2024年10月 1日 (火曜日)

これ、意外とグリーンの名盤かも

ブルーノート御用達、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギタリスト、グラント・グリーン。グリーンのリーダー作に「ハズレ」は無い。どのリーダー作も水準以上の出来で、特に、オルガン、ドラムとのトリオの演奏でのグリーンは、とりわけ「弾けている」。

Grant Green『Iron City』(写真左)。 1967年の録音、1972年のリリース。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), "Big" John Patton (Hammond B3 organ), Ben Dixon (ds)。グラント・グリーンが一番得意とする、オルガン、ドラムとのトリオ編成。コブルストーン・レーベルという、聞いたことがないレーベルからのリリース。

ジョン・パットンのオルガンって、実はラリー・ヤングじゃないのか、という議論もあるみたいだが、まず、リーダーのグラント・グリーンのギターについては絶好調。どころか、最高にグルーヴィーな、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターを聴かせてくれる。そして、ディクソンの巧みなドラミングが、ギターとオルガンのリズム&ビートとガッチリと支える。
 

Grant-greeniron-city

 
冒頭のタイトル曲だけが、グラント・グリーンの自作曲で、残りはスタンダード曲。スタンダード曲中心なので、俗っぽい、イージリスニングっぽい雰囲気になるのか、と危惧するが、そうはならないところが、グラント・グリーンのリーダー作の優れたところ。まず、アレンジが良い。そして、その良質はアレンジに乗って弾きまくる、グラント・グリーンのギターが、これまたブルージーで、ファンキーで、ソウルフルで、ガッチリと純ジャズに軸足を残している。

ジョン・パットンとドラマーのベン・ディクソンとのインタープレイも聴きもの。アルバムの大半で、3人のアップテンポのグルーヴ感が、爽快感溢れ、猛烈な疾走感で駆け抜ける。グリーンの演奏はいつもより指が躍動的で、リラックスして聴き手を虜にする「ヴァンプやリードライン」を奏でるパットンのオルガンに乗って、ファンキーでソウルフルなソロを披露する。意外と、この盤、グラント・グリーンの絶好調を捉えた名盤ではないのか、とふと思ったりする。

録音年月日やパーソネルなど、未確定な要素をはらんでいるので、グラント・グリーンの名盤の一つとして挙げられることは無いが、意外とこの盤を評価する「グリーン者」の方々が、ネット上に結構いる。この『Iron City』、グラント・グリーンの絶好調を捉えた好盤として、もっともっと評価しても良いだろう。
 
 

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2024年9月 9日 (月曜日)

ソウルフルなグラント・グリーン

昨日から、ブルーノート御用達、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグラント・グリーンのギターに着目、まだ、当ブログで記事化していないリーダー作を順に聴き直している。特にグリーンのキャリアの後半に未記事化のリーダー作が集中しているので、せっせと聴き直し、である。

Grant Green『Alive!』(写真左)。1970年8月15日、ニュージャージーの「クリシェ・ラウンジ」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Claude Bartee (ts), Willie Bivens (vib), Neal Creque (org, tracks 2 & 5), Ronnie Foster (org, tracks 1, 4) Idris Muhammad (ds), Joseph Armstrong (congas)。

爽快なライヴ盤。グラント・グリーンの「独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーな」ギターの周りを固めるのは、サックスにクロード・バーティ、オルガンにロニー・フォスター&ニール・クリーク 、ドラムにアイドリース・ムハマッド、ヴァイヴにウィリー・ビヴェンズ、コンガにジョセフ・アームストロング。

ハードバップ期からファンキー・ジャズ期に活躍したジャズマンの名前はなく、どちらといえば、R&B畑のミュージシャンがジャズに参入しているイメージで、演奏全体の雰囲気は、R&B志向が漂うソウル・ジャズ。そう、この盤には、ソウル・ジャズをやるグラント・グリーンが存在しているのだ。
 

