2024年4月15日 (月曜日)

Brufordの『Feels Good to Me』

ジャズを本格的に聴き出す前は「ロック小僧」だった。高校に入って、いきなりプログレッシブ・ロック(略して「プログレ」)に嵌った。EL&Pから始まって、イエス、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、フォーカス、ジェネシス、ムーディー・ブルース等々、クラブの先輩達とガッツリ聴きまくった。

このプログレ好き、バカテク+インスト中心の楽曲好きが昂じて、即興演奏がメインのインストの「ジャズ」に興味が移行した訳で、今でも自分では、プログレについては造詣が深いと思っている。

Bill Bruford 『Feels Good to Me』(写真左)。1977年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Bruford (ds, perc), Allan Holdsworth (el-g), Dave Stewart (key), Jeff Berlin (b)。ゲストに、Kenny Wheeler (flh, on tracks 3, 7, 9), Annette Peacock(vo), John Goodsall (rhythm-g)。英国の人気プログレ・バンドのイエス、キング・クリムゾンのドラマーを歴任したビル・ブルーフォードの初ソロ・アルバムである。

プログレのドラマーがジャズをやるの、と訝しく思われる方もいるかと思うが、もともと英国の音楽シーンでは、ロックとジャズの境界が曖昧。ロック畑のミュージシャンがジャズをやったり、ジャズ畑のミュージシャンがロックをやったりして、特にプログレとクロスオーバー・ジャズ、ジャズ・ロックの境界線は他の国と比べて圧倒的に曖昧である。

このブルーフォードの『Feels Good to Me』も、聴けば判るが、プログレ・フレーヴァー満載の「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」である。決して、プログレでは無い。演奏の根っこは、あくまで「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」である。

ブルーフォードのドラミングに個性は、驚異の「変則拍子」ドラミング。プログレ・バンドのイエス、キング・クリムゾンの時代から、綿々と叩きまくっているブルーフォード独特の「変則拍子」。
 

Bill-brufordfeels-good-to-me

 
この「変則拍子」は他のジャズ・ドラマーには無い。基本的に2拍目4拍目の「裏」にスネアのアクセントがストンストンと入って、ブルーフォード独特のグルーヴ感を生み出す。これが意外と快感で病みつきになる。

冒頭の「Beelzebub」の変則拍子を聴くと「来た来た〜」と思わず嬉しくなる。全編に渡って、このブルーフォードの変則拍子ドラミングが独特のグルーヴ感を醸し出して、他のジャズ・ロックやクロスオーバー・ジャズに無い音世界を形成している。

そして、このブルーフォードの変則拍子ドラミングにバッチリ乗ってエレギを弾きまくるのが、ジャンルを跨いだ英国の奇才ギタリスト、アラン・ホールズワースである。このホールズワースのエレギが大活躍。このホールズワースの変態捻れギターが、この盤の音世界の「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」志向にしている。

ゲスト・ミュージシャンを見渡せば、ECMのニュー・ジャズ系トランペッターのケニー・ホイーラーがジャジーなトランペットを聴かせる反面、女性ボーカリストのアーネット・ピーコックが、いかにもプログレっぽい、怪しい雰囲気のイコライジングがかかったボーカルを聴かせてくれる。

アルバム全体の音志向は「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」だが、どこか英国カンタベリー・ミュージック風の音作りも見え隠れして、もしかしたらプログレ、なんて思ったりする瞬間があるから、この盤、聴いていてとても面白い。

演奏陣のテクニックも申し分なく、英国独特のロックとジャズの境界線が曖昧な、かなりハイレベルのクロスオーバー&ジャズ・ロックを確認することが出来る。そんな中で、ブルーフォードの驚異の「変則拍子」ドラミングだけが突出して目立っていて、この盤を凡百のクロスオーバー&ジャズ・ロック志向に留めていないところが素晴らしい。

演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第、というが、この盤でのブルーフォードのドラミングはその典型的な例の一つだろう。
 
 
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2024年4月14日 (日曜日)

