせて、ピッチをバッチリ合わせながら、唄う様にソロ・フレーズを弾きまくっている。これがとにかく凄い。

エレベの伝説的レジェンド、ジャコ・パストリアスに通ずる「凄さ」。ジャコより骨太で硬質なので、これはこれで唯一無二。逆に、クロスオーバー・ジャズ的な、ポップでエレクトリックな音世界の中で、ペデルセンのベースは実に「目立つ」。

欧州ジャズに珍しい、クロスオーバー・ジャズ風な、フュージョン・ジャズ風な音世界が実にユニークで聴き易い。そこに、良い意味で目立ちに目立つペデルセンのベース。ベーシストのリーダー作としても、白眉の出来だと思います。
 
 
 
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2021年12月16日 (木曜日)

冬のボサ・ノヴァ・ジャズ・3

今年の暮れは「冬のボサ・ノヴァ・ジャズ」に触手が伸びる。「夏はボサ・ノヴァ・ジャズで爽やかに」というのが定番なのだが、寒い冬、暖かい部屋の中でリラックスして聴く「冬のボサ・ノヴァ・ジャズ」も意外と良い雰囲気。ほんわかウォームなボサ・ノヴァ系のヴォーカルが、冬の寒い雰囲気の中で心地良く響くから面白い。

Tania Maria『Brazil With My Soul』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、Tania Maria (vo, p), Alain Hatot (ts, fl), Alfred Housepian (tp, flh), Zezito, J.F. Jenny-Clark (b), Hubert Varron (cello), Aldo Romano (ds), L.C. Fuina (ds, perc), Clovis Lobâo (perc)。

Tania Maria(タニア・マリア)は、ブラジル出身の女性ボーカリスト&ピアニスト。1948年生まれなので、今年で73歳。この『Brazil With My Soul』を録音した時点では30歳。若さ溢れる、バリバリのパフォーマンスが見事。彼女のキャッチフレーズは「パッション溢れるピアノ・タッチと流麗で爽やかなボーカル&スキャット」。
 

Brazil-with-my-soul

 
彼女の音志向は「ブラジル音楽、ジャズ・フュージョン、クラシックを鮮やかに融合した音作り」で一貫している。ボサ・ノヴァやサンバを基調としているが、リズム&ビートはジャジーであり、ボサ・ノヴァ・ジャズの特徴である「爽やかで、ほんわかウォームな、リズミカルではあるが、どこかアンニュイが漂う」ところが意外と希薄。エネルギッシュでダンサブルな面が前面に出ているところが個性。

この盤には、ジャズを基調として、ボサ・ノヴァ、サンバ、というブラジル音楽の要素はふんだんに入っているが、アフロラテン、ポップス、ソウルな音楽の要素もしっかり反映されていて、1978年の作品である様に、この盤の音の雰囲気は、明らかに「ワールド・ミュージック志向のフュージョン・ジャズ」。しかも、タニアの優れたボーカルが入った、フュージョンに珍しい「フュージョン・ボーカル盤」である。

良い雰囲気のフュージョン・ジャズ。チック・コリアやフローラ・プリムのフュージョン盤に通じる、ラテン系の音世界を色濃く反映した「融合(フュージョン)」の音楽は、聴いていて爽快、ユートピア志向に通じる、凛としたロマンティシズムも良い方向に作用している。「ワールド・ミュージック志向のフュージョン・ジャズ」の名盤の1枚。
 
 
 
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2021年12月14日 (火曜日)

ユニークな英国のジャズロック

欧州ジャズと一派一絡げに言うが、欧州大陸とグレートブリテン島(英国)では、ジャズに対する考え方が違う。特に英国は独特である。ジャズと言えば「ビ・バップ」か「ハードバップ」。ハードバップから派生した、大衆ウケを狙ったファンキー・ジャズや、音楽として捉えるのに無理が伴うフリー・ジャズ、電気楽器を駆使したエレ・ジャズなどは、ジャズでは無い、と言い切る。

それでも英国にはジャズロックの痕跡は残っている。ロック畑のミュージシャンがジャズをやる、というアプローチ。高いテクニックが伴うので、そうそう現れ出でることは無かったが、プログレッシヴ・ロックのミュージシャンを中心に、ジャズロックへのアプローチが見られる。バンドとしては、Brand X, Soft Machine, Bill Bruford's Earthworks の3つが代表格。というか、この3つしかない(と思われる)。

Brand X『Morroccan Roll』(写真左)。1977年の作品。ちなみにパーソネルは、John Goodsall (g), Robin Lumley (key), Percy Jones (b), Phil Collins (ds), Morris Pert (perc)。英国の数少ないジャズロック・バンド、ブランドXのセカンド盤。ドラムには、プログレバンド、ジェネシスのドラマー、フィル・コリンズが担当している。
 

Morroccan-roll

 
演奏を聴いてみて思うのは、これは「プログレッシヴ・ロック」では無い。リズム&ビートからジャズロックである。が、英国出身ということもあってか、ファンクネスは皆無。ジャジーな雰囲気もほとんど無く、インスト・メインの音作りからすると「プログレ」と判断されても仕方が無い。しかし、これは「クロスオーバーなジャズロック」である。

バカテクで疾走感溢れるインストはファースト盤『Unorthodox Behaviour』と変わらないが、このセカンド盤の方が、演奏自体が少しユッタリしていて、アドリブ展開にも余裕が感じられる。音的にも、タイトルからも想像出来る様に「エスニック」もしくは「アラビアン」な音の要素が散りばめられていて、音的にクロスオーバーな展開がこのセカンド盤の特徴。

まず、欧州大陸にはまず無い「ジャズロック」が、グレートブリテン島にはあった。英国にて突然変異的に現れたプログレが引き金だとは思うが、英国の「ジャズロック」はユニークだ。特にこのブランドXはロック色が強い。しかし、リズム&ビートは「ジャズロック」。何とも音志向の判断に戸惑う、英国の「ジャズロック」である。
 
 
 
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