Grant-greenalive

 
ファンキー・ジャズのグリーンに比べると、確かにポップになってはいるが、基本はジャズ。R&B志向は強いが、唄うようなアドリブ・フレーズは確実にジャジー。主旋律はR&Bの如く唄う様に、ちょっと上質のイージーリスニング・ジャズっぽく弾くが、アドリブ展開はメインストリーム志向のソウル・ジャズ。

グリーンのギターの「独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーな」本質は変わらないのだが、バックを固める、R&B畑のジャジーな演奏が、良い「ソウル・ジャズ」なグルーヴを醸し出していて、このグルーヴに乗ったグリーンのギターが「ソウル・ジャズ」に染まっていくのが良く判る。

ソウルフルなグラント・グリーンがこのライブ盤に溢れている。CDリイシューでは、オリジナルLPには未収録だった3曲がボートラとして追加されているが、このボートラは邪魔にならない。

オリジナルLPに収録されても、全く違和感の無い、熱くソウルフルな演奏で、この盤はCDリイシュー盤で聴きたい。ラストのハンコック作の「Maiden Voyage(処女航海)」のソウル・ジャズなバージョンには思わず、喝采の声をあげたくなる。
 
 

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2024年9月 8日 (日曜日)

ヴァーヴのグラント・グリーン

9月になった。それでも、真夏日の日々は変わらない。まだまだ、長時間の外出は控えねばならない。熱中症の警戒しての昼下がりの「引き籠もり」の日は続く。引き篭もりの折には、ジャズを聴く。8月は「ボサノバ・ジャズ」だったが、9月になっても、ボサノバ・ジャズはなあ、ということで、なぜか「ファンキー・ジャズ」である(笑)。

Grant Green『His Majesty King Funk』(写真左)。1965年5月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Harold Vick (ts), Larry Young (org), Ben Dixon (ds), Candido Camero (bongo, congas)。グラント・グリーンといえば、キャリアのほぼ大半がブルーノート所属の、ブルノートのハウス・ギタリスト的な存在だった。パーソネルだけを見れば、ブルノートからのリリースかと思う。

が、この盤は、パーソネルはブルノートのイメージを借りているが、当時の大手レコード会社であった「ヴァーヴ」からのリリースである。グラント・グリーンの1950年代〜1960年代のディスコグラフィーの中で、この版だけがヴァーヴ・レコードからのリリース。プロデューサーは、後のフュージョン・ジャズの仕掛け人「クリード・テイラー」である。

ブルーノートでのグラント・グリーンのリーダー作においては、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターを弾きまくるのが、グリーンの身上。しかし、この盤については、聴き易さを追求した様な、ポップで親しみ易く判り易い、一般大衆向け、イージーリスニング志向のファンキー・ジャズに仕立て上げられている。これは、プロデューサーのクリード・テイラーの仕業であろう。
 

Grant-greenhis-majesty-king-funk

 
この盤と同様な「イージーリスニング志向のファンキー・ジャズ」のコンセプトで、同時期にブルーノートからは『I Want to Hold Your Hand』が出ているが、こちらは、レノン=マッカートニーの「I Want to Hold Your Hand(抱きしめたい)」の、ビートルズ・ナンバーのカヴァーを目玉にした、グリーンのギターの力量とテクニックの素晴らしさが実感できる秀逸な内容だった。これは、やはり、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの優れた手腕の賜物だろう。

さて、この『His Majesty King Funk』、ヴァーヴのクリード・テイラーとしては、二匹目のドジョウならぬ「二人目のウエス・モンゴメリー」を、グラント・グリーンに求めたのではないだろうか。しかしながら、グリーンは自らの「身上」の根底を曲げることはなかった様で、クリード・テイラーの指導よろしく、ちょっとポップでイージーリスニング志向に傾いてはいるが、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターを弾きまくるスタイルは変えていない。