クルセイダーズの『旋風に舞う』

クロスオーバー・ファンクに音楽性が変化した「クルセイダーズ」。『サザン・コンフォート』(1974年) から、徐々に米国南部の粘りのあるファンクネスが抜けて、洗練されたアーバンな雰囲気のファンクネスに変化、同時に、当時流行し始めていたフュージョン・ジャズにいち早く、適応していった時期が1970年代半ばの頃。そんな時期に、いよいよ、フュージョン・ファンクな音を整えたクルセイダーズの好盤がリリースされる。

The Crusaders 『Free as the Wind』(写真左)。1977年の作品。邦題『旋風に舞う』。ちなみにパーソネルは、Stix Hooper (ds, perc), Joe Sample (key), Wilton Felder (sax), Robert "Pops" Popwell (b) がメインのメンバー。ゲストに、ギターとして、Arthur Adams (track: B4), Dean Parks, Larry Carlton, Roland Bautista (tracks: B1, B3)、パーカッションとして、Paulinho Da Costa (perc, track: B1), Ralph MacDonald (special perc) が参加している。

オリジナル・メンバーのウェイン・ヘンダーソンが脱退し、グループにとっての「転換期」に制作されたアルバム。クルセイダーズの個性であった「米国南部の粘りのあるファンクネス」の雰囲気のおおよそを担っていた、ヘンダーソンのトロンボーンが抜けたのである。

ヘンダーソンのトロンボーンが抜けて、クルセイダーズ独特のファンクネスが、米国南部の粘りのある、ゴスペルチックな雰囲気を宿したファンクネスから、洗練されたアーバンな雰囲気のファンクネスに、明らかに変化している。
 

The-crusaders-free-as-the-wind

 
『サザン・コンフォート』(1974年) あたりから兆しが見え始めていた、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズへの傾倒。徐々にオリジナル・アルバムを重ねていって、この『旋風に舞う』では、ストリングスを配した洗練されたアレンジなど、当時流行のフュージョン・ジャズへの傾倒が明確になっている。もちろん、クルセイダーズ独特のファンクネスはしっかり保持されてはいるが、『サザン・コンフォート』あたりのファンクネスと比べると、グッと洗練されてアーバンな雰囲気が濃厚になったファンクネスに昇華されている。

同時にリズム&ビートも、ファンキーな雰囲気濃厚なものから、洗練された切れ味の良いファンキーなものに変化している。ファンクネスの雰囲気はあくまでクルセイダーズなんだが、とにかく「粘るファンキーなビート」から「シュッとしたファンキーなビート」に変化している。これは、ヘンダーソンが脱退した後、残ったオリジナル・メンバー3人が合意してのビートの変化だろう。

曲作りもアーバンで軽快、聴きやすくてキャッチなフレーズがメインで、ヘンダーソン脱退前の、米国南部の雰囲気漂う粘りのビート、ファンクネス濃厚でR&B志向のフレーズは跡形も無い。この大胆な音世界の変化は「面食らう」ほど。ヘンダーソン脱退前のクルセイダーズの音のファンは、ついていくのに大変だったろうな、と思う。

それでも、この『旋風に舞う』は、ビルボードのトップ・ソウル・アルバム・チャートで最高位8位を獲得。ヒットアルバムとなった。新しい音世界のクルセイダーズが受け入れられた、エポック・メイキングなアルバムでもあったのだ。
 
 

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2024年4月11日 (木曜日)

名手ブレイドの初リーダー作です

現代のファースト・コール・ドラマーの一人、アントニオ・サンチェスのリーダー作を聴いていて、他のファースト・コール・ドラマーのリーダー作を聴き直してみたくなった。まずは「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)」。1970年生まれだから、今年54歳。ジャズ界では引っ張りだこのドラマーの一人である。

ブレイドのドラムは、多彩かつ大胆かつ繊細。非常に味のあるドラミングを披露してくれる。聴いていて惚れ惚れするくらい耳に心地良い、小粋なドラミング。シンバルをパルシヴに小刻みに刻んで、ビートの波を叩き出すのが最大の特徴。このブレイドのシンバル・ワークが秀逸。このシンバル・ワークをベースに、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミングを披露する。

『Brian Blade Fellowship』(写真左)。1998年の作品。ブルーノート・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ds), Melvin Butler (sax), Jon Cowherd (ac-p, el-p), Dave Easley (pedal steel g), Daniel Lanois (mando-g), Jeff Parker (ac-g, el-g), Christopher Thomas (ac-b), Myron Walden (as)。ブライアン・ブレイドの初リーダー作になる。

ブライアン・ブレイド・フェローシップ(以降、BBF)、1997年、ブライアン・ブレイドをリーダーとして結成されたバンド。楽器構成がユニークで、ペダル・スチール・ギターやマンドギター、ウーリッツァー・エレクトロニック・ピアノなどのジャズには珍しいエレ楽器も入れての8人編成。言い換えると「ブライアン・ブレイド・オクテット」である。
 

Brian-blade-fellowship
 

出てくる音は、コンテンポラリー・ジャズ、いわゆる「ニュー・ジャズ」である。即興演奏をメインに、それぞれの楽器がモーダルにフリーにスピリチュアルにインタープレイを展開しつつ、フュージョン、フォーク、ゴスペルな音要素をも包含して、21世紀に通じる「ニュー・ジャズ」を展開。様々な表現を反映して楽曲がバリエーション豊かに収録されている。

そんなバリエーション豊かな内容の楽曲の中で、ブライアン・ブレイドのドラミングは白眉の出来。「シンバルをパルシヴに小刻みに刻んで、ビートの波を叩き出し、このシンバル・ワークをベースに、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミング」というブレイドのドラミングの個性がこの盤の中に溢れている。

ブレイドの多彩なドラミングが推進エンジンとなって、様々なニュアンスの即興演奏&インタープレイが展開される。どの楽器も音は好調。4ビート・ジャズとは全く正反対の、エモーショナルでクールな「ニュー・ジャズ」志向のパフォーマンスは、このBBFの最大の個性。エレ楽器を包含しているが、このバンドの音はあくまで「純ジャズ」の範疇に軸足がしっかりある。

ジャズの世界で「初リーダー作」は、そのリーダーのジャズマンの個性が明確に出る、というが、このブレイドの初リーダー作はその例に漏れない。ブレイドのドラミングを理解する上で、必聴のリーダー作だと言える。21世紀の「ニュー・ジャズ」としても聴き応え十分。好盤です。
 
 

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2024年4月 6日 (土曜日)

これぞ、クルセイダーズの音世界

クルセイダーズは息の長いバンド。1961年にジャズ・クルセイダーズとしてアルバム『フリーダム・サウンド』でメジャー・デビュー。以降、R&Bやソウル・ミュージックの要素を取り込んだ、粘るビートの効いたファンキー・ジャズをメインとし活動。

そして、1971年にグループ名を「ザ・クルセイダーズ」に改名。エレ楽器メインのクロスオーバー志向のジャズ・ファンクに音楽性を変えながら、1970年代半ばには、フュージョン志向のジャズ・ファンクに到達。当時、フュージョン・ジャズの人気グループにのしあがった。

The Crusaders『Southern Comfort』(写真)。1974年の作品。ちなみにパーソネルは、Wayne Henderson (tb), Wilton Felder (b, sax), Joe Sample (key), Stix Hooper (ds), Larry Carlton (g)。

ラリー・カールトンが正式メンバーとなって初のアルバム。1973年に発表された通算7枚目。あまりの充実ぶりで、LP時代はLP 1枚では収まらず、LP2枚組の大作でリリースされている。

我が国では当時、知名度も人気はまだまだのバンドだったが、ビルボードの「US Top LPs & Tape」で31位、「US Soul LPs」で3位、「US Jazz LPs」でトップを獲得したヒット・アルバム。
 

The-crusaderssouthern-comfort

 
内容的には、R&Bやソウルと融合したファンキー・ジャズから、クロスオーバー志向な切れ味の良いジャズ・ファンク、そして、当時の近未来、ソフト&メロウなフュージョン思考のジャズ・ファンクまでを広範囲にサポートしている。

フェルダーのベースと、フーパーのドラムが醸し出す、クルセイダーズ独特の粘りのある、重量感溢れるファンキーなオフビートが、アルバム全曲の底に流れていて、この盤には、クルセイダーズらしさが満載。

ヘンダーソンとフェルダー2管のユニゾン&ハーモニーも実にファンキーでソウルフル。サンプルのエレピは「こってこて」ファンキーで流麗、そして、今回、正式加入したカールトンのエレギが、小粋でアーバンな雰囲気を濃厚にしている。