しっかり耳を傾ければ、グリーンのギター自体は、ブルーノート時代と変わっていないことが判るのだが、ちょっとポップでイージーリスニング志向の雰囲気が漂う分、この盤は、一部では「聴く価値無し」と酷評されている。が、ポップでイージーリスニング志向に傾いた「独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキー」なグラントのギターは、意外と聴き心地が良い。こういうグリーンもたまにあっても良いのでは、と僕は気軽に思っている。

このヴァーヴの『His Majesty King Funk』は、ブルーノートの『I Want to Hold Your Hand』と併せて、ポップでイージーリスニング志向に傾いた「独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキー」なグラントのギターを楽しむ、グリーンの「企画盤」の一枚だと僕は評価している。「気軽に聴けるグリーン盤」の一枚でしょう。
 
 

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2024年7月22日 (月曜日)

ソウル・ジャズの ”G・グリーン”

グラント・グリーン(Grant Green)という伝説のジャズ・ギタリスト、我が国ではあまりポピュラーな存在では無かった。

生まれは1935年6月6日、米国ミズーリ州セントルイス、ギタリストとしての活動期間は、概ね1959年〜1978年。1959年、セントルイスで演奏しているところを、ルー・ドナルドソンに見出され、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンに紹介される。

1961年から1965年まで彼はブルーノートの専属ギタリストとして、リーダーとサイドマンの両方で活躍。1966年にグリーンは一旦、ブルーノートを離れ、ヴァーヴを含む他のレーベルでレコーディング、1967年から1969年までは個人的な問題とヘロイン中毒の影響で活動を休止。1969年にブルーノートに復帰している。

Grant Green『Green is Beautiful』(写真左)。1970年1月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Blue Mitchell (tp), Claude Bartee (ts), Neal Creque (org, track 3), Emmanuel Riggins (org, tracks 1, 2, 4 & 5), Jimmy Lewis (el-b), Idris Muhammad (ds), Candido Camero (conga), Richie "Pablo" Landrum (bongos)。プロデューサーは「フランシス・ウルフ」に代わっている。

全5曲中、プーチョ&ラテン・ソウル・ブラザーズの音楽監督でもあったキーボード奏者のニール・クリーキーの曲が2曲(「The Windjammer」と「Dracula」)、以下、ジェイムス・ブラウンの「Ain't It Funky Now」、ビートルズ「A Day In The Life」、ディオンヌ・ワーウィックの「I'll Never Fall in Love Again」と、ロック、R&Bの有名曲のカヴァー集。
 

Grant-greengreen-is-beautiful

 
1969年、ブルーノートに復帰後のグラント・グリーンの快作。冒頭の「Ain't It Funky Now」を聴いて判るが、演奏されるジャズは「ソウル・ジャズ」。

ブルーノートを一旦離れる前は、こってこての「ファンキー・ジャズ」だったが、復帰後は、こってこての「ソウル・ジャズ」に変わっている。そして、この、こってこての「ソウル・ジャズ」が、グラント・グリーンのパッキパキでファンキーな、シングル・トーンのギターにバッチリ合っている。

グリーンのギターの音色は、骨太で硬質でホーンライク。そんな太くて硬い音色で、R&B曲の旋律を唄うが如く弾きまくるのだ。これが実にソウルフル。ジャズ・ファンク色溢れるグルーヴも芳しく、グリーンのギターは唄うが如く、踊るが如く、R&B色豊かなソウル・ジャズを弾きまくる。

このソウル・ジャズ色を更に確実に、更に色濃くしているのが、オルガンの存在。ニール・クリークとエマニュエル・リギンズの二人がオルガンを担当しているが、このオルガンが実に効いている。どちらかといえば、R&B系のオルガンの様で、この盤でのグリーンの「ソウル・ジャズ」にバッチリ填まっている。

1960年代後半から1970年代のソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク好きにはたまらない内容。逆に、硬派な「純ジャズ命」のジャズ者の方々には「際もの」以外の何者でも無い。しかし、そこはブルーノート、当時の流行をしっかりと踏まえて、なかなかアーティスティックなソウル・ジャズ志向にまとめているところが素晴らしい。メインストリーム系のソウル・ジャズとして、この盤は「アリ」ですね。
 
 

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2024年7月21日 (日曜日)

グリーンの優れたカヴァー能力

暑い。酷暑である。梅雨明け宣言があった翌日からの猛暑。午前中から外出が憚られる強い日差しと熱風。外出したら絶対に体に悪い。これはもう「引き籠り」しかない。ありがたいのはエアコンの存在で、朝からエアコンをフル稼働させて、なんとか涼しい部屋の中でテレビを見たり、ジャズを聴いたり。

Grant Green『I Want to Hold Your Hand』(写真左)。1965年3月31日の録音。ブルーノートの4202番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Hank Mobley (ts), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。グラント・グリーンのギターと、ハンク・モブレーのテナー・サックスがフロントの、オルガン入り変則カルテット。ベースはラリー・ヤングのオルガンが代替している。

前々作の『Talkin' About!』(1964年9月録音)で、出会ったリーダーでギタリストのグリーンとオルガンのヤング、ドラムのエルヴィン。きっと相性が良かったのだろう、前作『Street of Dreams』では、新進気鋭のヴァイブ奏者ハッチャーソンを加えて、そして、今回は、ベテランの域に達していたテナーのハンク・モブレーを加えて、意外と硬派で正統派なファンキー・ジャズを聴かせてくれる。

今回はアルバム・タイトルにあるように、レノン=マッカートニーの「I Want to Hold Your Hand(抱きしめたい)」の、ビートルズ・ナンバーのカヴァーを目玉に、アルバムの冒頭に配している。当時、ビートルズが大人気で、ジャズ界では、こぞって猫も杓子もビートルズ曲のカヴァーを録音して、アルバムの売り上げに貢献させようと躍起だった。

が、ビートルズ曲はコード進行がジャジーでは無い。ロックンロールとして捉えても、コード進行がかなりユニーク。そして、演奏ビートは8ビート。ジャズにアレンジするには、かなり障壁が高かった。事実、ビートルズ曲のジャズ化については、曲の旋律を忠実になぞって、4ビートに収めて、アドリブ展開無しに終わる、という「イージーリスニング」的アレンジが多かった。コード進行がユニークがゆえ、アドリブ展開が意外と難しかったのだろう。

しかし、このグラント・グリーン盤の「I Want to Hold Your Hand」はなかなか良く出来たアレンジで、上手く4ビートに乗せ直し、ユニークなコード進行を踏襲しつつ、アドリブ部もしっかりと展開している。この演奏を聴いて思うのは、ビートルズ曲のジャズ化って、演奏するジャズマンのセンスと力量によるところが大きい、ということが良く判る。
 

Grant-greeni-want-to-hold-your-hand

 
全く未経験のユニークなコード進行を基に、アドリブ展開をするのは、やはり至難の業なんだろう。それまでのアドリブ経験が全く応用できないのだからたまらない。

しかし、この盤でのグリーンは、全く違和感なく、「I Want to Hold Your Hand」のアドリブ展開を実現している。未経験のユニークなコード進行を基にアドリブを展開するには、その想像力の高さとセンス、そして、そのイメージを実現する確かなテクニック。これらを兼ね備えたジャズマンだけが、ビートルズ曲の「優れたジャズ化」を実現出来るのだろう。

聴いていて、1曲目の「I Want to Hold Your Hand」の演奏の流れと、次の有名スタンダート曲「Speak Low」の演奏の流れと、全く違和感が無いのはさすが。ビートルズ曲のジャズ化の好例が、この「I Want to Hold Your Hand」だろう。4曲目のボサノバの名曲「Corcovado」のカヴァーも良好。グリーンはポップス系の楽曲のカヴァーが上手い。

サイドマンも良好。特に、新進気鋭の「オルガンのコルトレーン」こと、ラリー・ヤングのオルガンも良い。しっかりと地に足を着けた、伝統的なハードバップなフレーズを繰り出すヤングは意外と凄い。