LP2枚組の後半の長尺の4曲は、クルセイダーズの音の歴史の中のピークの辺りをさし示してくれる、当時のクルセイダーズの充実度を示す力作揃いで、クロスオーバー志向のジャズ・ファンクの名演、そして、その先のフュージョン志向のジャズ・ファンクな演奏が展開されていて、聴き応え十分。

唯一無二の「アーバンな雰囲気を漂わせた、米国南部の雰囲気満載のジャズ・ファンク」集団、これぞクルセイダーズ、って感じの大作『Southern Comfort』。この盤をスタートラインとして、クルセイダーズは徐々に、ソフト&メロウな要素を取り込みつつ、クルセイダーズ独特のフュージョン色を強めていく。
 
 

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2024年3月24日 (日曜日)

『Elegant Gypsy & More Live』

1976年、ソロ活動に入り、初リーダー作をリリース。以降、クロスオーバー&フュージョン・シーンのど真ん中で活躍を続けている、超絶技巧ジャズ・ギタリストの人気者、アル・ディ・メオラ(以降、ディメオラ)。

意外とディメオラのライヴ盤は少なく、1週間ほど前にご紹介した、1982年2月4日、フィラデルフィアの「Tower Theatre」でのライヴ演奏を収録、1982年リリースの『Tour De Force』(左をクリック)が初ライヴ盤で、最近になってライヴ音源が3〜4枚リリースされたが、1990年代までは、この『Tour De Force』が唯一の正式リリースされたライヴ盤だった。

Al Di Meola『Elegant Gypsy & More Live』(写真左)。2018年のリリース。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g),Evan Garr (vln), Phil Magallanes, Philippe Saisse (key), Elias Tona (b), Luis Alicea (ds), Gumbi Ortiz (perc)。2017年『Elegant Gypsy - 40th Anniversary-US Tour』の一部を収録したライブ盤。

収録曲を見渡すと「Race With Devil On Spanish Highway」「Flight Over Rio」「Midnight Tango」等、ディメオラのキャリア初期の自作曲や、1970年代のチックの名曲「Señor Mouse」のカヴァー、そして、1970年代のロック界最高のバンド、レッド・ツェッペリンの「Black Dog」をカヴァーしているので、てっきり、1970年代の終わりか、1980年代前半のライヴ音源の発掘盤かと思ったら、2017年のツアーでのライヴ音源とのことで、ちょっとビックリしている。

収録曲を年代順でまとめると、『Elegant Gypsy』(1977) から3曲、『Casino』(1978) から2曲、『Kiss My Axe』(1991) から1曲、『Elysium』(2015) から2曲、そこにカヴァー2曲(「Señor Mouse」と「Black Dog」)を加えた全10曲となる。こうやって見ると、アルバム・タイトルはちょっと語弊があるなあ、と思ってしまう(笑)。
 

Al-di-meolaelegant-gypsy-more-live

 
どの曲もアレンジがしっかりしている。クロスオーバー&フュージョン志向のジャズ・ロックという路線をしっかり守って、ソフト&メロウに流されず、といって、ガンガンに耳につく、ハードなロック志向に陥ることなく、現代のスマートな「クロスオーバー&フュージョン志向のジャズ・ロック」といったアレンジが良い感じ。

特に、レッド・ツェッペリンの「Black Dog」のカヴァーにはビックリした。どうやってアレンジするのか、と思って聴いたら、プラントのボーカルをバイオリンに担わせて、ディメオラはペイジのギターをディメオラ風にデフォルメして、原曲の雰囲気を損なわず、しっかりと現代のスマートな「クロスオーバー&フュージョン志向のジャズ・ロック」風にまとめているのには感心した。

全編に渡り、ディメオラのギターを聴くと、確かに、1970年代から1980年代前半のディメオラの若かりし頃の「切れ味良くとんがって」バリバリ超絶技巧に弾き回す、鬼気迫る雰囲気ではない。

ディメオラは1954年生まれ。このライヴ盤の録音時は63歳。このライヴ盤全般に渡って、超絶技巧ではあるが、年齢による円熟味が滲み出る様な、余裕ある超絶技巧で円滑かつ流麗な弾き回しは、確かにこのディメオラは、最近のディメオラのパフォーマンスなんだろう、と納得する。

優れたアレンジに乗って、唄うが如く、流れるが如く、弾き進めるディメオラ。バンド全体の演奏レベルも上々、現代のディメオラを感じ確認出来る、素晴らしい内容のライヴ盤だと思います。
 
 

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2024年3月22日 (金曜日)

ギターを弾きまくり唄いまくる盤

バップの如く弾きまくり、ソフト&メロウにR&Bに唄いまくるギタリスト、ジョージ・ベンソン。バップの如く弾きまくるギタリストは沢山いるが、「ギターをバップの如く弾きまくり、R&Bに唄いまくる」ジャズ・ギタリストは、ジョージ・ベンソンしかいない。

George Benson『The Other Side of Abbey Road』(写真左)。1970年の作品。1969年10月と11月の2セッションの録音。ちなみにパーソネルは、基本セットは、George Benson (g, vo), Bob James, Herbie Hancock, Ernie Hayes (ac-p, org, harpsichord), Ron Carter, Jerry Jemmott (b), Idris Muhammad, d Shaughnessy (ds), Ray Barretto, Andy Gonzalez (perc)。ここに、ドン・セベスキーのアレンジ&指揮のジャズ・オーケストラがバックに付く。

この盤は、ベンソンのA&Mレコードからのリーダー作の2作目。A&Mレコードからの初リーダー作『Shape of Things to Come』は「唄いまくるが如くギターを弾く」ベンソンが凄かったが、この盤では「ギターを弾きまくり、唄いまくる」、ギターとボーカルの二刀流での大活躍のベンソンを捉えた秀作である。 

全曲、ビートルズ『アビイ・ロード』の収録曲のカヴァーで占められる。それも「Golden Slumbers〜You Never Give Me Your Money」から始まり、「Because〜Come Together」「Oh! Darling」「Here Comes the Sun〜I Want You (She's So Heavy)」そして「Something〜Octopus's Garden〜The End」まで、どういう基準で選曲されたがは不明だが、なかなかマニアックな曲が、オリジナルの曲順も意識せず、並んでいる。

元々、ウエス・モンゴメリー2世と形容されたベンソン。バップの如く弾きまくるギターは当然。繰り出すフレーズは、R&Bに、ソフト&メロウに唄うが如くのフレーズ。
 

George-bensonthe-other-side-of-abbey-roa
 

そして、濃厚なファンクネスを底に漂わせながら、ベンソンはソフト&メロウに唄いまくる。しかし、ベンソンにこれだけの「ソフト&メロウにR&Bに唄わせた」クリード・テイラーの慧眼恐るべし、である。

ビートルズ『アビイ・ロード』から選ばれた楽曲は、かなり斬新なアレンジが施されていて、原曲のメイン・フレーズは残ってはいるが、イントロや間奏、ビートルズ・オリジナルなアレンジはほどんどデフォルメされている。どの曲もイントロだけ聴けば、何の曲だか判らないほど。イージーリスニング・ジャズと曲解されない様に、かなり純ジャズ寄りのアレンジが施されている。

この「かなり純ジャズ寄り」のアレンジに、バップの如く弾きまくるベンソンのギターが映える。ベンソンのソロがイージーリスニングっぽく聴こえず、バップにジャジーに聴こえるので、ジャズ・ギターとして純粋に楽しめる。そして、「ソフト&メロウにR&B」に唄うベンソンの歌唱が、ビートルズの楽曲に濃厚なファンクネスを纏わせている。 

ビートルズの楽曲のジャズ化が主目的では無い、「ギターを弾きまくり、唄いまくる」ベンソンを的確にアピールすべく、当時、人気絶頂だったビートルズの楽曲をチョイスした、と解釈している。そして、その目論見はほぼ成功している。特に、ベンソンの歌唱は、のちのフュージョン・ジャズにピッタリの「ソフト&メロウにR&B」な雰囲気をしていることが、この盤の歌唱で顕になった。                                                         

この盤、意外とマイナーな存在なんだが、ギターを弾きまくり唄いまくる二刀流のジャズマン、ジョージ・ベンソンのターニングポイントとなったアルバムだと睨んでいる。次作以降、ソフト&メロウなソウル・ジャズから、レアグルーヴなファンキー・ジャズをメインに「弾きまくり唄いまくる」ギタリストとして、ベンソンは人気者になっていく。
 