さらに良いのは、サイドマンに回ったハンク・モブレーのテナー。この盤でのモブレーは「当たり」。彼にとって何が良かったか判らないが、素晴らしい「伴奏のテナー」をきかせてくれる。おおらかにアドリブを繰り出し、絶妙にチェイスを入れる。伴奏のモブレー、素晴らしい。

そして、さすがなのは、ドラムのエルヴィン。「I Want to Hold Your Hand」の4ビートへの落とし込み。ボサノバ・ジャズへの柔軟かつ違和感の無い対応。エルヴィンは単にポリリズミックなドラマーでは無い。歴代のレジェンド級のドラマーの中でも、類稀なセンスと力量を兼ね備えた、適応力抜群のオールラウンドなドラマーである。

ビートルズ曲のカヴァーをタイトルにした企画盤なので、硬派なジャズ者の方々からは敬遠され気味ですが、敬遠するには及ばず。サイドマンの演奏内容も秀逸。グリーンのギターの力量とテクニックの素晴らしさが実感できる秀逸な内容です。
 
 

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2024年7月20日 (土曜日)

オルガン入りギター盤の秀作です

グラント・グリーンは、ほとんど「ブルーノートのお抱え」ギタリストと思って良いと思う。グラント・グリーンの秀作は、当時のブルーノート・レーベルに集中している。ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンが、グラント・グリーンのギターの個性について、いかに造詣が深かったか、が非常に良く判る。

Grant Green『Street of Dreams』(写真左)。1964年11月16日の録音。ブルーノートの4253番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Bobby Hutcherson (vib), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。グラント・グリーンのギターと、ボビー・ハッチャーソンのヴァイブがフロントの、オルガン入り変則カルテット。ベースはラリー・ヤングのオルガンが代替している。

オルガン入りのグリーンのリーダー作。まず、グリーンのギターはシングル・トーンでありながら、音がとても太い。普通、シングル・トーンのギターは音が細くて、オルガンの太い音色に負けることが多いのだが、グリーンのシングル・トーンはとても太いので、オルガンの太い音色に負けず、オルガンと対等にフレーズを奏で、ユニゾン&ハーモニーを奏でることが出来る。

しかも、オルガンは、当時、新進気鋭のラリー・ヤング。いわゆるオルガンの新主流派、と形容される、スマートな音色が個性。つまり、従来のオルガンの様に、例えば、ジミー・スミスなどの様に、ファンクネスが濃厚では無い。そんな「オルガンのコルトレーン」と形容されるヤングが、ファンキー・ジャズなオルガンを弾きまくる。
 

Grant-greenstreet-of-dreams

 
これが「ミソ」で、グリンのギターとオルガンが絡む時、グリーンの持つ濃厚なファンクネスが前面に推し出てくるのだ。ヤングのオルガンにも、そこはかとなくファンクネスは漂うのだが、この盤での濃厚なファンクネスは、絶対のグリーンのギターから醸し出るファンクネスなのだ。

ハッチャーソンのヴァイブの存在も見逃せない。ハッチャーソンのヴァイブも、いわゆるヴァイブの新主流派、と形容されるモーダルでスマートなヴァイブが身上。例えば、ファンキー・ヴァイブのレジェンド、ミルト・ジャクソンのヴァイブだと、グリーンのギターの濃厚なファンクネスと相まって、オーバー・ファンクな演奏になって、確実に「耳にもたれる」。

が、ハッチャーソンのヴァイブだとそうならない。逆にハッチャーソンのスマートなヴァイブがグリーンのギターの持つ濃厚なファンクネスを際立たせる効果を産んでいる。グリーンのファンクネス濃厚なギターの音色を、洗練したスマートなファンクネスの音色に変化させ際立たせる。ハッチャーソンのヴァイブの存在も、この盤での「キモ」である。