 

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唄いまくるが如くギターを弾く盤

ソフト&メロウに、R&Bに唄いまくるが如く、バップの如く弾来まくるギタリスト、ジョージ・ベンソン。これが凄い。弾きまくるギタリストや、バップの如く弾きまくるギタリストは沢山いるが、「唄いまくるが如く弾きまくる」ジャズ・ギタリストは、ジョージ・ベンソンしかいない。

George Benson『Shape of Things to Come』(写真左)。1968年8-10月の録音。ちなみにパーソネルは、George Benson (g, vo), Ron Carter (b), Richard Davis (b), Herbie Hancock (p), Hank Jones (p), Idris Muhammad (ds), Don Sebesky (arr, cond) が主要メンバー。ここに、ドン・セベスキーのアレンジ&指揮のジャズ・オーケストラがバックに付く。

この盤は、ベンソンのA&Mレコードからの初リーダー作。当盤以前のコロンビアからのリリースの2枚、『It's Uptown』『The George Benson Cookbook』では、確かに、クロスオーバー・ジャズ、フュージョン・ジャズの確固たる片鱗が見え隠れした「バップな弾き回し」。そこに目をつけたクリード・テイラー。その慧眼に間違いは無かった。
 

George-bensonshape-of-things-to-come_2

 
元々、ウエス・モンゴメリー2世と形容されたベンソン。バップの如く弾きまくるギターは当然。出てくるフレーズもウエス譲りかそれ以上の、ソフト&メロウに唄うが如くのフレーズ。唄いまくるが如く弾きまくるフレーズの雰囲気は「ソフト&メロウなR&B志向」。濃厚なファンクネスを底に漂わせながら、ベンソンはソフト&メロウに弾きまくる。しかし、ベンソンにこれだけの「ソフト&メロウにR&Bに、唄いまくるが如くギターを弾きまくらせた」クリード・テイラーのプロデュース恐るべし、である。

1曲目の「Footin' It」の、切れ味良く、ソフト&メロウにR&Bにグルーヴするギターが、2曲目「Face It Boy, It's Over」での、ソフト&メロウにバップに弾きまくるギターが、最高に「きまって」いる。セベスキー・アレンジのジャズオケは、いかにも「イージー・リスニング・ジャズ志向」だが、ベンソンの流麗でハイテクニックなギター・フレーズには「芯」がしっかり入っていてバップ風。メリハリが聴いていて、ジャズオケの聴き心地の良さに流されることはない。

グルーヴィーなジャズ・ファンクから、R&Bな「ノリの良い」ソウルフルなエレ・ジャズまで、ベンソンは底にファンクネスを湛えつつ、ソフト&メロウに、クール&グルーヴィーに、唄いまくるが如くギターを弾きまくる。地味な存在の盤だが、意外と内容充実の、クロスオーバー&フュージョンを基本とした、イージーリスニング・ジャズの好盤だと思う。
 
 

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2024年3月20日 (水曜日)

第2期RTF 『銀河の輝映』再び

チック・コリアは「リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return to Forever・以降、RTFと略)」を結成、それまでのジャズのトレンドを集約し、最先端のコンテンポラリーなメインストリーム志向の純ジャズを実現した。いわゆる「第1期RTF」である。

そして、チックは次の展開として「エレ・ジャズ」を選択。親分マイルスは、ファンクなエレ・ジャズでブイブイ言わせている。チックは「ハードなインスト・ロック」との融合を選択、ロックの象徴であるエレギを導入。ロック色を強めて、バンドのサウンド志向を「ハードなジャズ・ロック」に定める。第2期RTF である。

ハードな演奏内容ではあるが、収録されている演奏の旋律は「キャッチャーでメロディアス」。これがこのバンド独特の個性となって、このチック率いる第2期RTFは、当時最高の部類の「ジャズロック」バンドとして人気を獲得する。その最初の成果が『Hymn of the Seventh Galaxy』(1973年)であった。