あとは、リズム&ビートを推進するドラマーの存在。この盤では、エルヴィンがいつになくファンキーなドラミングでバンド全体の演奏をコントロールし鼓舞する。この盤でのエルヴィンのファンキーなドラミング。エルヴィンって器用で引き出しの多いドラマーなんだ、ということを再認識する。

グリーンのファンクネス濃厚でホーンライクな弾き回しも魅力的で、バンド全体のリラックス度の高い、ファンキーな演奏も、このメンバーでは異色。ジャケットも良好。実にスマートでリラクゼーション溢れる、グルーヴィーなオルガン入りギター盤の秀作です。
 
 

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2024年7月19日 (金曜日)

グリーンの奏でるハードバップ

僕はグラント・グリーンのギターが好きだ。ウエス・モンゴメリーの豪快なオクターヴ奏法も格好良いが、グラント・グリーンの質実剛健、誠に潔い「シングル・トーン」= 一本弾きが、とてつもなく「好き」。独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターを弾きまくるグリーンは格好良い。

Grant Green『Idle Moments』(写真左)。1963年11月4, 15日の録音。ブルーノートの4154番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Joe Henderson (ts), Bobby Hutcherson (vib), Duke Pearson (p), Bob Cranshaw (b), Al Harewood (ds)。リーダーのグラント・グリーンのギター、ジョー・ヘンダーソン(ジョーヘン)のテナー、ハッチャーそんのヴァイブがフロントのセクステット編成。

ピアソンの「Idle Moments」、グリーンの自作「Jean De Fleur」、ジョン・ルイスの名曲「Django」、そして、再びピアソンの「Nomad」の4曲を収録。CDでは、ボートラで「Jean De Fleur」と「Django」の別テイクが付くが、アルバム鑑賞には、正式な4曲を聴き込むのが正解だろう。

この盤は珍しくスタンダード曲を選曲していない。しかも、グリーンとピアノのピアソン以外は、新主流派志向のモード・ジャズが得意な面々。これはもしかしたら「大モード大会」か、と思いきや、真っ当な、正統派でストレートなハードバップな演奏が繰り広げられているから面白い。変にモードに捻ったところは無い、本当に正統派なハードバップ演奏に終始しているところに好感度アップである。
 

Grant-greenidle-moments

 
グリーンの独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターはブレがない。シングルトーンでの一本弾きなのに、アーバンで、こってこてファンキーな音色とフレーズが醸し出されるのはいつ聴いても不思議。このシングルトーンの、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなフレーズで弾きまくるグリーンのギターが最大の魅力。

正統派でストレートなハードバップ・フレーズを吹きまくるジョーヘンは凄く良いし、新主流派でややフリーなハッチャーソンのヴァイブが、正統派でストレートなハードバップ・フレーズを弾きまくる様は「実に新鮮」。

ピアソンのピアノを中心とするリズム・セクションも、こってこてハードバップなリズム&ビートを供給していて立派。しかし、この盤、正統派でストレートなハードバップな演奏でありながら、古さ、レトロ感を感じさせず、どこか新しい響きを宿しているところが「ニクイ」。

後に新主流派のメンバーとしてブイブイ言わせる新進気鋭のメンバーを従えて、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターを弾きまくるグリーンは潔い。新しい響きを宿したハードバップ。さすがブルーノート、良い仕事してます。
 
 

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2023年7月21日 (金曜日)

グリーンとヤングとエルヴィンと

ブルーノートの4100番台の後半のアルバムの中で、このブログに記事として上げていないアルバムをメインに聴き直して、せっせと記事にしている。4100番台は、メインストリーム志向の純ジャズの範疇の中で、1960年代前半の「ジャズの多様化」の時代を確実に捉えて、当時のジャズのバリエーションを漏らさず網羅したアルバムを漏らさずリリースしている。

4100番台を通して聴けば、当時の成熟したジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」の全てが追体験できる。これは素晴らしいことである。そして、この4100番台で記録された、ジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」が、1980年代中盤以降の「純ジャズ復古」のベースとなっていて、現代のジャズに繋がっている。