Return To Forever『Where Have I Known You Before』(写真左)。邦題『銀河の輝映』。1974年の作品。改めてパーソネルは、Chick Corea (p, key, syn, perc), Al Di Meola (g), Stanley Clarke (b, key, electric chimes), Lenny White (ds, congas, bongos, perc)。ギターが、ビル・コナーズに代わって、アル・ディ・メオラ(以降、ディメオラと略)にチェンジ。「ハードなジャズ・ロック」志向がさらに濃厚になっている。

ジャジーで超絶技巧&正統派な、クロスオーバー&フュージョン志向のギタリストのディメオラに代わったおかげで、ガッチリと硬派でハードで超絶技巧な「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」な雰囲気濃厚。コナーズの時は、どこか「プログレ的な演奏」が見え隠れしていたが、この盤では、どこから聴いても、ジャズに軸足がしっかり残っている。聴き応えのある、硬派エレ・ジャズの傑作である。
 

Where-have-i-known-you-before_1
 

チック御大のキーボードは、それはそれは見事なもの。シンセサイザーの使い方、テクニック、共に最高。とにかく超絶技巧。フェンダー・ローズ、ホーナー・クラヴィネット、ヤマハ・電子オルガン、アープ・オデッセイ、ミニムーグ等々。これだけ、電子キーボードを弾きこなせるジャズ・キーボーダーはいないだろう。

ジョー・ザビヌルもハービー・ハンコックも、もはや敵では無い(笑)。そして、この盤では、アコースティック・ピアノの音色も美しい。ジャズ界最高のマルチ・キーボーダーの面目躍如である。見事である。

第2期RTFの2作目だけあって、スタンリー・クラーク(以降、スタンと略)のベースとレニー・ホワイトのドラム、共に充実したリズム・セクションに仕上がっている。特に、叩きまくるレニー・ホワイトのグルーヴ感は素晴らしい。ホワイトのドラミングが、この第2期RTFの「ハードなジャズ・ロック」志向のグルーヴとなり、推進力となっている。

スタンのエレベも見事。大向こう張って前に出しゃばるのでは無く、バックに回って、しっかりとジャジーなビートを押さえており、このアルバムについて、ジャズ・ロックな雰囲気を濃厚にしている。スタンのエレベが、このアルバムをジャズ・ロックたらしめている。

そんなメンバー4人の個性が結集して、第2期RTFの「ハードなジャズ・ロック」を現出しているのが、ラストの演奏時間14分25秒の大曲「Song to the Pharoah Kings」。聴いていて「仰け反るほど」に素晴らしい。ディメオラの超絶技巧エレギが炸裂し、チックのシンセが唸りを上げる。スタンのエレベはジャジーなビートを繰り出し、ホワイトは独特のジャズ・ロックなグルーヴ感を振り撒きながら叩きまくる。凄まじい第2期RTFの「ハードなジャズ・ロック」。

この第2期RTFの2作目『銀河の輝映』は傑作。アグレッシブなパワー、シャープでスピーディーな展開、超絶技巧なテクニカルさが全編に溢れていて、第2期RTFの音世界、ここに完成、である。
 
 

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2024年3月17日 (日曜日)

凄まじいディメオラの初ライヴ盤

久しぶりに「アル・ディ・メオラ(以降、ディメオラ)」である。最たる超絶技巧ジャズ・ギタリスト。1974年にチック・コリア率いる「リターン・トゥ・フォーエヴァー」に参加、そして、リターン・トゥ・フォーエヴァーが 1976年に事実上の解散。ディメオラはソロ活動に入り、1976年に初リーダー作をリリース。以降、クロスオーバー&フュージョン・シーンのど真ん中で活躍を続けている。

Al Di Meola『Tour De Force』(写真左)。1982年2月4日、フィラデルフィアの「Tower Theatre」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g), Jan Hammer (key), Victor Godsey (key), Philippe Saisse (additional key), Anthony Jackson (el-b), Steve Gadd (ds, perc), Mingo Lewis (perc), Sammy Figueroa (additional perc)。ディメオラ、初のライヴ・アルバムになる。

収録曲が魅力。「Elegant Gypsy Suite」「Egyptian Danza」「Race with Devil on Spanish Highway」といった、1970年台のディメオラのリーダー作の中からの人気曲、そして「Nena」は新曲、加えて、キーボードでバンドに参加しているヤン・ハマー作の2曲「Advantage」と「Cruisin」。どれもが良曲揃いで、ディメオラのラテン志向の超絶技巧ギターが映えに映える。
 