Grant Green『Talkin' About!』(写真左)。1964年9月11日の録音。ブルーノートの4183番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。リーダーのグラント・グリーンのギター、プログレッシヴなモーダル・オルガニストのラリー・ヤング、そして、ポリリズムの塊ドラマーのエルヴィン・ジョーンズのトリオ編成。

この盤は、思いっ切り聴き応えがある。まず、リズム隊が、オルガンでモード・ジャズを演奏する、先進的で進歩的なオルガンと、ポリリズミックで自由度の高い革新的なドラムで構成されている。このリズム隊の叩き出すリズム&ビートは、従来のハードバップには無い、最先端のもの。
 

Grant-greentalkin-about

 
この最先端のリズム&ビートをバックに、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなシングル・トーンが個性のグラント・グリーンが先鋭的なフレーズを弾きまくる。演奏の基本は「ファンキー&ソウル」なジャズなんだが、演奏全体の雰囲気は先進的、先鋭的、進歩的な、実に硬派で、とてもストイックな演奏になっている。そして、アドリブの弾き回しは何時になく「熱い」。

が、グリーンのギターにも増して、ラリー・ヤングのオルガンが凄い。「ファンキー&ソウル」なグリーンを向こうに回して、プログレッシヴでストイックな「モーダルな雰囲気のオルガン」を弾きまくる。モーダルな雰囲気の中で、ファンキー&ソウルなフレーズを織り込んでくる。責めに攻めるヤングのオルガン。グリーンもこの先鋭的なオルガンをしかと受け止めて、熱くて硬派なソウルフル・フレーズを弾きまくる。

そして、そんな二人をしっかりと支え、しっかりと鼓舞しつつ、演奏全体のリズム&ビートをコントロールするのが、エルヴィンのドラミング。グリーンのギターとヤングのオルガンを前面に押し出し、引き立たせるエルヴィンのドラミングは相変わらず見事。このエルヴィンのポリリズミックで切れ味の良いドラミングがアルバム全体の雰囲気をビシッと締めている。

このブルーノートの4183番、ジャズ盤紹介本や雑誌記事に上がることが殆ど無い、地味な存在に甘んじている作品だが、どうして、この盤、グリーンの代表作の1枚だと思うし、1960年代半ばの「ジャズ多様化の時代」のクリエイティブで熱い、当時のジャズの「深化」をタイムリーに記録した名盤だと思う。
 
 

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2023年4月27日 (木曜日)

ファンキー&ソウルフル濃厚

ブルーノートの4100番台は、録音時期としては、Donald Byrd『Royal Flush』(1961年9月21日の録音)から始まって、Lee Morgan『The Rumproller』(1965年4月21日の録音)まで、1961年後半から1965年前半になる。

この約4年間で、4100番台、きっちり100枚のアルバムを制作〜リリースしている(中には、当時、お蔵入りになって、後に発掘リリースされたものもあるが)。

ちょうど、ジャズとしては、ハードバップが成熟し、ハードバップを基に、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなど、ジャズの多様化の時代として、それぞれの志向のジャズに進化していった時期である。ブルーノートは、この多様化の時代の、それぞれの志向のジャズを、偏り無く、しっかりと録音に残している。

Grant Green『Am I Blue』(写真左)。1963年5月16日の録音。ブルーノートの4139番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Johnny Coles (tp), Joe Henderson (ts), "Big" John Patton (org), Ben Dixon (ds)。パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなシングル・トーンが個性のグラント・グリーンがリーダーのクインテット編成。ベースはオルガンが兼任するので、ベーシストはいない。
 

Grant-greenam-i-blue

 
この盤、ブルーノート・レーベルの紹介本には、代表盤として名前が上がることが殆ど無い盤なのだが、これがまあ、ギターがメインのファンキー・ジャズとして、はたまた、ファンキーなオルガン・ジャズとして、とっても素敵な演奏が詰まっている「隠れ名盤」なのだ。