Al-di-meolatour-de-force

 
というか、ディメオラはもちろん、バンドに参加したメンバー全員が超絶技巧のテクニックを駆使して、かっ飛んだ、疾走感&爽快感抜群の、適度に尖ったクロスオーバー&フュージョン・ジャズを聴かせてくれる。凄く密度のある、凄まじいテクニック、凄まじいインプロの嵐。お互いがお互いに挑みかかるインタープレイの応酬。これがジャズかいな、と思うが、これもジャズ。これだけ尖ったハイテクニックのインプロは、ロックにも見当たらない。

バックのリズム隊も凄い。フロントがディメオラなので、相当な力量を備えたリズム隊でないと、太刀打ちできず、吹っ飛ばされてしまう懸念があるのだが、このメンバーは大丈夫。ガッドの縦ノリ・ドラム、ジャクソンのブンブン・エレベ、ハマーの攻撃的な切れ味の良いエレピ&シンセ。バックのリズム隊が束になって、最たる超絶技巧ジャズ・ギタリスト、ディメオラを支え、時に対峙する。この緊張感がたまらない。

LP時代のライヴ盤なので、収録曲がちょっと少ないのと、全体の収録時間が短いのが不満と言えば不満かな。この日のライヴ音源のコンプリート盤を出して欲しいですね。それほど、収録されたライヴの内容は凄まじく素晴らしい。屈指のクロスオーバー&フュージョン志向のジャズ・ギターが主役のライヴ盤です。クロスオーバー&フュージョン者の方々には是非、お勧めの好ライヴ盤です。
 
 

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2024年3月15日 (金曜日)

大作名盤 『The 2nd Crusade』

クールでアーバン、ソフトでメロウなフュージョン・ファンク集団「クルセイダーズ」。1971年作品の『Pass the Plate』で、それまでのグループ名だった「ジャズ・クルセイダーズ」からジャズを取って、「クルセイダーズ」というシンプルなグループ名に。それまでのジャズ濃厚ファンクから、ジャズから少し距離を置きつつ、クロスオーバー&フュージョン志向な音作りに変化していった。

The Crusaders 『The 2nd Crusade』(写真左)。1973年の作品。ちなみにパーソネルは、Wilton Felder (ts, b), Joe Sample (key), Wayne Henderson (tb), Stix Hooper (ds)。ゲストが、Larry Carlton (g), Arthur Adams (g), David T. Walker (g) のギタリスト3名。

クルセイダーズと改名して以降、『Pass the Plate』(1971年)), 『Hollywood』(1972年), 『Crusaders 1』( 1972年)とリリースしてきて、この『The 2nd Crusade』は、クルセイダーズ名義で4枚目の作品。『Hollywood』で確立し『Crusaders 1』で成熟させた、そんな米国南部のゴスペルチックで、こってこてファンキーで泥臭いグルーヴを纏った「クルセイダーズ・サウンド」を大々的に展開している。
 

The-crusadersthe-2nd-crusade  

 
なんとこのアルバムはLP時代では2枚組の大作。クルセイダーズと改名して以降、ライヴ活動も積極的に行い、メンバー全員、サイドマンとしても活躍、やっと知名度も人気も上がりつつあった頃のアルバムである。とりわけこの盤では、ソフト&メロウな側面を削って、クールでアーバン、シリアスでハードな、クロスオーバー&フュージョン・ファンクを展開している。

フリーやモードの影響が顔を出したり、ゲスト参加のギターも意外とヘビーで、サイケデリックな雰囲気もユニークで、後のクールでアーバン、ソフトでメロウなフュージョン・ファンクがメインのクルセイダーズと同一とは思えない、とにかく演奏内容は意外と「硬派」。ソリッドでソウルフルなリズム&ビートを基本に、こってこてファンキーで泥臭いグルーヴが実に芳しい。

まだまだソフト&メロウには傾倒しない、真摯で硬派なクルセイダーズがこの盤に溢れている。メンバー各々、担当楽器でクルセイダーズ独特のグルーヴを叩き出していて、バンド全体のうねるようなグルーヴがとにかく心地良い。クルセイダーズ初期の名盤の一枚でしょう。
 
 

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