とにかく、こってこてファンキーなグリーンのギターと、ブルージー&グルーヴィーなジョン・パットンのオルガンとの相性が抜群で、相乗効果で、ファンクネスを更に濃厚にしている。

フロント管は、ジョニー・コールのトランペット、ジョー・ヘンダーソンのテナーの2管なのだが、この2管もギターとオルガンが強烈に醸し出すファンクネスにどっぷり浸かって、とってもファンキーなフレーズ、とってもファンキーなユニゾン&ハーモニーを吹き上げている。特に、モードが得意なジョーヘンが、ご機嫌なファンキー・テナーを吹き上げている様が、実に微笑ましい。

ブルージーというより、ゴスペルでソウルな雰囲気が印象的。キレッキレの演奏とは違って、どこか適度にテンションを張った、不思議な「脱力感」が漂う、ファンキー&ソウルフルな演奏が実に良い。おもわず「ニンマリ」してしまう。適度に脱力はしているが、演奏自体はしっかり「締まっている」ところが、また良い。

この盤、ファンキー&ソウル・ジャズ、そして、オルガン・ジャズのファンには堪らない内容。やっぱ、隠れ名盤でしょう。
 
 

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2023年4月10日 (月曜日)

ファンキー&グルーヴィーな盤 『Feelin' The Spirit』

ブルーノートのお抱えギタリスト、グラント・グリーン。我が国ではあまり知られたギタリストでは無かった。通算で約30枚ものリーダー作をリリースした、ジャズ・ギタリストのメジャーな存在だと思うのだが、僕がジャズを本格的に聴き始めた1970年代後半から暫くは、グリーンの名前を聞いたことが無かった。

グリーンの名前が我が国でも流布し始めたのは、RVGリマスターのブルーノート盤の復刻シリーズからだと思う。それでも、それ以来、爆発的にその人気が上がったということは無く、不思議なことなんだが、恐らく、グリーンの「ファンクネス濃厚、パッキパキ鋼質のシングルトーン」の渋いギターが、どうも我が国では分が悪いらしい。速弾きなどの派手派手しさは無く、流麗でスインギーなオールド・スタイルのジャズ・ギターでも無いところがネックなんだろう。

Grant Green『Feelin' The Spirit』(写真左)。1962年12月21日の録音。ブルーノートの4132番。 ちなみにパーソネルは、Grant Green (el-g), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds), Marvin Masseaux (tambourine)。ブルーノートのお抱えギタリスト、グラント・グリーンの通算13枚目のリーダー盤。
 

Feelin-the-spirit

 
この盤でのグラント・グリーンのギターは「ファンクネス濃厚、パッキパキ鋼質のシングルトーン」は変わらない。ほんと、スタイルがブレないギタリストである。この盤は、タイトルから類推できる様に「アフロ・アメリカンのスピリチュアル」を志向した音作りになっている。これが、グラント・グリーンのギターの持つ「ファンキー・グルーヴ」にジャストフィット。ブルージーでグルーヴィーでファクネス溢れる名演に惚れ惚れする。

そして、これは凄いなあ、と感心したのが、ハービー・ハンコックのバッキング。新主流派志向、モーダルで時々フリーなピアノのハンコックが、このグラント・グリーンのギターにフィットするのか、と思ったんだが、さすがハンコック、素晴らしいテクニックと弾き回しで、グリーンのギターの邪魔をすること、音がぶつかることは全く無く、グリーンのギターのグルーヴ感を増幅し、ファンクネスを増強する。ハンコックのピアノのテクニックの奥深さを再認識した。

ワーレン、ヒギンスのリズム隊のサポートも良好で、この盤については、ジャズ・ギター盤にありがちな「ギターの一本弾きが単調が故にダレる」が全く無く、全編、締まった内容の演奏になっている。ジャズのルーツともいうべきブルースやゴスペルを基にした演奏が実にしみじみと染み入ります。ジャズ・ギターの、グラント・グリーンの名盤と言えるでしょう。
 
 

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